台本概要
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タイトル | ジョイエリ デラ トライセイ【ファイル:トパーズ】 |
---|---|
作者名 | 不尽子(つきぬこ) (@tsukinuko) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 3人用台本(男2、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
イタリアにある異能者で構成されたトライセイ探偵団の新入りネーロと、その指導役ヴィオラが仲間達と共に珍事件を解決…!? ご使用の際はご報告いただけると大変喜びます(強制ではありません)。 シナリオの一番下にイタリア語の解説があります。 329 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ネーロ | 女 | 68 | ジーノ・マーティン。不幸体質な男装女子。宝石マニアで心の声がうるさい。 |
ヴィオラ | 男 | 70 | ダン・サクマ。根暗な日系青年。能力は「以心伝心」だが、ネーロに幻滅されたくなくて言えないでいる。 |
ジャッロ | 男 | 64 | カルロ・オールデン。女性演者可。能力は「瞬間移動」。溌剌としているが年齢の割に達観してる黒人少年。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:山の中、ネーロとヴィオラとジャッロが手を繋いだ状態で突如として現れる。
ジャッロ:ほい、到着ッスー!
ヴィオラ:よりによって山奥か…。シャベル持参って言われたところからして、此処を掘れって事だよな…。
ネーロ:あの…僕ヴェルデさんから何も聞かされてないんですけど…今日は何の捜索なんですか?
ジャッロ:んー、実は自分も聞かされてないんスよね…。
ネーロ:え?失(う)せモノ探しって、ジャッロ君の担当だよね?
ジャッロ:たまーにあるんスよねぇ…。
ネーロ:えぇ…。
ヴィオラ:ヴェルデなりの考えがあるんだよ。ほら、掘ってくぞ。
0:三人で地面を掘っていく。
ネーロ:うぇ、羽虫が口に入った…。
ジャッロ:何かめっちゃネーロ兄にたかってるッスよ?
ネーロ:え、もしかして僕…臭い!?
ジャッロ:いや、お日様の匂いッス。自分は好きッスよ!
ネーロ:それダニの死臭…。
ジャッロ:マジッスか!?
ヴィオラ:ほらほら、口じゃなくて手を動かせ。
ネーロ:はぁ…こんな事なら、メールの依頼内容もちゃんと確認しとくんだった…。
ジャッロ:え、メール以外でも依頼来るんスか?
ネーロ:めちゃくちゃ来るよ!電話やファックスならビアンコさんも手伝ってくれるけど、お客さんがわざわざうちに来る事だってしょっちゅうあるし!
ヴィオラ:ヴェルデはメールの依頼だけ見てるのか…。まぁ、確かにその方が効率が良いか。
ヴィオラ:俺達は割り振られた業務内容がスマホに送られて来るから、呼ばれない限りわざわざ事務所に戻る事もないしな。
ジャッロ:そうだったんスか…自分ずっと出突っ張りだから、知らなかったッス…。
ヴィオラ:ビアンコのサポートはあれど、昔はそれをヴェルデが一人で捌いてたんだ。
ヴィオラ:ネーロは受付事務ちゃんとこなせてるし、息抜き出来て助かるって言ってたよ。
ネーロ:え、あのヴェルデさんが!?嬉しいなぁ…いつも発砲されたり怒鳴られてばっかりだから。
ジャッロ:へへ、やっぱ実の弟には本音を話せるもんなんスかね!
ヴィオラ:え?あ、あー…多分
ジャッロ:…多分?
ヴィオラ:(気まずそうに目を逸らす)……。
ネーロ:いいなぁ…僕も兄弟は沢山居るけど、皆血の繋がりは無いし。
ジャッロ:自分もッス。でもここの人達は、もう皆家族みたいなもんッスよ!
ネーロ:うん…何だかんだ皆優しいよね。でも僕…まだドンやヴィオラさんの能力知らないし…。
ジャッロ:え、まだ知らないんスか!?ヴィオラ兄の能力は――
ヴィオラ:(遮る)わーーっ!!
ネーロ:(ジャッロと同時に)わぁっ!?
ジャッロ:(ネーロと同時に)わぁっ!?
ヴィオラ:(わざとらしく)あーごめん!変な影が見えたから熊かと思ってー!
ネーロ:え、熊!?そっか…確かに此処山奥だもんなぁ…。
ジャッロ:ヴィオラ兄も熊にビビる事あるんスね…。
ネーロ:…これ、僕よりもアズーロさんの方が良かったんじゃ…?
