台本概要

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タイトル 黒い昼
作者名 不尽子(つきぬこ)  (@tsukinuko)
ジャンル コメディ
演者人数 4人用台本(男2、女2)
時間 20 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 皆既日食と同時に月が太陽を捕食し、朝が来なくなった地球は氷河期の危機に!月の女神も登場する超絶カオスなギャグコメディ!
ご使用の際は聞きたいのでご一報下さると嬉しいです(強制ではありません)。
男子とアポロ、女子とルナは兼役でも大丈夫です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
男子 99 男子高生。頭の良い寝坊助。ツッコミ。
女子 91 女子高生。しっかり者だが頭はファンシー。ボケ。
ルナ 33 月の女神。悲劇のヒロイン気取り。一番頭が残念。
アポロ 11 太陽神。めちゃくちゃ優しい。一番の常識神。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:男子が自室で寝ていると、スマホの着信音が鳴り響く。 男子:何だようるせーな…まだ3時じゃねーか…こんな時間に誰だよ。ったく……。 男子:もしもし? 女子:ちょっとあんた何してんの!?もうすぐ授業終わっちゃうわよ!? 男子:は?授業が終わる?今は夜中の3時だぞ?いつの間にうちは夜間学校になったんだ? 男子:てか、夜間学校でもこんな時間に授業しねーよ。 女子:ちーがーう!あーもうとにかく学校来て! 0:電話が一方的に切れる。 男子:(溜息混じりに)何だってんだよ…。 0:男子が女子の居る教室に登校してくる。 女子:もう授業終わっちゃったじゃない!何やってたの!? 男子:寝てた。 女子:はぁ!?あんたバカじゃないの!? 男子:いや、普通こんな時間だったら皆寝てるだろ! 女子:何言ってんの?普通の時間でしょ? 男子:お前が何言ってんだよ!今は夜の4時だぞ!? 女子:違う、昼の4時よ! 0:間 男子:……は? 女子:だから、今はお昼。いやもう夕方か。 男子:あの、意味が分からないんですけど…? 女子:え?あんたニュース見てないの? 男子:テレビはゲームやるときしかつけないし。 女子:新聞は? 男子:取ってない。 女子:SNSは? 男子:やってない。 女子:友達から何も……ってあんた友達居ないか。 男子:ほっとけ! 女子:(大きな溜息)しょうがないわねぇ……いーい?今日は月曜日で、夕方の4時! 女子:でもあんたの言う通り、こんなに真っ暗じゃ夜の4時にも思えるわ。 男子:だよな、俺がおかしいんじゃないよな!? 女子:話は最後まで聞く!昨日、何が起こったか覚えてる? 男子:え!?昨日は……皆既日食があったよな! 女子:その通り!昨日の皆既日食は、それはそれは素晴らしかったわ。 女子:……でもね、ある異常事態が発生したの。 男子:異常事態?それがこの真っ暗なお昼なのか? 女子:そう。その異常事態っていうのがね……。 0:間。何も言わない女子に男子が少し焦る。 男子:な、何だよ? 女子:……本当に、皆既日食だったの。 男子:……は? 女子:だから、本当にお月様がお日様を食べちゃったの! 男子:……は!? 女子:自分で調べろ!! 男子:あ、はい分かりました。えっと……昨日午後1時37分に皆既日食が発生した。 男子:しかし、それと同時に月が太陽を捕食するという前代未聞の事件が発生した……!? 男子:え、これ……!? 女子:そーゆー事。 男子:いや待てよ、おかしくねぇか!?太陽は月よりも遥かにデカいし、 男子:大体あんな燃えてんのどうやって食うんだよ!? 女子:問題はそこなのよ。 女子:お月様が一人でお日様をモグモグしようとしても、ゴワッと燃やされるのがオチだし。 男子:何か言い方がファンシーだな。 女子:話の腰を折らない! 男子:さーせん。 女子:ただある天文学者さんが言うには、その時お日様は燃えてなかったんだって。 