台本概要

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タイトル 年末戦線《O-MISOKA.》2023。
作者名 音佐りんご。  (@ringo_otosa)
ジャンル コメディ
演者人数 5人用台本(男3、女1、不問1) ※兼役あり
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 人は変われる。そう信じる限り。

◇あらすじ◇
世界は新たに2024年を迎えようとしていた。しかし、未だ2023年の抵抗は激しく、このままでは新年を迎えることが出来ず、世界は滅亡してしまう。そんな中、2023年を早急に終わらせるため立ち上がった者達『Happy New Year's』通称《ハニーズ》がいた。そしてそれに対抗するように2023年を終わらせまいとする組織『十三月機関』が動き出し――。果たして人々は、世界は無事新年を迎えることができるのか?

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
カズヤ 126 柿村 一也(かきむら かずや) ハニーズ、隊員。優れた戦闘力と大胆な発想で戦うハニーズ屈指のアタッカー。
ミオ 106 槇澤 澪(まきざわ みお) ハニーズ、隊員。巧みな戦術と応用力で難局を乗り切る守り手。
トウマ 88 鬼際 柊真(おにぎわ とうま) ハニーズ、小隊長。効率よく2023年を殲滅する方法を提案する頭脳派。
トキハル 不問 67 斜子織 時陽(ななこおり ときはる) 十三月機関、室長。
キヨシ 80 本瓦 喜芳(ほんかわら きよし) 十三月機関、特選機甲師団長。2023年の化身を召喚できる。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:年末戦線《O-MISOKA.》2023。 : 0:人は変われる。そう信じる限り。 : 0:◇あらすじ◇ 0:世界は新たに2024年を迎えようとしていた。しかし、未だ2023年の抵抗は激しく、このままでは新年を迎えることが出来ず、世界は滅亡してしまう。そんな中、2023年を早急に終わらせるため立ち上がった者達『Happy New Year's』通称《ハニーズ》がいた。そしてそれに対抗するように2023年を終わらせまいとする組織『十三月機関』が動き出し――。果たして人々は、世界は無事新年を迎えることができるのか? : 0:◇登場人物◇ 0:※( )で示されたものは、Nがナレーション、 0:それ以外の(クリスマス)(流行語)等は主にモブの兼役。 カズヤ:柿村 一也(かきむら かずや) カズヤ:ハニーズ、隊員。優れた戦闘力と大胆な発想で戦うハニーズ屈指のアタッカー。 ミオ:槇澤 澪(まきざわ みお) ミオ:ハニーズ、隊員。巧みな戦術と応用力で難局を乗り切る守り手。 トウマ:鬼際 柊真(おにぎわ とうま) トウマ:ハニーズ、小隊長。効率よく2023年を殲滅する方法を提案する頭脳派。 トキハル:斜子織 時陽(ななこおり ときはる) トキハル:十三月機関、室長。 キヨシ:本瓦 喜芳(ほんかわら きよし) キヨシ:十三月機関、特選機甲師団長。2023年の化身を召喚できる。 : 0:◇◇◇ : ミオ:(N)年末戦線《O-MISOKA.》2023。 : 0:銃声、爆発音、人々の怒号が渦巻く戦場、《クリスマス戦域》。 0:塹壕に隠れたカズヤが『クリスマス軍』への反撃の機会を窺いながら応戦している。 : カズヤ:っち! もうその顔見飽きてんだよ、モミの木野郎ぉ! トキハル:(クリスマス)ほーっほっほ! メリークリスマス! カズヤ:うるせぇ! ここは日本だ! リア充イベントなんて永遠に消えろ! キヨシ:(クリスマス)ククク! クリスマスケーキっぃ! カズヤ:っな! しまっ――! トウマ:ターゲットロック。賀正砲! ファイア! : 0:爆発音。 : カズヤ:わあぁっ!? トウマ:クリスマス、殲滅を確認。 カズヤ:なんだ!? トウマ:……ふぅ、危ないところだったね、カズヤ? カズヤ:その声、トウマか?! トウマ:あぁ、ピンチかなと思って駆けつけたよ、良いお年を。 カズヤ:ありがとう助かった。良いお年を! : 0:※注 良いお年を=年末戦線におけるハニーズの挨拶。 : カズヤ:その装備……『門松』か? トウマ:最新型のね。毎年言ってるでしょ? クリスマスを駆逐するのに最適なのはこいつだって。 カズヤ:分かってるんだが『紅葉狩り』との連戦でな。 トウマ:あぁ、今年は紅葉遅かったもんね。 カズヤ:そうなんだよ、でもこれでケツの方は片付いたな。他の戦場はどうなってる? トウマ:今、ミオが関西万博と戦ってるよ。 カズヤ:長引いてるのか? トウマ:ああ。相当マズい。2023年で片付かなかった分、より力を蓄えてる。それでも2025に間に合うかどうか……。 カズヤ:そうか……来年には片が付くだろう。 トウマ:だといいが。 カズヤ:それで例のウィルスは? トウマ:そちらは粗方片付いた。ワクチンが効いたのか、集団免疫とやらの獲得に至ったのか。 カズヤ:マスクしてるやつも随分減ったな。 トウマ:それでも、どこの現場も医者不足だ。 カズヤ:インフルエンザも猛威を振るっているらしいしな。 トウマ:残念ながらね。 カズヤ:よし、なら残りの仕事をさっさと片付けよう! 次の夏期五輪はパリだったな? トウマ:ああ。来る2024年にね。 カズヤ:なら、最適な装備は――。 : カズヤ:エッフェル塔(同時に) トウマ:エッフェル塔(同時に) : カズヤ:行くぞ、トウマ! トウマ:ああ! 大掃除と洒落込もう! カズヤ:俺達《ハニーズ》の名にかけて! トウマ:《ハニーズ》の名にかけて! : 0:二人、戦場を駆けていく。 0:そんな様子を遠くから眺める影。 0:トキハルとキヨシ。 : キヨシ:はっ! 目障りなハニーズ風情が……! 我慢ならない。俺も出るぞトキハル! トキハル:まぁ待ちなさい、キヨシ。 キヨシ:あぁ!? 何言ってんだ? お前は良いのかよ、俺達の2023年をこけにされて! トキハル:そうは言っていない。僕だってこの身が裂ける思いさ。 キヨシ:だったら……! トキハル:まだ、期は熟していない。僕はそう言っているんだ。 キヨシ:そんなに悠長に構えていたら新年が来ちまうぞ! そうなったら俺達は……! トモミは! トキハル:分かっている。君の思いは。誰よりも。 キヨシ:トキハル。 トキハル:そう焦るな。年末に慌てるなんて僕達らしくない。僕達はこの日の為に九年も待った。そうだろう? キヨシ:……! トキハル:年末にバタバタと無様に駆けずり回るなんて、まるでやつらのようだ。そんなの僕らに似合わない。そうは思わないかい、キヨシ? キヨシ:……ああ。ということは何か、策があるのか? トキハル:もちろん。すでに仕掛けてあるよ。とびっきりのサプライズを、この日のために、ね? キヨシ:この日のため……。信じて、良いんだな? トキハル:もちろん。僕も君を信じている。トモミに誓って。そして全ては、 : トキハル:《十三月機関》の名のもとに(同時に) キヨシ:《十三月機関》の名のもとに(同時に) : トキハル:大丈夫、心配しないで。君の出番は用意してある。 キヨシ:くはは、今年こそ楽しい年末になりそうだ。 トキハル:ふふ、僕も明日が楽しみさ。新年が訪れない明日が、ね。 : 0:◇ : 0:混沌とした戦場に怒声が飛び交う。 : ミオ:(N)2023年12月31日。 : カズヤ:(流行語)蛙化現象! ミオ:(流行語)観る将! キヨシ:(流行語)闇バイトゥゥゥ! トウマ:(流行語)生成AIィ! トキハル:(流行語)Twitterァッ! トウマ:うぉぉぉぉ! X(エックス)ッ! : ミオ:(N)世界は新たに2024年を迎えようとしていた。 : ミオ:(流行語)新しい学校のリーダーズゥゥッ! カズヤ:(流行語)OSO18ィィ! アーバンベアァァァ! トウマ:(流行語)4年ぶり声出し応援ンンン! トキハル:(流行語)ペッパーミル・パフォーマンスゥゥゥッ! キヨシ:(流行語)……知らんけど。 カズヤ:はぁぁぁぁぁ! それは! 去年! だろうがぁッ! アレ(A.R.E.)! : トウマ:はぁ、はぁ……! カズヤ! 雑魚が多い! : ミオ:(N)しかし、未だ2023年の抵抗は激しく各地で争いが勃発、人々は慌ただしい年末の中に倒れ、時の流れは停滞した。このままでは新年を迎えることが出来ず、やがて世界は滅亡してしまう。 : カズヤ:分かってる! けど、これを超えねぇと、五輪には辿り着けねぇ! : ミオ:(N)そんな中、2023年を早急に終わらせるため立ち上がった『Happy New Year's』通称《ハニーズ》と呼ばれる者達がいた。 : トウマ:ここが正念場、だな。 カズヤ:ああ。 : ミオ:(N)彼らは各地の戦場を飛び回り、膠着状態に陥ったイベントを終結させていった。