台本概要

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タイトル ite-ブラックハーツ-
作者名 桜蛇あねり(おうじゃあねり)  (@aneri_writer)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男3、女2) ※兼役あり
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 iteシリーズ第5作目。
”ラスト・ブラック”を使って絶望の王をよみがえらせた、魔族のエルファとレイゲンは自分たちの目的のために、動き出していた。
アイトのラリマーと絶望の王がついに対峙する……。

※世界観を壊さない程度のアドリブ等はOKです。
※絶望の王・ルシアは兼ね役です。

『ite』シリーズ
0.ラスト・ブラック
1.ite-ロジカルハーツ- 桜蛇あねり、天駆ケイとのコラボ台本
2.ite-ドラゴンハーツ- 
3.ite-マーメイドハーツ-
4.ite-デーモンハーツ-
5.ite-ブラックハーツ-
6.ite-ラストハーツ- 【完】

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
エルファ 128 かつて故郷をヒト族に滅ぼされた魔族。故郷を滅ぼした国と、ルシアという少年を生贄とし、"ラスト・ブラック"を発動させた。レイゲンとは夫婦関係。首に、ルシアからもらったペンダントを大切そうにつけている。
レイゲン 69 エルファと同じく、故郷をヒト族に滅ぼされた魔族。エルファのことを何よりも愛し、ずっとそばにいると誓いをたてた。魔法よりも、剣術にたけている。
ラリマー 91 アイトと呼ばれる存在。
セレス 91 ハーツ族と呼ばれる魔族の生き残り。ヒト族と魔族が共存しているウテク村でアクセサリー屋を営んでいる。首にはブルーのペンダントをつけている。
絶望の王 52 黒蛇石の化身。世界を絶望で破壊しようとたくらんでいる。ルシアという少年の肉体を器に、よみがえった。
ルシア 40 (絶望の王と兼ね役)かつて、ヒト族に故郷を滅ぼされた黒族の生き残りの少年。故郷を失ったときに、エルファに拾われ、成人するまで一緒にすごす。エルファを愛していたものの、絶望の王復活のための生贄として命を落とした。腕には、黒い石のブレスレットを大事そうにつけている。 ※最後の幼少期は5歳の設定です。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:ite-ブラックハーツ- : 0:黒族の元集落 レイゲン:いよいよだな。 エルファ:あぁ。この世界以外でも、絶望は少しずつ集まっていた。これで.....黒蛇(くろへび)様が......絶望の王が、蘇るぞ。 レイゲン:長かったな。ようやく、君の願いが叶うのか。 エルファ:願い.....そう、じゃな。 レイゲン:後悔、しているか? エルファ:..........いや。ここまで来たのだ。何も後悔はしていない。 レイゲン:そうか。 0:黒蛇石が光を帯び始める。 エルファ:っ!ついに、ついに絶望の王が...! レイゲン:......っ! 0:光が人の形となり、やがて光はおさまった。 エルファ:.....っ! 絶望の王:あー、ようやくだ。ようやくこの世界で動ける。長い眠りから覚めた気分だ。 エルファ:ルシ、ア.....? 0:白蛇石の祠 セレス:白蛇石(しろへびいし)様、絶望の脅威が...よみがえりつつあります....どうか、どうか、この世界を守る力を...私たちにお与えください....アイト様...。 セレス:....っ!?白蛇石が光って.....! ラリマー:う.......あぁ、ここ、は...。 セレス:っ!!願いが.....届いた.....!アイト様! ラリマー:うお!?ビックリした!.....えっと、君、は? セレス:はじめまして!アイト様!私はセレス、セレス・ブルー・ハーツです! ラリマー:え、あぁ、よ、よろしく。 セレス:よかった、このままだと絶望に染められてしまうところでした。 ラリマー:絶望....?えーっと、ちょっとタンマ。1回俺の中の情報を整理させてくれ。 セレス:あぁ、ごめんなさい、つい焦ってしまいました。じゃあ一つ一つ、聞いていきましょう。まず、あなたのお名前は? ラリマー:え?えーと....ラリマー。 セレス:ラリマー、ですね。じゃああなたの役目は? ラリマー:俺は......アイト。世界に脅威がおとずれたとき、その脅威から世界を護る存在。 セレス:はい。それじゃあ次の質問。........他の世界の記憶はありますか? ラリマー:他の......?.........いや、ないな。今俺の中にあるのは、俺の、アイトとしての使命だけだ。 セレス:はい、わかりました。....どう?頭の整理はできた? ラリマー:あぁ、ありがとう。 セレス:それじゃあラリマー、私の住む集落に案内します。そこで私たちとともに、希望の力を蓄え、絶望に打ち勝つための準備をしましょう! 0:魔族とヒト族の集落 セレス:ここは魔族とヒト族が共に力を合わせて暮らしている集落、ウテク村。この世界では、魔族とヒト族は互いに憎みあい、対立し、戦争がたえないの。そんな中、魔族とヒト族が協力しあって、共に生きていきたいと考える人たちが集まって、この集落を作ったのよ。 ラリマー:戦争、か。 セレス:えぇ。各地の魔族とヒト族の戦争で、この世界の白蛇石はだんだん弱ってきていて......封印されている黒蛇石の力がどんどん強くなっていった。.......たぶん、もう黒蛇の力は目覚めているはず。 ラリマー:........戦争を、 セレス:ん? ラリマー:戦争を止めるにはどうすればいいと思う?......対立する2つの勢力を、和解させるには、どうすればいいと思う? セレス:え?ラリマー? ラリマー:.......あー、いや、なんだ、今の....悪い、何でもねぇ.. セレス:相手を理解し、許すこと、かな。 ラリマー:え? セレス:お互いにぶつかり合ってる信念をしっかり理解して、受け入れて、相手を許す....そうやっていけば、いずれは和解できるんじゃないかな。 ラリマー:それが難しいから、戦争が起こるんだろ? セレス:それでも、私は諦めずにそうする。何度排除されようとしたって。殺されかけても、滅ぼされても、私はずっと許し続けたい。......だから、強くならなきゃって思うの。 ラリマー:石頭、だな。 セレス:よく言われる。......ラリマー、着いたよ。ここが私の家。 ラリマー:........アクセサリーの店? セレス:私はここで石を使ったアクセサリーを作ってるの。 ラリマー:そういえば、セレスのそのペンダント。ずっと気になってたんだけど、それも君が? セレス:えぇ。綺麗なブルーでしょ?私はね、ハーツ族という魔族の生き残りでね。 ラリマー:ハーツ族? セレス:うん。ハーツ族って言うのは、感情や記憶、思考とかを操る魔法に長けている種族なの。そして私は、その魔力を石にこめることのできる術を持っている。 セレス:たとえば私のこのペンダント。ここには、私の穏やかに過ごしたいっていう強い気持ちが込められている。そして、感情が高ぶってしまった時はこの石の力が発動して......感情を抑えることができるの。 ラリマー:なるほど。それは面白いな。 セレス:他にもいろんなことができるんだけど、私はまだまだ未熟だから、あんまり強い効果のものや複雑なものは作れないのよね。 ラリマー:そうだ、さっきハーツ族の生き残り、と言っていたな。.......仲間は? セレス:ハーツ族はね、50年前にヒト族に滅ぼされた。 ラリマー:は!?ヒト族に!? セレス:うん。私はなんとかその戦火を生き延びたんだけど、ね......。 ラリマー:......ヒト族を恨んでいないのか。 セレス:ふふ、言ったじゃん。私はたとえ何があろうと、受け入れて許すって。それに、生き延びて、瀕死の状態になっていた私を助けてくれたのは、ここにいるヒト族だったから。 ラリマー:そう、か。......君は強いな。 セレス:私はただ、種族関係なく平和に生きたいだけだよ。........たぶんだけどね、ハーツ族の生き残りはまだいる。 ラリマー:どういうことだ? セレス:あの日....魔族の中でも高い魔力と強力な魔法が使えると言われていたハーツ族が滅んだ理由...。その日に限ってね、ハーツ族の中でもトップの魔力を持つ仲間が集落にはいなかったの。......外の国へ出稼ぎに行ってて。偶然なのか、それを狙って攻め入ったのかはわからないけれど。 ラリマー:だから、その仲間が生きている可能性がある、と。 セレス:うん。私はここで生活しながら、その仲間を探していたのだけれど.......。 ラリマー:何か、あったのか? セレス:......ついこの間。私たちの故郷を襲ったヒト族の国が滅ぼされた。 ラリマー:それって......まさか......。 セレス:確証はないけど、その仲間はたぶん......黒蛇石側について、この世界を壊そうとしている。.......絶望の力で、この世界....いや、全ての世界を。 ラリマー:........全ての世界、か。それはかなりヤバい、な。かつてない大災厄だ。 セレス:ラリマー。私も全力であなたをサポートする。私ももっと強くなるから、だから......!全ての世界を一緒に救いましょう! 0:黒族の集落 絶望の王:ルシア?それはなんだ。 エルファ:っ!それ、は.... レイゲン:あなたを蘇らせるために犠牲となった器の者の名前ですね。この世界に留まるためのあなたの肉体は、そのルシアという少年のもの。黒族の生き残りであり、多くの魔力を持っていた少年だったので、なじむかと。 絶望の王:なるほどな。そうだな、すごく動きやすい。.....そうか、ルシア、と言うのか。ならば、俺もそう名乗ろう。 レイゲン:わかりました。ルシア様。 絶望の王:ところで、お前の名前は。なんだ。 レイゲン:レイゲン・クリア・ハーツと申します。レイゲン、とお呼びください。 絶望の王:レイゲンか、よろしくな。.....さて、エルファ。 エルファ:......なんじゃ、ル.....王。 