台本概要
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タイトル | ite-ラストハーツ- |
---|---|
作者名 | 桜蛇あねり(おうじゃあねり) (@aneri_writer) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 3人用台本(男2、女1) ※兼役あり |
時間 | 50 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
iteシリーズ最終話、第6作目。第5作目の続きの話。 絶望の王からの襲撃にダメージを負いつつも、なんとか村を守ったラリマーとセレス。 黒蛇石の元へもどっていった絶望の王を封印すべく、二人は黒蛇石の元へむかった。 ※世界観を壊さない程度のアドリブはOKです。 ※絶望の王・ルシアは兼ね役です。この二人の掛け合いがあるので、兼ね役が難しければ、ルシア役として一人追加してもらっても構いません。 『ite』シリーズ 0.ラスト・ブラック 1.ite-ロジカルハーツ- 桜蛇あねり、天駆ケイとのコラボ台本 2.ite-ドラゴンハーツ- 3.ite-マーメイドハーツ- 4.ite-デーモンハーツ- 5.ite-ブラックハーツ- 6.ite-ラストハーツ- 【完】 254 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ラリマー | 男 | 89 | アイトと呼ばれる、白蛇石に生み出された存在。 世界を平和に導いた後は、記憶を失い、別の世界を救いに行く。 |
セレス | 女 | 84 | ハーツ族の生き残り。石に感情や記憶などを込めることができる。 ハーツ族として、この世界の成り立ちを知っている。 |
絶望の王 | 男 | 33 | 黒蛇石の化身。世界を絶望で破壊しようとたくらんでいる。 ルシアという少年の肉体を器に、よみがえった。 エルファとルシアの希望の力により、弱体化している。 |
ルシア | 男 | 8 | (絶望の王と兼ね役)かつて、ヒト族に故郷を滅ぼされた黒族の生き残りの少年。絶望の王復活のための生贄とされた。精神だけが、絶望の王の中に残っている。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:ite-ラストハーツ-
:
セレス:昔、世界を作ったとされる、2匹の蛇がいました。
セレス:白い蛇は、光を創り、人々に友愛や信頼と言った希望の心を。
セレス:黒い蛇は、闇を創り、人々に嫉妬や諦めといった絶望の心を与えました。
セレス:2つの存在は世界のバランスを保っていましたが、ある日、人々は絶望の心と闇を疎ましく思うようになっていきました。
セレス:そして、人々は黒い蛇を世界から追い出すことにしました。
セレス:怒った黒い蛇は世界を絶望で覆いつくそうとしました。
セレス:そして.........。
:
ラリマー:セレス、準備できたぞ。いつでも行ける。
セレス:ラリマー。もう傷は大丈夫?
ラリマー:あぁ。絶望の王がここを責めてきて1週間......。俺もセレスも、この村も.....まだ少し傷は残っているけど、立ち止まってられない。早くアイツを討たないと......また絶大な力を取り戻してしまう。あの2人の為にも、次は必ずアイツを封印する!
セレス:えぇ、そうね。絶望の王がいる黒蛇石は、黒族の集落だったところにあるの。ここからそんなに遠くないわ。
ラリマー:黒族......20年前くらいにヒト族に滅ぼされたっていう....絶望の力で魔力を増幅させる魔族、だったっけ?
セレス:うん。絶望の王の肉体は、その黒族の生き残りの少年のもの。だからこそ、絶望の力を最大限まで引き出すことが出来るの。.....気を引き締めていきましょうね。
ラリマー:大丈夫。俺はもう、負けない。
セレス:うん!あ、ラリマー。これを。
ラリマー:これは......ブレスレット?赤色の石と、透明な石......。
セレス:お守り。きっとラリマーの役に立ってくれるはずだから。
ラリマー:ありがとう。大事にする。
セレス:ラリマー、黒蛇石のところへ行く前に、寄りたいところがあるの。
ラリマー:寄りたいところ?
セレス:私たち、ハーツ族が暮らしていた村に。......今はもう誰もいないけど。
ラリマー:わかった。行こう。
セレス:さて、出発しましょうか。最後の、決戦に。
ラリマー:あぁ......!
0:黒蛇石の祠
絶望の王:なぜ.....なぜだ。あんな魔法に俺が負けるなんて。有り得ない。絶望の力こそが最強の力。どんな人間も魔族も、絶望には勝てないはずだ。どうして俺はこんなにも弱っている。おかしい、おかしい、おかしい!
ルシア:それは、お前が間違っているからだ、黒蛇。
絶望の王:貴様は......ルシア、か。そうだ、貴様がエルファをそそのかし、邪魔をした!俺が間違っているだと?笑わせるな。絶望の前にどんな力も無力に等しい。貴様は黙っていろ、俺から出ていけ。俺がルシアになる。貴様は消えろ。
ルシア:絶望っていうのは、希望があるからこそ存在できるんだ。希望のない世界に絶望は存在できない。逆に、絶望があるからこそ、希望もある。絶望も希望も、互いに消しあってはいけないものなんだよ。お前はそれを理解していないから、封印された。そうだろ?
絶望の王:黙れ!希望なんていらない。希望があるから、俺は、俺は......っ!
ルシア:1番絶望に捕らわれてるのは......お前なんだな、黒蛇。ま、僕はもう何もできない。あとは彼らに任せるとしよう。
0:ハーツ族の村
ラリマー:ここが、ハーツ族の村か。......どこもかしこも焼き払われている。酷い有様だ。
セレス:........えぇ。
ラリマー:セレス、寄りたいところってのは?
セレス:エルファ師匠のお店に。あそこに、探しているものがあるの。
ラリマー:探しているもの?なんだ、それは。
セレス:こっち。来て。
0:エルファの店
セレス:エルファ師匠のお店....焼けちゃってるけど......地下は無事、みたいね。
ラリマー:お店の地下にこんな空間があるんだな....ここは、書斎か?いろんな本が置いてある。
セレス:ハーツ族が語り継いできた、この世界のこと。それがここにあるの。そして......これが、創世記......この世界の創造が記されているもの。
ラリマー:創世記?
セレス:ねぇ、ラリマー。あなたの役目は?
ラリマー:え?急になんだよ?
セレス:答えて。
ラリマー:え、あぁ。世界の脅威が訪れた時に、その脅威から守る存在。それが俺、アイトの役目だ。
セレス:うん。そしてあなたは、各世界をまわって、脅威を退けてきた。ここの世界の他にもいろんな世界がある。
ラリマー:他の世界の記憶はねぇけどな。
セレス:でもね、ラリマー。もとはね、世界は私たちが今いるこの世界、一つだけだったのよ。
ラリマー:え?
セレス:この世界は、その昔、大きな白い蛇と、黒い蛇、ふたつの力によって創造された。自然ができ、生命がうまれ、そして人間が誕生した。白い蛇は、光を創り、人々に友愛や信頼と言った希望の心を。
セレス:黒い蛇は、闇を創り、人々に嫉妬や諦めといった絶望の心を与えたの。
セレス:そして、その2つの正反対の力はバランスを保ち、世界は平和だった。
ラリマー:もともとは絶望の王....黒蛇も、この世界で人々とともに暮らしていた、ってこと?