そして、世界は無事新年を迎えられる。 : キヨシ:っち、やっぱ水増しした流行語程度じゃ足止め程度にしかならねぇか。 : ミオ:(N)かに、思われた。 : トキハル:いいや、それで良い。過去の流行語のストックもまだあるだろう?  : ミオ:(N)この戦場にはもう一つ、別の影があった。 : トキハル:僅かだが奴らも消耗している。 : ミオ:(N)『十三月機関』。ハニーズとは反対に、2023年の永続を掲げる組織である。 : トキハル:キヨシ、君は完璧で究極のゲッター。 キヨシ:なぁぜなぁぜ? : ミオ:(N)ハニーズと十三月機関。二つの思惑が交錯する戦場で、人々は、世界は何を思うのか。 : カズヤ:っく! 新年は俺達の手で勝ち取る。 : ミオ:(N)きたるべき2024年と。 : トキハル:憧れるのをやめましょう! : ミオ:(N)移ろいゆく2023年。 : キヨシ:行けぇ! サカバンバスピス、地球沸騰化、10円パン、チャットGPT、電動キックボード、ひき肉です/ちょんまげ小僧、Y2K、エッフェル姉さん、オミクロン株、薩摩ホグワーツ! 奴らを殲滅しろ! 2023年しか勝たん! : ミオ:(N)二つの時代をかけた天秤は、 : トウマ:流行語って言うけどさ! ぶっちゃけお前らいまいちピンとこないんだけどね! : ミオ:(N)果たしてどちらに傾くのか。 : 0:◇ : 0:戦場、《万博戦域》。 0:ミオがしめ縄を振りながら戦っている。 : ミオ:唸れ! しめ縄ロッド! たぁぁぁぁっ! : キヨシ:(政策)インボイスゥッ! トキハル:(万博)大ーーッゥ! 屋根ェーーッ! トウマ:(政策)ライドシェアーーーーッ! カズヤ:(万博)空飛ぶクルマァァッッ! ミオ:っ……! : 0:ミオ、膝をつく。 : トウマ:(万博)シェアッ! ミオ:……やっぱり、七夕倒したその足で挑むにはきつかったかな? トキハル:(万博)オォ、ヤァネェ? ミオ:344億円は伊達じゃないって? はは……でも、ここで倒れる訳には――! キヨシ:(政策)インボイスゥッ! ミオ:――いかないの! : 0:ミオ、インボイスの攻撃を躱しカウンターで仕留める。 : キヨシ:(政策)スゥ……ッ!? ミオ:……適格請求書制度! カズヤ:(万博)クルマァァッッ! ミオ:甘い! カズヤ:(万博)ソラァッッ! ミオ:笹でも食らってろ! : 0:ミオ、足下の七夕の残骸で空飛ぶクルマを刺し殺す。 : トウマ:(万博)ライドゥ! シェアーーッ! ミオ:あんたも纏めて……っ! トウマ:(万博)シェェッ!? ミオ:貰ったぁッ! : 0:ミオ、空飛ぶクルマに刺さった七夕でライドシェアごと仕留める。 : ミオ:……!? 大屋根は――? トキハル:(五輪)オォォーーーーー……ヤネェッ! ミオ:上!? 工事が間に合わなっ――! : トウマ:穿てエッフェル塔(同時) カズヤ:穿てエッフェル塔(同時) : 0:トウマとカズヤがエッフェル塔を抱えて飛来する。 : トウマ:うおぉぉぉぉぉ! カズヤ:はあぁぁぁぁぁ! トキハル:(万博)ヤァァッ――?! : 0:爆発。 : ミオ:今のは……。 カズヤ:ふぅーっ! 生きてるか? ミオ? ミオ:もしかして、カズヤ? トウマ:僕もいるよ、ミオちゃん。 ミオ:トウマも? カズヤ:援護に来たぜ。 ミオ:ありがと、助かった。 トウマ:どういたしまして。 ミオ:その装備って……。 カズヤ:見ての通りエッフェル塔だよ。 ミオ:いや、見たら分かるけど……あんた達よくそんなの持ってきたね。 トウマ:まぁ、苦労したけどね。でも、残留した万博を殲滅するのにこれ以上の武器はないでしょ? 正月武装でちまちま戦ってたって埒があかないよ。 ミオ:トウマ、あんたの効率厨ぶりは相変わらずね。 トウマ:そりゃ、ミオもカズヤも非効率な戦い方ばかりするからね。 カズヤ:俺もかよ。 トウマ:なんだい? その笹に刺さった空飛ぶクルマとライドシェアは? カズヤ:うわっ、それ七夕の死骸か? えげつねぇ……。 ミオ:う、うるさいなぁ! こっちは政策と万博の連戦でまともな武器がなかったの! カズヤ:そうだろうなと思って助けに来たんだが、間一髪だったな。 ミオ:う、うん……。 トウマ:すまない。ミオ、カズヤ。各地の戦場にも結構な被害が出てる。これは戦力配分を間違えた僕のミスだ。 ミオ:と、トウマ、気にしないでよ! ほら、こうして私は生きてるんだから。トウマはよくやってるって! カズヤ:そうだぜ! お前は上手くやってる。お前がいなけりゃ俺だって危なかったんだ。いつも感謝してるぜ? トウマ:ありがとう、二人とも。 カズヤ:それに……今年の年末も何かきな臭ぇしな。 トウマ:カズヤ? ミオ:それって、 カズヤ:ああ、やけに雑魚が多い。水増しされた2022年の流行語なんて普通なら死語だ、ということは――。 トウマ:十三月機関。 ミオ:……! トウマ:奴らの仕業ということか。 カズヤ:ああ。 ミオ:か、考えすぎじゃない? だって、十三月機関は十一年前に……。 トウマ:ああ。十一年前、2012年の12月31日に僕とカズヤで殲滅した。 ミオ:だ、だったら、 カズヤ:隠れてやり過ごしてたんだろうぜ。 ミオ:隠れて、って……。 カズヤ:まぁ何にせよ、用心しないとだな。 ミオ:そう、ね……。 トウマ:ミオちゃん? ミオ:ううん、なんでも。万博工事は終わりそう? トウマ:年内はってところだね。 カズヤ:途中でばらまいてきた税金が効いてるらしい。 ミオ:そんなことしてたんだ……。 トウマ:費用は嵩むけど、効果的な戦術だからね。しばらくの辛抱だよ……。 カズヤ:来年も財政、苦しいのかぁ……。 トウマ:家計もな。 カズヤ:うげぇ……。 ミオ:もう、そんな顔してないで気合い入れて行こ。2023年はこんなものじゃないんだから。 カズヤ:そうだな! よーし! 今年も大詰めにしてやるか! トウマ:……こんなものじゃない。か。 カズヤ:おいトウマ! 大変だ! 向こうですごい数のピクトグラムが暴れてやがる! どうする!? トウマ:……なんだって!? 五輪の生き残りか!? 今行くよ! この場合考え得るピクトグラムに最も有効な戦術は――。 : 0:◇ : 0:閑散とした戦場、《卯の砦》。 0:キヨシ、2023年の化身を召喚している。 : キヨシ:来い! 生成AIども! トウマ:(AI)ChatGPT! カズヤ:(AI)バード! ミオ:(AI)ラマ2! キヨシ:ジェミナイ! アーニー・ボット! GPT-4! ミオ:(AI)ジェミナイッ! カズヤ:(AI)アーニー……ボット……ッ! トウマ:(AI)GPT-4ォォォウ! キヨシ:はぁ、はぁ……。 トキハル:今年のAIか。並べてみると壮観だね。 キヨシ:今年は「ほとんどのAIが誕生した年」となるのかも知れないな。無論、来年などこさせないがな。 トキハル:首尾はどうだい? キヨシ:どうもこうもねぇ。ついさっき増税メガネがやられた。もう殆どめぼしい2023年は残ってないが、ほんとに大丈夫なんだろうなトキハル? トキハル:心配するな。その分、あちらも消耗している。このまま押し切ればいずれ戦線は崩壊するだろう。 キヨシ:崩壊だと? そんな戦力、どこに? トキハル:忘れたのかい? 僕らは何の為に待ったと思う? キヨシ:そりゃぁ、勝つため。勝って新年を滅ぼすためだ。 トキハル:そう、僕らはその為にあの戦いか十一年待った。堪え忍ぶことは恥じゃない。力だ。張り詰めた弓のように、犇めく爆薬のように、やがて超新星爆発を起こす恒星のように。僕らは怒りを無念を絶望を失望を虚無を、やがて大願を成就させる為の力に変えて研ぎ澄ましてきた。 キヨシ:そんなことは分かってる。しかし、どうだ、蓋を開けてみれば? ここにある2023年はこんなにも劣勢だ。どれだけこの2023年に俺達が思いを込めようとも、時間の流れは強大だ。止められない。名残惜しくとも、年は明けていくじゃないか? 俺達はあれから何度、あの忌々しい初日の出を見た? 奴らの腹立たしい鬨《あけおめ》を聞いた? その度に何度俺達は憎悪にこの身を灼き焦がすことになった? 俺達が手をこまねいている内に平成は令和になった! 元号が変わる? ふざけんな! 俺達十三月機関はなにも変えられなかったのに! それで出来もしないことを掲げ過去に囚われた愚か者だと何度罵られてきた? トキハル:それは……。 キヨシ:もう、我慢できねぇ。俺は行くぞ。奴らを、ハニーズを、2023年を捻りつぶすんだ。 トキハル:待つんだ。 キヨシ:レン、ショウタ、キョウカ、リュウノスケ、アスカ、シグレ、シロ、ナナミ、カズサ、そして、トモミ。 トキハル:……キヨシ。 キヨシ:俺は、俺達は、みんなに背を向けて、クソッタレの初日の出を十一回も迎えた。これ以上は駄目だ。そうだろ。 トキハル:キヨシ、僕は君を――。 キヨシ:――止めるなよ、トキハル。ここで止まったら、俺はあの日散ったみんなに顔向けできねぇ。 トキハル:――止めるつもりはないよ。 キヨシ:そうか、なら……。 