絶望の王:よく俺を蘇らせてくれた。礼を言う。 エルファ:.....わしと....いや、わしの願いのためじゃ。わしらの全てを奪った、ヒト族を根絶やしにするために.....! 絶望の王:はっはぁ!もちろんだ!この世界に絶望を!絶望で全てを焼きつくそう.....この世界は俺たちの物だ。 エルファ:.......まずは白蛇石を破壊せねばなるまい。 絶望の王:そうだなぁ。どこにあるのかはわかってんのか? エルファ:あぁ。すぐにでも行ける。 絶望の王:ふぅむ。すぐに破壊したいが...まだ目覚めたばかりで魔力の使い方がなじんでいない。少し時間をもらおうか。 エルファ:わかった。ではその間、わしらもやれることを..... 絶望の王:っ!おい、エルファ。 エルファ:なんじゃ?何をそんなに... 絶望の王:お前から、何か嫌な感じがする.....俺の嫌う.....何かが.... エルファ:王? 絶望の王:これだ!この石!この透明な石は......絶望とは真逆の何かが... エルファ:っ!これは....このペンダントは... 絶望の王:エルファ、それをよこせ。破壊する。 エルファ:ダメじゃ!(絶望の王の手を払う) 絶望の王:あ?てめぇ、何を。 エルファ:これは.....これはダメじゃ....たのむ、壊さないでくれ。 絶望の王:俺が壊すと言ってるんだ。逆らうな、エルファ。 エルファ:っ! レイゲン:ルシア様。すまないが、許してやってくれませんか。彼女にとって、このペンダントはとても大事なものなのです。嫌な気がするというのであれば、視界に入れないようにしますので。.....エルファ、それをしまうんだ。 エルファ:あ、あぁ...。 絶望の王:ふん。次にそれを見たら問答無用で壊す。.......俺は少し眠る。準備を進めておけ。 レイゲン:わかりました。 0:(絶望の王は去っていく) エルファ:.....レイゲン、ありがとう。 レイゲン:気をつけろよ。 エルファ:いつもお前には助けられてばかりだな。 レイゲン:100年前、君に全てを捧げると誓ったんだ。何があっても、俺は君の味方だ。 エルファ:100年....。もうそんなに経ったのか。 レイゲン:あぁ。特に、俺らの故郷が滅ぼされてからはさらに時の流れが早くなったように思う。 エルファ:そう、じゃの....。あれは、50年ほど前じゃったか。思えば、全てはあの日から始まった...。 0:回想 エルファ:(M)50年前。わしら夫婦は、一族が住む集落で、小さな魔道具店を営んでいた。その日は、隣の国へと店を出しに行った日だった。なかなかの売上で、わしらは上機嫌で集落に帰り.....そこで、変わり果てた故郷の姿を目の当たりにしたのであった。 レイゲン:こ、これはっ!? エルファ:故郷が!燃えて!?っ!お父様!お母様! レイゲン:誰か!誰かいないのか! 0:間 エルファ:あ......あ......そん、な......。 レイゲン:誰も......いない......。 エルファ:こんなこと......一体何が......。 レイゲン:エルファ。 エルファ:なんじゃ........。 レイゲン:街の中心に。 エルファ:っ!これは、この旗は.......。 レイゲン:たしかこの国章は......ヴェント国......ヒト族の国だな。 エルファ:そうか........ヒト族が我らの故郷を........許さぬ。......許さぬっ!!わしらが何をしたっ!?なぜこのようなことができるっ! レイゲン:エルファ....。 エルファ:許さぬ。必ずヒト族の国を......いや、ヒト族を......根絶やしにしてやる。必ず、必ず........たとえこの身を犠牲にしてでも。全て滅ぼしてやる。 : エルファ:(M)故郷を滅ぼされ、憎しみと絶望に打ちひしがれていた時だった。わしの頭の中に声が響いてきた。 絶望の王:憎いか。 エルファ:憎い。 絶望の王:絶望を、ヤツらにも与えたいか。 エルファ:あぁ。わしらの絶望よりも、もっと深い絶望を。 絶望の王:いいだろう。ならば共にこの世界を絶望で染めよう。 エルファ:........お主は? 絶望の王:おっと、ようやく俺の存在に気づいたか。俺は絶望の王、黒蛇石に宿る絶望だ。 エルファ:絶望…。黒蛇石…。 絶望の王:この世界にあるのは、希望と創造の石、白蛇石だけじゃねぇ。絶望と破壊の石、黒蛇石というのも存在する。だが、昔、絶望と破壊を恐れた人々は、俺を....黒蛇石を封印した。 エルファ:絶望と破壊の石、か。良い響きだな。 絶望の王:だろ?だからさ、お前に封印を解いて欲しいんだ。......そうだ、お前、名前は? エルファ:エルファ。エルファ・クリア・ハーツ。 絶望の王:エルファか。よし、じゃあエルファ。お前の望む絶望と破壊をくれてやる。だから、俺の封印を解いてくれ。 エルファ:わかった。力をかそう。ヒト族に........我らから奪ったヒト族に......絶望を......っ!!絶望をっ!!! レイゲン:エルファ! エルファ:っ!レイ、ゲン。 レイゲン:大丈夫か、何と話していた? エルファ:お前には聞こえなかったか。黒蛇石が......封印をとけ、と。 レイゲン:黒蛇石、か。 エルファ:レイゲン。わしはヒト族を滅ぼす。何を犠牲にしてでも。おそらく、長く苦しい旅になると思う。........付いて、くるか? レイゲン:当たり前だ。50年前、君と苦楽を全て共にすると、誓いを立てたはずだが。 エルファ:ありがとう、レイゲン。ヒト族を絶望の底へたたき落としてやる......! 0:回想終了 レイゲン:......ファ、エルファ。 エルファ:ん......。 レイゲン:どうした、エルファ。疲れているのか? エルファ:......いや、昔のことを思い出していただけじゃ。 レイゲン:そうか。......あぁそうだ、エルファ、これは返しておこう。 エルファ:記憶のストーンチャーム......。そうじゃ、お前に預けておったな。受け取ろう。........。(ストーンチャームをペンダントにつける) レイゲン:そこに......そのペンダントにつけるのか。 エルファ:ここにあるべき物じゃ。......さて、王が眠りについている間、準備を整えよう。 レイゲン:あぁ。 0:3ヶ月後、ウテク村 セレス:ラリマー!ご飯できたよー! ラリマー:おう、セレス。今行く!はい、これ、今日の収穫分な。 セレス:わぁ!こんなに沢山!これでしばらく鉱石採掘に行かなくても済みそうね。 ラリマー:ここにきて3ヶ月。俺ももうすっかり採掘師になっちまったな。 セレス:おかげさまで、この店も安定しているわ。 ラリマー:........このまま何もなく、こうやって過ごしていきたいな。 セレス:......ラリマー。それは私もそうでありたい。でも、 ラリマー:わかってるよ。俺がこの世界にいる限り、災厄は避けて通れない。黒蛇石も、俺と同じように力を蓄えているんだろうな。 セレス:そうね。ラリマーも黒蛇の力も、この世界に生まれてすぐは身体がなじまず100%の力を発揮することはできない。だから少しの間はこの世界ですごし、力の使い方を身につけていく。.......3ヶ月はその力の使い方を身につけるのには充分な期間。 ラリマー:そろそろ、だな。 セレス:......えぇ。何があってもすぐ対処できるようにしておかないと。 ラリマー:..........。 セレス:ラリマー?どうしたの? ラリマー:世界の脅威がなくなれば、俺はまた......いや....なんでもない。 セレス:怖い? ラリマー:いや、怖くないさ。必ずこの世界を脅威から.... セレス:違う。 ラリマー:え? セレス:この世界からいなくなって、この世界の記憶を失ってしまうのが......怖い? ラリマー:っ! セレス:たとえラリマーがここの記憶を失ったとしても、私はずっとあなたの事を覚えてるわ。 ラリマー:セレス........。 セレス:記憶を失うことには意味があるの。ラリマー、あのね...... : 絶望の王:絶望よ降り注げ、ブラック・メテオ! : ラリマー:!? セレス:黒い炎っ!! レイゲン:はぁぁぁぁっ!!!(セレスに斬りかかる) ラリマー:セレス、危ないっ!フレイムソードっ!(受け止める) レイゲン:さすがはアイトの騎士。このレイゲンの剣をよく受け止めた。 ラリマー:お前はっ! セレス:レイゲンさん!? レイゲン:おや、見かけたような面影があると思ったが......セレス、君だったのか。 セレス:やはりあなたは......黒蛇石についたのですね....。となると、あの方も....。 エルファ:まさか、わしら以外にハーツ族の生き残りがいたとはな、セレス。 セレス:........エルファ師匠。 エルファ:こんなところで何をしておる。ここはヒト族がおる村じゃ。憎むべきヒト族が。 セレス:私はヒト族と共に生きることを選びました。たとえお師匠であろうと、この村を壊すのは許しませんっ!!包め!アクア・ホルトス! セレス:(セレスの水の魔法で村の炎を鎮火させる) ラリマー:村の炎が消えた! セレス:私はこの村を、ヒト族を、この世界をまもる。だから強くなってきたの。 エルファ:ほぉ。さすがじゃの。これ程までに魔力を高めたか。じゃが......わしらには勝てん。終焉を。ブラック・トニトルス。 エルファ:(黒い稲妻がラリマーとセレスを襲う) ラリマー:がっ!ぐあああああっ! セレス:ああぁぁぁぁっ!!! 絶望の王:なんだ、そいつがアイトか。 ラリマー:ぐっ......お前、は....。 絶望の王:よう、雑魚。この程度の攻撃でくたばっているようじゃ、世界どころかこの村すらまもれねぇぜ。そこで這いつくばりながら世界が絶望に染っていくのを眺めているがいい。 エルファ:白蛇石はこの村の地下にある。破壊しにゆくぞ。 絶望の王:よし、エルファ案内しろ。 エルファ:レイゲン、ここの掃除は任せるぞ。 レイゲン:わかった。 セレス:させないっ!凍れ!グラシア・バレット!(氷の弾丸を撃つ) レイゲン:甘いっ!(全てはじき返す) セレス:やはり剣術にたけたあなたには効かないわね....っ! ラリマー:白蛇石のところにはいかせねぇ!フレイム・ガーデン! レイゲン:ぐっ! エルファ:邪魔を....。 絶望の王:ブラック・フレイム! ラリマー:っ!