男子:え!?じゃあ、太陽が只のデカい隕石になってたって事か!? 女子:まぁ……要するにそういう事ね。 男子:って事は……ヤバいじゃねぇか! 女子:そうよ!あんたは寝坊して一日学校をサボったの! 男子:そっちかよ!いや、確かにそうだけどさ……。 女子:でも日中暗くなったからって授業無しって訳にもいかないから、学校はそのままってワケ。 女子:分かった? 男子:そりゃ分かったけど、お前それ超ヤバい事だって分かってる? 女子:当たり前でしょ!お昼でも暗いから、小学生とかは危ない! 男子:それもそうだけど!太陽がなくなったんだぞ!?ヤバいだろーが!! 女子:ヤバい……あ!太陽光発電の意味が無くなる!エコじゃない! 男子:だあぁーーーもぉーーー!!! 女子:何なのよ!? 男子:いいか!?この地球で熱帯とか温帯とか、日本に四季があったりするのは一体何のお陰だ!? 女子:何って……太陽? 男子:そうだ!で、その太陽が消えたんだ!どういう事になる!? 女子:えっと、その熱帯とか四季がなくなっちゃって……。 男子:つまり? 女子:つまり……気温が、下がっちゃう!? 男子:その通り!ただでさえ冬は例年クソ寒くなってってんだ! 男子:それ以上に気温が下がったら…地球全土が氷河期だ!! 女子:い……いやああぁ!!私寒いの嫌いなのにぃ~!! 男子:分かったか!?太陽が消滅するって事は、お前が考えてる以上にヤバいんだよ! 女子:うわぁ~どうしよう~……。 男子:今はまだ地熱で持つとして……来年、再来年からは本格的な氷河期になるぞ。 女子:何とかしなきゃ! 男子:どうやって? 女子:えっと、ほら!お月様にお日様を吐き出してもらうの! 男子:どうやって!? 女子:月の女神様にお願いするのよ! 0:間 男子:……うん。お前の頭がいかにファンシーかはよく分かった。 男子:とりあえずお前、現実見ような? 女子:ふんっ!(男子を殴る) 男子:ぐはぁっ! 女子:失礼ね!私はいつでも真剣よ! 男子:余計ダメじゃん!大体お前、神様だとかそんなの本当に居ると思うのか!? 女子:居ないの? 男子:居る訳ねーだろ! 女子:……前々から思ってたけど、あんたって夢無いわよね。 男子:そーゆー問題じゃねーからこれ!!(でもちょっと気にしてる) 女子:でもそんなに言うんなら、あんたは何か解決策考えてんの? 男子:えっ!?……いや、何も……。 女子:何それ、人の事言えた義理? 男子:でもお前神様はねーわ。 女子:ひどい! 男子:これが一般常識だ! 0:両者暫く睨み合い、同時に溜息を吐く。 女子:じゃあどうするのよ?今からでも考えてみてよ。 男子:んー……新しく太陽を作る、とか? 女子:どうやって? 男子:それは科学者達に任せようぜ。 女子:他力本願ねぇ。 男子:しょうがないだろ、俺達みたいな一般学生に何が出来るってんだよ。 女子:だから、神様にお願いを…… 男子:(女子に被せる)それは忘れろ! 女子:何でよ!もしかしたら本当に月の女神様が居るかも知れないでしょ!? 男子:あのな、よく考えてみろ!神様なんて本当に居たら今頃戦争なんてねぇし、不幸な人間なんざいねぇだろうが! いつの間にかルナが立っている。 ルナ:それは違います。私達の使命は人間を見守る事であって、人間に手助けをする事ではありません。 女子:ほら!だから神様は絶対居るの! 男子:んな役立たずな神様要らねーよ! ルナ:人間のくせに失礼ですね。 女子:そうだよ、今のはあんまりだよ! 男子:だからこれが一般常し…き?(ルナの存在に気付く) 女子:……え? 男子:誰?(女子と同時) 女子:誰?(男子と同時) ルナ:貴方達がさっきから言ってる月の女神、ルナです。 女子:(嬉しそうに)えっ!? 男子:(ぽかんと)マジ? 女子:わー凄い!本物の女神様だ!凄い凄い! ルナ:うふふ、もっと崇(あが)めなさい。 男子:……やい、やいやい! お前が太陽を食った張本人か! 男子:そんなに腹膨らまして、美味かったかよ!?なぁ! ルナ:…貴方、いちいち失礼ですね。人間のくせに。 男子:うるせぇ!とっとと太陽を吐き出して、元に戻せってんだよ! 