トキハル:しかし、ここまで待ったんだから、もうほんの少しだけ待ってはくれないかな? キヨシ:その問答はもういらない。俺は行く。 トキハル:じゃあ、せめて僕の後ろのモノを持って行ってはどうかな? 図らずも僕達と同じく十一年モノのこの作品を、ね。 キヨシ:まさか、そいつは……! トキハル:ふふふふふ。すまない、なにぶんモノが大きいからね。少々準備に手間取ったけれど、これならやれるよね? キヨシ:あぁ……! 上等だ! トキハル:期待してるよ? キヨシ:任せろ! 2023年は絶対に終わらせねぇ! トキハル:その意気だよ。 キヨシ:それで、お前はどうするんだ? トキハル:僕もすぐに行くよ。 キヨシ:はははっ! なら出来るだけ早く来いよ? じゃないと満を持してこの世界が終わっちまうぜ? 2023年が終わる前にな。 トキハル:そうか、ではなるべく間に合わせるとしよう。 キヨシ:それじゃあ、行ってくるぜ。トキハル。 トキハル:ああ、行ってきなよ。キヨシ。 : 0:キヨシ、発進する。 : トキハル:さて、もうすぐ。もうすぐだね。……ミオ。 : 0:◇ : 0:戦場《五輪戦域》跡地。 0:カズヤ、ミオ、トウマがピクトグラムを羽子板で掃討している。 : ミオ:はぁぁぁぁッ! ていゃっ! トウマ! トキハル:(五輪)ピクトォッッ!? トウマ:オーライ任せて! とりゃ! とどめのスマッシュだカズヤ! キヨシ:(五輪)グラァァム!? カズヤ:うおおおぉぉぉぉ! 決めるぜ必殺・スマッシュオブ羽根突き! : トキハル:(五輪)ピクトォォ!(同時) キヨシ:(五輪)グラァァァ!(同時) : 0:ピクトグラムが爆散する。 : トウマ:ふぅ、これで粗方オリンピックも片付いたね。 カズヤ:閉会式の花火も新年の花火で駆逐できるだろうし、しぶとく生き残っていた割に案外呆気なかったな、2021年~2023年にかけても。 ミオ:う、うん、そうね……。 トウマ:ただ、十三月機関の介入がそれ程見られなかったのが気がかりだけどね。 カズヤ:ただ、途中マリトッツォの変形型やら台湾カステラやら、随分寿命の短い2021年が流れ込んできたのが不可解だ。 ミオ:き、きっと、ただの残党だったんでしょ。だから嫌がらせというか、今年は物価の上昇もあったしガス抜き、みたいな。 トウマ:確かにその可能性もあるね。例年のことだけど。 カズヤ:思い過ごしかも知れないしな。 ミオ:そうだよ、だって十三月機関は十一年前に二人が倒したんだもの。残ってる、筈ないよ。 カズヤ:ああ。 トウマ:……そうだね。 ミオ:…………。 : カズヤ:さて、次は……。ん? 何だあれ、 ミオ:あれって? トウマ:どうした? カズヤ? カズヤ:いや、あっちから何かでかい人間みたいなのが……。 トウマ:あの方角は《卯の砦》? でもあそこに敵なんてもう居ないはずなのに。 ミオ:こっちに向かってくるよ! カズヤ:なんか、見たことあるんだけど、あれ……、あの赤いマフラー。 ミオ:というか、シルエットがさ。 トウマ:あれがどうして、そんな、馬鹿な……! いや、そうか、2023年! あれがあるのを忘れてた! カズヤ:てことはもしかして、 ミオ:そう、なの? トウマ:ああ。あいつは間違いない。 : カズヤ:シン・仮面ライダ――(同時) ミオ:シン・仮面ライダ――(同時) トウマ:シン・仮面ライダ――(同時) : 0:台詞を良い感じにカットするタイミングでキヨシが現れる。 : キヨシ:はははははっ! 2023年は終わらせない! この俺、十三月機関、特選機甲師団長、本瓦喜芳(ほんかわら きよし)と、この―― : カズヤ:本瓦喜芳だと?! トウマ:そんな、お前は十一年前に死んだはずだ! キヨシ:死んだはず、か。ははははははっ! ああ。そう、そうだ! 俺はあの時あの場所で、十人の同胞とともに2012を抱きながら死んだ! カズヤ:じゃあ死んだ人間がどうしてここにいる! キヨシ:さぁな! そんなもの知るか! お前達が殺しきれなかったんだろ? 十三月機関を! 2012年を! トウマ:やはり、生き延びていたか十三月機関……! ミオ:十三月機関……。 キヨシ:生き延びた。ふん。いいや、違うな。確かに俺は死んでいた。この十一年間死んでいたさ! あの日散った十人の同志の無念を背負い、この日、この場所で全てを取り戻すために、死んでいた! トウマ:それでそんな大袈裟なモノまで連れてきたのか! あの世から! キヨシ:そうだ、全てはこの日のためだ! お前らに復讐し、この世界をあるべき形で終わらせるために! トウマ:あるべき形? 時の流れに棹さすことの何があるべき形だ! 世界は、時代は移り変わるモノだろう! それを止めようだなんてのはワガママだ! キヨシ:それが人のあるべき形だと言っている! 2012年が、2023年が終わるだと? 新しい年が来る? 剰え、それがめでたいことだと? ふざけるな! そんなもの認めない! 俺達は! 新春など歓迎しない! 今年は絶対に終わらせない! カズヤ:お前らこそふざけるな! 分かっているのか!? 無事に今年が終わらなければ世界が終わるんだぞ! ミオ:世界が、終わる……。 キヨシ:ならばそんな世界終われば良い。 カズヤ:勝手なことをッ! トウマ! 行くぞエッフェル塔だ! トウマ:ああ、既に準備は――出来ている! ……行け! : 0:エッフェル塔が射出される。 : キヨシ:っは! 俺はオリンピックじゃないんだ! エッフェル塔など! 効くものか! : 0:エッフェル塔が弾かれる。 : ミオ:あのエッフェル塔が効かないなんて……! キヨシ:当然だな。その破壊力は所詮、2024年五輪開催地に託けた、ただの前借りに過ぎん。加えて2021年、同監督の代表作では―― トウマ:劇中でエッフェル塔が、 カズヤ:武器として使われる描写がある……。 ミオ:だから何……? キヨシ:全く効果がないってことだな。 トウマ:っく! 僕の判断ミスだ……! カズヤ:トウマ……。 キヨシ:はははっ! ここがテメェらの死に場所だ。柿村 一也(かきむら かずや)、鬼際 柊真(おにぎわ とうま)、それに……。なるほどな。 トウマ:……! カズヤ:どうして俺達の名前を! キヨシ:知っているさ。仇の名前くらい。まぁ、精々楽しみな。残された2023年を。 カズヤ:ここまでなのか……! キヨシ:あの世でなぁ! ミオ:トウマ! カズヤ! : 0:キヨシ、二人を叩き潰そうとする。 0:が、激しい衝突音が鳴り響く。 : キヨシ:なに!? 俺の攻撃を阻むだと!? カズヤ:トウマ、お前、その身体……! キヨシ:まさかゴジ――! トウマ:この手はあまり使いたくなかったんだけど。致し方ないね。 キヨシ:おいおいおいおい……! そんなの反則だろう! トウマ:そんなものを先に持ち出したのは君達の方だと思うけど? キヨシ:だからって! そいつは2021年の化身だろ! トウマ:そうだね。 キヨシ:イカレてやがんのか!? そこにそいつがあったら新年は迎えられないだろ! いくら負けたくねぇからってお前の行動は矛盾してる! トウマ:ふふふ、そうかもね。だから、使いたくなかった。でもね、この作品はシリーズとして長く愛される作品、虎の子ってわけさ! キヨシ:そんな理屈! トウマ:けど、これ以外に方法が思いつかなかったん――だ! カズヤ:内閣を総辞職させたやつ!? キヨシ:めちゃくちゃだっ、そぉぉぉ! : 0:キヨシ、トウマの攻撃を回避する。 : トウマ:やはり、そうか。その身体ただの願望だね? キヨシ:黙れ! お前もそうだろう! カズヤ:どういうことだ!? トウマ:映画のキャッチコピーを忘れたのかい? カズヤ:あっ! : トウマ:変わるモノ。 変わらないモノ。そして、変えたくない――(同時に) カズヤ:変わるモノ。 変わらないモノ。そして、変えたくない――(同時に) : ミオ:動かないで。 : 0:ミオ、カズヤの首にしめ縄を巻き付ける。 : カズヤ:ミオ! 何を……!? ミオ:動かないでと言ったでしょう? トウマ:カズヤ! キヨシ:だから、動くなって。 トウマ:っく……! : 0:キヨシ、トウマに槍を突きつける。 : キヨシ:形勢逆転、だな。 ミオ:…………。 カズヤ:ミオ、どうして俺にしめ縄を……。 ミオ:……黙って、カズヤ。 トウマ:そうかミオ、やはり君は――。 : トウマ:僕達の裏切り者か(同時に) トキハル:僕らの同志だよ(同時に) : 0:トキハルが現れる。 : カズヤ:お前は……! トキハル:やぁ、九年ぶりだね。会いたかったよ。柿村 一也(かきむら かずや)くん? トウマ:十三月機関、室長。斜子織 時陽(ななこおり ときはる)! トキハル:憶えててくれたんだ。鬼際 柊真(おにぎわ とうま)くん。別段嬉しくは、ないけどね? キヨシ:遅かったじゃねぇか。トキハル。 トキハル:君も随分手ひどくやられたようだけど? キヨシ:すまねぇ、油断した。 トキハル:構わないよ、その為の仕込みだったからね。 キヨシ:ああ、恐れ入ったよ。