台本概要

 235 views 

タイトル 深夜のドライブ【BL】
作者名 さもんぬ
ジャンル ホラー
演者人数 2人用台本(男2)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ※BL(ボーイズラブ)表現がございます。(キスシーン及び性描写は一切なし)
※どの役も声を荒げるセリフがございます。
※暴力的、残酷な表現が少々ございます。
※一人称、口調等の微調整はご自由に。

 235 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
田中 60 大学生。 寡黙な優等生だが、今作では割と饒舌。
鈴木 59 大学生。 表面上は明るくてひょうきん。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
深夜のドライブ 鈴木:いやあ〜!こいつが前に言ってた、絶賛ローン返済中の自慢の愛車か〜! 鈴木:見た目スゲエカッコイイし、座り心地いい感じで高そ〜! 鈴木:オレ、車のこと全ッ然わかんね〜けど!ハハハ! 田中:…………… 鈴木:ドコ連れてってくれんの? 鈴木:オレ海行きてえな〜! 鈴木:今からだと、着く頃にちょうど 日の出も見れんじゃね? 田中:…………… 鈴木:なあ〜…まだ怒ってんの? 仲直りしよ〜ぜ? 鈴木:オレ、めっちゃ謝ったし、お前だってオレにさんざん…… 田中:……………んで 鈴木:ふぇ? 田中:なんでだよッ!! 鈴木:ウワア!!ごめんごめんごめんッてえ!!! 田中:なんでお前が謝ってんだよ!お前は何にも悪くねえだろ!! 田中:何が「ごめん」だ、ふざけんな!! 鈴木:……ハハ、お前……そんなデケエ声出したりすんだな…… 鈴木:あ〜ビックリした……ふふッ 田中:……何笑ってんだよ 鈴木:オレがヘラヘラしてんのなんて、いつもの事だろ〜? 田中:……そうだな。……そう、だった。 鈴木:田中の方は珍しい…ってか、意外だよな。 鈴木:今みたく、人前で感情任せに怒鳴ったり、不機嫌になったりさ。 田中:……見損なったか? 鈴木:全然?むしろ親近感湧いたっつーか、安心した。 田中:いつも無口で、仏頂面のロボットみてえな不気味な男に、人間味があって良かったって? 鈴木:おいおい。卑屈過ぎるとモテねえぞ〜? 鈴木:「寡黙でクールでミステリアス」って言っとけよ。 田中:……事実だろ。 鈴木:嬉しかったぜ? 鈴木:「田中ってオレのことどうでも良くて、オレがいなくなったりとかしても平気なのかもな〜」って、思ってたからさ。 鈴木:……結構、大事に思ってくれてたんだな〜って。 田中:本当にそう思ってたら……殴ったりしねえだろ。 田中:俺は、お前が思ってるような奴じゃない……自分の事しか考えてない、クソ野郎だ。 鈴木:もしそうでも、嬉しいよ。 鈴木:泣いて謝ってたろ、お前。 田中:殴った後、泣きながら相手に縋って許しを乞う奴なんて、典型的なDV男じゃねえか。 田中:俺も最悪だけど、お前も大概だぞ。 鈴木:いいじゃん!お互いに最悪でいいコンビって事で。 田中:痛えし、苦しかったろ……ごめんな…… 田中:謝って済む事じゃないけど……… 鈴木:あーッもう!お前ばっか加害者ヅラすんなよ。 鈴木:ズルいぞ? 田中:ズr……は? 鈴木:お前は、オレにまんまと踊らされたんだよ。 鈴木:「計画通り」ってヤツ。 田中:……!?なんだよ、それ……どういう…… 鈴木:「斉藤ちゃんに告白してOK貰った」って話。 鈴木:アレ、全部嘘だよ。斉藤とは一回も口利いたことない。 田中:……………え……………? 鈴木:めちゃくちゃ大変だったんだぜ〜? 鈴木:嘘吐く時、お前にバレねえように、目泳いだり、やたら髪触ったり、声上擦る癖直すの! 