女子:ちょ、もっと丁寧にお願いしなよ! ルナ:……吐き出せ、ですか……。 男子:ん? 女子:ほら、あんたが偉そうに言うから! ルナ:そう、あれは昨日の事でした……。 0:ルナの回想。 アポロ:ルナ、君に頼みたい事がある。 ルナ:どうしたんですかアポロ、そんなに暗い顔をして。 アポロ:聞いてくれ、お前には黙っていたのだが…私にはもう太陽を動かすだけの力が無いのだ。 ルナ:何ですって!? アポロ:前々から私の力が弱まっているのを感じていた。 アポロ:だが、君に心配をかけたくなかったのだ。すまない……。 ルナ:アポロ……。 アポロ:もう少しで太陽は燃え尽きる。そうなればあの星に住む人間達が危ない。 アポロ:だからその前に……ルナ、私を消せ。 ルナ:そんな!私に出来る訳がないでしょう!? アポロ:しかしこのまま太陽が燃え尽きれば、どうなるか分からない! アポロ:軌道を乱し、地球や君の居る月に衝突するかも知れない!私はそれが恐ろしいのだ……。 ルナ:……わかりました。 ルナ:貴方がそれを望むなら、私は涙を飲んで貴方を消して差し上げましょう! 0:回想終わり ルナ:愛する者を消さなければならないという悲しき定め! ルナ:アポロを失った私は、永遠に共に居られるよう彼を食らったのです……。(泣き崩れる) 男子:(ドン引き)……おい、頼んでもないのに勝手に語りだしたぞあのカニバリスト。 女子:(もらい泣き)ルナさん可哀想……。 男子:(溜息)とりあえず事情は分かったからさ、この状況何とかしてくれよ。 ルナ:貴方、人間のくせに空気が読めないんですね。 男子:いちいち人間のくせにって腹立つ奴だな! 女子:ちょっとやめなって。ルナさん可哀想じゃん! 男子:可哀想ってお前なぁ…こいつが太陽を食ったのは事実だろうが! 女子:それは、そうだけど……。 男子:とりあえず……。(握り拳の準備をする) ルナ:(ずっと啜り泣いている) 女子:(男子の挙動に焦る)え、ちょ、あんた何しようとしてんのよ! 男子:何って、あのデカい腹をぶん殴ってやるんだよ! 女子:女の人を殴る気!? あんた最低! 男子:いや、あれ人じゃなくて神だし…。 男子:じゃなくて、とりあえず太陽を吐き出させりゃ一件落着だろ!? ルナ:やはり人間は愚かですね。私の話をまるで聞いてない。 ルナ:私がアポロを吐き出したところで、彼に太陽を動かす力はありません。 女子:ほら! 男子:いや、ほらって…じゃあどうしたらいいんだよ! ルナ:何がですか? 男子:とぼけんな!お前が変な事すっから地球に昼が消えたんだ! 男子:このままだと氷河期になって、それこそ地球壊滅だ! 女子:そうなんです!だから女神様、何とかして下さい! ルナ:……残念ですが、私ではアポロの代行は不可能です。 男子:何だと!?(女子と同時に) 女子:えぇ~!?(男子と同時に) 男子:じゃあ俺達が凍るのを待てって言うのかよ! ルナ:誰もそんな事は言ってません。 ルナ:まぁ、正直貴方はムカつくので勝手に凍っていただいて構いませんが。 男子:おいおいおいおいおいおいぃ!? ルナ:とにかく私は疲れました。今日はこれで帰らせていただきます。 男子:は!?待てよ、話はまだ終わってない! 女子:(男子に被せる)またね~ルナさん! 男子:(がっくりして溜息) 0:翌日、教室に一人居る女子の所へ男子が登校。 女子:あ、あんたまた遅刻!もう授業終わってるし! 男子:しょうがねーだろ。こんな暗いのに起きてられっかっての。(欠伸して溜息) 女子:随分と元気ないわね。どうしたの? 男子:(イライラしながら)お前分かってんのかぁ? 男子:あと2、3年すりゃ俺達は氷漬けになっちまうんだぞ!? 男子:それなのにあいつは考え無しに太陽食いやがって…何様だってんだ! 女子:神様。 男子:認めるかっ! 女子:…でも、考え無しにってのは違うと思う。 女子:だって、太陽が地球にぶつかったら危ないって言ってたじゃん。 男子:あのなぁ…そんな事になる訳ねぇだろ? 男子:燃えてようと燃えてまいと、太陽が地球に衝突なんざしねぇっての! 女子:そうなの? 男子:そうなの! 