まさか、こんなところで会えるとはな。ミオ。 トキハル:元気にしてたかい? ミオ:ナナコオリ室長。 トキハル:僕らの間に堅苦しい肩書きは無しだよ、ミオ? ミオ:はい、トキハル。 カズヤ:お、おい、ミオ、なんで……! トキハル:おやぁ? さっき言ったんだけれど、聞こえていなのかな? カズヤ:黙れ! お前になんか聞いてない! 俺はミオに! キヨシ:いい加減現実を受け入れろよな、見苦しいぜハニーズ? カズヤ:うるさい! お前らが言うな! こんなの現実じゃない! 悪い冗談だ! あぁ! そうだ! エイプリルフールはまだ殺し損ねていた! そうか、これは罠だな!? 策略だ! トウマ:カズヤ……。 カズヤ:俺達を疑心暗鬼に陥らせ、仲間割れをさせようって魂胆なんだろ!? 卑怯なやつらだ! ミオ:…………。 カズヤ:何とか言えよ! 言ってくれミオ! 全部嘘なんだろ、裏切ったりなんて! トキハル:くふふふふ。嘘、嘘か。そうだね、君の推測も大凡半分は正しいと言えるだろう、憐れなハニーズ。 キヨシ:はははっ、傑作だなぁトキハル! カズヤ:黙れ! 半分だと? 何を言っている! トキハル:そう声を荒げないでくれ、柿村一也くん。ふふふ、そうだよ。これは君の言うとおり謀略で、罠で、殺し損ねた十一年越しの嘘、悪い冗談なのさ。 カズヤ:嘘? さっきから何を言って―― トウマ:カズヤ、もういい。 カズヤ:トウマ……? ミオ:…………。 トウマ:宗谷恋(そうや れん)、紫鏡晶太(むらさきかがみ しょうた)、姫村凶花(ひめむら きょうか)、葵龍之輔(あおい りゅうのすけ)、如月明日香(きさらぎ あすか)、日暮時雨(ひぐらし しぐれ)、天津白(あまつ しろ)、鶴浜七海(つるはま ななみ)、阪下和佐(さかした かずさ)、雪之下智実(ゆきのした ともみ)。あの日殺した十三月機関のメンバーは十名。 カズヤ:それがなんだって……。 トウマ:そこにいる斜子織 時陽(ななこおり ときはる)、本瓦 喜芳(ほんかわら きよし)の二名を加えた数は。 カズヤ:十二……まさか! トウマ:ミオは、いいや。槇澤 澪(まきざわ みお)は、十三月機関のスパイだ。 カズヤ:な……っ! トキハル:ふふふふふふふ。 カズヤ:嘘だ。嘘だと言ってくれよミオ! ミオ:残念だけど、本当よ。カズヤ。 カズヤ:そんな……っ! ミオ:……それで? いつから気が付いていたの? トウマ:最初から、と言いたいけど、そうだね。毎年、年末が近付くにつれて、その疑惑が高まっていった、といったところかな? ミオ:そう。あなたは随分冷たいのね。トウマ。 トウマ:相棒が熱血馬鹿やってると少しは冷静にもなるよ。君こそ大概冷血だろう? ミオ:酷い言いぐさね。 トウマ:心は痛まないのかい? ミオ:えぇ、痛む。痛むに決まっているでしょう? ずっとずっと、仲間を騙していたんだもの。それに同志も。ええ、それだけじゃない。私は自分の心すらも偽って、痛みを隠してた。新年を迎える度に、その手助けをする度に、2013年を潰し、2014年を摘み取り、2015年を矯めて、2016年を蹴散らし、2017年を焼き払い、2018年を黙殺し、2019年を蹂躙し、2020年を陵辱し、そして2021年を虐待し、2022年を殲滅し、2023年をなます斬りにしている間私はずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと! この心を傷めつけてきた! それも、冷え切った指で冷え切った肌を抓り上げて苛むように、どちらがどんな痛みを感じてどうして悲鳴を上げているのかさえも分からないような、けれど確実に感じるこの痛みに私は心を磨り減らしてきた。そう、私は十三月機関、諜報部の槇澤澪。どちらにとっても裏切り者の冷血動物。私にとっては全てが冷たく、全てが哀しい。だから、私はこの2023年の冬で長きにわたった世界を全て凍結させる。新春なんて訪れさせない。 カズヤ:そんなの……! トウマ:ミオ……。 トキハル:辛い役目を任せて悪かったね、ミオ。 ミオ:トキハル……。 トキハル:けれど、君のおかげで、僕らの悲願が成就する。よくやったね。 ミオ:……いいえ、私の命はこの日のために。 キヨシ:ああ、俺の命もこの日のために、だ。 トキハル:ありがとう、二人とも。 : 0:年末が迫り、世界が震える。 : カズヤ:なっ!? なんだ、世界が震えてるのか!? トキハル:ふふふふふ。さて、そろそろだね。 トオル:時間が、もう……! トキハル:君達は随分頑張って2023年を壊そうとしたみたいだけど、ここにも、そこにも。まだ、2023年は生きている。君達は時の移ろいを、新年を自然の摂理のように言ったけど、誰だって、そう、当事者である2023年さえ、変わりたくないのさ。だから僕らは、その意志を汲み取らなければいけない。僕らは代弁者なんだよ。永続したいという2023年の、ね。 カズヤ:ふざけるな……! トキハル:ふざけるな? ふふ、何を言うのかな。僕らは真剣だよ。 カズヤ:何が真剣だ! ミオ:カズヤ……? カズヤ:真剣に世界と向き合っててまだ、そんな考えなのか?! キヨシ:お前、あまり調子に乗るなよ……! カズヤ:調子に乗ってるのはお前らだろうが! キヨシ:何だと!? カズヤ:代弁者? 違う逆だ! ミオ:逆……? カズヤ:お前らは変わりたくないと願う2023年の意志を代弁しているんじゃない! お前らの変わりたくないという身勝手な願望を2023年に押しつけてるだけなんだ! そんなの、潔いフリして賢いつもりで諦めてるだけだろうが! ミオ:……! トキハル:黙れぇ! 所詮ハニーズ如きに、僕らの、十三月機関の崇高な意志は理解できないっ! カズヤ:そうやって人を見下すことしかやってこなかったやつが偉そうに言うな! 人は変われるんだ! 誰だって! ミオ:変われる……? カズヤ:トオル! そいつを撃て! トオル:カズヤ……?! キヨシ:大人しくしていればつけあがりやがって! ミオ! そいつを殺せ! ミオ:え、で、でも……! キヨシ:何してる! 情でも移ったか? だが安心しろ、どうせ遅いか早いかの違いでしかない。俺達は新年など来させないのだから! カズヤ:早くするんだトオル! トオル:カズヤ、でも、君が! カズヤ:そいつも言っただろう、このままじゃ遅いかどうかだ。俺のことは良い! 撃て! トキハル:ミオ! カズヤ:トオル! キヨシ:死ねぇぇ! トオル:カズヤぁ! ミオ:あぁぁぁ! : 0:キヨシとトオルの攻撃が交錯し爆発が起きる。 : 0:◇ : 0:爆炎に包まれた戦場。 0:やがて煙が晴れると、カズヤが浮かび上がる。 : カズヤ:……けほっけほ……! 無事だった……? っは! 2023年は!? トオルは!? ミオは!? おい! 無事かトオル! : 0:煙の中に、二機の残骸。 0:その傍らに倒れ伏す、トオル。 : トオル:…………。 カズヤ:トオル!? おいしっかりしろトオル! 死ぬな! トオル:……死んで、無いよ……。 カズヤ:トオル……! 良かった! トオル:君こそ無事で何よりだ。 カズヤ:トオル、世界はどうなった!? あの一瞬で何が……? トオル:……! あれを。 カズヤ:あれって……? : 0:トキハル、ミオの手にしたインボイス制度の残骸に突き刺されている。 : トキハル:ミオ……。ごふっ……、これは。イン、ボイス? ミオ:ごめん、なさい……。 トキハル:ふふ、そう、か。君は、変われたんだ、ね。 ミオ:トキハル……! トキハル:いいんだ、ミオ。僕には、いいや、十三月機関の誰もが、変われなかった、死ぬまで、そんな中、君は、変われた。それは、喜ばしいことなのか、哀しいことなのか、僕には、分からない、けれど、大願ではなくとも、これもまた、本望だよ、君に、2023年に、十三月に、インボイスに、ミオに、殺されるなら。 ミオ:待って、行かないで……! ごめんなさいトキハル……! トキハル! トキハル:ふふ、どこにも、行かないよ……いけない、僕らは2012年で、待ってる、か……ら――。 : 0:トキハル、絶命する。 : ミオ:トキハルーーっ! カズヤ:ミオ……。 : 0:カズヤ、ミオの元に近寄ろうとする。 : キヨシ:トキハルを――返せ……ッ!! トオル:……!? : 0:そこへ、羽子板を手にしたキヨシが駆けだしてくる。 : キヨシ:うぁぁぁぁぁぁ! トオル:カズヤ! : 0:トオルがキヨシの攻撃からカズヤを身を呈して庇う。 : カズヤ:え……? トオル:よかっ……た、お前が無事で。 : 0:トオル、絶命。 : キヨシ:は、はは! やった! トキハル! トモヨ! みんな……! 俺は仇を、2023年を――! カズヤ:うぉぉぉぉぉぉっ! キヨシ:う、うぐ、あ、あ、あぁ……! : 0:カズヤ、キヨシをしめ縄でしめて絶命させる。 : カズヤ:はぁ、はぁ、はぁ……! トオル……! トオル……! あ、ぁぁぁぁっ! ミオ:カズヤ……。 カズヤ:……なんだ、ミオか。……お前、まだ生きてたのか。 ミオ:……うん、生きてた。 カズヤ:俺も、生きてた。 ミオ:そう、みたいだね。 カズヤ:俺も殺すか? ミオ:あなたこそ。 カズヤ:……もう、どうでもいいんだ。 ミオ:……そう。 : 0:日が昇り始め、朝日が差し込む。 : ミオ:ねぇ、見て。初日の出。 カズヤ:あぁ、年が明けたのか。 ミオ:綺麗、ね。 カズヤ:……そうだな。 ミオ:命の色ね。 カズヤ:……そうだな。 ミオ:ねぇ、カズヤ。 カズヤ:……何? ミオ:人は、変われると思う? カズヤ:……分からない。 ミオ:……そう。 : 0:間。 : カズヤ:でも、 ミオ:……? カズヤ:ミオは、変われると、思う。 ミオ:……そう。 カズヤ:ああ。 ミオ:だったら私、この2023年を、生きてみるね。 カズヤ:ああ。 ミオ:みんなの分まで。 カズヤ:……ああ。 : ミオ:(N)2024年1月1日。 ミオ:(N)この日、世界は多くの犠牲を払いながらも、新たな年を迎えた。

