台本概要
442 views
タイトル | サン・トナ |
---|---|
作者名 | Oroるん (@Oro90644720) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 3人用台本(女1、不問2) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
クリスマスプレゼントを配るサンタとトナカイのお話。 アドリブ可(サンタ・トナカイ口調男性になってますが、自由に変えて構いません) 442 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
サンタ | 不問 | 101 | 新人サンタ |
トナカイ | 不問 | 96 | ベテラントナカイ |
彼女 | 女 | 31 | とある事情で関わることになった女性 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
トナカイ:そうなんだあ、今年初めてなの?
サンタ:はい!宜しくお願いします!
トナカイ:うん、宜しくねえ。
トナカイ:いや、嬉しいなあ。最近サンタの成り手(なりて)が少なくてさあ、特に君みたいな若い子は貴重だよ。
サンタ:僕も、トナカイさんみたいなベテランと組めて光栄です!
トナカイ:分からないことがあったら何でも聞いてね。
サンタ:ありがとうございます!
トナカイ:プレゼントは全部揃ってるかな?
サンタ:はい!しかし、すごい数ですね。ビックリしちゃいました。
トナカイ:この地域の全ての子供に配るからね。それも今晩の内に。
サンタ:大変な仕事ですね。でも、子供たちの笑顔の為なら、頑張れます!
トナカイ:素晴らしい。君、きっと良いサンタクロースになれるよ。
サンタ:ホントですか!?
トナカイ:うん。私が言うんだから間違いない。
サンタ:やったあ!
トナカイ:さあ、そろそろ行こうか。急がないと、夜が明けちゃうからね。
サンタ:はい、行きましょう!
トナカイ:えーっと、最初の家は・・・
サンタ:3丁目のタカシ君の家です。
トナカイ:よし、落ちないようにしっかりつかまっててね。
サンタ:はい!
トナカイ:よっと。(ソリが空を飛び始める)
サンタ:うわあ、本当に飛んでる。
トナカイ:タカシ君のプレゼント、用意しておいてね。
サンタ:そうだ、プレゼント!(荷台を探し)えーっと、これだ!
トナカイ:随分大きな袋だねえ。中身は何だい?
サンタ:これはですね・・・
彼女:(袋を突き破り)ぷはあっ!
トナカイ:へ?
サンタ:ダ、ダメですよ勝手に出てきちゃ!せっかくラッピングしたのに!
彼女:この袋の中、息苦しいのよ!窒息するっての!
サンタ:我慢して下さい!あとちょっとで着きますから!
トナカイ:サ、サンタさん、サンタさん。
サンタ:何ですか?
トナカイ:それ、誰?
サンタ:彼女です。
トナカイ:・・・サンタさんの?
サンタ:違いますよ。さっき言ってた3丁目のタカシ君なんですけどね。
トナカイ:うん。
サンタ:クリスマスプレゼントに・・・「彼女が欲しい」って。
トナカイ:まさか・・・
サンタ:だから・・・プレゼントの彼女さんです!
トナカイ:ダメっ!
サンタ:えっ?
トナカイ:ダメだよ、そう言うプレゼントは!
サンタ:ダメ、なんですか?
トナカイ:当たり前でしょ!人間をクリスマスプレゼントにして良いわけないでしょ!
サンタ:どうしてですか?
トナカイ:いや、説明しなくても分かるでしょ!どう考えてもモラルに反してるでしょ!
トナカイ:まだペットとかなら分かるけど・・・
サンタ:まあでも、ペットみたいなもんじゃないですか。
トナカイ:うわあ、好青年だと思ったのに、倫理観(りんりかん)ぶっ飛んでるわコイツ。
彼女:どういうこと?わたし帰った方が良いの?
トナカイ:あ、すいません。帰って頂けますか?
彼女:別に良いけど、時間分の料金はもらうからね。
トナカイ:金取んのかよ!この子どこで調達したんだよ!?
サンタ:デリヘルです。
トナカイ:はっきり言うな!
0:時間経過
彼女:じゃあねー、また指名宜しくー。
トナカイ:・・・何とか、店に送り届けたけど。
トナカイ:ねえ、君大丈夫?他のプレゼントも心配になってきたなあ。
サンタ:大丈夫ですよ。
トナカイ:例えば・・・そのジェラルミンケースだけど・・・
サンタ:これは、2丁目のサキちゃんのプレゼントですね。
トナカイ:・・・中身は何?
