台本概要

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タイトル 灼炎の焔
作者名 あまくケイ  (@amak0331)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男3、女2)
時間 60 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 その昔、神帝(しんてい)国が支配するこの世界
1人の若者、そこにあらわり。
灼炎の焔、今日も国を盗りにゆく

5人劇 性別不問
ド直球の王道バトルファンタジーです

・男女不問
・シナリオ・世界観を逸脱しすぎないアドリブならOK

冒頭と最後にナレーションがありますが
読んでも読まなくても、どっちでもOK

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
117 焔(ほむら) 大和ノ国の生き残りである剣豪 その剣さばきから、灼炎(しゃくえん)の焔と呼ばれている 熱血・前向き・さっぱりした性格 長いポニテに赤い服。若々しい印象 炎刀(えんとう)術を使う
なずな 96 着物っぽい機動性のある服をきた美少女または美少年 大和ノ国の生き残りで、焔の付き人のような存在 可愛い真面目な子という印象 忍術を主に使う
審判 107 神帝騎士団の「名前付き」の1人 つばの長い軍帽に緑髪。軍服のような衣装 ひょうきんで女子好きな性格 本名は「ベイルズ」 銃斬(じゅうざん)術を使う
天罰 90 神帝騎士団の「名前付き」の1人 重装の鎧に金髪 傲慢な女王気質だが、騎士道精神を誰よりも重んじている 雷帝(らいてい)術を使う 本名は「ディヴァード」
聖典 103 神帝騎士団の「名前付き」の1人 白い軽装に青みがかった黒髪 名前付きの中ではクールキャラ的立ち位置 氷連(ひょうれん)術を主に使う 本名は「ウィルター」
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:時は昔。神帝国が支配したこの世界 0:国盗りの若者、ここにあらわる! 焔:ようよう! お前ら! 焔:この世に俺がいる限り! 焔:無念大量、陥(おち)いろうとも 焔:大和の魂ここにあり! 焔:俺こそが、お前ら神帝国(しんていこく)をひっくり返す男、焔様だ! なずな:焔様、焔様 焔:何だよ? なずな:誰も聞いておりませんよ 焔:……。んな事分かってんだ! 焔:この国を盗るってんなら、どーんといかないとな なずな:名乗りも大事ですが、もう少し節度を持っていただかないと 焔:節度なんてあったって仕方ねえだろ?! 焔:てことでお前ら! 準備できたやつからかかってこい! なずな:はぁ…… 0: 0:神帝国 第二支部 聖典:灼炎の焔……もうここまでくるとはな 天罰:聖典。貴様、ひよっているのか? 聖典:お前はどうなんだ? 天罰:興味すら持てん、私は 聖典:相変わらずだな。弱者に興味がないところは 聖典:「裏切り者」にいつか狩られるぞ 天罰:それも弱者だ 天罰:目に見えぬ塵(ちり)などに、興味を持ってどうする?  天罰:我ら神帝国が、大和ノ国(やまとのくに)を制圧した歴史を知らないわけではあるまい? 聖典:もちろん知ってるさ 天罰:それでも貴様は……あの大和の男が。たかが虫けらのような大和の血を持った男が、強いといいたいのか?聖典 聖典:そうだ。神帝国は大和ノ国を滅ぼした。ただ、今それが覆(くつがえ)される予感がするんだ、天罰 天罰:見損なったぞ…。その心意気でよく「名前付き」になったものだ 天罰:「我ら神帝騎士団こそ、絶対にしての唯一の力の存在なり」 天罰:「その力は、神帝に与えられた精神を宿す事で成立する」 天罰:名前をいただいた時の事、忘れたわけではあるまい? 聖典:名前と実力は、別に関係してない 天罰:つくづく分からない男だ……いい加減にしろよ、貴様 審判:はいはいはーい 審判:そこまでそこまで~。ストーップ、ストーップ 天罰:……審判 聖典:お前もここに来ていたのか 審判:なぁ~に。そりゃあね。俺も気になっていたからな 審判:赤く燃える炎! 大和を背負う若きイケメン! ってね 審判:きけばこの第二支部まで来てるそうじゃないか~。面白くなってきた 聖典:遊びじゃないんだぞ 審判:でもさ~。なかなか見れないぜ逆に? 大和の生き残りで、しかも3つも支部をオジャンにしてる男だ? レアキャラだ、レアキャラ 天罰:ただの蟻(あり)だ 審判:いやいや蟻って……天罰さん、そりゃないぜぇ 審判:神帝騎士団の中に、最近「裏切り者」が出てるって話もある。影で殺しているとか。謀反(むほん)でも考えているのやら……蟻でも油断はできないねぇ 天罰:裏切り者だろうと、踏み潰せば終わる 天罰:きけば、大和の血は二人とな。蟻が二匹いたところで、足元に目を向ける奴がいまい 聖典:それが蟻じゃない可能性があるというんだ 審判:まーまーそうだな。確かに俺たち名前付きの実力は……まぁ自分でいっちまうのもなんだが、強い、それは強い強い。うん、強い 審判:でも……今回ばっかしは聖典君に賛成かねぇ 天罰:貴様……本気で言っているのか? 審判:モチのロン 天罰:全く。神帝騎士団も落ちたものだ。たかが大和の血ごときでここまで押されるとは 聖典:用心に越したことはない。どうする? このまま放って置くわけにはいかないだろう 審判:とりあえず、どんな奴が俺が見にいってみようかねぇ 審判:ちょいと、ごあいさつにいってくるわ 聖典:気をつけろ 天罰:心配の言葉などかけんぞ 0: 焔:っしゃ! 一丁あがり! なずな:ふぅ…… 焔:流石だ、なずな。大和ノ国でもピカ一な腕前。いい動きだったぜ なずな:それもこれも、焔様に鍛えられましたから 焔:ははっ! そうかそうか! そいつは嬉しいぜ なずな:焔様が始めた国盗(くにと)り。きっと、大和の日を拝める時は訪れます 焔:とりあえずこの第二支部をぶっ潰せれば、復権まで大きく近づく 焔:どんな正念場だろうが、どんな敵が来ようが、負ける気はしないぜ! なずな:気を抜けませんよ、焔様 なずな:この場所……他とは比べ物にならない人間がいると聞きます なずな:「名前付き」と呼ばれる人達が、この神帝国にいると 焔:名前付き? なずな:前の制圧戦で、支部の長から聞きました なずな:神帝国を守る騎士団。その中でも、凄腕の人間に与えらえる称号、らしいです…… 焔:つまり、めちゃくちゃ強いってことだな 焔:いいじゃねえか、やりがいがあるぜ なずな:焔様は、いつでも前向きですね。流石です 焔:おう、分かってるなぁ! なずな! 審判:そいつはそいつは、面白いねぇ なずな:!? 何者!? 審判:どうもどうもこんにちは~ 審判:体調はどうかね? 元気かい? ごきげんようかい?  焔:……あんた、ただの手練れじゃなさそうだな 審判:そうさ、いかにも 審判:さっきまでお前さんらの中で話題がもちきりだった、名前付きってやつだよ 審判:俺は審判 審判:以後、お見知りおきを 審判:……あ、ちなみに本名はベイルズって言うんでな。よろしくちゃ~ん 焔:んで、その「名前付き」から来るとは、何の用だ? 審判:いやなに、ごあいさつをだね 焔:あいさつだぁ? なずな:それにしては……この殺気。普通ではありません 焔:やる気、満々じゃねえの 審判:おお~気づいちゃうのか……。っ!! 審判:っていうか なずな:……何、ですか? 審判:……君……なんだ、その、可愛いな! 審判:すげーかわいい、やべぇ、俺のドストライクコース一直線 なずな:いきなり何を言うんですか! き、気持ち悪い!! 審判:あぁ~~ん 審判:さっきの「気持ち悪い」……サイッコーに……キモチイイッ! 0:審判はそういいながら剣を抜き、襲い掛かってくる 焔:おっと! そう簡単にいかないぜ? 審判:おお~、斬ってくるのがバレてたかい? 焔の旦那? 焔:俺の名前も知ってるとは、光栄じゃねえか!  審判:何、流行(はや)り物は調べるタチでな…… 審判:あらよっ! 焔:っ!? なんだこの剣!? 審判:ほれ、口が目の前さ 焔:銃口!? っ!! 審判:ひゅう~。避けるねぇ 焔:こんなの初めてみたぜ……俺が今までやってきた奴らでも、奇妙な部類に入るなぁこりゃ 審判:ほめ言葉サンキュー。俺が名前付きになれたのも、奇妙なこの武器のおかげでな 焔:名前付きは得体のしれない奴ばっかりってか……! なずな:剣が変形……というより、銃が剣?……どっちか分からないような外観ですね…… 審判:クセが強いってよく言われるのさ 審判:でも、そんなクセがあったほうが人生楽しく生きられるってな、例えば、性癖(せいへき)とかよ!! なずな:一つの剣がわかれて、二丁拳銃に?! 審判:銃斬(じゅうざん)術 第7番 審判:「マカブリットダンサー」 審判:デッド オア アライブ! ”審判”を下してやるさ! なずな:焔様! 来ます! 焔:ああ! 審判:おらおらおらァー!!!! 焔:ちぃ……! 弾数が多いぜ……いけるか? いや、やるしかねえ! 審判:ハハハハハ! 楽しいねぇ!!  審判:いやぁー、銃撃は性癖にささるぜ!! 興奮にグッドネス!! マッドネス!! テンションが高ぶるってやつだァァァ!!  焔:……炎刀(えんとう)術 その一(いち) 焔:「炎(ほのお)返し」! 焔:はぁぁっ! 審判:ぉっととと!? マジかよぉ!!?   審判:なんとなんと、銃弾を剣で……しかも炎にして返してくるなんざ、面白い芸当だねぇ! 焔:炎返しは、本当は近接戦のカウンターで使うんだけどな……こういう使い方もできる 審判:あんた、本当に何者かね? なずな:隙あり! もらう! 審判:おっとぉいつの間にィ!? なずな:忍術(にんじゅつ)その三 なずな:「朧(おぼろ)狩り」! 審判:ぐぁ………! 焔:おっけ! ナイスなずな! 審判:……あぁーん。なずなちゃん、やるねぇ~ なずな:そう簡単には、やられませんか…… 審判:……入ったぁ。みぞおちに入ったぁ。気持ちのいい一発がはいったぁ~ 審判:なずなちゃんの一撃、あぁ。心がピンピンするんじゃぁぁぁ! なずな:ひ。ひぃぃぃ!! 焔:ある意味、手強い名前付きだな……こりゃ 聖典:氷連(ひょうれん)術第4番 聖典:「アイシクルショット」 焔:? 氷の玉っ! 誰だ! 聖典:身のこなしは軽いと見た 審判:おお~。