台本概要

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タイトル 私の家に不審者がいるんです~ Big Christmas Tree ~
作者名 ラッキー  (@lucky_toypoo)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 4人用台本(男2、女2) ※兼役あり
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 クリスマスの奇跡は、少女の願いを叶えてくれた───

社畜生活に別れを告げた主人公「タマキ」は、実家に帰り羽を伸ばしていた。
季節は冬、気がつけばクリスマスになり、外は賑わっていて、タマキも気晴らしに外出した。
そして帰路に着き、家の前に着くと、玄関先に見知らぬ女の子が座っていて……。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
タマキ 205 社畜生活に限界を感じ、実家に帰ってゆっくり過ごしている24歳の独身女性。 そこそこ活発な性格で、適応能力も高い。
ミミ 118 【※兼役あり】 13歳の女の子。年齢の割にはかなりしっかりしているが、子供っぽいところもある。 少し泣き虫で甘えん坊な部分もある。 兼役で幼タマキをよろしくお願いいたします。
ヒロ 84 【※兼役あり】 昔は変なやつだったが、40手前になってまだマシになった男。若くみられがちだが、外見というより中身でそう見られている。 兼役でパパをよろしくお願いします。
キヨタカ 46 結構老けて見られがちだが、まだ45歳で充分オッサンである。 結構おっちょこちょいだが自分にその自覚はあまりない。
幼タマキ 15 タマキの幼少期
パパ 16 タマキのパパ
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
タマキM:──私の名前は小林タマキ。 タマキM:先週、辛く苦しかった仕事をついに辞めて、実家に帰り心と身体を癒している24歳の女の子です。 タマキM:今日はクリスマス! タマキM:街には大きなクリスマスツリーがでかでかと立っており、彼氏のいない私は一人カップル達が蔓延る(はびこる)街をウキウキと歩いてるように見せかけて普通に帰路に着こうとしていました。 : タマキ:はぁ、彼氏かぁ……。 タマキ:そりゃ欲しいよ、私だってまだギリ二十代前半だし。 タマキ:ちょっと地味だけど顔もそんなに悪くない……と思うし。 タマキ:いや、なんだったら少し可愛い方なんじゃないかとも……ん? : タマキM:そんな時でした。 タマキM:自宅に入ろうとしたら、私の家の前で座り込んでいる見知らぬ女の子が居たのでした。 : タマキ:あ、あの〜どちら様? タマキ:ここお姉ちゃんのお家なんだけど、何か用かな……? ミミ:……パパがここで待ってなさいって。 タマキ:パ……パパがですか、なるほど〜……。 タマキ:えっと、お名前はなんて言うのかな? ミミ:ミミ。 タマキ:ミミちゃんかぁ〜……。 タマキ:じゃあ、ミミちゃんのお家はどこか教えて貰える? ミミ:ここ。 タマキ:いや、ここは私のお家でね……。 ミミ:ミミも、ここがお家。 タマキ:……はぁ。 タマキ:じゃあさ、そのパパの電話番号分かる? ミミ:うん、知ってる。 タマキ:じゃあ、パパに電話してもらってもいいかな? ミミ:どうしてパパに電話をかけるの? タマキ:ここが私の家だから。 タマキ:ミミちゃんは自分のお家に帰らなきゃダメでしょ? ミミ:でも、本当にここがお家なの……。 タマキ:はぁ……。 タマキ:じゃあなんで自分の家なのに中に入らないの? ミミ:ママが、開けてくれないの。 タマキ:そりゃ知らない子が来たら開けないと思うけど……。 ミミ:ママはミミのこと忘れちゃったの……?(泣きそうになる) タマキ:え!? タマキ:そ、そうじゃなくて! タマキ:ミミちゃんのママはミミちゃんのこと覚えてるだろうけど、私のママはミミちゃんのこと知らないって意味でね! タマキ:ごめんごめん、泣かないで〜! ミミ:ママ、もう帰ってこないのかな……。 タマキ:え? ミミ:前にね、パパとママが喧嘩してるの二階の部屋で聞いてて、それからちょっと経ってママが出掛けたの。 ミミ:それからもうずっと帰ってこないの。 タマキ:うううん……。 ミミ:え? タマキ:うう……、家庭環境を持ち出されるとどうしようもないなぁ。 タマキ:もう分かった、じゃあ家に入りな! タマキ:それから色々考えよう! ミミ:入れてくれるの? タマキ:流石に女の子一人を家の前にずっと座らせておく訳にはいかないからね。 タマキ:ほら、おいで。 ミミ:(パっと明るくなる)ありがとう! : 0:タマキがドアノブを回すが、鍵はかかっていなかった。 : タマキ:ん?あれ、鍵かけ忘れちゃってた? ミミ:え、ほんと? タマキ:え? ミミ:あ……ううん、なんでもないよ。 : 0:タマキはミミをリビングのソファに座らせる。 : タマキ:それじゃあ何か温かい飲み物出してあげるね。 タマキ:何が好き? ミミ:大丈夫、いらないよ。 タマキ:え? タマキ:ずっと外に居て寒かったでしょ、なんか飲んだ方がいいよ? ミミ:大丈夫だよ、ありがとう。 タマキ:なら、いいけど。 タマキ:よいしょ。 : 0:タマキ、ソファに座る。 : タマキ:さて……どうしようかな。 ミミ:ねぇ、隣座ってもいい? タマキ:え?いいけど。 ミミ:よいしょ。 タマキ:……なんか、変わった子だね。 ミミ:え、そうかな。 タマキ:ねえ、そろそろどこから来たのか教えて貰っていい? ミミ:ここから来たの。 タマキ:はぁ、だからそうじゃなくて……。 タマキ:え、もしかしてお母さんの隠し子? ミミ:え? タマキ:そうか、それなら辻褄(つじつま)が合うな。 タマキ:じゃあミミちゃんって……私の妹? ミミ:え、いや、ちが……​​。 タマキ:とりあえずお母さんに電話掛けてみる! タマキ:何か分かるかも── ミミ:ダメ!! タマキ:うわっ!びっくりした、どうしたの急にそんな大きな声出して。 ミミ:ごめん……。 ミミ:でも、隠し子じゃないから。 タマキ:……私のお母さんの隠し子じゃないのなら、もしかしてだけど私のお兄ちゃんの子供とかだったりする? ミミ:え? タマキ:なんかそんな気がする。 タマキ:お兄ちゃん確か海外に出張に行ってて、その間に子供が出来たってお母さんが言ってたの思い出した。 : 0:その時、2階から1人の中年男性が降りてくる。 : キヨタカ:ミミちゃん、お客さんか? ミミ:あっ。 タマキ:は? キヨタカ:……え? タマキ:あ、あの。 キヨタカ:……お前、タマ── ミミ:おじさん!!ちょっと!! : 0:ミミがキヨタカの腕を引っ張る。 : ミミ:(キヨタカに耳打ちで)……ねぇ、あの……。 キヨタカ:……あ、そうだ、そうだった。 タマキ:いや、待って。 タマキ:おかしくない?ここ私の家だよね。 タマキ:なんで見知らぬオッサンが2階から降りてくるの? タマキ:これ私がおかしいのか? キヨタカ:……あー、いや。 キヨタカ:なにか勘違いしているようだが、ここは私の家だよ。 タマキ:え? ミミ:……そう、ここはおじさんと私達の家。 タマキ:は?え?……はぁ!? キヨタカ:いや、全然お構いなく。 タマキ:いやいや!構うよ! タマキ:何すんなり人の家を乗っ取ろうとしてるんだよ!! ミミ:まぁまぁ。 タマキ:いや、なにが!? タマキ:まぁ最悪ミミちゃんは百歩譲って良いとしようよ! タマキ:誰!?このオッサン!! キヨタカ:オッサン!? タマキ:いや!なにビックリしてるんだよ! タマキ:オッサンでしょ!?どう見ても50は過ぎてるじゃん! キヨタカ:なっ……まだ45だ!! タマキ:どっちもそんなに変わらんわ! タマキ:それで、なんで私の家に堂々と知らない人が住んでるの!!(怒涛の早口で話したせいで息が切れる) ミミ:お、落ち着いて……? タマキ:はぁはぁ……。 タマキ:あれ? タマキ:っていうか私のお父さんとお母さんは……!? キヨタカ:……いや、そのぉ。 タマキ:え? タマキ:まさか……まさかお父さんとお母さんを人質に私から金を取ろうって魂胆(こんたん)!? キヨタカ:いや、そんなことしないわ!! キヨタカ:なんで俺の……(一瞬どもる) キヨタカ:……お前の両親を人質に取らなきゃ行けないんだ! タマキ:私が聞きたいわ!! タマキ:言っときますけどね!! タマキ:私は先月仕事を辞めて、全然お金がないです!! キヨタカ:だろうけど! タマキ:だろうけど!? ミミ:ちょっと落ち着いて!ねぇ、ドウドウ タマキ:ドウドウてわたしゃ馬か!? キヨタカ:ちょっと! キヨタカ:もういいから、二人共話を聞いてくれ! タマキ:はぁはぁ、なんですか……? キヨタカ:……君は、タマキだろ? タマキ:え、なんで私の名前を……? キヨタカ:話せば長くなるが、私はお前の……血縁者だ。 タマキ:血縁者……?ってことは、親戚? キヨタカ:まぁ、そんなとこだ。 ミミ:あのね、ママ……あ。 タマキ:ママ?私が? キヨタカ:違う! キヨタカ:あの……あれだ、聞き間違いだ! タマキ:え?じゃあ何て言ったの? キヨタカ:あ、あの、た、たま、たまぁ……タママだ。 タマキ:タママ!? タマキ:ケロロ軍曹の!? ミミ:……そう、タママ。 ミミ:ニックネーム付けようと思って。 