サンタ:現金一億円です。
トナカイ:はいダメー!ジェラルミンケースって時点で嫌な予感してだけどダメー!
サンタ:ええっ!ちゃんとマネーロンダリングしてありますよ!?
トナカイ:元は何の金なんだよ!
サンタ:これもダメ何ですか!?
トナカイ:ダメだよ!ダメに決まってんでしょ!クリスマスプレゼントに現金なんて!
サンタ:そんなあ。せっかく先祖代々受け継いだ土地を売り飛ばしたのにー!
トナカイ:この罰当たりもんが!ご先祖様に謝れ!
トナカイ:それから、そっちの木箱。随分たくさんあるけど、中身何?
サンタ:これですか?これはですね・・・
サンタ:・・・AK-47カラシニコフ自動小銃100丁およびマガジン装填(そうてん)済み7.62ミリ弾、一万発です!
トナカイ:馬鹿野郎!
サンタ:やっぱり、マガジンに装填しちゃったのはマズかったですか?
トナカイ:そこじゃねーわ!その物騒なプレゼント自体が問題なの!
サンタ:そうなんですか?本物の銃でサバイバルゲームがしたいらしいですよ?
トナカイ:ゲームで済むか!本物の戦場になるわ!地獄絵図だわ!
トナカイ:それ、頼んだの絶対子供じゃないよー!バックにテロ組織いるよー!武器調達に利用されてるよー!
サンタ:違いますよ!ちゃんと子供です!
トナカイ:名前は?
サンタ:テロ男君です。
トナカイ:テロじゃん!そのまんまじゃん!自ら名乗っちゃってるじゃん!
トナカイ:(大きくため息をついて)あのさ、こんなこと、あんまり言いたくないんだけど。
トナカイ:君、サンタ向いてないと思うよ。
サンタ:えっ!?
トナカイ:サンタにも分別(ふんべつ)は必要なんだよ。いくら望まれても、何でもかんでも与えてたらダメなの。
サンタ:でも、それがサンタの役目じゃないですか!
トナカイ:だから・・・
サンタ:(被せて)僕は!
トナカイ:・・・
サンタ:僕は・・・子供の頃、クリスマスが、クリスマスプレゼントを貰えるのが、一年で一番の楽しみだったんです。
トナカイ:・・・そうだったんだ。
サンタ:でも、7歳のクリスマス、僕の家にサンタさんは来てくれなかった。
トナカイ:どうして?
サンタ:理由は分かりません。ただ僕は、とにかく悲しくて、その事実が受け入れられなくて・・・
サンタ:ずっと泣き喚いて(なきわめいて)ました。次の日もその次の日も。
サンタ:しまいには親に怒られました。「そんなことでいつまでもメソメソするな!」って。
サンタ:でも、僕にとっては「そんなこと」じゃなかったんです。
トナカイ:・・・
サンタ:だから、その時誓ったんです。将来サンタクロースになろう。そして子供達に、僕みたいな悲しい思いをさせない様にしようって。
サンタ:だから僕は、全ての子供の願いを叶えてあげたいんです!
トナカイ:・・・その時サンタさんにお願いしたプレゼントは何だったの?
サンタ:カステラです。
トナカイ:カステラかい!それぐらい親に買ってもらえよ!
サンタ:はい。だから次の日に、親が買ってきてくれました。
トナカイ:買ってもらってんじゃねえか!それでゴネてたの!?そりゃ怒られるわ!
サンタ:でも、サンタさんにプレゼントをもらえなかったっていう事実には変わりないんです!僕は、それが本当に悲しかったんです!
トナカイ:・・・そうか。
トナカイ:気持ちは分かるよ。私だって全ての子供に喜んでもらいたいし、悲しんで欲しくない。
サンタ:だったら・・・
トナカイ:でもやっぱり、叶えちゃいけない願いもあると思うよ。
サンタ:叶えちゃいけない願い・・・僕には分かりません。
サンタ:それはどうやって判断したら良いんですか?教えて下さい!
トナカイ:それは・・・最終的に君自身が考えることだ。
トナカイ:ただ一つ言えるのは、「子供達が幸せになれるかどうか」これだけは忘れちゃいけない。
トナカイ:さっき私がダメだと言ったプレゼント、もし渡していたらどうなっていただろう?きっと喜んでくれたと思うよ。でも、安易(あんい)な方法で不相応(ふそうおう)なものを手に入れて、それが本当にその子の為になるかな?