0:年末戦線《O-MISOKA.》2023。 : 0:人は変われる。そう信じる限り。 : 0:◇あらすじ◇ 0:世界は新たに2024年を迎えようとしていた。しかし、未だ2023年の抵抗は激しく、このままでは新年を迎えることが出来ず、世界は滅亡してしまう。そんな中、2023年を早急に終わらせるため立ち上がった者達『Happy New Year's』通称《ハニーズ》がいた。そしてそれに対抗するように2023年を終わらせまいとする組織『十三月機関』が動き出し――。果たして人々は、世界は無事新年を迎えることができるのか? : 0:◇登場人物◇ 0:※( )で示されたものは、Nがナレーション、 0:それ以外の(クリスマス)(流行語)等は主にモブの兼役。 カズヤ:柿村 一也(かきむら かずや) カズヤ:ハニーズ、隊員。優れた戦闘力と大胆な発想で戦うハニーズ屈指のアタッカー。 ミオ:槇澤 澪(まきざわ みお) ミオ:ハニーズ、隊員。巧みな戦術と応用力で難局を乗り切る守り手。 トウマ:鬼際 柊真(おにぎわ とうま) トウマ:ハニーズ、小隊長。効率よく2023年を殲滅する方法を提案する頭脳派。 トキハル:斜子織 時陽(ななこおり ときはる) トキハル:十三月機関、室長。 キヨシ:本瓦 喜芳(ほんかわら きよし) キヨシ:十三月機関、特選機甲師団長。2023年の化身を召喚できる。 : 0:◇◇◇ : ミオ:(N)年末戦線《O-MISOKA.》2023。 : 0:銃声、爆発音、人々の怒号が渦巻く戦場、《クリスマス戦域》。 0:塹壕に隠れたカズヤが『クリスマス軍』への反撃の機会を窺いながら応戦している。 : カズヤ:っち! もうその顔見飽きてんだよ、モミの木野郎ぉ! トキハル:(クリスマス)ほーっほっほ! メリークリスマス! カズヤ:うるせぇ! ここは日本だ! リア充イベントなんて永遠に消えろ! キヨシ:(クリスマス)ククク! クリスマスケーキっぃ! カズヤ:っな! しまっ――! トウマ:ターゲットロック。賀正砲! ファイア! : 0:爆発音。 : カズヤ:わあぁっ!? トウマ:クリスマス、殲滅を確認。 カズヤ:なんだ!? トウマ:……ふぅ、危ないところだったね、カズヤ? カズヤ:その声、トウマか?! トウマ:あぁ、ピンチかなと思って駆けつけたよ、良いお年を。 カズヤ:ありがとう助かった。良いお年を! : 0:※注 良いお年を=年末戦線におけるハニーズの挨拶。 : カズヤ:その装備……『門松』か? トウマ:最新型のね。毎年言ってるでしょ? クリスマスを駆逐するのに最適なのはこいつだって。 カズヤ:分かってるんだが『紅葉狩り』との連戦でな。 トウマ:あぁ、今年は紅葉遅かったもんね。 カズヤ:そうなんだよ、でもこれでケツの方は片付いたな。他の戦場はどうなってる? トウマ:今、ミオが関西万博と戦ってるよ。 カズヤ:長引いてるのか? トウマ:ああ。相当マズい。2023年で片付かなかった分、より力を蓄えてる。それでも2025に間に合うかどうか……。 カズヤ:そうか……来年には片が付くだろう。 トウマ:だといいが。 カズヤ:それで例のウィルスは? トウマ:そちらは粗方片付いた。ワクチンが効いたのか、集団免疫とやらの獲得に至ったのか。 カズヤ:マスクしてるやつも随分減ったな。 トウマ:それでも、どこの現場も医者不足だ。 カズヤ:インフルエンザも猛威を振るっているらしいしな。 トウマ:残念ながらね。 カズヤ:よし、なら残りの仕事をさっさと片付けよう! 次の夏期五輪はパリだったな? トウマ:ああ。来る2024年にね。 カズヤ:なら、最適な装備は――。 : カズヤ:エッフェル塔(同時に) トウマ:エッフェル塔(同時に) : カズヤ:行くぞ、トウマ! トウマ:ああ! 大掃除と洒落込もう! カズヤ:俺達《ハニーズ》の名にかけて! トウマ:《ハニーズ》の名にかけて! : 0:二人、戦場を駆けていく。 0:そんな様子を遠くから眺める影。 0:トキハルとキヨシ。 : キヨシ:はっ! 目障りなハニーズ風情が……! 我慢ならない。俺も出るぞトキハル! トキハル:まぁ待ちなさい、キヨシ。 キヨシ:あぁ!? 何言ってんだ? お前は良いのかよ、俺達の2023年をこけにされて! トキハル:そうは言っていない。僕だってこの身が裂ける思いさ。 キヨシ:だったら……! トキハル:まだ、期は熟していない。僕はそう言っているんだ。 キヨシ:そんなに悠長に構えていたら新年が来ちまうぞ! そうなったら俺達は……! トモミは! トキハル:分かっている。君の思いは。誰よりも。 キヨシ:トキハル。 トキハル:そう焦るな。年末に慌てるなんて僕達らしくない。僕達はこの日の為に九年も待った。そうだろう? キヨシ:……! トキハル:年末にバタバタと無様に駆けずり回るなんて、まるでやつらのようだ。そんなの僕らに似合わない。そうは思わないかい、キヨシ? キヨシ:……ああ。ということは何か、策があるのか? トキハル:もちろん。すでに仕掛けてあるよ。とびっきりのサプライズを、この日のために、ね? キヨシ:この日のため……。信じて、良いんだな? トキハル:もちろん。僕も君を信じている。トモミに誓って。そして全ては、 : トキハル:《十三月機関》の名のもとに(同時に) キヨシ:《十三月機関》の名のもとに(同時に) : トキハル:大丈夫、心配しないで。君の出番は用意してある。 キヨシ:くはは、今年こそ楽しい年末になりそうだ。 トキハル:ふふ、僕も明日が楽しみさ。新年が訪れない明日が、ね。 : 0:◇ : 0:混沌とした戦場に怒声が飛び交う。 : ミオ:(N)2023年12月31日。 : カズヤ:(流行語)蛙化現象! ミオ:(流行語)観る将! キヨシ:(流行語)闇バイトゥゥゥ! トウマ:(流行語)生成AIィ! トキハル:(流行語)Twitterァッ! トウマ:うぉぉぉぉ! X(エックス)ッ! : ミオ:(N)世界は新たに2024年を迎えようとしていた。 : ミオ:(流行語)新しい学校のリーダーズゥゥッ! カズヤ:(流行語)OSO18ィィ! アーバンベアァァァ! トウマ:(流行語)4年ぶり声出し応援ンンン! トキハル:(流行語)ペッパーミル・パフォーマンスゥゥゥッ! キヨシ:(流行語)……知らんけど。 カズヤ:はぁぁぁぁぁ! それは! 去年! だろうがぁッ! アレ(A.R.E.)! : トウマ:はぁ、はぁ……! カズヤ! 雑魚が多い! : ミオ:(N)しかし、未だ2023年の抵抗は激しく各地で争いが勃発、人々は慌ただしい年末の中に倒れ、時の流れは停滞した。このままでは新年を迎えることが出来ず、やがて世界は滅亡してしまう。 : カズヤ:分かってる! けど、これを超えねぇと、五輪には辿り着けねぇ! : ミオ:(N)そんな中、2023年を早急に終わらせるため立ち上がった『Happy New Year's』通称《ハニーズ》と呼ばれる者達がいた。 : トウマ:ここが正念場、だな。 カズヤ:ああ。 : ミオ:(N)彼らは各地の戦場を飛び回り、膠着状態に陥ったイベントを終結させていった。そして、世界は無事新年を迎えられる。 : キヨシ:っち、やっぱ水増しした流行語程度じゃ足止め程度にしかならねぇか。 : ミオ:(N)かに、思われた。 : トキハル:いいや、それで良い。過去の流行語のストックもまだあるだろう?  : ミオ:(N)この戦場にはもう一つ、別の影があった。 : トキハル:僅かだが奴らも消耗している。 : ミオ:(N)『十三月機関』。ハニーズとは反対に、2023年の永続を掲げる組織である。 : トキハル:キヨシ、君は完璧で究極のゲッター。 キヨシ:なぁぜなぁぜ? : ミオ:(N)ハニーズと十三月機関。二つの思惑が交錯する戦場で、人々は、世界は何を思うのか。 : カズヤ:っく! 新年は俺達の手で勝ち取る。 : ミオ:(N)きたるべき2024年と。 : トキハル:憧れるのをやめましょう! : ミオ:(N)移ろいゆく2023年。 : キヨシ:行けぇ! サカバンバスピス、地球沸騰化、10円パン、チャットGPT、電動キックボード、ひき肉です/ちょんまげ小僧、Y2K、エッフェル姉さん、オミクロン株、薩摩ホグワーツ! 奴らを殲滅しろ! 2023年しか勝たん! : ミオ:(N)二つの時代をかけた天秤は、 : トウマ:流行語って言うけどさ! ぶっちゃけお前らいまいちピンとこないんだけどね! : ミオ:(N)果たしてどちらに傾くのか。 : 0:◇ : 0:戦場、《万博戦域》。 0:ミオがしめ縄を振りながら戦っている。 : ミオ:唸れ! しめ縄ロッド! たぁぁぁぁっ! : キヨシ:(政策)インボイスゥッ! トキハル:(万博)大ーーッゥ! 屋根ェーーッ! トウマ:(政策)ライドシェアーーーーッ! カズヤ:(万博)空飛ぶクルマァァッッ! ミオ:っ……! : 0:ミオ、膝をつく。 : トウマ:(万博)シェアッ! ミオ:……やっぱり、七夕倒したその足で挑むにはきつかったかな? トキハル:(万博)オォ、ヤァネェ? ミオ:344億円は伊達じゃないって? はは……でも、ここで倒れる訳には――! キヨシ:(政策)インボイスゥッ! ミオ:――いかないの! : 0:ミオ、インボイスの攻撃を躱しカウンターで仕留める。 : キヨシ:(政策)スゥ……ッ!? ミオ:……適格請求書制度! カズヤ:(万博)クルマァァッッ! ミオ:甘い! カズヤ:(万博)ソラァッッ! ミオ:笹でも食らってろ! : 0:ミオ、足下の七夕の残骸で空飛ぶクルマを刺し殺す。 : トウマ:(万博)ライドゥ! シェアーーッ! ミオ:あんたも纏めて……っ! トウマ:(万博)シェェッ!? ミオ:貰ったぁッ! : 0:ミオ、空飛ぶクルマに刺さった七夕でライドシェアごと仕留める。 : ミオ:……!? 大屋根は――? トキハル:(五輪)オォォーーーーー……ヤネェッ! ミオ:上!? 工事が間に合わなっ――! : トウマ:穿てエッフェル塔(同時) カズヤ:穿てエッフェル塔(同時) : 0:トウマとカズヤがエッフェル塔を抱えて飛来する。 : トウマ:うおぉぉぉぉぉ! カズヤ:はあぁぁぁぁぁ! トキハル:(万博)ヤァァッ――?! : 0:爆発。 : ミオ:今のは……。 カズヤ:ふぅーっ! 生きてるか? ミオ? ミオ:もしかして、カズヤ? トウマ:僕もいるよ、ミオちゃん。 ミオ:トウマも? カズヤ:援護に来たぜ。 ミオ:ありがと、助かった。 トウマ:どういたしまして。 ミオ:その装備って……。 カズヤ:見ての通りエッフェル塔だよ。 ミオ:いや、見たら分かるけど……あんた達よくそんなの持ってきたね。 トウマ:まぁ、苦労したけどね。でも、残留した万博を殲滅するのにこれ以上の武器はないでしょ? 正月武装でちまちま戦ってたって埒があかないよ。 ミオ:トウマ、あんたの効率厨ぶりは相変わらずね。 トウマ:そりゃ、ミオもカズヤも非効率な戦い方ばかりするからね。 カズヤ:俺もかよ。 トウマ:なんだい? その笹に刺さった空飛ぶクルマとライドシェアは? カズヤ:うわっ、それ七夕の死骸か? えげつねぇ……。 ミオ:う、うるさいなぁ! こっちは政策と万博の連戦でまともな武器がなかったの! カズヤ:そうだろうなと思って助けに来たんだが、間一髪だったな。 ミオ:う、うん……。 トウマ:すまない。ミオ、カズヤ。各地の戦場にも結構な被害が出てる。これは戦力配分を間違えた僕のミスだ。 ミオ:と、トウマ、気にしないでよ! ほら、こうして私は生きてるんだから。トウマはよくやってるって! カズヤ:そうだぜ! お前は上手くやってる。お前がいなけりゃ俺だって危なかったんだ。いつも感謝してるぜ? トウマ:ありがとう、二人とも。 カズヤ:それに……今年の年末も何かきな臭ぇしな。 トウマ:カズヤ? ミオ:それって、 カズヤ:ああ、やけに雑魚が多い。水増しされた2022年の流行語なんて普通なら死語だ、ということは――。 トウマ:十三月機関。 ミオ:……! トウマ:奴らの仕業ということか。 カズヤ:ああ。 ミオ:か、考えすぎじゃない? だって、十三月機関は十一年前に……。 トウマ:ああ。十一年前、2012年の12月31日に僕とカズヤで殲滅した。 ミオ:だ、だったら、 カズヤ:隠れてやり過ごしてたんだろうぜ。 ミオ:隠れて、って……。 カズヤ:まぁ何にせよ、用心しないとだな。 ミオ:そう、ね……。 トウマ:ミオちゃん? ミオ:ううん、なんでも。万博工事は終わりそう? トウマ:年内はってところだね。 カズヤ:途中でばらまいてきた税金が効いてるらしい。 ミオ:そんなことしてたんだ……。 トウマ:費用は嵩むけど、効果的な戦術だからね。しばらくの辛抱だよ……。 カズヤ:来年も財政、苦しいのかぁ……。 トウマ:家計もな。 カズヤ:うげぇ……。 ミオ:もう、そんな顔してないで気合い入れて行こ。2023年はこんなものじゃないんだから。 カズヤ:そうだな! よーし! 今年も大詰めにしてやるか! トウマ:……こんなものじゃない。か。 カズヤ:おいトウマ! 大変だ! 向こうですごい数のピクトグラムが暴れてやがる! どうする!? トウマ:……なんだって!? 五輪の生き残りか!? 今行くよ! この場合考え得るピクトグラムに最も有効な戦術は――。 : 0:◇ : 0:閑散とした戦場、《卯の砦》。 0:キヨシ、2023年の化身を召喚している。 : キヨシ:来い! 生成AIども! トウマ:(AI)ChatGPT! カズヤ:(AI)バード! ミオ:(AI)ラマ2! キヨシ:ジェミナイ! アーニー・ボット! GPT-4! ミオ:(AI)ジェミナイッ! カズヤ:(AI)アーニー……ボット……ッ! トウマ:(AI)GPT-4ォォォウ! キヨシ:はぁ、はぁ……。 トキハル:今年のAIか。並べてみると壮観だね。 キヨシ:今年は「ほとんどのAIが誕生した年」となるのかも知れないな。無論、来年などこさせないがな。 トキハル:首尾はどうだい? キヨシ:どうもこうもねぇ。ついさっき増税メガネがやられた。もう殆どめぼしい2023年は残ってないが、ほんとに大丈夫なんだろうなトキハル? トキハル:心配するな。その分、あちらも消耗している。このまま押し切ればいずれ戦線は崩壊するだろう。 キヨシ:崩壊だと? そんな戦力、どこに? トキハル:忘れたのかい? 僕らは何の為に待ったと思う? キヨシ:そりゃぁ、勝つため。勝って新年を滅ぼすためだ。 トキハル:そう、僕らはその為にあの戦いか十一年待った。堪え忍ぶことは恥じゃない。力だ。張り詰めた弓のように、犇めく爆薬のように、やがて超新星爆発を起こす恒星のように。僕らは怒りを無念を絶望を失望を虚無を、やがて大願を成就させる為の力に変えて研ぎ澄ましてきた。 キヨシ:そんなことは分かってる。しかし、どうだ、蓋を開けてみれば? ここにある2023年はこんなにも劣勢だ。どれだけこの2023年に俺達が思いを込めようとも、時間の流れは強大だ。止められない。名残惜しくとも、年は明けていくじゃないか? 俺達はあれから何度、あの忌々しい初日の出を見た? 奴らの腹立たしい鬨《あけおめ》を聞いた? その度に何度俺達は憎悪にこの身を灼き焦がすことになった? 俺達が手をこまねいている内に平成は令和になった! 元号が変わる? ふざけんな! 俺達十三月機関はなにも変えられなかったのに! それで出来もしないことを掲げ過去に囚われた愚か者だと何度罵られてきた? トキハル:それは……。 キヨシ:もう、我慢できねぇ。俺は行くぞ。奴らを、ハニーズを、2023年を捻りつぶすんだ。 トキハル:待つんだ。 キヨシ:レン、ショウタ、キョウカ、リュウノスケ、アスカ、シグレ、シロ、ナナミ、カズサ、そして、トモミ。 トキハル:……キヨシ。 キヨシ:俺は、俺達は、みんなに背を向けて、クソッタレの初日の出を十一回も迎えた。これ以上は駄目だ。そうだろ。 トキハル:キヨシ、僕は君を――。 キヨシ:――止めるなよ、トキハル。ここで止まったら、俺はあの日散ったみんなに顔向けできねぇ。 トキハル:――止めるつもりはないよ。 キヨシ:そうか、なら……。 トキハル:しかし、ここまで待ったんだから、もうほんの少しだけ待ってはくれないかな? キヨシ:その問答はもういらない。俺は行く。 トキハル:じゃあ、せめて僕の後ろのモノを持って行ってはどうかな? 図らずも僕達と同じく十一年モノのこの作品を、ね。 キヨシ:まさか、そいつは……! トキハル:ふふふふふ。すまない、なにぶんモノが大きいからね。少々準備に手間取ったけれど、これならやれるよね? キヨシ:あぁ……! 上等だ! トキハル:期待してるよ? キヨシ:任せろ! 2023年は絶対に終わらせねぇ! トキハル:その意気だよ。 キヨシ:それで、お前はどうするんだ? トキハル:僕もすぐに行くよ。 キヨシ:はははっ! なら出来るだけ早く来いよ? じゃないと満を持してこの世界が終わっちまうぜ? 2023年が終わる前にな。 トキハル:そうか、ではなるべく間に合わせるとしよう。 キヨシ:それじゃあ、行ってくるぜ。