聖典君、来ちゃったかい 聖典:苦戦しているようだな、審判 審判:いやぁ~これがなかなかアツーくなっちゃってよぉ 聖典:お前が? 珍しいな 審判:そこの……さ、ほら 聖典:奴が、焔か……。隣にいるのは、確か焔の付き人と聞いていた 審判:そう、なずなちゃん! いや、やべえのよこれ 聖典:何がだ? 審判:興奮がだよ! それ以外にねぇでしょうよ聖典君! 聖典:何かと思えば、お前の好みの話か…… 審判:あ、あの子、俺に是非ともやらせてくれねえか? 聖典:分かった。焔は俺が相手をしよう 焔:どうやら2対2って状況らしいな なずな:焔様…… 焔:ああ、分かってる。奴も間違いなく なずな:あの人も、名前付き 焔:この第二支部って所は強敵が多くて飽きねえぜ。……いけるか? なずな:大丈夫です 審判:はぁ~、この状況、天罰が見たらなんていうかねぇ 聖典:想像がつきやすいな 聖典:手短に片付けるぞ 審判:あいさ 0: 0: 焔:さてと… 聖典:聖典だ 焔:あ? 聖典:俺の名だ 焔:「名前付き」の、だろ? 焔:自分の名前じゃねえのも、何とも微妙な感じだよなぁ 焔:俺は、自分の名前のままがいいぜ 聖典:俺も、好きこのんでつけられたわけではない 聖典:ただのルールだ 焔:ルール? 聖典:ああ…。みな、そのルールに従っている。従うのは楽だからな 焔:…? 聖典:大和の生き残りときいていたが…ただの剣豪でもないだろう 聖典:騎士団の支部を、わずかの期間で3つも制圧できるなど、ただ者ではない 焔:やっぱ、バレちまうか。強い奴にはわかるんかなぁ~こういうのさ 聖典:称賛いただき、何よりだ…… 0:聖典は剣を抜いた 聖典:氷連(ひょうれん)術 第6番 聖典:「フリズドライブ」 焔:っ!氷の衝撃波!? 聖典:少しでも体に触れれば、お前は零度(れいど)の底に沈む。そのまま凍り死ぬがよい 焔:なら、その氷ごと燃やしてやる! 焔:炎刀術その五「炎乱(えんらん)の舞」! 焔:熱く、真っ直ぐ、押し込む! 行くぜ行くぜぇ!! 聖典:炎を纏った連続攻撃…! 焔:剣の打ち合い合戦といこうじゃねえか! 0: なずな:…… 審判:そんなに物騒(ぶっそう)な顔しなさんな なずな:敵である者には、油断はできません 審判:あぁ~なずなちゃんのガードは固いぃぃ! これはぜひとも、心をすこーしずつ、柔らかくしていかなくっちゃぁね なずな:ひ、ひぃ!  審判:おっとおびえなくていいんだぜ可愛いレディ。その着物、戦闘用かな?いいねその、魅惑をそそられる足というか… なずな:ち、近寄らないでください! 審判:あ。あぁー。テンション上がってきたああああん!! なずな:貴方は今すぐ無力化します!! 審判:君はハーレムの有力候補だよぉーん! なずなちゅああん!! なずな:気持ち悪い! それ以外の言葉が見つからない! 審判:お得意の忍術プレイで俺を楽しませてくれよぉぉん!! なずな:うるさい!  なずな:忍術その四 なずな:「残影(ざんえい)」! 審判:お、おお、おお!! なずな:視界を惑わす! 審判:分身攻撃……! なずなちゃんがいっぱいだ!! 審判:テンション青天井ォォ!! 審判:銃斬(じゅうざん)術 第16番! 審判:「ガンエンドソード」ォ! なずな:っ! 剣と銃の合わせ技…!  審判:Oh! いっぱいのなずなちゃんに斬撃&銃撃音によるASMR…これぞ、ヨダレ物の快感ってやつよぉ! なずな:くっ! 分身が消されていく…!  審判:あんなに居たのに、残念だなぁ。なずなちゃんハーレムも悪くなかったけどぉ! なずな:本物は、ここよ! 審判:!? 上!? なずな:忍術その五 なずな:「飛天蹴(ひてんしゅう)」! 審判:ぐぬぅっ! かかと落としってかぁ!? でも残念 審判:銃斬(じゅうざん)術 第12番 審判:「ショットゼロ」 なずな:これは? 散弾!? なずな:くっ! 審判:ごめんねぇ。こういう芸当もできちゃうのよ 審判:この剣、斬るのか撃つのかあいまいな武器でねぇ。他の名前つきにも、はっきりしろって文句言われるんだわこれが 審判:しかし、間一髪でよけるたぁ、器用な身のこなしをする なずな:焔様とは、よく修行をしてもらった…まだ未熟だった私に素質を見出し、仕(つか)えさせてくれた なずな:その恩は、この身を持って返す! 審判:…そいつはぁ、良くできた心意気でぇ。騎士道精神といい勝負さね 0: 焔:はぁっ!  聖典:炎の勢いが増していく…。厄介な術だ 焔:そういう術なんだよこれは!攻めれば攻めるほど、炎が俺の勢いに応えてくれるんだ! 焔:(ただ…なんだ? この感覚は) 焔:(手ごたえが、ない?) 焔:(まるで何か…手を抜かれているような…くそ、不気味だぜ) 聖典:技に生命を求めるとは…大和の魂とやらも変わっているな 焔:形のない物に命を吹き込むのさ。お前らだってそうだろ? 聖典:確かに俺たちも、目に見えない精神に対して騎士道というルールを与えられている。そこは似た者同士かもな 聖典:氷連(ひょうれん)術 第15番 聖典:「ブリザードクロス」…!  焔:!同じタイプの連撃技か!  聖典:どうした? 勢いが落ちているぞ? 焔:誰がッ! 焔:大和のために、ここで引くわけにはいかねえのさ! 聖典:なら、その大和の炎には、静かに凍ってもらおう 焔:その前に焼ききってやるぜ! 聖典:やれるものならやってみろ。過去の亡霊よ 聖典:…? 焔:…誰か来る? 0:戦いを止めるように、天罰がこちらへ歩いてきていた 聖典:天罰……!  天罰:ぐずぐずしているかと思えば……何だこの始末は 審判:……天罰まで来ちゃったかぁ~ なずな:まさか!? 焔:……こいつも名前付きか 天罰:聖典、審判 天罰:貴様ら、何をやっている 審判:まぁ~、落ち着けよ天罰、こいつはぁ……その 聖典:…… 天罰:まさか、苦戦などしているわけではあるまいな? 聖典:……それは 天罰:仮にも、我らは名前付きなのだぞ? その意味を分かってるのか? 審判:だ、だから、怒るなってば! な!? 天罰:愚か者共が!! 0:天罰の声が、地を震わせるように響き渡る 天罰:たかが二匹の蟻(あり)ごときに、こうまで苦戦するとは……情けないと思わないのか、貴様ら! 神帝国の恥だぞ! 聖典:天罰。こいつらは、俺たちが思っている以上に強い 聖典:弱ければ、もうすでに戻っている 天罰:言い訳は不要だ、聖典 天罰:……お前は…憧れでもあるのだ……醜態(しゅうたい)を晒(さら)さないでくれ 天罰:大和の異物。穢(けが)れた血が流れる異様な下等民族に、我ら神帝国の名前付きが苦戦するという受け入れがたい状況を見せるとは 天罰:もういい。名の通り”天罰”を与えてくれる 審判:おいおい。激おこのぷんぷん丸じゃねえかよぉ天罰くぅん! 聖典:……やれやれ 焔:な、何が来るんだよ!? 聖典:「弱者に価値はない」それがあいつのモットーということだ なずな:電気が集まっていく。あれは……魔方陣? 天罰:天来(てんらい)の栄光よ。過ぎ去りし歴史の礎(いしずえ)となり、その名を、雷(いかづち)の王に返還(へんかん)せん 天罰:雷帝(らいてい)術 第10番 天罰:「ライトニング・イレイザー」 焔:避けろ!! 0: 天罰:……ほう。避けられるということは、それなりの腕があるという事か 審判:あっぶねぇ…… 聖典:容赦がない。本当に周りを巻き込む気だな、あいつは なずな:ッ! 焔様が居ない?! 天罰:!? 焔:油断してんじゃねえぜ! 天罰! 天罰:こやつ、私の間合いに!? 焔:その剣、ただの飾りじゃねえんだろ? オラァ! 天罰:何のまねだ……弱者ッ! 天罰:雷帝(らいてい)術 第20番 天罰:「雷回旋(らいかいせん)ッ!! 焔:大振りの攻撃……! なんて風圧と電撃だ……! 審判や聖典とも違う。一振りしただけでこの剣圧かよ! 天罰:神帝国は、我らの誇り。騎士道精神は、その神帝国が直々に意味を与えてくれた 天罰:この世は強者が残り、弱者は消える。それが神帝国の騎士道精神 天罰:我らに敗れた大和など、ただの弱者以外の何物でもない! 天罰:目障(めざわ)りだ、失せろ! 焔:そう簡単にやられるかよ 焔:弱者には弱者なりの努力ってやつがあるんだ 焔:その努力は、いずれ強者を越えられる。自分が出来ると信じればな! 天罰:口からたわごとを吐くな、大和の穢(けが)れた血が! 0:焔は、地を蹴って飛ぶ 天罰:? 空中に飛んだところでどうする!  焔:炎刀(えんとう)術 その十六 焔:「火炎車(かえんぐるま)」! 天罰:回転!? 火の竜巻、だと?! 焔:受けろ強者ァ!! 天罰:ぐ、ぐぅ……っ! 審判:おおう……天罰の奴、押されてるねぇ…… なずな:よそ見をしている暇はない! なずな:忍術 その三 なずな:「朧(おぼろ)狩り」! 審判:おっとぉ、危ない! ……いやぁ、なずなちゃん、グッっとくるじゃない なずな:簡単には倒せないわね……流石、名前付き 審判:嬉しいねぇ。なずなちゃんに褒められるたぁ、騎士になった甲斐(かい)があったってもんよ なずな:……何故騎士団に入ったの? 審判:そりゃぁね、俺も憧れてたのよ。騎士道精神ってやつに なずな:女にモテたいからではなく? 審判:おお~!! それも、まぁ、そうよな! 合っている。じつぅーに合っている! なずな:それ以上に理由がないと思うのだけど? 審判:まぁ、もっとそれ以上に理由があるとするなら……同期がいるから、かな なずな:同期? 審判:天罰だよ 審判:俺らは互いに、騎士団で名前付きになるって決めてたのさ なずな:貴方と天罰が? 審判:幼馴染ってやつ。んで、天罰はあの聖典に憧れててよ 審判:俺はやめとけって言ったんだけど、なんだか天罰のキラキラしている目を見たら、止められなくってさ なずな:それで、貴方も? 審判:そう。そして気づけば名前が付いちゃったってわけ。すごいっしょ? なずな:……か、変わった人ね 審判:あ、ちょっとカッコイイと思った? 惚(ほ)れていいんだぜ? なずな:それはないです 聖典:……また遊んでいるな、審判 審判:わりいわりい。ちゃんと仕事はするぜ。聖典君 聖典:焔と天罰との戦いも白熱しているところだ 審判:おっと、それはなかなか 0: 天罰:はっはっはっ!  天罰:面白い! 面白いぞ貴様! 天罰:弱者の皮をかぶった強者だったとは! 焔:そいつは喜んで何より! 天罰:貴様は戦いがいがある! 天罰:まさか、この私がここまで押されるとは…… 天罰:気に入ったぞ、焔! この天罰。