ジャッロ:アズーロ兄は強い分、自分よりも忙しいッスからねぇ〜。
ネーロ:(がっくり)そうだよね…。
ヴィオラ:……。
0:ヴィオラがジャッロにテレパシーを送る。
ヴィオラ:カルロ、カルロ!
ジャッロ:え、どしたんスか?何でテレパシー?
ヴィオラ:頼むカルロ、ジーノにはいつかちゃんと俺から話すから!俺の能力の事はまだ黙っててくれ…!
ジャッロ:え、指導役なのに?ひょっとしてダン兄、まだジーノ兄の事認めてないんスか!?
ヴィオラ:違う!けどほら、心の準備と言うか…キモがられたら傷付くと言うか…。
ジャッロ:黙ってる方がキモいと思うッス。
ヴィオラ:ド直球の正論やめろ!
ジャッロ:ジーノ兄が可哀想ッスよ!
ヴィオラ:分かってるよ!でもお前だって、その能力で銀行から金を盗った事弟や妹に言えた事あるか!?
ジャッロ:うっ……言え、ない…ッス…。
ネーロ:(心の声)…どうしたんだろ二人共、凄い顔で睨み合いながら掘ってるけど…。
ネーロ:(心の声)でもまたダンさんの目がアメジストみたいに光ってる!ふふ、眼福だなぁ〜♪
ヴィオラ:っ〜〜!!
ジャッロ:あれ、ヴィオラ兄?顔真っ赤ッスよ?
ネーロ:え、風邪ですか!?
ヴィオラ:いや、違う。大丈夫だから。
ネーロ:そ、そうですか…。(ここから心の声)…でも確かに、掘ってく度に何か臭うし虫が増えてきたし…気分が悪くなるのは分かるな…。一体何が埋まってるんだろう…。
0:シャベルが何かに当たる。
ネーロ:!何か固いのが当たりました!
ヴィオラ:じゃあ、こっからは手掘りだな。
ネーロ:え、こんな臭うのに…!?
ヴィオラ:傷付ける訳にはいかないからな。ジャッロ、お前は周りに人が来ないか見ててくれ。
ジャッロ:あー…了解ッス!
ネーロ:…はぁ、こうなったら一気に掘った方がいいですよね!
ヴィオラ:え、それはやめた方が…!!
ネーロ:あ、何か出てき…た…?
ネーロ:う…うわあむぐっ!?(口を塞がれる)
ヴィオラ:(小声)大声を出すな!ジャッロがこいつを見ちまう!
ネーロ:っ…!!
ジャッロ:え?何か言ったッスかー?
ヴィオラ:目標が出て来たんだ。完全に掘り出すまで見張りを続けてくれ!
ジャッロ:…了解ッスー!
ネーロ:っ…ヴィ、ヴィオラさん…これ、け、けけ、警察に言った方が…。
ヴィオラ:とっくにビアンコが通報してる。あと10分もすれば来るから、一先ず完全に掘り出して布でも被せてやってくれ。
ネーロ:…ひょっとして、ジャッロ君が依頼内容を知らされてないのは…。
ヴィオラ:…もう15になるとは言え、子供に見せていいものじゃない。
ネーロ:…そう、ですよね。
ヴィオラ:…ごめん。
ネーロ:え?
ヴィオラ:今回の依頼、ネーロにも黙ってるようにヴェルデに言われたんだ。
ネーロ:え…!?
ヴィオラ:「こんなのでビビってるようじゃ、うちの事務所には置いておけない」だとさ。
ヴィオラ:笑えないよな。そもそもネーロは受付担当だってのに…。
ネーロ:…そうだったんですね。…うぅ、これで全身出ました…よね?
ヴィオラ:ああ、これだけ掘り出せば十分だろう。あいつに見えないように、布を被せてやってくれ。
ネーロ:分かりました…。
ヴィオラ:…ジャッロにも、本当はこんな仕事させたくないんだ。でも失せモノ探しなんて、追跡能力のあるあいつ以外に適任も居ない。
ネーロ:…そう、ですね。
ヴィオラ:俺は今も願って止まないよ…。こんな馬鹿げた能力、さっさと全部消えちまえって…!
ネーロ:ヴィオラさん、それは…!
ジャッロ:二人とも逃げるッス!!
ヴィオラ:うわっ!?