セレス:そうよ。だけどね。人々は絶望という負の心を嫌うようになった。苦しみから逃れたいって思うようになった。そして、その力を持つ黒蛇をこの世界から排除することに決めた。
ラリマー:排除..。
セレス:人々の決断に、白蛇は必死に説得しようとした。黒蛇を守るために。だけど人々は聞く耳を持たず、黒蛇を排除しようとするの。それに激怒した黒蛇は世界を破壊しようと力を放った。世界は絶望の炎で覆い尽くされた。.......それを止め、世界を救ったのが白蛇。
ラリマー:白蛇は、黒蛇を守ろうとしていた?
セレス:うん。白蛇は黒蛇と一緒に過ごしていたし、これから先もそうしたいと思っていたから。....白蛇はね、ちゃんと知ってたの。
ラリマー:知っていた?
セレス:絶望があるから、希望がうまれるってこと。希望も絶望も、どちらがひとつがかけてしまえば、もう片方も消滅してしまう。その2つがバランスよく存在していることで、世界は安定し、平和が保たれるの。
ラリマー:なるほど、な....。それで......白蛇はどうやって世界を救ったんだ?黒蛇を排除する訳にはいかなかったんだろ?
セレス:白蛇は、黒蛇を石に変えて、その力を抑え込んだ。そして、絶望の力を原動力としていた魔族、黒族の集落へと封印したの。黒蛇を石に変えてしまった白蛇は、自分もそうなるべきだと、自身をも石に変えた。
ラリマー:それが.....白蛇石と黒蛇石の誕生ってことか。
セレス:そのふたつの石は、バランスよく希望の力と絶望の力を放出させて、世界はまた平穏が訪れた......のだけど、
ラリマー:まだ続きが?
セレス:それでもなお、その黒蛇石を壊そうとする人間がいたのよ。黒族は必死に守っていたんだけど、それでも後を絶たなくて。......だから、次に白蛇石は、黒蛇石が存在しない世界を創った。黒蛇石の力は、白蛇石を通じて他の世界にも放出して。その世界に、黒蛇石を壊そうとしていた人間を送り、そうすることで全ての世界がようやく安定するようになったの。これが、全ての世界の始まり。
ラリマー:そんな物語があったんだな。
セレス:そして今、黒蛇石の封印がとかれ、絶望の王としてこの世界に復活してしまった。絶望の王は......自分を排除しようとした人々、自分を封印した白蛇、全てを恨んでしまっている。だから、白蛇石とこの世界を破壊しようとしてる。私たちで、とめなきゃ。
ラリマー:セレス。
セレス:なに?ラリマー。
ラリマー:どうして、この世界の成り立ちを俺に話したんだ?
セレス:この世界の始まりを知ってもらいたいからよ。
ラリマー:それだけか?
セレス:........。
ラリマー:セレス、君は絶望の王に対して、止めるという言葉しか使っていない。倒すとか、封印するとか、そういう言葉は使わなかった。君は、絶望の王と共に過ごす未来を、願っているんじゃないのか。
セレス:さすがだね、ラリマー。そうだよ。私は、絶望の王......黒蛇とわかりあって、世界の始まりのように暮らせればって思ってるよ。
ラリマー:それが1番いいのはわかってるけど、それが1番難しいのも、君ならわかってるはずだ。
セレス:もちろん。絶望の王は封印しないといけないと思ってるよ。今は、ね。それだけの絶望を彼は抱えてしまっているから。......でもね。時間をかけて絶望の王も、私たち魔族も、ヒト族も、互いを受け入れ合えば、また世界はひとつになれると思うの。白蛇と黒蛇が一緒に創って過ごしていた、ひとつの世界......アイト、に。
ラリマー:え、アイト?
セレス:アイトはもともと、白蛇と黒蛇が創り上げた世界の名前。
ラリマー:そう、だったのか…。じゃあ白蛇石が、母が俺の事をアイトと名付けたのは.....
セレス:ひとつの願い、なのかもね。この世界をひとつにしたいって言う。
ラリマー:その世界には絶望の王も含まれている。.....白蛇石は彼のことも守りたい、ってことか。
セレス:さ、ラリマー。見たいものは見れたから。行きましょう。
ラリマー:あぁ.....。行こう、絶望の王の元へ。
セレス:.......あれ、これは?
ラリマー:セレス?どうした?
セレス:ううん。なんでもない。先に出ておいて。本を片付けて行くから。
ラリマー:おう。
セレス:これは.......。
0:黒族の元集落
絶望の王:待っていたぞ、アイト。
ラリマー:絶望の王。最後の戦いにきた。俺たちの争いを、終わらせよう。
絶望の王:そうだな。お前を倒して、白蛇石を破壊して、全ての世界を俺のものにする。希望も人間も何もいらない。絶望だけの世界だ。
ラリマー:絶望だけの世界なんて有り得ない。希望があるからこそ絶望がある。どうしてわからないんだ!
絶望の王:どいつもこいつも同じことを。希望を持ったところでなんだ!結局は希望を持ったところで待っているのは絶望だ!自分たちは強いという希望を持ったが故に、それ以上の強いものが現れると適わないと絶望する。強くなろうと周りよりも努力して希望を抱いても、追いつけない強者がいるが故に自分の弱さに絶望する。誰かを愛すという希望を持ったのに、その愛した人から裏切られて絶望する。........希望なんて持つだけ無駄だ。
セレス:ねぇ、絶望の王。それは、あなたが希望を持ちたいという願望にしか聞こえないわ。あなたは希望を持ちたいけど、その希望を失うのが怖くて見ないようにしている…違う?
絶望の王:なんだと?
セレス:....エルシャ・ホワイト。
絶望の王:っ!
セレス:あなたなら、わかるわよね、絶望の王、いえ、ラストブラック。
ラリマー:セレス、その名は....?
セレス:エルシャ・ホワイト。あなたの母......白蛇の名前よ。かつてこの世界を、黒蛇....ラストブラックと共に創った、白蛇の名前。
絶望の王:その名を......思い出させるな。
セレス:エルファ師匠の....ハーツ族の書斎にね、これが隠されてあったの。
ラリマー:それは......ストーンチャーム....記憶のストーンチャームか?
セレス:そう。記憶が封じ込められているストーンチャーム。ここに封じられてたのは、白蛇....エルシャ・ホワイトの想い。ラストブラック、あなたに対するね。
絶望の王:黙れ!アイツは俺を裏切った!俺を裏切ってこの石に封印した!!そうだ、希望を持ったところで結局はみな裏切るんだ......だからそんな世界....壊してやる....俺が全て!壊してやるっ!!ブラック・フレイム!!
ラリマー:ちっ!やっぱり、説得は無駄か!だったら、力で押さえつけるしかない!フレイム・ガーデン!