全身全霊をかけて、貴様を倒してくれよう! 焔:かかって来いよ! 天罰! 0: 審判:ひゅう~。ありゃもう名前付きと互角だぜ? ……あ、なずなちゃんもいい腕してるけどね! うん! 聖典:……騎士道精神、あいつは変わらないな なずな:2対1……残影(ざんえい)を使ったところで、さばききれるか…… 聖典:いや、一人退場だ なずな:えっ? 0: 天罰:なら、貴様に思い知らせてやろう…… 天罰:雷帝(らいてい)術第……ん? 焔:どうした? 天罰:……ベイ、ルズ? 審判:……が、がはっ! なずな:し、審判さん! なずな:あれは、黒い、剣……違う、魔法? 聖典:黒術(こくじゅつ)第1番「ブラックバイド」 審判:……お、お前さん……まさか 聖典:…裏切り者には気をつけなければな 聖典:じゅうぶんに体力がけずれていたようだ。隙(すき)ができて何より 0:瞬間、天罰は大きな声を上げて、聖典に斬りかかる 天罰:ウィルターァァァァァッッ!!!! 0:激しく剣同士がぶつかり合う 聖典:らしくないな、ディヴァード。お前がそんな発狂するなど 天罰:貴様はっ……禁忌(きんき)を犯した……! 天罰:黒術は騎士団が侵してはならない領域……それを持ってして、貴様は審判を、ベイルズを斬った! 天罰:それがどういうことか、分かっているのか!? 聖典:分かっていなきゃ、そんなことしないさ 天罰:許さない……許さないぞ、貴様 0:天罰は大きな剣を構え、電気が剣の周りに集まっていく 焔:剣が……雷を纏って……大きくなっていく? なずな:先ほどの技の比ではありません……焔様! 退避を! 焔:分かってる! 聖典:…… 天罰:……神雷(しんらい)の前に、解(ほど)け散れ 天罰:雷帝(らいてい)術 第111番  天罰:雷極刃覇衝(らいごくじんはしょう)ッッ!! 0: 焔:なんて破壊力だ…… 焔:大和ノ国にも、力に特化した奴はいたが、あれはそんなレベルじゃねえ…… なずな:……? 聖典が消えた? なずな:いや、辺りが突然、暗くなって……? 天罰:……っ!? 聖典:黒(くろ)に報(むく)いよ。 聖典:闇夜(やみよ)の魔を刻(きざ)み 聖典:その名を永久(えいきゅう)の冥王(めいおう)へ返還(へんかん)せん 聖典:黒術(こくじゅつ) 第50番 聖典:黒魔 燕活殺(こくま えんかっさつ) 天罰:が、ぁ……! いつの……間に! なずな:……見えなかった。忍術とは違う……何なの、あの攻撃 聖典:お前は変わらないな 天罰:ぐ、がは……っ。き、さま……! 聖典:騎士道精神をずっと信じ続けている 聖典:それに対して、何も疑いを持たないらしい 天罰:疑い……だと?  聖典:俺たちが騎士道精神という目に見えないルールを守ることで、上の連中どもは、好き勝手できる、ということだ 天罰:何……? 聖典:お前は手遅れなんだ、ディヴァード 聖典:奴らが創った都合のいい決まり事を、馬鹿真面目にききすぎた 天罰:騎士道精神が……嘘だといいたいのか!? 聖典:ああ 聖典:神帝騎士団がバカみたいに誇りを守り続けている間、奴らは貪(むさぼ)っている。 聖典:もっと踏み込んだ言い方をしよう 聖典:俺たちが鍛練に明け暮れている間、奴らは子供に危害を加える 聖典:俺たちが戦っている間に、奴らはその子供の穴を掘る 天罰:ふざけるな……そんなもの、ありえない 聖典:「お気に入り」を閉じ込めて 聖典:殴って、斬って、奪って、掘り続けて 聖典:最終的には、気持ちがいい奴の勝ち 聖典:そういうゲームをしてるのさ、奴らは 天罰:そん……な、まさか 天罰:そんな馬鹿なことがあるはずがない! 聖典:だから裏切り者が出る 聖典:一人だけじゃない 聖典:少しずつ、裏切り者は増え始めている 聖典:この国は、汚物まみれなんだ、ディヴァード 天罰:ふざ……けるな……嘘だ……そんな 聖典:お前が見ていた、神帝国は 聖典:「便所の糞(くそ)」なんだよ 天罰:あ……あぁ……あ…… 聖典:……事実を知らない幻想の強者よ 聖典:絶望に打ちひしがれて、去れ 0:聖典が剣を振り下ろした瞬間、何者かに止められる 焔:……言いすぎだぜ 聖典:……焔 焔:そこまでする必要はねえだろ 聖典:ディヴァード……天罰は奴らの洗脳にかかっている。そこから解き放とうとしただけだ 焔:……こいつは、それでも憧れてたんだろ? 焔:その気持ちは、本物だ 焔:それ踏みにじる事は、誰にもできねえよ 聖典:その騎士道精神とやらが、糞(くそ)共の見せていた幻想だとしてもか? 焔:それは、それだ。 焔:でも……こいつは、こいつだろ 焔:ディヴァードっていう一人の人間の気持ちに、誰にも土足で入り込む権利はねえ 天罰:……貴様 焔:その傷じゃ戦えねえだろ?  焔:黙って見ときな 天罰:……大和の……血が……偉そうに 焔:へへっ、偉そうにか 焔:俺の親父も偉そうにしてたから、もしかしたら血を引き継いじゃってるのかもな 聖典:……そういうことか 聖典:名前付きと同等レベルの剣技。そして、その目つき 聖典:大和ノ国を滅ぼした文献に、国王の外見が載っていたが……やけに一致していると思えば。 聖典:お前、大和王(やまとおう)の息子だな? 焔:いかにも、そういうこった 焔:俺こそ、大和王の第一子息「焔」だ 天罰:……まさか……! 聖典:よりによって、神帝国を叩きに来た人間が、大和王のご子息とはな 焔:でも、無駄に殺すつもりはねえ 焔:今まで潰してきた支部の連中も、最後には応じてくれた 焔:敵に敬意を払うのは、騎士道精神のいい所だと思ってるぜ 聖典:……クク。くだらないな 0: 審判:……っ! 審判:俺は… なずな:…大丈夫ですか? 審判:なずなちゃん…?これは、治癒術? なずな:忍術だけで、国盗りはやっていけないので 審判:はは…ありがたいねぇ。やっぱなずなちゃんは天使だわ なずな:惚れませんから 天罰:… 審判:よう…ディヴァ。派手にやられちまってんな 天罰:……その呼び名も久しい 審判:なずなちゃんの愛あふれる治癒術、受けてかない? 天罰:先程まで敵だったというのに。大和の血は、つくづく変わった人間ばかりだな なずな:焔様の、影響かもしれない なずな:自分も、元々は敵味方はっきりしていた身ですから 天罰:……私は 天罰:もう、分からない 審判:聖典君のことかい? 天罰:奴と剣を交わした時、嘘をついているとは思えなかった なずな:…… 審判:……裏切り者がいるってのは耳にしていたけど、こんな身近にいるなんてな。 審判:しかも、彼の言う事がホントなら……ゲロでもはいちまいそうな話だねぇ なずな:…… 天罰:……聖典。ウィルター=ディスカントは、私の憧れだった 0: 0: 天罰:私は、貴様に惚(ほ)れた! 聖典:…… 審判:そりゃそんな顔するだろ、何言ってんだよディヴァ!気でも狂ったか 聖典:俺はただの騎士団兵だぞ 天罰:貴様は、最強の名前付き候補だと聞いた!  天罰:いや、もはや名前付きだ! 天罰:貴様の剣技に、私は惚(ほ)れたのだ! 審判:あーこりゃダメだ。右も左も見えてねぇや 聖典:惚れた所でどうするんだ 天罰:決まってるさ! 私は必ず、貴様と同じ名前付きになる! 天罰:貴様と共に戦いたいのだ! 審判:はぁ。こりゃ見てらんね。 天罰:ベイルズ、貴様もなれよ 審判:強制かよ 天罰:ならなければ、許さんからな 審判:なんでじゃあ! はぁ、仕方ない……どこまでもついて行ってやんよ、ディヴァ殿 聖典:……勢いだけでは、強くなれない 聖典:見落としている事にも、目を凝(こ)らす必要がある 聖典:それでも……目指したいのなら好きにすればいいさ 天罰:ああ、必ず、貴様のような騎士に、私はなる! 天罰:貴様と背中を並べられるような、そんな騎士に……! 0: 天罰:私は、自分の事しか考えておらず、何も見えてなかったのだな……。 なずな:……こうやって接していると。神帝国には、悪い人ばかりじゃないと、実感します 天罰:仮にも貴様らの国を滅ぼしたのだぞ? なずな:確かに……最初はそうでした 審判:最初は? なずな:私も焔様も、復讐の念に囚われていましたから 0: 0: 焔:くそ……くそっ! 焔:神帝国の奴らめ……よくも、民を、親父を……! 焔:根絶(ねだ)やしにしてやるッ!全員! 俺が……俺が殺してやる!!! なずな:……焔様! 焔:……なんだよ、なずな。今更、何しに来た? 焔:もう大和は滅ぼされたんだ。これ以上、何があるってんだよ! なずな:……これを なずな:これを、読んでいただけませんか? 焔:これは……遺言状? 親父の? 焔:……「復讐に囚(とら)われるな 焔:人の死に泣くな 焔:後ろをみず、前を見ろ 焔:お前には、それを乗り越えられる力がある 焔:例え穢(けが)れた血の一族でも 焔:大和の魂を、その胸に」 焔:……親父 なずな:きっと父様は、焔様に託したのでしょう。大和ノ国を取り戻すことが出来るのは、焔様だけです なずな:その焔様が、どんな形で取り戻していくのか……父様は、自分が死ねば、きっと焔様が自暴自棄になると予見されたと思います なずな:王になった時、大和の日が再び昇った時 なずな:復讐にまみれた王には、なって欲しくない。私は、父様の字から、そう感じました なずな:私も、焔様には優しい王でいて欲しい 焔:なずな…… なずな:焔様が、神帝国を倒し、優しい王になられるその日まで、私は、地の果てまでついて行きます。 なずな:だから、囚われないでくださいませ……焔様。 焔:うう………あ………あ……っ! 0: なずな:それから焔様は自分のやり方で神帝国を倒すと決めた。出来る限り殺生(せっしょう)はせず、力の差で勝敗を決め、交渉を用いて、領地を増やしていく… 審判:それが、焔の旦那ってことかい。いやぁ、恐れ入るねぇ 天罰:……穢(けが)れた血 天罰:その教えも、大和ノ国を悪いものだと決めつけるための、造られた教えだったのかもしれない…… 天罰:なら、騎士道とは……一体何なのだ なずな:もしかすれば、人に与えられるものではないのかもしれません 天罰:? なずな:自分、ではないでしょうか 天罰:……私が、か なずな:何を大事にして、何を優先して、何を持って幸せとするのか なずな:外側から与えられるのも悪くないと、私は思いますが、本人がどう思うかは別です なずな:自分が大事にしたい考え方を、誰かから与えられるではなくて、自分で決める。