相殺された! 絶望の王:わずらわしい......先にこっちから壊してやろう。 ラリマー:お前の復活はこの世界だけじゃない、他の世界まで影響を及ぼしてしまう。そうなる前に、お前を倒すっ!フレイム・ソード! 絶望の王:雑魚ごときに俺が相手するまでもない。エルファ、レイゲン、やれ。 レイゲン:かしこまりました。......まとえ、ブラック・ソード。 エルファ:仕方ないのう。相手をしてやろう、セレス。同胞を討つのは少々気が引けるが......これも魔族だけの世界を創造するためじゃ。 セレス:師匠。あなたの考えは変わらないのですか。魔族とヒト族はわかりあえます。共に助け合って生きようとは思わないのですか。 エルファ:愚問じゃな。白蛇石の恩恵を拒み、魔法を禁忌とするヒト族なぞ......この世界にはいらぬ。そしてそのヒト族と共に過ごす魔族......お主もな。 セレス:........強い意志ですね。あなたらしい。それならば、私がやることはひとつ。........世界の脅威であるあなたを、とめるのみ!襲撃せよ!ホーリー・アクア! エルファ:わしはもう....戻れぬのじゃ。....守れ、サクスム! ラリマー:うおおおお! レイゲン:はぁっ!(剣と剣がぶつかり合う) ラリマー:どうして黒蛇石に力を貸すんだ!あれは、この世界を絶望に落とし破壊しようとしてるんだぞ! レイゲン:だからなんだ? ラリマー:なっ!? レイゲン:正直俺は、世界のことはどうでもいい。ルシア様がこの世界を破壊しようが、貴様がこの世界を守ろうが、俺にとってはどうでもいいんだ。 ラリマー:じゃあなんで剣を振るうんだよ!絶望の力をまとわせて! レイゲン:エルファがそうしたいから、俺は剣を振るう。 ラリマー:はぁ? レイゲン:俺の剣は、俺の命は、全てエルファの為にあるんだ。彼女を護り、彼女の願いを叶えるのが俺の役目。 ラリマー:んだよ、それ....! レイゲン:ふん、誰かを愛する気持ちを持たない貴様にはわかるまい。ただ、愛する気持ちだけで振るう剣は......何よりも強いぞ!はぁぁぁっ!! ラリマー:ぐあっ!?くそっ、体勢がっ!? レイゲン:さらばだ、アイトよ。(ラリマーを斬る) ラリマー:ぐぁぁぁぁぁっ!!! セレス:っ!ラリマーっ!! エルファ:他を気にかけている場合か?捕らえろ、ブラック・メイデン。 セレス:いやぁぁぁぁぁっ!! 絶望の王:終わったか? ラリマー:く.....そ......っ!俺は、こんなとこでくたばるわけには......っ! セレス:......癒しの...魔法、を......うっ....! 絶望の王:なんだ、まだ息があるじゃねぇか。さっさとトドメさせ。 レイゲン:はっ。........これで終わりだ。 ラリマー:くそっ......! セレス:ラリマーっ!諦めないで!私はまだ、闘える....っ! ラリマー:セレ、ス...... エルファ:っ!レイゲン!引け! レイゲン:っ! セレス:愛する世界のために、愛する人のためにっ!照らせ!ルークス・アイト! ラリマー:っ!セレスのペンダントが....! レイゲン:ぐあっ! エルファ:レイゲン!守れ、ブラック・シールド! セレス:私の願いを、愛を、感謝を......全てこの石に込めてある。希望の魔法、これであなたたちを止めるわ! 絶望の王:がっ!この魔法!くそっ、強い....っ!! セレス:はぁ、はぁ......。 絶望の王:よくも......よくもこんな魔法を...っ!! エルファ:レイゲン、無事か? レイゲン:あぁ、大丈夫だ。 ラリマー:セレス!......大丈夫? セレス:えぇ。ずっと、ずっとこの日のために毎日祈りを捧げながら、力を蓄えてたの。......さぁ、ラリマー。一緒に彼らを止めましょう。 ラリマー:あぁ! エルファ:レイゲン、構えろ、来るぞ!王をまもる! レイゲン:わかった、まとえ、ブラック.... 絶望の王:足りない。 エルファ:王....? 絶望の王:絶望の力が、まだ足りないっ!うおおおおおっ!!! ラリマー:ぐあっ!?黒い炎がっ!! セレス:くっ!身体が......重い.....! 絶望の王:絶望を!絶望をっ! エルファ:王、落ち着け、まだわしらは負けておらぬ、さらなる魔法で...... 絶望の王:お前の絶望をよこせぇぇ!エルファぁぁぁ!!!(絶望の王がエルファに切りかかる) エルファ:っ! レイゲン:エルファっ! 0:(絶望の王の鋭い爪が、レイゲンの身体をつらぬく) レイゲン:がっ........ぁ........。 エルファ:レイ......ゲン...... 絶望の王:よくぞエルファを守った、レイゲン。さぁ、エルファの絶望を引き出すために、その命を捧げてくれ。 エルファ:レイゲン!そんなっ!!やめろ、殺すな!やめろっ!! レイゲン:........エルファ、 絶望の王:じゃあな、レイゲン。 レイゲン:愛している…。 0:(絶望の王の手がレイゲンを切り裂いた) エルファ:あああぁぁぁぁぁっっっ!!!! セレス:なんて.....ことを...... ラリマー:仲間じゃ、ねぇのかよ...... エルファ:あ......あ......レイゲン、レイゲン....っ!! 絶望の王:エルファ、その絶望を俺の中によこせ。 エルファ:レイゲン....レイ、ゲン......。 セレス:ダメ!師匠!!エルファ!!気を確かに!!......うっ、黒い炎が強くなって....! ラリマー:炎の中に取り込まれ始めてる!おい!しっかりしろ!! 絶望の王:無駄だ。さぁ、俺の絶望の糧となってもらおう。......ラスト・ブラック。 0:(黒い炎がさらに広がっていく) セレス:ああぁっ!!なに、この絶望の力......だめ.....動けない...... ラリマー:押しつぶされる......っ!くそ、くそっ!くる、しい...... 絶望の王:はははははっ!!終わりだ!!これで!この世界も、他の世界も!俺のものだ!!!! ラリマー:く......そ..........。 0:間 エルファ:レイゲン、すまぬ。わしの人生に付き合わせてしまったが故に、命を落としてしまった。......わしもすぐそちらへ行く。 エルファ:....あぁ、苦しい、辛い。炎に焼かれて熱いのに、心の奥底は凍りつくように冷たい。その温度差に、息が出来なくなる。あぁ、絶望の炎に焼かれるのはこんなにも苦しいのだな、ルシア。お主はこの苦しみの中で悶えながらも、最後までわしの事を見ておった。........ルシア、叶うことならもう一度......もう一度お主に会いたい。........ルシア。 ルシア:.........ファ、エルファ!起きて!眠ったらダメだ!エルファ! (絶望の王と兼ね役) エルファ:ルシ、ア? ルシア:起きて、エルファ。取り込まれちゃダメだ。 エルファ:!?ルシア、ルシア!!お主なのか!! ルシア:久しぶりだね、エルファ。 エルファ:ルシア......。あぁ、ルシア.....。すまぬ......わしは、わしは......っ!お主をっ!絶望で!あ、あぁ......! ルシア:落ち着いて、エルファ。ちゃんと聞いてるから。大丈夫だよ。僕はここにいる。 エルファ:.......ルシア。わしを恨んではおらぬのか。 ルシア:うん。恨んでいない。........確かに、あの日、絶望の炎に焼かれた時は、エルファに裏切られたって思ってすごく悲しかったけどね。でもね、今の僕は、ちゃんと全部わかってる。わかってるよ、エルファ。 エルファ:ルシア、もしや記憶が......? ルシア:僕があげたペンダント。ずっと大切に持っててくれたんだね。僕はずっと、そこにいた。絶望の王に壊されそうになっても、必死に守ってくれた。あれ、すごく嬉しかったんだ。 エルファ:それほどまでに、お主の気持ちがこもっていた、ということか。 ルシア:そうだよ。それに、僕はあなたに告げたはずだ。僕の気持ちはずっと変わらないって。あの時から僕の気持ちは変わらない。 エルファ:ルシア......。 ルシア:聞いて、エルファ。今、絶望の王はこの世界だけじゃなく、他の世界までも破壊しようとしてる。このままじゃ、ヒト族だけじゃない。魔族も含めた全ての種族が滅んでしまうことになる。......エルファ、あなたの本当の気持ちを聞かせて欲しい。 エルファ:本当の気持ち....? ルシア:エルファは、ヒト族と魔族、他の種族も対等に平和に暮らせる世界を、のぞんでる? エルファ:っ! ルシア:本音を聞かせて欲しい。後戻り出来ないとか、絶望をよみがえらせてしまったとか、そういう事は考えないで、あなたが本当はどうしたかったのか。 エルファ:わし、は.....。 ルシア:僕はあなたの優しさを知ってしまった。あのヴェント王国を滅ぼしたのだって........ エルファ:ルシア。 ルシア:なに、エルファ。 エルファ:わしはヒトが好きじゃ。魔族もヒト族も関係なく、平和でありたいと願っていた。..........それを壊したのはヒト族じゃ。ヒト族とともに生きたいと願うわしの気持ちを壊したのは......ヒト族じゃ。 ルシア:うん。 エルファ:じゃが…本当は......こんな復讐なんてしたくなかった。黒蛇石にとらわれてしまってからは、もう後にひけず......ここまできてしまった。何度も何度も、ここで復讐をやめて、レイゲンと......穏やかな日常を過ごそうかと思った。......お主と過ごしているときも、何度思ったことか。 ルシア:その気持ちをしっかり持って。絶望に対抗できるのは、希望の力だよ、エルファ。 エルファ:希望の力......? ルシア:誰かを愛する気持ち、平和を望む気持ち、日々を大切にする気持ち。それらは全て希望の力になる。それがあれば、この絶望の力は止められる。 エルファ:絶望を、止める.....。 ルシア:エルファ、これは僕たちがはじめてしまった災厄だ。だから、僕たちで終わらせよう。 エルファ:共に背負ってくれるのか、ルシア。 ルシア:もちろんだよ。僕はあなたに救われた。あの日、なにがあっても、あなたの側で、あなたの力になると、決意したんだ。 エルファ:わかった、ルシア。共にこの絶望を終わらせよう。 ルシア:うん........でもね、エルファ。一つだけ、言っておかなきゃいけないことがあるんだ。 エルファ:なんじゃ、ルシア。 