台本概要
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タイトル | memoria de flores(メモリア・デ・フロリス)統合版 1・2話 |
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作者名 | 藤色桜 (@renge_story) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 7人用台本(男4、女3) ※兼役あり |
時間 | 60 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
厨二バトルファンタジーものです。モチーフは花×武器 社会の裏側で起こっている事件に主人公が巻き込まれて、足を踏み入れていくような…。 非商用利用時は連絡不要ですが、使ったらぜひ感想等送っていただけると助かります。(Twitterで#メモフロで呟いていただいても結構です。) まだ声劇台本を書くのは不慣れなので…。 商用利用は必ず連絡をお願いします。 やるキャラによってはかなりセリフ量にばらつきが出てしまうかもしれません。 212 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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葉月 | 男 | 76 | 龍前 葉月(タツマエ ハヅキ)♂ 32歳 ブラックIT企業に勤めていた社会人。可もなく不可もない人生を送ってきた。 性格は物事はハッキリ言うタイプではあったが、なんだかんだ断れない性格。 幽霊や占いなど、非現実的なことは基本的に信じていない。 結構不運体質。 |
夜宵 | 女 | 54 | 桜咲 夜宵(オウサキ ヤヨイ)♀ 28歳 元気な姉御肌なお姉さん。葉月より年下だが、上司にあたる。 かなりしっかりしているが、肝心なところで抜けているところがある。 責任感は割かし強い。 |
鞍馬雲珠 | 男 | 50 | 鞍馬雲珠(クラマウズ)♂ ??歳 みすぼらしい感じの長髪の男性。桜咲の隣にいつもいる。 元気な感じでも暗い感じでもないが、よくいる優しいおじさん的な感じ。おっちゃんではない。 桜咲よりも抜けているが、桜咲の抜けたところをカバーしているのはこの人。 |
カリーナ | 女 | 43 | カリーナ♀ ??歳 謎の少女。おとなしく、笑わない。淡々と喋る。 |
下木場 | 男 | 10 | 下木場 蘭(シモコバ ラン)♂ 18歳 口の悪いガキ。ただ、子供っぽいとかじゃなくて、若い熱を持て余してしまった感じ。 現実を受け止めきれてない。世間への復讐に燃える黒いフードの男。 桃花扇と兼ね役 |
姫百合 | 女 | 11 | 姫百合(ヒメユリ)♀ ??歳 純粋無垢。元気いっぱいで、悪いことといいことの判断がついていない。 喜怒哀楽の喜と楽しかないような底抜けの明るさ。 受付嬢と兼ね役 |
上官 | 男 | 14 | 幕ノ内 宏昌(マクノウチ ヒロマサ)♂ 42歳 夜宵や鞍馬雲珠たちの上官にあたる人。えらい。えらそうじゃなくて、えらい。 瀬戸内蓮華と兼ね役 |
蓮華 | 男 | 11 | 瀬戸内 蓮華(セトウチ レンゲ)♂ 27歳 潜在開花機関開発局の研究員。花武器(ペタルタラン)たちの整備や、開発を行っている。 優しい雰囲気で仕事熱心。白崎の部下でかなり優秀な研究員。白崎のような立派な研究員を目指している。桃花扇に対しては、いつも助かっているし、観察対象としてとても興味深いと思っているが、その卑屈さだけはどうにか直してもらえないかと考えている。ちょっとおせっかい気質。 上官と兼ね役 |
桃花扇 | 男 | 6 | 桃花扇(トウカセン)♂ ??歳 長く美しい黒髪を持った超美形男子であるが、自己肯定感地中埋まってる為、常に発言はネガティブ。 蓮華をサポートする名目で契約を結んだが、どちらかというと観察対象であると理解している。 それ自体に特に違和感や嫌悪感は抱いておらず、むしろこんな私が観察対象で残念でしょう。変わってもらった方がよかったですよね、生まれてきてすみません…。といつも卑屈。 下木場蘭と兼ね役 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
葉月N:人気は決して多くはならない、地下駐車場。白髪の少女はピンクのドレスを翻し、乱れる髪も構わず走り抜けていく
カリーナ:はぁ…はぁ…っはぁ…はぁ…はぁ…
鞍馬雲珠:うーん。困っちゃったねぇ。あの足の速さ、とっても厄介だよ?
夜宵:関係ない。捕らえる!!
カリーナ:はぁ…はぁ…っぁあ!!!
鞍馬雲珠:お願いだから、おとなしくしてくれない?
カリーナ:…っ、バラの輪舞曲(ロンド・オブ・ローゼン)…!
鞍馬雲珠:!宵ちゃん
夜宵:くっ!!!!…待ちなさい!!!カリーナ!!…鞍馬!!
鞍馬雲珠:鏡花水月
カリーナ:リサージュ…!
鞍馬雲珠:はぁあ。ほ~んとうに厄介だねぇ…。なんで僕の蜃気楼を可視化できちゃうかな。
夜宵:追うよ鞍馬
鞍馬雲珠:はいよ。宵ちゃん
カリーナ:はぁ…はぁ…っはぁ…はぁ…はぁ…
0:間
姫百合:メモリア・デ・フロリス第1話 死と再生
0:間
葉月M:…ここは、どこだ?…何も見えない…何も聞こえない…今まで、何してた?
葉月M:確か、今日も残業で、部下の発注ミスを客先まで謝りに行って…それから…そうだ。
葉月M:駐車場に行ったとき、フードを被った兄ちゃんに呼び止められて、振り返ったら腹から何故か血が出てて…血…?
葉月:ぐあぁっ!!!!!!!いってぇ…!!!!!なんだこれ…蔓…?!
下木場:へぇ、おっさん見えるんだ?それともみんなに見えるもんなのかな?
葉月:何言っ…てんだ…お前…!
下木場:おっさん、喜べよ。この俺様の初花(ういか)の礎になれるんだから!!!光栄だろ?なぁ、姫百合?
姫百合:たくさん美味しいの、吸わせてね?おじさん!
葉月:意味、わかんねぇ…よ…。何が光栄だ…こんな…殺されそうに…なってよぉ…
カリーナ:はぁ…はぁ…っはぁ…はぁ…はぁ…
葉月:ぐぁあああ!!!
カリーナ:はぁ…はぁ…姫、百合
姫百合:…?
カリーナ:っはぁ…姫百合…
姫百合:わぁ!カリーナ!!どうしてここに?開花はできなかったんじゃないの?
夜宵:カリーナ!!!
下木場:!…潜在開花機関(はなぞの)…!姫百合、ずらかるぞ
姫百合:カリーナ!なんで追われてるの?喧嘩でもした?
下木場:おい姫百合!
葉月:人…?!お、おい、助けてくれ…!
鞍馬雲珠:下木場!?なんでここに…!