それが、騎士道精神でも、大和の魂でもあると、私は思います 天罰:……私の、騎士道精神 審判:ううっ、くうぅ! 審判:感動したぁー!さすがなずなちゃん! 俺の嫁候補!! なずな:き、気持ち悪い! 天罰:死にたいのか下衆? なずな:……あっ、でも……穢(けが)れた血、というのは間違ってはいません 天罰:何だと? 0:焔の刀と聖典の剣、両者の刃が競り合うが、引き分ける 焔:… 聖典:……焔。一つ聞こう 焔:何だよ? 聖典:お前は、この国をどう思う? 焔:そうだな。確かに、俺たちの国を潰せたことだけはあるぜ。強い奴は多いし、名前付きなんてもっと強い 焔:でも、悪い奴らばっかりでもない 0:そう言って焔は、なずなたちの方向を向く 焔:親父に、前向けって言われたんだよ 焔:大和の日が昇る時まで戦うってな 聖典:前を向いた所で、現実を突きつけられるだけだ 聖典:己の欲にまみれた猿共が支配するこの国……抵抗もできない人間や……俺の、妹は……蹂躙(じゅうりん)された 聖典:だから俺は、神帝国を壊し尽くす 焔:……それが、お前の信念ってやつか 聖典:そうだ。お前と同じさ。お前も、殺したいと何度も思ったはずだ 焔:……確かに、そう思ったこともあったさ 焔:でも、だからって、人殺しで全てを解決することはできない 焔:きっとそれは、全部殺しちまってから後悔する。そんな気がするんだ 聖典:……クク、甘すぎるな 聖典:お前達の大和の魂は、その優しさを信条としていたな 聖典:そんなものは、淘汰(とうた)されるだけだ 焔:ああ、そうかもな。優しさだけじゃ国は変えられねえ 焔:でもな、優しさを持って実現する気持ちが、心の底になきゃ、いつまでたっても始まらないのさ。俺の国盗(くにと)りは 聖典:……とことん甘い奴だ 聖典:お前とは組めると思っていたが、根本的な考え方が違うらしい 焔:神帝国、その全てが悪の対象にならない 焔:その心意気では、民を導(みちび)くことはおろか、誰もついてこない 焔:お前が全て壊した先には、誰かいるのかよ? 聖典:……くだらないな 焔:そうかよ……ちっとは似てると思ったけどな 聖典:残念だ 0:ウィルターは、剣を抜き、もう一本を黒術で生成した 焔:二刀流…!なるほど…違和感の正体はこれか! 聖典:黒氷連(こくひょうれん)術 第1番 聖典:ブリザードメアス! 聖典:二刀を一気に、その身へ刻んでやる! 焔:くっ! 聖典:まだ、踏み込むッ……! 焔:勢いが段違いだ……! だがこっちも負けてらんねぇ! 聖典:遅い。下をもらった 焔:がっ……あ! 0: なずな:焔様! 審判:えぐいねぇ、あの攻撃 天罰:……あれが、ウィルター。私が目をそむけていた、彼の姿 審判:なずなちゃん、どのくらいで回復しそうかい? ちょいとこれは、焔の旦那に加勢したほうがいいかもな 天罰:手伝おう 審判:行けるのかい、天罰 天罰:舐めるな、審判 なずな:…分かりました。回復を急ぎます 天罰:そういえば、聞きそびれたが。先ほどの「大和の血」が穢(けが)れているというのは、どういうことだ? なずな:…それは なずな:これ… 審判:? お! 猫耳じゃねえか! 天罰:……本当に人間ではないと? 穢れた血というのは侮蔑(ぶべつ)の表現ではなかったのか? なずな:半分、合ってるんですよね……あまり、人に見せたくなかったのですが…… 審判:お、おお、度肝(どぎも)をぬかれたぁ、 天罰:気持ち悪いぞ、下衆(げす) なずな:と、とにかく! そういうことなんです! 審判:……ん? 待てよ。なずなちゃんにそれがあるってことは、焔の旦那にも? なずな:はい……ただ、あの人の場合は、それを術として昇華させているんです なずな:焔様が強い理由も、そこにある 0: 焔:っ! 速さと威力がケタ違いだぜ……さっきとは比べ物にならねぇ 焔:……こりゃ、やるしかねえか 聖典:その口ぶり。奥の手でもあるのか?  焔:あんまり長く使えないからな……すぐに決着をつけるぜ 焔:……はぁあああああっ! 聖典:…?何だ? 奴の周りに炎が? 違う…これは? 焔:炎刀術 その百 焔:「炎鬼開闢」(えんきかいびゃく) 聖典:……炎の、鬼だと? 0: なずな:あれが焔様の力。炎鬼開闢は一定時間しか変化できませんが、全ての術の威力を高めることができる 審判:わーお… 天罰:穢れた血…こう見ると、恐ろしいものだな 0: 焔:行くぞウィルタァァ!! 聖典:!? 焔:炎刀術 その十六! 焔:「火炎車(かえんぐるま)」ァ! 聖典:…ぐッ…! 焔:まだまだぁ! 焔:炎刀術 その五 焔:「炎乱(えんらん)の舞」! 焔:おッッるあああああッ!! 聖典:黒氷連術……第8番 聖典:「氷転黒破(ひょうてんこくは)」! 焔:黒い氷の斬撃…ッ!   聖典:その身に受けろッ! 焔ぁぁ! 焔:ッ!! 見えた! 焔:炎刀術 その一(いち)! 焔:「炎(ほのお)返し」ぃぃ!! 聖典:っ…はじかれたッ!? 焔:そこだ! もらったぁ! 聖典:がぁ……ッ!…く…あ… 0: 焔:はぁ…はぁ… 聖典:…まだだ! 焔:くそ…まだやるのか…よ 焔:やべぇ…状態が、解けちまう 聖典:…解けてしまえば、こちらにまだ分がある 聖典:俺の勝ちだ、焔 なずな:忍術 その二 なずな:「霧隠(きりがくれ)」! 聖典:これは……なずなの技! こざかしい真似を! 審判:おアツい所ざんねーんだけど、ここまでだぜ、ウィルター君 天罰:…… 聖典:ベイルズ……ディヴァード! 聖典:貴様らッ! なずな:聖典……ウィルターさん。ここまでです 聖典:なずなの霧隠(きりがくれ)を利用したとは……手を組んだか 焔:お前ら…… 審判:いやぁ~なずなちゃんのありがたいお言葉を受けましてなぁ 審判:上層部が可愛い子をむやみやたらに傷つけるなんざ、反吐がでちまうが……。神帝の人間が全員反吐野郎かというと、ちょっと違うかね、そいつは 天罰:……ウィルター、もうやめろ 天罰:私は……お前の言う通り、偽物の幻想に惑わされていただけだった 天罰:でも、だからと神帝国の全ての人間を殺す理由にはならない 聖典:…焔側につくと? 天罰:いいや。大和ノ国と「本来」の神帝国、バランスを保つやり方もあるはずだ 天罰:弱者と強者ではない。人間と人間が調停を保つ国も、悪くないと思った 聖典:はは……はははははっ!! ははは! 聖典:感化されすぎだ、お前ら 聖典:大和の魂でも移ったか? ん? どうなんだ? 聖典:そんな魂や騎士道精神など持ったところでな……上のゴミが、猿みたいに凌辱を繰り返す歴史は終わらない! 聖典:歴史を断つためには、神帝を全て壊す必要があるんだよ 審判:……なんだ? 周りに黒い物体が? 天罰:いや、違うこれは! 召喚獣だ! なずな:っ! 囲まれた! 焔:……誰だ? あの女は!? 聖典:……助かったよ、キリア 焔:キリア……? 審判:……思い出したぜ。確か、数年前に姿をくらました……名前付き候補だった女騎士。なるほど…こりゃ、思った以上に事が大きいね 天罰:……その頃から、計画していたと 聖典:その通り 審判:!? 姿が消えた!? 聖典:悪いがここまでだ 聖典:……お前達が望む国か、俺が国を壊すか 聖典:どちらが上にたつだろうな 焔:そんなことはさせねえよ 焔:大和も、神帝も、全ては等しい。 焔:破壊で全てを無に帰すわけには、いかねえのさ 聖典:都合のいいこの国は、俺が壊す。せいぜいあがいてみるがいいさ…。 聖典:黒術第9番 冥楼(めいろう) なずな:…逃がしたっ 焔:……女も、召喚獣も消えた。完全に逃げられたか… 0: 聖典:助かった。お前が来なければ、あそこで死んでいた 聖典:本当は、息の根を止めたかったがな…… 聖典:……何だ? 言いたいことがあるのか? 聖典:見ていて滑稽だった? ほざいていろ 聖典:……なに、問題ない。新世界はこれからさ 聖典:”聖典”の意味は、俺がつくる 0: 0:一週間後 焔:よし、あらかた準備は出来たか なずな:焔様 焔:おっ、おはよう、なずな なずな:今日もばっちりです 焔:そいつは何より 天罰:行くのか? 焔:ああ。とりあえず、この領地は俺が盗ったってことでいいかい? 天罰:貴様に助けられたからな。仕方がない。…ここは大和の領地としよう 審判:気が利くじゃねえの、天罰君 天罰:うるさいぞ 天罰:ただし、焔。必ず再戦はするからな 焔:上等だ。そん時はまたバチバチやろうぜ 天罰:…神帝国の上層部は、未だに我ら名前付きでも姿が分からない。まだ見えない敵だ。 審判:とりあえず、その神帝国の上層部をおがめるまでは、拠点制圧ってとこかな?  なずな:これから別の拠点に向かって、国盗りの続きです 審判:なるへそ。そしたら、上層部の事でも調べようかねぇ。俺は焔の旦那に従うさ 審判:本物の「神帝」ってのを取り戻すためにな 焔:ありがとうな、ディヴァード、ベイルズ 天罰:礼などいらん 審判:お礼なら~あの、なずなちゃんを是非とも… なずな:ヒィィ! 焔:まぁ、本人次第でよくね? なずな:ほ、焔様? 全否定しないのですか? 焔:? 俺が決めることじゃねえしな。騎士道精神にのっとってんならいいんじゃないの? なずな:それは騎士道精神じゃなくて、淫(みだ)らっていうんです! 審判:いい! やっぱりなずなちゃん、いい! 心がピンピンしてきたぁ! 天罰:嫌な予感しかしないな。よし、手を出したら私が貴様を無に返そう なずな:ディヴァードさん……うう 焔:なんだかなぁ。名前付きも賑やかな連中が多いというか 焔:こうやって接していると、普通の人間って感じだ。まるで、昔の大和みたいだぜ 審判:ほう? 焔:…大和ノ国を攻めてきた奴らと、神帝国に住んでいる人たちは、また違う 焔:その国にいるから、全ての人間が悪いわけじゃない 焔:人はそれぞれ違うし、大和の魂も、騎士道精神も、人によって形がある 焔:それを統一出来る奴が、真の王なのかもしれないな 審判:おおう、お見事な演説で なずな:ふふーん。これが焔様ですからぁ 焔:なんでお前が自信たっぷりなんだよ 天罰:確かに……お前が王なら、悪くないかもな 焔:お、嬉しいね 審判:焔の旦那に惚れた? 天罰:それはない なずな:あっ、駄目です! 焔様は私のですからー! 審判:な、なんだってぇ……! ぐぬぬ、やはり今、焔の旦那をしとめておくべきか! 焔:待て待て!なんでそうなるのぉー! 0: 0:かくして、この国盗り話は一旦、幕を閉じる 0:今日もまた、大和の日が昇るその時まで……焔は行く!