タマキ:いや、急だよ!! タマキ:そして嫌だよ!! タマキ:確かにタママは可愛いけれども、嫌だよ!! タマキ:だってあれカエルじゃん!! キヨタカ:いや、正確にはオタマジャクシだ。 タマキ:だったらなんなんだよ!! タマキ:カエルじゃなくてオタマジャクシならまあいいかぁ、とはならんでしょうが!! ミミ:ご、ごめんなさい……ごめん……なさ(泣きそうになる) タマキ:えっ。 キヨタカ:ミ、ミミちゃん……。 キヨタカ:泣くな……可哀想にな。 キヨタカ:ミミちゃんは、悪くないんだよ。 タマキ:うっ、くっ、ぐぅ、クソォ……。 タマキ:……た、た、た…タママ二等兵ですぅ。 ミミ:え? タマキ:た、タママ二等兵ですぅ!軍曹さぁあん!!(ヤケクソで) ミミ:……ぷっ、ふふ、あははは! キヨタカ:ははは! タマキ:はぁはぁ……。 タマキ:って、なんで私が知らない人の為にこんな芸やらなきゃならないのよ……。 ミミ:ははは……ありがとう、面白かった。 タマキ:そりゃどうも……。 タマキ:あ、良かったですぅ! ミミ:あ、タママはもう、大丈夫です。 タマキ:え、あ、すいません……。 キヨタカ:……あ、そういえばミミのパパ帰ってくるの遅いな。 ミミ:あ……ほんとだ。 ミミ:もう、五時半なのに。 タマキ:え? タマキ:え……私、散歩してたら五時間も経ってたの……? ミミ:……あの。 タマキ:あぁ!! ミミ:え!なに? タマキ:いや! タマキ:私の両親はどこ!? タマキ:そういえばなんかスルーしちゃってたけど!! キヨタカ:あ、あぁ。 キヨタカ:その件なんだが……。 タマキ:無事なの!? キヨタカ:あ……あぁ。 キヨタカ:……無事だ。 タマキ:……はぁ。 タマキ:なら良かった……。 タマキ:え、じゃあ今どこに居るの? キヨタカ:そ、それはだな……。 ミミ:(遮るように)あ、ねぇ!タマキさん! ミミ:ちょっと来て! タマキ:え?なに? タマキ:もうこれ以上ビックリさせないで欲しいんだけど……。 : 0:ミミはタマキを連れて家の裏庭に行く。 : ミミ:こっちこっち、裏庭なんだけど……。 タマキ:うわっ!さむ!! タマキ:さっきこんなに寒かったっけ!? ミミ:あ、裏庭は風がよく通るから。 タマキ:そ、そっか……くしゅん!! ミミ:大丈夫!? タマキ:うん、平気。 タマキ:で、なに? ミミ:……あのね、このツリーを部屋に飾りたいの。 ミミ:手伝ってくれる? タマキ:え? タマキ:ツリーって……。 タマキ:あ、このデカいのか。 タマキ:ってこれ……。 ミミ:え、これ知ってるの? タマキ:いや、知ってるも何も……。 タマキ:へぇ! タマキ:まだあったんだ!このツリー! ミミ:え? ミミ:どういうこと? タマキ:あぁ、ごめんごめん。 タマキ:このツリーね、子供の頃に私のパパが買ってくれたものなの。 タマキ:でも私ワガママでさぁ、友達の家のツリーがめっちゃ大きくて、このツリーじゃ嫌だ!って騒いでさ……。 : 0:──回想 : パパ:タマキ! パパ:買ってきたぞぉ! パパ:おっきいだろ! 幼タマキ:……ちっちゃい。 パパ:え? 幼タマキ:……ユカリちゃん家のツリーはもっと大きかったぁ!! パパ:そ、そんなぁ! パパ:しょ……しょうがないだろぉ、ユカリちゃんってあのお金持ちの家だろ? パパ:それは流石に……。 幼タマキ:やだあ! 幼タマキ:ユカリちゃんの家のツリーがよかったぁあああ!! パパ:そう言わずに、我慢しよう、な? 幼タマキ:やぁあだぁあああ!! 幼タマキ:もうユカリちゃん家の子になるぅうう!! パパ:えぇ!? パパ:そんなこと言ったらパパとママが悲しんじゃうぞ!? 幼タマキ・やぁあだぁああ!! 幼タマキ:じゃあユカリちゃん家のツリーになるぅううう!! パパ:ツリーに!? パパ:やめろ!いくらお金持ちだとはいえツリーになっても何も良い事はないんだぞ!? 幼タマキ:うぅ…ひっく……ひっく……。 パパ:……あぁ、ごめんな、タマキ。 パパ:おっきいの買ってやれなくて。 パパ:あ、そうだ!じゃあ、来年はもっとおっきいの買って来てあげるよ! 幼タマキ:……ほんと? パパ:あぁ、ほんとうだ! パパ:パパが、タマキに嘘付いたことなんてあるか? 幼タマキ:……ない。 パパ:だろ? パパ:ほら、おいで。(パパ、手を広げる) 幼タマキ:うん。(パパの所に行く) パパ:よーしよし、いい子だ。 パパ:よっと……(タマキを抱き上げる) パパ:はは、大きくなったなぁ、タマキ。 パパ:代わりと言っちゃなんだが、後でケーキ食べような! パパ:おっきいケーキ買ってきたんだぞぉ! 幼タマキ:ほんと! 幼タマキ:食べる!食べる! パパ:お、やっと笑ったな! パパ:よーしよし……。 パパ:パパはな?タマキが泣くくらいならどんなことだってしてやれるんだ。 パパ:なんたって、タマキはパパの可愛い可愛い娘なんだからな。 幼タマキ:うん! 幼タマキ:私は可愛い娘! パパ:はは! パパ:あ、そうだ。ツリーで思い出したんだけどな? 幼タマキ:なぁに? パパ:なんでもフランスにはな、世界一綺麗なクリスマスツリーがあるそうなんだ! パパ:きっとすごいぞぉ。一生忘れられないほどにな……。 幼タマキ:そうなの?見てみたい! パパ:だろ! パパ:だからな、いつかタマキを、必ずそこに連れてってやるからな! 幼タマキ:ほんとに!? パパ:あぁホントだ! パパ:パパは、タマキに嘘は付かないよ。 幼タマキ:わあい!パパ、大好き! パパ:あぁ。 パパ:パパも、世界一大好きだよ。 : 0:──回想終わり。 : ミミ:そんなことがあったんだ。 ミミ:すごく優しいパパなんだね。 タマキ:うん。 タマキ:ほんとに優しくてさ。 タマキ:次の年、本当におっきなツリー買ってきたの! タマキ:でも、今度はおっきすぎて家に入れるのすら大変でさ……。 タマキ:1回飾ったっきり裏庭に置きっぱなしにしてたんだ。 ミミ:だからずっと外にあったんだ。 ミミ:凄く立派だからこれを家の中に飾りたくて。 タマキ:そっか……。 タマキ:……って、なんでここにツリーがあるって知ってたの? ミミ:え、それは……。 ミミ:……それは、ママがそう言ってたから。 タマキ:ママって、あの出ていった? ミミ:うん、ママも親戚なの。 タマキ:そうなんだ。 タマキ:……え、ってことは、親戚同士で結婚したってこと? ミミ:え? ミミ:あー、そうなる……ね。 タマキ:え、それってさ、近親そう……いや、なんでもない。 タマキ:よし、運ぼう。 ミミ:え?う、うん……。 : 0:タマキ、ツリーを持ち上げようと手をかける : タマキ:よっと……。 タマキ:って、おぉ。 タマキ:意外と軽かったんだ。 ミミ:よいしょ……あ、ほんとだ。 ミミ:私たちだけでもなんとか持てるかも。 タマキ:ね、よかったー。 タマキ:私力仕事苦手だから助かるー。 ミミ:あぁ、そうだよね。 ミミ:草むしりとかも嫌いだった……あ。 タマキ:え?なんで知ってんの? タマキ:ってか、さっきから思ってたけど、私のこともなんか知ってるの? ミミ:い、いや! ミミ:な、なんか草むしりとか嫌いそうな顔してるなぁって!! タマキ:いや、どんな顔だよ!! : 0:タマキとミミはなんとかリビングにツリーを持ってくる。 : タマキ:よっ……と。 キヨタカ:あ、おかえり……ってうわぁ。 キヨタカ:懐かしいの持ってきたな。 タマキ:へ? タマキ:なんで懐かしいの? キヨタカ:あっ!いや、その……。 キヨタカ:木ってやっぱり原始時代からあるものだからDNAが懐かしがっててさ……。 タマキ:ほんとに何言ってるんですか……? ミミ:あ……。 ミミ:これ、天井に当たっちゃってるけど、ほんとに大丈夫? キヨタカ:あぁ。 キヨタカ:うん、大丈夫だよ。 キヨタカ:昔もそうなってたからね。 タマキ:だからなんで色々知ってるの……? : 0:タマキ、コンセントを引っ張ろうとする : タマキ:よいしょ……。 タマキ:あ、あれ? タマキ:これ、コンセント届かないかも。 ミミ:あ、ほんとだ。 ミミ:ギリギリ届かないね。 タマキ:また移動させる? ミミ:ちょっと疲れちゃったや。 ミミ:また夜に移動させよ? タマキ:そうしよっか。 タマキ:じゃあソファでちょいと休憩! タマキ:よいしょっと! ミミ:……タマキさん。 ミミ:そろそろ私達に慣れてきた? タマキ:ん? タマキ:あぁ、もう割とどうでもよくなってきたよ。 ミミ:良かった〜適応能力高くて! ミミ:ね?私達悪い人じゃなさそうでしょ? タマキ:そうかもね。 タマキ:でも、パパとママの所在は後でちゃんと教えてもらうからね! ミミ:そ、それは……。 ミミ:……うん、分かった。 : 0:その時、玄関から声が聞こえる。 : ヒロ:ただいまー。 タマキ:ん?誰の声? ミミ:あ、パパだよ。 タマキ:え、なんで普通に人ん家に入ってきてんの!? タマキ:これって私がおかしいのか!? : 0:ヒロがリビングに来る。 : ヒロ:ただいま……あれ? ヒロ:なんだ、このツリー? ミミ:おかえりなさい、パパ。 ミミ:あのね── ヒロ:あ、今日はクリスマスか! ミミ:そ……そう! ミミ:クリスマスだから……。 キヨタカ:やぁ、ヒロくん。 キヨタカ:久しぶり。 ヒロ:あぁ、キヨタカさんお久しぶりです。 ヒロ:いらっしゃってたんですね。 タマキ:ん、キヨタカ……? ヒロ:ん?この方は── ヒロ:……え? タマキ:……あ、私はタマキって言います!お邪魔してます……ってなんで私がお客さんみたいになってんのよ! タマキ:逆だわ! ヒロ:……本当に。 