台本概要
607 views
タイトル | 吸血鬼とロイヤルミルクティーを |
---|---|
作者名 | うたう (@utaunandayo) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
満月の夜 森深き館ではお茶会が開かれている。 607 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
吸血鬼 | 男 | 94 | 吸血鬼。真祖らしい。余とか言っちゃう系。 |
女 | 女 | 96 | 人間の女性。脳内メルッヒュン。そこそこお嬢様らしい。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
吸血鬼:吸血鬼。真祖らしい。余とかいっちゃう系。
女:人間の女。ちょっぴりお嬢様。脳内メルッヘェン。
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0:吸血鬼とロイヤルミルクティーを
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:
女:こんばんは。いい月夜ですね。
吸血鬼:懲りずに来たか。女よ。飽きもせず。
女:ええ、もちろん。楽しみにしてましたので。
吸血鬼:ふん。この変人め。
女:レディに変人とは失礼ですね。まあ否定はしませんが。
吸血鬼:しないのか。
女:ふふふ。あがっても?
吸血鬼:拒否したところで無駄であろう?
女:ええ。お邪魔します。
吸血鬼:では今宵も始めるか。
女:ふふ、真夜中の素敵なお茶会を。
:
:
:
0:回想
吸血鬼:(M)切っ掛けは些細なことだった。急な大雨で雨宿りに困っていた女を気紛れで家にあげてしまったがばかりに。
吸血鬼:余が吸血鬼であることが暴かれてしまった。何故バレたのかは聴かないで欲しい。
吸血鬼:ともかくこうなってはこの女をただで帰す訳にはいかない。余の主義に反するが少し怖がらせてでもー
:
女:血を吸ってくれますの?
吸血鬼:ん?
女:私、吸血鬼に血を吸われるのは初めてです!
吸血鬼:だろうな、あったら逆に凄いわ。
女:あれですよね?物語とかでは血を吸われると、こう催淫効果的なものがあるとかなんとか!
女:そのままあれやこれやあって花を散らされてしまうのでしょうか!?あ、今日下着は可愛いやつだったかしら?ちょっと確認してきても…
吸血鬼:まてまてまてまて!!
女:?なんでしょうか?
吸血鬼:色々ツッコミを入れたい所だがまず余が恐ろしくないのか?そして下着を気にするな!あと本の読みすぎだ!
女:ないのですか?催淫効果。
吸血鬼:いやあるが。
女:あるんですか。
吸血鬼:そうではなく!余は!吸血鬼だぞ!普通は血を吸われてそのまま殺されてしまう方を気にするだろう!?
女:だって!あの伝説の吸血鬼ですよ!是非とも一度は血を吸って貰いたいではないですか!あと吸血鬼さんイケメンなのでなし崩し的にそんな感じになっても良いかなと…。何事も人生経験で。
吸血鬼:そんな人生経験しなくてよいわ!いいか、よく知りもしない相手と関係を持つなんて危ないだろうが!もっと自分を大切にしなさい!
女:吸血鬼に正論で説教されるとは。
吸血鬼:全く最近の若い人間はみなこうなのか…。
女:…で。
吸血鬼:なんだ?
女:吸いますの?血。
吸血鬼:……………吸わん。
女:吸血鬼なのに?吸わないんですか?どうして?私は貴方の正体を知ってしまった。処分するなり眷属にするなりしないのですか?
吸血鬼:……。お前のような赤子の血を吸うのは余の主義に反する。
女:赤子…これでも二十歳なのですが。いえ貴方からしたらそうでしょうけど。成る程吸血鬼さんは熟女好きと…。
吸血鬼:誰が熟女好きだ!変な解釈をするな!
女:でしたら何故?自分でいうのもあれですが、私そこそこ顔はいい方ですし、病気、怪我なく健康優良ですよ?今なら無抵抗!なんならあれやそれやのお楽しみ付き!
吸血鬼:遂に自分をプレゼンしてきたぞこの女。あとあれやそれやは要らん。
女:強情ですね。そこまで拒否されると傷付きますよ?ほらちょっとお試しでいいですから吸ってみませんか?ね?ちょっとだけでいいから。えい。
0:女はカバンからソーイングセットを取り出し針で指先を刺す。指先には血ぷっくりと溢れてきた。
吸血鬼:待て待て近寄るな!というか立場逆転してないか?なんだこの状況は!?
女:ほぅら、貴方は段々血が吸いたくなーる。吸いたくなーる。ほら先っちょだけですから…。
吸血鬼:やめろ、それを近付けるな!じゃないと………ふぁ
女:ふぁ?
吸血鬼:ふぁ、ふぁ、ぶえっくしょい!!
女:きゃ!
吸血鬼:ズズッ…。くそ、そらみろ出てしまったではないか症状が。
女:しょ、症状とは?