0:時は昔。神帝国が支配したこの世界 0:国盗りの若者、ここにあらわる! 焔:ようよう! お前ら! 焔:この世に俺がいる限り! 焔:無念大量、陥(おち)いろうとも 焔:大和の魂ここにあり! 焔:俺こそが、お前ら神帝国(しんていこく)をひっくり返す男、焔様だ! なずな:焔様、焔様 焔:何だよ? なずな:誰も聞いておりませんよ 焔:……。んな事分かってんだ! 焔:この国を盗るってんなら、どーんといかないとな なずな:名乗りも大事ですが、もう少し節度を持っていただかないと 焔:節度なんてあったって仕方ねえだろ?! 焔:てことでお前ら! 準備できたやつからかかってこい! なずな:はぁ…… 0: 0:神帝国 第二支部 聖典:灼炎の焔……もうここまでくるとはな 天罰:聖典。貴様、ひよっているのか? 聖典:お前はどうなんだ? 天罰:興味すら持てん、私は 聖典:相変わらずだな。弱者に興味がないところは 聖典:「裏切り者」にいつか狩られるぞ 天罰:それも弱者だ 天罰:目に見えぬ塵(ちり)などに、興味を持ってどうする?  天罰:我ら神帝国が、大和ノ国(やまとのくに)を制圧した歴史を知らないわけではあるまい? 聖典:もちろん知ってるさ 天罰:それでも貴様は……あの大和の男が。たかが虫けらのような大和の血を持った男が、強いといいたいのか?聖典 聖典:そうだ。神帝国は大和ノ国を滅ぼした。ただ、今それが覆(くつがえ)される予感がするんだ、天罰 天罰:見損なったぞ…。その心意気でよく「名前付き」になったものだ 天罰:「我ら神帝騎士団こそ、絶対にしての唯一の力の存在なり」 天罰:「その力は、神帝に与えられた精神を宿す事で成立する」 天罰:名前をいただいた時の事、忘れたわけではあるまい? 聖典:名前と実力は、別に関係してない 天罰:つくづく分からない男だ……いい加減にしろよ、貴様 審判:はいはいはーい 審判:そこまでそこまで~。ストーップ、ストーップ 天罰:……審判 聖典:お前もここに来ていたのか 審判:なぁ~に。そりゃあね。俺も気になっていたからな 審判:赤く燃える炎! 大和を背負う若きイケメン! ってね 審判:きけばこの第二支部まで来てるそうじゃないか~。面白くなってきた 聖典:遊びじゃないんだぞ 審判:でもさ~。なかなか見れないぜ逆に? 大和の生き残りで、しかも3つも支部をオジャンにしてる男だ? レアキャラだ、レアキャラ 天罰:ただの蟻(あり)だ 審判:いやいや蟻って……天罰さん、そりゃないぜぇ 審判:神帝騎士団の中に、最近「裏切り者」が出てるって話もある。影で殺しているとか。謀反(むほん)でも考えているのやら……蟻でも油断はできないねぇ 天罰:裏切り者だろうと、踏み潰せば終わる 天罰:きけば、大和の血は二人とな。蟻が二匹いたところで、足元に目を向ける奴がいまい 聖典:それが蟻じゃない可能性があるというんだ 審判:まーまーそうだな。確かに俺たち名前付きの実力は……まぁ自分でいっちまうのもなんだが、強い、それは強い強い。うん、強い 審判:でも……今回ばっかしは聖典君に賛成かねぇ 天罰:貴様……本気で言っているのか? 審判:モチのロン 天罰:全く。神帝騎士団も落ちたものだ。たかが大和の血ごときでここまで押されるとは 聖典:用心に越したことはない。どうする? このまま放って置くわけにはいかないだろう 審判:とりあえず、どんな奴が俺が見にいってみようかねぇ 審判:ちょいと、ごあいさつにいってくるわ 聖典:気をつけろ 天罰:心配の言葉などかけんぞ 0: 焔:っしゃ! 一丁あがり! なずな:ふぅ…… 焔:流石だ、なずな。大和ノ国でもピカ一な腕前。いい動きだったぜ なずな:それもこれも、焔様に鍛えられましたから 焔:ははっ! そうかそうか! そいつは嬉しいぜ なずな:焔様が始めた国盗(くにと)り。きっと、大和の日を拝める時は訪れます 焔:とりあえずこの第二支部をぶっ潰せれば、復権まで大きく近づく 焔:どんな正念場だろうが、どんな敵が来ようが、負ける気はしないぜ! なずな:気を抜けませんよ、焔様 なずな:この場所……他とは比べ物にならない人間がいると聞きます なずな:「名前付き」と呼ばれる人達が、この神帝国にいると 焔:名前付き? なずな:前の制圧戦で、支部の長から聞きました なずな:神帝国を守る騎士団。その中でも、凄腕の人間に与えらえる称号、らしいです…… 焔:つまり、めちゃくちゃ強いってことだな 焔:いいじゃねえか、やりがいがあるぜ なずな:焔様は、いつでも前向きですね。流石です 焔:おう、分かってるなぁ! なずな! 審判:そいつはそいつは、面白いねぇ なずな:!? 何者!? 審判:どうもどうもこんにちは~ 審判:体調はどうかね? 元気かい? ごきげんようかい?  焔:……あんた、ただの手練れじゃなさそうだな 審判:そうさ、いかにも 審判:さっきまでお前さんらの中で話題がもちきりだった、名前付きってやつだよ 審判:俺は審判 審判:以後、お見知りおきを 審判:……あ、ちなみに本名はベイルズって言うんでな。よろしくちゃ~ん 焔:んで、その「名前付き」から来るとは、何の用だ? 審判:いやなに、ごあいさつをだね 焔:あいさつだぁ? なずな:それにしては……この殺気。普通ではありません 焔:やる気、満々じゃねえの 審判:おお~気づいちゃうのか……。っ!! 審判:っていうか なずな:……何、ですか? 審判:……君……なんだ、その、可愛いな! 審判:すげーかわいい、やべぇ、俺のドストライクコース一直線 なずな:いきなり何を言うんですか! き、気持ち悪い!! 審判:あぁ~~ん 審判:さっきの「気持ち悪い」……サイッコーに……キモチイイッ! 0:審判はそういいながら剣を抜き、襲い掛かってくる 焔:おっと! そう簡単にいかないぜ? 審判:おお~、斬ってくるのがバレてたかい? 焔の旦那? 焔:俺の名前も知ってるとは、光栄じゃねえか!  審判:何、流行(はや)り物は調べるタチでな…… 審判:あらよっ! 焔:っ!? なんだこの剣!? 審判:ほれ、口が目の前さ 焔:銃口!? っ!! 審判:ひゅう~。避けるねぇ 焔:こんなの初めてみたぜ……俺が今までやってきた奴らでも、奇妙な部類に入るなぁこりゃ 審判:ほめ言葉サンキュー。俺が名前付きになれたのも、奇妙なこの武器のおかげでな 焔:名前付きは得体のしれない奴ばっかりってか……! なずな:剣が変形……というより、銃が剣?……どっちか分からないような外観ですね…… 審判:クセが強いってよく言われるのさ 審判:でも、そんなクセがあったほうが人生楽しく生きられるってな、例えば、性癖(せいへき)とかよ!! なずな:一つの剣がわかれて、二丁拳銃に?! 審判:銃斬(じゅうざん)術 第7番 審判:「マカブリットダンサー」 審判:デッド オア アライブ! ”審判”を下してやるさ! なずな:焔様! 来ます! 焔:ああ! 審判:おらおらおらァー!!!! 焔:ちぃ……! 弾数が多いぜ……いけるか? いや、やるしかねえ! 審判:ハハハハハ! 楽しいねぇ!!  審判:いやぁー、銃撃は性癖にささるぜ!! 興奮にグッドネス!! マッドネス!! テンションが高ぶるってやつだァァァ!!  焔:……炎刀(えんとう)術 その一(いち) 焔:「炎(ほのお)返し」! 焔:はぁぁっ! 審判:ぉっととと!? マジかよぉ!!?   審判:なんとなんと、銃弾を剣で……しかも炎にして返してくるなんざ、面白い芸当だねぇ! 焔:炎返しは、本当は近接戦のカウンターで使うんだけどな……こういう使い方もできる 審判:あんた、本当に何者かね? なずな:隙あり! もらう! 審判:おっとぉいつの間にィ!? なずな:忍術(にんじゅつ)その三 なずな:「朧(おぼろ)狩り」! 審判:ぐぁ………! 焔:おっけ! ナイスなずな! 審判:……あぁーん。なずなちゃん、やるねぇ~ なずな:そう簡単には、やられませんか…… 審判:……入ったぁ。みぞおちに入ったぁ。気持ちのいい一発がはいったぁ~ 審判:なずなちゃんの一撃、あぁ。心がピンピンするんじゃぁぁぁ! なずな:ひ。ひぃぃぃ!! 焔:ある意味、手強い名前付きだな……こりゃ 聖典:氷連(ひょうれん)術第4番 聖典:「アイシクルショット」 焔:? 氷の玉っ! 誰だ! 聖典:身のこなしは軽いと見た 審判:おお~。聖典君、来ちゃったかい 聖典:苦戦しているようだな、審判 審判:いやぁ~これがなかなかアツーくなっちゃってよぉ 聖典:お前が? 珍しいな 審判:そこの……さ、ほら 聖典:奴が、焔か……。隣にいるのは、確か焔の付き人と聞いていた 審判:そう、なずなちゃん! いや、やべえのよこれ 聖典:何がだ? 審判:興奮がだよ! それ以外にねぇでしょうよ聖典君! 聖典:何かと思えば、お前の好みの話か…… 審判:あ、あの子、俺に是非ともやらせてくれねえか? 聖典:分かった。焔は俺が相手をしよう 焔:どうやら2対2って状況らしいな なずな:焔様…… 焔:ああ、分かってる。奴も間違いなく なずな:あの人も、名前付き 焔:この第二支部って所は強敵が多くて飽きねえぜ。……いけるか? なずな:大丈夫です 審判:はぁ~、この状況、天罰が見たらなんていうかねぇ 聖典:想像がつきやすいな 聖典:手短に片付けるぞ 審判:あいさ 0: 0: 焔:さてと… 聖典:聖典だ 焔:あ? 聖典:俺の名だ 焔:「名前付き」の、だろ? 焔:自分の名前じゃねえのも、何とも微妙な感じだよなぁ 焔:俺は、自分の名前のままがいいぜ 聖典:俺も、好きこのんでつけられたわけではない 聖典:ただのルールだ 焔:ルール? 聖典:ああ…。みな、そのルールに従っている。従うのは楽だからな 焔:…? 聖典:大和の生き残りときいていたが…ただの剣豪でもないだろう 聖典:騎士団の支部を、わずかの期間で3つも制圧できるなど、ただ者ではない 焔:やっぱ、バレちまうか。