サンタ:・・・
トナカイ:私がさっき言った「幸せ」って言うのはね、今この瞬間のことだけを言ってるんじゃない。子供たちの、「未来の幸せ」を、考えてあげなきゃいけないって、私はそう思うんだ。
サンタ:未来の幸せ・・・
トナカイ:・・・難しいよね。
サンタ:はい。
トナカイ:でも、それが分からなきゃ、サンタクロースは務まらないよ。
サンタ:・・・
トナカイ:今年は、他の人に代わってもらったらどうかな?
サンタ:・・・僕は、サンタ失格ですか?
トナカイ:私にも責任がある。はっきり言って、今の君には任せられない。
サンタ:・・・分かりました。
トナカイ:じゃあ、帰ろう。
0:時間経過
サンタ:・・・
トナカイ:まあ、あんまり落ち込まないで。
サンタ:すいません、期待に応えられなくて。
トナカイ:気にしないで。君が良い人なのは間違いないから。きっとサンタ以外の道でも・・・
トナカイ:・・・ん?あれはさっきの?
サンタ:どうかしました?
トナカイ:ほら、あそこのビルの屋上。あれ、さっき危うくクリスマスプレゼントにしそうになった彼女じゃない?
サンタ:・・・本当だ。あんな所で何やってるんだろう。
トナカイ:・・・ちょっと待って。柵(さく)を乗り越えてないか!?
サンタ:まさか、飛び降りる気じゃ!?
トナカイ:止めなきゃ!
0:ビルの屋上
彼女:えっ?何?
サンタ:早まらないで!?
彼女:さっきのサンタとトナカイ?何でここに?
トナカイ:君!何があったかは知らないが、考え直すんだ!
彼女:来ないで!アンタ達には関係無いでしょ!
サンタ:関係なくなんか無い!プレゼント用にラッピングしてあげた仲じゃないか!
トナカイ:どんな仲だよ。
彼女:私に構わないで!もう私は、生きていたく無いの!楽になりたいの!
トナカイ:かなり興奮してるな。今にも飛び降りそうだ。
サンタ:トナカイさん。一つ気になった事があるんです。
トナカイ:何だ?
サンタ:トナカイさんの鼻って、どうして赤くないんですか?
トナカイ:それ今!?いま聞くこと!?今じゃなきゃダメかなあ!?
彼女:何ゴチャゴチャ言ってんの!?もう私のことは放っておいて!
サンタ:落ち着いて下さい。一体何があったんですか?
彼女:・・・私が何でこんな仕事してるか分かる?借金よ。それも、ものすごい金額。私はそれを返す為に体売ってんの。
トナカイ:何で借金を?
彼女:付き合ってた男に騙されたの。親の会社が危ないから、お金が必要だって言われて、それで借金を・・・
彼女:でも、全部嘘だった。お金を渡したら、その後連絡がつかなくなった。
サンタ:ひどい・・・
彼女:いくら働いても、ちっとも借金は減らないし、もう、疲れちゃった。
彼女:こんな毎日、耐えられない。だから、もう終わりにしたいの!
サンタ:でもきっと、あなたが死んだら悲しむ人がいます!
彼女:そんな奴、どこにも居ないわ!
サンタ:僕がいます!
彼女:えっ?
サンタ:僕は、貴方が死んだら、悲しいですよ?
彼女:適当なこと言わないで!会ったばかりの私がどうなろうと、アンタの知ったことじゃないでしょ!?
サンタ:そんなことない!
彼女:何でよ!?
サンタ:僕は・・・サンタクロースだから。
彼女:っ!
サンタ:人を笑顔にするのが、僕の仕事だから。
トナカイ:サンタさん・・・
サンタ:だから、貴方が死んじゃって、もう二度と笑顔になれなくなったら、悲しいです。
彼女:・・・
サンタ:貴方も子供の頃、サンタさんにクリスマスプレゼントをもらった事があったでしょう?
彼女:うん。
サンタ:そのプレゼントには、願いが込められていたんです。
彼女:願い?