鈴木:オレ、俳優とか詐欺師の素質あるかも…… 田中:ふ……ざけんな馬鹿野郎ッ!! 鈴木:どわああああ!!い、怒りは最もだが田中!! 鈴木:前!前見ろ前ーーーッ!! 鈴木:それか一時停止ーーーーーーーーーッッッ!! 田中:…………ッ…………!! 0:(田中、急ブレーキののち、道路端に一時停車する) 鈴木:はあ、はあ……ハハ、無茶するなあ〜お前! 田中:(鈴木を睨む)………ッ! 鈴木:分かったろ、田中。 鈴木:お前は「被害者」だって。 田中:……んでだよ…… 田中:なんで……そんな嘘……! 鈴木:波風立てたかったんだよ。 鈴木:何でもいいから、お前の心かき乱して……田中の、色んな表情拝んで。 鈴木:……そうしたら、死ぬつもりだった。 田中:………は………? 鈴木:そうやって死ねば、オレは最高に幸せな状態のままあの世に逝けるし、 鈴木:あわよくば、お前にとって一生忘れられねえ、特別な存在になれんじゃねーかって、思ったんだ。 田中:…………かよ 鈴木:……田中? 田中:満足かよ? 田中:そんな…くだらねえ事の為に。 田中:嘘ついて、殴られて、殺されて、車のトランクに押し込まれて。 田中:そんな終わりの一体どこが「最高の幸せ」なんだよ?嘘吐いてんじゃねーよ! 田中:本当は後悔してんだろ…? 田中:だから今こうやって化けて出て、助手席に座ってんだろ?なあ!? 鈴木:殺されてねえよ。 田中:……え? 鈴木:お前の貧弱パンチ1発で死ぬほどヤワじゃねえっての。 鈴木:オレが死んだのは、あらかじめ自分で飲んでた毒が回ったからだ。 田中:……は? 鈴木:言ったろ。はじめから死ぬつもりだったって。 鈴木:タイミング良すぎて、ややこしくさせちまったけど。 田中:………な 鈴木:大丈夫だって!お前が証拠隠滅罪〜とか、死体遺棄罪〜みたいなのになんねえように、 鈴木:お前宛てに遺書書いて、郵便受けに入れといたんだ。 鈴木:「お前の目の前で死ぬから、オレの死体を始末してくれ」って。 鈴木:警察に自首するにしても、見つかるにしても、それ渡して適当に話合わせておいてくれよ。 鈴木:殴った事とか追求されたら、「錯乱状態のオレに刃物突き付けられて必死で抵抗しました〜」みたいな感じでさ? 鈴木:バチバチに「オレ病んでます!」的な日記も残してるし、懐にナイフも仕舞ってあるし! 鈴木:お前は頭いいから、きっと上手くやれて、執行猶予とか………… 田中:聞いてねえんだよそんな事! 田中:後悔してねえのかって聞いてんだよ!! 鈴木:………… 田中:………… 鈴木:………後悔は………1コしてる。 田中:………… 鈴木:オレさ、お前の笑った顔が 一番見たかったんだけど……無理そうだから。 田中:…………! 鈴木:それ以外は、何も後悔してない。 鈴木:お前や世間にとってはくだらない事でも……オレには重要で、必要な事だったんだ。 田中:俺を騙して…自殺に巻き込んでおいて、「後悔してない」って…? 鈴木:うん。してない。 田中:………… 鈴木:な?オレ、全然「何にも悪くなくない」だろ? 田中:…………ああ………俺ほどじゃないけどな。 鈴木:ん? 田中:俺は、お前が倒れて動かなくなった時、救急車も、誰も呼ばなかった。 田中:助けられたかもしれないのに。 鈴木:助かんねーよ。助かっても困るし。 田中:お前が助かっても、死んでも。「鈴木をとられちまう」って思った。 田中:……「絶対誰にも渡したくない。見せたくないって」…… 鈴木:………ん? 鈴木:あれ……? 鈴木:田中。お前が好きなのって斉藤だよな……? 田中:違う。 鈴木:え? 田中:斉藤の事をよく見てたのは、「俺もあんな風に生まれてたら、鈴木と恋人になれたかも」って、 田中:羨ましくて……つい目で追っちまってたからで、そういう感情は一切ねえよ。 