強い奴にはわかるんかなぁ~こういうのさ 聖典:称賛いただき、何よりだ…… 0:聖典は剣を抜いた 聖典:氷連(ひょうれん)術 第6番 聖典:「フリズドライブ」 焔:っ!氷の衝撃波!? 聖典:少しでも体に触れれば、お前は零度(れいど)の底に沈む。そのまま凍り死ぬがよい 焔:なら、その氷ごと燃やしてやる! 焔:炎刀術その五「炎乱(えんらん)の舞」! 焔:熱く、真っ直ぐ、押し込む! 行くぜ行くぜぇ!! 聖典:炎を纏った連続攻撃…! 焔:剣の打ち合い合戦といこうじゃねえか! 0: なずな:…… 審判:そんなに物騒(ぶっそう)な顔しなさんな なずな:敵である者には、油断はできません 審判:あぁ~なずなちゃんのガードは固いぃぃ! これはぜひとも、心をすこーしずつ、柔らかくしていかなくっちゃぁね なずな:ひ、ひぃ!  審判:おっとおびえなくていいんだぜ可愛いレディ。その着物、戦闘用かな?いいねその、魅惑をそそられる足というか… なずな:ち、近寄らないでください! 審判:あ。あぁー。テンション上がってきたああああん!! なずな:貴方は今すぐ無力化します!! 審判:君はハーレムの有力候補だよぉーん! なずなちゅああん!! なずな:気持ち悪い! それ以外の言葉が見つからない! 審判:お得意の忍術プレイで俺を楽しませてくれよぉぉん!! なずな:うるさい!  なずな:忍術その四 なずな:「残影(ざんえい)」! 審判:お、おお、おお!! なずな:視界を惑わす! 審判:分身攻撃……! なずなちゃんがいっぱいだ!! 審判:テンション青天井ォォ!! 審判:銃斬(じゅうざん)術 第16番! 審判:「ガンエンドソード」ォ! なずな:っ! 剣と銃の合わせ技…!  審判:Oh! いっぱいのなずなちゃんに斬撃&銃撃音によるASMR…これぞ、ヨダレ物の快感ってやつよぉ! なずな:くっ! 分身が消されていく…!  審判:あんなに居たのに、残念だなぁ。なずなちゃんハーレムも悪くなかったけどぉ! なずな:本物は、ここよ! 審判:!? 上!? なずな:忍術その五 なずな:「飛天蹴(ひてんしゅう)」! 審判:ぐぬぅっ! かかと落としってかぁ!? でも残念 審判:銃斬(じゅうざん)術 第12番 審判:「ショットゼロ」 なずな:これは? 散弾!? なずな:くっ! 審判:ごめんねぇ。こういう芸当もできちゃうのよ 審判:この剣、斬るのか撃つのかあいまいな武器でねぇ。他の名前つきにも、はっきりしろって文句言われるんだわこれが 審判:しかし、間一髪でよけるたぁ、器用な身のこなしをする なずな:焔様とは、よく修行をしてもらった…まだ未熟だった私に素質を見出し、仕(つか)えさせてくれた なずな:その恩は、この身を持って返す! 審判:…そいつはぁ、良くできた心意気でぇ。騎士道精神といい勝負さね 0: 焔:はぁっ!  聖典:炎の勢いが増していく…。厄介な術だ 焔:そういう術なんだよこれは!攻めれば攻めるほど、炎が俺の勢いに応えてくれるんだ! 焔:(ただ…なんだ? この感覚は) 焔:(手ごたえが、ない?) 焔:(まるで何か…手を抜かれているような…くそ、不気味だぜ) 聖典:技に生命を求めるとは…大和の魂とやらも変わっているな 焔:形のない物に命を吹き込むのさ。お前らだってそうだろ? 聖典:確かに俺たちも、目に見えない精神に対して騎士道というルールを与えられている。そこは似た者同士かもな 聖典:氷連(ひょうれん)術 第15番 聖典:「ブリザードクロス」…!  焔:!同じタイプの連撃技か!  聖典:どうした? 勢いが落ちているぞ? 焔:誰がッ! 焔:大和のために、ここで引くわけにはいかねえのさ! 聖典:なら、その大和の炎には、静かに凍ってもらおう 焔:その前に焼ききってやるぜ! 聖典:やれるものならやってみろ。過去の亡霊よ 聖典:…? 焔:…誰か来る? 0:戦いを止めるように、天罰がこちらへ歩いてきていた 聖典:天罰……!  天罰:ぐずぐずしているかと思えば……何だこの始末は 審判:……天罰まで来ちゃったかぁ~ なずな:まさか!? 焔:……こいつも名前付きか 天罰:聖典、審判 天罰:貴様ら、何をやっている 審判:まぁ~、落ち着けよ天罰、こいつはぁ……その 聖典:…… 天罰:まさか、苦戦などしているわけではあるまいな? 聖典:……それは 天罰:仮にも、我らは名前付きなのだぞ? その意味を分かってるのか? 審判:だ、だから、怒るなってば! な!? 天罰:愚か者共が!! 0:天罰の声が、地を震わせるように響き渡る 天罰:たかが二匹の蟻(あり)ごときに、こうまで苦戦するとは……情けないと思わないのか、貴様ら! 神帝国の恥だぞ! 聖典:天罰。こいつらは、俺たちが思っている以上に強い 聖典:弱ければ、もうすでに戻っている 天罰:言い訳は不要だ、聖典 天罰:……お前は…憧れでもあるのだ……醜態(しゅうたい)を晒(さら)さないでくれ 天罰:大和の異物。穢(けが)れた血が流れる異様な下等民族に、我ら神帝国の名前付きが苦戦するという受け入れがたい状況を見せるとは 天罰:もういい。名の通り”天罰”を与えてくれる 審判:おいおい。激おこのぷんぷん丸じゃねえかよぉ天罰くぅん! 聖典:……やれやれ 焔:な、何が来るんだよ!? 聖典:「弱者に価値はない」それがあいつのモットーということだ なずな:電気が集まっていく。あれは……魔方陣? 天罰:天来(てんらい)の栄光よ。過ぎ去りし歴史の礎(いしずえ)となり、その名を、雷(いかづち)の王に返還(へんかん)せん 天罰:雷帝(らいてい)術 第10番 天罰:「ライトニング・イレイザー」 焔:避けろ!! 0: 天罰:……ほう。避けられるということは、それなりの腕があるという事か 審判:あっぶねぇ…… 聖典:容赦がない。本当に周りを巻き込む気だな、あいつは なずな:ッ! 焔様が居ない?! 天罰:!? 焔:油断してんじゃねえぜ! 天罰! 天罰:こやつ、私の間合いに!? 焔:その剣、ただの飾りじゃねえんだろ? オラァ! 天罰:何のまねだ……弱者ッ! 天罰:雷帝(らいてい)術 第20番 天罰:「雷回旋(らいかいせん)ッ!! 焔:大振りの攻撃……! なんて風圧と電撃だ……! 審判や聖典とも違う。一振りしただけでこの剣圧かよ! 天罰:神帝国は、我らの誇り。騎士道精神は、その神帝国が直々に意味を与えてくれた 天罰:この世は強者が残り、弱者は消える。それが神帝国の騎士道精神 天罰:我らに敗れた大和など、ただの弱者以外の何物でもない! 天罰:目障(めざわ)りだ、失せろ! 焔:そう簡単にやられるかよ 焔:弱者には弱者なりの努力ってやつがあるんだ 焔:その努力は、いずれ強者を越えられる。自分が出来ると信じればな! 天罰:口からたわごとを吐くな、大和の穢(けが)れた血が! 0:焔は、地を蹴って飛ぶ 天罰:? 空中に飛んだところでどうする!  焔:炎刀(えんとう)術 その十六 焔:「火炎車(かえんぐるま)」! 天罰:回転!? 火の竜巻、だと?! 焔:受けろ強者ァ!! 天罰:ぐ、ぐぅ……っ! 審判:おおう……天罰の奴、押されてるねぇ…… なずな:よそ見をしている暇はない! なずな:忍術 その三 なずな:「朧(おぼろ)狩り」! 審判:おっとぉ、危ない! ……いやぁ、なずなちゃん、グッっとくるじゃない なずな:簡単には倒せないわね……流石、名前付き 審判:嬉しいねぇ。なずなちゃんに褒められるたぁ、騎士になった甲斐(かい)があったってもんよ なずな:……何故騎士団に入ったの? 審判:そりゃぁね、俺も憧れてたのよ。騎士道精神ってやつに なずな:女にモテたいからではなく? 審判:おお~!! それも、まぁ、そうよな! 合っている。じつぅーに合っている! なずな:それ以上に理由がないと思うのだけど? 審判:まぁ、もっとそれ以上に理由があるとするなら……同期がいるから、かな なずな:同期? 審判:天罰だよ 審判:俺らは互いに、騎士団で名前付きになるって決めてたのさ なずな:貴方と天罰が? 審判:幼馴染ってやつ。んで、天罰はあの聖典に憧れててよ 審判:俺はやめとけって言ったんだけど、なんだか天罰のキラキラしている目を見たら、止められなくってさ なずな:それで、貴方も? 審判:そう。そして気づけば名前が付いちゃったってわけ。すごいっしょ? なずな:……か、変わった人ね 審判:あ、ちょっとカッコイイと思った? 惚(ほ)れていいんだぜ? なずな:それはないです 聖典:……また遊んでいるな、審判 審判:わりいわりい。ちゃんと仕事はするぜ。聖典君 聖典:焔と天罰との戦いも白熱しているところだ 審判:おっと、それはなかなか 0: 天罰:はっはっはっ!  天罰:面白い! 面白いぞ貴様! 天罰:弱者の皮をかぶった強者だったとは! 焔:そいつは喜んで何より! 天罰:貴様は戦いがいがある! 天罰:まさか、この私がここまで押されるとは…… 天罰:気に入ったぞ、焔! この天罰。全身全霊をかけて、貴様を倒してくれよう! 焔:かかって来いよ! 天罰! 0: 審判:ひゅう~。ありゃもう名前付きと互角だぜ? ……あ、なずなちゃんもいい腕してるけどね! うん! 聖典:……騎士道精神、あいつは変わらないな なずな:2対1……残影(ざんえい)を使ったところで、さばききれるか…… 聖典:いや、一人退場だ なずな:えっ? 0: 天罰:なら、貴様に思い知らせてやろう…… 天罰:雷帝(らいてい)術第……ん? 焔:どうした? 天罰:……ベイ、ルズ? 審判:……が、がはっ! なずな:し、審判さん! なずな:あれは、黒い、剣……違う、魔法? 聖典:黒術(こくじゅつ)第1番「ブラックバイド」 審判:……お、お前さん……まさか 聖典:…裏切り者には気をつけなければな 聖典:じゅうぶんに体力がけずれていたようだ。隙(すき)ができて何より 0:瞬間、天罰は大きな声を上げて、聖典に斬りかかる 天罰:ウィルターァァァァァッッ!!!! 