サンタ:貴方に笑って欲しい。幸せになって欲しい。今だけじゃなく、ずっと未来も。
彼女:・・・
サンタ:人生には、辛いこと一杯ありますよね。僕もついさっき、挫折(ざせつ)を味わったばかりです。
トナカイ:・・・
サンタ:「生きていたらきっと良い事がある」、なんて言うのは綺麗事かもしれません。でも、生きていなきゃ、絶対に幸せは訪れないんです。
サンタ:だから、幸せを諦めないで下さい。それが、昔貴方にプレゼントを渡した、サンタクロースの願いです。
彼女:・・・
トナカイ:・・・
彼女:(泣き崩れる)
0:間
サンタ:もう、飛び降りないですよね。
彼女:うん・・・ありがとう。私、頑張ってみる。
トナカイ:良かった。
サンタ:よし!貴方は大人だけど、とっても良い子だから、特別にプレゼントをあげましょう!
彼女:えっ?
トナカイ:サンタさん?
サンタ:(ジェラルミンケースを持ってきて)さあ、これは貴方のものです。
トナカイ:ちょっと!そのジェラルミンケースは・・・
彼女:(ジェラルミンケースを開け)これ・・・お金?
サンタ:それで借金を返して、人生をやり直してください。
トナカイ:サンタさん!それは・・・
サンタ:すいません。さっきトナカイさんが言ってたことに逆らってますよね。
サンタ:でも、今回だけは、「安易な方法」かもしれないけど、この人を救ってあげたいんです。
サンタ:ダメですか?
トナカイ:・・・(ため息)これで反対したら、私が悪者になっちゃうか。
サンタ:トナカイさん!
トナカイ:今回だけだからね!
サンタ:はい!
彼女:ありがとう。でも、これは多過ぎるわ。
トナカイ:ちなみに、借金はあといくら残ってるの?
彼女:2万。
トナカイ:2万!?あとちょっとじゃん!順調に減ってるじゃん!何でそれで自殺しようするんだよ!早まり過ぎだろ!
0:時間経過
サンタ:トナカイさん。
トナカイ:何だい?
サンタ:僕、やっぱりサンタクロース続けたいです!諦めたくないです!
サンタ:一年修行して、来年のクリスマスには、立派なサンタになって帰ってきます!
トナカイ:そっか。
サンタ:はい!
トナカイ:じゃあ、来年こそは、一緒にプレゼントを配ろう。
サンタ:トナカイさん・・・
トナカイ:頑張ってね。待ってるよ。
サンタ:はい!
0:間
トナカイ:『一年後』
サンタ:ホッホッホッ!メリークリスマス!はい、プレゼント。
サンタ:仮想通貨、2千万円だよー。
トナカイ:変わってねえええええ!!!
0:おわり
トナカイ:そうなんだあ、今年初めてなの?
サンタ:はい!宜しくお願いします!
トナカイ:うん、宜しくねえ。
トナカイ:いや、嬉しいなあ。最近サンタの成り手(なりて)が少なくてさあ、特に君みたいな若い子は貴重だよ。
サンタ:僕も、トナカイさんみたいなベテランと組めて光栄です!
トナカイ:分からないことがあったら何でも聞いてね。
サンタ:ありがとうございます!
トナカイ:プレゼントは全部揃ってるかな?
サンタ:はい!しかし、すごい数ですね。ビックリしちゃいました。
トナカイ:この地域の全ての子供に配るからね。それも今晩の内に。
サンタ:大変な仕事ですね。でも、子供たちの笑顔の為なら、頑張れます!
トナカイ:素晴らしい。君、きっと良いサンタクロースになれるよ。
サンタ:ホントですか!?
トナカイ:うん。私が言うんだから間違いない。
サンタ:やったあ!
トナカイ:さあ、そろそろ行こうか。急がないと、夜が明けちゃうからね。
サンタ:はい、行きましょう!
トナカイ:えーっと、最初の家は・・・
サンタ:3丁目のタカシ君の家です。
トナカイ:よし、落ちないようにしっかりつかまっててね。
サンタ:はい!
トナカイ:よっと。(ソリが空を飛び始める)
サンタ:うわあ、本当に飛んでる。
トナカイ:タカシ君のプレゼント、用意しておいてね。
サンタ:そうだ、プレゼント!(荷台を探し)えーっと、これだ!
トナカイ:随分大きな袋だねえ。中身は何だい?
サンタ:これはですね・・・
彼女:(袋を突き破り)ぷはあっ!
トナカイ:へ?
サンタ:ダ、ダメですよ勝手に出てきちゃ!せっかくラッピングしたのに!
彼女:この袋の中、息苦しいのよ!窒息するっての!