ネーロ:え、ジャッロ君!?
0:ジャッロが咄嗟に二人に飛びつき、木の上に瞬間移動する。
ネーロ:わわっ!?き、木の上…!?
ヴィオラ:ジャッロ、どうした!?
ジャッロ:静かに!あれを見るッス!
ネーロ:あれって……熊…!?
ヴィオラ:さっき騒ぎ立てちまったからな…危ないところだったのか。
ジャッロ:でもこのままじゃ、掘り出したやつが食われちまうかもッス…。
ヴィオラ:大丈夫だ。俺が誘導する。(能力を使う)
ネーロ:(心の声)わ、綺麗…。
ヴィオラ:っ…。
ネーロ:(恍惚な溜息)…んっ!?
ジャッロ:あれ、ネーロ兄?
ヴィオラ:ん?どうした?何か、ちょっとずつ下がってるような…。
ネーロ:……ジャッロ君…。
ジャッロ:え?
ネーロ:僕の足場の枝、腐ってるかも…。
ジャッロ:えっ!?
ヴィオラ:マズいっ…捕まれ!
ネーロ:は、はい(ヴィオラの手を取る前に足場が折れる)わあああっ!!
ヴィオラ:ネーロ!!(ジャッロと同時に)
ジャッロ:ネーロ兄!!(ヴィオラと同時に)
ネーロ:い、たた…(巨大な熊が目前に迫る)あ…あっ……。
ヴィオラ:クソ、すぐにあいつの脳内を撹乱させてっ…!
ジャッロ:ダメッス!熊が暴れて逆に危ないッス!自分が行くッス!!(能力を使う)
ヴィオラ:あ、おいジャッロ!!
ネーロ:…嫌だ、来るな…嫌だっ…!!
0:熊がネーロを襲おうとした途端、ジャッロが熊の背後に現れ羽交締めにする。
ジャッロ:ネーロ兄に、手ぇ出すなッス!!
ヴィオラ:ジャッロ!!
0:ジャッロが能力を使い、熊もろとも姿を消す。
ヴィオラ:…あいつ、無茶しやがってっ…!そうだ、ネー、ロ…!?
ネーロ:(過呼吸レベルの荒い息)
ヴィオラ:これは…!
ジャッロ:(帰ってくる)ネーロ兄、無事ッスか!?
ヴィオラ:(テレパシー)近付くなジャッロ!!
ジャッロ:えっ…!?
ヴィオラ:(テレパシー)ネーロは今錯乱してる。落ち着かせるから、そこでジッとしてろ!
ジャッロ:錯乱、って…。
ネーロ:(過呼吸レベルの荒い息)
ジャッロ:え…ネーロ、兄…?
ヴィオラ:……。(テレパシー)ジーノ…ジーノ!
ネーロ:ひっ…!!
ヴィオラ:(テレパシー)大丈夫だジーノ、怖いヤツはもう居ない。お前を襲うヤツはもう居ない。
ネーロ:……ダ、ダン…さん…?
ヴィオラ:(テレパシー)大丈夫、大丈夫だ。ゆっくり、ゆっくり息を吸って。
ネーロ:…(ゆっくりと息を吸う)
ヴィオラ:(テレパシー)止めて。
ネーロ:(息を止める)
ヴィオラ:(テレパシー)いい子だジーノ。今度はゆっくり、ゆっくり息を吐くんだ。
ネーロ:(ゆっくり息を吐く)
ヴィオラ:(テレパシー)…よし、よく頑張ったなジーノ。ほら、もう大丈夫だ。
ネーロ:…大丈、夫…?もう、大丈夫…。
ジャッロ:……。
ネーロ:…あれ、ジャッロ君?く、熊は…?
ジャッロ:!良かったッス!ネーロ兄が正気に戻ったッス!
ネーロ:しょ、正気…?
ヴィオラ:(木から飛び降りる)ジャッロ、熊は何処へやったんだ?
ジャッロ:山頂に連れてった後、すぐ戻って来たッス!今頃熊も思考停止して大人しくなってるッスよ!
ネーロ:……。
ジャッロ:?どしたんスかネーロ兄?
ネーロ:…ごめんジャッロ君、僕情けないね…。
ジャッロ:え?