セレス:っ!ねぇ!ラスト・ブラック!話を聞いて!
絶望の王:黙れ!黙れ!聞かない、聞きたくない!
ラリマー:セレス。戦う準備を。
セレス:.....っ!わかっ....た....。
ラリマー:もっと、もっと力を......レッドフレイムっ!!!
絶望の王:ぐっ....!くそ、こんな魔法ごとき....っ!
セレス:聖なる炎....ブルー・フレイム!
絶望の王:がぁっ!!...くそ、くそっ!俺は負けない.....こんなヤツらごときに....負けてたまるかっ!!もっと....もっと絶望の力を!!他の世界で手に入れた....絶望をっ!
セレス:お、おされてるっ!
ラリマー:ぐっ......、
絶望の王:自分たちの力が1番だと奢る傲慢、強くなれないと自分は弱いと嘆く卑屈、他者の幸せを恨む嫉妬、大切なものを奪われたという怨恨......。全ての絶望の心よ、もっと俺に力をっ!!
セレス:力が....さらに強く......っ!
絶望の王:ブラック・ディストピア。
ラリマー:ぐあっ!.....まだ、こんなに力が残ってたのか....っ!
セレス:ラリマー!
ラリマー:セレスっ!セレスっ!くそ、黒い風が....周りが見えねぇ....っ!
絶望の王:うおぉぉぉぉぉっ!!
ラリマー:うぐっ......。なんだ....これ.....重く冷たい....っ!くそ......っ!心が....押しつぶされそう....だ......。
セレス:ラリマー.......。
ラリマー:っ!だめだ!弱気になるな、諦めるな!!!世界を....全ての世界を救うんだ!諦めない心は、見てきたはずだ!!俺たちが!!
ラリマー:........俺たち、が......?........そう、だ。俺はいろんな世界で、戦友たちとともに脅威に打ち勝ってきたじゃないか。諦めない心を間近で見てきたじゃないか。
ラリマー:ハウラとロクドの世界では、適わないような強大な力の前に、敵同士で手を取り合って脅威に打ち勝った。アングウィスでは、自分の弱さに打ちのめられそうになりながらも、自分だけの強さを見つけ出し、脅威に打ち勝った。ステノアの世界では、嫉妬が産む軋轢の中で、大切なものを守り抜く力で脅威に打ち勝った。サタナークでは、絶望に包まれながらも、仲間の力と絆を信じ合い、脅威に打ち勝った。
ラリマー:どんな脅威でも、俺達も戦友たちも、最後まで諦めなかった!!共に世界のために、戦ってきた!.........あぁ、大切な仲間たちの記憶....。いろんな世界で過ごして、仲間と共に力をつけてきた....記憶。
:
ラリマー:.........あぁ、おかえり、俺の、俺たちラリマーの記憶........。俺一人じゃ戦えない。みんなの力を....貸してくれ!
0:ラリマーが白い光に包まれる。
絶望の王:っ!?な、なんだっ!?やつの体が....光ってる....!?
セレス:ラリマー!
ラリマー:思い出した。これまで培ってきた希望の.........っ!?あ、あ、あぁぁぁぁっ!?
セレス:ラリマー!しっかりして!
ラリマー:ぐあっ.....頭がっ....体がっ.....!ぐあぁぁっ!!力.....がっ!!
絶望の王:くく......はははははっ!!貴様ごときの器じゃ、ほかの世界の情報を一気に入れこまれただけで膨大な負荷がかかる!だからお前は世界を渡る度に記憶も力も失う。貴様は所詮、白蛇石の子でしかないんだからな!そのまま膨大な力に滅ぼされるがいい!
ラリマー:力がっ!抑えられないっ!くっ!!!うああああっ!!
セレス:ラリマーっ!!しっかりして!
ラリマー:セレ、ス....っ!
セレス:私があなたの記憶と情報を整理する。大丈夫、落ち着いて。
ラリマー:あ、あ......っ!
セレス:上手くいくか....いや、成功させなきゃっ!!ラリマー、私の目を見て!
ラリマー:っ!
セレス:記憶よ、思念よ、知識よ。ここに集結し、結晶化せよ!......クリスタライズ・メモリーズ!
ラリマー:くっ!!
0:ラリマーのブレスレットにある透明な石が光、彩る。
ラリマー:.......あ。
セレス:はぁ、はぁ.......よかった、成功した.....!
ラリマー:セレス......。
セレス:ラリマー。あなたの膨大な情報や力はあなたのこのブレスレットに移した。このブレスレットをつけていれば、他の世界の記憶も力も消えない。力が暴走することもない。
ラリマー:透明だった石に色が....緑、黄色、青、黒......。
セレス:もう大丈夫。ラリマー。あなたは今、他の世界で培ってきた力も取り戻した。その希望の力で、絶望をとめて。
ラリマー:わかった。セレス、ありがとう!
絶望の王:ふん、とんだ邪魔がはいった。だが、貴様は俺には勝てねぇ.....!もっと、もっと絶望の力をっ!......絶望の王、ルシア・ラスト・ブラック!この世界を破壊してやるっ!!!
ラリマー:俺は、いろんな世界でいろんな仲間の心に触れてきた。他者を理解し、共に協力する心。自分や他者の強さと弱さを受け入れる心。誰かを大切に想い、慕う心。仲間を尊重し信じ合う心。それは全て、希望に繋がる心。.......俺はみんなの希望の力で戦う!希望の王、ラリマー....ラリマー・レッド・アイト!この力でお前を止める!
絶望の王:行くぞ、ラリマーぁぁぁぁっ!!!
ラリマー:うぉぉおおおおっ!!!
絶望の王:ブラック・ディストピアっ!!
ラリマー:ホワイト・アイトっ!!!
0:ふたつの力が拮抗している
セレス:っ!どっちもすごい力......っ!負け、ないで....っ!負けないで!ラリマー!!!
絶望の王:絶望の力が!俺の力が!何よりも強いんだ!滅びろぉぉぉぉっ!!!!
ラリマー:.........ははっ。
絶望の王:何がおかしいっ!
ラリマー:今なら、あんたの言うことが理解できるよ、レイゲン。
絶望の王:なにを......!
ラリマー:愛する者のために使う力は........何よりも強いんだ!!!!!はぁぁぁぁぁ!!
絶望の王:ぐっ!力が強くなって....!くそ、おされ、てる....っ!
ラリマー:愛するもののために、愛する世界のために!ルークス・アイト!!
絶望の王:ああああああああぁぁぁっ!!
セレス:光が......全てを包んでる......希望の光......エルシャの、希望.....。あっ....エルシャのチャームが!