ルシア:すでにエルファは絶望の王の中に取り込まれて、そこに希望の力を使うと、肉体はもう持たないと思う。 エルファ:そう、か。それは仕方ない。 ルシア:それで......肉体から離れた精神は......あてもなくさまよい続けてしまうんだ。どこにもいけず、ひたすら。 エルファ:わかった。受け入れよう。それが運命なのならば。 ルシア:エルファ......。僕が導ければいいんだけど、僕の肉体はまだここにある。僕は......エルファとは一緒に行けない。 エルファ:..........。そうか。わかった。 ルシア:......あなたにツラい思いをさせたくない......。だけど...... レイゲン:安心しろ、俺が彼女を連れていく。 エルファ:っ!レイゲン! ルシア:レイゲン、さん....。 レイゲン:ひさしいな、小僧。 ルシア:えぇ、お久しぶりですね。あなたもここに来られるとは。 レイゲン:100年前、ずっとエルファのそばにいると誓った身。たとえ肉体が壊されようと、俺はエルファのそばにいるさ。 ルシア:はは、100年、かぁ。それは敵わないや。 エルファ:レイゲン.....。 レイゲン:大丈夫だ。エルファは1人にはさせない。 ルシア:エルファ。本当に罪な人だね、あなたは。でもこれで安心できる。レイゲンさん、よろしくお願いしますね。 レイゲン:あぁ。 ルシア:エルファ。こっちに。 エルファ:あ、あぁ。 ルシア:両手を。僕と重ねて。 エルファ:.......。 ルシア:覚えてる?あなたと2人で作った、あの魔法。 エルファ:忘れるものか。 ルシア:よかった。......ねぇ、エルファ。最後に、一つだけ僕の ワガママ、許して欲しい。 エルファ:ワガマ......んっ! 0:(ルシアはエルファにキスをする) ルシア:........ごめんなさい。でも、最後に確かめておきたくて。あの時と......同じだ。優しい、愛の味だ。 レイゲン:ほう、この俺の前で大胆なことをするんだな、小僧。 ルシア:へへ、許してくださいよ。僕はもう........会えなくなるんですから。 エルファ:ルシア.....。 ルシア:さぁ、エルファ。始めるよ。想像して。魔族とヒト族が笑いあって平和に過ごす世界を!希望を! エルファ:あぁ......っ! ルシア:大地よ、海よ、大空よ! エルファ:我らの希望を糧とし、この世界をまもりたまえ! : ルシア:ディレ・マギア(二人同時に) エルファ:ディレ・マギア(二人同時に) : ルシア:さよなら、エルファ。 0:間 ラリマー:このまま....世界は絶望におちていくのか........仕方、ないよな。こんなにも強力な力なんだ........俺には......無理、だ.......。 セレス:ラリマー........あなたが希望を捨てちゃだめ......。 ラリマー:............。 セレス:お願い、ラリマー........っ! 0:ラリマーの頭に誰かの声が響く。 ラリマー:........っ?なん、だ......?何か、声が........?セレスの声じゃない.......でもなんだ、聞き覚えのあるような、懐かしい、ような......。なんて言ってる........諦めるな......? 0:絶望の王を光がつつみ始める 絶望の王:ぐ...っ!?ぐあああああっ!! ラリマー:な、なんだ!? セレス:これは......希望の魔法.....? 絶望の王:なぜ邪魔をする、エルファ!この世界の破壊は貴様の願いなのではないか! エルファ:すまぬな、絶望の王。わしの中の絶望よりも.......わしを包む希望の方が大きすぎたようじゃ。 絶望の王:裏切ったな、貴様ぁぁぁ!!! エルファ:気づくのが遅すぎた......もっと早くから、お前たちの愛をしっかり受け止めていれば......違う未来があったのかもしれんな......。絶望の王、貴様はわしが、わしらが倒す!再び石となり、眠るがいい! 絶望の王:ちっ!こいつの肉体が滅んでしまえばこの魔法から逃れられる!焼き付くしてやるっ!!絶望を!ブラック・フレイム! エルファ:もう絶望には負けぬっ!クリア・フレイム! 0:ふたつの炎がぶつかり合う セレス:師匠!私も力をかします! エルファ:頼む。わしのことはいい、全力で放て。 セレス:はい!ブルー・フレイム! 絶望の王:ぐっ.....!負けない、俺は負けないっ!! エルファ:くっ....! セレス:あぁ....っ! ラリマー:負けるなっ!うおおおおぉ!ロード・フレイム! セレス:ラリマー! ラリマー:悪い、弱気になってた。もう諦めない。セレス、一緒に絶望に勝つぞ! セレス:うんっ! 絶望の王:があああっ!!! 0:3人の炎が絶望の王を焼き尽くす。 ラリマー:黒い炎が消えた! セレス:これで......。はっ!師匠!? ラリマー:っ!肉体が......持たなかったか....。なにか癒しの魔法で.... エルファ:よい。元よりそのつもりじゃった。当然の報いじゃ。 セレス:そんな.....師匠....エルファ師匠....。 エルファ:セレス。そして、アイトの....ラリマー。この魔法でも、絶望の王は完全には倒せなかったようじゃ。......じゃが、確実に力は弱まっておる。すまぬが、あとは頼んだぞ....。 セレス:師匠......。わかり、ました。必ず私たちで絶望を封印します。 ラリマー:あぁ、必ずだ。約束する。 エルファ:すまなかった........。セレス。お主に最後にひとつだけ、伝えておく。 セレス:はい。なんでしょうか、師匠。 エルファ:お主は大切に想う者、愛している者の手を離すでないぞ。.......黒と白、正反対のものは、対立し合うが故に惹かれ合う。........悔いのないようにの。 セレス:..........はい。 エルファ:さらば......(優しく微笑み、消滅していく) 絶望の王:くそっ......力が......絶望の力が......っ! ラリマー:今だ!フレイム・ソード! 絶望の王:ちっ! ラリマー:避けられたか....! 絶望の王:分が悪い。1度黒蛇石に戻るとしよう....。アイトよ、必ず俺はお前を破壊してやるからな。 ラリマー:待てっ! セレス:ラリマー、待って。今は追いかけるべきじゃない。 ラリマー:でも....! セレス:ダメージが大きすぎる。あなたも私も、この村も。 ラリマー:っ!わかった。 セレス:万全の態勢で挑みましょう。あの様子だと、しばらくは力を戻さないだろうから。 ラリマー:あぁ。次は必ず、封印する。......俺たちの力でな。 0:回想シーン エルファ:(M)15年前。黒族の集落の近く。 : エルファ:この辺は、黒族の集落。ラスト・ブラック発動のためには絶望が必要じゃ。絶望を扱う魔法に特化している黒族なら、何か知っておるかもしれん。 レイゲン:なるほどな。にしても、さすが黒族と言うべきか......この辺りの森の木々も枯れ果て......不気味なところだな。 エルファ:うぅむ......ここまで生気の無い集落じゃったかの.....?........なにか嫌な予感がする。 レイゲン:エルファ? 0:集落の方から、凄まじい黒い炎があがる。 エルファ:っ!あれはなんじゃ!? 0:エルファ走り出す レイゲン:あ、待て、エルファ! 0:間 エルファ:これ、は......。黒族とヒト族....?みな死んでおる.....。しかし、この力は一体.......。っ!あそこに誰かが......。 ルシア:(幼少期)あぁ....あああっ!! エルファ:子ども!?あの子から凄まじいまでの魔力が....っ!この辺りを全て焼き尽くしたのも、あの子が....? ルシア:(幼少期)うあああっ! エルファ:いかん、これ以上魔力を放出させてしまったら精神共々壊れてしまう!おい、よせ、落ち着くんじゃ! ルシア:(幼少期)つらい、くるしい、かなしい....。どうしてっ!僕らは何も悪いことしていないのにっ!やめろっ!やめろっ!僕から奪わないでくれっ! エルファ:落ち着け!大丈夫じゃ、もうお主を殺そうとしているものはおらぬ!落ち着くのじゃ。 ルシア:(幼少期)憎い、憎い、憎い!僕から全てを奪ったヤツらを!!1人残らず滅ぼしてやる!!!たとえこの身を犠牲にしたとしてもっ!!!僕は....ヤツらを....滅ぼ......す....(気を失う) エルファ:気を、失ったか....。この齢にしてこの魔力....そして憎しみ....。 レイゲン:エルファ!......その子、は?この炎はその子のものか? エルファ:あぁ。全てこの子の魔力じゃろう。 レイゲン:そうか。エルファ、あっちにこの旗が。 エルファ:......ヴェント王国。 レイゲン:あの国は魔族の殲滅を図っているようだな。 エルファ:この子の憎しみは、わしと同じ。......この身を犠牲にしても、か。 レイゲン:その子を連れていくのか? エルファ:あぁ。......レイゲン、頼みがある。わしはこの子を成人するまで育て上げる。ラストブラック発動の生贄としてな。お前は......あの国、ヴェント王国で国民の信頼を築いてくれ。.....血反吐を吐くような思いをするじゃろうが......それが一番、この魔法を発動させるのに効果的じゃ。最大の絶望を持って、あの国を滅ぼし、絶望の王をよみがえらせる。 レイゲン:わかった。君の望みなら、俺は叶えよう。 エルファ:ありがとう。....レイゲン、これを。 レイゲン:これは...。 エルファ:記憶のストーンチャーム。この子の記憶をその中に閉じ込めておる。この子が目を覚ました時、黒族であることや、ヒト族への憎しみは忘れておるじゃろう。......それは絶望への妨げとなってしまう。 レイゲン:エルファ、君が今からやろうとしていることは、君にとってもつらいものになる。それでも、やるんだな? エルファ:あぁ。もう、後戻りはしない。この子のためにも。必ずヒト族を殲滅させる......! レイゲン:わかった。ならば俺は君に従うまでだ。さぁ、行こうか。いろいろと準備をせねばなるまい。 エルファ:あぁ......始めよう。絶望の儀式を......! 0:ウテク村 セレス:...........。 ラリマー:セレス、ここにいたのか。......それは、2人のお墓? セレス:うん。レイゲンさんと、エルファ師匠の。 ラリマー:君の師匠だったんだね。 セレス:師匠はハーツ族いちの魔法使いだった。特に、記憶、感情、精神をこうやって石の力にしたり、結晶化したりできる。 ラリマー:それは......彼女が着けていたペンダント?......チャームみたいなのもついてるな。 セレス:ここにね、エルファ師匠とレイゲンさんの記憶....そしてもう1人の想いと封印された記憶があった。 ラリマー:わかるの? セレス:エルファ師匠のもとで修行してたからね。石に込められた想いや記憶を読み取るくらい、私にもできるわ。 ラリマー:そうか。なにかわかった? セレス:......彼らのためにも、絶望の王を止めなきゃいけないなって。 ラリマー:シンプルだな。 セレス:師匠はただ、自分たちの誇りと尊厳を守りたかっただけなんだと思う。誰よりも想いや感情、そして誇りを大事にする人だったから。 ラリマー:平和よりも? セレス:うん。いろいろ葛藤はあったけど、師匠はハーツ族と黒族......魔族としての誇りを優先した。それが自分と彼の願いだったから。 ラリマー:……願い、か。 セレス:さて、ラリマー。時間は限られてる。早急に準備して、黒蛇石のところへ行きましょう。 ラリマー:あぁ。最後の戦いだ…! セレス:エルファ師匠、レイゲンさん。いってきます。 0:終