カリーナ:…姫百合、その人のこと、放してあげて
姫百合:?うん!いいよ~?蘭くんにも呼ばれてるしね!それじゃあまたね?カリーナ!
夜宵:次から次へと問題起こりやがって…!
鞍馬雲珠:一旦下木場追っちゃう?
夜宵:鞍馬!!
鞍馬雲珠:あいよ。枝垂桜!
下木場:くっ…刃の壁…!?
姫百合:これじゃあさすがに通れないねぇ?どうする?蘭くん?
鞍馬雲珠:こんな機会、そうそうないからね。ちゃんと害虫は駆除しないと
下木場:…はっ。こんなの屁でもねぇ!道を開けろ!姫百合!
姫百合:はいはーい!ちょっと通るよ~!…蜜の砲撃(ハニーズ・キャノン)!
鞍馬雲珠:くっ!!!
夜宵:鞍馬!無事だな?
鞍馬雲珠:へーきだ宵ちゃん!
下木場:~~!!…雑魚が…
姫百合:種の機関銃(グレーヌ・マシンガン)!!来るとハチの巣になっちゃうよ~?
鞍馬雲珠:紅枝垂れ!そんなに打ちまくったって通らないんじゃ、意味がないよねぇ?姫ちゃん?
姫百合:鞍馬ひどいよ~!もうちょっと遊ばせてくれたっていいじゃん!
夜宵:遊びじゃないんだ姫百合!
下木場:武器が技打ってる時ってのは本体がおざなりなんだよなぁ!?
夜宵:甘い!
下木場:ちっ…そう上手くはいかねぇか…
0:==================================
葉月:っ…意識…が…
カリーナ:…。ねぇ
葉月:なん…だよ…
カリーナ:力を、貸して?
葉月:…はは…こんな、死にかけ…のおっさんに…はぁ…何ができるってんだよ…
カリーナ:大丈夫。あなたは死なせない
葉月:もう、救急車…呼ぶ元気も…ないんだぞ
カリーナ:大丈夫。でも、約束して。私を自由にして
葉月:助けてくれたあとは…自由にすりゃ…いいだろ
カリーナ:約束、して
葉月:好きにしろ…!…も、もう…意識…と…ぶ…
葉月M:…あぁ、これで、俺は死ぬのか。死ぬって、こんなに空しいことなんだな…。
葉月M:ちくしょう、こんなことなら仕事ばかりじゃなくて、もっと雄二やみんなとゲームしときゃよかった…。
葉月M:思い返せば仕事ばっかで何もかも無駄だったんじゃねぇかって、後悔しか残らねぇ人生だなくそ…ちくしょう…俺…は…
鞍馬雲珠:っ!?宵ちゃん!あれ!!
夜宵:!!!カリーナ!やめろ!!!!
下木場:へっ、まだ俺はついてる…!ずらかるぞ姫百合!!!
姫百合:はいはーい!
夜宵:カリーナ!!!!!!
カリーナ:約束。忘れないでね
葉月N:カリーナと呼ばれたその少女は、俺の額にキスをした。
葉月N:その瞬間、バラの花が辺り一面に咲いた気がした。最期に見る幻影って、こんなにもきれいなのかと俺は思った。
葉月N:ところがその後、俺の腹部の傷がみるみるうちに治っていくのがわかる
鞍馬雲珠:はぁ…。リーちゃん本当に、これじゃあ始末しなきゃいけなくなるじゃないの、わかってる?
夜宵:…カリーナのバカ!!!なんつーことしてくれてんの本当に!
カリーナ:…。この人、死にそうだったから
夜宵:だからって…!!!はぁ……もういい。あんたの言葉なんか聞きたくない
鞍馬雲珠:…宵ちゃん…
葉月:うっ…うぅ…?あぁ…?
夜宵:潜在開花機関執行部の名において、品種識別名カリーナを、無断で花廻(はなまわり)の儀を試行した現行犯として処分する
鞍馬雲珠:本当に、そろいもそろって馬鹿だね、姫ちゃんもリーちゃんも…
夜宵:夜桜鞍馬雲珠
鞍馬雲珠:咲き初める(さきそめる)
葉月N:長髪の男が自らの胸元から、1本の大鎌を取り出す。最終的にそれが女の手に渡るころにはいつの間にか、長髪の男はいなくなっていた
夜宵:処分を執行する!
葉月:一体…何が起こって…おわぁっ!?!?
カリーナ:…こっち
葉月:てか、なんなんだよさっきから!!!蔓で攻撃されたり、男が大鎌になったりよ!!!
葉月:ってか、なんで9月なのに桜が舞ってんだよ!!!おかしいだろ!!!
カリーナ:鞍馬雲珠のせい
葉月:鞍馬雲珠?あぁ、あの長髪の男の名前か?
カリーナ:そう
葉月:んで、なんでお前は…
カリーナ:カリーナ
葉月:え?
カリーナ:カリーナ。四季咲の薔薇カリーナ
葉月:四季咲の薔薇、カリーナ…
カリーナ:!…咲き初める
葉月:え!?ちょ、は!?お前、なんっ…!?!?!?!?!?む、胸から…剣!?ど、どうなって!?
カリーナ:いいから。これ、握って
葉月:え!?声、どっから…
カリーナ:攻撃。4時の方向から斬撃3連
葉月:え!?4時!?4時ってどこを起点に4時なんだよ!?あっち柱あって俺らの姿見えねぇだろ!?って…っぶねぇ!!!
カリーナ:構えて。次の攻撃、来る
鞍馬雲珠:悪いねぇ、命拾いしたと思ったらまた命の危機にさらしちゃって
葉月:ほんとですよまったく!!!んで?なんで俺は命を狙われてるんすか、ねぇ!!!!
カリーナ:違う。それは刀の振り方。私はレイピア
葉月:レイピア!?そんなおしゃれなもんの使い方なんておっさん知らねーよ!!!
鞍馬雲珠:鏡花水月!!!
葉月:これ、さっきもあった蜃気楼…?
カリーナ:リサージュ
鞍馬雲珠:あぁ~…。本当に、優秀だよね君は
夜宵:御託はいい鞍馬。一気に畳みかける!!!
葉月:ちょちょちょちょちょっとまてって!!!!マジで!!!一般人の俺に戦うセンスとかねぇから!!!
カリーナ:バラの輪舞曲(ロンド・オブ・ローゼン)
夜宵:さっきよりも、バラの数が多いなくそ!!!
鞍馬雲珠:あちゃー。契約者ができちゃったから、力も膨れ上がっちゃってるじゃないの。こーれは困ったねぇ
カリーナ:逃げる
葉月:言われなくとも!!!ってか、なんで君は追われてるんだよ
カリーナ:…
葉月:…あー。言いたくないなら無理して言わなくてもいいよ。悪い。…ってうぉわ!?
