台本概要
472 views
タイトル | クレメントの呪い |
---|---|
作者名 | まる。 |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 3人用台本(不問3) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
彼は、その慈悲を以って人を呪う
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ジル | 不問 | 74 | |
ハーパー | 不問 | 71 | |
クレメント | 不問 | 38 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
クレメントの呪い
________________
クレメント 不問
ジル 不問
ハーパー 不問
_________
彼は、その慈悲を以って人を呪う
______________
ジル M:クレメントの呪い
ハーパー:こんな時間に呼びつけるなんて、君だいぶ常識ないね。
ジル:いや、ごめん。話したいことがあって。
ハーパー:告白なら勘弁だよ。恋人いるの知ってるだろ。
ジル:そんなんじゃねぇよ...。最近この町で事件が多いのは知ってるだろ。
ハーパー:あー、女子高生謎の失踪事件とか、イチゴの爺ちゃんの不審死?とかのやつでしょ。
ジル:そう。どれも性別とか年齢なんてばらばらでダンさんが頭を抱えてる。
ハーパー:それが何、まさか俺(私)たちで解決しよう~とか、少年探偵団みたいなこと考えてないよね。
ジル:…まあ、そこまでは考えてない
ハーパー:は、近いことは考えてるってこと
ジル:…まあ。
ハーパー:ふざけないでよ、僕(私)は嫌だね。そんなめんどくさいこと。第一僕(私)らじゃ何もできない。
ハーパー:いつ自分らが同じ目にあうかわからないんだ。下手なことをして死に近づくのは嫌だよ。
ジル:お前の気持ちはわかるよ。でも、助けてほしい。
ハーパー:助ける?
ジル:…妹の体調が良くないんだ。
ハーパー:風邪とか?
ジル:だったらよかった
ハーパー:含みのある言い方だね。本当は何を言いたいの。
ジル:…だったらよかったんだ。
ハーパー:だから、なに。
ジル:歩くんだ
ハーパー:歩く。
ジル:夜中に外を徘徊し始めるんだ。まだ 16 歳の子供がだぞ。
ハーパー:まぁでも、年頃特有の夜遊びてきなモノじゃないの。
ジル:うちの妹に限ってそれはあり得ないだろ。
ハーパー:そうね、いい子だとは思うけど、お兄ちゃん(お姉ちゃん)の君が言っちゃ完全にシスコンだよそれ。
ジル:いつもは 22 時には寝る子供がある日突然夜中の深夜徘徊なんて。不思議に思わないわけないだろ。
ジル:それに、これまでの事件の中で唯一共通してることは、その深夜徘徊だ。
ハーパー:よく知らないけど、皆そうなの。
ジル:あぁ。
ハーパー:ふうん。
:沈黙
ハーパー:つまり。
ジル:助けてほしい。
ハーパー:だからさぁ
ジル:あいつが、いなくなるなんて考えたくない。
ジル:どうしたらいいかわからなくて。
ハーパー:…僕(私)が優しくてよかったね。
:場面転換
クレメント:うん、そのままこっちにおいで。大丈夫、怖いことは、何もない。
クレメント:…家に帰りたい?…可哀そうに。まだこの世界にとらわれているんだね。大丈夫、ここには君を縛るものはなにもないよ。
クレメント:勉強も運動も教育も、嫌なことからは逃げ出していいんだ。
クレメント:この世界は不平等で、理不尽で、不幸せだと言っていたろう。
クレメント:でも大丈夫。私が君をそんな世界から救うよ。
クレメント:もう行くの?大丈夫、待ってるから。気を付けて帰ってね。
クレメント:…ああ、本当に可哀そう。
:場面転換
ハーパー:で、君の妹の動向を探るべく仕方なーく君の家に泊まりに来てるわけだけど。
ジル:冷めるぞ。
ハーパー:これから妹の尾行を始めましょうねってときになんで僕(私)らは鍋を囲んでるの。
ジル:腹が減っては戦はできぬって日本ではよく言うんだろ。
ハーパー:言うけど。
ジル:どこに行くか、何を見るかもわからないんだ。腹ごしらえぐらいしないとな。
ハーパー:…てか妹は?