吸血鬼:アレルギー。
女:アレルギーとは?え?なんの?
吸血鬼:………………………………血液アレルギー。
女:………は?
吸血鬼:………。
女:え?待ってください。え?え?吸血鬼なのに、アレルギーなんですか?血の?
吸血鬼:……そうだ。
女:ええ…。
吸血鬼:なんだその顔は!
女:いやだって……。吸血鬼なのに血が吸えない、しかもアレルギーって……さすがにそれはどうかと思います。
吸血鬼:くっ!余だってな!好きでなった訳ではないのだ!昔は普通に飲めていた。それはもう浴びるように老若男女所構わず血を吸っていた!鮮血公と畏れられる程にな!だがある日突然血を吸ったらくしゃみと蕁麻疹や呼吸困難等の症状が出てしまったのだ……。それ以来血をまともに吸えていない。
女:それ吸いすぎによるキャパオーバーして発症したのでは?
吸血鬼:昔の余…。何故もう少し抑えめに出来なかったのか。
女:でもそうなると食事はどうなさってるのですか?血吸えないんですよね?人間と同じ食べ物でも?
吸血鬼:多少は補給できるが微々たるものだ。要は血に含まれる鉄分やらビタミンが補給さえ出来れば最低限生きていけるので最近はサプリメントを主としている。いやぁ現代便利であるな、すぐ買えるし。
女:サプリで生きてる吸血鬼…いやもう吸えない鬼(き)ですね。
吸血鬼:後は血の代用として牛乳もよく飲む。
女:…なるほど。
吸血鬼:という訳で血が吸えない余は小娘にバレた所で問題はほぼないのだ。だって吸血できないのだから!
吸血鬼:無論言いふらした所で妄言程度にしか思われんだろうがな!はっはっはっ!
女:自分で言ってて哀しくないですかそれ?
吸血鬼:うるさい!
女:まぁ、でも確かにそうですね。吸血鬼なんて普通信じませんし…。
吸血鬼:だが厄介事が起こるのは避けたい。血は吸えぬ為弱体化はしておるが、それでも小娘一人呪い殺すくらいなら造作もー
女:吸血鬼さん。
吸血鬼:ふっ、なんだ?ようやく命乞いか?
女:紅茶はお好きですか?
吸血鬼:ん?紅茶?嗜好品として飲むくらいだが……それがどうした。
女:わかりました。ありがとうございます。今日はもう帰らせて頂きます。雨も小降りになってきましたし。
吸血鬼:は?
女:あ、来週また夜に伺いますので予定空けといてくださいね。もちろん吸血鬼の事は誰にも言いませんのでご安心を。
吸血鬼:いやまて、帰らせる訳がなかろう!というか来週もくる気なのか?殺すといってるのに!?
女:いいものを持ってきますからお楽しみに。それではまた来週。ごきげんよう。
0:バタン。早々に扉を閉めて帰ってしまう。
吸血鬼:…………本当に帰りおったぞあの女!!
:
:
0:一週間後。
女:こんばんは。
吸血鬼:(心底嫌そうな顔)本当に来よった、この女。
女:そんな嫌そうな顔しなくても。
吸血鬼:正気とは思えない!なんなんだ本当に貴様は!?なにが目的だ!
女:良いものを持ってくるって約束したじゃないですか。それに呪い殺すとかおっしゃってたのに待てどもその気配すらないのですから、てっきり歓迎してくださるのかと。
吸血鬼:余は無駄な殺しはせん。それにここ一週間使い魔に貴様を四六時中見張らせていたが誰かに漏らしたりしておらんかったのでな。無論喋れば呪ってやったがな!
女:なんか視線を感じるなと思ったらそんなことしてたのですね……。お風呂とか覗いてたんですね、えっち。
吸血鬼:そんなことしとらんわ!
女:ではお邪魔しまーす!
吸血鬼:そして勝手に入るな!
女:あ、キッチンちょっとお借りしますね。
吸血鬼:いったい何をする気だ。その荷物はなんだ?毒でも盛るつもりか?
女:…しませんよ、そんなこと。なんなら見張ってても良いですよ。
吸血鬼:無論だ。
女:力ずくで追い出さないですね。吸血鬼さんなら出来そうなのに。
吸血鬼:そうだな。お前を小指で持ち上げてそのまま窓から投げ捨てる事も出来るな。だが余は女、子供には極力手を出さない主義でな。
女:老若男女の血を吸ってたのに?
吸血鬼:それは余に害をなそうとする者達だ。殺され喰われても文句はいえまいよ。ああ、勿論お前も余に仇なすというのなら例外ではないぞ。くく…。
吸血鬼:(ニタリと笑い長く尖った牙を見せる)
女:……吸えないのに牙見せられてもあまり怖くないですね。
吸血鬼:ぐっ!