0:(セレスの持っていたエルシャのストーンチャームがどこかへ飛んでいく)
絶望の王:肉体が.....焼けている......もう、この肉体も持たないだろう。....希望の炎。焼けているのに、何一つ苦しくない。それに、どこか懐かしいような気さえする。....あぁ、エルシャ、エルシャの炎だ。
:
絶望の王:.....?これ、は?あのセレスと言う人間が持っていたもの....エルシャの想いが込められた、エルシャのチャーム。っ!!.......っ。エル、シャ。君は今でもなお、この俺を守りたいと、救いたいと......愛したいと、言うのか。......あぁ、あぁ、あぁ!エルシャ!........ありがとう。俺は...俺はただ、君と創ったこの世界を、この世界の人間を、そして君を......愛したいだけだったのかもしれないな......。
0:間
ラリマー:絶望の王の....肉体が消えていってる。
セレス:最後の仕上げ。私の、ハーツ族の力で彼を、ラストブラックをこの黒蛇石に封印する。
ラリマー:封印しなかったら、どうなるんだ....?
セレス:たぶん......肉体も精神も消滅して....黒蛇石も消えてしまうと思う。そうなったら、また世界のバランスが崩れて、世界は崩壊に向かっていく。
ラリマー:そうか。......なぁ、絶望の王が....ラストブラックがまた、この世界に人として降り立つことはできるの?
セレス:えぇ。彼が自分の絶望をコントロール出来るようになって、この世界の人間、ほかの世界の人間もみんな、彼のことを受け入れられるようになったら.....一緒に世界の中で生きていくことはできると思うわ。
ラリマー:そうか。そういう世界に、していかないとな。
セレス:..........うん。さて、封印の魔法を使うね。ラリマー、さがってて。
ラリマー:あぁ。
セレス:絶望の力よ、世界の平和のために、眠りたまえ。……ブラック・ケーラ。
0:黒蛇石の思念
絶望の王:あぁ、また俺は封印されたのか。アイトの力に勝てなかった....。絶望の力が足りなかった?もっともっと絶望を蓄える必要があった?いや、違うな。......俺はただ、希望が欲しかっただけだ。またこの世界がひとつになって、アイツと共に過ごせる世界が。
ルシア:気づいたみたいだね。
絶望の王:お前は!ルシア!なぜここに?肉体はもう滅びた。お前は俺に縛られなくなった。ここにいる必要は無い。さっさと立ち去れ。
ルシア:僕はここにいるよ。君の望む希望の世界になって、君の封印が再び解けるその時まで。僕はここにいる。
絶望の王:なぜ.......。
ルシア:1人にしておくと、また暴走してしまいそうだからね。そうならないように、見張っておかなきゃ。それに......孤独は、つらいだろう?僕の肉体を貸した仲なんだ。一緒にいようよ、兄弟。そして、たくさん話をしよう。どんな世界にしていきたいのか、その世界でどう生きていきたいのか、どんな未来が待っているのか。時間はたくさんあるだろうから、たくさん語りつくそう。
絶望の王:......どんな世界にしていきたい、か。俺の封印が解けるまで、語り尽くせるかわからんな。かつて、エルシャとたくさん語り合ったことだ。
ルシア:いいね、その時の話を、僕にも聞かせてよ。......じゃあ僕は、エルファとの素晴らしい15年間を君に聞かせてあげる。
絶望の王:そうか。だったら俺は、エルシャとすごした100年を語るとしよう。
ルシア:ははっ!100年かぁ!それは適わないや!...........それとね。他の世界からもう1つ、こっちに向かっている魂がある。にぎやかに、なりそうだ。きっと、素敵な唄を聞かせてくれるよ。
0:ウテク村の小さな丘
ラリマー:終わった、な。
セレス:うん。まだ、ヒト族と魔族の戦争は続くと思うけど......必ず平和な世界にしてみせる。
ラリマー:あぁ。希望の世界になることを......祈っているよ。
セレス:任せて。私は絶対に諦めないから。
ラリマー:俺は、君と一緒に……。君と一緒に戦えてよかった。良い時間だった。とても。忘れたくないほどに。
セレス:ラリマー。私はあなたのこと、ずっとずっと忘れない。
ラリマー:....っ!セレスっ!
0:(ラリマーは強くセレスの事を抱きしめる)
セレス:ねぇ、そんなに強く抱きしめないでよ。.........離れたくなくなってしまう。
ラリマー:離したく......ないんだ。
セレス:ラリマー。世界を、数々の世界を、平和に導いてくれてありがとう。そして、お疲れ様。
ラリマー:.........っ!
セレス:あなたに出会えてよかった。
ラリマー:セレス....。俺もだ。君がいてくれて本当に良かった。......立ち向かうのが怖いと思うこともあったし、絶対的な力の前に屈してしまうこともあった。それでも、君が何度も立ち上がらせてくれた。君がいたから、俺は最後まで立ち向かうことが出来た。
セレス:うん。素敵だったよ、ラリマー。
ラリマー:..........ごめん、君に卑怯だって言われるかもしれないが......言わせて欲しい。
セレス:うん......。
ラリマー:セレス、愛している。(セレスに口付けをする)
セレス:..........卑怯、ね。私はずっと言わないようにしてたのに。
ラリマー:聞かせて。セレス。
セレス:あなたを愛してる、ラリマー。できることなら、ずっとこの世界であなたと一緒に暮らしていきたかった。
ラリマー:........っ。セレス、セレス......っ!
セレス:時が来てしまった.....ラリマー.....。
0:ラリマーの身体が光をおびはじめる。
ラリマー:そんな....っ!俺は!俺はっ!!
セレス:ラリマー、笑って。最後は笑いあって、終わらせましょう。
ラリマー:......っ!うぅ......っ!
セレス:ラリマー、ありがとう、さようなら。
ラリマー:セレス....っ!ありがとう、ありがとう!愛してるっ!!!
0:ラリマーは光の粒子となって消えていった。
セレス:..........。........ぅ......。うっ......うわぁぁぁぁぁぁ!ラリマー、ラリマー!!
0:間
ラリマー:あぁ、セレス、セレスっ!どうして....どうして離れ離れにならなきゃいけないんだ........こんなにも想いあっているのに。嫌だ、嫌だ、この世界にいたい、セレスと一緒にいたい......忘れたく、ない......。
ラリマー:セレスのことだけじゃない。せっかく、他の世界の仲間たちのことも思い出せたのに.....。もう、嫌なんだ......彼らを忘れてしまうことが......世界を離れることがっ!!!
ラリマー:...... なぁ白蛇石......どうして......いずれ消えゆく運命なら、どうしてこの感情を与えたんだ......!離れたくない、他の世界で生きる俺たちもそうだった.........。離れたくないんだよ、その世界で生きていたかった!
ラリマー:お願いだ、白蛇石....いや、エルシャ!!今この世界は平和へ導かれつつある!最大の脅威は消え去った!今度は......今度は俺もセレスたちと、様々な世界の仲間たちと!一緒に平和に導いていきたいんだ!お願いだ!!俺を........世界へ戻してくれ......。
:
ラリマー:..............っ!!こ、これは....ブレスレットの赤い石が光って......!?