夜宵:逃がさないよ。カリーナ!
葉月:なっ!?出口が…!!!
葉月N:後ろから来た斬撃により、出口の天井が切り崩された。
葉月N:がれきの下敷きにされなかったところを見ると、恐らく、いや確実に、己が手でケリをつけたいのだろう
カリーナ:宵ちゃん
夜宵:もうあんたは逃げ場なんかないの!!わかってるでしょ?なんであたしの言葉を聞いてくれなかったのさ!!!
カリーナ:宵ちゃん。ごめんなさい
夜宵:ごめんなさいで済む問題じゃなくしたの誰だと思って!!!!
葉月:…人には人の事情や思いがあるだろ
夜宵:…。さっきまで死にかけてて、カリーナに契約してもらわなきゃ命すらないやつが、何知った風な口聞いてんの
葉月:そうだな。確かになんも知らねぇよ。でもな。約束、したんでね。自由にするって
夜宵:は…?
葉月:それと、もう後悔する人生はごめんだ。…カリーナ、レイピアってのは突剣だったよな?
カリーナ:うん
葉月:じゃあきっと、戦い方は…こうだな!
夜宵:!?間合いを詰められて…!
葉月:はぁあああああ!!!
夜宵:くっ!!!
鞍馬雲珠:宵ちゃん!!!
夜宵:…あんたの剣、重いの打つじゃんね
葉月:今までいろんなこと可もなく不可もなく卒なくやってきたからな
夜宵:面白いじゃん。全力で潰す!!!
葉月:自由にすんだよこの子を!!!
夜宵:はあああああ!!!!
葉月:はぁああああ!!!
上官:そこまで。桜咲
夜宵:!!!!…幕ノ内上官
上官:君、名前は?
葉月:…え?お、俺ですか?ええっと、龍前葉月と申しますが…
上官:一部始終を見させてもらったよ。君のその器用貧乏な点と、何よりカリーナとの相性の良さ。
上官:花廻(はなめぐり)をしてから、初花(ういか)までの順応の速さ。いやぁ、実に素晴らしい
夜宵:…そこまでわかっていて、なぜお止めになるのですか。上官
上官:カリーナの処分については、我々も手を焼いていたことは知っているだろう?カリーナは過去最高の傑作だ。まさに高嶺の花!
上官:しかし、それ故誰も適応者がいなかった。力を持て余している分、感情を欠落させるほかなかったが、
上官:今は唯一の残ってしまった姫百合の記憶だけで動く暴走列車のようだ。そこで、現れたのが君だ。龍前くん。
上官:カリーナを処分してしまうのはあまりに勿体ない。どうかね?我々とともに…
葉月:いやです。こんな幼気な少女に、感情を欠落させた?最高傑作だ?…彼女の言っていた自由を約束したんだ俺は。
葉月:聞いている限りお前らのやっていることは冒涜な人体実験だろ!?そんなところに彼女を返すわけにはいかない!
上官:…。君はすでに、先ほどの通り魔事件によって死んだことになっている
葉月:は?何言って…
上官:非日常的な社会に足を踏み入れたものは、二度と、正常な社会へと戻ることはできないのだよ。
上官:花廻は、死者を花使いとして蘇らせる唯一の手段だ。そんな死者が元の会社員として働くことは、難しいと私は思うがね?
葉月:…カリーナ?
カリーナ:…。ごめんなさい。でも、それしか方法がなかった。あなたはあのままだと確実に死んでいた。そして、私も
葉月:…。まぁ、確かに死んでは、いたと思うわ…。でも通り魔ってのは?
夜宵:あんたが死ぬ原因になった下木場…。あいつが姫百合を使ってあんたの腹に大穴開けたわけだけど、
夜宵:世間一般人に、蔓や花…そもそも姫百合やカリーナ、この鞍馬はまず見えないんだよ
鞍馬雲珠:人間は防衛本能の一つで不可思議なことが起こると、情報をすり替えるんだ。頭の中でね。ほら、幽霊が見えたと思ったら、柳でした~~~みたいな
夜宵:それに加え、辻褄がおかしくなったり、違和感が残らないように、人間の脳の処理に合わせて、事実を残すんだよ。あんたは、世間的には通り魔に刺されて死んだ
葉月:なるほどな。表上俺は通り魔に刺されておっちんだ哀れな会社員、実のところは花使いに殺されて?
葉月:花使いとして生き返ったってわけか?はっ、あまりに荒唐無稽だな?そんなファンタジー誰が信じると?
鞍馬雲珠:うーん。でも、君、見ちゃったでしょ?俺やカリーナが、武器化するところ
葉月:…
上官:それを踏まえて、まだ我々とともに来る気はないのかね?
葉月:…。はぁ、わぁーったよ。無理だろそんな戸籍もないのにどこも頼らずに生きるとか…現実的に考えて。…でも。一つ約束してくれ
上官:ほう?
葉月:命の恩人を、もう二度と、モノ扱いしたり悲しませたりしないと約束してくれ
カリーナ:…
上官:いいだろう。君の英断に感謝するよ。歓迎しよう龍前葉月くん。ようこそ、潜在開花機関花園へ
0:====================
上官:さて、一旦ここで降りてくれたまえ
葉月N:降ろされたのは、いたって普通の都会のビル群の一角だった
上官:桜咲
夜宵:はい
上官:龍前たちの施設案内を頼む。私は持ち場に戻らなくてはならないのでな。
夜宵:承知いたしました
上官:よく見てくるといい。この機関がいかに世界の裏側で平和を保っているかがわかるだろう
葉月:…あぁ
上官:ではな
夜宵:ご足労感謝いたします。幕ノ内上官
鞍馬雲珠:お気をつけて
葉月N:幕ノ内上官は付き人に促され、乗ってきた車で奥の方へと消えていった。
葉月N:見えなくなるまで見送っていた桜咲と鞍馬雲はこちらへ向き直り、口を開く
鞍馬雲珠:…。さて、と。まずは君たちの手続きをしに行かなくちゃね。案内はそれからだ
葉月:あぁ
夜宵:言っておくが!!!まだ私は認めておらんからな!カリーナの契約者がぽっと出の平社員なんかに務まるわけが…
鞍馬雲珠:まぁまぁ宵ちゃん、落ち着いて。すまないね葉月くん。宵ちゃんはリーちゃんがお気に入りだったから、
鞍馬雲珠:嫁入り前のお父さんみたいな感じになっちゃってるのよ
葉月:嫁入っ…!?!?!?
夜宵:誰が父ちゃんだごるぁ!!!!カリーナは誰にも渡さーーーーん!!!!
鞍馬雲珠:ほらね?