ヒロ:本当に、タマキなのか……? タマキ:え?あ、はい。 タマキ:って、なんで呼び捨て? ヒロ:本当なのか……? タマキ:だから本当ですって。 タマキ:てか呼び捨てやめて貰えませんか?初対面なのに── ヒロ:タマキ!! : 0:ヒロがいきなりタマキに抱きつく。 : タマキ:うわっ!? タマキ:ちょっ……! タマキ:なんでいきなり抱きつくんですか!? ヒロ:(泣きながら)ごめん……タマキ。 ヒロ:……ほんとにごめん。 タマキ:え……? タマキ:ど、どういうことなの……? ミミ:……あ、あのね、タマキさん。 ミミ:……ううん、ママ。 タマキ:え? タマキ:ママ……? ミミ:……うん。 ミミ:ずっと隠しててごめんなさい。 ミミ:驚かせたくなかったんだけど、本当はタマキさんが……私のママなんだよ。 ミミ:ずっと待ってたんだよ……。 タマキ:え? タマキ:わ、私が……? ミミ:うん……。 ミミ:色々混乱しちゃうよね、ごめん。 タマキ:うん……混乱してる……。 タマキ:え、じゃあこのおじさんは誰なの……? ミミ:あ……そうだね、紹介するね。 ミミ:この人は、私のおじさんの、キヨタカさん。 キヨタカ:あぁ、そうだ。 キヨタカ:タマキ。 タマキ:……キヨタカって、さっき聞いてちょっと思ったんだけど……もしかして、私のお兄ちゃん? キヨタカ:……あぁ、そうだ。 キヨタカ:もう四十五歳になってしまったけどな……。 タマキ:え……なんで? タマキ:お兄ちゃんって、確か私と3つしか変わらなかったよね……? タマキ:どういうこと? ミミ:……それでね、さっき帰って来たこの人が、私のパパ。 ミミ:ママの、旦那さんだよ。 タマキ:……え? タマキ:この人が……? ミミ:そう。 ミミ:……なにか、思い出した? タマキ:なにかって……。 タマキ:う……うっそだあ! タマキ:だって私、ギリ20代前半の彼氏が居ないクリスマスぼっち女だよ!? タマキ:それが、彼氏どころか旦那や子供まで居るわけないじゃん!! タマキ:あ!分かった! タマキ:これなんかのドッキリなんでしょ!? タマキ:ねぇ!そうなんでしょ!? ヒロ:タマキ……。 ヒロ:……ほんとに覚えてないのか? タマキ:え……な、なに? タマキ:どういうこと? タマキ:私、散歩して帰ってきたら、急に結婚して子供が出来てて……。 タマキ:お兄ちゃんはめっちゃ年取ってて……。 ミミ:……あのね。 ミミ:多分信じられないと思うし、理解も出来ないと思うんだけど、驚かないで聞いてね。 ミミ:ママね……。 ミミ:……2年前に、死んだの。 タマキ:え……? : 0:タマキ、驚きのあまり少し沈黙する。 : タマキ:……え、私が?今、生きてるのに? ミミ:……うん。 タマキ:……う、嘘だよね? タマキ:ねぇ、早くドッキリだって誰か言ってよ。 タマキ:……ほら!もう空気おかしくなるじゃん! キヨタカ:タマキ……。 : 0:タマキ以外、鎮痛な面持ちで立ち尽くす。 : タマキ:……なに? タマキ:なんで全員そんなマジっぽい顔するの……? タマキ:ウソでしょ? タマキ:ウソだよ、だって今私、生きてるじゃん……。 ミミ:……あのね、ママ。 ミミ:私がね、お願いしたの。 ミミ:……ママともう一度会えますようにって。 タマキ:……そしたら、私が現れたの? ミミ:……うん。 ミミ:ありえないって思ってたけど、奇跡が起きて……。 タマキ:ほんとに……? ミミ:……ママね。 ミミ:2年前の今日の……ちょうど夕方の6時半に、事故で死んじゃったの。 ミミ:私のおじいちゃんとおばあちゃん……つまり、ママのお父さんとお母さんと一緒に。 タマキ:え……? タマキ:で、でも……お父さんとお母さんは無事だって……! キヨタカ:……すまん、タマキ。 キヨタカ:混乱してるお前を、更に悲しませたくなくて嘘をついたんだ。 キヨタカ:悪かった。 タマキ:……お父さんと、お母さんが? タマキ:どうして!? ミミ:……2年前の今日、ママはおじいちゃんとおばあちゃんにクリスマスプレゼントを用意してたの。 ミミ:フランスのシャンボール城のクリスマスツリーを、おじいちゃんとおばあちゃんに見せに行くって。 ミミ:それで、飛行機に乗って行ったんだけど、そしたら飛行機が……墜落したの。 タマキ:うそ……。 ミミ:……乗客はみんな死んじゃったって聞いた。 ミミ:もちろん、おじいちゃんもおばあちゃんも、ママも……。 ミミ:私、すごく悲しくて……。 タマキ:……うそだ。 ミミ:……私は、もう一度ママに会えるならなんでもするって、クリスマスにサンタさんにお願いしたの。 ミミ:そしたら今日の朝。 ミミ:ママの部屋で、ママがベッドに寝てた。 キヨタカ:……今日、ミミちゃんから連絡があってここに来たんだ。 キヨタカ:電話では、動揺して何言ってるかよく分からなかったんだが、とにかく来てくれって言われてな。 キヨタカ:それでここに来たら、お前が居たんだ。 キヨタカ:しかも、若い頃のお前の姿でな。 キヨタカ:朝お前が目覚めると、どうやら昔の記憶のままだった。 キヨタカ:お前は父さんと母さんをに声をかけて、返事が無いままどこかへ出掛けて行った。 キヨタカ:お前が出かけた後、ミミちゃんと二人で相談したんだ。 キヨタカ:もしタマキの記憶が若い頃のままだとしたら、現状を知って混乱する可能性がある。 キヨタカ:そうならない為に、タマキがゆっくり記憶を取り戻せるよう計画を立てたんだ。 キヨタカ:まぁ、俺が失敗したせいで全て台無しになったわけなんだが……。 ミミ:パパは仕事に行った後だったから何も知らなかったの。 ミミ:だからパパは驚いて……。 タマキ:ちょっと待って!! ミミ:え? タマキ:(深呼吸)……正直、全く信じられないんだけど。 タマキ:……でも嘘は付いてなさそうだし、少し信じることにする……。 タマキ:確かに、お兄ちゃんはよく見たら面影があるしね。 タマキ:それで、ミミちゃんは私の娘……なのよね? ミミ:う、うん……。 タマキ:……そっか。ミミちゃ……ううん、ミミ。 ミミ:ママ……? タマキ:……うん、ミミ。 ミミ:受け入れてくれるの……? タマキ:うん。 タマキ:だってこんな可愛い子が私の娘なんだったら、それは嬉しいよ。 ミミ:ありがとう……ママ。 タマキ:……ただね。 タマキ:この人のことがどうしても受け止められないの。 タマキ:ミミのパパ……ほんとに私の旦那さんなの? タマキ:あまりにも実感が無くて……。 ヒロ:本当なんだ、タマキ……。 ミミ:……ねぇ、ママ。 ミミ:最初に言った話、覚えてる? タマキ:え? タマキ:えっと……あ、ミミのパパとママが喧嘩したって話? ミミ:そう。 ミミ:あのね、ママが飛行機に乗る前日に、パパとママは大喧嘩してたの。 : 0:回想 : ヒロ:……ほんとに行くのか? タマキ:うん。 ヒロ:大型の台風が近づいてるのに、飛行機なんて絶対やめた方がいいよ。 ヒロ:来年にしたら……? タマキ:……だって、来年お父さんが生きてるか分からないじゃない。 ヒロ:でも……。 タマキ:お父さん……あと持って半年って言われてるのよ。 タマキ:いくら長くても、たとえ一年持ったとしても……その時にはもうまともに動けないかもしれないじゃない。 ヒロ:……でもな。 タマキ:パパは私に約束してくれたのよ! タマキ:私に世界一綺麗なツリーを見せてやるって……。 タマキ:パパと一緒じゃなきゃ……パパと一緒に見れなきゃ意味がないのよ。 ヒロ:……でも、それで墜落したら俺たちはどうなる? ヒロ:みんな死んだらどうする? ヒロ:俺たちのことは考えてないのか……? タマキ:なによ……失礼なこと言わないで! タマキ:考えてるに決まってるじゃない! タマキ:それでも、パパとの約束は破れないのよ。 タマキ:分かってちょうだい……。 ヒロ:……分かった、行けばいいよ。 ヒロ:でもそれで事故に合ったって誰も泣いてくれないからな。 タマキ:……なんでそんなこと言うの? タマキ:私だっていつもなら時期をズラすけど、今は時間が無いって分かるでしょ!? タマキ:なんであなたはいつも私のことわかってくれないの!? ヒロ:そんな言い方……! タマキ:私は! タマキ:……私はパパとの約束は破りたくない。 ヒロ:……もう勝手にしろよ、俺は知らない。 タマキ:ごめんなさい……行ってきます。 ヒロ:……。 : 0:回想終わり : ミミ:普段喧嘩しない二人が、大きな声で喧嘩してて、私も不安だった。 ミミ:そしたらその不安は的中して、ママとおじいちゃんとおばあちゃんは死んじゃったの……。 タマキ:……なによそれ。 タマキ:私……大バカじゃない。 タマキ:私がお父さんとお母さんを、殺し── ヒロ:違う!! タマキ:……え? : 0:ヒロ、タマキを抱きしめる : ヒロ:……違うよ、タマキ。 ヒロ:お前は悪くないんだよ。 ヒロ:お前はお父さんとの約束を守りたかっただけなんだ。 ヒロ:運が悪かっただけなんだ……。 ヒロ:お前は、大好きなお父さんの最後の思い出を、綺麗なツリーで終わらせてあげたかったんだろ……? タマキ:……そう、そう。(涙を流す) ヒロ:誰も悪くないんだよ……。 タマキ:……パパが、私に見せたかった景色を、私がパパに見せてあげたかったの……。(涙が溢れてくる) ヒロ:……俺は、お前のお父さんみたいにタマキを幸せにしてあげられないかもしれない。 ヒロ:お前のお父さんみたいに、喜ばせることも出来ないかもしれない。 ヒロ:でも、お前を許すことは出来るから。 