台本概要
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タイトル | 桜の木の下に死体を埋めてみた |
---|---|
作者名 | 雪見印 |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 1人用台本(不問1) ※兼役あり |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
桜の木の下に死体を埋める話
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
名無し | 不問 | - | 桜の木の下に死体を埋める人 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:桜の木の下には死体が埋まっているらしい。
:実際にそうなのかは知らないが。
:どうやら埋まっている死体の血を吸って綺麗な桜色になるらしい。
:実際に試したことがないので分からないが。
:もし、この説が正しいのであれば来年は今年より綺麗に咲くに違いない。
:という訳で百聞は一見に如かず。早速埋めてみようと思う。
:用意するのはこちら。今朝ご臨終したてほやほやの人間である。
:後で文句を言われても大変なのでもちろん本人の許可は取っている。
:むしろ「死んだら桜の木の下に埋めて欲しい。」と言われているので大丈夫だろう。
:普通だったら埋められる桜の木を探すところから始めるのだが
:ちょうど良く家の庭には桜の木がある。
:聞いたところによるとこの人が生まれた年に植えられた木らしい。
:春になると綺麗な花が咲き、一緒に花見をするのが毎年の楽しみだった。
:今年も花見をして来年もまたしようと約束していたのだ。
:……しんみりするのは後にしよう。
:早速、家の倉庫にあったシャベルで根元を掘り起こす。
:何十年も成長した木の根はずいぶん深いところまで伸びているようで掘っても掘っても根が見えた。
:半日後、ようやく一人埋められるような穴ができた。
:途中で野生動物に掘り起こされるのも困るので必要以上に掘ってしまった気もするが…
:まぁ…念には念をということにしておこう。
:まず本人を入れる。死後硬直が始まっているからなのか関節が少し固まっていたが、なんとか入ってもらうことができた。
:ここでふと思った。一人で入るのは寂しいのではないかと。だが、自分が入る訳にも他の人を入れる訳にもいかない。
:面倒ではあったが家から愛用品をいくつか持ってきて埋めることにした。
:手に取るたびにこの人との思い出が蘇り、涙がこぼれ落ちた。
:いらないと思うがこの涙も一緒に埋めることにしよう。
:埋められる物は全て埋め、この日の作業は終わった。
:季節は巡り、あっという間に春を迎えた。
:どんなに丁寧に世話をしたとしても木の知識なんて無いに等しい。
:下手に根っこを傷つけて枯れやしないかと心配していたがどうやら大丈夫だったようだ。
:今年も綺麗な花が咲いてくれた。
:肝心の色合いはどうかというと…
:とても綺麗だ。
:ひょっとしたら今まで見てきた中で一番綺麗だと思う。
:とある作家が満開の桜の木の下を通ると気が狂ってしまうとかなんとか書いていたが
:そう言われても頷けるほど綺麗に咲いていた。
:きっとあの人の血を吸って綺麗な色に染まったのだろう。
:多少の贔屓は入っているかもしれないが、
:テレビや雑誌で見る桜が見劣りしてしまうほどだった。
:昼間でさえこれなのだから、夜は絶品だ。
:月明かりに照らされているのを見た時は息を呑んでしまった。
:その日は興奮して一睡もできなかったのは今でも覚えている。
:そういえば昔も眠れない時にはあの人と桜を見た。
:綺麗な桜を見ているうちに寝てしまい気がついたら布団で寝ていたのだ。
:きっとあの人が運んでくれたんだろう…
:…あの人にも見せたかったな。
:しかしそんな思いも虚しくその年に桜は枯れてしまった。
:そう。唐突に枯れてしまったのだ。
:花が散り、輝かしい新緑で覆われるはずだった桜の木は
:まるで冬に戻ったような姿になってしまった。
:あの人と共に成長した木は、あの人と共に朽ち果てるのが運命だったのだろうか。
:だとしたらとんだ人でなしな奴だ。
:ただでさえあの人が亡くなった悲しみが癒えないのに