女:ほら繊細に傷付いてないで手伝ってください。
吸血鬼:ところでさっきから何をしている?
女:お湯を沸かしています。
吸血鬼:なんのために。
女:紅茶を飲む為です。
吸血鬼:お前が良いものといっていたのは茶か?
女:ええ、しかもただの紅茶じゃありません。今日飲むのはロイヤルミルクティーです。
吸血鬼:ミルクティー、あの紅茶に牛乳入れたやつであろう。あれはあまり好きではないのだが。
女:その様子だと紅茶にそのまま牛乳入れてるパターンですね。まぁそれもありといえばありですが。
吸血鬼:違うのか?
女:勿論!とびっきりの美味しいのをご用意しましょう。
吸血鬼:ほう。そこまでいうなら期待しておこう。で、何故鍋で湯を沸かしている?ヤカンぐらいならあるぞ。
女:ロイヤルミルクティーはこう作るのです。
吸血鬼:いつも思うが、人間は食事をするのにやたら工程を挟むな、【我々】からしたら理解できぬ事だ
女:ちなみに料理をしたことは?
吸血鬼:無論、ない!ガブッと直飲みが基本だからな。
女:でもいまは吸えないんですよね?
吸血鬼:ぬ、ぬぅぐ…。
女:どうりで調理器具が殆どないなとは思ってたんですが、成る程。あ、鞄から茶葉の袋を取ってもらっていいですか?
吸血鬼:ん?これは茶葉なのか?粒状だが。
女:ああ、それはCTC(シーティーシー)製法で作られた茶葉ですね。味と香りが濃く出るのでミルクティーに向いているのです。
吸血鬼:…なるほど?
女:さて茶葉を入れたら火を止めて蓋をして三分蒸らします。その間にカップにお湯を入れて温めておくと良いですよ。温度の低下を防げます。
吸血鬼:なるほど。
女:三分たったら今度は常温の牛乳を入れます。量はお好みですが今回は水と同量にしましょう。
吸血鬼:最初から牛乳で煮れば良かったのではないのか?
女:そのまま直接煮ると牛乳の成分が邪魔をして茶葉の味が出にくくなってしまうんです。ここポイントですよ。
吸血鬼:なるほどぉ。
女:あとはこのまま煮て…沸騰する直前に火を止めるっと!
女:軽くかき混ぜて、温めておいたカップに移せば…ロイヤルミルクティーの出来上がり、です。
吸血鬼:ほお。これがロイヤルミルクティーなるものか。確かに色味や香りからして違うな。
女:ささっ、冷めないうちに頂きましょう。スコーンも用意しました。蜂蜜や砂糖を入れてもいいですがまずはそのまま。飲んでみてください。
吸血鬼:ふむ、では頂こう。(紅茶を飲む)……ほうこれは。
女:…どうですか?
吸血鬼:確かに余が飲んできたものとはまるで別物だ。口に入れた瞬間の茶葉の豊かな香り。濃い味わいはミルクと混ざることでさらに旨味を増している。柔らかな渋みがあることでくどく感じず飲みやすい。
女:……。
吸血鬼:なんだ?
女:ああ、いえ。想像した以上の的確な感想が来たのでちょっと驚きました。もっと語彙力ない系かと。
吸血鬼:失礼な奴だな。
女:でも気に入って頂けたようで良かったです。
吸血鬼:ああ、これは美味だ。何杯でも飲めるな。
女:ふふふ。
吸血鬼:しかし何故これを余に飲ませようと思ったのだ。
女:………実は下心があるのです。
吸血鬼:ほう。言うてみよ。
女:私、子供の頃から本などで読んでずっと物語の不思議な存在に会ってみたいと常々妄想しておりました。この年になって子供っぽいなどと笑われることもありましたが憧れだったのです!特に吸血鬼は様々な伝承、最近では漫画などでも多く題材にされている世界一有名な存在といっても過言じゃありません!
吸血鬼:ふ、ふむ。
女:そんな伝承だけの存在が!今!目の前に実在しているのです!これが興奮せずにいられますか!!
吸血鬼:わかった、わかったから落ち着け!
女:本当なら私も眷属になってその存在に近付きたかったのですが……まさか血を吸えない吸血鬼とは。はぁ。(深いため息)
吸血鬼:だからあんなに血を吸えと迫ってきたのか。
女:ですから計画変更です。吸血鬼さん!交渉です!
吸血鬼:交渉?
女:月に一度でいいのです。私は美味しいロイヤルミルクティーを入れます。だから吸血鬼さんには私とお話をして欲しいのです。
吸血鬼:話?