サンタ:我慢して下さい!あとちょっとで着きますから!
トナカイ:サ、サンタさん、サンタさん。
サンタ:何ですか?
トナカイ:それ、誰?
サンタ:彼女です。
トナカイ:・・・サンタさんの?
サンタ:違いますよ。さっき言ってた3丁目のタカシ君なんですけどね。
トナカイ:うん。
サンタ:クリスマスプレゼントに・・・「彼女が欲しい」って。
トナカイ:まさか・・・
サンタ:だから・・・プレゼントの彼女さんです!
トナカイ:ダメっ!
サンタ:えっ?
トナカイ:ダメだよ、そう言うプレゼントは!
サンタ:ダメ、なんですか?
トナカイ:当たり前でしょ!人間をクリスマスプレゼントにして良いわけないでしょ!
サンタ:どうしてですか?
トナカイ:いや、説明しなくても分かるでしょ!どう考えてもモラルに反してるでしょ!
トナカイ:まだペットとかなら分かるけど・・・
サンタ:まあでも、ペットみたいなもんじゃないですか。
トナカイ:うわあ、好青年だと思ったのに、倫理観(りんりかん)ぶっ飛んでるわコイツ。
彼女:どういうこと?わたし帰った方が良いの?
トナカイ:あ、すいません。帰って頂けますか?
彼女:別に良いけど、時間分の料金はもらうからね。
トナカイ:金取んのかよ!この子どこで調達したんだよ!?
サンタ:デリヘルです。
トナカイ:はっきり言うな!
0:時間経過
彼女:じゃあねー、また指名宜しくー。
トナカイ:・・・何とか、店に送り届けたけど。
トナカイ:ねえ、君大丈夫?他のプレゼントも心配になってきたなあ。
サンタ:大丈夫ですよ。
トナカイ:例えば・・・そのジェラルミンケースだけど・・・
サンタ:これは、2丁目のサキちゃんのプレゼントですね。
トナカイ:・・・中身は何?
サンタ:現金一億円です。
トナカイ:はいダメー!ジェラルミンケースって時点で嫌な予感してだけどダメー!
サンタ:ええっ!ちゃんとマネーロンダリングしてありますよ!?
トナカイ:元は何の金なんだよ!
サンタ:これもダメ何ですか!?
トナカイ:ダメだよ!ダメに決まってんでしょ!クリスマスプレゼントに現金なんて!
サンタ:そんなあ。せっかく先祖代々受け継いだ土地を売り飛ばしたのにー!
トナカイ:この罰当たりもんが!ご先祖様に謝れ!
トナカイ:それから、そっちの木箱。随分たくさんあるけど、中身何?
サンタ:これですか?これはですね・・・
サンタ:・・・AK-47カラシニコフ自動小銃100丁およびマガジン装填(そうてん)済み7.62ミリ弾、一万発です!
トナカイ:馬鹿野郎!
サンタ:やっぱり、マガジンに装填しちゃったのはマズかったですか?
トナカイ:そこじゃねーわ!その物騒なプレゼント自体が問題なの!
サンタ:そうなんですか?本物の銃でサバイバルゲームがしたいらしいですよ?
トナカイ:ゲームで済むか!本物の戦場になるわ!地獄絵図だわ!
トナカイ:それ、頼んだの絶対子供じゃないよー!バックにテロ組織いるよー!武器調達に利用されてるよー!
サンタ:違いますよ!ちゃんと子供です!
トナカイ:名前は?
サンタ:テロ男君です。
トナカイ:テロじゃん!そのまんまじゃん!自ら名乗っちゃってるじゃん!
トナカイ:(大きくため息をついて)あのさ、こんなこと、あんまり言いたくないんだけど。
トナカイ:君、サンタ向いてないと思うよ。
サンタ:えっ!?
トナカイ:サンタにも分別(ふんべつ)は必要なんだよ。いくら望まれても、何でもかんでも与えてたらダメなの。
サンタ:でも、それがサンタの役目じゃないですか!
トナカイ:だから・・・
サンタ:(被せて)僕は!
トナカイ:・・・
サンタ:僕は・・・子供の頃、クリスマスが、クリスマスプレゼントを貰えるのが、一年で一番の楽しみだったんです。
トナカイ:・・・そうだったんだ。
サンタ:でも、7歳のクリスマス、僕の家にサンタさんは来てくれなかった。
トナカイ:どうして?