ヴィオラ:…本来ネーロは受付担当なんだ。そうなるのもしょうがない。
ジャッロ:そうッスよ!それに枝が折れちゃったのは、自分がちゃんと確認出来てなかったからッス。ごめんなさいッス…。
ネーロ:そうじゃなくて…ジャッロ君、熊に遭うのこれが初めてじゃないでしょ?
ジャッロ:えっ…。
ヴィオラ:!
ネーロ:僕以上に何度も怖い思いをしてきたんだ…新人だからって、この程度でビビってられない。ヴィオラさん!
ヴィオラ:ん?
ネーロ:どんな仕事でも頑張ります。だから、もう少しだけ指導をお願いします!
ネーロ:もっともっと強くなって…ジャッロ君やローザちゃんが危ない仕事をしなくて済むようになりたいんです!
ヴィオラ:……。
ジャッロ:(じーん)…ネ、ネーロ兄ぃ〜…。
ヴィオラ:(溜息)…分かったよ。それならさっさと、トラウマをなくすようにしないとな。
ネーロ:う…が、頑張ります…。
ジャッロ:トラウマ?…って、さっきの…?
ネーロ:た、大した事じゃないよ!ヴィオラさんのお陰で、最近ちょっとましになってきてるし!
ジャッロ:……。
0:パトカーのサイレンが鳴り響く
ヴィオラ:…やっと警察が来たか、おせぇっての…。
ネーロ:あ、僕誘導してきます!
ヴィオラ:ああ、頼む。
ジャッロ:…ヴィオラ兄。
ヴィオラ:ん?
ジャッロ:自分、別に死体ぐらい平気ッスよ?
ヴィオラ:!
ジャッロ:路地裏で知り合いがそうなってたの、たまに見てたッスし。
ヴィオラ:……。
ジャッロ:ネーロ兄だって、気を遣い過ぎだと思うッス。男のフリまでして強がらなくても…。
ヴィオラ:カルロ。
ジャッロ:はいッス?
ヴィオラ:お前はもう『バンビーニ・ディ・ストラーダ』じゃないし、一人だけ特別な『スーペレロエ』でもない。
ジャッロ:…!
ヴィオラ:だから、こういう時ぐらいは俺達大人に任しとけばいいんだよ。
ジャッロ:(ちょっと泣きそうになる)…へへ、かっくいいッスね。
ヴィオラ:(ふっと笑う)
ジャッロ:ぐすっ…でもそーゆーのは、ネーロ兄にちゃんと自分の能力伝えてからのが説得力あるッス!
ヴィオラ:うっ…!?
ネーロ:ヴィオラさーん!ジャッロくーん!
ジャッロ:あ、ネーロ兄こっちッスー!
ヴィオラ:……。
ジャッロ:…あれ、ヴィオラ兄何で能力使ってるんスか?
ヴィオラ:(悪い顔)…丁度良いから、お前にも聞かせておこうと思ってな…。
ジャッロ:え…?
ネーロ:(心の声)いやぁ〜それにしても、やっぱりカルロ君の目は毎回しっかり見れないから残念だよなぁ〜。
ジャッロ:っ!?これ、ネーロ兄の…!?
ネーロ:(心の声)カルロ君の目って、トパーズみたいだよなぁ〜!いつも明るく元気で仲間想いだから、「純粋」とか「友情」って石言葉にもピッタリ似合う!
ジャッロ:(恥ずかしくなる)え、あ…う……。
ネーロ:(心の声)でも光った途端カルロ君自身が消えちゃうんだもんなぁ〜、タイミングが図れないんだよなぁ…。
ネーロ:…いや待てよ?どうせカルロ君の能力で帰るんだし、その時にあの子の目を見つめとけば――
ジャッロ:(遮る)わー待って待って!!やめて下さいッスネーロ兄ぃー!!
ネーロ:えっ!?え、何が!?僕何もしてないよ!?
ジャッロ:えっと…だから、その…!!
ヴィオラ:(テレパシー)…なぁカルロ、言えるか?この状況で俺の能力……。
ジャッロ:うぅ……無理ッスぅ〜!
ネーロ:だから何が!?ジャッロ君大丈夫!?
ジャッロ:大丈夫ッス!とりあえず依頼完了って事で、帰るッスよ!(ネーロとヴィオラの手を取る)
ネーロ:え!?ちょっ――
0:瞬間移動でジャッロ、ネーロ、ヴィオラが姿を消す。
ネーロ:(心の声)あぁ〜結局カルロ君の目見れてないぃ〜!!