葉月:は…ははは…
0:間
蓮華:メモリア・デ・フロリス第2話 潜在開花機関花園へ
0:間
鞍馬雲珠:さて、冗談はさておき、ついたよ。ここが潜在開花機関(はなぞの)のエントランスだ
夜宵:ただいま戻りました。
受付嬢:あら、夜宵さん、お疲れ様です!
夜宵:社員証と、システム開発局への連絡をお願いしたい。
受付嬢:わかりました。こちら社員証です。…そちらのお客様は?
夜宵:取引先のお得意さまだ。システムの見学をしたいそうで、今日はわざわざご足労いただいたのだ
受付嬢:もう、そういうのは事前にといつも申しているのに…
夜宵:すまんな。今日は急に商談が纏まったから…
受付嬢:しょうがないですね、ではお得意様の分の社員証もお渡しいたしますね
夜宵:ありがとう
葉月:…ありがとうございます
夜宵:では、龍前さん、こちらへどうぞ
葉月:…はい
葉月N:桜咲はエレベーターへ俺を促すと、階層ボタンをコマンドのように打ち始めた。最後に社員証をタッチパネルへと重ねると、
葉月N:successの文字が浮かぶ。すると、エレベーターは後ろへ動き始め、次第に下へと降りて行った。
葉月N:どう見ても、地下階へ行くボタンはない
夜宵:ついたぞ
葉月N:エレベーターの戸が開かれると、そこに広がるのは地下帝国のような世界だった
葉月:…すげ
鞍馬雲珠:じゃ、こっちだよ。リーちゃん、ちゃんとついてくるんだよ?
カリーナ:…うん
葉月N:施設内に入り、広いエントランスから横の受付の方へと歩いていく。すると、桜咲が書類を俺に手渡してきた
夜宵:葉月、これにあんたの名前・住所・電話番号を書きな。んで、こっちにカリーナのサインな
蓮華:夜宵さん。お疲れ様です
夜宵:蓮華か。今回の担当は
鞍馬雲珠:よぅ。元気にしてたか?蓮華、桃花扇
蓮華:鞍馬雲珠。あなたもお元気そうで
桃花扇:元気…健康かどうかで言えば元気ではあると思います…はい…私なんかが元気でも1銭の得にもなりませんが…
鞍馬雲珠:相変わらず暗いねぇ!桃花扇は
桃花扇:鞍馬雲珠は相変わらず明るいですね…その明るさを分けてほしいくらいです。
桃花扇:あ、分けられても私には不釣り合いですか…そうですよね…はは…
夜宵:開発部の瀬戸内蓮華と、その花武器(ペタルタラン)の桃花扇だ
蓮華:はじめまして。瀬戸内蓮華です。よろしくお願いしますね!
桃花扇:…どうも
葉月:龍前葉月です。よろしくお願いします
蓮華:龍前さんですね!書類のほうは提出されましたか?
葉月:はい。先ほど書いて、そこの提出口に出しておきました
蓮華:では、さっそく向かいましょうか
0:======================
蓮華:ここが開発局です。開発局は主に、花武器(ペタルタラン)たちの開発から、整備、強化を行っています。
蓮華:また、契約者(プランター)である皆さんのサポート武器の開発や整備も行っています。
蓮華:なので、大きな怪我や、定期メンテナンスの日とかは、皆さん受付を通して僕たち開発局へ連絡をし、
蓮華:こちらへ寄っていただく形になりますね
葉月:プランター…?
夜宵:契約者のことだ。お前もあとで読むことになるだろうが、指南書やらなんやらの本に書かれてる契約者の正式名称はPlanter
鞍馬雲珠:まぁ俺たちからしてみれば、植木鉢とかのプランターと被るから、契約者とかって言っちゃうけどなぁ。
桃花扇:確かに覚えずらいかもしれませんが…一応正式な名称で言ってもらえると、ポンコツな私でも理解ができるので、助かるのですが…
桃花扇:あ、私がわかるようになれという話ですか、そうですよね…すみません…
鞍馬雲珠:いやいや、悪かったって。な?桃花扇、機嫌治せって
桃花扇:機嫌を直すも何も、私はデフォルトでこうなので…。あ、それすらも…
鞍馬雲珠:だぁぁぁもう!
蓮華:はは…そういえば、鞍馬雲珠。メンテナンスの日が近かったですね
鞍馬雲珠:んぁ?そうだったっけか?
蓮華:後ほど、龍前さんが見学できないか、局長に掛け合ってみますね。百聞は一見に如かずなので。
蓮華:それではまず、健康診断と身体チェックをお願いします。その間にカリーナの適応率や消耗度をデータ取らせてもらって、
蓮華:二人の相性や能力のチェックをさせてもらいますね。これは全組織員が行ってることなので、龍前さんの安全のためにも、
蓮華:カリーナの安全のためにもお願いします。待ってる間に、お二人にはそれぞれ、マニュアルを読んでもらうので、
蓮華:しっかり内容を把握するようにしてください
葉月:マニュアル?
鞍馬雲珠:さっき宵ちゃんが言ってた、指南書だよ。あとは秘密保持契約書とかの追加資料とかね
葉月:なるほど
蓮華:夜宵さんたちは簡易的な整備のほうを手配しておきましたので、整備室へお越しください
夜宵:わかった
蓮華:では、龍前さん、こちらです。桃花扇、二人に試験着を
桃花扇:…こちらです。金属類は全て取り外してくださいね…
鞍馬雲珠:じゃ、あとでな、お二人さん
葉月:あぁ、行こうかカリーナ
カリーナ:…うん
0:=================================
鞍馬雲珠:二人ともお疲れさん
葉月:あぁ、お疲れ
カリーナ:…お疲れさま
葉月:健康診断はともかく、身体チェックの方は結構重てーよ。どこが軽度だ
鞍馬雲珠:まぁ、あれよりやばいのもっとたくさんあるから、仕方ないねぇ…w
夜宵:ふん。その程度で根を上げるとはな。所詮凡人か
葉月:おいおい…こちとら元平社員だぞ…凡人に決まってるだろうが
鞍馬雲珠:じゃ、葉月の部屋に行くか
葉月:やっと自室に行けるってわけか…
鞍馬雲珠:そうだよ~?荷物とか運び入れるのは明日以降になるから、ひとまず簡素になってるが、そこは我慢してくれよ?
夜宵:本来は先に申請をしてから入隊になるから、荷物とかは初日から入っているのが当たり前なんだが、お前は例外だからな。
夜宵:休める場所があるだけいいと思え
葉月:…そうだな
鞍馬雲珠:…宵ちゃん
夜宵:なんだ
鞍馬雲珠:はぁ。仕方ないんだから
葉月N:しばらく、ホテルの廊下のような場所を歩いていく。おそらくはここが社員棟なのであろう
鞍馬雲珠:…さ、ここが君の部屋だよ
葉月:…広いな
鞍馬雲珠:まぁね、なんていったって、2人部屋だから
葉月:二人?