女:なれないのならせめて貴方のその体験してきた膨大な【物語】を私に聞かせてはもらえないでしょうか?貴方の口から語られるそれはきっと、どの本よりも現実で非現実に違いありません!
吸血鬼:……本気か?
女:本気も本気大本気です!
吸血鬼:……………………ふふふ、あっはっはっはっは!なんだそれは、たかだか紅茶ひとつで真祖である余と交渉とは。随分とナメられたものだな、あっははは!
女:…………。
吸血鬼:ははは、いいぞ、面白い!気に入った。
女:……え?
吸血鬼:その交渉承けてやろう。有り難く思えよ女。
女:本当ですか!?
吸血鬼:このような戯れは本来好かんが。なに、お前の入れるロイヤルミルクティーは存外旨かった。永き時を生きる余にとっては瞬きにも満たない時間ではあるがその無謀さに免じて暫し時をかけてやろう。
女:ダメ元でしたが本当に承諾して貰えるなんて、ああ。嬉しい…。ふふ。
吸血鬼:では月に一度満月の日の夜。来るといい。
女:満月の日ですか?
吸血鬼:ふっ、その方が「らしい」であろう?
女:……ふふ、そうですね。では満月の日の夜に。お茶会を。
:
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0:現在。
吸血鬼:(M)と、まぁあれから数ヶ月。気まぐれから始まった茶会だが存外まだ続いている。女は余の話を聞くたびに目を輝かせながら嬉しそうに笑っていた。悪い気はしない。そしてロイヤルミルクティーは旨い。旨いのだが…。
:
吸血鬼:ん、そういえば何故なのだ?
女:何故とは?
吸血鬼:どうしてロイヤルミルクティーなのだ?別に他の紅茶、なんなら紅茶でなくても良かったのではないか?
女:…深い意味はないのですが。ただ、吸血鬼さんがよく飲むものと私が好きなものを合わせたら何かが繋がるような気がして。あと美味しいですし。
吸血鬼:そこは大事だな。
女:それに紅茶は外せません。私のライフワークといっても過言ではないのです。
吸血鬼:余には茶葉など何れも一緒に見えるがな。
女:全然違います!ミルクティはアッサムですがダージリンもまた奥深く、ファースト、セカンドフラッシュと、違いを楽しめるとともにグレードや発酵度合い、はたまた農園によっても味が変わるのですよ!それからー
吸血鬼:ええい、この紅茶オタクめ。
女:褒め言葉です。推し農園教えましょうか?
吸血鬼:やめてくれ。この前みたいに二時間も語られては堪ったものではない。
女:ふふふ。さて、ところで次はどんなお話をしてくれますの?
吸血鬼:そうさな、ではあれは三百年前の戦争の時ー
:
吸血鬼:(M)どうせ人なぞ瞬きの間に生きて死に去っていくものだ。ならばいまこの刹那、付き合ってやっても良かろう。女が去るその時まで、戯れに。ロイヤルミルクティーを飲みながら。
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女:(M)全く困ったものです。夢にまでみた吸血鬼さんはまさかの血液アレルギーで血が吸えないなんて。本当に本当に私の血を吸って欲しかった。念願だったのに。だって
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女:私の血を吸えば貴方を殺せるはずだったのに。
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女:代々吸血鬼を殺す血を受け継ぐ一族。それが私の家系。
女:しかし時は流れ吸血鬼も少なくなり現代。一族も今ではただの一般人。そんな血を持っていることすら知らなかった。偶然にも蔵にあった文献を見つけるまでは。
女:最初は先祖の妄言だと思った。ですが調べれば調べるほどにそれは真実であると確信しました!
女:ああ!ずっと憧れていた存在。それが実在したことにも驚きましたがなによりも私の手で、いえ血でその憧れを殺す事が出来るかもしれない……。ゾクゾクしました。
女:それからずっと私の頭はその事でいっぱい。血眼になって吸血鬼を探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して。
女:ようやくみつけました。
女:怒らせても、色仕掛けでもなんなら殺されても構わない。戦う事は出来ません。血さえ飲ませれば、そうすれば!