サンタ:理由は分かりません。ただ僕は、とにかく悲しくて、その事実が受け入れられなくて・・・
サンタ:ずっと泣き喚いて(なきわめいて)ました。次の日もその次の日も。
サンタ:しまいには親に怒られました。「そんなことでいつまでもメソメソするな!」って。
サンタ:でも、僕にとっては「そんなこと」じゃなかったんです。
トナカイ:・・・
サンタ:だから、その時誓ったんです。将来サンタクロースになろう。そして子供達に、僕みたいな悲しい思いをさせない様にしようって。
サンタ:だから僕は、全ての子供の願いを叶えてあげたいんです!
トナカイ:・・・その時サンタさんにお願いしたプレゼントは何だったの?
サンタ:カステラです。
トナカイ:カステラかい!それぐらい親に買ってもらえよ!
サンタ:はい。だから次の日に、親が買ってきてくれました。
トナカイ:買ってもらってんじゃねえか!それでゴネてたの!?そりゃ怒られるわ!
サンタ:でも、サンタさんにプレゼントをもらえなかったっていう事実には変わりないんです!僕は、それが本当に悲しかったんです!
トナカイ:・・・そうか。
トナカイ:気持ちは分かるよ。私だって全ての子供に喜んでもらいたいし、悲しんで欲しくない。
サンタ:だったら・・・
トナカイ:でもやっぱり、叶えちゃいけない願いもあると思うよ。
サンタ:叶えちゃいけない願い・・・僕には分かりません。
サンタ:それはどうやって判断したら良いんですか?教えて下さい!
トナカイ:それは・・・最終的に君自身が考えることだ。
トナカイ:ただ一つ言えるのは、「子供達が幸せになれるかどうか」これだけは忘れちゃいけない。
トナカイ:さっき私がダメだと言ったプレゼント、もし渡していたらどうなっていただろう?きっと喜んでくれたと思うよ。でも、安易(あんい)な方法で不相応(ふそうおう)なものを手に入れて、それが本当にその子の為になるかな?
サンタ:・・・
トナカイ:私がさっき言った「幸せ」って言うのはね、今この瞬間のことだけを言ってるんじゃない。子供たちの、「未来の幸せ」を、考えてあげなきゃいけないって、私はそう思うんだ。
サンタ:未来の幸せ・・・
トナカイ:・・・難しいよね。
サンタ:はい。
トナカイ:でも、それが分からなきゃ、サンタクロースは務まらないよ。
サンタ:・・・
トナカイ:今年は、他の人に代わってもらったらどうかな?
サンタ:・・・僕は、サンタ失格ですか?
トナカイ:私にも責任がある。はっきり言って、今の君には任せられない。
サンタ:・・・分かりました。
トナカイ:じゃあ、帰ろう。
0:時間経過
サンタ:・・・
トナカイ:まあ、あんまり落ち込まないで。
サンタ:すいません、期待に応えられなくて。
トナカイ:気にしないで。君が良い人なのは間違いないから。きっとサンタ以外の道でも・・・
トナカイ:・・・ん?あれはさっきの?
サンタ:どうかしました?
トナカイ:ほら、あそこのビルの屋上。あれ、さっき危うくクリスマスプレゼントにしそうになった彼女じゃない?
サンタ:・・・本当だ。あんな所で何やってるんだろう。
トナカイ:・・・ちょっと待って。柵(さく)を乗り越えてないか!?
サンタ:まさか、飛び降りる気じゃ!?
トナカイ:止めなきゃ!
0:ビルの屋上
彼女:えっ?何?
サンタ:早まらないで!?
彼女:さっきのサンタとトナカイ?何でここに?
トナカイ:君!何があったかは知らないが、考え直すんだ!
彼女:来ないで!アンタ達には関係無いでしょ!
サンタ:関係なくなんか無い!プレゼント用にラッピングしてあげた仲じゃないか!
トナカイ:どんな仲だよ。
彼女:私に構わないで!もう私は、生きていたく無いの!楽になりたいの!
トナカイ:かなり興奮してるな。今にも飛び降りそうだ。
サンタ:トナカイさん。一つ気になった事があるんです。
トナカイ:何だ?
サンタ:トナカイさんの鼻って、どうして赤くないんですか?
トナカイ:それ今!?いま聞くこと!?今じゃなきゃダメかなあ!?
彼女:何ゴチャゴチャ言ってんの!?もう私のことは放っておいて!