夜宵:契約者とその花武器(ペタルタラン)は二人行動が原則。そのため同室で過ごすことになるんだよ。指南書に書いてあっただろ
葉月:…あぁ、あれ、部屋もなのか…
鞍馬雲珠:さて、じゃあ僕らはこの辺で
葉月:あぁ。何から何まですまないな。ありがとう
夜宵:言っておくが!!!カリーナに手を出してみろ、その面二度と拝めなくしてやるからな
葉月:そんなことしねぇよ
鞍馬雲珠:はいはい宵ちゃん行きますよ~。それじゃあ葉月、リーちゃんのこと、よろしくね
葉月:おう。おやすみ
鞍馬雲珠:おやすみ
葉月:…んじゃま、入るか
カリーナ:…うん
葉月:えーっと、こっちが花武器(ペタルタラン)専用の装置っぽいな。んでこっちが…書斎か?
葉月:…うお、トイレとお風呂別々なの助かる…。物件として優秀だなこの部屋…
カリーナ:…契約者(プランター)
葉月:ん?あぁ、俺のことか
カリーナ:…名前
葉月:呼び方ってことか?あー…。そうだな…。葉月でいいよ。これから長いこと一緒に過ごすことになるんだろうしな
カリーナ:…葉月
葉月:なんだ?
カリーナ:おやすみなさい
葉月:お、おう。おやすみ
葉月N:するとカリーナは、ひとりでに装置の中に入り、目を瞑る
葉月:そんじゃま、俺も疲れたし、眠るとするか…。っしょっと…。にしてもほんと、今日は俺の人生の転換期だったんだろうな。
葉月:まじでいろいろ起こりすぎて…なにが…なんや…ら…
葉月N:相当体には負荷がかかっていたらしい。気が休まったと認識すると同時に、体が深く沈んでいく。そのまま泥のように眠りについた
To be continue...
葉月N:人気は決して多くはならない、地下駐車場。白髪の少女はピンクのドレスを翻し、乱れる髪も構わず走り抜けていく
カリーナ:はぁ…はぁ…っはぁ…はぁ…はぁ…
鞍馬雲珠:うーん。困っちゃったねぇ。あの足の速さ、とっても厄介だよ?
夜宵:関係ない。捕らえる!!
カリーナ:はぁ…はぁ…っぁあ!!!
鞍馬雲珠:お願いだから、おとなしくしてくれない?
カリーナ:…っ、バラの輪舞曲(ロンド・オブ・ローゼン)…!
鞍馬雲珠:!宵ちゃん
夜宵:くっ!!!!…待ちなさい!!!カリーナ!!…鞍馬!!
鞍馬雲珠:鏡花水月
カリーナ:リサージュ…!
鞍馬雲珠:はぁあ。ほ~んとうに厄介だねぇ…。なんで僕の蜃気楼を可視化できちゃうかな。
夜宵:追うよ鞍馬
鞍馬雲珠:はいよ。宵ちゃん
カリーナ:はぁ…はぁ…っはぁ…はぁ…はぁ…
0:間
姫百合:メモリア・デ・フロリス第1話 死と再生
0:間
葉月M:…ここは、どこだ?…何も見えない…何も聞こえない…今まで、何してた?
葉月M:確か、今日も残業で、部下の発注ミスを客先まで謝りに行って…それから…そうだ。
葉月M:駐車場に行ったとき、フードを被った兄ちゃんに呼び止められて、振り返ったら腹から何故か血が出てて…血…?
葉月:ぐあぁっ!!!!!!!いってぇ…!!!!!なんだこれ…蔓…?!
下木場:へぇ、おっさん見えるんだ?それともみんなに見えるもんなのかな?
葉月:何言っ…てんだ…お前…!
下木場:おっさん、喜べよ。この俺様の初花(ういか)の礎になれるんだから!!!光栄だろ?なぁ、姫百合?
姫百合:たくさん美味しいの、吸わせてね?おじさん!
葉月:意味、わかんねぇ…よ…。何が光栄だ…こんな…殺されそうに…なってよぉ…
カリーナ:はぁ…はぁ…っはぁ…はぁ…はぁ…
葉月:ぐぁあああ!!!
カリーナ:はぁ…はぁ…姫、百合
姫百合:…?
カリーナ:っはぁ…姫百合…
姫百合:わぁ!カリーナ!!どうしてここに?開花はできなかったんじゃないの?
夜宵:カリーナ!!!
下木場:!…潜在開花機関(はなぞの)…!姫百合、ずらかるぞ
姫百合:カリーナ!なんで追われてるの?喧嘩でもした?
下木場:おい姫百合!
葉月:人…?!お、おい、助けてくれ…!
鞍馬雲珠:下木場!?なんでここに…!
カリーナ:…姫百合、その人のこと、放してあげて
姫百合:?うん!いいよ~?蘭くんにも呼ばれてるしね!それじゃあまたね?カリーナ!
夜宵:次から次へと問題起こりやがって…!
鞍馬雲珠:一旦下木場追っちゃう?
夜宵:鞍馬!!
鞍馬雲珠:あいよ。枝垂桜!
下木場:くっ…刃の壁…!?
姫百合:これじゃあさすがに通れないねぇ?どうする?蘭くん?
鞍馬雲珠:こんな機会、そうそうないからね。ちゃんと害虫は駆除しないと
下木場:…はっ。こんなの屁でもねぇ!道を開けろ!姫百合!
姫百合:はいはーい!ちょっと通るよ~!…蜜の砲撃(ハニーズ・キャノン)!
鞍馬雲珠:くっ!!!
夜宵:鞍馬!無事だな?
鞍馬雲珠:へーきだ宵ちゃん!
下木場:~~!!…雑魚が…
姫百合:種の機関銃(グレーヌ・マシンガン)!!来るとハチの巣になっちゃうよ~?
鞍馬雲珠:紅枝垂れ!そんなに打ちまくったって通らないんじゃ、意味がないよねぇ?姫ちゃん?
姫百合:鞍馬ひどいよ~!もうちょっと遊ばせてくれたっていいじゃん!
夜宵:遊びじゃないんだ姫百合!
下木場:武器が技打ってる時ってのは本体がおざなりなんだよなぁ!?
夜宵:甘い!
下木場:ちっ…そう上手くはいかねぇか…
0:==================================
葉月:っ…意識…が…
カリーナ:…。ねぇ
葉月:なん…だよ…
カリーナ:力を、貸して?