トキハル。 トキハル:ああ、行ってきなよ。キヨシ。 : 0:キヨシ、発進する。 : トキハル:さて、もうすぐ。もうすぐだね。……ミオ。 : 0:◇ : 0:戦場《五輪戦域》跡地。 0:カズヤ、ミオ、トウマがピクトグラムを羽子板で掃討している。 : ミオ:はぁぁぁぁッ! ていゃっ! トウマ! トキハル:(五輪)ピクトォッッ!? トウマ:オーライ任せて! とりゃ! とどめのスマッシュだカズヤ! キヨシ:(五輪)グラァァム!? カズヤ:うおおおぉぉぉぉ! 決めるぜ必殺・スマッシュオブ羽根突き! : トキハル:(五輪)ピクトォォ!(同時) キヨシ:(五輪)グラァァァ!(同時) : 0:ピクトグラムが爆散する。 : トウマ:ふぅ、これで粗方オリンピックも片付いたね。 カズヤ:閉会式の花火も新年の花火で駆逐できるだろうし、しぶとく生き残っていた割に案外呆気なかったな、2021年~2023年にかけても。 ミオ:う、うん、そうね……。 トウマ:ただ、十三月機関の介入がそれ程見られなかったのが気がかりだけどね。 カズヤ:ただ、途中マリトッツォの変形型やら台湾カステラやら、随分寿命の短い2021年が流れ込んできたのが不可解だ。 ミオ:き、きっと、ただの残党だったんでしょ。だから嫌がらせというか、今年は物価の上昇もあったしガス抜き、みたいな。 トウマ:確かにその可能性もあるね。例年のことだけど。 カズヤ:思い過ごしかも知れないしな。 ミオ:そうだよ、だって十三月機関は十一年前に二人が倒したんだもの。残ってる、筈ないよ。 カズヤ:ああ。 トウマ:……そうだね。 ミオ:…………。 : カズヤ:さて、次は……。ん? 何だあれ、 ミオ:あれって? トウマ:どうした? カズヤ? カズヤ:いや、あっちから何かでかい人間みたいなのが……。 トウマ:あの方角は《卯の砦》? でもあそこに敵なんてもう居ないはずなのに。 ミオ:こっちに向かってくるよ! カズヤ:なんか、見たことあるんだけど、あれ……、あの赤いマフラー。 ミオ:というか、シルエットがさ。 トウマ:あれがどうして、そんな、馬鹿な……! いや、そうか、2023年! あれがあるのを忘れてた! カズヤ:てことはもしかして、 ミオ:そう、なの? トウマ:ああ。あいつは間違いない。 : カズヤ:シン・仮面ライダ――(同時) ミオ:シン・仮面ライダ――(同時) トウマ:シン・仮面ライダ――(同時) : 0:台詞を良い感じにカットするタイミングでキヨシが現れる。 : キヨシ:はははははっ! 2023年は終わらせない! この俺、十三月機関、特選機甲師団長、本瓦喜芳(ほんかわら きよし)と、この―― : カズヤ:本瓦喜芳だと?! トウマ:そんな、お前は十一年前に死んだはずだ! キヨシ:死んだはず、か。ははははははっ! ああ。そう、そうだ! 俺はあの時あの場所で、十人の同胞とともに2012を抱きながら死んだ! カズヤ:じゃあ死んだ人間がどうしてここにいる! キヨシ:さぁな! そんなもの知るか! お前達が殺しきれなかったんだろ? 十三月機関を! 2012年を! トウマ:やはり、生き延びていたか十三月機関……! ミオ:十三月機関……。 キヨシ:生き延びた。ふん。いいや、違うな。確かに俺は死んでいた。この十一年間死んでいたさ! あの日散った十人の同志の無念を背負い、この日、この場所で全てを取り戻すために、死んでいた! トウマ:それでそんな大袈裟なモノまで連れてきたのか! あの世から! キヨシ:そうだ、全てはこの日のためだ! お前らに復讐し、この世界をあるべき形で終わらせるために! トウマ:あるべき形? 時の流れに棹さすことの何があるべき形だ! 世界は、時代は移り変わるモノだろう! それを止めようだなんてのはワガママだ! キヨシ:それが人のあるべき形だと言っている! 2012年が、2023年が終わるだと? 新しい年が来る? 剰え、それがめでたいことだと? ふざけるな! そんなもの認めない! 俺達は! 新春など歓迎しない! 今年は絶対に終わらせない! カズヤ:お前らこそふざけるな! 分かっているのか!? 無事に今年が終わらなければ世界が終わるんだぞ! ミオ:世界が、終わる……。 キヨシ:ならばそんな世界終われば良い。 カズヤ:勝手なことをッ! トウマ! 行くぞエッフェル塔だ! トウマ:ああ、既に準備は――出来ている! ……行け! : 0:エッフェル塔が射出される。 : キヨシ:っは! 俺はオリンピックじゃないんだ! エッフェル塔など! 効くものか! : 0:エッフェル塔が弾かれる。 : ミオ:あのエッフェル塔が効かないなんて……! キヨシ:当然だな。その破壊力は所詮、2024年五輪開催地に託けた、ただの前借りに過ぎん。加えて2021年、同監督の代表作では―― トウマ:劇中でエッフェル塔が、 カズヤ:武器として使われる描写がある……。 ミオ:だから何……? キヨシ:全く効果がないってことだな。 トウマ:っく! 僕の判断ミスだ……! カズヤ:トウマ……。 キヨシ:はははっ! ここがテメェらの死に場所だ。柿村 一也(かきむら かずや)、鬼際 柊真(おにぎわ とうま)、それに……。なるほどな。 トウマ:……! カズヤ:どうして俺達の名前を! キヨシ:知っているさ。仇の名前くらい。まぁ、精々楽しみな。残された2023年を。 カズヤ:ここまでなのか……! キヨシ:あの世でなぁ! ミオ:トウマ! カズヤ! : 0:キヨシ、二人を叩き潰そうとする。 0:が、激しい衝突音が鳴り響く。 : キヨシ:なに!? 俺の攻撃を阻むだと!? カズヤ:トウマ、お前、その身体……! キヨシ:まさかゴジ――! トウマ:この手はあまり使いたくなかったんだけど。致し方ないね。 キヨシ:おいおいおいおい……! そんなの反則だろう! トウマ:そんなものを先に持ち出したのは君達の方だと思うけど? キヨシ:だからって! そいつは2021年の化身だろ! トウマ:そうだね。 キヨシ:イカレてやがんのか!? そこにそいつがあったら新年は迎えられないだろ! いくら負けたくねぇからってお前の行動は矛盾してる! トウマ:ふふふ、そうかもね。だから、使いたくなかった。でもね、この作品はシリーズとして長く愛される作品、虎の子ってわけさ! キヨシ:そんな理屈! トウマ:けど、これ以外に方法が思いつかなかったん――だ! カズヤ:内閣を総辞職させたやつ!? キヨシ:めちゃくちゃだっ、そぉぉぉ! : 0:キヨシ、トウマの攻撃を回避する。 : トウマ:やはり、そうか。その身体ただの願望だね? キヨシ:黙れ! お前もそうだろう! カズヤ:どういうことだ!? トウマ:映画のキャッチコピーを忘れたのかい? カズヤ:あっ! : トウマ:変わるモノ。 変わらないモノ。そして、変えたくない――(同時に) カズヤ:変わるモノ。 変わらないモノ。そして、変えたくない――(同時に) : ミオ:動かないで。 : 0:ミオ、カズヤの首にしめ縄を巻き付ける。 : カズヤ:ミオ! 何を……!? ミオ:動かないでと言ったでしょう? トウマ:カズヤ! キヨシ:だから、動くなって。 トウマ:っく……! : 0:キヨシ、トウマに槍を突きつける。 : キヨシ:形勢逆転、だな。 ミオ:…………。 カズヤ:ミオ、どうして俺にしめ縄を……。 ミオ:……黙って、カズヤ。 トウマ:そうかミオ、やはり君は――。 : トウマ:僕達の裏切り者か(同時に) トキハル:僕らの同志だよ(同時に) : 0:トキハルが現れる。 : カズヤ:お前は……! トキハル:やぁ、九年ぶりだね。会いたかったよ。柿村 一也(かきむら かずや)くん? トウマ:十三月機関、室長。斜子織 時陽(ななこおり ときはる)! トキハル:憶えててくれたんだ。鬼際 柊真(おにぎわ とうま)くん。別段嬉しくは、ないけどね? キヨシ:遅かったじゃねぇか。トキハル。 トキハル:君も随分手ひどくやられたようだけど? キヨシ:すまねぇ、油断した。 トキハル:構わないよ、その為の仕込みだったからね。 キヨシ:ああ、恐れ入ったよ。まさか、こんなところで会えるとはな。ミオ。 トキハル:元気にしてたかい? ミオ:ナナコオリ室長。 トキハル:僕らの間に堅苦しい肩書きは無しだよ、ミオ? ミオ:はい、トキハル。 カズヤ:お、おい、ミオ、なんで……! トキハル:おやぁ? さっき言ったんだけれど、聞こえていなのかな? カズヤ:黙れ! お前になんか聞いてない! 俺はミオに! キヨシ:いい加減現実を受け入れろよな、見苦しいぜハニーズ? カズヤ:うるさい! お前らが言うな! こんなの現実じゃない! 悪い冗談だ! あぁ! そうだ! エイプリルフールはまだ殺し損ねていた! そうか、これは罠だな!? 策略だ! トウマ:カズヤ……。 カズヤ:俺達を疑心暗鬼に陥らせ、仲間割れをさせようって魂胆なんだろ!? 卑怯なやつらだ! ミオ:…………。 カズヤ:何とか言えよ! 言ってくれミオ! 全部嘘なんだろ、裏切ったりなんて! トキハル:くふふふふ。嘘、嘘か。