ヒロ:タマキの抱えてる気持ち、俺も一緒に抱えてあげるから。 タマキ:……うん。 : 0:タマキ、ヒロの手を握る。 : タマキ:……やっぱり優しいね、ヒロは。 ヒロ:え……? ヒロ:今俺の名前……。 タマキ:うん。 タマキ:……思い出したよ。 タマキ:あなたのこと、全部。 ヒロ:(泣きながら)タマキ……! タマキ:……ミミも、おいで。 ミミ:思い出したの……? タマキ:うん、そうだよ、ミミ。 ミミ:(泣きながら)ママ……ママ!! タマキ:ごめんね、ミミ。 タマキ:ずっと一緒に居てあげられなくて……。 ミミ:ごめん……ごめんなさい……! ミミ:私も聞いてたのに、止めたら良かったのに……!! タマキ:ううん、ミミのせいじゃない……。 タマキ:あのね、ミミ。 タマキ:ママは、ミミが泣くくらいならどんなことだってしてあげる。 タマキ:だってミミは、いつまでもママの可愛い可愛い娘なんだから……。 ミミ:うん……ママ。 ミミ:ずっと、ずっと大好き……。 タマキ:……お兄ちゃん。 キヨタカ:……どうした、タマキ。 タマキ:……2人を、どうかよろしくね。 キヨタカ:……あぁ、任せろ。 キヨタカ:妹の世話も姪っ子の世話も変わらん。 タマキ:私の世話なんてしたっけ? キヨタカ:……俺がしてもらってたかもしれないな。 タマキ:ふふ、そうかもね。 タマキ:でも、頼りにしてるからね、お兄ちゃん。 キヨタカ:あぁ、任せろ。 : 0:そろそろ時計の針が6時を刺し始める。 : ミミ:……あ、ママ!急いで! タマキ:え? ミミ:パパも外に出て! ヒロ:え、俺も? ヒロ:どうしたんだ? : 0:ミミが2人を街へと連れていく。 0:そこには大きなツリーが立っていた。 : タマキ:……ここ、私が昼間に通ったところだ。 ミミ:ママ、ここ! ミミ:このツリー6時半に電気消えちゃうから早く来なきゃと思って! タマキ:あ、ここって。 ミミ:あのね。 ミミ:パパから聞いたんだけど、ママが初めてパパに出会ったのってここなんだよね? ヒロ:あぁ、そうだったな。 ヒロ:その日も、クリスマスだったっけ。 : 0:回想 : タマキ:……街中カップルばっかり! タマキ:仕事辞めて地元で癒されるはずだったのに、なんなのよぉ!! : 0:その時、大きなビンタの音が聞こえる。 : タマキ:え……なに? タマキ:今のビックリするくらいおっきなビンタの音。 : 0:お店の中からヒロが頬を抑えながら出てくる : ヒロ:……いたた。 タマキ:だ、大丈夫ですか? ヒロ:あ、お構いなく、大丈夫ですので。 タマキ:口から血が出てる。 タマキ:これ使ってください。 ヒロ:え、ハンカチ……じゃなくてポケットティッシュですか。 タマキ:なんか文句ありますか? ヒロ:いや、全然。 ヒロ:ハンカチだったら、返すために連絡先交換したりするイベント起きるかなって。 タマキ:下心がすごいな……。 タマキ:ってか、純粋な疑問なんですけど、なんでそんなに強く叩かれたんですか? ヒロ:彼女とご飯食べてて、クリスマスだねって聞かれて。 タマキ:なんて答えたんですか? ヒロ:忙しくてプレゼント買うの忘れてたって言いました。 タマキ:……ほんとにそれだけでそんな叩かれます? ヒロ:……あ、ちょっと可愛い子見かけて、あの子可愛いねって言ったらこんな感じに。 タマキ:……なんていうか、デリカシーのない人ですね。 ヒロ:え!?そうなんですか!? タマキ:無自覚ですか。 ヒロ:いや、いつも変なこと言ったって気付いても、その時には既に叩かれてるので……。 タマキ:……ふふ、なんか変わってますね。 ヒロ:……可愛いですね。 タマキ:へ!?急になんですか!? ヒロ:いや、可愛い人だなぁって。 タマキ:な……なにを……。 ヒロ:え、嫌でした? タマキ:嫌……じゃないですけど。 ヒロ:ならよかったぁ。 ヒロ:あ、あと良かったらなんですけど、指輪貰ってくれません? タマキ:はぁ!? ヒロ:いや、彼女にいつか渡そうと思って買ってたんですけど、もう渡せそうに無いんでよかったら。 タマキ:いや……いらないです。 タマキ:そういうとこだと思いますよ、叩かれるの。 ヒロ:……確かに。 タマキ:……ふふ。 タマキ:でも、あなたって面白い人かもしれないですね。 ヒロ:じゃあ指輪貰ってくれますか! タマキ:いや、そうはならんでしょうが! ヒロ:やっぱりダメか……。 タマキ:……でも、私の為にお金を貯めて、いつか指輪をくれるなら、貰ってあげてもいいですけど。 ヒロ:……へ? タマキ:ク……クリスマスだからですよ! タマキ:クリスマスだから特別なんですからね! タマキ:こんな街中カップルだらけで、私だって少しはクリスマスデートしたいってだけで!都合がいいと言うかなんというか……。 ヒロ:(そっと手を握る)これでどうですか? タマキ:え……? ヒロ:え、手握っちゃダメでした? タマキ:ダメ……ではないですけど。 ヒロ:じゃあ、よろしくお願いします。 タマキ:……うん、よろしく! : 0:回想終わり : ヒロ:……俺、こんなに変わり者だったっけ? タマキ:(軽く笑う)……うん、変な人だったよ。 ヒロ:はは……まぁでも、少しは良くなったでしょ? タマキ:……うん。 ヒロ:ならよかったよ。 ヒロ:……それにしてもミミ。 ヒロ:なんで俺たちをここに連れて来たかったんだ? ミミ:だってパパとママ、まだ結婚式挙げてないんでしょ? ミミ:前にママから聞いたよ。 タマキ:そういえば。 ヒロ:……そうだね。 ミミ:え、二人とも忘れてたの? タマキ:なんか、もう忘れちゃってたね。 ヒロ:デキ婚でそれどころじゃなかったしなぁ。 ミミ:……それは別に聞きたくなかったな。 ヒロ:え!? ヒロ:いや、ごめんごめん。 ヒロ:そんなつもりじゃなくて……。 タマキ:……なんか、まだあんまり成長してないかもね、そういうとこ。 ヒロ:え、ごめん……。 タマキ:……でも、嫌いじゃないよ。 タマキ:そういうところも。 ヒロ:……ありがとう。 ミミ:はいはい、2人共いい感じのところ悪いけど、時間ないからこれ持って。 : 0:ミミが二人に指輪を渡す。 : タマキ:え、ミミ。 タマキ:この指輪、どこで手に入れたの? ミミ:パパがね、ママに秘密でこっそりお金を貯めて買ったんだよ。 タマキ:そうなの? ヒロ:……あぁ。 ヒロ:本当は、一昨年のクリスマスに渡すつもりだったんだけどね。 ヒロ:黙っててごめん。 タマキ:……もう、なんでアナタは変なとこだけ気が利くの? ヒロ:自分でもわからないよ。 ヒロ:ただ、タマキが喜ぶ顔が見れたら、それが俺の幸せだから。 タマキ:……答えになってないよ。(涙ぐみながら笑う) ミミ:はいはい、じゃあお二人さん。 ミミ:私が神父をやりますから、指輪の交換をお願いね。 タマキ:可愛い神父だね。 ヒロ:神父というかシスターじゃないか? ミミ:細かいことはいいの! ミミ:ほら、はじめるよ! タマキ:はい。 ヒロ:はい。 ミミ:えー、病める時も……やめ、やめ……えーと、愛を誓いますか? タマキ:ふふ……誓います。 ヒロ:もちろん、誓います。 ミミ:後はよく分かんないけど、とりあえず指輪を交換して! ヒロ:はい、じゃあ……。 タマキ:……待って。 タマキ:私からしてもいい? ヒロ:え、でも……。 タマキ:いいから、薬指出して。 ヒロ:……はい。 タマキ:素直でよろしい。じゃあ……。 : 0:タマキがヒロの指に指輪を嵌める。 : タマキ:はい、ワガママ言ってごめんね。 タマキ:次は、私にもお願い。 ヒロ:うん。 ヒロ:薬指出して。 タマキ:……はい。 ヒロ:タマキ。 タマキ:……なぁに? ヒロ:世界で一番、愛してる。 タマキ:……(泣きながら)うん。 タマキ:私も、いつまでも愛してるよ。 : ヒロM:その日、初めてタマキに指輪を嵌めた。 ヒロM:涙で潤んだタマキの瞳は笑っていて、この時間が永遠に続くような気がした。 ヒロM:その時、時計の針が6時半を指した。 ヒロM:タマキの口が「ありがとう」と動いたように見えた。 ヒロM:クリスマスツリーの電灯が、パッと消えた。 ヒロM:辺りが一瞬暗闇に包まれて、驚いて指輪から手を離した瞬間、指輪は地面に転がり落ちた。 ヒロM:さっきまで握っていたはずのタマキの手はそこにはなく、ツリーの電気と共に、タマキの姿は消え去っていた。 : ヒロ:……タマキ? ヒロ:……タマキ!! ヒロ:どこだ、どこに行ったんだ!! : 0:ヒロが辺りを見回すが、タマキはどこにもいない。 : ヒロ:なんで……もう一度会えたのに……。 ミミ:……ママどこに行っちゃったの? ミミ:どうして? ミミ:ねぇ、パパ、どうして!? ヒロ:どうして……。 ミミ:ねぇ!パパ……!! ヒロ:……。 ミミ:……探そうよ!ママがまだどこかにいるかもしれないよ!パパ、探そう! ヒロ:ミミ……。 ミミ:ママ!どこにいるの!? ミミ:出てきてよ! ミミ:ママ出てきてよ!!(涙が溢れ出す) ヒロ:……帰ろう。 ミミ:でも……でも!! ヒロ:もう、帰ろう……。 ミミ:……いやだ、ママ、ママ……!! : 0:二人は家に帰る。暗い道のりを静かに歩いていく。 : キヨタカ:おかえり。 ヒロ:……ただいま。 キヨタカ:……どうしたんだ、そんな顔して……。 ミミ:ママが……。 ヒロ:……消えた。 キヨタカ:……そうか、やっぱりか。 ヒロ:え……やっぱりって? キヨタカ:さっきな、時計が6時半を指した時、突然停電したんだ。 キヨタカ:すぐに復旧したんだが……その時、おかしなことが起きたんだ。 ヒロ:……何が起きたんですか? キヨタカ:……ツリーが光りだしたんだ。 キヨタカ:触ってもいないのに、突然な。 ミミ:……あれ。 ミミ:このツリー、コンセントに刺さってないよ。 ヒロ:え? キヨタカ:あぁ、電気は通ってないはずなんだ。 キヨタカ:なのに、突然光った。 ヒロ:どうして……。 キヨタカ:……タマキは、これを親父に見せたかったんじゃないかな。 ヒロ:え? キヨタカ:……世界で一番綺麗なツリーだよ。 キヨタカ:フランスのなんかより、よっぽど綺麗じゃないか。 キヨタカ:親父とタマキが約束した、このツリーの方が。 ヒロ:……そうだ、そうだな、タマキ。 ヒロ:お前が見せたかったのは、これだったんだな……。 ミミ:……ママが運んでくれたツリー。 ミミ:大きすぎて天井まで届いてるよ……。 キヨタカ:……もっと上まで届いてるさ。 ヒロ:……タマキ、クリスマスプレゼント……受け取ったよ── : 0:END