葉月:…はは…こんな、死にかけ…のおっさんに…はぁ…何ができるってんだよ…
カリーナ:大丈夫。あなたは死なせない
葉月:もう、救急車…呼ぶ元気も…ないんだぞ
カリーナ:大丈夫。でも、約束して。私を自由にして
葉月:助けてくれたあとは…自由にすりゃ…いいだろ
カリーナ:約束、して
葉月:好きにしろ…!…も、もう…意識…と…ぶ…
葉月M:…あぁ、これで、俺は死ぬのか。死ぬって、こんなに空しいことなんだな…。
葉月M:ちくしょう、こんなことなら仕事ばかりじゃなくて、もっと雄二やみんなとゲームしときゃよかった…。
葉月M:思い返せば仕事ばっかで何もかも無駄だったんじゃねぇかって、後悔しか残らねぇ人生だなくそ…ちくしょう…俺…は…
鞍馬雲珠:っ!?宵ちゃん!あれ!!
夜宵:!!!カリーナ!やめろ!!!!
下木場:へっ、まだ俺はついてる…!ずらかるぞ姫百合!!!
姫百合:はいはーい!
夜宵:カリーナ!!!!!!
カリーナ:約束。忘れないでね
葉月N:カリーナと呼ばれたその少女は、俺の額にキスをした。
葉月N:その瞬間、バラの花が辺り一面に咲いた気がした。最期に見る幻影って、こんなにもきれいなのかと俺は思った。
葉月N:ところがその後、俺の腹部の傷がみるみるうちに治っていくのがわかる
鞍馬雲珠:はぁ…。リーちゃん本当に、これじゃあ始末しなきゃいけなくなるじゃないの、わかってる?
夜宵:…カリーナのバカ!!!なんつーことしてくれてんの本当に!
カリーナ:…。この人、死にそうだったから
夜宵:だからって…!!!はぁ……もういい。あんたの言葉なんか聞きたくない
鞍馬雲珠:…宵ちゃん…
葉月:うっ…うぅ…?あぁ…?
夜宵:潜在開花機関執行部の名において、品種識別名カリーナを、無断で花廻(はなまわり)の儀を試行した現行犯として処分する
鞍馬雲珠:本当に、そろいもそろって馬鹿だね、姫ちゃんもリーちゃんも…
夜宵:夜桜鞍馬雲珠
鞍馬雲珠:咲き初める(さきそめる)
葉月N:長髪の男が自らの胸元から、1本の大鎌を取り出す。最終的にそれが女の手に渡るころにはいつの間にか、長髪の男はいなくなっていた
夜宵:処分を執行する!
葉月:一体…何が起こって…おわぁっ!?!?
カリーナ:…こっち
葉月:てか、なんなんだよさっきから!!!蔓で攻撃されたり、男が大鎌になったりよ!!!
葉月:ってか、なんで9月なのに桜が舞ってんだよ!!!おかしいだろ!!!
カリーナ:鞍馬雲珠のせい
葉月:鞍馬雲珠?あぁ、あの長髪の男の名前か?
カリーナ:そう
葉月:んで、なんでお前は…
カリーナ:カリーナ
葉月:え?
カリーナ:カリーナ。四季咲の薔薇カリーナ
葉月:四季咲の薔薇、カリーナ…
カリーナ:!…咲き初める
葉月:え!?ちょ、は!?お前、なんっ…!?!?!?!?!?む、胸から…剣!?ど、どうなって!?
カリーナ:いいから。これ、握って
葉月:え!?声、どっから…
カリーナ:攻撃。4時の方向から斬撃3連
葉月:え!?4時!?4時ってどこを起点に4時なんだよ!?あっち柱あって俺らの姿見えねぇだろ!?って…っぶねぇ!!!
カリーナ:構えて。次の攻撃、来る
鞍馬雲珠:悪いねぇ、命拾いしたと思ったらまた命の危機にさらしちゃって
葉月:ほんとですよまったく!!!んで?なんで俺は命を狙われてるんすか、ねぇ!!!!
カリーナ:違う。それは刀の振り方。私はレイピア
葉月:レイピア!?そんなおしゃれなもんの使い方なんておっさん知らねーよ!!!
鞍馬雲珠:鏡花水月!!!
葉月:これ、さっきもあった蜃気楼…?
カリーナ:リサージュ
鞍馬雲珠:あぁ~…。本当に、優秀だよね君は
夜宵:御託はいい鞍馬。一気に畳みかける!!!
葉月:ちょちょちょちょちょっとまてって!!!!マジで!!!一般人の俺に戦うセンスとかねぇから!!!
カリーナ:バラの輪舞曲(ロンド・オブ・ローゼン)
夜宵:さっきよりも、バラの数が多いなくそ!!!
鞍馬雲珠:あちゃー。契約者ができちゃったから、力も膨れ上がっちゃってるじゃないの。こーれは困ったねぇ
カリーナ:逃げる
葉月:言われなくとも!!!ってか、なんで君は追われてるんだよ
カリーナ:…
葉月:…あー。言いたくないなら無理して言わなくてもいいよ。悪い。…ってうぉわ!?
夜宵:逃がさないよ。カリーナ!
葉月:なっ!?出口が…!!!
葉月N:後ろから来た斬撃により、出口の天井が切り崩された。
葉月N:がれきの下敷きにされなかったところを見ると、恐らく、いや確実に、己が手でケリをつけたいのだろう
カリーナ:宵ちゃん
夜宵:もうあんたは逃げ場なんかないの!!わかってるでしょ?なんであたしの言葉を聞いてくれなかったのさ!!!
カリーナ:宵ちゃん。ごめんなさい
夜宵:ごめんなさいで済む問題じゃなくしたの誰だと思って!!!!
葉月:…人には人の事情や思いがあるだろ
夜宵:…。さっきまで死にかけてて、カリーナに契約してもらわなきゃ命すらないやつが、何知った風な口聞いてんの
葉月:そうだな。確かになんも知らねぇよ。でもな。約束、したんでね。自由にするって
夜宵:は…?
葉月:それと、もう後悔する人生はごめんだ。…カリーナ、レイピアってのは突剣だったよな?
カリーナ:うん
葉月:じゃあきっと、戦い方は…こうだな!
夜宵:!?間合いを詰められて…!
葉月:はぁあああああ!!!
夜宵:くっ!!!
鞍馬雲珠:宵ちゃん!!!
夜宵:…あんたの剣、重いの打つじゃんね
葉月:今までいろんなこと可もなく不可もなく卒なくやってきたからな
夜宵:面白いじゃん。全力で潰す!!!
葉月:自由にすんだよこの子を!!!
夜宵:はあああああ!!!!
葉月:はぁああああ!!!
上官:そこまで。桜咲
夜宵:!!!!…幕ノ内上官
上官:君、名前は?