0:白蛇石の祠
セレス:白蛇石の祠.....ここでラリマーと出会った。........素敵な、出会いだった。わかっていたけど、ラリマーはいずれこの世界の記憶を失うということは知っていたけど......それでも......あなたを愛さずにはいられなかった。
セレス:ラストブラックと戦っているときのラリマーは、何度でも立ち上がり、希望の力をもって立ち向かっていた。その時の彼も素敵だったけど…、力を蓄えている間の3か月。一緒に過ごして、穏やかで優しくて頑張り屋なラリマーも見てきたの。
セレス:その時の彼も…いとおしかった。ずっと秘めていた......別れが来るのが分かっていたから。でも…あなたから言われてしまったら......溢れてしまった。.....会いたい。あなたに会いたい......。あなたと一緒に.....世界を変えていきたかった......!ラリマーっ!
0:セレスのペンダントが光り始める
セレス:っ!ペンダントが光って......っ!?白蛇石も、光ってる!!
:
セレス:............!!............おかえり。
:
0:ite【完】
0:ite-ラストハーツ-
:
セレス:昔、世界を作ったとされる、2匹の蛇がいました。
セレス:白い蛇は、光を創り、人々に友愛や信頼と言った希望の心を。
セレス:黒い蛇は、闇を創り、人々に嫉妬や諦めといった絶望の心を与えました。
セレス:2つの存在は世界のバランスを保っていましたが、ある日、人々は絶望の心と闇を疎ましく思うようになっていきました。
セレス:そして、人々は黒い蛇を世界から追い出すことにしました。
セレス:怒った黒い蛇は世界を絶望で覆いつくそうとしました。
セレス:そして.........。
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ラリマー:セレス、準備できたぞ。いつでも行ける。
セレス:ラリマー。もう傷は大丈夫?
ラリマー:あぁ。絶望の王がここを責めてきて1週間......。俺もセレスも、この村も.....まだ少し傷は残っているけど、立ち止まってられない。早くアイツを討たないと......また絶大な力を取り戻してしまう。あの2人の為にも、次は必ずアイツを封印する!
セレス:えぇ、そうね。絶望の王がいる黒蛇石は、黒族の集落だったところにあるの。ここからそんなに遠くないわ。
ラリマー:黒族......20年前くらいにヒト族に滅ぼされたっていう....絶望の力で魔力を増幅させる魔族、だったっけ?
セレス:うん。絶望の王の肉体は、その黒族の生き残りの少年のもの。だからこそ、絶望の力を最大限まで引き出すことが出来るの。.....気を引き締めていきましょうね。
ラリマー:大丈夫。俺はもう、負けない。
セレス:うん!あ、ラリマー。これを。
ラリマー:これは......ブレスレット?赤色の石と、透明な石......。
セレス:お守り。きっとラリマーの役に立ってくれるはずだから。
ラリマー:ありがとう。大事にする。
セレス:ラリマー、黒蛇石のところへ行く前に、寄りたいところがあるの。
ラリマー:寄りたいところ?
セレス:私たち、ハーツ族が暮らしていた村に。......今はもう誰もいないけど。
ラリマー:わかった。行こう。
セレス:さて、出発しましょうか。最後の、決戦に。
ラリマー:あぁ......!
0:黒蛇石の祠
絶望の王:なぜ.....なぜだ。あんな魔法に俺が負けるなんて。有り得ない。絶望の力こそが最強の力。どんな人間も魔族も、絶望には勝てないはずだ。どうして俺はこんなにも弱っている。おかしい、おかしい、おかしい!
ルシア:それは、お前が間違っているからだ、黒蛇。
絶望の王:貴様は......ルシア、か。そうだ、貴様がエルファをそそのかし、邪魔をした!俺が間違っているだと?笑わせるな。絶望の前にどんな力も無力に等しい。貴様は黙っていろ、俺から出ていけ。俺がルシアになる。貴様は消えろ。
ルシア:絶望っていうのは、希望があるからこそ存在できるんだ。希望のない世界に絶望は存在できない。逆に、絶望があるからこそ、希望もある。絶望も希望も、互いに消しあってはいけないものなんだよ。お前はそれを理解していないから、封印された。そうだろ?
絶望の王:黙れ!希望なんていらない。希望があるから、俺は、俺は......っ!
ルシア:1番絶望に捕らわれてるのは......お前なんだな、黒蛇。ま、僕はもう何もできない。あとは彼らに任せるとしよう。
0:ハーツ族の村
ラリマー:ここが、ハーツ族の村か。......どこもかしこも焼き払われている。酷い有様だ。
セレス:........えぇ。
ラリマー:セレス、寄りたいところってのは?
セレス:エルファ師匠のお店に。あそこに、探しているものがあるの。
ラリマー:探しているもの?なんだ、それは。
セレス:こっち。来て。
0:エルファの店
セレス:エルファ師匠のお店....焼けちゃってるけど......地下は無事、みたいね。
ラリマー:お店の地下にこんな空間があるんだな....ここは、書斎か?いろんな本が置いてある。
セレス:ハーツ族が語り継いできた、この世界のこと。それがここにあるの。そして......これが、創世記......この世界の創造が記されているもの。
ラリマー:創世記?
セレス:ねぇ、ラリマー。あなたの役目は?
ラリマー:え?急になんだよ?
セレス:答えて。
ラリマー:え、あぁ。世界の脅威が訪れた時に、その脅威から守る存在。それが俺、アイトの役目だ。
セレス:うん。そしてあなたは、各世界をまわって、脅威を退けてきた。ここの世界の他にもいろんな世界がある。
ラリマー:他の世界の記憶はねぇけどな。
セレス:でもね、ラリマー。もとはね、世界は私たちが今いるこの世界、一つだけだったのよ。
ラリマー:え?
セレス:この世界は、その昔、大きな白い蛇と、黒い蛇、ふたつの力によって創造された。自然ができ、生命がうまれ、そして人間が誕生した。白い蛇は、光を創り、人々に友愛や信頼と言った希望の心を。
セレス:黒い蛇は、闇を創り、人々に嫉妬や諦めといった絶望の心を与えたの。
セレス:そして、その2つの正反対の力はバランスを保ち、世界は平和だった。
ラリマー:もともとは絶望の王....黒蛇も、この世界で人々とともに暮らしていた、ってこと?
セレス:そうよ。だけどね。人々は絶望という負の心を嫌うようになった。苦しみから逃れたいって思うようになった。そして、その力を持つ黒蛇をこの世界から排除することに決めた。
ラリマー:排除..。
セレス:人々の決断に、白蛇は必死に説得しようとした。黒蛇を守るために。だけど人々は聞く耳を持たず、黒蛇を排除しようとするの。それに激怒した黒蛇は世界を破壊しようと力を放った。世界は絶望の炎で覆い尽くされた。.......それを止め、世界を救ったのが白蛇。
ラリマー:白蛇は、黒蛇を守ろうとしていた?