0:ite-ブラックハーツ- : 0:黒族の元集落 レイゲン:いよいよだな。 エルファ:あぁ。この世界以外でも、絶望は少しずつ集まっていた。これで.....黒蛇(くろへび)様が......絶望の王が、蘇るぞ。 レイゲン:長かったな。ようやく、君の願いが叶うのか。 エルファ:願い.....そう、じゃな。 レイゲン:後悔、しているか? エルファ:..........いや。ここまで来たのだ。何も後悔はしていない。 レイゲン:そうか。 0:黒蛇石が光を帯び始める。 エルファ:っ!ついに、ついに絶望の王が...! レイゲン:......っ! 0:光が人の形となり、やがて光はおさまった。 エルファ:.....っ! 絶望の王:あー、ようやくだ。ようやくこの世界で動ける。長い眠りから覚めた気分だ。 エルファ:ルシ、ア.....? 0:白蛇石の祠 セレス:白蛇石(しろへびいし)様、絶望の脅威が...よみがえりつつあります....どうか、どうか、この世界を守る力を...私たちにお与えください....アイト様...。 セレス:....っ!?白蛇石が光って.....! ラリマー:う.......あぁ、ここ、は...。 セレス:っ!!願いが.....届いた.....!アイト様! ラリマー:うお!?ビックリした!.....えっと、君、は? セレス:はじめまして!アイト様!私はセレス、セレス・ブルー・ハーツです! ラリマー:え、あぁ、よ、よろしく。 セレス:よかった、このままだと絶望に染められてしまうところでした。 ラリマー:絶望....?えーっと、ちょっとタンマ。1回俺の中の情報を整理させてくれ。 セレス:あぁ、ごめんなさい、つい焦ってしまいました。じゃあ一つ一つ、聞いていきましょう。まず、あなたのお名前は? ラリマー:え?えーと....ラリマー。 セレス:ラリマー、ですね。じゃああなたの役目は? ラリマー:俺は......アイト。世界に脅威がおとずれたとき、その脅威から世界を護る存在。 セレス:はい。それじゃあ次の質問。........他の世界の記憶はありますか? ラリマー:他の......?.........いや、ないな。今俺の中にあるのは、俺の、アイトとしての使命だけだ。 セレス:はい、わかりました。....どう?頭の整理はできた? ラリマー:あぁ、ありがとう。 セレス:それじゃあラリマー、私の住む集落に案内します。そこで私たちとともに、希望の力を蓄え、絶望に打ち勝つための準備をしましょう! 0:魔族とヒト族の集落 セレス:ここは魔族とヒト族が共に力を合わせて暮らしている集落、ウテク村。この世界では、魔族とヒト族は互いに憎みあい、対立し、戦争がたえないの。そんな中、魔族とヒト族が協力しあって、共に生きていきたいと考える人たちが集まって、この集落を作ったのよ。 ラリマー:戦争、か。 セレス:えぇ。各地の魔族とヒト族の戦争で、この世界の白蛇石はだんだん弱ってきていて......封印されている黒蛇石の力がどんどん強くなっていった。.......たぶん、もう黒蛇の力は目覚めているはず。 ラリマー:........戦争を、 セレス:ん? ラリマー:戦争を止めるにはどうすればいいと思う?......対立する2つの勢力を、和解させるには、どうすればいいと思う? セレス:え?ラリマー? ラリマー:.......あー、いや、なんだ、今の....悪い、何でもねぇ.. セレス:相手を理解し、許すこと、かな。 ラリマー:え? セレス:お互いにぶつかり合ってる信念をしっかり理解して、受け入れて、相手を許す....そうやっていけば、いずれは和解できるんじゃないかな。 ラリマー:それが難しいから、戦争が起こるんだろ? セレス:それでも、私は諦めずにそうする。何度排除されようとしたって。殺されかけても、滅ぼされても、私はずっと許し続けたい。......だから、強くならなきゃって思うの。 ラリマー:石頭、だな。 セレス:よく言われる。......ラリマー、着いたよ。ここが私の家。 ラリマー:........アクセサリーの店? セレス:私はここで石を使ったアクセサリーを作ってるの。 ラリマー:そういえば、セレスのそのペンダント。ずっと気になってたんだけど、それも君が? セレス:えぇ。綺麗なブルーでしょ?私はね、ハーツ族という魔族の生き残りでね。 ラリマー:ハーツ族? セレス:うん。ハーツ族って言うのは、感情や記憶、思考とかを操る魔法に長けている種族なの。そして私は、その魔力を石にこめることのできる術を持っている。 セレス:たとえば私のこのペンダント。ここには、私の穏やかに過ごしたいっていう強い気持ちが込められている。そして、感情が高ぶってしまった時はこの石の力が発動して......感情を抑えることができるの。 ラリマー:なるほど。それは面白いな。 セレス:他にもいろんなことができるんだけど、私はまだまだ未熟だから、あんまり強い効果のものや複雑なものは作れないのよね。 ラリマー:そうだ、さっきハーツ族の生き残り、と言っていたな。.......仲間は? セレス:ハーツ族はね、50年前にヒト族に滅ぼされた。 ラリマー:は!?ヒト族に!? セレス:うん。私はなんとかその戦火を生き延びたんだけど、ね......。 ラリマー:......ヒト族を恨んでいないのか。 セレス:ふふ、言ったじゃん。私はたとえ何があろうと、受け入れて許すって。それに、生き延びて、瀕死の状態になっていた私を助けてくれたのは、ここにいるヒト族だったから。 ラリマー:そう、か。......君は強いな。 セレス:私はただ、種族関係なく平和に生きたいだけだよ。........たぶんだけどね、ハーツ族の生き残りはまだいる。 ラリマー:どういうことだ? セレス:あの日....魔族の中でも高い魔力と強力な魔法が使えると言われていたハーツ族が滅んだ理由...。その日に限ってね、ハーツ族の中でもトップの魔力を持つ仲間が集落にはいなかったの。......外の国へ出稼ぎに行ってて。偶然なのか、それを狙って攻め入ったのかはわからないけれど。 ラリマー:だから、その仲間が生きている可能性がある、と。 セレス:うん。私はここで生活しながら、その仲間を探していたのだけれど.......。 ラリマー:何か、あったのか? セレス:......ついこの間。私たちの故郷を襲ったヒト族の国が滅ぼされた。 ラリマー:それって......まさか......。 セレス:確証はないけど、その仲間はたぶん......黒蛇石側について、この世界を壊そうとしている。.......絶望の力で、この世界....いや、全ての世界を。 ラリマー:........全ての世界、か。それはかなりヤバい、な。かつてない大災厄だ。 セレス:ラリマー。私も全力であなたをサポートする。私ももっと強くなるから、だから......!全ての世界を一緒に救いましょう! 0:黒族の集落 絶望の王:ルシア?それはなんだ。 エルファ:っ!それ、は.... レイゲン:あなたを蘇らせるために犠牲となった器の者の名前ですね。この世界に留まるためのあなたの肉体は、そのルシアという少年のもの。黒族の生き残りであり、多くの魔力を持っていた少年だったので、なじむかと。 絶望の王:なるほどな。そうだな、すごく動きやすい。.....そうか、ルシア、と言うのか。ならば、俺もそう名乗ろう。 レイゲン:わかりました。ルシア様。 絶望の王:ところで、お前の名前は。なんだ。 レイゲン:レイゲン・クリア・ハーツと申します。レイゲン、とお呼びください。 絶望の王:レイゲンか、よろしくな。.....さて、エルファ。 エルファ:......なんじゃ、ル.....王。 絶望の王:よく俺を蘇らせてくれた。礼を言う。 エルファ:.....わしと....いや、わしの願いのためじゃ。わしらの全てを奪った、ヒト族を根絶やしにするために.....! 絶望の王:はっはぁ!もちろんだ!この世界に絶望を!絶望で全てを焼きつくそう.....この世界は俺たちの物だ。 エルファ:.......まずは白蛇石を破壊せねばなるまい。 絶望の王:そうだなぁ。どこにあるのかはわかってんのか? エルファ:あぁ。すぐにでも行ける。 絶望の王:ふぅむ。すぐに破壊したいが...まだ目覚めたばかりで魔力の使い方がなじんでいない。少し時間をもらおうか。 エルファ:わかった。ではその間、わしらもやれることを..... 絶望の王:っ!おい、エルファ。 エルファ:なんじゃ?何をそんなに... 絶望の王:お前から、何か嫌な感じがする.....俺の嫌う.....何かが.... エルファ:王? 絶望の王:これだ!この石!この透明な石は......絶望とは真逆の何かが... エルファ:っ!これは....このペンダントは... 絶望の王:エルファ、それをよこせ。破壊する。 エルファ:ダメじゃ!(絶望の王の手を払う) 絶望の王:あ?てめぇ、何を。 エルファ:これは.....これはダメじゃ....たのむ、壊さないでくれ。 