女子:じゃあ、何でルナさんはアポロさんを食べちゃったんだろ? 男子:どっかの誰かが言ってたぜ。究極の愛はカニバリズムだって。 女子:…昨日も思ったけど、そういう言い方やめなさいよ! 男子:じゃあ何だ?カニバリズムじゃなくて、カミバリズムか!? 女子:そう! それで良し! 男子:えっ、いいの!? いつの間にかルナが立っている。 ルナ:失礼な事言わないで下さい。 男子:うわぁっ!?(女子と同時) 女子:うわぁっ!?(男子と同時) 女子:あ、ルナさんこんにちわ! ルナ:貴女、昨日から思っていましたが馴れ馴れしいですよ。 ルナ:私は月の女神なのですから、「ルナ様」と呼んでいただかないと。 男子:うっぜぇ~……。 ルナ:お黙りなさい人間のくせに。 女子:ねぇルナさん、こいつが太陽は燃え尽きたくらいじゃ地球に落ちないって言ってたんですけど、 女子:アポロさんを食べたのには、何か別の理由があるんですよね? ルナ:…貴女もつくづく私の話を聞きませんね。 ルナ:確かに、私が彼を食らったのにはもう一つ理由があります。 男子:(バカにしたように)究極の愛はカミバリズムぅ~。 ルナ:(イラッ)もういいです。話す気が失せました。 女子:バッカ、もう!ルナさん待ってぇ~! ルナ:(泣き出しそうな声で)どうせ貴方達には分からないでしょう! ルナ:私がどれだけアポロを愛しているかなんて! 男子:待て待て、そこでその言い方はカニバリストを認めてんぞ!? ルナ:(突然苦しみ始める)うっ……ぐ…… 女子:え、ちょ、ルナさんどうしたの!? 男子:まぁそりゃ腹も壊すわ。 ルナ:う、産まれるっ……!? 男子:はぁ!?(女子と同時) 女子:はぁ!?(男子と同時) 女子:ちょ、あんた、救急車! 男子:お、おう!! 0: アポロ:(産声)おぎゃあ!おぎゃあ! 0:翌朝、女子の居る教室に男子が登校する。 女子:あ、おはよ!今日はちゃんと来たわね! 男子:おう!あ~やっぱ太陽の光は気持ちいいぜ! 女子:でも本当にビックリしたね。まさかあの赤ちゃんがアポロさんだったなんて。 男子:だな。生まれ変わらせる為に食ったなんざ、正に神の成せる業(わざ)ってやつだな。 0:二人で笑い合い、その後暫く黙り込む。 男子:(少し気恥ずかしそうに)……あのさ。 女子:え? 男子:その、今日の授業が終わったら ルナ:(男子に被せる)お~っほっほっほ!! ルナ:あら貴方達、人間のくせにまだ生きてらしたのね? 男子:(ボソッと)…空気読めよ、神様のくせに。 アポロ:やぁ君達、随分と迷惑をかけてしまったみたいですまなかったね。 女子:成長早いですね、ってツッコミはやめとくか。(ここまで独り言) 女子:大丈夫ですよアポロさん、結果オーライだったんですし。 ルナ:そうですよアポロ、こんな人間達と親しんでいたら太陽神としての格が下がりますよ。 男子:お前は月の女神としての格もクソもねーけどな。 アポロ:まぁそう言ってやらないでくれ。私の大事な親友なんだ。 女子:えっ? 男子:ん? ルナ:(信じられないような声で)……アポロ、今何と言いました? アポロ:ん?どうしたんだいルナ? 男子:ぶふっ……!(吹き出して口を押さえる) 女子:親友って……恋人同士じゃないんですか? アポロ:え?いやだなぁ、私とルナは竹馬(ちくば)の友さ。 アポロ:恋人とかそういう仲ではないよ。 ルナ:(ショック)……ああぁ…… 女子:ルナさん!? アポロ:(慌てて)どうしたんだルナ!やはり無理をさせすぎてしまったか!? アポロ:今日はもう帰ろう。ゆっくり休むんだ! ルナ:ああぁ……。 0:アポロがルナを連れて退場する。 男子:だっははははははは!!! 女子:ちょっと、何笑ってんのよ! 男子:いや、何つーか…ざまぁ! って思ってよ。 女子:あんたねぇ! 男子:俺だけならまだしも、お前の事まで悪く言ってたんだぞ? 男子:あー、ムカついてたからスッキリしたぜ! 女子:え? 男子:あっ……。 女子:今、何て…。 男子:…さ、さぁーて、帰って寝るとするか! 女子:え!?ちょっと、まだ授業始まってないよ!? 男子:さようならぁ~!そしておやすみぃ~! 女子:もう、待ちなさいって!!