セレス:うん。白蛇は黒蛇と一緒に過ごしていたし、これから先もそうしたいと思っていたから。....白蛇はね、ちゃんと知ってたの。
ラリマー:知っていた?
セレス:絶望があるから、希望がうまれるってこと。希望も絶望も、どちらがひとつがかけてしまえば、もう片方も消滅してしまう。その2つがバランスよく存在していることで、世界は安定し、平和が保たれるの。
ラリマー:なるほど、な....。それで......白蛇はどうやって世界を救ったんだ?黒蛇を排除する訳にはいかなかったんだろ?
セレス:白蛇は、黒蛇を石に変えて、その力を抑え込んだ。そして、絶望の力を原動力としていた魔族、黒族の集落へと封印したの。黒蛇を石に変えてしまった白蛇は、自分もそうなるべきだと、自身をも石に変えた。
ラリマー:それが.....白蛇石と黒蛇石の誕生ってことか。
セレス:そのふたつの石は、バランスよく希望の力と絶望の力を放出させて、世界はまた平穏が訪れた......のだけど、
ラリマー:まだ続きが?
セレス:それでもなお、その黒蛇石を壊そうとする人間がいたのよ。黒族は必死に守っていたんだけど、それでも後を絶たなくて。......だから、次に白蛇石は、黒蛇石が存在しない世界を創った。黒蛇石の力は、白蛇石を通じて他の世界にも放出して。その世界に、黒蛇石を壊そうとしていた人間を送り、そうすることで全ての世界がようやく安定するようになったの。これが、全ての世界の始まり。
ラリマー:そんな物語があったんだな。
セレス:そして今、黒蛇石の封印がとかれ、絶望の王としてこの世界に復活してしまった。絶望の王は......自分を排除しようとした人々、自分を封印した白蛇、全てを恨んでしまっている。だから、白蛇石とこの世界を破壊しようとしてる。私たちで、とめなきゃ。
ラリマー:セレス。
セレス:なに?ラリマー。
ラリマー:どうして、この世界の成り立ちを俺に話したんだ?
セレス:この世界の始まりを知ってもらいたいからよ。
ラリマー:それだけか?
セレス:........。
ラリマー:セレス、君は絶望の王に対して、止めるという言葉しか使っていない。倒すとか、封印するとか、そういう言葉は使わなかった。君は、絶望の王と共に過ごす未来を、願っているんじゃないのか。
セレス:さすがだね、ラリマー。そうだよ。私は、絶望の王......黒蛇とわかりあって、世界の始まりのように暮らせればって思ってるよ。
ラリマー:それが1番いいのはわかってるけど、それが1番難しいのも、君ならわかってるはずだ。
セレス:もちろん。絶望の王は封印しないといけないと思ってるよ。今は、ね。それだけの絶望を彼は抱えてしまっているから。......でもね。時間をかけて絶望の王も、私たち魔族も、ヒト族も、互いを受け入れ合えば、また世界はひとつになれると思うの。白蛇と黒蛇が一緒に創って過ごしていた、ひとつの世界......アイト、に。
ラリマー:え、アイト?
セレス:アイトはもともと、白蛇と黒蛇が創り上げた世界の名前。
ラリマー:そう、だったのか…。じゃあ白蛇石が、母が俺の事をアイトと名付けたのは.....
セレス:ひとつの願い、なのかもね。この世界をひとつにしたいって言う。
ラリマー:その世界には絶望の王も含まれている。.....白蛇石は彼のことも守りたい、ってことか。
セレス:さ、ラリマー。見たいものは見れたから。行きましょう。
ラリマー:あぁ.....。行こう、絶望の王の元へ。
セレス:.......あれ、これは?
ラリマー:セレス?どうした?
セレス:ううん。なんでもない。先に出ておいて。本を片付けて行くから。
ラリマー:おう。
セレス:これは.......。
0:黒族の元集落
絶望の王:待っていたぞ、アイト。
ラリマー:絶望の王。最後の戦いにきた。俺たちの争いを、終わらせよう。
絶望の王:そうだな。お前を倒して、白蛇石を破壊して、全ての世界を俺のものにする。希望も人間も何もいらない。絶望だけの世界だ。
ラリマー:絶望だけの世界なんて有り得ない。希望があるからこそ絶望がある。どうしてわからないんだ!
絶望の王:どいつもこいつも同じことを。希望を持ったところでなんだ!結局は希望を持ったところで待っているのは絶望だ!自分たちは強いという希望を持ったが故に、それ以上の強いものが現れると適わないと絶望する。強くなろうと周りよりも努力して希望を抱いても、追いつけない強者がいるが故に自分の弱さに絶望する。誰かを愛すという希望を持ったのに、その愛した人から裏切られて絶望する。........希望なんて持つだけ無駄だ。
セレス:ねぇ、絶望の王。それは、あなたが希望を持ちたいという願望にしか聞こえないわ。あなたは希望を持ちたいけど、その希望を失うのが怖くて見ないようにしている…違う?
絶望の王:なんだと?
セレス:....エルシャ・ホワイト。
絶望の王:っ!
セレス:あなたなら、わかるわよね、絶望の王、いえ、ラストブラック。
ラリマー:セレス、その名は....?
セレス:エルシャ・ホワイト。あなたの母......白蛇の名前よ。かつてこの世界を、黒蛇....ラストブラックと共に創った、白蛇の名前。
絶望の王:その名を......思い出させるな。
セレス:エルファ師匠の....ハーツ族の書斎にね、これが隠されてあったの。
ラリマー:それは......ストーンチャーム....記憶のストーンチャームか?
セレス:そう。記憶が封じ込められているストーンチャーム。ここに封じられてたのは、白蛇....エルシャ・ホワイトの想い。ラストブラック、あなたに対するね。
絶望の王:黙れ!アイツは俺を裏切った!俺を裏切ってこの石に封印した!!そうだ、希望を持ったところで結局はみな裏切るんだ......だからそんな世界....壊してやる....俺が全て!壊してやるっ!!ブラック・フレイム!!
ラリマー:ちっ!やっぱり、説得は無駄か!だったら、力で押さえつけるしかない!フレイム・ガーデン!
セレス:っ!ねぇ!ラスト・ブラック!話を聞いて!
絶望の王:黙れ!黙れ!聞かない、聞きたくない!
ラリマー:セレス。戦う準備を。
セレス:.....っ!わかっ....た....。
ラリマー:もっと、もっと力を......レッドフレイムっ!!!
絶望の王:ぐっ....!くそ、こんな魔法ごとき....っ!
セレス:聖なる炎....ブルー・フレイム!
絶望の王:がぁっ!!...くそ、くそっ!俺は負けない.....こんなヤツらごときに....負けてたまるかっ!!もっと....もっと絶望の力を!!他の世界で手に入れた....絶望をっ!
セレス:お、おされてるっ!
ラリマー:ぐっ......、
絶望の王:自分たちの力が1番だと奢る傲慢、強くなれないと自分は弱いと嘆く卑屈、他者の幸せを恨む嫉妬、大切なものを奪われたという怨恨......。全ての絶望の心よ、もっと俺に力をっ!!