絶望の王:俺が壊すと言ってるんだ。逆らうな、エルファ。 エルファ:っ! レイゲン:ルシア様。すまないが、許してやってくれませんか。彼女にとって、このペンダントはとても大事なものなのです。嫌な気がするというのであれば、視界に入れないようにしますので。.....エルファ、それをしまうんだ。 エルファ:あ、あぁ...。 絶望の王:ふん。次にそれを見たら問答無用で壊す。.......俺は少し眠る。準備を進めておけ。 レイゲン:わかりました。 0:(絶望の王は去っていく) エルファ:.....レイゲン、ありがとう。 レイゲン:気をつけろよ。 エルファ:いつもお前には助けられてばかりだな。 レイゲン:100年前、君に全てを捧げると誓ったんだ。何があっても、俺は君の味方だ。 エルファ:100年....。もうそんなに経ったのか。 レイゲン:あぁ。特に、俺らの故郷が滅ぼされてからはさらに時の流れが早くなったように思う。 エルファ:そう、じゃの....。あれは、50年ほど前じゃったか。思えば、全てはあの日から始まった...。 0:回想 エルファ:(M)50年前。わしら夫婦は、一族が住む集落で、小さな魔道具店を営んでいた。その日は、隣の国へと店を出しに行った日だった。なかなかの売上で、わしらは上機嫌で集落に帰り.....そこで、変わり果てた故郷の姿を目の当たりにしたのであった。 レイゲン:こ、これはっ!? エルファ:故郷が!燃えて!?っ!お父様!お母様! レイゲン:誰か!誰かいないのか! 0:間 エルファ:あ......あ......そん、な......。 レイゲン:誰も......いない......。 エルファ:こんなこと......一体何が......。 レイゲン:エルファ。 エルファ:なんじゃ........。 レイゲン:街の中心に。 エルファ:っ!これは、この旗は.......。 レイゲン:たしかこの国章は......ヴェント国......ヒト族の国だな。 エルファ:そうか........ヒト族が我らの故郷を........許さぬ。......許さぬっ!!わしらが何をしたっ!?なぜこのようなことができるっ! レイゲン:エルファ....。 エルファ:許さぬ。必ずヒト族の国を......いや、ヒト族を......根絶やしにしてやる。必ず、必ず........たとえこの身を犠牲にしてでも。全て滅ぼしてやる。 : エルファ:(M)故郷を滅ぼされ、憎しみと絶望に打ちひしがれていた時だった。わしの頭の中に声が響いてきた。 絶望の王:憎いか。 エルファ:憎い。 絶望の王:絶望を、ヤツらにも与えたいか。 エルファ:あぁ。わしらの絶望よりも、もっと深い絶望を。 絶望の王:いいだろう。ならば共にこの世界を絶望で染めよう。 エルファ:........お主は? 絶望の王:おっと、ようやく俺の存在に気づいたか。俺は絶望の王、黒蛇石に宿る絶望だ。 エルファ:絶望…。黒蛇石…。 絶望の王:この世界にあるのは、希望と創造の石、白蛇石だけじゃねぇ。絶望と破壊の石、黒蛇石というのも存在する。だが、昔、絶望と破壊を恐れた人々は、俺を....黒蛇石を封印した。 エルファ:絶望と破壊の石、か。良い響きだな。 絶望の王:だろ?だからさ、お前に封印を解いて欲しいんだ。......そうだ、お前、名前は? エルファ:エルファ。エルファ・クリア・ハーツ。 絶望の王:エルファか。よし、じゃあエルファ。お前の望む絶望と破壊をくれてやる。だから、俺の封印を解いてくれ。 エルファ:わかった。力をかそう。ヒト族に........我らから奪ったヒト族に......絶望を......っ!!絶望をっ!!! レイゲン:エルファ! エルファ:っ!レイ、ゲン。 レイゲン:大丈夫か、何と話していた? エルファ:お前には聞こえなかったか。黒蛇石が......封印をとけ、と。 レイゲン:黒蛇石、か。 エルファ:レイゲン。わしはヒト族を滅ぼす。何を犠牲にしてでも。おそらく、長く苦しい旅になると思う。........付いて、くるか? レイゲン:当たり前だ。50年前、君と苦楽を全て共にすると、誓いを立てたはずだが。 エルファ:ありがとう、レイゲン。ヒト族を絶望の底へたたき落としてやる......! 0:回想終了 レイゲン:......ファ、エルファ。 エルファ:ん......。 レイゲン:どうした、エルファ。疲れているのか? エルファ:......いや、昔のことを思い出していただけじゃ。 レイゲン:そうか。......あぁそうだ、エルファ、これは返しておこう。 エルファ:記憶のストーンチャーム......。そうじゃ、お前に預けておったな。受け取ろう。........。(ストーンチャームをペンダントにつける) レイゲン:そこに......そのペンダントにつけるのか。 エルファ:ここにあるべき物じゃ。......さて、王が眠りについている間、準備を整えよう。 レイゲン:あぁ。 0:3ヶ月後、ウテク村 セレス:ラリマー!ご飯できたよー! ラリマー:おう、セレス。今行く!はい、これ、今日の収穫分な。 セレス:わぁ!こんなに沢山!これでしばらく鉱石採掘に行かなくても済みそうね。 ラリマー:ここにきて3ヶ月。俺ももうすっかり採掘師になっちまったな。 セレス:おかげさまで、この店も安定しているわ。 ラリマー:........このまま何もなく、こうやって過ごしていきたいな。 セレス:......ラリマー。それは私もそうでありたい。でも、 ラリマー:わかってるよ。俺がこの世界にいる限り、災厄は避けて通れない。黒蛇石も、俺と同じように力を蓄えているんだろうな。 セレス:そうね。ラリマーも黒蛇の力も、この世界に生まれてすぐは身体がなじまず100%の力を発揮することはできない。だから少しの間はこの世界ですごし、力の使い方を身につけていく。.......3ヶ月はその力の使い方を身につけるのには充分な期間。 ラリマー:そろそろ、だな。 セレス:......えぇ。何があってもすぐ対処できるようにしておかないと。 ラリマー:..........。 セレス:ラリマー?どうしたの? ラリマー:世界の脅威がなくなれば、俺はまた......いや....なんでもない。 セレス:怖い? ラリマー:いや、怖くないさ。必ずこの世界を脅威から.... セレス:違う。 ラリマー:え? セレス:この世界からいなくなって、この世界の記憶を失ってしまうのが......怖い? ラリマー:っ! セレス:たとえラリマーがここの記憶を失ったとしても、私はずっとあなたの事を覚えてるわ。 ラリマー:セレス........。 セレス:記憶を失うことには意味があるの。ラリマー、あのね...... : 絶望の王:絶望よ降り注げ、ブラック・メテオ! : ラリマー:!? セレス:黒い炎っ!! レイゲン:はぁぁぁぁっ!!!(セレスに斬りかかる) ラリマー:セレス、危ないっ!フレイムソードっ!(受け止める) レイゲン:さすがはアイトの騎士。このレイゲンの剣をよく受け止めた。 ラリマー:お前はっ! セレス:レイゲンさん!? レイゲン:おや、見かけたような面影があると思ったが......セレス、君だったのか。 セレス:やはりあなたは......黒蛇石についたのですね....。となると、あの方も....。 エルファ:まさか、わしら以外にハーツ族の生き残りがいたとはな、セレス。 セレス:........エルファ師匠。 エルファ:こんなところで何をしておる。ここはヒト族がおる村じゃ。憎むべきヒト族が。 セレス:私はヒト族と共に生きることを選びました。たとえお師匠であろうと、この村を壊すのは許しませんっ!!包め!アクア・ホルトス! セレス:(セレスの水の魔法で村の炎を鎮火させる) ラリマー:村の炎が消えた! セレス:私はこの村を、ヒト族を、この世界をまもる。だから強くなってきたの。 エルファ:ほぉ。さすがじゃの。これ程までに魔力を高めたか。じゃが......わしらには勝てん。終焉を。ブラック・トニトルス。 エルファ:(黒い稲妻がラリマーとセレスを襲う) ラリマー:がっ!ぐあああああっ! セレス:ああぁぁぁぁっ!!! 絶望の王:なんだ、そいつがアイトか。 ラリマー:ぐっ......お前、は....。 絶望の王:よう、雑魚。この程度の攻撃でくたばっているようじゃ、世界どころかこの村すらまもれねぇぜ。そこで這いつくばりながら世界が絶望に染っていくのを眺めているがいい。 エルファ:白蛇石はこの村の地下にある。破壊しにゆくぞ。 絶望の王:よし、エルファ案内しろ。 エルファ:レイゲン、ここの掃除は任せるぞ。 レイゲン:わかった。 セレス:させないっ!凍れ!グラシア・バレット!(氷の弾丸を撃つ) レイゲン:甘いっ!(全てはじき返す) セレス:やはり剣術にたけたあなたには効かないわね....っ! ラリマー:白蛇石のところにはいかせねぇ!フレイム・ガーデン! レイゲン:ぐっ! エルファ:邪魔を....。 絶望の王:ブラック・フレイム! ラリマー:っ!相殺された! 絶望の王:わずらわしい......先にこっちから壊してやろう。 ラリマー:お前の復活はこの世界だけじゃない、他の世界まで影響を及ぼしてしまう。そうなる前に、お前を倒すっ!フレイム・ソード! 絶望の王:雑魚ごときに俺が相手するまでもない。エルファ、レイゲン、やれ。 レイゲン:かしこまりました。......まとえ、ブラック・ソード。 エルファ:仕方ないのう。相手をしてやろう、セレス。同胞を討つのは少々気が引けるが......これも魔族だけの世界を創造するためじゃ。 セレス:師匠。あなたの考えは変わらないのですか。魔族とヒト族はわかりあえます。共に助け合って生きようとは思わないのですか。 エルファ:愚問じゃな。白蛇石の恩恵を拒み、魔法を禁忌とするヒト族なぞ......この世界にはいらぬ。そしてそのヒト族と共に過ごす魔族......お主もな。 セレス:........強い意志ですね。あなたらしい。それならば、私がやることはひとつ。........世界の脅威であるあなたを、とめるのみ!襲撃せよ!ホーリー・アクア! エルファ:わしはもう....戻れぬのじゃ。....守れ、サクスム! ラリマー:うおおおお! レイゲン:はぁっ!(剣と剣がぶつかり合う) ラリマー:どうして黒蛇石に力を貸すんだ!