田中:お前に「斉藤に気があるんだろ」って聞かれた時「そうだ」って答えたのは、 田中:否定して誤魔化し続けるの面倒だったし、本音言ったら拒絶されると思ったから……… 鈴木:いや、なんでだよ…嫌うわけねーだろ、言えよ! 田中:言えるワケねーだろ! 田中:こちとら中学の頃好きな子に「笑顔と喋り方がキモい」ってこっぴどく振られて以降、 田中:クラスメイト全員から陰湿な嫌がらせ受けまくって不登校になったの未だにトラウマなんだぞ! 鈴木:は!? 鈴木:田中の笑顔は世界一可愛いだろーが!!そんな目え腐ってる奴と一緒にすんなって!! 田中:お前俺の笑ったとこ見た事ねーじゃねえか!! 鈴木:ない!見たい!見して!! 田中:やだよ! 鈴木:なんで! 田中:こんな状況で笑えるかよ!バカ!…………それに 鈴木:それに? 田中:見たら……幻滅するか、気が済んで、消えちまいそうだ。お前。 田中:いやだ。嫌われたくない……離れたく、ねえよ。 鈴木:……… 鈴木:幻滅なんかしねえし、お祓いされたって成仏しねえ。絶対。 鈴木:一生取り憑いてやるよ! 田中:(泣きながら笑う)………ふっ 鈴木:……! 田中:……あ 鈴木:…スゲーカワイイじゃん。うそつき。 田中:鈴木……!お前、体……透けて……! 鈴木:やっぱ、オレ、死んで良かったわ。 鈴木:ありがとな、田中。……それと、ごめん。 田中:鈴木!行くなよ鈴木!鈴木……ッ!! 0:(鈴木、完全に消失する) 田中:…………… 田中:……………海………か 0:(田中、決意したように車を走らせる) 0:(数時間後、田中の車が海岸に到着、停車する) 0:(田中、下車し、車のトランクを開ける) 0:(トランクの中には鈴木が横たわっている) 田中:鈴木。海、着いたぞ。 0:(田中、鈴木を抱きあげる) 鈴木:………う 田中:! 田中:………ふ、ははっ……… 0:(田中、鈴木を助手席に座らせる) 0:(田中、運転席に戻る途中、鈴木が所持していたであろうナイフが落ちている事に気付き、拾う) 0:(鈴木、薄く目を開け、運転席の田中を見る) 鈴木:………たな、か………? 田中:おはよう、鈴木。 田中:今、ちょうど日の出だ。一緒に見よう。 鈴木:………おれ………なんで…………… 田中:こっちが聞きてえよ。 田中:多分だけど、お前、飲むモン自体とか、分量間違えたんじゃねえのか? 田中:ほら、お前って結構ツメ甘いから。 鈴木:………そ、………っかあ……………はは、そう、かも。 0:(太陽の光が2人を照らす) 鈴木:………きれい、だな。 田中:うん。………綺麗だ。すごく。 鈴木:………ん……… 田中:鈴木。 田中:お前は否定するけどさ、お前は凄く良い奴だし、魅力的だよ。 田中:お前さえその気になったら、友達も恋人も家族も、いくらだって作れる。 田中:生きてたら、この先、お前はきっと沢山の人間に愛されて……… 田中:俺なんていなくても、幸せになれる。 鈴木:はは……買い被りすぎ……てか、それ、こっちのセリフだって…… 鈴木:オレ、めちゃくちゃ偏屈でキャパ狭いんだぜ……? 鈴木:一生、お前だけだよ。こんな風に、一緒に、いられんの。 田中:……ありがとう、鈴木。 鈴木:………たなか……オレ……… 田中:でも、信じない。 0:(田中、鈴木の胸に深くナイフを突き立てる) 鈴木:……ッ……! 田中:鈴木。 田中:怖いけど…スゲエ嫌だけど……俺のこと嫌いでいい。 田中:嫌ってくれ。恨んで、憎んで……化けて出て…… 田中:何回生まれ変わっても取り憑いて呪い殺し続けて……… 田中:ずっと側に。一緒に……いてくれよ……な? 鈴木:…………うん。 鈴木:わか った………絶対、はなれねえ……から、もう、泣くな って…………… 田中:……鈴木……すずき……ごめん……ごめん………ごめ………… 鈴木:たなか……ありがとな……… 鈴木:好き だよ…… 田中:……っ おれ、も…………… 鈴木:泣き顔、も、かわいい……けど、わらった、かおも……… 鈴木:もっと、いっぱい、みせて、くれよな………… 田中:……………ッ 鈴木:これ から、も……… 鈴木:よろしく………な……………… 0:(鈴木、意識を失う) 0:(田中、鈴木の体にそっとブランケットを掛け、しばらく朝日を見つめた後決意したように涙を拭う) 田中:……そろそろ帰ろうか。 田中:末長くよろしくな、鈴木。