タマキM:──私の名前は小林タマキ。 タマキM:先週、辛く苦しかった仕事をついに辞めて、実家に帰り心と身体を癒している24歳の女の子です。 タマキM:今日はクリスマス! タマキM:街には大きなクリスマスツリーがでかでかと立っており、彼氏のいない私は一人カップル達が蔓延る(はびこる)街をウキウキと歩いてるように見せかけて普通に帰路に着こうとしていました。 : タマキ:はぁ、彼氏かぁ……。 タマキ:そりゃ欲しいよ、私だってまだギリ二十代前半だし。 タマキ:ちょっと地味だけど顔もそんなに悪くない……と思うし。 タマキ:いや、なんだったら少し可愛い方なんじゃないかとも……ん? : タマキM:そんな時でした。 タマキM:自宅に入ろうとしたら、私の家の前で座り込んでいる見知らぬ女の子が居たのでした。 : タマキ:あ、あの〜どちら様? タマキ:ここお姉ちゃんのお家なんだけど、何か用かな……? ミミ:……パパがここで待ってなさいって。 タマキ:パ……パパがですか、なるほど〜……。 タマキ:えっと、お名前はなんて言うのかな? ミミ:ミミ。 タマキ:ミミちゃんかぁ〜……。 タマキ:じゃあ、ミミちゃんのお家はどこか教えて貰える? ミミ:ここ。 タマキ:いや、ここは私のお家でね……。 ミミ:ミミも、ここがお家。 タマキ:……はぁ。 タマキ:じゃあさ、そのパパの電話番号分かる? ミミ:うん、知ってる。 タマキ:じゃあ、パパに電話してもらってもいいかな? ミミ:どうしてパパに電話をかけるの? タマキ:ここが私の家だから。 タマキ:ミミちゃんは自分のお家に帰らなきゃダメでしょ? ミミ:でも、本当にここがお家なの……。 タマキ:はぁ……。 タマキ:じゃあなんで自分の家なのに中に入らないの? ミミ:ママが、開けてくれないの。 タマキ:そりゃ知らない子が来たら開けないと思うけど……。 ミミ:ママはミミのこと忘れちゃったの……?(泣きそうになる) タマキ:え!? タマキ:そ、そうじゃなくて! タマキ:ミミちゃんのママはミミちゃんのこと覚えてるだろうけど、私のママはミミちゃんのこと知らないって意味でね! タマキ:ごめんごめん、泣かないで〜! ミミ:ママ、もう帰ってこないのかな……。 タマキ:え? ミミ:前にね、パパとママが喧嘩してるの二階の部屋で聞いてて、それからちょっと経ってママが出掛けたの。 ミミ:それからもうずっと帰ってこないの。 タマキ:うううん……。 ミミ:え? タマキ:うう……、家庭環境を持ち出されるとどうしようもないなぁ。 タマキ:もう分かった、じゃあ家に入りな! タマキ:それから色々考えよう! ミミ:入れてくれるの? タマキ:流石に女の子一人を家の前にずっと座らせておく訳にはいかないからね。 タマキ:ほら、おいで。 ミミ:(パっと明るくなる)ありがとう! : 0:タマキがドアノブを回すが、鍵はかかっていなかった。 : タマキ:ん?あれ、鍵かけ忘れちゃってた? ミミ:え、ほんと? タマキ:え? ミミ:あ……ううん、なんでもないよ。 : 0:タマキはミミをリビングのソファに座らせる。 : タマキ:それじゃあ何か温かい飲み物出してあげるね。 タマキ:何が好き? ミミ:大丈夫、いらないよ。 タマキ:え? タマキ:ずっと外に居て寒かったでしょ、なんか飲んだ方がいいよ? ミミ:大丈夫だよ、ありがとう。 タマキ:なら、いいけど。 タマキ:よいしょ。 : 0:タマキ、ソファに座る。 : タマキ:さて……どうしようかな。 ミミ:ねぇ、隣座ってもいい? タマキ:え?いいけど。 ミミ:よいしょ。 タマキ:……なんか、変わった子だね。 ミミ:え、そうかな。 タマキ:ねえ、そろそろどこから来たのか教えて貰っていい? ミミ:ここから来たの。 タマキ:はぁ、だからそうじゃなくて……。 タマキ:え、もしかしてお母さんの隠し子? ミミ:え? タマキ:そうか、それなら辻褄(つじつま)が合うな。 タマキ:じゃあミミちゃんって……私の妹? ミミ:え、いや、ちが……​​。 タマキ:とりあえずお母さんに電話掛けてみる! タマキ:何か分かるかも── ミミ:ダメ!! タマキ:うわっ!びっくりした、どうしたの急にそんな大きな声出して。 ミミ:ごめん……。 ミミ:でも、隠し子じゃないから。 タマキ:……私のお母さんの隠し子じゃないのなら、もしかしてだけど私のお兄ちゃんの子供とかだったりする? ミミ:え? タマキ:なんかそんな気がする。 タマキ:お兄ちゃん確か海外に出張に行ってて、その間に子供が出来たってお母さんが言ってたの思い出した。 : 0:その時、2階から1人の中年男性が降りてくる。 : キヨタカ:ミミちゃん、お客さんか? ミミ:あっ。 タマキ:は? キヨタカ:……え? タマキ:あ、あの。 キヨタカ:……お前、タマ── ミミ:おじさん!!ちょっと!! : 0:ミミがキヨタカの腕を引っ張る。 : ミミ:(キヨタカに耳打ちで)……ねぇ、あの……。 キヨタカ:……あ、そうだ、そうだった。 タマキ:いや、待って。 タマキ:おかしくない?ここ私の家だよね。 タマキ:なんで見知らぬオッサンが2階から降りてくるの? タマキ:これ私がおかしいのか? キヨタカ:……あー、いや。 キヨタカ:なにか勘違いしているようだが、ここは私の家だよ。 タマキ:え? ミミ:……そう、ここはおじさんと私達の家。 タマキ:は?え?……はぁ!? キヨタカ:いや、全然お構いなく。 タマキ:いやいや!構うよ! タマキ:何すんなり人の家を乗っ取ろうとしてるんだよ!! ミミ:まぁまぁ。 タマキ:いや、なにが!? タマキ:まぁ最悪ミミちゃんは百歩譲って良いとしようよ! タマキ:誰!?このオッサン!! キヨタカ:オッサン!? タマキ:いや!なにビックリしてるんだよ! タマキ:オッサンでしょ!?どう見ても50は過ぎてるじゃん! キヨタカ:なっ……まだ45だ!! タマキ:どっちもそんなに変わらんわ! タマキ:それで、なんで私の家に堂々と知らない人が住んでるの!!(怒涛の早口で話したせいで息が切れる) ミミ:お、落ち着いて……? タマキ:はぁはぁ……。 タマキ:あれ? タマキ:っていうか私のお父さんとお母さんは……!? キヨタカ:……いや、そのぉ。 タマキ:え? タマキ:まさか……まさかお父さんとお母さんを人質に私から金を取ろうって魂胆(こんたん)!? キヨタカ:いや、そんなことしないわ!! キヨタカ:なんで俺の……(一瞬どもる) キヨタカ:……お前の両親を人質に取らなきゃ行けないんだ! タマキ:私が聞きたいわ!! タマキ:言っときますけどね!! タマキ:私は先月仕事を辞めて、全然お金がないです!! キヨタカ:だろうけど! タマキ:だろうけど!? ミミ:ちょっと落ち着いて!ねぇ、ドウドウ タマキ:ドウドウてわたしゃ馬か!? キヨタカ:ちょっと! キヨタカ:もういいから、二人共話を聞いてくれ! タマキ:はぁはぁ、なんですか……? キヨタカ:……君は、タマキだろ? タマキ:え、なんで私の名前を……? キヨタカ:話せば長くなるが、私はお前の……血縁者だ。 タマキ:血縁者……?ってことは、親戚? キヨタカ:まぁ、そんなとこだ。 ミミ:あのね、ママ……あ。 タマキ:ママ?私が? キヨタカ:違う! キヨタカ:あの……あれだ、聞き間違いだ! タマキ:え?じゃあ何て言ったの? キヨタカ:あ、あの、た、たま、たまぁ……タママだ。 タマキ:タママ!? タマキ:ケロロ軍曹の!? ミミ:……そう、タママ。 ミミ:ニックネーム付けようと思って。 タマキ:いや、急だよ!! タマキ:そして嫌だよ!! タマキ:確かにタママは可愛いけれども、嫌だよ!! タマキ:だってあれカエルじゃん!! キヨタカ:いや、正確にはオタマジャクシだ。 タマキ:だったらなんなんだよ!! タマキ:カエルじゃなくてオタマジャクシならまあいいかぁ、とはならんでしょうが!! ミミ:ご、ごめんなさい……ごめん……なさ(泣きそうになる) タマキ:えっ。 キヨタカ:ミ、ミミちゃん……。 キヨタカ:泣くな……可哀想にな。 キヨタカ:ミミちゃんは、悪くないんだよ。 タマキ:うっ、くっ、ぐぅ、クソォ……。 タマキ:……た、た、た…タママ二等兵ですぅ。 ミミ:え? タマキ:た、タママ二等兵ですぅ!軍曹さぁあん!!(ヤケクソで) ミミ:……ぷっ、ふふ、あははは! キヨタカ:ははは! タマキ:はぁはぁ……。 タマキ:って、なんで私が知らない人の為にこんな芸やらなきゃならないのよ……。 ミミ:ははは……ありがとう、面白かった。 