0:激しく剣同士がぶつかり合う 聖典:らしくないな、ディヴァード。お前がそんな発狂するなど 天罰:貴様はっ……禁忌(きんき)を犯した……! 天罰:黒術は騎士団が侵してはならない領域……それを持ってして、貴様は審判を、ベイルズを斬った! 天罰:それがどういうことか、分かっているのか!? 聖典:分かっていなきゃ、そんなことしないさ 天罰:許さない……許さないぞ、貴様 0:天罰は大きな剣を構え、電気が剣の周りに集まっていく 焔:剣が……雷を纏って……大きくなっていく? なずな:先ほどの技の比ではありません……焔様! 退避を! 焔:分かってる! 聖典:…… 天罰:……神雷(しんらい)の前に、解(ほど)け散れ 天罰:雷帝(らいてい)術 第111番  天罰:雷極刃覇衝(らいごくじんはしょう)ッッ!! 0: 焔:なんて破壊力だ…… 焔:大和ノ国にも、力に特化した奴はいたが、あれはそんなレベルじゃねえ…… なずな:……? 聖典が消えた? なずな:いや、辺りが突然、暗くなって……? 天罰:……っ!? 聖典:黒(くろ)に報(むく)いよ。 聖典:闇夜(やみよ)の魔を刻(きざ)み 聖典:その名を永久(えいきゅう)の冥王(めいおう)へ返還(へんかん)せん 聖典:黒術(こくじゅつ) 第50番 聖典:黒魔 燕活殺(こくま えんかっさつ) 天罰:が、ぁ……! いつの……間に! なずな:……見えなかった。忍術とは違う……何なの、あの攻撃 聖典:お前は変わらないな 天罰:ぐ、がは……っ。き、さま……! 聖典:騎士道精神をずっと信じ続けている 聖典:それに対して、何も疑いを持たないらしい 天罰:疑い……だと?  聖典:俺たちが騎士道精神という目に見えないルールを守ることで、上の連中どもは、好き勝手できる、ということだ 天罰:何……? 聖典:お前は手遅れなんだ、ディヴァード 聖典:奴らが創った都合のいい決まり事を、馬鹿真面目にききすぎた 天罰:騎士道精神が……嘘だといいたいのか!? 聖典:ああ 聖典:神帝騎士団がバカみたいに誇りを守り続けている間、奴らは貪(むさぼ)っている。 聖典:もっと踏み込んだ言い方をしよう 聖典:俺たちが鍛練に明け暮れている間、奴らは子供に危害を加える 聖典:俺たちが戦っている間に、奴らはその子供の穴を掘る 天罰:ふざけるな……そんなもの、ありえない 聖典:「お気に入り」を閉じ込めて 聖典:殴って、斬って、奪って、掘り続けて 聖典:最終的には、気持ちがいい奴の勝ち 聖典:そういうゲームをしてるのさ、奴らは 天罰:そん……な、まさか 天罰:そんな馬鹿なことがあるはずがない! 聖典:だから裏切り者が出る 聖典:一人だけじゃない 聖典:少しずつ、裏切り者は増え始めている 聖典:この国は、汚物まみれなんだ、ディヴァード 天罰:ふざ……けるな……嘘だ……そんな 聖典:お前が見ていた、神帝国は 聖典:「便所の糞(くそ)」なんだよ 天罰:あ……あぁ……あ…… 聖典:……事実を知らない幻想の強者よ 聖典:絶望に打ちひしがれて、去れ 0:聖典が剣を振り下ろした瞬間、何者かに止められる 焔:……言いすぎだぜ 聖典:……焔 焔:そこまでする必要はねえだろ 聖典:ディヴァード……天罰は奴らの洗脳にかかっている。そこから解き放とうとしただけだ 焔:……こいつは、それでも憧れてたんだろ? 焔:その気持ちは、本物だ 焔:それ踏みにじる事は、誰にもできねえよ 聖典:その騎士道精神とやらが、糞(くそ)共の見せていた幻想だとしてもか? 焔:それは、それだ。 焔:でも……こいつは、こいつだろ 焔:ディヴァードっていう一人の人間の気持ちに、誰にも土足で入り込む権利はねえ 天罰:……貴様 焔:その傷じゃ戦えねえだろ?  焔:黙って見ときな 天罰:……大和の……血が……偉そうに 焔:へへっ、偉そうにか 焔:俺の親父も偉そうにしてたから、もしかしたら血を引き継いじゃってるのかもな 聖典:……そういうことか 聖典:名前付きと同等レベルの剣技。そして、その目つき 聖典:大和ノ国を滅ぼした文献に、国王の外見が載っていたが……やけに一致していると思えば。 聖典:お前、大和王(やまとおう)の息子だな? 焔:いかにも、そういうこった 焔:俺こそ、大和王の第一子息「焔」だ 天罰:……まさか……! 聖典:よりによって、神帝国を叩きに来た人間が、大和王のご子息とはな 焔:でも、無駄に殺すつもりはねえ 焔:今まで潰してきた支部の連中も、最後には応じてくれた 焔:敵に敬意を払うのは、騎士道精神のいい所だと思ってるぜ 聖典:……クク。くだらないな 0: 審判:……っ! 審判:俺は… なずな:…大丈夫ですか? 審判:なずなちゃん…?これは、治癒術? なずな:忍術だけで、国盗りはやっていけないので 審判:はは…ありがたいねぇ。やっぱなずなちゃんは天使だわ なずな:惚れませんから 天罰:… 審判:よう…ディヴァ。派手にやられちまってんな 天罰:……その呼び名も久しい 審判:なずなちゃんの愛あふれる治癒術、受けてかない? 天罰:先程まで敵だったというのに。大和の血は、つくづく変わった人間ばかりだな なずな:焔様の、影響かもしれない なずな:自分も、元々は敵味方はっきりしていた身ですから 天罰:……私は 天罰:もう、分からない 審判:聖典君のことかい? 天罰:奴と剣を交わした時、嘘をついているとは思えなかった なずな:…… 審判:……裏切り者がいるってのは耳にしていたけど、こんな身近にいるなんてな。 審判:しかも、彼の言う事がホントなら……ゲロでもはいちまいそうな話だねぇ なずな:…… 天罰:……聖典。ウィルター=ディスカントは、私の憧れだった 0: 0: 天罰:私は、貴様に惚(ほ)れた! 聖典:…… 審判:そりゃそんな顔するだろ、何言ってんだよディヴァ!気でも狂ったか 聖典:俺はただの騎士団兵だぞ 天罰:貴様は、最強の名前付き候補だと聞いた!  天罰:いや、もはや名前付きだ! 天罰:貴様の剣技に、私は惚(ほ)れたのだ! 審判:あーこりゃダメだ。右も左も見えてねぇや 聖典:惚れた所でどうするんだ 天罰:決まってるさ! 私は必ず、貴様と同じ名前付きになる! 天罰:貴様と共に戦いたいのだ! 審判:はぁ。こりゃ見てらんね。 天罰:ベイルズ、貴様もなれよ 審判:強制かよ 天罰:ならなければ、許さんからな 審判:なんでじゃあ! はぁ、仕方ない……どこまでもついて行ってやんよ、ディヴァ殿 聖典:……勢いだけでは、強くなれない 聖典:見落としている事にも、目を凝(こ)らす必要がある 聖典:それでも……目指したいのなら好きにすればいいさ 天罰:ああ、必ず、貴様のような騎士に、私はなる! 天罰:貴様と背中を並べられるような、そんな騎士に……! 0: 天罰:私は、自分の事しか考えておらず、何も見えてなかったのだな……。 なずな:……こうやって接していると。神帝国には、悪い人ばかりじゃないと、実感します 天罰:仮にも貴様らの国を滅ぼしたのだぞ? なずな:確かに……最初はそうでした 審判:最初は? なずな:私も焔様も、復讐の念に囚われていましたから 0: 0: 焔:くそ……くそっ! 焔:神帝国の奴らめ……よくも、民を、親父を……! 焔:根絶(ねだ)やしにしてやるッ!全員! 俺が……俺が殺してやる!!! なずな:……焔様! 焔:……なんだよ、なずな。今更、何しに来た? 焔:もう大和は滅ぼされたんだ。これ以上、何があるってんだよ! なずな:……これを なずな:これを、読んでいただけませんか? 焔:これは……遺言状? 親父の? 焔:……「復讐に囚(とら)われるな 焔:人の死に泣くな 焔:後ろをみず、前を見ろ 焔:お前には、それを乗り越えられる力がある 焔:例え穢(けが)れた血の一族でも 焔:大和の魂を、その胸に」 焔:……親父 なずな:きっと父様は、焔様に託したのでしょう。大和ノ国を取り戻すことが出来るのは、焔様だけです なずな:その焔様が、どんな形で取り戻していくのか……父様は、自分が死ねば、きっと焔様が自暴自棄になると予見されたと思います なずな:王になった時、大和の日が再び昇った時 なずな:復讐にまみれた王には、なって欲しくない。私は、父様の字から、そう感じました なずな:私も、焔様には優しい王でいて欲しい 焔:なずな…… なずな:焔様が、神帝国を倒し、優しい王になられるその日まで、私は、地の果てまでついて行きます。 なずな:だから、囚われないでくださいませ……焔様。 焔:うう………あ………あ……っ! 0: なずな:それから焔様は自分のやり方で神帝国を倒すと決めた。出来る限り殺生(せっしょう)はせず、力の差で勝敗を決め、交渉を用いて、領地を増やしていく… 審判:それが、焔の旦那ってことかい。いやぁ、恐れ入るねぇ 天罰:……穢(けが)れた血 天罰:その教えも、大和ノ国を悪いものだと決めつけるための、造られた教えだったのかもしれない…… 天罰:なら、騎士道とは……一体何なのだ なずな:もしかすれば、人に与えられるものではないのかもしれません 天罰:? なずな:自分、ではないでしょうか 天罰:……私が、か なずな:何を大事にして、何を優先して、何を持って幸せとするのか なずな:外側から与えられるのも悪くないと、私は思いますが、本人がどう思うかは別です なずな:自分が大事にしたい考え方を、誰かから与えられるではなくて、自分で決める。それが、騎士道精神でも、大和の魂でもあると、私は思います 天罰:……私の、騎士道精神 審判:ううっ、くうぅ! 審判:感動したぁー!さすがなずなちゃん! 俺の嫁候補!! なずな:き、気持ち悪い! 天罰:死にたいのか下衆? なずな:……あっ、でも……穢(けが)れた血、というのは間違ってはいません 天罰:何だと? 0:焔の刀と聖典の剣、両者の刃が競り合うが、引き分ける 焔:… 聖典:……焔。一つ聞こう 焔:何だよ? 聖典:お前は、この国をどう思う? 焔:そうだな。