0:――――(ここからは朗読不要のおまけ。イタリア語の解説です)――――
0:ジョイエリ デラ トライセイ=トライセイの宝石達
0:ネーロ=黒
0:ヴィオラ=紫
0:ジャッロ=黄
0:ヴェルデ=緑
0:アズーロ=青
0:ビアンコ=白
0:ドン=ボス
0:ローザ=ピンク
0:バンビーニ・ディ・ストラーダ=ストリートチルドレン
0:スーペレロエ=スーパーヒーロー
0:山の中、ネーロとヴィオラとジャッロが手を繋いだ状態で突如として現れる。
ジャッロ:ほい、到着ッスー!
ヴィオラ:よりによって山奥か…。シャベル持参って言われたところからして、此処を掘れって事だよな…。
ネーロ:あの…僕ヴェルデさんから何も聞かされてないんですけど…今日は何の捜索なんですか?
ジャッロ:んー、実は自分も聞かされてないんスよね…。
ネーロ:え?失(う)せモノ探しって、ジャッロ君の担当だよね?
ジャッロ:たまーにあるんスよねぇ…。
ネーロ:えぇ…。
ヴィオラ:ヴェルデなりの考えがあるんだよ。ほら、掘ってくぞ。
0:三人で地面を掘っていく。
ネーロ:うぇ、羽虫が口に入った…。
ジャッロ:何かめっちゃネーロ兄にたかってるッスよ?
ネーロ:え、もしかして僕…臭い!?
ジャッロ:いや、お日様の匂いッス。自分は好きッスよ!
ネーロ:それダニの死臭…。
ジャッロ:マジッスか!?
ヴィオラ:ほらほら、口じゃなくて手を動かせ。
ネーロ:はぁ…こんな事なら、メールの依頼内容もちゃんと確認しとくんだった…。
ジャッロ:え、メール以外でも依頼来るんスか?
ネーロ:めちゃくちゃ来るよ!電話やファックスならビアンコさんも手伝ってくれるけど、お客さんがわざわざうちに来る事だってしょっちゅうあるし!
ヴィオラ:ヴェルデはメールの依頼だけ見てるのか…。まぁ、確かにその方が効率が良いか。
ヴィオラ:俺達は割り振られた業務内容がスマホに送られて来るから、呼ばれない限りわざわざ事務所に戻る事もないしな。
ジャッロ:そうだったんスか…自分ずっと出突っ張りだから、知らなかったッス…。
ヴィオラ:ビアンコのサポートはあれど、昔はそれをヴェルデが一人で捌いてたんだ。
ヴィオラ:ネーロは受付事務ちゃんとこなせてるし、息抜き出来て助かるって言ってたよ。
ネーロ:え、あのヴェルデさんが!?嬉しいなぁ…いつも発砲されたり怒鳴られてばっかりだから。
ジャッロ:へへ、やっぱ実の弟には本音を話せるもんなんスかね!
ヴィオラ:え?あ、あー…多分
ジャッロ:…多分?
ヴィオラ:(気まずそうに目を逸らす)……。
ネーロ:いいなぁ…僕も兄弟は沢山居るけど、皆血の繋がりは無いし。
ジャッロ:自分もッス。でもここの人達は、もう皆家族みたいなもんッスよ!
ネーロ:うん…何だかんだ皆優しいよね。でも僕…まだドンやヴィオラさんの能力知らないし…。
ジャッロ:え、まだ知らないんスか!?ヴィオラ兄の能力は――
ヴィオラ:(遮る)わーーっ!!
ネーロ:(ジャッロと同時に)わぁっ!?
ジャッロ:(ネーロと同時に)わぁっ!?
ヴィオラ:(わざとらしく)あーごめん!変な影が見えたから熊かと思ってー!
ネーロ:え、熊!?そっか…確かに此処山奥だもんなぁ…。
ジャッロ:ヴィオラ兄も熊にビビる事あるんスね…。
ネーロ:…これ、僕よりもアズーロさんの方が良かったんじゃ…?
ジャッロ:アズーロ兄は強い分、自分よりも忙しいッスからねぇ〜。
ネーロ:(がっくり)そうだよね…。
ヴィオラ:……。
0:ヴィオラがジャッロにテレパシーを送る。
ヴィオラ:カルロ、カルロ!
ジャッロ:え、どしたんスか?何でテレパシー?