セレス:力が....さらに強く......っ!
絶望の王:ブラック・ディストピア。
ラリマー:ぐあっ!.....まだ、こんなに力が残ってたのか....っ!
セレス:ラリマー!
ラリマー:セレスっ!セレスっ!くそ、黒い風が....周りが見えねぇ....っ!
絶望の王:うおぉぉぉぉぉっ!!
ラリマー:うぐっ......。なんだ....これ.....重く冷たい....っ!くそ......っ!心が....押しつぶされそう....だ......。
セレス:ラリマー.......。
ラリマー:っ!だめだ!弱気になるな、諦めるな!!!世界を....全ての世界を救うんだ!諦めない心は、見てきたはずだ!!俺たちが!!
ラリマー:........俺たち、が......?........そう、だ。俺はいろんな世界で、戦友たちとともに脅威に打ち勝ってきたじゃないか。諦めない心を間近で見てきたじゃないか。
ラリマー:ハウラとロクドの世界では、適わないような強大な力の前に、敵同士で手を取り合って脅威に打ち勝った。アングウィスでは、自分の弱さに打ちのめられそうになりながらも、自分だけの強さを見つけ出し、脅威に打ち勝った。ステノアの世界では、嫉妬が産む軋轢の中で、大切なものを守り抜く力で脅威に打ち勝った。サタナークでは、絶望に包まれながらも、仲間の力と絆を信じ合い、脅威に打ち勝った。
ラリマー:どんな脅威でも、俺達も戦友たちも、最後まで諦めなかった!!共に世界のために、戦ってきた!.........あぁ、大切な仲間たちの記憶....。いろんな世界で過ごして、仲間と共に力をつけてきた....記憶。
:
ラリマー:.........あぁ、おかえり、俺の、俺たちラリマーの記憶........。俺一人じゃ戦えない。みんなの力を....貸してくれ!
0:ラリマーが白い光に包まれる。
絶望の王:っ!?な、なんだっ!?やつの体が....光ってる....!?
セレス:ラリマー!
ラリマー:思い出した。これまで培ってきた希望の.........っ!?あ、あ、あぁぁぁぁっ!?
セレス:ラリマー!しっかりして!
ラリマー:ぐあっ.....頭がっ....体がっ.....!ぐあぁぁっ!!力.....がっ!!
絶望の王:くく......はははははっ!!貴様ごときの器じゃ、ほかの世界の情報を一気に入れこまれただけで膨大な負荷がかかる!だからお前は世界を渡る度に記憶も力も失う。貴様は所詮、白蛇石の子でしかないんだからな!そのまま膨大な力に滅ぼされるがいい!
ラリマー:力がっ!抑えられないっ!くっ!!!うああああっ!!
セレス:ラリマーっ!!しっかりして!
ラリマー:セレ、ス....っ!
セレス:私があなたの記憶と情報を整理する。大丈夫、落ち着いて。
ラリマー:あ、あ......っ!
セレス:上手くいくか....いや、成功させなきゃっ!!ラリマー、私の目を見て!
ラリマー:っ!
セレス:記憶よ、思念よ、知識よ。ここに集結し、結晶化せよ!......クリスタライズ・メモリーズ!
ラリマー:くっ!!
0:ラリマーのブレスレットにある透明な石が光、彩る。
ラリマー:.......あ。
セレス:はぁ、はぁ.......よかった、成功した.....!
ラリマー:セレス......。
セレス:ラリマー。あなたの膨大な情報や力はあなたのこのブレスレットに移した。このブレスレットをつけていれば、他の世界の記憶も力も消えない。力が暴走することもない。
ラリマー:透明だった石に色が....緑、黄色、青、黒......。
セレス:もう大丈夫。ラリマー。あなたは今、他の世界で培ってきた力も取り戻した。その希望の力で、絶望をとめて。
ラリマー:わかった。セレス、ありがとう!
絶望の王:ふん、とんだ邪魔がはいった。だが、貴様は俺には勝てねぇ.....!もっと、もっと絶望の力をっ!......絶望の王、ルシア・ラスト・ブラック!この世界を破壊してやるっ!!!
ラリマー:俺は、いろんな世界でいろんな仲間の心に触れてきた。他者を理解し、共に協力する心。自分や他者の強さと弱さを受け入れる心。誰かを大切に想い、慕う心。仲間を尊重し信じ合う心。それは全て、希望に繋がる心。.......俺はみんなの希望の力で戦う!希望の王、ラリマー....ラリマー・レッド・アイト!この力でお前を止める!
絶望の王:行くぞ、ラリマーぁぁぁぁっ!!!
ラリマー:うぉぉおおおおっ!!!
絶望の王:ブラック・ディストピアっ!!
ラリマー:ホワイト・アイトっ!!!
0:ふたつの力が拮抗している
セレス:っ!どっちもすごい力......っ!負け、ないで....っ!負けないで!ラリマー!!!
絶望の王:絶望の力が!俺の力が!何よりも強いんだ!滅びろぉぉぉぉっ!!!!
ラリマー:.........ははっ。
絶望の王:何がおかしいっ!
ラリマー:今なら、あんたの言うことが理解できるよ、レイゲン。
絶望の王:なにを......!
ラリマー:愛する者のために使う力は........何よりも強いんだ!!!!!はぁぁぁぁぁ!!
絶望の王:ぐっ!力が強くなって....!くそ、おされ、てる....っ!
ラリマー:愛するもののために、愛する世界のために!ルークス・アイト!!
絶望の王:ああああああああぁぁぁっ!!
セレス:光が......全てを包んでる......希望の光......エルシャの、希望.....。あっ....エルシャのチャームが!
0:(セレスの持っていたエルシャのストーンチャームがどこかへ飛んでいく)
絶望の王:肉体が.....焼けている......もう、この肉体も持たないだろう。....希望の炎。焼けているのに、何一つ苦しくない。それに、どこか懐かしいような気さえする。....あぁ、エルシャ、エルシャの炎だ。
:
絶望の王:.....?これ、は?あのセレスと言う人間が持っていたもの....エルシャの想いが込められた、エルシャのチャーム。っ!!.......っ。エル、シャ。君は今でもなお、この俺を守りたいと、救いたいと......愛したいと、言うのか。......あぁ、あぁ、あぁ!エルシャ!........ありがとう。俺は...俺はただ、君と創ったこの世界を、この世界の人間を、そして君を......愛したいだけだったのかもしれないな......。
0:間
ラリマー:絶望の王の....肉体が消えていってる。
セレス:最後の仕上げ。私の、ハーツ族の力で彼を、ラストブラックをこの黒蛇石に封印する。
ラリマー:封印しなかったら、どうなるんだ....?
セレス:たぶん......肉体も精神も消滅して....黒蛇石も消えてしまうと思う。そうなったら、また世界のバランスが崩れて、世界は崩壊に向かっていく。
ラリマー:そうか。......なぁ、絶望の王が....ラストブラックがまた、この世界に人として降り立つことはできるの?