確かに、俺たちの国を潰せたことだけはあるぜ。強い奴は多いし、名前付きなんてもっと強い 焔:でも、悪い奴らばっかりでもない 0:そう言って焔は、なずなたちの方向を向く 焔:親父に、前向けって言われたんだよ 焔:大和の日が昇る時まで戦うってな 聖典:前を向いた所で、現実を突きつけられるだけだ 聖典:己の欲にまみれた猿共が支配するこの国……抵抗もできない人間や……俺の、妹は……蹂躙(じゅうりん)された 聖典:だから俺は、神帝国を壊し尽くす 焔:……それが、お前の信念ってやつか 聖典:そうだ。お前と同じさ。お前も、殺したいと何度も思ったはずだ 焔:……確かに、そう思ったこともあったさ 焔:でも、だからって、人殺しで全てを解決することはできない 焔:きっとそれは、全部殺しちまってから後悔する。そんな気がするんだ 聖典:……クク、甘すぎるな 聖典:お前達の大和の魂は、その優しさを信条としていたな 聖典:そんなものは、淘汰(とうた)されるだけだ 焔:ああ、そうかもな。優しさだけじゃ国は変えられねえ 焔:でもな、優しさを持って実現する気持ちが、心の底になきゃ、いつまでたっても始まらないのさ。俺の国盗(くにと)りは 聖典:……とことん甘い奴だ 聖典:お前とは組めると思っていたが、根本的な考え方が違うらしい 焔:神帝国、その全てが悪の対象にならない 焔:その心意気では、民を導(みちび)くことはおろか、誰もついてこない 焔:お前が全て壊した先には、誰かいるのかよ? 聖典:……くだらないな 焔:そうかよ……ちっとは似てると思ったけどな 聖典:残念だ 0:ウィルターは、剣を抜き、もう一本を黒術で生成した 焔:二刀流…!なるほど…違和感の正体はこれか! 聖典:黒氷連(こくひょうれん)術 第1番 聖典:ブリザードメアス! 聖典:二刀を一気に、その身へ刻んでやる! 焔:くっ! 聖典:まだ、踏み込むッ……! 焔:勢いが段違いだ……! だがこっちも負けてらんねぇ! 聖典:遅い。下をもらった 焔:がっ……あ! 0: なずな:焔様! 審判:えぐいねぇ、あの攻撃 天罰:……あれが、ウィルター。私が目をそむけていた、彼の姿 審判:なずなちゃん、どのくらいで回復しそうかい? ちょいとこれは、焔の旦那に加勢したほうがいいかもな 天罰:手伝おう 審判:行けるのかい、天罰 天罰:舐めるな、審判 なずな:…分かりました。回復を急ぎます 天罰:そういえば、聞きそびれたが。先ほどの「大和の血」が穢(けが)れているというのは、どういうことだ? なずな:…それは なずな:これ… 審判:? お! 猫耳じゃねえか! 天罰:……本当に人間ではないと? 穢れた血というのは侮蔑(ぶべつ)の表現ではなかったのか? なずな:半分、合ってるんですよね……あまり、人に見せたくなかったのですが…… 審判:お、おお、度肝(どぎも)をぬかれたぁ、 天罰:気持ち悪いぞ、下衆(げす) なずな:と、とにかく! そういうことなんです! 審判:……ん? 待てよ。なずなちゃんにそれがあるってことは、焔の旦那にも? なずな:はい……ただ、あの人の場合は、それを術として昇華させているんです なずな:焔様が強い理由も、そこにある 0: 焔:っ! 速さと威力がケタ違いだぜ……さっきとは比べ物にならねぇ 焔:……こりゃ、やるしかねえか 聖典:その口ぶり。奥の手でもあるのか?  焔:あんまり長く使えないからな……すぐに決着をつけるぜ 焔:……はぁあああああっ! 聖典:…?何だ? 奴の周りに炎が? 違う…これは? 焔:炎刀術 その百 焔:「炎鬼開闢」(えんきかいびゃく) 聖典:……炎の、鬼だと? 0: なずな:あれが焔様の力。炎鬼開闢は一定時間しか変化できませんが、全ての術の威力を高めることができる 審判:わーお… 天罰:穢れた血…こう見ると、恐ろしいものだな 0: 焔:行くぞウィルタァァ!! 聖典:!? 焔:炎刀術 その十六! 焔:「火炎車(かえんぐるま)」ァ! 聖典:…ぐッ…! 焔:まだまだぁ! 焔:炎刀術 その五 焔:「炎乱(えんらん)の舞」! 焔:おッッるあああああッ!! 聖典:黒氷連術……第8番 聖典:「氷転黒破(ひょうてんこくは)」! 焔:黒い氷の斬撃…ッ!   聖典:その身に受けろッ! 焔ぁぁ! 焔:ッ!! 見えた! 焔:炎刀術 その一(いち)! 焔:「炎(ほのお)返し」ぃぃ!! 聖典:っ…はじかれたッ!? 焔:そこだ! もらったぁ! 聖典:がぁ……ッ!…く…あ… 0: 焔:はぁ…はぁ… 聖典:…まだだ! 焔:くそ…まだやるのか…よ 焔:やべぇ…状態が、解けちまう 聖典:…解けてしまえば、こちらにまだ分がある 聖典:俺の勝ちだ、焔 なずな:忍術 その二 なずな:「霧隠(きりがくれ)」! 聖典:これは……なずなの技! こざかしい真似を! 審判:おアツい所ざんねーんだけど、ここまでだぜ、ウィルター君 天罰:…… 聖典:ベイルズ……ディヴァード! 聖典:貴様らッ! なずな:聖典……ウィルターさん。ここまでです 聖典:なずなの霧隠(きりがくれ)を利用したとは……手を組んだか 焔:お前ら…… 審判:いやぁ~なずなちゃんのありがたいお言葉を受けましてなぁ 審判:上層部が可愛い子をむやみやたらに傷つけるなんざ、反吐がでちまうが……。神帝の人間が全員反吐野郎かというと、ちょっと違うかね、そいつは 天罰:……ウィルター、もうやめろ 天罰:私は……お前の言う通り、偽物の幻想に惑わされていただけだった 天罰:でも、だからと神帝国の全ての人間を殺す理由にはならない 聖典:…焔側につくと? 天罰:いいや。大和ノ国と「本来」の神帝国、バランスを保つやり方もあるはずだ 天罰:弱者と強者ではない。人間と人間が調停を保つ国も、悪くないと思った 聖典:はは……はははははっ!! ははは! 聖典:感化されすぎだ、お前ら 聖典:大和の魂でも移ったか? ん? どうなんだ? 聖典:そんな魂や騎士道精神など持ったところでな……上のゴミが、猿みたいに凌辱を繰り返す歴史は終わらない! 聖典:歴史を断つためには、神帝を全て壊す必要があるんだよ 審判:……なんだ? 周りに黒い物体が? 天罰:いや、違うこれは! 召喚獣だ! なずな:っ! 囲まれた! 焔:……誰だ? あの女は!? 聖典:……助かったよ、キリア 焔:キリア……? 審判:……思い出したぜ。確か、数年前に姿をくらました……名前付き候補だった女騎士。なるほど…こりゃ、思った以上に事が大きいね 天罰:……その頃から、計画していたと 聖典:その通り 審判:!? 姿が消えた!? 聖典:悪いがここまでだ 聖典:……お前達が望む国か、俺が国を壊すか 聖典:どちらが上にたつだろうな 焔:そんなことはさせねえよ 焔:大和も、神帝も、全ては等しい。 焔:破壊で全てを無に帰すわけには、いかねえのさ 聖典:都合のいいこの国は、俺が壊す。せいぜいあがいてみるがいいさ…。 聖典:黒術第9番 冥楼(めいろう) なずな:…逃がしたっ 焔:……女も、召喚獣も消えた。完全に逃げられたか… 0: 聖典:助かった。お前が来なければ、あそこで死んでいた 聖典:本当は、息の根を止めたかったがな…… 聖典:……何だ? 言いたいことがあるのか? 聖典:見ていて滑稽だった? ほざいていろ 聖典:……なに、問題ない。新世界はこれからさ 聖典:”聖典”の意味は、俺がつくる 0: 0:一週間後 焔:よし、あらかた準備は出来たか なずな:焔様 焔:おっ、おはよう、なずな なずな:今日もばっちりです 焔:そいつは何より 天罰:行くのか? 焔:ああ。とりあえず、この領地は俺が盗ったってことでいいかい? 天罰:貴様に助けられたからな。仕方がない。…ここは大和の領地としよう 審判:気が利くじゃねえの、天罰君 天罰:うるさいぞ 天罰:ただし、焔。必ず再戦はするからな 焔:上等だ。そん時はまたバチバチやろうぜ 天罰:…神帝国の上層部は、未だに我ら名前付きでも姿が分からない。まだ見えない敵だ。 審判:とりあえず、その神帝国の上層部をおがめるまでは、拠点制圧ってとこかな?  なずな:これから別の拠点に向かって、国盗りの続きです 審判:なるへそ。そしたら、上層部の事でも調べようかねぇ。俺は焔の旦那に従うさ 審判:本物の「神帝」ってのを取り戻すためにな 焔:ありがとうな、ディヴァード、ベイルズ 天罰:礼などいらん 審判:お礼なら~あの、なずなちゃんを是非とも… なずな:ヒィィ! 焔:まぁ、本人次第でよくね? なずな:ほ、焔様? 全否定しないのですか? 焔:? 俺が決めることじゃねえしな。騎士道精神にのっとってんならいいんじゃないの? なずな:それは騎士道精神じゃなくて、淫(みだ)らっていうんです! 審判:いい! やっぱりなずなちゃん、いい! 心がピンピンしてきたぁ! 天罰:嫌な予感しかしないな。よし、手を出したら私が貴様を無に返そう なずな:ディヴァードさん……うう 焔:なんだかなぁ。名前付きも賑やかな連中が多いというか 焔:こうやって接していると、普通の人間って感じだ。まるで、昔の大和みたいだぜ 審判:ほう? 焔:…大和ノ国を攻めてきた奴らと、神帝国に住んでいる人たちは、また違う 焔:その国にいるから、全ての人間が悪いわけじゃない 焔:人はそれぞれ違うし、大和の魂も、騎士道精神も、人によって形がある 焔:それを統一出来る奴が、真の王なのかもしれないな 審判:おおう、お見事な演説で なずな:ふふーん。これが焔様ですからぁ 焔:なんでお前が自信たっぷりなんだよ 天罰:確かに……お前が王なら、悪くないかもな 焔:お、嬉しいね 審判:焔の旦那に惚れた? 天罰:それはない なずな:あっ、駄目です! 焔様は私のですからー! 審判:な、なんだってぇ……! ぐぬぬ、やはり今、焔の旦那をしとめておくべきか! 焔:待て待て!なんでそうなるのぉー! 0: 0:かくして、この国盗り話は一旦、幕を閉じる 0:今日もまた、大和の日が昇るその時まで……焔は行く!