ヴィオラ:頼むカルロ、ジーノにはいつかちゃんと俺から話すから!俺の能力の事はまだ黙っててくれ…!
ジャッロ:え、指導役なのに?ひょっとしてダン兄、まだジーノ兄の事認めてないんスか!?
ヴィオラ:違う!けどほら、心の準備と言うか…キモがられたら傷付くと言うか…。
ジャッロ:黙ってる方がキモいと思うッス。
ヴィオラ:ド直球の正論やめろ!
ジャッロ:ジーノ兄が可哀想ッスよ!
ヴィオラ:分かってるよ!でもお前だって、その能力で銀行から金を盗った事弟や妹に言えた事あるか!?
ジャッロ:うっ……言え、ない…ッス…。
ネーロ:(心の声)…どうしたんだろ二人共、凄い顔で睨み合いながら掘ってるけど…。
ネーロ:(心の声)でもまたダンさんの目がアメジストみたいに光ってる!ふふ、眼福だなぁ〜♪
ヴィオラ:っ〜〜!!
ジャッロ:あれ、ヴィオラ兄?顔真っ赤ッスよ?
ネーロ:え、風邪ですか!?
ヴィオラ:いや、違う。大丈夫だから。
ネーロ:そ、そうですか…。(ここから心の声)…でも確かに、掘ってく度に何か臭うし虫が増えてきたし…気分が悪くなるのは分かるな…。一体何が埋まってるんだろう…。
0:シャベルが何かに当たる。
ネーロ:!何か固いのが当たりました!
ヴィオラ:じゃあ、こっからは手掘りだな。
ネーロ:え、こんな臭うのに…!?
ヴィオラ:傷付ける訳にはいかないからな。ジャッロ、お前は周りに人が来ないか見ててくれ。
ジャッロ:あー…了解ッス!
ネーロ:…はぁ、こうなったら一気に掘った方がいいですよね!
ヴィオラ:え、それはやめた方が…!!
ネーロ:あ、何か出てき…た…?
ネーロ:う…うわあむぐっ!?(口を塞がれる)
ヴィオラ:(小声)大声を出すな!ジャッロがこいつを見ちまう!
ネーロ:っ…!!
ジャッロ:え?何か言ったッスかー?
ヴィオラ:目標が出て来たんだ。完全に掘り出すまで見張りを続けてくれ!
ジャッロ:…了解ッスー!
ネーロ:っ…ヴィ、ヴィオラさん…これ、け、けけ、警察に言った方が…。
ヴィオラ:とっくにビアンコが通報してる。あと10分もすれば来るから、一先ず完全に掘り出して布でも被せてやってくれ。
ネーロ:…ひょっとして、ジャッロ君が依頼内容を知らされてないのは…。
ヴィオラ:…もう15になるとは言え、子供に見せていいものじゃない。
ネーロ:…そう、ですよね。
ヴィオラ:…ごめん。
ネーロ:え?
ヴィオラ:今回の依頼、ネーロにも黙ってるようにヴェルデに言われたんだ。
ネーロ:え…!?
ヴィオラ:「こんなのでビビってるようじゃ、うちの事務所には置いておけない」だとさ。
ヴィオラ:笑えないよな。そもそもネーロは受付担当だってのに…。
ネーロ:…そうだったんですね。…うぅ、これで全身出ました…よね?
ヴィオラ:ああ、これだけ掘り出せば十分だろう。あいつに見えないように、布を被せてやってくれ。
ネーロ:分かりました…。
ヴィオラ:…ジャッロにも、本当はこんな仕事させたくないんだ。でも失せモノ探しなんて、追跡能力のあるあいつ以外に適任も居ない。
ネーロ:…そう、ですね。
ヴィオラ:俺は今も願って止まないよ…。こんな馬鹿げた能力、さっさと全部消えちまえって…!
ネーロ:ヴィオラさん、それは…!
ジャッロ:二人とも逃げるッス!!
ヴィオラ:うわっ!?
ネーロ:え、ジャッロ君!?
0:ジャッロが咄嗟に二人に飛びつき、木の上に瞬間移動する。
ネーロ:わわっ!?き、木の上…!?
ヴィオラ:ジャッロ、どうした!?
ジャッロ:静かに!あれを見るッス!
ネーロ:あれって……熊…!?