0:男子が自室で寝ていると、スマホの着信音が鳴り響く。 男子:何だようるせーな…まだ3時じゃねーか…こんな時間に誰だよ。ったく……。 男子:もしもし? 女子:ちょっとあんた何してんの!?もうすぐ授業終わっちゃうわよ!? 男子:は?授業が終わる?今は夜中の3時だぞ?いつの間にうちは夜間学校になったんだ? 男子:てか、夜間学校でもこんな時間に授業しねーよ。 女子:ちーがーう!あーもうとにかく学校来て! 0:電話が一方的に切れる。 男子:(溜息混じりに)何だってんだよ…。 0:男子が女子の居る教室に登校してくる。 女子:もう授業終わっちゃったじゃない!何やってたの!? 男子:寝てた。 女子:はぁ!?あんたバカじゃないの!? 男子:いや、普通こんな時間だったら皆寝てるだろ! 女子:何言ってんの?普通の時間でしょ? 男子:お前が何言ってんだよ!今は夜の4時だぞ!? 女子:違う、昼の4時よ! 0:間 男子:……は? 女子:だから、今はお昼。いやもう夕方か。 男子:あの、意味が分からないんですけど…? 女子:え?あんたニュース見てないの? 男子:テレビはゲームやるときしかつけないし。 女子:新聞は? 男子:取ってない。 女子:SNSは? 男子:やってない。 女子:友達から何も……ってあんた友達居ないか。 男子:ほっとけ! 女子:(大きな溜息)しょうがないわねぇ……いーい?今日は月曜日で、夕方の4時! 女子:でもあんたの言う通り、こんなに真っ暗じゃ夜の4時にも思えるわ。 男子:だよな、俺がおかしいんじゃないよな!? 女子:話は最後まで聞く!昨日、何が起こったか覚えてる? 男子:え!?昨日は……皆既日食があったよな! 女子:その通り!昨日の皆既日食は、それはそれは素晴らしかったわ。 女子:……でもね、ある異常事態が発生したの。 男子:異常事態?それがこの真っ暗なお昼なのか? 女子:そう。その異常事態っていうのがね……。 0:間。何も言わない女子に男子が少し焦る。 男子:な、何だよ? 女子:……本当に、皆既日食だったの。 男子:……は? 女子:だから、本当にお月様がお日様を食べちゃったの! 男子:……は!? 女子:自分で調べろ!! 男子:あ、はい分かりました。えっと……昨日午後1時37分に皆既日食が発生した。 男子:しかし、それと同時に月が太陽を捕食するという前代未聞の事件が発生した……!? 男子:え、これ……!? 女子:そーゆー事。 男子:いや待てよ、おかしくねぇか!?太陽は月よりも遥かにデカいし、 男子:大体あんな燃えてんのどうやって食うんだよ!? 女子:問題はそこなのよ。 女子:お月様が一人でお日様をモグモグしようとしても、ゴワッと燃やされるのがオチだし。 男子:何か言い方がファンシーだな。 女子:話の腰を折らない! 男子:さーせん。 女子:ただある天文学者さんが言うには、その時お日様は燃えてなかったんだって。 男子:え!?じゃあ、太陽が只のデカい隕石になってたって事か!? 女子:まぁ……要するにそういう事ね。 男子:って事は……ヤバいじゃねぇか! 女子:そうよ!あんたは寝坊して一日学校をサボったの! 男子:そっちかよ!いや、確かにそうだけどさ……。 女子:でも日中暗くなったからって授業無しって訳にもいかないから、学校はそのままってワケ。 女子:分かった? 男子:そりゃ分かったけど、お前それ超ヤバい事だって分かってる? 女子:当たり前でしょ!お昼でも暗いから、小学生とかは危ない! 男子:それもそうだけど!太陽がなくなったんだぞ!?ヤバいだろーが!! 女子:ヤバい……あ!太陽光発電の意味が無くなる!エコじゃない! 男子:だあぁーーーもぉーーー!!! 女子:何なのよ!? 男子:いいか!?この地球で熱帯とか温帯とか、日本に四季があったりするのは一体何のお陰だ!? 女子:何って……太陽? 