女:………しかし見つけた吸血鬼は血が吸えませんでした。
女:絶望しました。あの場で罵詈雑言吐かずに我慢した自分を褒めてあげたいくらいです。
女:しかしようやく見つけた吸血鬼。次見つかるかも分かりません。ならば隙をみて血を飲ませるしかありません。
女:まずは仲良し作戦です。正直お茶会を承諾してくれるとは思いませんでした。びっくりです。
女:ですが流石は真祖。なかなか隙を見せてくれません。紅茶に入れようとしてもなにが楽しいのか毎回キッチンに張り付いてきますし。匂いにも敏感。すぐにバレてしまいます。
女:ですが、焦らずじっくりと。絶対に諦めません。その麗しい顔が私の血を飲み苦悶の表情となるその時まで。想像するだけで笑顔が止まりません。楽しみです。なのでいま暫くはお茶会を楽しむとしましょう。
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女:吸血鬼とロイヤルミルクティーを飲みながら。
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吸血鬼:吸血鬼。真祖らしい。余とかいっちゃう系。
女:人間の女。ちょっぴりお嬢様。脳内メルッヘェン。
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0:吸血鬼とロイヤルミルクティーを
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女:こんばんは。いい月夜ですね。
吸血鬼:懲りずに来たか。女よ。飽きもせず。
女:ええ、もちろん。楽しみにしてましたので。
吸血鬼:ふん。この変人め。
女:レディに変人とは失礼ですね。まあ否定はしませんが。
吸血鬼:しないのか。
女:ふふふ。あがっても?
吸血鬼:拒否したところで無駄であろう?
女:ええ。お邪魔します。
吸血鬼:では今宵も始めるか。
女:ふふ、真夜中の素敵なお茶会を。
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0:回想
吸血鬼:(M)切っ掛けは些細なことだった。急な大雨で雨宿りに困っていた女を気紛れで家にあげてしまったがばかりに。
吸血鬼:余が吸血鬼であることが暴かれてしまった。何故バレたのかは聴かないで欲しい。
吸血鬼:ともかくこうなってはこの女をただで帰す訳にはいかない。余の主義に反するが少し怖がらせてでもー
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女:血を吸ってくれますの?
吸血鬼:ん?
女:私、吸血鬼に血を吸われるのは初めてです!
吸血鬼:だろうな、あったら逆に凄いわ。
女:あれですよね?物語とかでは血を吸われると、こう催淫効果的なものがあるとかなんとか!
女:そのままあれやこれやあって花を散らされてしまうのでしょうか!?あ、今日下着は可愛いやつだったかしら?ちょっと確認してきても…
吸血鬼:まてまてまてまて!!
女:?なんでしょうか?
吸血鬼:色々ツッコミを入れたい所だがまず余が恐ろしくないのか?そして下着を気にするな!あと本の読みすぎだ!
女:ないのですか?催淫効果。
吸血鬼:いやあるが。
女:あるんですか。
吸血鬼:そうではなく!余は!吸血鬼だぞ!普通は血を吸われてそのまま殺されてしまう方を気にするだろう!?
女:だって!あの伝説の吸血鬼ですよ!是非とも一度は血を吸って貰いたいではないですか!あと吸血鬼さんイケメンなのでなし崩し的にそんな感じになっても良いかなと…。何事も人生経験で。
吸血鬼:そんな人生経験しなくてよいわ!いいか、よく知りもしない相手と関係を持つなんて危ないだろうが!もっと自分を大切にしなさい!
女:吸血鬼に正論で説教されるとは。
吸血鬼:全く最近の若い人間はみなこうなのか…。
女:…で。
吸血鬼:なんだ?
女:吸いますの?血。
吸血鬼:……………吸わん。
女:吸血鬼なのに?吸わないんですか?どうして?私は貴方の正体を知ってしまった。処分するなり眷属にするなりしないのですか?
吸血鬼:……。お前のような赤子の血を吸うのは余の主義に反する。
女:赤子…これでも二十歳なのですが。いえ貴方からしたらそうでしょうけど。成る程吸血鬼さんは熟女好きと…。
吸血鬼:誰が熟女好きだ!変な解釈をするな!
女:でしたら何故?自分でいうのもあれですが、私そこそこ顔はいい方ですし、病気、怪我なく健康優良ですよ?今なら無抵抗!なんならあれやそれやのお楽しみ付き!
吸血鬼:遂に自分をプレゼンしてきたぞこの女。あとあれやそれやは要らん。
女:強情ですね。そこまで拒否されると傷付きますよ?ほらちょっとお試しでいいですから吸ってみませんか?ね?ちょっとだけでいいから。えい。
0:女はカバンからソーイングセットを取り出し針で指先を刺す。指先には血ぷっくりと溢れてきた。
吸血鬼:待て待て近寄るな!というか立場逆転してないか?なんだこの状況は!?
女:ほぅら、貴方は段々血が吸いたくなーる。吸いたくなーる。ほら先っちょだけですから…。
吸血鬼:やめろ、それを近付けるな!じゃないと………ふぁ
女:ふぁ?
吸血鬼:ふぁ、ふぁ、ぶえっくしょい!!
女:きゃ!
吸血鬼:ズズッ…。くそ、そらみろ出てしまったではないか症状が。
女:しょ、症状とは?
吸血鬼:アレルギー。
女:アレルギーとは?え?なんの?
吸血鬼:………………………………血液アレルギー。
女:………は?