サンタ:落ち着いて下さい。一体何があったんですか?
彼女:・・・私が何でこんな仕事してるか分かる?借金よ。それも、ものすごい金額。私はそれを返す為に体売ってんの。
トナカイ:何で借金を?
彼女:付き合ってた男に騙されたの。親の会社が危ないから、お金が必要だって言われて、それで借金を・・・
彼女:でも、全部嘘だった。お金を渡したら、その後連絡がつかなくなった。
サンタ:ひどい・・・
彼女:いくら働いても、ちっとも借金は減らないし、もう、疲れちゃった。
彼女:こんな毎日、耐えられない。だから、もう終わりにしたいの!
サンタ:でもきっと、あなたが死んだら悲しむ人がいます!
彼女:そんな奴、どこにも居ないわ!
サンタ:僕がいます!
彼女:えっ?
サンタ:僕は、貴方が死んだら、悲しいですよ?
彼女:適当なこと言わないで!会ったばかりの私がどうなろうと、アンタの知ったことじゃないでしょ!?
サンタ:そんなことない!
彼女:何でよ!?
サンタ:僕は・・・サンタクロースだから。
彼女:っ!
サンタ:人を笑顔にするのが、僕の仕事だから。
トナカイ:サンタさん・・・
サンタ:だから、貴方が死んじゃって、もう二度と笑顔になれなくなったら、悲しいです。
彼女:・・・
サンタ:貴方も子供の頃、サンタさんにクリスマスプレゼントをもらった事があったでしょう?
彼女:うん。
サンタ:そのプレゼントには、願いが込められていたんです。
彼女:願い?
サンタ:貴方に笑って欲しい。幸せになって欲しい。今だけじゃなく、ずっと未来も。
彼女:・・・
サンタ:人生には、辛いこと一杯ありますよね。僕もついさっき、挫折(ざせつ)を味わったばかりです。
トナカイ:・・・
サンタ:「生きていたらきっと良い事がある」、なんて言うのは綺麗事かもしれません。でも、生きていなきゃ、絶対に幸せは訪れないんです。
サンタ:だから、幸せを諦めないで下さい。それが、昔貴方にプレゼントを渡した、サンタクロースの願いです。
彼女:・・・
トナカイ:・・・
彼女:(泣き崩れる)
0:間
サンタ:もう、飛び降りないですよね。
彼女:うん・・・ありがとう。私、頑張ってみる。
トナカイ:良かった。
サンタ:よし!貴方は大人だけど、とっても良い子だから、特別にプレゼントをあげましょう!
彼女:えっ?
トナカイ:サンタさん?
サンタ:(ジェラルミンケースを持ってきて)さあ、これは貴方のものです。
トナカイ:ちょっと!そのジェラルミンケースは・・・
彼女:(ジェラルミンケースを開け)これ・・・お金?
サンタ:それで借金を返して、人生をやり直してください。
トナカイ:サンタさん!それは・・・
サンタ:すいません。さっきトナカイさんが言ってたことに逆らってますよね。
サンタ:でも、今回だけは、「安易な方法」かもしれないけど、この人を救ってあげたいんです。
サンタ:ダメですか?
トナカイ:・・・(ため息)これで反対したら、私が悪者になっちゃうか。
サンタ:トナカイさん!
トナカイ:今回だけだからね!
サンタ:はい!
彼女:ありがとう。でも、これは多過ぎるわ。
トナカイ:ちなみに、借金はあといくら残ってるの?
彼女:2万。
トナカイ:2万!?あとちょっとじゃん!順調に減ってるじゃん!何でそれで自殺しようするんだよ!早まり過ぎだろ!
0:時間経過
サンタ:トナカイさん。
トナカイ:何だい?
サンタ:僕、やっぱりサンタクロース続けたいです!諦めたくないです!
サンタ:一年修行して、来年のクリスマスには、立派なサンタになって帰ってきます!
トナカイ:そっか。
サンタ:はい!
トナカイ:じゃあ、来年こそは、一緒にプレゼントを配ろう。
サンタ:トナカイさん・・・
トナカイ:頑張ってね。待ってるよ。
サンタ:はい!
0:間
トナカイ:『一年後』
サンタ:ホッホッホッ!メリークリスマス!はい、プレゼント。
サンタ:仮想通貨、2千万円だよー。
トナカイ:変わってねえええええ!!!
0:おわり