男子:そうだ!で、その太陽が消えたんだ!どういう事になる!? 女子:えっと、その熱帯とか四季がなくなっちゃって……。 男子:つまり? 女子:つまり……気温が、下がっちゃう!? 男子:その通り!ただでさえ冬は例年クソ寒くなってってんだ! 男子:それ以上に気温が下がったら…地球全土が氷河期だ!! 女子:い……いやああぁ!!私寒いの嫌いなのにぃ~!! 男子:分かったか!?太陽が消滅するって事は、お前が考えてる以上にヤバいんだよ! 女子:うわぁ~どうしよう~……。 男子:今はまだ地熱で持つとして……来年、再来年からは本格的な氷河期になるぞ。 女子:何とかしなきゃ! 男子:どうやって? 女子:えっと、ほら!お月様にお日様を吐き出してもらうの! 男子:どうやって!? 女子:月の女神様にお願いするのよ! 0:間 男子:……うん。お前の頭がいかにファンシーかはよく分かった。 男子:とりあえずお前、現実見ような? 女子:ふんっ!(男子を殴る) 男子:ぐはぁっ! 女子:失礼ね!私はいつでも真剣よ! 男子:余計ダメじゃん!大体お前、神様だとかそんなの本当に居ると思うのか!? 女子:居ないの? 男子:居る訳ねーだろ! 女子:……前々から思ってたけど、あんたって夢無いわよね。 男子:そーゆー問題じゃねーからこれ!!(でもちょっと気にしてる) 女子:でもそんなに言うんなら、あんたは何か解決策考えてんの? 男子:えっ!?……いや、何も……。 女子:何それ、人の事言えた義理? 男子:でもお前神様はねーわ。 女子:ひどい! 男子:これが一般常識だ! 0:両者暫く睨み合い、同時に溜息を吐く。 女子:じゃあどうするのよ?今からでも考えてみてよ。 男子:んー……新しく太陽を作る、とか? 女子:どうやって? 男子:それは科学者達に任せようぜ。 女子:他力本願ねぇ。 男子:しょうがないだろ、俺達みたいな一般学生に何が出来るってんだよ。 女子:だから、神様にお願いを…… 男子:(女子に被せる)それは忘れろ! 女子:何でよ!もしかしたら本当に月の女神様が居るかも知れないでしょ!? 男子:あのな、よく考えてみろ!神様なんて本当に居たら今頃戦争なんてねぇし、不幸な人間なんざいねぇだろうが! いつの間にかルナが立っている。 ルナ:それは違います。私達の使命は人間を見守る事であって、人間に手助けをする事ではありません。 女子:ほら!だから神様は絶対居るの! 男子:んな役立たずな神様要らねーよ! ルナ:人間のくせに失礼ですね。 女子:そうだよ、今のはあんまりだよ! 男子:だからこれが一般常し…き?(ルナの存在に気付く) 女子:……え? 男子:誰?(女子と同時) 女子:誰?(男子と同時) ルナ:貴方達がさっきから言ってる月の女神、ルナです。 女子:(嬉しそうに)えっ!? 男子:(ぽかんと)マジ? 女子:わー凄い!本物の女神様だ!凄い凄い! ルナ:うふふ、もっと崇(あが)めなさい。 男子:……やい、やいやい! お前が太陽を食った張本人か! 男子:そんなに腹膨らまして、美味かったかよ!?なぁ! ルナ:…貴方、いちいち失礼ですね。人間のくせに。 男子:うるせぇ!とっとと太陽を吐き出して、元に戻せってんだよ! 女子:ちょ、もっと丁寧にお願いしなよ! ルナ:……吐き出せ、ですか……。 男子:ん? 女子:ほら、あんたが偉そうに言うから! ルナ:そう、あれは昨日の事でした……。 0:ルナの回想。 アポロ:ルナ、君に頼みたい事がある。 ルナ:どうしたんですかアポロ、そんなに暗い顔をして。 アポロ:聞いてくれ、お前には黙っていたのだが…私にはもう太陽を動かすだけの力が無いのだ。 ルナ:何ですって!? アポロ:前々から私の力が弱まっているのを感じていた。 アポロ:だが、君に心配をかけたくなかったのだ。すまない……。 ルナ:アポロ……。 