吸血鬼:………。
女:え?待ってください。え?え?吸血鬼なのに、アレルギーなんですか?血の?
吸血鬼:……そうだ。
女:ええ…。
吸血鬼:なんだその顔は!
女:いやだって……。吸血鬼なのに血が吸えない、しかもアレルギーって……さすがにそれはどうかと思います。
吸血鬼:くっ!余だってな!好きでなった訳ではないのだ!昔は普通に飲めていた。それはもう浴びるように老若男女所構わず血を吸っていた!鮮血公と畏れられる程にな!だがある日突然血を吸ったらくしゃみと蕁麻疹や呼吸困難等の症状が出てしまったのだ……。それ以来血をまともに吸えていない。
女:それ吸いすぎによるキャパオーバーして発症したのでは?
吸血鬼:昔の余…。何故もう少し抑えめに出来なかったのか。
女:でもそうなると食事はどうなさってるのですか?血吸えないんですよね?人間と同じ食べ物でも?
吸血鬼:多少は補給できるが微々たるものだ。要は血に含まれる鉄分やらビタミンが補給さえ出来れば最低限生きていけるので最近はサプリメントを主としている。いやぁ現代便利であるな、すぐ買えるし。
女:サプリで生きてる吸血鬼…いやもう吸えない鬼(き)ですね。
吸血鬼:後は血の代用として牛乳もよく飲む。
女:…なるほど。
吸血鬼:という訳で血が吸えない余は小娘にバレた所で問題はほぼないのだ。だって吸血できないのだから!
吸血鬼:無論言いふらした所で妄言程度にしか思われんだろうがな!はっはっはっ!
女:自分で言ってて哀しくないですかそれ?
吸血鬼:うるさい!
女:まぁ、でも確かにそうですね。吸血鬼なんて普通信じませんし…。
吸血鬼:だが厄介事が起こるのは避けたい。血は吸えぬ為弱体化はしておるが、それでも小娘一人呪い殺すくらいなら造作もー
女:吸血鬼さん。
吸血鬼:ふっ、なんだ?ようやく命乞いか?
女:紅茶はお好きですか?
吸血鬼:ん?紅茶?嗜好品として飲むくらいだが……それがどうした。
女:わかりました。ありがとうございます。今日はもう帰らせて頂きます。雨も小降りになってきましたし。
吸血鬼:は?
女:あ、来週また夜に伺いますので予定空けといてくださいね。もちろん吸血鬼の事は誰にも言いませんのでご安心を。
吸血鬼:いやまて、帰らせる訳がなかろう!というか来週もくる気なのか?殺すといってるのに!?
女:いいものを持ってきますからお楽しみに。それではまた来週。ごきげんよう。
0:バタン。早々に扉を閉めて帰ってしまう。
吸血鬼:…………本当に帰りおったぞあの女!!
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0:一週間後。
女:こんばんは。
吸血鬼:(心底嫌そうな顔)本当に来よった、この女。
女:そんな嫌そうな顔しなくても。
吸血鬼:正気とは思えない!なんなんだ本当に貴様は!?なにが目的だ!
女:良いものを持ってくるって約束したじゃないですか。それに呪い殺すとかおっしゃってたのに待てどもその気配すらないのですから、てっきり歓迎してくださるのかと。
吸血鬼:余は無駄な殺しはせん。それにここ一週間使い魔に貴様を四六時中見張らせていたが誰かに漏らしたりしておらんかったのでな。無論喋れば呪ってやったがな!
女:なんか視線を感じるなと思ったらそんなことしてたのですね……。お風呂とか覗いてたんですね、えっち。
吸血鬼:そんなことしとらんわ!
女:ではお邪魔しまーす!
吸血鬼:そして勝手に入るな!
女:あ、キッチンちょっとお借りしますね。
吸血鬼:いったい何をする気だ。その荷物はなんだ?毒でも盛るつもりか?
女:…しませんよ、そんなこと。なんなら見張ってても良いですよ。
吸血鬼:無論だ。
女:力ずくで追い出さないですね。吸血鬼さんなら出来そうなのに。
吸血鬼:そうだな。お前を小指で持ち上げてそのまま窓から投げ捨てる事も出来るな。だが余は女、子供には極力手を出さない主義でな。
女:老若男女の血を吸ってたのに?
吸血鬼:それは余に害をなそうとする者達だ。殺され喰われても文句はいえまいよ。ああ、勿論お前も余に仇なすというのなら例外ではないぞ。くく…。
吸血鬼:(ニタリと笑い長く尖った牙を見せる)
女:……吸えないのに牙見せられてもあまり怖くないですね。
吸血鬼:ぐっ!
女:ほら繊細に傷付いてないで手伝ってください。
吸血鬼:ところでさっきから何をしている?