セレス:えぇ。彼が自分の絶望をコントロール出来るようになって、この世界の人間、ほかの世界の人間もみんな、彼のことを受け入れられるようになったら.....一緒に世界の中で生きていくことはできると思うわ。
ラリマー:そうか。そういう世界に、していかないとな。
セレス:..........うん。さて、封印の魔法を使うね。ラリマー、さがってて。
ラリマー:あぁ。
セレス:絶望の力よ、世界の平和のために、眠りたまえ。……ブラック・ケーラ。
0:黒蛇石の思念
絶望の王:あぁ、また俺は封印されたのか。アイトの力に勝てなかった....。絶望の力が足りなかった?もっともっと絶望を蓄える必要があった?いや、違うな。......俺はただ、希望が欲しかっただけだ。またこの世界がひとつになって、アイツと共に過ごせる世界が。
ルシア:気づいたみたいだね。
絶望の王:お前は!ルシア!なぜここに?肉体はもう滅びた。お前は俺に縛られなくなった。ここにいる必要は無い。さっさと立ち去れ。
ルシア:僕はここにいるよ。君の望む希望の世界になって、君の封印が再び解けるその時まで。僕はここにいる。
絶望の王:なぜ.......。
ルシア:1人にしておくと、また暴走してしまいそうだからね。そうならないように、見張っておかなきゃ。それに......孤独は、つらいだろう?僕の肉体を貸した仲なんだ。一緒にいようよ、兄弟。そして、たくさん話をしよう。どんな世界にしていきたいのか、その世界でどう生きていきたいのか、どんな未来が待っているのか。時間はたくさんあるだろうから、たくさん語りつくそう。
絶望の王:......どんな世界にしていきたい、か。俺の封印が解けるまで、語り尽くせるかわからんな。かつて、エルシャとたくさん語り合ったことだ。
ルシア:いいね、その時の話を、僕にも聞かせてよ。......じゃあ僕は、エルファとの素晴らしい15年間を君に聞かせてあげる。
絶望の王:そうか。だったら俺は、エルシャとすごした100年を語るとしよう。
ルシア:ははっ!100年かぁ!それは適わないや!...........それとね。他の世界からもう1つ、こっちに向かっている魂がある。にぎやかに、なりそうだ。きっと、素敵な唄を聞かせてくれるよ。
0:ウテク村の小さな丘
ラリマー:終わった、な。
セレス:うん。まだ、ヒト族と魔族の戦争は続くと思うけど......必ず平和な世界にしてみせる。
ラリマー:あぁ。希望の世界になることを......祈っているよ。
セレス:任せて。私は絶対に諦めないから。
ラリマー:俺は、君と一緒に……。君と一緒に戦えてよかった。良い時間だった。とても。忘れたくないほどに。
セレス:ラリマー。私はあなたのこと、ずっとずっと忘れない。
ラリマー:....っ!セレスっ!
0:(ラリマーは強くセレスの事を抱きしめる)
セレス:ねぇ、そんなに強く抱きしめないでよ。.........離れたくなくなってしまう。
ラリマー:離したく......ないんだ。
セレス:ラリマー。世界を、数々の世界を、平和に導いてくれてありがとう。そして、お疲れ様。
ラリマー:.........っ!
セレス:あなたに出会えてよかった。
ラリマー:セレス....。俺もだ。君がいてくれて本当に良かった。......立ち向かうのが怖いと思うこともあったし、絶対的な力の前に屈してしまうこともあった。それでも、君が何度も立ち上がらせてくれた。君がいたから、俺は最後まで立ち向かうことが出来た。
セレス:うん。素敵だったよ、ラリマー。
ラリマー:..........ごめん、君に卑怯だって言われるかもしれないが......言わせて欲しい。
セレス:うん......。
ラリマー:セレス、愛している。(セレスに口付けをする)
セレス:..........卑怯、ね。私はずっと言わないようにしてたのに。
ラリマー:聞かせて。セレス。
セレス:あなたを愛してる、ラリマー。できることなら、ずっとこの世界であなたと一緒に暮らしていきたかった。
ラリマー:........っ。セレス、セレス......っ!
セレス:時が来てしまった.....ラリマー.....。
0:ラリマーの身体が光をおびはじめる。
ラリマー:そんな....っ!俺は!俺はっ!!
セレス:ラリマー、笑って。最後は笑いあって、終わらせましょう。
ラリマー:......っ!うぅ......っ!
セレス:ラリマー、ありがとう、さようなら。
ラリマー:セレス....っ!ありがとう、ありがとう!愛してるっ!!!
0:ラリマーは光の粒子となって消えていった。
セレス:..........。........ぅ......。うっ......うわぁぁぁぁぁぁ!ラリマー、ラリマー!!
0:間
ラリマー:あぁ、セレス、セレスっ!どうして....どうして離れ離れにならなきゃいけないんだ........こんなにも想いあっているのに。嫌だ、嫌だ、この世界にいたい、セレスと一緒にいたい......忘れたく、ない......。
ラリマー:セレスのことだけじゃない。せっかく、他の世界の仲間たちのことも思い出せたのに.....。もう、嫌なんだ......彼らを忘れてしまうことが......世界を離れることがっ!!!
ラリマー:...... なぁ白蛇石......どうして......いずれ消えゆく運命なら、どうしてこの感情を与えたんだ......!離れたくない、他の世界で生きる俺たちもそうだった.........。離れたくないんだよ、その世界で生きていたかった!
ラリマー:お願いだ、白蛇石....いや、エルシャ!!今この世界は平和へ導かれつつある!最大の脅威は消え去った!今度は......今度は俺もセレスたちと、様々な世界の仲間たちと!一緒に平和に導いていきたいんだ!お願いだ!!俺を........世界へ戻してくれ......。
:
ラリマー:..............っ!!こ、これは....ブレスレットの赤い石が光って......!?
0:白蛇石の祠
セレス:白蛇石の祠.....ここでラリマーと出会った。........素敵な、出会いだった。わかっていたけど、ラリマーはいずれこの世界の記憶を失うということは知っていたけど......それでも......あなたを愛さずにはいられなかった。
セレス:ラストブラックと戦っているときのラリマーは、何度でも立ち上がり、希望の力をもって立ち向かっていた。その時の彼も素敵だったけど…、力を蓄えている間の3か月。一緒に過ごして、穏やかで優しくて頑張り屋なラリマーも見てきたの。
セレス:その時の彼も…いとおしかった。ずっと秘めていた......別れが来るのが分かっていたから。でも…あなたから言われてしまったら......溢れてしまった。.....会いたい。あなたに会いたい......。あなたと一緒に.....世界を変えていきたかった......!ラリマーっ!
0:セレスのペンダントが光り始める
セレス:っ!ペンダントが光って......っ!?白蛇石も、光ってる!!
:
セレス:............!!............おかえり。
:
0:ite【完】