あれは、この世界を絶望に落とし破壊しようとしてるんだぞ! レイゲン:だからなんだ? ラリマー:なっ!? レイゲン:正直俺は、世界のことはどうでもいい。ルシア様がこの世界を破壊しようが、貴様がこの世界を守ろうが、俺にとってはどうでもいいんだ。 ラリマー:じゃあなんで剣を振るうんだよ!絶望の力をまとわせて! レイゲン:エルファがそうしたいから、俺は剣を振るう。 ラリマー:はぁ? レイゲン:俺の剣は、俺の命は、全てエルファの為にあるんだ。彼女を護り、彼女の願いを叶えるのが俺の役目。 ラリマー:んだよ、それ....! レイゲン:ふん、誰かを愛する気持ちを持たない貴様にはわかるまい。ただ、愛する気持ちだけで振るう剣は......何よりも強いぞ!はぁぁぁっ!! ラリマー:ぐあっ!?くそっ、体勢がっ!? レイゲン:さらばだ、アイトよ。(ラリマーを斬る) ラリマー:ぐぁぁぁぁぁっ!!! セレス:っ!ラリマーっ!! エルファ:他を気にかけている場合か?捕らえろ、ブラック・メイデン。 セレス:いやぁぁぁぁぁっ!! 絶望の王:終わったか? ラリマー:く.....そ......っ!俺は、こんなとこでくたばるわけには......っ! セレス:......癒しの...魔法、を......うっ....! 絶望の王:なんだ、まだ息があるじゃねぇか。さっさとトドメさせ。 レイゲン:はっ。........これで終わりだ。 ラリマー:くそっ......! セレス:ラリマーっ!諦めないで!私はまだ、闘える....っ! ラリマー:セレ、ス...... エルファ:っ!レイゲン!引け! レイゲン:っ! セレス:愛する世界のために、愛する人のためにっ!照らせ!ルークス・アイト! ラリマー:っ!セレスのペンダントが....! レイゲン:ぐあっ! エルファ:レイゲン!守れ、ブラック・シールド! セレス:私の願いを、愛を、感謝を......全てこの石に込めてある。希望の魔法、これであなたたちを止めるわ! 絶望の王:がっ!この魔法!くそっ、強い....っ!! セレス:はぁ、はぁ......。 絶望の王:よくも......よくもこんな魔法を...っ!! エルファ:レイゲン、無事か? レイゲン:あぁ、大丈夫だ。 ラリマー:セレス!......大丈夫? セレス:えぇ。ずっと、ずっとこの日のために毎日祈りを捧げながら、力を蓄えてたの。......さぁ、ラリマー。一緒に彼らを止めましょう。 ラリマー:あぁ! エルファ:レイゲン、構えろ、来るぞ!王をまもる! レイゲン:わかった、まとえ、ブラック.... 絶望の王:足りない。 エルファ:王....? 絶望の王:絶望の力が、まだ足りないっ!うおおおおおっ!!! ラリマー:ぐあっ!?黒い炎がっ!! セレス:くっ!身体が......重い.....! 絶望の王:絶望を!絶望をっ! エルファ:王、落ち着け、まだわしらは負けておらぬ、さらなる魔法で...... 絶望の王:お前の絶望をよこせぇぇ!エルファぁぁぁ!!!(絶望の王がエルファに切りかかる) エルファ:っ! レイゲン:エルファっ! 0:(絶望の王の鋭い爪が、レイゲンの身体をつらぬく) レイゲン:がっ........ぁ........。 エルファ:レイ......ゲン...... 絶望の王:よくぞエルファを守った、レイゲン。さぁ、エルファの絶望を引き出すために、その命を捧げてくれ。 エルファ:レイゲン!そんなっ!!やめろ、殺すな!やめろっ!! レイゲン:........エルファ、 絶望の王:じゃあな、レイゲン。 レイゲン:愛している…。 0:(絶望の王の手がレイゲンを切り裂いた) エルファ:あああぁぁぁぁぁっっっ!!!! セレス:なんて.....ことを...... ラリマー:仲間じゃ、ねぇのかよ...... エルファ:あ......あ......レイゲン、レイゲン....っ!! 絶望の王:エルファ、その絶望を俺の中によこせ。 エルファ:レイゲン....レイ、ゲン......。 セレス:ダメ!師匠!!エルファ!!気を確かに!!......うっ、黒い炎が強くなって....! ラリマー:炎の中に取り込まれ始めてる!おい!しっかりしろ!! 絶望の王:無駄だ。さぁ、俺の絶望の糧となってもらおう。......ラスト・ブラック。 0:(黒い炎がさらに広がっていく) セレス:ああぁっ!!なに、この絶望の力......だめ.....動けない...... ラリマー:押しつぶされる......っ!くそ、くそっ!くる、しい...... 絶望の王:はははははっ!!終わりだ!!これで!この世界も、他の世界も!俺のものだ!!!! ラリマー:く......そ..........。 0:間 エルファ:レイゲン、すまぬ。わしの人生に付き合わせてしまったが故に、命を落としてしまった。......わしもすぐそちらへ行く。 エルファ:....あぁ、苦しい、辛い。炎に焼かれて熱いのに、心の奥底は凍りつくように冷たい。その温度差に、息が出来なくなる。あぁ、絶望の炎に焼かれるのはこんなにも苦しいのだな、ルシア。お主はこの苦しみの中で悶えながらも、最後までわしの事を見ておった。........ルシア、叶うことならもう一度......もう一度お主に会いたい。........ルシア。 ルシア:.........ファ、エルファ!起きて!眠ったらダメだ!エルファ! (絶望の王と兼ね役) エルファ:ルシ、ア? ルシア:起きて、エルファ。取り込まれちゃダメだ。 エルファ:!?ルシア、ルシア!!お主なのか!! ルシア:久しぶりだね、エルファ。 エルファ:ルシア......。あぁ、ルシア.....。すまぬ......わしは、わしは......っ!お主をっ!絶望で!あ、あぁ......! ルシア:落ち着いて、エルファ。ちゃんと聞いてるから。大丈夫だよ。僕はここにいる。 エルファ:.......ルシア。わしを恨んではおらぬのか。 ルシア:うん。恨んでいない。........確かに、あの日、絶望の炎に焼かれた時は、エルファに裏切られたって思ってすごく悲しかったけどね。でもね、今の僕は、ちゃんと全部わかってる。わかってるよ、エルファ。 エルファ:ルシア、もしや記憶が......? ルシア:僕があげたペンダント。ずっと大切に持っててくれたんだね。僕はずっと、そこにいた。絶望の王に壊されそうになっても、必死に守ってくれた。あれ、すごく嬉しかったんだ。 エルファ:それほどまでに、お主の気持ちがこもっていた、ということか。 ルシア:そうだよ。それに、僕はあなたに告げたはずだ。僕の気持ちはずっと変わらないって。あの時から僕の気持ちは変わらない。 エルファ:ルシア......。 ルシア:聞いて、エルファ。今、絶望の王はこの世界だけじゃなく、他の世界までも破壊しようとしてる。このままじゃ、ヒト族だけじゃない。魔族も含めた全ての種族が滅んでしまうことになる。......エルファ、あなたの本当の気持ちを聞かせて欲しい。 エルファ:本当の気持ち....? ルシア:エルファは、ヒト族と魔族、他の種族も対等に平和に暮らせる世界を、のぞんでる? エルファ:っ! ルシア:本音を聞かせて欲しい。後戻り出来ないとか、絶望をよみがえらせてしまったとか、そういう事は考えないで、あなたが本当はどうしたかったのか。 エルファ:わし、は.....。 ルシア:僕はあなたの優しさを知ってしまった。あのヴェント王国を滅ぼしたのだって........ エルファ:ルシア。 ルシア:なに、エルファ。 エルファ:わしはヒトが好きじゃ。魔族もヒト族も関係なく、平和でありたいと願っていた。..........それを壊したのはヒト族じゃ。ヒト族とともに生きたいと願うわしの気持ちを壊したのは......ヒト族じゃ。 ルシア:うん。 エルファ:じゃが…本当は......こんな復讐なんてしたくなかった。黒蛇石にとらわれてしまってからは、もう後にひけず......ここまできてしまった。何度も何度も、ここで復讐をやめて、レイゲンと......穏やかな日常を過ごそうかと思った。......お主と過ごしているときも、何度思ったことか。 ルシア:その気持ちをしっかり持って。絶望に対抗できるのは、希望の力だよ、エルファ。 エルファ:希望の力......? ルシア:誰かを愛する気持ち、平和を望む気持ち、日々を大切にする気持ち。それらは全て希望の力になる。それがあれば、この絶望の力は止められる。 エルファ:絶望を、止める.....。 ルシア:エルファ、これは僕たちがはじめてしまった災厄だ。だから、僕たちで終わらせよう。 エルファ:共に背負ってくれるのか、ルシア。 ルシア:もちろんだよ。僕はあなたに救われた。あの日、なにがあっても、あなたの側で、あなたの力になると、決意したんだ。 エルファ:わかった、ルシア。共にこの絶望を終わらせよう。 ルシア:うん........でもね、エルファ。一つだけ、言っておかなきゃいけないことがあるんだ。 エルファ:なんじゃ、ルシア。 ルシア:すでにエルファは絶望の王の中に取り込まれて、そこに希望の力を使うと、肉体はもう持たないと思う。 エルファ:そう、か。それは仕方ない。 ルシア:それで......肉体から離れた精神は......あてもなくさまよい続けてしまうんだ。どこにもいけず、ひたすら。 エルファ:わかった。受け入れよう。それが運命なのならば。 ルシア:エルファ......。僕が導ければいいんだけど、僕の肉体はまだここにある。僕は......エルファとは一緒に行けない。 エルファ:..........。そうか。わかった。 ルシア:......あなたにツラい思いをさせたくない......。だけど...... レイゲン:安心しろ、俺が彼女を連れていく。 エルファ:っ!レイゲン! ルシア:レイゲン、さん....。 レイゲン:ひさしいな、小僧。 ルシア:えぇ、お久しぶりですね。あなたもここに来られるとは。 レイゲン:100年前、ずっとエルファのそばにいると誓った身。たとえ肉体が壊されようと、俺はエルファのそばにいるさ。 ルシア:はは、100年、かぁ。それは敵わないや。 エルファ:レイゲン.....。 レイゲン:大丈夫だ。エルファは1人にはさせない。 ルシア:エルファ。本当に罪な人だね、あなたは。でもこれで安心できる。レイゲンさん、よろしくお願いしますね。 