ジル:寝てる。
ハーパー:なんだ
ジル:寝てるなら大丈夫とでも思ったか。
ジル:寝てると思っていても急に起きて歩き始めるんだ。油断は禁物だぞ~
ハーパー:はあ、そーですか。
ジル:冷めるぞ。
ハーパー:鍋がそんな簡単に冷めてたまるか。
:チャイムの音
ジル:…こんな時間に誰だ。
ハーパー:もしかしたら例の殺人鬼が来たとか。
ジル:縁起でもないこと言うなよな。あと殺人鬼って。
ハーパー:だって事件の犯人は結局人を殺すかもしくは、でしょ。通称ね通称。
ジル:はあ…。見てくる。
ジル:はーい、どちら様。
クレメント:や
ジル:は?お前こんな時間にどうしたんだよ?
クレメント:いやね、たまたま散歩してたら近くを通ったからさ。
ジル:時間考えろよ、もう 23 時だぞ。
クレメント:ごめんごめん。でも夜更かしな君ならほら、起きてた。
クレメント:ん~いい匂い。寒かったんだよね、私も混ぜてよ。
:にこやかに笑うクレメント
ジル:ああ、入れてやりたいが俺(私)はこれから用があるから長居はさせれない
クレメント:大丈夫、久しぶりだしちょっと話そうよ
ジル:図々しいな。まあお前がいいならいいよ
ハーパー:あれ、クレちゃんじゃんか、どうしたの~上がる?
クレメント:ハーパーもいたんだ、久しぶり。うん、ちょっとお邪魔させてもらおうかなって。
ハーパー:この後僕(私)ら出かけるけど大丈夫?
クレメント:聞いたよそれ。ハーパーも一緒なんだ。
ジル:まあな。
ハーパー:とりあえずおいでよ、そこじゃ寒いだろ
クレメント:うん。じゃあお邪魔します。
:ジルの部屋にて
クレメント:わあ、美味しそう。日本風だ。
ジル:ジャパニーズは、寒い冬にはこうして鍋を囲むらしいからな。
クレメント:そうなんだ
ハーパー:そうだ、ジル。
ジル:ん
ハーパー:クレメントにもあの話したら。
ジル:確証もない話をあまり周りに知られたくは…
クレメント:何の話?
ジル:…
ハーパー:…ごめん。
ジル:いやいい、そこまで言って黙るのはあれだしな。
:説明をするジル。クレメント、鍋をつつきながら話を聞く
クレメント:なるほど
ジル:まあ、そんな感じだ。
クレメント:可哀そうに
ハーパー:ね
クレメント:ああいや、君たちが。
ジル:どういうことだ
クレメント:いやごめん、言葉を間違えたかも。ところでその妹さんは。
ハーパー:寝てるってさ
クレメント:そっか。うるさくして起こしちゃ悪いし、私はもう帰るよ。
ハーパー:え、もう?
クレメント:うん。またゆっくり話そうね。
ジル:…
ハーパー:そっか…。気を付けてね。
:クレメント退場。間。
ハーパー:どうしたの。
ジル:いや…
ハーパー:?
ジル:変わったなって。
ハーパー:あー。確かにね。
ジル:高校の時はあんなじゃなかったろ。もっとこう、優しいんだけどおどおどしてて。
ハーパー:少なくとも、こんな時間に来るような子じゃなかったね。
ハーパー:1 年や2年も経てば変わることもあるよ。物騒な事件も多いしね。
ジル:そうだな。
:玄関扉の音
ハーパー:もしかして
ジル:…妹が動いたかもしれない。行こう。
:外
ハーパー:寒いね…なのにあんな薄着で。
ジル:あぁ。
ハーパー:にしても本当にこんな時間に。
ジル:ほぼ毎日だ。
ハーパー:聞き忘れてたけど、それっていつから。
ジル:四日…いや、もう日付が変わってるから五日だな。
ハーパー:そりゃシスコン君(ちゃん)も心配になるわけだ。
ジル:そういうこと。
ハーパー:…あそこは
ジル:倉庫?
ハーパー:あの倉庫ってイチゴの爺ちゃんが管理してた場所だよね。
ジル:なんであんな所に。
ハーパー:行ってみよう。
:倉庫の外から中の様子を静かに伺う二人
クレメント:今日も来てくれた。嬉しいな。
クレメント:やっぱり、君も変化を望んでる。
:ジル、ハーパー。小声。
ジル:クレメント?なんで
ハーパー:よく聞こえないけど、君の妹もやっぱりいるね。
:ジル、前のめりになる。
ハーパー:馬鹿!あんま顔出すとバレる!