深夜のドライブ 鈴木:いやあ〜!こいつが前に言ってた、絶賛ローン返済中の自慢の愛車か〜! 鈴木:見た目スゲエカッコイイし、座り心地いい感じで高そ〜! 鈴木:オレ、車のこと全ッ然わかんね〜けど!ハハハ! 田中:…………… 鈴木:ドコ連れてってくれんの? 鈴木:オレ海行きてえな〜! 鈴木:今からだと、着く頃にちょうど 日の出も見れんじゃね? 田中:…………… 鈴木:なあ〜…まだ怒ってんの? 仲直りしよ〜ぜ? 鈴木:オレ、めっちゃ謝ったし、お前だってオレにさんざん…… 田中:……………んで 鈴木:ふぇ? 田中:なんでだよッ!! 鈴木:ウワア!!ごめんごめんごめんッてえ!!! 田中:なんでお前が謝ってんだよ!お前は何にも悪くねえだろ!! 田中:何が「ごめん」だ、ふざけんな!! 鈴木:……ハハ、お前……そんなデケエ声出したりすんだな…… 鈴木:あ〜ビックリした……ふふッ 田中:……何笑ってんだよ 鈴木:オレがヘラヘラしてんのなんて、いつもの事だろ〜? 田中:……そうだな。……そう、だった。 鈴木:田中の方は珍しい…ってか、意外だよな。 鈴木:今みたく、人前で感情任せに怒鳴ったり、不機嫌になったりさ。 田中:……見損なったか? 鈴木:全然?むしろ親近感湧いたっつーか、安心した。 田中:いつも無口で、仏頂面のロボットみてえな不気味な男に、人間味があって良かったって? 鈴木:おいおい。卑屈過ぎるとモテねえぞ〜? 鈴木:「寡黙でクールでミステリアス」って言っとけよ。 田中:……事実だろ。 鈴木:嬉しかったぜ? 鈴木:「田中ってオレのことどうでも良くて、オレがいなくなったりとかしても平気なのかもな〜」って、思ってたからさ。 鈴木:……結構、大事に思ってくれてたんだな〜って。 田中:本当にそう思ってたら……殴ったりしねえだろ。 田中:俺は、お前が思ってるような奴じゃない……自分の事しか考えてない、クソ野郎だ。 鈴木:もしそうでも、嬉しいよ。 鈴木:泣いて謝ってたろ、お前。 田中:殴った後、泣きながら相手に縋って許しを乞う奴なんて、典型的なDV男じゃねえか。 田中:俺も最悪だけど、お前も大概だぞ。 鈴木:いいじゃん!お互いに最悪でいいコンビって事で。 田中:痛えし、苦しかったろ……ごめんな…… 田中:謝って済む事じゃないけど……… 鈴木:あーッもう!お前ばっか加害者ヅラすんなよ。 鈴木:ズルいぞ? 田中:ズr……は? 鈴木:お前は、オレにまんまと踊らされたんだよ。 鈴木:「計画通り」ってヤツ。 田中:……!?なんだよ、それ……どういう…… 鈴木:「斉藤ちゃんに告白してOK貰った」って話。 鈴木:アレ、全部嘘だよ。斉藤とは一回も口利いたことない。 田中:……………え……………? 鈴木:めちゃくちゃ大変だったんだぜ〜? 鈴木:嘘吐く時、お前にバレねえように、目泳いだり、やたら髪触ったり、声上擦る癖直すの! 鈴木:オレ、俳優とか詐欺師の素質あるかも…… 田中:ふ……ざけんな馬鹿野郎ッ!! 鈴木:どわああああ!!い、怒りは最もだが田中!! 鈴木:前!前見ろ前ーーーッ!! 鈴木:それか一時停止ーーーーーーーーーッッッ!! 田中:…………ッ…………!! 0:(田中、急ブレーキののち、道路端に一時停車する) 鈴木:はあ、はあ……ハハ、無茶するなあ〜お前! 田中:(鈴木を睨む)………ッ! 鈴木:分かったろ、田中。 