タマキ:そりゃどうも……。 タマキ:あ、良かったですぅ! ミミ:あ、タママはもう、大丈夫です。 タマキ:え、あ、すいません……。 キヨタカ:……あ、そういえばミミのパパ帰ってくるの遅いな。 ミミ:あ……ほんとだ。 ミミ:もう、五時半なのに。 タマキ:え? タマキ:え……私、散歩してたら五時間も経ってたの……? ミミ:……あの。 タマキ:あぁ!! ミミ:え!なに? タマキ:いや! タマキ:私の両親はどこ!? タマキ:そういえばなんかスルーしちゃってたけど!! キヨタカ:あ、あぁ。 キヨタカ:その件なんだが……。 タマキ:無事なの!? キヨタカ:あ……あぁ。 キヨタカ:……無事だ。 タマキ:……はぁ。 タマキ:なら良かった……。 タマキ:え、じゃあ今どこに居るの? キヨタカ:そ、それはだな……。 ミミ:(遮るように)あ、ねぇ!タマキさん! ミミ:ちょっと来て! タマキ:え?なに? タマキ:もうこれ以上ビックリさせないで欲しいんだけど……。 : 0:ミミはタマキを連れて家の裏庭に行く。 : ミミ:こっちこっち、裏庭なんだけど……。 タマキ:うわっ!さむ!! タマキ:さっきこんなに寒かったっけ!? ミミ:あ、裏庭は風がよく通るから。 タマキ:そ、そっか……くしゅん!! ミミ:大丈夫!? タマキ:うん、平気。 タマキ:で、なに? ミミ:……あのね、このツリーを部屋に飾りたいの。 ミミ:手伝ってくれる? タマキ:え? タマキ:ツリーって……。 タマキ:あ、このデカいのか。 タマキ:ってこれ……。 ミミ:え、これ知ってるの? タマキ:いや、知ってるも何も……。 タマキ:へぇ! タマキ:まだあったんだ!このツリー! ミミ:え? ミミ:どういうこと? タマキ:あぁ、ごめんごめん。 タマキ:このツリーね、子供の頃に私のパパが買ってくれたものなの。 タマキ:でも私ワガママでさぁ、友達の家のツリーがめっちゃ大きくて、このツリーじゃ嫌だ!って騒いでさ……。 : 0:──回想 : パパ:タマキ! パパ:買ってきたぞぉ! パパ:おっきいだろ! 幼タマキ:……ちっちゃい。 パパ:え? 幼タマキ:……ユカリちゃん家のツリーはもっと大きかったぁ!! パパ:そ、そんなぁ! パパ:しょ……しょうがないだろぉ、ユカリちゃんってあのお金持ちの家だろ? パパ:それは流石に……。 幼タマキ:やだあ! 幼タマキ:ユカリちゃんの家のツリーがよかったぁあああ!! パパ:そう言わずに、我慢しよう、な? 幼タマキ:やぁあだぁあああ!! 幼タマキ:もうユカリちゃん家の子になるぅうう!! パパ:えぇ!? パパ:そんなこと言ったらパパとママが悲しんじゃうぞ!? 幼タマキ・やぁあだぁああ!! 幼タマキ:じゃあユカリちゃん家のツリーになるぅううう!! パパ:ツリーに!? パパ:やめろ!いくらお金持ちだとはいえツリーになっても何も良い事はないんだぞ!? 幼タマキ:うぅ…ひっく……ひっく……。 パパ:……あぁ、ごめんな、タマキ。 パパ:おっきいの買ってやれなくて。 パパ:あ、そうだ!じゃあ、来年はもっとおっきいの買って来てあげるよ! 幼タマキ:……ほんと? パパ:あぁ、ほんとうだ! パパ:パパが、タマキに嘘付いたことなんてあるか? 幼タマキ:……ない。 パパ:だろ? パパ:ほら、おいで。(パパ、手を広げる) 幼タマキ:うん。(パパの所に行く) パパ:よーしよし、いい子だ。 パパ:よっと……(タマキを抱き上げる) パパ:はは、大きくなったなぁ、タマキ。 パパ:代わりと言っちゃなんだが、後でケーキ食べような! パパ:おっきいケーキ買ってきたんだぞぉ! 幼タマキ:ほんと! 幼タマキ:食べる!食べる! パパ:お、やっと笑ったな! パパ:よーしよし……。 パパ:パパはな?タマキが泣くくらいならどんなことだってしてやれるんだ。 パパ:なんたって、タマキはパパの可愛い可愛い娘なんだからな。 幼タマキ:うん! 幼タマキ:私は可愛い娘! パパ:はは! パパ:あ、そうだ。ツリーで思い出したんだけどな? 幼タマキ:なぁに? パパ:なんでもフランスにはな、世界一綺麗なクリスマスツリーがあるそうなんだ! パパ:きっとすごいぞぉ。一生忘れられないほどにな……。 幼タマキ:そうなの?見てみたい! パパ:だろ! パパ:だからな、いつかタマキを、必ずそこに連れてってやるからな! 幼タマキ:ほんとに!? パパ:あぁホントだ! パパ:パパは、タマキに嘘は付かないよ。 幼タマキ:わあい!パパ、大好き! パパ:あぁ。 パパ:パパも、世界一大好きだよ。 : 0:──回想終わり。 : ミミ:そんなことがあったんだ。 ミミ:すごく優しいパパなんだね。 タマキ:うん。 タマキ:ほんとに優しくてさ。 タマキ:次の年、本当におっきなツリー買ってきたの! タマキ:でも、今度はおっきすぎて家に入れるのすら大変でさ……。 タマキ:1回飾ったっきり裏庭に置きっぱなしにしてたんだ。 ミミ:だからずっと外にあったんだ。 ミミ:凄く立派だからこれを家の中に飾りたくて。 タマキ:そっか……。 タマキ:……って、なんでここにツリーがあるって知ってたの? ミミ:え、それは……。 ミミ:……それは、ママがそう言ってたから。 タマキ:ママって、あの出ていった? ミミ:うん、ママも親戚なの。 タマキ:そうなんだ。 タマキ:……え、ってことは、親戚同士で結婚したってこと? ミミ:え? ミミ:あー、そうなる……ね。 タマキ:え、それってさ、近親そう……いや、なんでもない。 タマキ:よし、運ぼう。 ミミ:え?う、うん……。 : 0:タマキ、ツリーを持ち上げようと手をかける : タマキ:よっと……。 タマキ:って、おぉ。 タマキ:意外と軽かったんだ。 ミミ:よいしょ……あ、ほんとだ。 ミミ:私たちだけでもなんとか持てるかも。 タマキ:ね、よかったー。 タマキ:私力仕事苦手だから助かるー。 ミミ:あぁ、そうだよね。 ミミ:草むしりとかも嫌いだった……あ。 タマキ:え?なんで知ってんの? タマキ:ってか、さっきから思ってたけど、私のこともなんか知ってるの? ミミ:い、いや! ミミ:な、なんか草むしりとか嫌いそうな顔してるなぁって!! タマキ:いや、どんな顔だよ!! : 0:タマキとミミはなんとかリビングにツリーを持ってくる。 : タマキ:よっ……と。 キヨタカ:あ、おかえり……ってうわぁ。 キヨタカ:懐かしいの持ってきたな。 タマキ:へ? タマキ:なんで懐かしいの? キヨタカ:あっ!いや、その……。 キヨタカ:木ってやっぱり原始時代からあるものだからDNAが懐かしがっててさ……。 タマキ:ほんとに何言ってるんですか……? ミミ:あ……。 ミミ:これ、天井に当たっちゃってるけど、ほんとに大丈夫? キヨタカ:あぁ。 キヨタカ:うん、大丈夫だよ。 キヨタカ:昔もそうなってたからね。 タマキ:だからなんで色々知ってるの……? : 0:タマキ、コンセントを引っ張ろうとする : タマキ:よいしょ……。 タマキ:あ、あれ? タマキ:これ、コンセント届かないかも。 ミミ:あ、ほんとだ。 ミミ:ギリギリ届かないね。 タマキ:また移動させる? ミミ:ちょっと疲れちゃったや。 ミミ:また夜に移動させよ? タマキ:そうしよっか。 タマキ:じゃあソファでちょいと休憩! タマキ:よいしょっと! ミミ:……タマキさん。 ミミ:そろそろ私達に慣れてきた? タマキ:ん? タマキ:あぁ、もう割とどうでもよくなってきたよ。 ミミ:良かった〜適応能力高くて! ミミ:ね?私達悪い人じゃなさそうでしょ? タマキ:そうかもね。 タマキ:でも、パパとママの所在は後でちゃんと教えてもらうからね! ミミ:そ、それは……。 ミミ:……うん、分かった。 : 0:その時、玄関から声が聞こえる。 : ヒロ:ただいまー。 タマキ:ん?誰の声? ミミ:あ、パパだよ。 タマキ:え、なんで普通に人ん家に入ってきてんの!? タマキ:これって私がおかしいのか!? : 0:ヒロがリビングに来る。 : ヒロ:ただいま……あれ? ヒロ:なんだ、このツリー? ミミ:おかえりなさい、パパ。 ミミ:あのね── ヒロ:あ、今日はクリスマスか! ミミ:そ……そう! ミミ:クリスマスだから……。 キヨタカ:やぁ、ヒロくん。 キヨタカ:久しぶり。 ヒロ:あぁ、キヨタカさんお久しぶりです。 ヒロ:いらっしゃってたんですね。 タマキ:ん、キヨタカ……? ヒロ:ん?この方は── ヒロ:……え? タマキ:……あ、私はタマキって言います!お邪魔してます……ってなんで私がお客さんみたいになってんのよ! タマキ:逆だわ! ヒロ:……本当に。 ヒロ:本当に、タマキなのか……? タマキ:え?あ、はい。 タマキ:って、なんで呼び捨て? ヒロ:本当なのか……? タマキ:だから本当ですって。 タマキ:てか呼び捨てやめて貰えませんか?初対面なのに── ヒロ:タマキ!! : 0:ヒロがいきなりタマキに抱きつく。 : タマキ:うわっ!? タマキ:ちょっ……! タマキ:なんでいきなり抱きつくんですか!? ヒロ:(泣きながら)ごめん……タマキ。 ヒロ:……ほんとにごめん。 タマキ:え……? タマキ:ど、どういうことなの……? ミミ:……あ、あのね、タマキさん。 ミミ:……ううん、ママ。 タマキ:え? タマキ:ママ……? ミミ:……うん。 ミミ:ずっと隠しててごめんなさい。 ミミ:驚かせたくなかったんだけど、本当はタマキさんが……私のママなんだよ。 ミミ:ずっと待ってたんだよ……。 タマキ:え? タマキ:わ、私が……? ミミ:うん……。 