:あの人との思い出のさえも消えてしまう気がした。
:それに一人だけ置いてきぼりを食らってしまうようでとても悲しかった。
:その後、桜の木は切ってもらった。
:できれば残しておきたかったが家の方に倒れてきても困るのだ。
:きっとあの木は材木として加工されるのだろう。
:今は切り株だけが残っている。
:新しく家族ができたら庭に何を植えようか。
:何年経っても決めることはできなかった。
:桜の木の下には死体が埋まっているらしい。
:実際にそうなのかは知らないが。
:どうやら埋まっている死体の血を吸って綺麗な桜色になるらしい。
:実際に試したことがないので分からないが。
:もし、この説が正しいのであれば来年は今年より綺麗に咲くに違いない。
:という訳で百聞は一見に如かず。早速埋めてみようと思う。
:用意するのはこちら。今朝ご臨終したてほやほやの人間である。
:後で文句を言われても大変なのでもちろん本人の許可は取っている。
:むしろ「死んだら桜の木の下に埋めて欲しい。」と言われているので大丈夫だろう。
:普通だったら埋められる桜の木を探すところから始めるのだが
:ちょうど良く家の庭には桜の木がある。
:聞いたところによるとこの人が生まれた年に植えられた木らしい。
:春になると綺麗な花が咲き、一緒に花見をするのが毎年の楽しみだった。
:今年も花見をして来年もまたしようと約束していたのだ。
:……しんみりするのは後にしよう。
:早速、家の倉庫にあったシャベルで根元を掘り起こす。
:何十年も成長した木の根はずいぶん深いところまで伸びているようで掘っても掘っても根が見えた。
:半日後、ようやく一人埋められるような穴ができた。
:途中で野生動物に掘り起こされるのも困るので必要以上に掘ってしまった気もするが…
:まぁ…念には念をということにしておこう。
:まず本人を入れる。死後硬直が始まっているからなのか関節が少し固まっていたが、なんとか入ってもらうことができた。
:ここでふと思った。一人で入るのは寂しいのではないかと。だが、自分が入る訳にも他の人を入れる訳にもいかない。
:面倒ではあったが家から愛用品をいくつか持ってきて埋めることにした。
:手に取るたびにこの人との思い出が蘇り、涙がこぼれ落ちた。
:いらないと思うがこの涙も一緒に埋めることにしよう。
:埋められる物は全て埋め、この日の作業は終わった。
:季節は巡り、あっという間に春を迎えた。
:どんなに丁寧に世話をしたとしても木の知識なんて無いに等しい。
:下手に根っこを傷つけて枯れやしないかと心配していたがどうやら大丈夫だったようだ。
:今年も綺麗な花が咲いてくれた。
:肝心の色合いはどうかというと…
:とても綺麗だ。
:ひょっとしたら今まで見てきた中で一番綺麗だと思う。
:とある作家が満開の桜の木の下を通ると気が狂ってしまうとかなんとか書いていたが
:そう言われても頷けるほど綺麗に咲いていた。
:きっとあの人の血を吸って綺麗な色に染まったのだろう。
:多少の贔屓は入っているかもしれないが、
:テレビや雑誌で見る桜が見劣りしてしまうほどだった。
:昼間でさえこれなのだから、夜は絶品だ。
:月明かりに照らされているのを見た時は息を呑んでしまった。
:その日は興奮して一睡もできなかったのは今でも覚えている。
:そういえば昔も眠れない時にはあの人と桜を見た。
:綺麗な桜を見ているうちに寝てしまい気がついたら布団で寝ていたのだ。
:きっとあの人が運んでくれたんだろう…
:…あの人にも見せたかったな。
:しかしそんな思いも虚しくその年に桜は枯れてしまった。
:そう。唐突に枯れてしまったのだ。
:花が散り、輝かしい新緑で覆われるはずだった桜の木は
:まるで冬に戻ったような姿になってしまった。
:あの人と共に成長した木は、あの人と共に朽ち果てるのが運命だったのだろうか。
:だとしたらとんだ人でなしな奴だ。
:ただでさえあの人が亡くなった悲しみが癒えないのに
:あの人との思い出のさえも消えてしまう気がした。
:それに一人だけ置いてきぼりを食らってしまうようでとても悲しかった。
:その後、桜の木は切ってもらった。
:できれば残しておきたかったが家の方に倒れてきても困るのだ。
:きっとあの木は材木として加工されるのだろう。
:今は切り株だけが残っている。
:新しく家族ができたら庭に何を植えようか。
:何年経っても決めることはできなかった。