女:お湯を沸かしています。
吸血鬼:なんのために。
女:紅茶を飲む為です。
吸血鬼:お前が良いものといっていたのは茶か?
女:ええ、しかもただの紅茶じゃありません。今日飲むのはロイヤルミルクティーです。
吸血鬼:ミルクティー、あの紅茶に牛乳入れたやつであろう。あれはあまり好きではないのだが。
女:その様子だと紅茶にそのまま牛乳入れてるパターンですね。まぁそれもありといえばありですが。
吸血鬼:違うのか?
女:勿論!とびっきりの美味しいのをご用意しましょう。
吸血鬼:ほう。そこまでいうなら期待しておこう。で、何故鍋で湯を沸かしている?ヤカンぐらいならあるぞ。
女:ロイヤルミルクティーはこう作るのです。
吸血鬼:いつも思うが、人間は食事をするのにやたら工程を挟むな、【我々】からしたら理解できぬ事だ
女:ちなみに料理をしたことは?
吸血鬼:無論、ない!ガブッと直飲みが基本だからな。
女:でもいまは吸えないんですよね?
吸血鬼:ぬ、ぬぅぐ…。
女:どうりで調理器具が殆どないなとは思ってたんですが、成る程。あ、鞄から茶葉の袋を取ってもらっていいですか?
吸血鬼:ん?これは茶葉なのか?粒状だが。
女:ああ、それはCTC(シーティーシー)製法で作られた茶葉ですね。味と香りが濃く出るのでミルクティーに向いているのです。
吸血鬼:…なるほど?
女:さて茶葉を入れたら火を止めて蓋をして三分蒸らします。その間にカップにお湯を入れて温めておくと良いですよ。温度の低下を防げます。
吸血鬼:なるほど。
女:三分たったら今度は常温の牛乳を入れます。量はお好みですが今回は水と同量にしましょう。
吸血鬼:最初から牛乳で煮れば良かったのではないのか?
女:そのまま直接煮ると牛乳の成分が邪魔をして茶葉の味が出にくくなってしまうんです。ここポイントですよ。
吸血鬼:なるほどぉ。
女:あとはこのまま煮て…沸騰する直前に火を止めるっと!
女:軽くかき混ぜて、温めておいたカップに移せば…ロイヤルミルクティーの出来上がり、です。
吸血鬼:ほお。これがロイヤルミルクティーなるものか。確かに色味や香りからして違うな。
女:ささっ、冷めないうちに頂きましょう。スコーンも用意しました。蜂蜜や砂糖を入れてもいいですがまずはそのまま。飲んでみてください。
吸血鬼:ふむ、では頂こう。(紅茶を飲む)……ほうこれは。
女:…どうですか?
吸血鬼:確かに余が飲んできたものとはまるで別物だ。口に入れた瞬間の茶葉の豊かな香り。濃い味わいはミルクと混ざることでさらに旨味を増している。柔らかな渋みがあることでくどく感じず飲みやすい。
女:……。
吸血鬼:なんだ?
女:ああ、いえ。想像した以上の的確な感想が来たのでちょっと驚きました。もっと語彙力ない系かと。
吸血鬼:失礼な奴だな。
女:でも気に入って頂けたようで良かったです。
吸血鬼:ああ、これは美味だ。何杯でも飲めるな。
女:ふふふ。
吸血鬼:しかし何故これを余に飲ませようと思ったのだ。
女:………実は下心があるのです。
吸血鬼:ほう。言うてみよ。
女:私、子供の頃から本などで読んでずっと物語の不思議な存在に会ってみたいと常々妄想しておりました。この年になって子供っぽいなどと笑われることもありましたが憧れだったのです!特に吸血鬼は様々な伝承、最近では漫画などでも多く題材にされている世界一有名な存在といっても過言じゃありません!
吸血鬼:ふ、ふむ。
女:そんな伝承だけの存在が!今!目の前に実在しているのです!これが興奮せずにいられますか!!
吸血鬼:わかった、わかったから落ち着け!
女:本当なら私も眷属になってその存在に近付きたかったのですが……まさか血を吸えない吸血鬼とは。はぁ。(深いため息)
吸血鬼:だからあんなに血を吸えと迫ってきたのか。
女:ですから計画変更です。吸血鬼さん!交渉です!
吸血鬼:交渉?
女:月に一度でいいのです。私は美味しいロイヤルミルクティーを入れます。だから吸血鬼さんには私とお話をして欲しいのです。
吸血鬼:話?
女:なれないのならせめて貴方のその体験してきた膨大な【物語】を私に聞かせてはもらえないでしょうか?貴方の口から語られるそれはきっと、どの本よりも現実で非現実に違いありません!
吸血鬼:……本気か?
女:本気も本気大本気です!