クレメント:…うん、大丈夫。君の気持ちはよくわかってるよ。
クレメント:…可哀そうに。
クレメント:変化を望むからここに来たんだろう。大丈夫、私は君を救える。今日の日付が変わるころ、君は君を捨てれるよ。
クレメント:君に、幸あらんことを祈る。
:妹、その場で倒れる。クレメント退場
ジル:っ!!
ハーパー:息はある。気を失ってるだけだよ。落ち着いて
ジル:落ち着けるわけないだろ!アイツのせいだろどう見ても!
ハーパー:まぁ、ね。
ジル:…とりあえずいったん家に帰ろう。
ジル:こいつが風邪をひいたら大変だ。
ハーパー:そうだね、そっち持って。
ジル:俺(私)一人で持てる。
ハーパー:そう。
:家にて
ジル:…どう思う。
ハーパー:クレメントのこと。
ジル:ああ。
ハーパー:見たものが全て…だと思う。
ハーパー:というかそれ以外は考えたくないかも。
ジル:お前は、あいつのこと好きだったもんな。
ハーパー:うん。高校のときは三人でよく遊んだね。
ジル:俺(私)も、あまり悪いようには考えたくない。
ジル:でも、見ちゃったから。
ハーパー:うん。
:二日後
クレメント:この世界のありとあらゆる事象は、全て人間のせいだと私は考えている。
クレメント:苦しむ人もたくさんいるね。誰がそんな人たちを助けてあげられるかな。
クレメント:うん。私だ。私が、そんな人たちを救うんだ。
クレメント:この綺麗で汚い世界に生きる可哀そうな君たちを、楽園に!
ジル:クレメント!(同時に)
ハーパー:クレちゃん!(同時に)
クレメント:あれ。二人ともどうしたの。
ジル:どうしたのじゃねえ。
ジル:お前の、お前のせいでマティは。
ハーパー:ねぇ、クレちゃん。なんでこんな。
クレメント:マティちゃんね。君の妹だったんだ。知らなかったよ。
ジル:てめぇ。
クレメント:でもよかったね。君の妹は楽園に行けたんだ。もう苦しむことはないね。本当に良かった。
ハーパー:っ…
ジル:イカれてんのか。何が楽園だよ。この町で行方不明者を出してるのはお前だな。
クレメント:警察ごっこ?懐かしいね、昔よくやったよね。でも、君の言い方はちょっと違うよ。あの子たちが望んだんだ。
ジル:は。
クレメント:この町、いやこの世界で彼女たちはいつも何かに怯えて、苦しんでる。そんなの可哀そうだろ。
クレメント:死にたい。消えたい。何もしたくない。全部願いだ。神様がいないなら、誰も救ってあげないなら、私が彼女らを救うんだ。
ハーパー:そんなの。
クレメント:ふふ、心の底では思っていない。なんてあり得ないんだよ。願うから私のもとに来る。
ジル:願わない奴は。
クレメント:来ない。君たちも例外じゃない。
ハーパー:僕(私)らの願いを知ったような口ぶりだね。
クレメント:そうだね。知ってるから。
ジル:願いをかなえて、悩める人たちを救うんだろ?教祖様みたいなことしてんな。なら俺(私)らの願いも叶えてみろよ。
クレメント:まだ無理だよ。
ジル:怖いのか。
クレメント:まさか。そうじゃなくてね、君たちの願いはこう、なんていうのかな。矛盾してるんだ。
ハーパー:矛盾。
クレメント:私に死んでほしいと思っているだろう。妹を殺した、裏切ったからと。
私にはそんなつもりないけど。
クレメント:でもそんな願いを抱きながら、昔のように戻りたい、ただ目の前のことに全力で、無知だったその頃に戻りたいって。
ジル:そう、かもな。
クレメント:過去はかえらないし、私も死なない。まだ救いを求める人はいるからね。
ジル:そうか。
ハーパー:ねぇクレちゃん。もう本当にやめよう。僕(私)も一緒に行くから警察に行こう。
クレメント:どうして。
ハーパー:どうしてって。
クレメント:私は何も悪いことはしてないよ。救いを求める人たちに手を差し伸べてるだけだ。可哀そうな彼女らを救うことのどこが、悪いことだと思うの?放っておく方が可哀そうだよ。
ジル:可哀そうだの救うだのごちゃごちゃうるせーんだよ!だから!お前は!