アポロ:もう少しで太陽は燃え尽きる。そうなればあの星に住む人間達が危ない。 アポロ:だからその前に……ルナ、私を消せ。 ルナ:そんな!私に出来る訳がないでしょう!? アポロ:しかしこのまま太陽が燃え尽きれば、どうなるか分からない! アポロ:軌道を乱し、地球や君の居る月に衝突するかも知れない!私はそれが恐ろしいのだ……。 ルナ:……わかりました。 ルナ:貴方がそれを望むなら、私は涙を飲んで貴方を消して差し上げましょう! 0:回想終わり ルナ:愛する者を消さなければならないという悲しき定め! ルナ:アポロを失った私は、永遠に共に居られるよう彼を食らったのです……。(泣き崩れる) 男子:(ドン引き)……おい、頼んでもないのに勝手に語りだしたぞあのカニバリスト。 女子:(もらい泣き)ルナさん可哀想……。 男子:(溜息)とりあえず事情は分かったからさ、この状況何とかしてくれよ。 ルナ:貴方、人間のくせに空気が読めないんですね。 男子:いちいち人間のくせにって腹立つ奴だな! 女子:ちょっとやめなって。ルナさん可哀想じゃん! 男子:可哀想ってお前なぁ…こいつが太陽を食ったのは事実だろうが! 女子:それは、そうだけど……。 男子:とりあえず……。(握り拳の準備をする) ルナ:(ずっと啜り泣いている) 女子:(男子の挙動に焦る)え、ちょ、あんた何しようとしてんのよ! 男子:何って、あのデカい腹をぶん殴ってやるんだよ! 女子:女の人を殴る気!? あんた最低! 男子:いや、あれ人じゃなくて神だし…。 男子:じゃなくて、とりあえず太陽を吐き出させりゃ一件落着だろ!? ルナ:やはり人間は愚かですね。私の話をまるで聞いてない。 ルナ:私がアポロを吐き出したところで、彼に太陽を動かす力はありません。 女子:ほら! 男子:いや、ほらって…じゃあどうしたらいいんだよ! ルナ:何がですか? 男子:とぼけんな!お前が変な事すっから地球に昼が消えたんだ! 男子:このままだと氷河期になって、それこそ地球壊滅だ! 女子:そうなんです!だから女神様、何とかして下さい! ルナ:……残念ですが、私ではアポロの代行は不可能です。 男子:何だと!?(女子と同時に) 女子:えぇ~!?(男子と同時に) 男子:じゃあ俺達が凍るのを待てって言うのかよ! ルナ:誰もそんな事は言ってません。 ルナ:まぁ、正直貴方はムカつくので勝手に凍っていただいて構いませんが。 男子:おいおいおいおいおいおいぃ!? ルナ:とにかく私は疲れました。今日はこれで帰らせていただきます。 男子:は!?待てよ、話はまだ終わってない! 女子:(男子に被せる)またね~ルナさん! 男子:(がっくりして溜息) 0:翌日、教室に一人居る女子の所へ男子が登校。 女子:あ、あんたまた遅刻!もう授業終わってるし! 男子:しょうがねーだろ。こんな暗いのに起きてられっかっての。(欠伸して溜息) 女子:随分と元気ないわね。どうしたの? 男子:(イライラしながら)お前分かってんのかぁ? 男子:あと2、3年すりゃ俺達は氷漬けになっちまうんだぞ!? 男子:それなのにあいつは考え無しに太陽食いやがって…何様だってんだ! 女子:神様。 男子:認めるかっ! 女子:…でも、考え無しにってのは違うと思う。 女子:だって、太陽が地球にぶつかったら危ないって言ってたじゃん。 男子:あのなぁ…そんな事になる訳ねぇだろ? 男子:燃えてようと燃えてまいと、太陽が地球に衝突なんざしねぇっての! 女子:そうなの? 男子:そうなの! 女子:じゃあ、何でルナさんはアポロさんを食べちゃったんだろ? 男子:どっかの誰かが言ってたぜ。究極の愛はカニバリズムだって。 女子:…昨日も思ったけど、そういう言い方やめなさいよ! 男子:じゃあ何だ?カニバリズムじゃなくて、カミバリズムか!? 女子:そう! それで良し! 