ヴィオラ:さっき騒ぎ立てちまったからな…危ないところだったのか。
ジャッロ:でもこのままじゃ、掘り出したやつが食われちまうかもッス…。
ヴィオラ:大丈夫だ。俺が誘導する。(能力を使う)
ネーロ:(心の声)わ、綺麗…。
ヴィオラ:っ…。
ネーロ:(恍惚な溜息)…んっ!?
ジャッロ:あれ、ネーロ兄?
ヴィオラ:ん?どうした?何か、ちょっとずつ下がってるような…。
ネーロ:……ジャッロ君…。
ジャッロ:え?
ネーロ:僕の足場の枝、腐ってるかも…。
ジャッロ:えっ!?
ヴィオラ:マズいっ…捕まれ!
ネーロ:は、はい(ヴィオラの手を取る前に足場が折れる)わあああっ!!
ヴィオラ:ネーロ!!(ジャッロと同時に)
ジャッロ:ネーロ兄!!(ヴィオラと同時に)
ネーロ:い、たた…(巨大な熊が目前に迫る)あ…あっ……。
ヴィオラ:クソ、すぐにあいつの脳内を撹乱させてっ…!
ジャッロ:ダメッス!熊が暴れて逆に危ないッス!自分が行くッス!!(能力を使う)
ヴィオラ:あ、おいジャッロ!!
ネーロ:…嫌だ、来るな…嫌だっ…!!
0:熊がネーロを襲おうとした途端、ジャッロが熊の背後に現れ羽交締めにする。
ジャッロ:ネーロ兄に、手ぇ出すなッス!!
ヴィオラ:ジャッロ!!
0:ジャッロが能力を使い、熊もろとも姿を消す。
ヴィオラ:…あいつ、無茶しやがってっ…!そうだ、ネー、ロ…!?
ネーロ:(過呼吸レベルの荒い息)
ヴィオラ:これは…!
ジャッロ:(帰ってくる)ネーロ兄、無事ッスか!?
ヴィオラ:(テレパシー)近付くなジャッロ!!
ジャッロ:えっ…!?
ヴィオラ:(テレパシー)ネーロは今錯乱してる。落ち着かせるから、そこでジッとしてろ!
ジャッロ:錯乱、って…。
ネーロ:(過呼吸レベルの荒い息)
ジャッロ:え…ネーロ、兄…?
ヴィオラ:……。(テレパシー)ジーノ…ジーノ!
ネーロ:ひっ…!!
ヴィオラ:(テレパシー)大丈夫だジーノ、怖いヤツはもう居ない。お前を襲うヤツはもう居ない。
ネーロ:……ダ、ダン…さん…?
ヴィオラ:(テレパシー)大丈夫、大丈夫だ。ゆっくり、ゆっくり息を吸って。
ネーロ:…(ゆっくりと息を吸う)
ヴィオラ:(テレパシー)止めて。
ネーロ:(息を止める)
ヴィオラ:(テレパシー)いい子だジーノ。今度はゆっくり、ゆっくり息を吐くんだ。
ネーロ:(ゆっくり息を吐く)
ヴィオラ:(テレパシー)…よし、よく頑張ったなジーノ。ほら、もう大丈夫だ。
ネーロ:…大丈、夫…?もう、大丈夫…。
ジャッロ:……。
ネーロ:…あれ、ジャッロ君?く、熊は…?
ジャッロ:!良かったッス!ネーロ兄が正気に戻ったッス!
ネーロ:しょ、正気…?
ヴィオラ:(木から飛び降りる)ジャッロ、熊は何処へやったんだ?
ジャッロ:山頂に連れてった後、すぐ戻って来たッス!今頃熊も思考停止して大人しくなってるッスよ!
ネーロ:……。
ジャッロ:?どしたんスかネーロ兄?
ネーロ:…ごめんジャッロ君、僕情けないね…。
ジャッロ:え?
ヴィオラ:…本来ネーロは受付担当なんだ。そうなるのもしょうがない。
ジャッロ:そうッスよ!それに枝が折れちゃったのは、自分がちゃんと確認出来てなかったからッス。ごめんなさいッス…。
ネーロ:そうじゃなくて…ジャッロ君、熊に遭うのこれが初めてじゃないでしょ?
ジャッロ:えっ…。
ヴィオラ:!
ネーロ:僕以上に何度も怖い思いをしてきたんだ…新人だからって、この程度でビビってられない。ヴィオラさん!
ヴィオラ:ん?
ネーロ:どんな仕事でも頑張ります。だから、もう少しだけ指導をお願いします!