ハーパー:ジル!
:クレメントに飛びかかり押し倒すジル。首を絞める。
クレメント:あ”…ッ
ジル:もうお前の戯言は聞き飽きたんだよ。もういい。ここで、死んでしまえ。
クレメント:う…ぐッ…
クレメント:は…はは。私を殺せば、もう誰も、救いは、得られない。哀れな子たちが、涙を、流す。
ジル:あぁそうかよ。でもな。お前が手をかけたせいで泣く奴らもいるんだよ。俺(私)みたいに。
クレメント:ぁ…がっ…
ハーパー:ジル!!もう、もう!
ジル:うるせぇ!こいつだけは、こいつだけは!
:クレメント、息絶える。ジル、手を放す。
ジル:……はぁ。
ハーパー:クレちゃん…
ジル:もう、いいだろ。此奴は、もうどうにもならなかった。
:ハーパー、嗚咽を漏らしながら泣き崩れる
ハーパーM:それから、町での事件は無くなり平穏な毎日が戻ってきた。ただ一つ、いなくなった人たちを除けば。
ハーパーM:クレちゃんは、優しすぎた。優しすぎたから、間違えた。僕(私)たちの願いは、もう、叶わない。
ハーパー:だけど、それでよかったんじゃないかなぁって、信じてみるね。
クレメントの呪い
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クレメント 不問
ジル 不問
ハーパー 不問
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彼は、その慈悲を以って人を呪う
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ジル M:クレメントの呪い
ハーパー:こんな時間に呼びつけるなんて、君だいぶ常識ないね。
ジル:いや、ごめん。話したいことがあって。
ハーパー:告白なら勘弁だよ。恋人いるの知ってるだろ。
ジル:そんなんじゃねぇよ...。最近この町で事件が多いのは知ってるだろ。
ハーパー:あー、女子高生謎の失踪事件とか、イチゴの爺ちゃんの不審死?とかのやつでしょ。
ジル:そう。どれも性別とか年齢なんてばらばらでダンさんが頭を抱えてる。
ハーパー:それが何、まさか俺(私)たちで解決しよう~とか、少年探偵団みたいなこと考えてないよね。
ジル:…まあ、そこまでは考えてない
ハーパー:は、近いことは考えてるってこと
ジル:…まあ。
ハーパー:ふざけないでよ、僕(私)は嫌だね。そんなめんどくさいこと。第一僕(私)らじゃ何もできない。
ハーパー:いつ自分らが同じ目にあうかわからないんだ。下手なことをして死に近づくのは嫌だよ。
ジル:お前の気持ちはわかるよ。でも、助けてほしい。
ハーパー:助ける?
ジル:…妹の体調が良くないんだ。
ハーパー:風邪とか?
ジル:だったらよかった
ハーパー:含みのある言い方だね。本当は何を言いたいの。
ジル:…だったらよかったんだ。
ハーパー:だから、なに。
ジル:歩くんだ
ハーパー:歩く。
ジル:夜中に外を徘徊し始めるんだ。まだ 16 歳の子供がだぞ。
ハーパー:まぁでも、年頃特有の夜遊びてきなモノじゃないの。
ジル:うちの妹に限ってそれはあり得ないだろ。
ハーパー:そうね、いい子だとは思うけど、お兄ちゃん(お姉ちゃん)の君が言っちゃ完全にシスコンだよそれ。
ジル:いつもは 22 時には寝る子供がある日突然夜中の深夜徘徊なんて。不思議に思わないわけないだろ。
ジル:それに、これまでの事件の中で唯一共通してることは、その深夜徘徊だ。
ハーパー:よく知らないけど、皆そうなの。
ジル:あぁ。
ハーパー:ふうん。
:沈黙
ハーパー:つまり。
ジル:助けてほしい。
ハーパー:だからさぁ
ジル:あいつが、いなくなるなんて考えたくない。
ジル:どうしたらいいかわからなくて。
ハーパー:…僕(私)が優しくてよかったね。
:場面転換
クレメント:うん、そのままこっちにおいで。大丈夫、怖いことは、何もない。
クレメント:…家に帰りたい?…可哀そうに。まだこの世界にとらわれているんだね。大丈夫、ここには君を縛るものはなにもないよ。
クレメント:勉強も運動も教育も、嫌なことからは逃げ出していいんだ。
クレメント:この世界は不平等で、理不尽で、不幸せだと言っていたろう。
クレメント:でも大丈夫。私が君をそんな世界から救うよ。
クレメント:もう行くの?大丈夫、待ってるから。気を付けて帰ってね。
クレメント:…ああ、本当に可哀そう。
:場面転換
ハーパー:で、君の妹の動向を探るべく仕方なーく君の家に泊まりに来てるわけだけど。
ジル:冷めるぞ。
ハーパー:これから妹の尾行を始めましょうねってときになんで僕(私)らは鍋を囲んでるの。
ジル:腹が減っては戦はできぬって日本ではよく言うんだろ。
ハーパー:言うけど。
ジル:どこに行くか、何を見るかもわからないんだ。腹ごしらえぐらいしないとな。
ハーパー:…てか妹は?