レイゲン:あぁ。 ルシア:エルファ。こっちに。 エルファ:あ、あぁ。 ルシア:両手を。僕と重ねて。 エルファ:.......。 ルシア:覚えてる?あなたと2人で作った、あの魔法。 エルファ:忘れるものか。 ルシア:よかった。......ねぇ、エルファ。最後に、一つだけ僕の ワガママ、許して欲しい。 エルファ:ワガマ......んっ! 0:(ルシアはエルファにキスをする) ルシア:........ごめんなさい。でも、最後に確かめておきたくて。あの時と......同じだ。優しい、愛の味だ。 レイゲン:ほう、この俺の前で大胆なことをするんだな、小僧。 ルシア:へへ、許してくださいよ。僕はもう........会えなくなるんですから。 エルファ:ルシア.....。 ルシア:さぁ、エルファ。始めるよ。想像して。魔族とヒト族が笑いあって平和に過ごす世界を!希望を! エルファ:あぁ......っ! ルシア:大地よ、海よ、大空よ! エルファ:我らの希望を糧とし、この世界をまもりたまえ! : ルシア:ディレ・マギア(二人同時に) エルファ:ディレ・マギア(二人同時に) : ルシア:さよなら、エルファ。 0:間 ラリマー:このまま....世界は絶望におちていくのか........仕方、ないよな。こんなにも強力な力なんだ........俺には......無理、だ.......。 セレス:ラリマー........あなたが希望を捨てちゃだめ......。 ラリマー:............。 セレス:お願い、ラリマー........っ! 0:ラリマーの頭に誰かの声が響く。 ラリマー:........っ?なん、だ......?何か、声が........?セレスの声じゃない.......でもなんだ、聞き覚えのあるような、懐かしい、ような......。なんて言ってる........諦めるな......? 0:絶望の王を光がつつみ始める 絶望の王:ぐ...っ!?ぐあああああっ!! ラリマー:な、なんだ!? セレス:これは......希望の魔法.....? 絶望の王:なぜ邪魔をする、エルファ!この世界の破壊は貴様の願いなのではないか! エルファ:すまぬな、絶望の王。わしの中の絶望よりも.......わしを包む希望の方が大きすぎたようじゃ。 絶望の王:裏切ったな、貴様ぁぁぁ!!! エルファ:気づくのが遅すぎた......もっと早くから、お前たちの愛をしっかり受け止めていれば......違う未来があったのかもしれんな......。絶望の王、貴様はわしが、わしらが倒す!再び石となり、眠るがいい! 絶望の王:ちっ!こいつの肉体が滅んでしまえばこの魔法から逃れられる!焼き付くしてやるっ!!絶望を!ブラック・フレイム! エルファ:もう絶望には負けぬっ!クリア・フレイム! 0:ふたつの炎がぶつかり合う セレス:師匠!私も力をかします! エルファ:頼む。わしのことはいい、全力で放て。 セレス:はい!ブルー・フレイム! 絶望の王:ぐっ.....!負けない、俺は負けないっ!! エルファ:くっ....! セレス:あぁ....っ! ラリマー:負けるなっ!うおおおおぉ!ロード・フレイム! セレス:ラリマー! ラリマー:悪い、弱気になってた。もう諦めない。セレス、一緒に絶望に勝つぞ! セレス:うんっ! 絶望の王:があああっ!!! 0:3人の炎が絶望の王を焼き尽くす。 ラリマー:黒い炎が消えた! セレス:これで......。はっ!師匠!? ラリマー:っ!肉体が......持たなかったか....。なにか癒しの魔法で.... エルファ:よい。元よりそのつもりじゃった。当然の報いじゃ。 セレス:そんな.....師匠....エルファ師匠....。 エルファ:セレス。そして、アイトの....ラリマー。この魔法でも、絶望の王は完全には倒せなかったようじゃ。......じゃが、確実に力は弱まっておる。すまぬが、あとは頼んだぞ....。 セレス:師匠......。わかり、ました。必ず私たちで絶望を封印します。 ラリマー:あぁ、必ずだ。約束する。 エルファ:すまなかった........。セレス。お主に最後にひとつだけ、伝えておく。 セレス:はい。なんでしょうか、師匠。 エルファ:お主は大切に想う者、愛している者の手を離すでないぞ。.......黒と白、正反対のものは、対立し合うが故に惹かれ合う。........悔いのないようにの。 セレス:..........はい。 エルファ:さらば......(優しく微笑み、消滅していく) 絶望の王:くそっ......力が......絶望の力が......っ! ラリマー:今だ!フレイム・ソード! 絶望の王:ちっ! ラリマー:避けられたか....! 絶望の王:分が悪い。1度黒蛇石に戻るとしよう....。アイトよ、必ず俺はお前を破壊してやるからな。 ラリマー:待てっ! セレス:ラリマー、待って。今は追いかけるべきじゃない。 ラリマー:でも....! セレス:ダメージが大きすぎる。あなたも私も、この村も。 ラリマー:っ!わかった。 セレス:万全の態勢で挑みましょう。あの様子だと、しばらくは力を戻さないだろうから。 ラリマー:あぁ。次は必ず、封印する。......俺たちの力でな。 0:回想シーン エルファ:(M)15年前。黒族の集落の近く。 : エルファ:この辺は、黒族の集落。ラスト・ブラック発動のためには絶望が必要じゃ。絶望を扱う魔法に特化している黒族なら、何か知っておるかもしれん。 レイゲン:なるほどな。にしても、さすが黒族と言うべきか......この辺りの森の木々も枯れ果て......不気味なところだな。 エルファ:うぅむ......ここまで生気の無い集落じゃったかの.....?........なにか嫌な予感がする。 レイゲン:エルファ? 0:集落の方から、凄まじい黒い炎があがる。 エルファ:っ!あれはなんじゃ!? 0:エルファ走り出す レイゲン:あ、待て、エルファ! 0:間 エルファ:これ、は......。黒族とヒト族....?みな死んでおる.....。しかし、この力は一体.......。っ!あそこに誰かが......。 ルシア:(幼少期)あぁ....あああっ!! エルファ:子ども!?あの子から凄まじいまでの魔力が....っ!この辺りを全て焼き尽くしたのも、あの子が....? ルシア:(幼少期)うあああっ! エルファ:いかん、これ以上魔力を放出させてしまったら精神共々壊れてしまう!おい、よせ、落ち着くんじゃ! ルシア:(幼少期)つらい、くるしい、かなしい....。どうしてっ!僕らは何も悪いことしていないのにっ!やめろっ!やめろっ!僕から奪わないでくれっ! エルファ:落ち着け!大丈夫じゃ、もうお主を殺そうとしているものはおらぬ!落ち着くのじゃ。 ルシア:(幼少期)憎い、憎い、憎い!僕から全てを奪ったヤツらを!!1人残らず滅ぼしてやる!!!たとえこの身を犠牲にしたとしてもっ!!!僕は....ヤツらを....滅ぼ......す....(気を失う) エルファ:気を、失ったか....。この齢にしてこの魔力....そして憎しみ....。 レイゲン:エルファ!......その子、は?この炎はその子のものか? エルファ:あぁ。全てこの子の魔力じゃろう。 レイゲン:そうか。エルファ、あっちにこの旗が。 エルファ:......ヴェント王国。 レイゲン:あの国は魔族の殲滅を図っているようだな。 エルファ:この子の憎しみは、わしと同じ。......この身を犠牲にしても、か。 レイゲン:その子を連れていくのか? エルファ:あぁ。......レイゲン、頼みがある。わしはこの子を成人するまで育て上げる。ラストブラック発動の生贄としてな。お前は......あの国、ヴェント王国で国民の信頼を築いてくれ。.....血反吐を吐くような思いをするじゃろうが......それが一番、この魔法を発動させるのに効果的じゃ。最大の絶望を持って、あの国を滅ぼし、絶望の王をよみがえらせる。 レイゲン:わかった。君の望みなら、俺は叶えよう。 エルファ:ありがとう。....レイゲン、これを。 レイゲン:これは...。 エルファ:記憶のストーンチャーム。この子の記憶をその中に閉じ込めておる。この子が目を覚ました時、黒族であることや、ヒト族への憎しみは忘れておるじゃろう。......それは絶望への妨げとなってしまう。 レイゲン:エルファ、君が今からやろうとしていることは、君にとってもつらいものになる。それでも、やるんだな? エルファ:あぁ。もう、後戻りはしない。この子のためにも。必ずヒト族を殲滅させる......! レイゲン:わかった。ならば俺は君に従うまでだ。さぁ、行こうか。いろいろと準備をせねばなるまい。 エルファ:あぁ......始めよう。絶望の儀式を......! 0:ウテク村 セレス:...........。 ラリマー:セレス、ここにいたのか。......それは、2人のお墓? セレス:うん。レイゲンさんと、エルファ師匠の。 ラリマー:君の師匠だったんだね。 セレス:師匠はハーツ族いちの魔法使いだった。特に、記憶、感情、精神をこうやって石の力にしたり、結晶化したりできる。 ラリマー:それは......彼女が着けていたペンダント?......チャームみたいなのもついてるな。 セレス:ここにね、エルファ師匠とレイゲンさんの記憶....そしてもう1人の想いと封印された記憶があった。 ラリマー:わかるの? セレス:エルファ師匠のもとで修行してたからね。石に込められた想いや記憶を読み取るくらい、私にもできるわ。 ラリマー:そうか。なにかわかった? セレス:......彼らのためにも、絶望の王を止めなきゃいけないなって。 ラリマー:シンプルだな。 セレス:師匠はただ、自分たちの誇りと尊厳を守りたかっただけなんだと思う。誰よりも想いや感情、そして誇りを大事にする人だったから。 ラリマー:平和よりも? セレス:うん。いろいろ葛藤はあったけど、師匠はハーツ族と黒族......魔族としての誇りを優先した。それが自分と彼の願いだったから。 ラリマー:……願い、か。 セレス:さて、ラリマー。時間は限られてる。早急に準備して、黒蛇石のところへ行きましょう。 ラリマー:あぁ。最後の戦いだ…! セレス:エルファ師匠、レイゲンさん。いってきます。 0:終