そうだね、君の推測も大凡半分は正しいと言えるだろう、憐れなハニーズ。 キヨシ:はははっ、傑作だなぁトキハル! カズヤ:黙れ! 半分だと? 何を言っている! トキハル:そう声を荒げないでくれ、柿村一也くん。ふふふ、そうだよ。これは君の言うとおり謀略で、罠で、殺し損ねた十一年越しの嘘、悪い冗談なのさ。 カズヤ:嘘? さっきから何を言って―― トウマ:カズヤ、もういい。 カズヤ:トウマ……? ミオ:…………。 トウマ:宗谷恋(そうや れん)、紫鏡晶太(むらさきかがみ しょうた)、姫村凶花(ひめむら きょうか)、葵龍之輔(あおい りゅうのすけ)、如月明日香(きさらぎ あすか)、日暮時雨(ひぐらし しぐれ)、天津白(あまつ しろ)、鶴浜七海(つるはま ななみ)、阪下和佐(さかした かずさ)、雪之下智実(ゆきのした ともみ)。あの日殺した十三月機関のメンバーは十名。 カズヤ:それがなんだって……。 トウマ:そこにいる斜子織 時陽(ななこおり ときはる)、本瓦 喜芳(ほんかわら きよし)の二名を加えた数は。 カズヤ:十二……まさか! トウマ:ミオは、いいや。槇澤 澪(まきざわ みお)は、十三月機関のスパイだ。 カズヤ:な……っ! トキハル:ふふふふふふふ。 カズヤ:嘘だ。嘘だと言ってくれよミオ! ミオ:残念だけど、本当よ。カズヤ。 カズヤ:そんな……っ! ミオ:……それで? いつから気が付いていたの? トウマ:最初から、と言いたいけど、そうだね。毎年、年末が近付くにつれて、その疑惑が高まっていった、といったところかな? ミオ:そう。あなたは随分冷たいのね。トウマ。 トウマ:相棒が熱血馬鹿やってると少しは冷静にもなるよ。君こそ大概冷血だろう? ミオ:酷い言いぐさね。 トウマ:心は痛まないのかい? ミオ:えぇ、痛む。痛むに決まっているでしょう? ずっとずっと、仲間を騙していたんだもの。それに同志も。ええ、それだけじゃない。私は自分の心すらも偽って、痛みを隠してた。新年を迎える度に、その手助けをする度に、2013年を潰し、2014年を摘み取り、2015年を矯めて、2016年を蹴散らし、2017年を焼き払い、2018年を黙殺し、2019年を蹂躙し、2020年を陵辱し、そして2021年を虐待し、2022年を殲滅し、2023年をなます斬りにしている間私はずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと! この心を傷めつけてきた! それも、冷え切った指で冷え切った肌を抓り上げて苛むように、どちらがどんな痛みを感じてどうして悲鳴を上げているのかさえも分からないような、けれど確実に感じるこの痛みに私は心を磨り減らしてきた。そう、私は十三月機関、諜報部の槇澤澪。どちらにとっても裏切り者の冷血動物。私にとっては全てが冷たく、全てが哀しい。だから、私はこの2023年の冬で長きにわたった世界を全て凍結させる。新春なんて訪れさせない。 カズヤ:そんなの……! トウマ:ミオ……。 トキハル:辛い役目を任せて悪かったね、ミオ。 ミオ:トキハル……。 トキハル:けれど、君のおかげで、僕らの悲願が成就する。よくやったね。 ミオ:……いいえ、私の命はこの日のために。 キヨシ:ああ、俺の命もこの日のために、だ。 トキハル:ありがとう、二人とも。 : 0:年末が迫り、世界が震える。 : カズヤ:なっ!? なんだ、世界が震えてるのか!? トキハル:ふふふふふ。さて、そろそろだね。 トオル:時間が、もう……! トキハル:君達は随分頑張って2023年を壊そうとしたみたいだけど、ここにも、そこにも。まだ、2023年は生きている。君達は時の移ろいを、新年を自然の摂理のように言ったけど、誰だって、そう、当事者である2023年さえ、変わりたくないのさ。だから僕らは、その意志を汲み取らなければいけない。僕らは代弁者なんだよ。永続したいという2023年の、ね。 カズヤ:ふざけるな……! トキハル:ふざけるな? ふふ、何を言うのかな。僕らは真剣だよ。 カズヤ:何が真剣だ! ミオ:カズヤ……? カズヤ:真剣に世界と向き合っててまだ、そんな考えなのか?! キヨシ:お前、あまり調子に乗るなよ……! カズヤ:調子に乗ってるのはお前らだろうが! キヨシ:何だと!? カズヤ:代弁者? 違う逆だ! ミオ:逆……? カズヤ:お前らは変わりたくないと願う2023年の意志を代弁しているんじゃない! お前らの変わりたくないという身勝手な願望を2023年に押しつけてるだけなんだ! そんなの、潔いフリして賢いつもりで諦めてるだけだろうが! ミオ:……! トキハル:黙れぇ! 所詮ハニーズ如きに、僕らの、十三月機関の崇高な意志は理解できないっ! カズヤ:そうやって人を見下すことしかやってこなかったやつが偉そうに言うな! 人は変われるんだ! 誰だって! ミオ:変われる……? カズヤ:トオル! そいつを撃て! トオル:カズヤ……?! キヨシ:大人しくしていればつけあがりやがって! ミオ! そいつを殺せ! ミオ:え、で、でも……! キヨシ:何してる! 情でも移ったか? だが安心しろ、どうせ遅いか早いかの違いでしかない。俺達は新年など来させないのだから! カズヤ:早くするんだトオル! トオル:カズヤ、でも、君が! カズヤ:そいつも言っただろう、このままじゃ遅いかどうかだ。俺のことは良い! 撃て! トキハル:ミオ! カズヤ:トオル! キヨシ:死ねぇぇ! トオル:カズヤぁ! ミオ:あぁぁぁ! : 0:キヨシとトオルの攻撃が交錯し爆発が起きる。 : 0:◇ : 0:爆炎に包まれた戦場。 0:やがて煙が晴れると、カズヤが浮かび上がる。 : カズヤ:……けほっけほ……! 無事だった……? っは! 2023年は!? トオルは!? ミオは!? おい! 無事かトオル! : 0:煙の中に、二機の残骸。 0:その傍らに倒れ伏す、トオル。 : トオル:…………。 カズヤ:トオル!? おいしっかりしろトオル! 死ぬな! トオル:……死んで、無いよ……。 カズヤ:トオル……! 良かった! トオル:君こそ無事で何よりだ。 カズヤ:トオル、世界はどうなった!? あの一瞬で何が……? トオル:……! あれを。 カズヤ:あれって……? : 0:トキハル、ミオの手にしたインボイス制度の残骸に突き刺されている。 : トキハル:ミオ……。ごふっ……、これは。イン、ボイス? ミオ:ごめん、なさい……。 トキハル:ふふ、そう、か。君は、変われたんだ、ね。 ミオ:トキハル……! トキハル:いいんだ、ミオ。僕には、いいや、十三月機関の誰もが、変われなかった、死ぬまで、そんな中、君は、変われた。それは、喜ばしいことなのか、哀しいことなのか、僕には、分からない、けれど、大願ではなくとも、これもまた、本望だよ、君に、2023年に、十三月に、インボイスに、ミオに、殺されるなら。 ミオ:待って、行かないで……! ごめんなさいトキハル……! トキハル! トキハル:ふふ、どこにも、行かないよ……いけない、僕らは2012年で、待ってる、か……ら――。 : 0:トキハル、絶命する。 : ミオ:トキハルーーっ! カズヤ:ミオ……。 : 0:カズヤ、ミオの元に近寄ろうとする。 : キヨシ:トキハルを――返せ……ッ!! トオル:……!? : 0:そこへ、羽子板を手にしたキヨシが駆けだしてくる。 : キヨシ:うぁぁぁぁぁぁ! トオル:カズヤ! : 0:トオルがキヨシの攻撃からカズヤを身を呈して庇う。 : カズヤ:え……? トオル:よかっ……た、お前が無事で。 : 0:トオル、絶命。 : キヨシ:は、はは! やった! トキハル! トモヨ! みんな……! 俺は仇を、2023年を――! カズヤ:うぉぉぉぉぉぉっ! キヨシ:う、うぐ、あ、あ、あぁ……! : 0:カズヤ、キヨシをしめ縄でしめて絶命させる。 : カズヤ:はぁ、はぁ、はぁ……! トオル……! トオル……! あ、ぁぁぁぁっ! ミオ:カズヤ……。 カズヤ:……なんだ、ミオか。……お前、まだ生きてたのか。 ミオ:……うん、生きてた。 カズヤ:俺も、生きてた。 ミオ:そう、みたいだね。 カズヤ:俺も殺すか? ミオ:あなたこそ。 カズヤ:……もう、どうでもいいんだ。 ミオ:……そう。 : 0:日が昇り始め、朝日が差し込む。 : ミオ:ねぇ、見て。初日の出。 カズヤ:あぁ、年が明けたのか。 ミオ:綺麗、ね。 カズヤ:……そうだな。 ミオ:命の色ね。 カズヤ:……そうだな。 ミオ:ねぇ、カズヤ。 カズヤ:……何? ミオ:人は、変われると思う? カズヤ:……分からない。 ミオ:……そう。 : 0:間。 : カズヤ:でも、 ミオ:……? カズヤ:ミオは、変われると、思う。 ミオ:……そう。 カズヤ:ああ。 ミオ:だったら私、この2023年を、生きてみるね。 カズヤ:ああ。 ミオ:みんなの分まで。 カズヤ:……ああ。 : ミオ:(N)2024年1月1日。 ミオ:(N)この日、世界は多くの犠牲を払いながらも、新たな年を迎えた。