ミミ:色々混乱しちゃうよね、ごめん。 タマキ:うん……混乱してる……。 タマキ:え、じゃあこのおじさんは誰なの……? ミミ:あ……そうだね、紹介するね。 ミミ:この人は、私のおじさんの、キヨタカさん。 キヨタカ:あぁ、そうだ。 キヨタカ:タマキ。 タマキ:……キヨタカって、さっき聞いてちょっと思ったんだけど……もしかして、私のお兄ちゃん? キヨタカ:……あぁ、そうだ。 キヨタカ:もう四十五歳になってしまったけどな……。 タマキ:え……なんで? タマキ:お兄ちゃんって、確か私と3つしか変わらなかったよね……? タマキ:どういうこと? ミミ:……それでね、さっき帰って来たこの人が、私のパパ。 ミミ:ママの、旦那さんだよ。 タマキ:……え? タマキ:この人が……? ミミ:そう。 ミミ:……なにか、思い出した? タマキ:なにかって……。 タマキ:う……うっそだあ! タマキ:だって私、ギリ20代前半の彼氏が居ないクリスマスぼっち女だよ!? タマキ:それが、彼氏どころか旦那や子供まで居るわけないじゃん!! タマキ:あ!分かった! タマキ:これなんかのドッキリなんでしょ!? タマキ:ねぇ!そうなんでしょ!? ヒロ:タマキ……。 ヒロ:……ほんとに覚えてないのか? タマキ:え……な、なに? タマキ:どういうこと? タマキ:私、散歩して帰ってきたら、急に結婚して子供が出来てて……。 タマキ:お兄ちゃんはめっちゃ年取ってて……。 ミミ:……あのね。 ミミ:多分信じられないと思うし、理解も出来ないと思うんだけど、驚かないで聞いてね。 ミミ:ママね……。 ミミ:……2年前に、死んだの。 タマキ:え……? : 0:タマキ、驚きのあまり少し沈黙する。 : タマキ:……え、私が?今、生きてるのに? ミミ:……うん。 タマキ:……う、嘘だよね? タマキ:ねぇ、早くドッキリだって誰か言ってよ。 タマキ:……ほら!もう空気おかしくなるじゃん! キヨタカ:タマキ……。 : 0:タマキ以外、鎮痛な面持ちで立ち尽くす。 : タマキ:……なに? タマキ:なんで全員そんなマジっぽい顔するの……? タマキ:ウソでしょ? タマキ:ウソだよ、だって今私、生きてるじゃん……。 ミミ:……あのね、ママ。 ミミ:私がね、お願いしたの。 ミミ:……ママともう一度会えますようにって。 タマキ:……そしたら、私が現れたの? ミミ:……うん。 ミミ:ありえないって思ってたけど、奇跡が起きて……。 タマキ:ほんとに……? ミミ:……ママね。 ミミ:2年前の今日の……ちょうど夕方の6時半に、事故で死んじゃったの。 ミミ:私のおじいちゃんとおばあちゃん……つまり、ママのお父さんとお母さんと一緒に。 タマキ:え……? タマキ:で、でも……お父さんとお母さんは無事だって……! キヨタカ:……すまん、タマキ。 キヨタカ:混乱してるお前を、更に悲しませたくなくて嘘をついたんだ。 キヨタカ:悪かった。 タマキ:……お父さんと、お母さんが? タマキ:どうして!? ミミ:……2年前の今日、ママはおじいちゃんとおばあちゃんにクリスマスプレゼントを用意してたの。 ミミ:フランスのシャンボール城のクリスマスツリーを、おじいちゃんとおばあちゃんに見せに行くって。 ミミ:それで、飛行機に乗って行ったんだけど、そしたら飛行機が……墜落したの。 タマキ:うそ……。 ミミ:……乗客はみんな死んじゃったって聞いた。 ミミ:もちろん、おじいちゃんもおばあちゃんも、ママも……。 ミミ:私、すごく悲しくて……。 タマキ:……うそだ。 ミミ:……私は、もう一度ママに会えるならなんでもするって、クリスマスにサンタさんにお願いしたの。 ミミ:そしたら今日の朝。 ミミ:ママの部屋で、ママがベッドに寝てた。 キヨタカ:……今日、ミミちゃんから連絡があってここに来たんだ。 キヨタカ:電話では、動揺して何言ってるかよく分からなかったんだが、とにかく来てくれって言われてな。 キヨタカ:それでここに来たら、お前が居たんだ。 キヨタカ:しかも、若い頃のお前の姿でな。 キヨタカ:朝お前が目覚めると、どうやら昔の記憶のままだった。 キヨタカ:お前は父さんと母さんをに声をかけて、返事が無いままどこかへ出掛けて行った。 キヨタカ:お前が出かけた後、ミミちゃんと二人で相談したんだ。 キヨタカ:もしタマキの記憶が若い頃のままだとしたら、現状を知って混乱する可能性がある。 キヨタカ:そうならない為に、タマキがゆっくり記憶を取り戻せるよう計画を立てたんだ。 キヨタカ:まぁ、俺が失敗したせいで全て台無しになったわけなんだが……。 ミミ:パパは仕事に行った後だったから何も知らなかったの。 ミミ:だからパパは驚いて……。 タマキ:ちょっと待って!! ミミ:え? タマキ:(深呼吸)……正直、全く信じられないんだけど。 タマキ:……でも嘘は付いてなさそうだし、少し信じることにする……。 タマキ:確かに、お兄ちゃんはよく見たら面影があるしね。 タマキ:それで、ミミちゃんは私の娘……なのよね? ミミ:う、うん……。 タマキ:……そっか。ミミちゃ……ううん、ミミ。 ミミ:ママ……? タマキ:……うん、ミミ。 ミミ:受け入れてくれるの……? タマキ:うん。 タマキ:だってこんな可愛い子が私の娘なんだったら、それは嬉しいよ。 ミミ:ありがとう……ママ。 タマキ:……ただね。 タマキ:この人のことがどうしても受け止められないの。 タマキ:ミミのパパ……ほんとに私の旦那さんなの? タマキ:あまりにも実感が無くて……。 ヒロ:本当なんだ、タマキ……。 ミミ:……ねぇ、ママ。 ミミ:最初に言った話、覚えてる? タマキ:え? タマキ:えっと……あ、ミミのパパとママが喧嘩したって話? ミミ:そう。 ミミ:あのね、ママが飛行機に乗る前日に、パパとママは大喧嘩してたの。 : 0:回想 : ヒロ:……ほんとに行くのか? タマキ:うん。 ヒロ:大型の台風が近づいてるのに、飛行機なんて絶対やめた方がいいよ。 ヒロ:来年にしたら……? タマキ:……だって、来年お父さんが生きてるか分からないじゃない。 ヒロ:でも……。 タマキ:お父さん……あと持って半年って言われてるのよ。 タマキ:いくら長くても、たとえ一年持ったとしても……その時にはもうまともに動けないかもしれないじゃない。 ヒロ:……でもな。 タマキ:パパは私に約束してくれたのよ! タマキ:私に世界一綺麗なツリーを見せてやるって……。 タマキ:パパと一緒じゃなきゃ……パパと一緒に見れなきゃ意味がないのよ。 ヒロ:……でも、それで墜落したら俺たちはどうなる? ヒロ:みんな死んだらどうする? ヒロ:俺たちのことは考えてないのか……? タマキ:なによ……失礼なこと言わないで! タマキ:考えてるに決まってるじゃない! タマキ:それでも、パパとの約束は破れないのよ。 タマキ:分かってちょうだい……。 ヒロ:……分かった、行けばいいよ。 ヒロ:でもそれで事故に合ったって誰も泣いてくれないからな。 タマキ:……なんでそんなこと言うの? タマキ:私だっていつもなら時期をズラすけど、今は時間が無いって分かるでしょ!? タマキ:なんであなたはいつも私のことわかってくれないの!? ヒロ:そんな言い方……! タマキ:私は! タマキ:……私はパパとの約束は破りたくない。 ヒロ:……もう勝手にしろよ、俺は知らない。 タマキ:ごめんなさい……行ってきます。 ヒロ:……。 : 0:回想終わり : ミミ:普段喧嘩しない二人が、大きな声で喧嘩してて、私も不安だった。 ミミ:そしたらその不安は的中して、ママとおじいちゃんとおばあちゃんは死んじゃったの……。 タマキ:……なによそれ。 タマキ:私……大バカじゃない。 タマキ:私がお父さんとお母さんを、殺し── ヒロ:違う!! タマキ:……え? : 0:ヒロ、タマキを抱きしめる : ヒロ:……違うよ、タマキ。 ヒロ:お前は悪くないんだよ。 ヒロ:お前はお父さんとの約束を守りたかっただけなんだ。 ヒロ:運が悪かっただけなんだ……。 ヒロ:お前は、大好きなお父さんの最後の思い出を、綺麗なツリーで終わらせてあげたかったんだろ……? タマキ:……そう、そう。(涙を流す) ヒロ:誰も悪くないんだよ……。 タマキ:……パパが、私に見せたかった景色を、私がパパに見せてあげたかったの……。(涙が溢れてくる) ヒロ:……俺は、お前のお父さんみたいにタマキを幸せにしてあげられないかもしれない。 ヒロ:お前のお父さんみたいに、喜ばせることも出来ないかもしれない。 ヒロ:でも、お前を許すことは出来るから。 ヒロ:タマキの抱えてる気持ち、俺も一緒に抱えてあげるから。 タマキ:……うん。 : 0:タマキ、ヒロの手を握る。 : タマキ:……やっぱり優しいね、ヒロは。 ヒロ:え……? ヒロ:今俺の名前……。 タマキ:うん。 タマキ:……思い出したよ。 タマキ:あなたのこと、全部。 ヒロ:(泣きながら)タマキ……! タマキ:……ミミも、おいで。 ミミ:思い出したの……? タマキ:うん、そうだよ、ミミ。 ミミ:(泣きながら)ママ……ママ!! タマキ:ごめんね、ミミ。 タマキ:ずっと一緒に居てあげられなくて……。 ミミ:ごめん……ごめんなさい……! ミミ:私も聞いてたのに、止めたら良かったのに……!! タマキ:ううん、ミミのせいじゃない……。 タマキ:あのね、ミミ。 タマキ:ママは、ミミが泣くくらいならどんなことだってしてあげる。 タマキ:だってミミは、いつまでもママの可愛い可愛い娘なんだから……。 ミミ:うん……ママ。 