鈴木:お前は「被害者」だって。 田中:……んでだよ…… 田中:なんで……そんな嘘……! 鈴木:波風立てたかったんだよ。 鈴木:何でもいいから、お前の心かき乱して……田中の、色んな表情拝んで。 鈴木:……そうしたら、死ぬつもりだった。 田中:………は………? 鈴木:そうやって死ねば、オレは最高に幸せな状態のままあの世に逝けるし、 鈴木:あわよくば、お前にとって一生忘れられねえ、特別な存在になれんじゃねーかって、思ったんだ。 田中:…………かよ 鈴木:……田中? 田中:満足かよ? 田中:そんな…くだらねえ事の為に。 田中:嘘ついて、殴られて、殺されて、車のトランクに押し込まれて。 田中:そんな終わりの一体どこが「最高の幸せ」なんだよ?嘘吐いてんじゃねーよ! 田中:本当は後悔してんだろ…? 田中:だから今こうやって化けて出て、助手席に座ってんだろ?なあ!? 鈴木:殺されてねえよ。 田中:……え? 鈴木:お前の貧弱パンチ1発で死ぬほどヤワじゃねえっての。 鈴木:オレが死んだのは、あらかじめ自分で飲んでた毒が回ったからだ。 田中:……は? 鈴木:言ったろ。はじめから死ぬつもりだったって。 鈴木:タイミング良すぎて、ややこしくさせちまったけど。 田中:………な 鈴木:大丈夫だって!お前が証拠隠滅罪〜とか、死体遺棄罪〜みたいなのになんねえように、 鈴木:お前宛てに遺書書いて、郵便受けに入れといたんだ。 鈴木:「お前の目の前で死ぬから、オレの死体を始末してくれ」って。 鈴木:警察に自首するにしても、見つかるにしても、それ渡して適当に話合わせておいてくれよ。 鈴木:殴った事とか追求されたら、「錯乱状態のオレに刃物突き付けられて必死で抵抗しました〜」みたいな感じでさ? 鈴木:バチバチに「オレ病んでます!」的な日記も残してるし、懐にナイフも仕舞ってあるし! 鈴木:お前は頭いいから、きっと上手くやれて、執行猶予とか………… 田中:聞いてねえんだよそんな事! 田中:後悔してねえのかって聞いてんだよ!! 鈴木:………… 田中:………… 鈴木:………後悔は………1コしてる。 田中:………… 鈴木:オレさ、お前の笑った顔が 一番見たかったんだけど……無理そうだから。 田中:…………! 鈴木:それ以外は、何も後悔してない。 鈴木:お前や世間にとってはくだらない事でも……オレには重要で、必要な事だったんだ。 田中:俺を騙して…自殺に巻き込んでおいて、「後悔してない」って…? 鈴木:うん。してない。 田中:………… 鈴木:な?オレ、全然「何にも悪くなくない」だろ? 田中:…………ああ………俺ほどじゃないけどな。 鈴木:ん? 田中:俺は、お前が倒れて動かなくなった時、救急車も、誰も呼ばなかった。 田中:助けられたかもしれないのに。 鈴木:助かんねーよ。助かっても困るし。 田中:お前が助かっても、死んでも。「鈴木をとられちまう」って思った。 田中:……「絶対誰にも渡したくない。見せたくないって」…… 鈴木:………ん? 鈴木:あれ……? 鈴木:田中。お前が好きなのって斉藤だよな……? 田中:違う。 鈴木:え? 田中:斉藤の事をよく見てたのは、「俺もあんな風に生まれてたら、鈴木と恋人になれたかも」って、 田中:羨ましくて……つい目で追っちまってたからで、そういう感情は一切ねえよ。 田中:お前に「斉藤に気があるんだろ」って聞かれた時「そうだ」って答えたのは、 田中:否定して誤魔化し続けるの面倒だったし、本音言ったら拒絶されると思ったから……… 鈴木:いや、なんでだよ…嫌うわけねーだろ、言えよ! 田中:言えるワケねーだろ! 田中:こちとら中学の頃好きな子に「笑顔と喋り方がキモい」ってこっぴどく振られて以降、 田中:クラスメイト全員から陰湿な嫌がらせ受けまくって不登校になったの未だにトラウマなんだぞ! 鈴木:は!? 