葉月:…え?お、俺ですか?ええっと、龍前葉月と申しますが…
上官:一部始終を見させてもらったよ。君のその器用貧乏な点と、何よりカリーナとの相性の良さ。
上官:花廻(はなめぐり)をしてから、初花(ういか)までの順応の速さ。いやぁ、実に素晴らしい
夜宵:…そこまでわかっていて、なぜお止めになるのですか。上官
上官:カリーナの処分については、我々も手を焼いていたことは知っているだろう?カリーナは過去最高の傑作だ。まさに高嶺の花!
上官:しかし、それ故誰も適応者がいなかった。力を持て余している分、感情を欠落させるほかなかったが、
上官:今は唯一の残ってしまった姫百合の記憶だけで動く暴走列車のようだ。そこで、現れたのが君だ。龍前くん。
上官:カリーナを処分してしまうのはあまりに勿体ない。どうかね?我々とともに…
葉月:いやです。こんな幼気な少女に、感情を欠落させた?最高傑作だ?…彼女の言っていた自由を約束したんだ俺は。
葉月:聞いている限りお前らのやっていることは冒涜な人体実験だろ!?そんなところに彼女を返すわけにはいかない!
上官:…。君はすでに、先ほどの通り魔事件によって死んだことになっている
葉月:は?何言って…
上官:非日常的な社会に足を踏み入れたものは、二度と、正常な社会へと戻ることはできないのだよ。
上官:花廻は、死者を花使いとして蘇らせる唯一の手段だ。そんな死者が元の会社員として働くことは、難しいと私は思うがね?
葉月:…カリーナ?
カリーナ:…。ごめんなさい。でも、それしか方法がなかった。あなたはあのままだと確実に死んでいた。そして、私も
葉月:…。まぁ、確かに死んでは、いたと思うわ…。でも通り魔ってのは?
夜宵:あんたが死ぬ原因になった下木場…。あいつが姫百合を使ってあんたの腹に大穴開けたわけだけど、
夜宵:世間一般人に、蔓や花…そもそも姫百合やカリーナ、この鞍馬はまず見えないんだよ
鞍馬雲珠:人間は防衛本能の一つで不可思議なことが起こると、情報をすり替えるんだ。頭の中でね。ほら、幽霊が見えたと思ったら、柳でした~~~みたいな
夜宵:それに加え、辻褄がおかしくなったり、違和感が残らないように、人間の脳の処理に合わせて、事実を残すんだよ。あんたは、世間的には通り魔に刺されて死んだ
葉月:なるほどな。表上俺は通り魔に刺されておっちんだ哀れな会社員、実のところは花使いに殺されて?
葉月:花使いとして生き返ったってわけか?はっ、あまりに荒唐無稽だな?そんなファンタジー誰が信じると?
鞍馬雲珠:うーん。でも、君、見ちゃったでしょ?俺やカリーナが、武器化するところ
葉月:…
上官:それを踏まえて、まだ我々とともに来る気はないのかね?
葉月:…。はぁ、わぁーったよ。無理だろそんな戸籍もないのにどこも頼らずに生きるとか…現実的に考えて。…でも。一つ約束してくれ
上官:ほう?
葉月:命の恩人を、もう二度と、モノ扱いしたり悲しませたりしないと約束してくれ
カリーナ:…
上官:いいだろう。君の英断に感謝するよ。歓迎しよう龍前葉月くん。ようこそ、潜在開花機関花園へ
0:====================
上官:さて、一旦ここで降りてくれたまえ
葉月N:降ろされたのは、いたって普通の都会のビル群の一角だった
上官:桜咲
夜宵:はい
上官:龍前たちの施設案内を頼む。私は持ち場に戻らなくてはならないのでな。
夜宵:承知いたしました
上官:よく見てくるといい。この機関がいかに世界の裏側で平和を保っているかがわかるだろう
葉月:…あぁ
上官:ではな
夜宵:ご足労感謝いたします。幕ノ内上官
鞍馬雲珠:お気をつけて
葉月N:幕ノ内上官は付き人に促され、乗ってきた車で奥の方へと消えていった。
葉月N:見えなくなるまで見送っていた桜咲と鞍馬雲はこちらへ向き直り、口を開く
鞍馬雲珠:…。さて、と。まずは君たちの手続きをしに行かなくちゃね。案内はそれからだ
葉月:あぁ
夜宵:言っておくが!!!まだ私は認めておらんからな!カリーナの契約者がぽっと出の平社員なんかに務まるわけが…
鞍馬雲珠:まぁまぁ宵ちゃん、落ち着いて。すまないね葉月くん。宵ちゃんはリーちゃんがお気に入りだったから、
鞍馬雲珠:嫁入り前のお父さんみたいな感じになっちゃってるのよ
葉月:嫁入っ…!?!?!?
夜宵:誰が父ちゃんだごるぁ!!!!カリーナは誰にも渡さーーーーん!!!!
鞍馬雲珠:ほらね?
葉月:は…ははは…
0:間
蓮華:メモリア・デ・フロリス第2話 潜在開花機関花園へ
0:間
鞍馬雲珠:さて、冗談はさておき、ついたよ。ここが潜在開花機関(はなぞの)のエントランスだ
夜宵:ただいま戻りました。
受付嬢:あら、夜宵さん、お疲れ様です!
夜宵:社員証と、システム開発局への連絡をお願いしたい。
受付嬢:わかりました。こちら社員証です。…そちらのお客様は?
夜宵:取引先のお得意さまだ。システムの見学をしたいそうで、今日はわざわざご足労いただいたのだ
受付嬢:もう、そういうのは事前にといつも申しているのに…
夜宵:すまんな。今日は急に商談が纏まったから…
受付嬢:しょうがないですね、ではお得意様の分の社員証もお渡しいたしますね
夜宵:ありがとう
葉月:…ありがとうございます
夜宵:では、龍前さん、こちらへどうぞ
葉月:…はい
葉月N:桜咲はエレベーターへ俺を促すと、階層ボタンをコマンドのように打ち始めた。最後に社員証をタッチパネルへと重ねると、
葉月N:successの文字が浮かぶ。すると、エレベーターは後ろへ動き始め、次第に下へと降りて行った。
葉月N:どう見ても、地下階へ行くボタンはない
夜宵:ついたぞ
葉月N:エレベーターの戸が開かれると、そこに広がるのは地下帝国のような世界だった
葉月:…すげ
鞍馬雲珠:じゃ、こっちだよ。リーちゃん、ちゃんとついてくるんだよ?