ネーロ:もっともっと強くなって…ジャッロ君やローザちゃんが危ない仕事をしなくて済むようになりたいんです!
ヴィオラ:……。
ジャッロ:(じーん)…ネ、ネーロ兄ぃ〜…。
ヴィオラ:(溜息)…分かったよ。それならさっさと、トラウマをなくすようにしないとな。
ネーロ:う…が、頑張ります…。
ジャッロ:トラウマ?…って、さっきの…?
ネーロ:た、大した事じゃないよ!ヴィオラさんのお陰で、最近ちょっとましになってきてるし!
ジャッロ:……。
0:パトカーのサイレンが鳴り響く
ヴィオラ:…やっと警察が来たか、おせぇっての…。
ネーロ:あ、僕誘導してきます!
ヴィオラ:ああ、頼む。
ジャッロ:…ヴィオラ兄。
ヴィオラ:ん?
ジャッロ:自分、別に死体ぐらい平気ッスよ?
ヴィオラ:!
ジャッロ:路地裏で知り合いがそうなってたの、たまに見てたッスし。
ヴィオラ:……。
ジャッロ:ネーロ兄だって、気を遣い過ぎだと思うッス。男のフリまでして強がらなくても…。
ヴィオラ:カルロ。
ジャッロ:はいッス?
ヴィオラ:お前はもう『バンビーニ・ディ・ストラーダ』じゃないし、一人だけ特別な『スーペレロエ』でもない。
ジャッロ:…!
ヴィオラ:だから、こういう時ぐらいは俺達大人に任しとけばいいんだよ。
ジャッロ:(ちょっと泣きそうになる)…へへ、かっくいいッスね。
ヴィオラ:(ふっと笑う)
ジャッロ:ぐすっ…でもそーゆーのは、ネーロ兄にちゃんと自分の能力伝えてからのが説得力あるッス!
ヴィオラ:うっ…!?
ネーロ:ヴィオラさーん!ジャッロくーん!
ジャッロ:あ、ネーロ兄こっちッスー!
ヴィオラ:……。
ジャッロ:…あれ、ヴィオラ兄何で能力使ってるんスか?
ヴィオラ:(悪い顔)…丁度良いから、お前にも聞かせておこうと思ってな…。
ジャッロ:え…?
ネーロ:(心の声)いやぁ〜それにしても、やっぱりカルロ君の目は毎回しっかり見れないから残念だよなぁ〜。
ジャッロ:っ!?これ、ネーロ兄の…!?
ネーロ:(心の声)カルロ君の目って、トパーズみたいだよなぁ〜!いつも明るく元気で仲間想いだから、「純粋」とか「友情」って石言葉にもピッタリ似合う!
ジャッロ:(恥ずかしくなる)え、あ…う……。
ネーロ:(心の声)でも光った途端カルロ君自身が消えちゃうんだもんなぁ〜、タイミングが図れないんだよなぁ…。
ネーロ:…いや待てよ?どうせカルロ君の能力で帰るんだし、その時にあの子の目を見つめとけば――
ジャッロ:(遮る)わー待って待って!!やめて下さいッスネーロ兄ぃー!!
ネーロ:えっ!?え、何が!?僕何もしてないよ!?
ジャッロ:えっと…だから、その…!!
ヴィオラ:(テレパシー)…なぁカルロ、言えるか?この状況で俺の能力……。
ジャッロ:うぅ……無理ッスぅ〜!
ネーロ:だから何が!?ジャッロ君大丈夫!?
ジャッロ:大丈夫ッス!とりあえず依頼完了って事で、帰るッスよ!(ネーロとヴィオラの手を取る)
ネーロ:え!?ちょっ――
0:瞬間移動でジャッロ、ネーロ、ヴィオラが姿を消す。
ネーロ:(心の声)あぁ〜結局カルロ君の目見れてないぃ〜!!
0:――――(ここからは朗読不要のおまけ。イタリア語の解説です)――――
0:ジョイエリ デラ トライセイ=トライセイの宝石達
0:ネーロ=黒
0:ヴィオラ=紫
0:ジャッロ=黄
0:ヴェルデ=緑
0:アズーロ=青
0:ビアンコ=白
0:ドン=ボス
0:ローザ=ピンク
0:バンビーニ・ディ・ストラーダ=ストリートチルドレン
0:スーペレロエ=スーパーヒーロー