男子:えっ、いいの!? いつの間にかルナが立っている。 ルナ:失礼な事言わないで下さい。 男子:うわぁっ!?(女子と同時) 女子:うわぁっ!?(男子と同時) 女子:あ、ルナさんこんにちわ! ルナ:貴女、昨日から思っていましたが馴れ馴れしいですよ。 ルナ:私は月の女神なのですから、「ルナ様」と呼んでいただかないと。 男子:うっぜぇ~……。 ルナ:お黙りなさい人間のくせに。 女子:ねぇルナさん、こいつが太陽は燃え尽きたくらいじゃ地球に落ちないって言ってたんですけど、 女子:アポロさんを食べたのには、何か別の理由があるんですよね? ルナ:…貴女もつくづく私の話を聞きませんね。 ルナ:確かに、私が彼を食らったのにはもう一つ理由があります。 男子:(バカにしたように)究極の愛はカミバリズムぅ~。 ルナ:(イラッ)もういいです。話す気が失せました。 女子:バッカ、もう!ルナさん待ってぇ~! ルナ:(泣き出しそうな声で)どうせ貴方達には分からないでしょう! ルナ:私がどれだけアポロを愛しているかなんて! 男子:待て待て、そこでその言い方はカニバリストを認めてんぞ!? ルナ:(突然苦しみ始める)うっ……ぐ…… 女子:え、ちょ、ルナさんどうしたの!? 男子:まぁそりゃ腹も壊すわ。 ルナ:う、産まれるっ……!? 男子:はぁ!?(女子と同時) 女子:はぁ!?(男子と同時) 女子:ちょ、あんた、救急車! 男子:お、おう!! 0: アポロ:(産声)おぎゃあ!おぎゃあ! 0:翌朝、女子の居る教室に男子が登校する。 女子:あ、おはよ!今日はちゃんと来たわね! 男子:おう!あ~やっぱ太陽の光は気持ちいいぜ! 女子:でも本当にビックリしたね。まさかあの赤ちゃんがアポロさんだったなんて。 男子:だな。生まれ変わらせる為に食ったなんざ、正に神の成せる業(わざ)ってやつだな。 0:二人で笑い合い、その後暫く黙り込む。 男子:(少し気恥ずかしそうに)……あのさ。 女子:え? 男子:その、今日の授業が終わったら ルナ:(男子に被せる)お~っほっほっほ!! ルナ:あら貴方達、人間のくせにまだ生きてらしたのね? 男子:(ボソッと)…空気読めよ、神様のくせに。 アポロ:やぁ君達、随分と迷惑をかけてしまったみたいですまなかったね。 女子:成長早いですね、ってツッコミはやめとくか。(ここまで独り言) 女子:大丈夫ですよアポロさん、結果オーライだったんですし。 ルナ:そうですよアポロ、こんな人間達と親しんでいたら太陽神としての格が下がりますよ。 男子:お前は月の女神としての格もクソもねーけどな。 アポロ:まぁそう言ってやらないでくれ。私の大事な親友なんだ。 女子:えっ? 男子:ん? ルナ:(信じられないような声で)……アポロ、今何と言いました? アポロ:ん?どうしたんだいルナ? 男子:ぶふっ……!(吹き出して口を押さえる) 女子:親友って……恋人同士じゃないんですか? アポロ:え?いやだなぁ、私とルナは竹馬(ちくば)の友さ。 アポロ:恋人とかそういう仲ではないよ。 ルナ:(ショック)……ああぁ…… 女子:ルナさん!? アポロ:(慌てて)どうしたんだルナ!やはり無理をさせすぎてしまったか!? アポロ:今日はもう帰ろう。ゆっくり休むんだ! ルナ:ああぁ……。 0:アポロがルナを連れて退場する。 男子:だっははははははは!!! 女子:ちょっと、何笑ってんのよ! 男子:いや、何つーか…ざまぁ! って思ってよ。 女子:あんたねぇ! 男子:俺だけならまだしも、お前の事まで悪く言ってたんだぞ? 男子:あー、ムカついてたからスッキリしたぜ! 女子:え? 男子:あっ……。 女子:今、何て…。 男子:…さ、さぁーて、帰って寝るとするか! 女子:え!?ちょっと、まだ授業始まってないよ!? 男子:さようならぁ~!そしておやすみぃ~! 女子:もう、待ちなさいって!!