カリーナ:…うん
葉月N:施設内に入り、広いエントランスから横の受付の方へと歩いていく。すると、桜咲が書類を俺に手渡してきた
夜宵:葉月、これにあんたの名前・住所・電話番号を書きな。んで、こっちにカリーナのサインな
蓮華:夜宵さん。お疲れ様です
夜宵:蓮華か。今回の担当は
鞍馬雲珠:よぅ。元気にしてたか?蓮華、桃花扇
蓮華:鞍馬雲珠。あなたもお元気そうで
桃花扇:元気…健康かどうかで言えば元気ではあると思います…はい…私なんかが元気でも1銭の得にもなりませんが…
鞍馬雲珠:相変わらず暗いねぇ!桃花扇は
桃花扇:鞍馬雲珠は相変わらず明るいですね…その明るさを分けてほしいくらいです。
桃花扇:あ、分けられても私には不釣り合いですか…そうですよね…はは…
夜宵:開発部の瀬戸内蓮華と、その花武器(ペタルタラン)の桃花扇だ
蓮華:はじめまして。瀬戸内蓮華です。よろしくお願いしますね!
桃花扇:…どうも
葉月:龍前葉月です。よろしくお願いします
蓮華:龍前さんですね!書類のほうは提出されましたか?
葉月:はい。先ほど書いて、そこの提出口に出しておきました
蓮華:では、さっそく向かいましょうか
0:======================
蓮華:ここが開発局です。開発局は主に、花武器(ペタルタラン)たちの開発から、整備、強化を行っています。
蓮華:また、契約者(プランター)である皆さんのサポート武器の開発や整備も行っています。
蓮華:なので、大きな怪我や、定期メンテナンスの日とかは、皆さん受付を通して僕たち開発局へ連絡をし、
蓮華:こちらへ寄っていただく形になりますね
葉月:プランター…?
夜宵:契約者のことだ。お前もあとで読むことになるだろうが、指南書やらなんやらの本に書かれてる契約者の正式名称はPlanter
鞍馬雲珠:まぁ俺たちからしてみれば、植木鉢とかのプランターと被るから、契約者とかって言っちゃうけどなぁ。
桃花扇:確かに覚えずらいかもしれませんが…一応正式な名称で言ってもらえると、ポンコツな私でも理解ができるので、助かるのですが…
桃花扇:あ、私がわかるようになれという話ですか、そうですよね…すみません…
鞍馬雲珠:いやいや、悪かったって。な?桃花扇、機嫌治せって
桃花扇:機嫌を直すも何も、私はデフォルトでこうなので…。あ、それすらも…
鞍馬雲珠:だぁぁぁもう!
蓮華:はは…そういえば、鞍馬雲珠。メンテナンスの日が近かったですね
鞍馬雲珠:んぁ?そうだったっけか?
蓮華:後ほど、龍前さんが見学できないか、局長に掛け合ってみますね。百聞は一見に如かずなので。
蓮華:それではまず、健康診断と身体チェックをお願いします。その間にカリーナの適応率や消耗度をデータ取らせてもらって、
蓮華:二人の相性や能力のチェックをさせてもらいますね。これは全組織員が行ってることなので、龍前さんの安全のためにも、
蓮華:カリーナの安全のためにもお願いします。待ってる間に、お二人にはそれぞれ、マニュアルを読んでもらうので、
蓮華:しっかり内容を把握するようにしてください
葉月:マニュアル?
鞍馬雲珠:さっき宵ちゃんが言ってた、指南書だよ。あとは秘密保持契約書とかの追加資料とかね
葉月:なるほど
蓮華:夜宵さんたちは簡易的な整備のほうを手配しておきましたので、整備室へお越しください
夜宵:わかった
蓮華:では、龍前さん、こちらです。桃花扇、二人に試験着を
桃花扇:…こちらです。金属類は全て取り外してくださいね…
鞍馬雲珠:じゃ、あとでな、お二人さん
葉月:あぁ、行こうかカリーナ
カリーナ:…うん
0:=================================
鞍馬雲珠:二人ともお疲れさん
葉月:あぁ、お疲れ
カリーナ:…お疲れさま
葉月:健康診断はともかく、身体チェックの方は結構重てーよ。どこが軽度だ
鞍馬雲珠:まぁ、あれよりやばいのもっとたくさんあるから、仕方ないねぇ…w
夜宵:ふん。その程度で根を上げるとはな。所詮凡人か
葉月:おいおい…こちとら元平社員だぞ…凡人に決まってるだろうが
鞍馬雲珠:じゃ、葉月の部屋に行くか
葉月:やっと自室に行けるってわけか…
鞍馬雲珠:そうだよ~?荷物とか運び入れるのは明日以降になるから、ひとまず簡素になってるが、そこは我慢してくれよ?
夜宵:本来は先に申請をしてから入隊になるから、荷物とかは初日から入っているのが当たり前なんだが、お前は例外だからな。
夜宵:休める場所があるだけいいと思え
葉月:…そうだな
鞍馬雲珠:…宵ちゃん
夜宵:なんだ
鞍馬雲珠:はぁ。仕方ないんだから
葉月N:しばらく、ホテルの廊下のような場所を歩いていく。おそらくはここが社員棟なのであろう
鞍馬雲珠:…さ、ここが君の部屋だよ
葉月:…広いな
鞍馬雲珠:まぁね、なんていったって、2人部屋だから
葉月:二人?
夜宵:契約者とその花武器(ペタルタラン)は二人行動が原則。そのため同室で過ごすことになるんだよ。指南書に書いてあっただろ
葉月:…あぁ、あれ、部屋もなのか…
鞍馬雲珠:さて、じゃあ僕らはこの辺で
葉月:あぁ。何から何まですまないな。ありがとう
夜宵:言っておくが!!!カリーナに手を出してみろ、その面二度と拝めなくしてやるからな
葉月:そんなことしねぇよ
鞍馬雲珠:はいはい宵ちゃん行きますよ~。それじゃあ葉月、リーちゃんのこと、よろしくね
葉月:おう。おやすみ
鞍馬雲珠:おやすみ
葉月:…んじゃま、入るか
カリーナ:…うん
葉月:えーっと、こっちが花武器(ペタルタラン)専用の装置っぽいな。んでこっちが…書斎か?
葉月:…うお、トイレとお風呂別々なの助かる…。物件として優秀だなこの部屋…
カリーナ:…契約者(プランター)
葉月:ん?あぁ、俺のことか
カリーナ:…名前
葉月:呼び方ってことか?あー…。そうだな…。葉月でいいよ。これから長いこと一緒に過ごすことになるんだろうしな
カリーナ:…葉月
葉月:なんだ?
カリーナ:おやすみなさい
葉月:お、おう。おやすみ
葉月N:するとカリーナは、ひとりでに装置の中に入り、目を瞑る
葉月:そんじゃま、俺も疲れたし、眠るとするか…。っしょっと…。にしてもほんと、今日は俺の人生の転換期だったんだろうな。
葉月:まじでいろいろ起こりすぎて…なにが…なんや…ら…
葉月N:相当体には負荷がかかっていたらしい。気が休まったと認識すると同時に、体が深く沈んでいく。そのまま泥のように眠りについた
To be continue...