鈴木:田中の笑顔は世界一可愛いだろーが!!そんな目え腐ってる奴と一緒にすんなって!! 田中:お前俺の笑ったとこ見た事ねーじゃねえか!! 鈴木:ない!見たい!見して!! 田中:やだよ! 鈴木:なんで! 田中:こんな状況で笑えるかよ!バカ!…………それに 鈴木:それに? 田中:見たら……幻滅するか、気が済んで、消えちまいそうだ。お前。 田中:いやだ。嫌われたくない……離れたく、ねえよ。 鈴木:……… 鈴木:幻滅なんかしねえし、お祓いされたって成仏しねえ。絶対。 鈴木:一生取り憑いてやるよ! 田中:(泣きながら笑う)………ふっ 鈴木:……! 田中:……あ 鈴木:…スゲーカワイイじゃん。うそつき。 田中:鈴木……!お前、体……透けて……! 鈴木:やっぱ、オレ、死んで良かったわ。 鈴木:ありがとな、田中。……それと、ごめん。 田中:鈴木!行くなよ鈴木!鈴木……ッ!! 0:(鈴木、完全に消失する) 田中:…………… 田中:……………海………か 0:(田中、決意したように車を走らせる) 0:(数時間後、田中の車が海岸に到着、停車する) 0:(田中、下車し、車のトランクを開ける) 0:(トランクの中には鈴木が横たわっている) 田中:鈴木。海、着いたぞ。 0:(田中、鈴木を抱きあげる) 鈴木:………う 田中:! 田中:………ふ、ははっ……… 0:(田中、鈴木を助手席に座らせる) 0:(田中、運転席に戻る途中、鈴木が所持していたであろうナイフが落ちている事に気付き、拾う) 0:(鈴木、薄く目を開け、運転席の田中を見る) 鈴木:………たな、か………? 田中:おはよう、鈴木。 田中:今、ちょうど日の出だ。一緒に見よう。 鈴木:………おれ………なんで…………… 田中:こっちが聞きてえよ。 田中:多分だけど、お前、飲むモン自体とか、分量間違えたんじゃねえのか? 田中:ほら、お前って結構ツメ甘いから。 鈴木:………そ、………っかあ……………はは、そう、かも。 0:(太陽の光が2人を照らす) 鈴木:………きれい、だな。 田中:うん。………綺麗だ。すごく。 鈴木:………ん……… 田中:鈴木。 田中:お前は否定するけどさ、お前は凄く良い奴だし、魅力的だよ。 田中:お前さえその気になったら、友達も恋人も家族も、いくらだって作れる。 田中:生きてたら、この先、お前はきっと沢山の人間に愛されて……… 田中:俺なんていなくても、幸せになれる。 鈴木:はは……買い被りすぎ……てか、それ、こっちのセリフだって…… 鈴木:オレ、めちゃくちゃ偏屈でキャパ狭いんだぜ……? 鈴木:一生、お前だけだよ。こんな風に、一緒に、いられんの。 田中:……ありがとう、鈴木。 鈴木:………たなか……オレ……… 田中:でも、信じない。 0:(田中、鈴木の胸に深くナイフを突き立てる) 鈴木:……ッ……! 田中:鈴木。 田中:怖いけど…スゲエ嫌だけど……俺のこと嫌いでいい。 田中:嫌ってくれ。恨んで、憎んで……化けて出て…… 田中:何回生まれ変わっても取り憑いて呪い殺し続けて……… 田中:ずっと側に。一緒に……いてくれよ……な? 鈴木:…………うん。 鈴木:わか った………絶対、はなれねえ……から、もう、泣くな って…………… 田中:……鈴木……すずき……ごめん……ごめん………ごめ………… 鈴木:たなか……ありがとな……… 鈴木:好き だよ…… 田中:……っ おれ、も…………… 鈴木:泣き顔、も、かわいい……けど、わらった、かおも……… 鈴木:もっと、いっぱい、みせて、くれよな………… 田中:……………ッ 鈴木:これ から、も……… 鈴木:よろしく………な……………… 0:(鈴木、意識を失う) 0:(田中、鈴木の体にそっとブランケットを掛け、しばらく朝日を見つめた後決意したように涙を拭う) 田中:……そろそろ帰ろうか。 田中:末長くよろしくな、鈴木。