ミミ:ずっと、ずっと大好き……。 タマキ:……お兄ちゃん。 キヨタカ:……どうした、タマキ。 タマキ:……2人を、どうかよろしくね。 キヨタカ:……あぁ、任せろ。 キヨタカ:妹の世話も姪っ子の世話も変わらん。 タマキ:私の世話なんてしたっけ? キヨタカ:……俺がしてもらってたかもしれないな。 タマキ:ふふ、そうかもね。 タマキ:でも、頼りにしてるからね、お兄ちゃん。 キヨタカ:あぁ、任せろ。 : 0:そろそろ時計の針が6時を刺し始める。 : ミミ:……あ、ママ!急いで! タマキ:え? ミミ:パパも外に出て! ヒロ:え、俺も? ヒロ:どうしたんだ? : 0:ミミが2人を街へと連れていく。 0:そこには大きなツリーが立っていた。 : タマキ:……ここ、私が昼間に通ったところだ。 ミミ:ママ、ここ! ミミ:このツリー6時半に電気消えちゃうから早く来なきゃと思って! タマキ:あ、ここって。 ミミ:あのね。 ミミ:パパから聞いたんだけど、ママが初めてパパに出会ったのってここなんだよね? ヒロ:あぁ、そうだったな。 ヒロ:その日も、クリスマスだったっけ。 : 0:回想 : タマキ:……街中カップルばっかり! タマキ:仕事辞めて地元で癒されるはずだったのに、なんなのよぉ!! : 0:その時、大きなビンタの音が聞こえる。 : タマキ:え……なに? タマキ:今のビックリするくらいおっきなビンタの音。 : 0:お店の中からヒロが頬を抑えながら出てくる : ヒロ:……いたた。 タマキ:だ、大丈夫ですか? ヒロ:あ、お構いなく、大丈夫ですので。 タマキ:口から血が出てる。 タマキ:これ使ってください。 ヒロ:え、ハンカチ……じゃなくてポケットティッシュですか。 タマキ:なんか文句ありますか? ヒロ:いや、全然。 ヒロ:ハンカチだったら、返すために連絡先交換したりするイベント起きるかなって。 タマキ:下心がすごいな……。 タマキ:ってか、純粋な疑問なんですけど、なんでそんなに強く叩かれたんですか? ヒロ:彼女とご飯食べてて、クリスマスだねって聞かれて。 タマキ:なんて答えたんですか? ヒロ:忙しくてプレゼント買うの忘れてたって言いました。 タマキ:……ほんとにそれだけでそんな叩かれます? ヒロ:……あ、ちょっと可愛い子見かけて、あの子可愛いねって言ったらこんな感じに。 タマキ:……なんていうか、デリカシーのない人ですね。 ヒロ:え!?そうなんですか!? タマキ:無自覚ですか。 ヒロ:いや、いつも変なこと言ったって気付いても、その時には既に叩かれてるので……。 タマキ:……ふふ、なんか変わってますね。 ヒロ:……可愛いですね。 タマキ:へ!?急になんですか!? ヒロ:いや、可愛い人だなぁって。 タマキ:な……なにを……。 ヒロ:え、嫌でした? タマキ:嫌……じゃないですけど。 ヒロ:ならよかったぁ。 ヒロ:あ、あと良かったらなんですけど、指輪貰ってくれません? タマキ:はぁ!? ヒロ:いや、彼女にいつか渡そうと思って買ってたんですけど、もう渡せそうに無いんでよかったら。 タマキ:いや……いらないです。 タマキ:そういうとこだと思いますよ、叩かれるの。 ヒロ:……確かに。 タマキ:……ふふ。 タマキ:でも、あなたって面白い人かもしれないですね。 ヒロ:じゃあ指輪貰ってくれますか! タマキ:いや、そうはならんでしょうが! ヒロ:やっぱりダメか……。 タマキ:……でも、私の為にお金を貯めて、いつか指輪をくれるなら、貰ってあげてもいいですけど。 ヒロ:……へ? タマキ:ク……クリスマスだからですよ! タマキ:クリスマスだから特別なんですからね! タマキ:こんな街中カップルだらけで、私だって少しはクリスマスデートしたいってだけで!都合がいいと言うかなんというか……。 ヒロ:(そっと手を握る)これでどうですか? タマキ:え……? ヒロ:え、手握っちゃダメでした? タマキ:ダメ……ではないですけど。 ヒロ:じゃあ、よろしくお願いします。 タマキ:……うん、よろしく! : 0:回想終わり : ヒロ:……俺、こんなに変わり者だったっけ? タマキ:(軽く笑う)……うん、変な人だったよ。 ヒロ:はは……まぁでも、少しは良くなったでしょ? タマキ:……うん。 ヒロ:ならよかったよ。 ヒロ:……それにしてもミミ。 ヒロ:なんで俺たちをここに連れて来たかったんだ? ミミ:だってパパとママ、まだ結婚式挙げてないんでしょ? ミミ:前にママから聞いたよ。 タマキ:そういえば。 ヒロ:……そうだね。 ミミ:え、二人とも忘れてたの? タマキ:なんか、もう忘れちゃってたね。 ヒロ:デキ婚でそれどころじゃなかったしなぁ。 ミミ:……それは別に聞きたくなかったな。 ヒロ:え!? ヒロ:いや、ごめんごめん。 ヒロ:そんなつもりじゃなくて……。 タマキ:……なんか、まだあんまり成長してないかもね、そういうとこ。 ヒロ:え、ごめん……。 タマキ:……でも、嫌いじゃないよ。 タマキ:そういうところも。 ヒロ:……ありがとう。 ミミ:はいはい、2人共いい感じのところ悪いけど、時間ないからこれ持って。 : 0:ミミが二人に指輪を渡す。 : タマキ:え、ミミ。 タマキ:この指輪、どこで手に入れたの? ミミ:パパがね、ママに秘密でこっそりお金を貯めて買ったんだよ。 タマキ:そうなの? ヒロ:……あぁ。 ヒロ:本当は、一昨年のクリスマスに渡すつもりだったんだけどね。 ヒロ:黙っててごめん。 タマキ:……もう、なんでアナタは変なとこだけ気が利くの? ヒロ:自分でもわからないよ。 ヒロ:ただ、タマキが喜ぶ顔が見れたら、それが俺の幸せだから。 タマキ:……答えになってないよ。(涙ぐみながら笑う) ミミ:はいはい、じゃあお二人さん。 ミミ:私が神父をやりますから、指輪の交換をお願いね。 タマキ:可愛い神父だね。 ヒロ:神父というかシスターじゃないか? ミミ:細かいことはいいの! ミミ:ほら、はじめるよ! タマキ:はい。 ヒロ:はい。 ミミ:えー、病める時も……やめ、やめ……えーと、愛を誓いますか? タマキ:ふふ……誓います。 ヒロ:もちろん、誓います。 ミミ:後はよく分かんないけど、とりあえず指輪を交換して! ヒロ:はい、じゃあ……。 タマキ:……待って。 タマキ:私からしてもいい? ヒロ:え、でも……。 タマキ:いいから、薬指出して。 ヒロ:……はい。 タマキ:素直でよろしい。じゃあ……。 : 0:タマキがヒロの指に指輪を嵌める。 : タマキ:はい、ワガママ言ってごめんね。 タマキ:次は、私にもお願い。 ヒロ:うん。 ヒロ:薬指出して。 タマキ:……はい。 ヒロ:タマキ。 タマキ:……なぁに? ヒロ:世界で一番、愛してる。 タマキ:……(泣きながら)うん。 タマキ:私も、いつまでも愛してるよ。 : ヒロM:その日、初めてタマキに指輪を嵌めた。 ヒロM:涙で潤んだタマキの瞳は笑っていて、この時間が永遠に続くような気がした。 ヒロM:その時、時計の針が6時半を指した。 ヒロM:タマキの口が「ありがとう」と動いたように見えた。 ヒロM:クリスマスツリーの電灯が、パッと消えた。 ヒロM:辺りが一瞬暗闇に包まれて、驚いて指輪から手を離した瞬間、指輪は地面に転がり落ちた。 ヒロM:さっきまで握っていたはずのタマキの手はそこにはなく、ツリーの電気と共に、タマキの姿は消え去っていた。 : ヒロ:……タマキ? ヒロ:……タマキ!! ヒロ:どこだ、どこに行ったんだ!! : 0:ヒロが辺りを見回すが、タマキはどこにもいない。 : ヒロ:なんで……もう一度会えたのに……。 ミミ:……ママどこに行っちゃったの? ミミ:どうして? ミミ:ねぇ、パパ、どうして!? ヒロ:どうして……。 ミミ:ねぇ!パパ……!! ヒロ:……。 ミミ:……探そうよ!ママがまだどこかにいるかもしれないよ!パパ、探そう! ヒロ:ミミ……。 ミミ:ママ!どこにいるの!? ミミ:出てきてよ! ミミ:ママ出てきてよ!!(涙が溢れ出す) ヒロ:……帰ろう。 ミミ:でも……でも!! ヒロ:もう、帰ろう……。 ミミ:……いやだ、ママ、ママ……!! : 0:二人は家に帰る。暗い道のりを静かに歩いていく。 : キヨタカ:おかえり。 ヒロ:……ただいま。 キヨタカ:……どうしたんだ、そんな顔して……。 ミミ:ママが……。 ヒロ:……消えた。 キヨタカ:……そうか、やっぱりか。 ヒロ:え……やっぱりって? キヨタカ:さっきな、時計が6時半を指した時、突然停電したんだ。 キヨタカ:すぐに復旧したんだが……その時、おかしなことが起きたんだ。 ヒロ:……何が起きたんですか? キヨタカ:……ツリーが光りだしたんだ。 キヨタカ:触ってもいないのに、突然な。 ミミ:……あれ。 ミミ:このツリー、コンセントに刺さってないよ。 ヒロ:え? キヨタカ:あぁ、電気は通ってないはずなんだ。 キヨタカ:なのに、突然光った。 ヒロ:どうして……。 キヨタカ:……タマキは、これを親父に見せたかったんじゃないかな。 ヒロ:え? キヨタカ:……世界で一番綺麗なツリーだよ。 キヨタカ:フランスのなんかより、よっぽど綺麗じゃないか。 キヨタカ:親父とタマキが約束した、このツリーの方が。 ヒロ:……そうだ、そうだな、タマキ。 ヒロ:お前が見せたかったのは、これだったんだな……。 ミミ:……ママが運んでくれたツリー。 ミミ:大きすぎて天井まで届いてるよ……。 キヨタカ:……もっと上まで届いてるさ。 ヒロ:……タマキ、クリスマスプレゼント……受け取ったよ── : 0:END