吸血鬼:……………………ふふふ、あっはっはっはっは!なんだそれは、たかだか紅茶ひとつで真祖である余と交渉とは。随分とナメられたものだな、あっははは!
女:…………。
吸血鬼:ははは、いいぞ、面白い!気に入った。
女:……え?
吸血鬼:その交渉承けてやろう。有り難く思えよ女。
女:本当ですか!?
吸血鬼:このような戯れは本来好かんが。なに、お前の入れるロイヤルミルクティーは存外旨かった。永き時を生きる余にとっては瞬きにも満たない時間ではあるがその無謀さに免じて暫し時をかけてやろう。
女:ダメ元でしたが本当に承諾して貰えるなんて、ああ。嬉しい…。ふふ。
吸血鬼:では月に一度満月の日の夜。来るといい。
女:満月の日ですか?
吸血鬼:ふっ、その方が「らしい」であろう?
女:……ふふ、そうですね。では満月の日の夜に。お茶会を。
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0:現在。
吸血鬼:(M)と、まぁあれから数ヶ月。気まぐれから始まった茶会だが存外まだ続いている。女は余の話を聞くたびに目を輝かせながら嬉しそうに笑っていた。悪い気はしない。そしてロイヤルミルクティーは旨い。旨いのだが…。
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吸血鬼:ん、そういえば何故なのだ?
女:何故とは?
吸血鬼:どうしてロイヤルミルクティーなのだ?別に他の紅茶、なんなら紅茶でなくても良かったのではないか?
女:…深い意味はないのですが。ただ、吸血鬼さんがよく飲むものと私が好きなものを合わせたら何かが繋がるような気がして。あと美味しいですし。
吸血鬼:そこは大事だな。
女:それに紅茶は外せません。私のライフワークといっても過言ではないのです。
吸血鬼:余には茶葉など何れも一緒に見えるがな。
女:全然違います!ミルクティはアッサムですがダージリンもまた奥深く、ファースト、セカンドフラッシュと、違いを楽しめるとともにグレードや発酵度合い、はたまた農園によっても味が変わるのですよ!それからー
吸血鬼:ええい、この紅茶オタクめ。
女:褒め言葉です。推し農園教えましょうか?
吸血鬼:やめてくれ。この前みたいに二時間も語られては堪ったものではない。
女:ふふふ。さて、ところで次はどんなお話をしてくれますの?
吸血鬼:そうさな、ではあれは三百年前の戦争の時ー
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吸血鬼:(M)どうせ人なぞ瞬きの間に生きて死に去っていくものだ。ならばいまこの刹那、付き合ってやっても良かろう。女が去るその時まで、戯れに。ロイヤルミルクティーを飲みながら。
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女:(M)全く困ったものです。夢にまでみた吸血鬼さんはまさかの血液アレルギーで血が吸えないなんて。本当に本当に私の血を吸って欲しかった。念願だったのに。だって
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女:私の血を吸えば貴方を殺せるはずだったのに。
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女:代々吸血鬼を殺す血を受け継ぐ一族。それが私の家系。
女:しかし時は流れ吸血鬼も少なくなり現代。一族も今ではただの一般人。そんな血を持っていることすら知らなかった。偶然にも蔵にあった文献を見つけるまでは。
女:最初は先祖の妄言だと思った。ですが調べれば調べるほどにそれは真実であると確信しました!
女:ああ!ずっと憧れていた存在。それが実在したことにも驚きましたがなによりも私の手で、いえ血でその憧れを殺す事が出来るかもしれない……。ゾクゾクしました。
女:それからずっと私の頭はその事でいっぱい。血眼になって吸血鬼を探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して。
女:ようやくみつけました。
女:怒らせても、色仕掛けでもなんなら殺されても構わない。戦う事は出来ません。血さえ飲ませれば、そうすれば!
女:………しかし見つけた吸血鬼は血が吸えませんでした。
女:絶望しました。あの場で罵詈雑言吐かずに我慢した自分を褒めてあげたいくらいです。
女:しかしようやく見つけた吸血鬼。次見つかるかも分かりません。ならば隙をみて血を飲ませるしかありません。
女:まずは仲良し作戦です。正直お茶会を承諾してくれるとは思いませんでした。びっくりです。
女:ですが流石は真祖。なかなか隙を見せてくれません。紅茶に入れようとしてもなにが楽しいのか毎回キッチンに張り付いてきますし。匂いにも敏感。すぐにバレてしまいます。
女:ですが、焦らずじっくりと。絶対に諦めません。その麗しい顔が私の血を飲み苦悶の表情となるその時まで。想像するだけで笑顔が止まりません。楽しみです。なのでいま暫くはお茶会を楽しむとしましょう。
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女:吸血鬼とロイヤルミルクティーを飲みながら。
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