ジル:寝てる。
ハーパー:なんだ
ジル:寝てるなら大丈夫とでも思ったか。
ジル:寝てると思っていても急に起きて歩き始めるんだ。油断は禁物だぞ~
ハーパー:はあ、そーですか。
ジル:冷めるぞ。
ハーパー:鍋がそんな簡単に冷めてたまるか。
:チャイムの音
ジル:…こんな時間に誰だ。
ハーパー:もしかしたら例の殺人鬼が来たとか。
ジル:縁起でもないこと言うなよな。あと殺人鬼って。
ハーパー:だって事件の犯人は結局人を殺すかもしくは、でしょ。通称ね通称。
ジル:はあ…。見てくる。
ジル:はーい、どちら様。
クレメント:や
ジル:は?お前こんな時間にどうしたんだよ?
クレメント:いやね、たまたま散歩してたら近くを通ったからさ。
ジル:時間考えろよ、もう 23 時だぞ。
クレメント:ごめんごめん。でも夜更かしな君ならほら、起きてた。
クレメント:ん~いい匂い。寒かったんだよね、私も混ぜてよ。
:にこやかに笑うクレメント
ジル:ああ、入れてやりたいが俺(私)はこれから用があるから長居はさせれない
クレメント:大丈夫、久しぶりだしちょっと話そうよ
ジル:図々しいな。まあお前がいいならいいよ
ハーパー:あれ、クレちゃんじゃんか、どうしたの~上がる?
クレメント:ハーパーもいたんだ、久しぶり。うん、ちょっとお邪魔させてもらおうかなって。
ハーパー:この後僕(私)ら出かけるけど大丈夫?
クレメント:聞いたよそれ。ハーパーも一緒なんだ。
ジル:まあな。
ハーパー:とりあえずおいでよ、そこじゃ寒いだろ
クレメント:うん。じゃあお邪魔します。
:ジルの部屋にて
クレメント:わあ、美味しそう。日本風だ。
ジル:ジャパニーズは、寒い冬にはこうして鍋を囲むらしいからな。
クレメント:そうなんだ
ハーパー:そうだ、ジル。
ジル:ん
ハーパー:クレメントにもあの話したら。
ジル:確証もない話をあまり周りに知られたくは…
クレメント:何の話?
ジル:…
ハーパー:…ごめん。
ジル:いやいい、そこまで言って黙るのはあれだしな。
:説明をするジル。クレメント、鍋をつつきながら話を聞く
クレメント:なるほど
ジル:まあ、そんな感じだ。
クレメント:可哀そうに
ハーパー:ね
クレメント:ああいや、君たちが。
ジル:どういうことだ
クレメント:いやごめん、言葉を間違えたかも。ところでその妹さんは。
ハーパー:寝てるってさ
クレメント:そっか。うるさくして起こしちゃ悪いし、私はもう帰るよ。
ハーパー:え、もう?
クレメント:うん。またゆっくり話そうね。
ジル:…
ハーパー:そっか…。気を付けてね。
:クレメント退場。間。
ハーパー:どうしたの。
ジル:いや…
ハーパー:?
ジル:変わったなって。
ハーパー:あー。確かにね。
ジル:高校の時はあんなじゃなかったろ。もっとこう、優しいんだけどおどおどしてて。
ハーパー:少なくとも、こんな時間に来るような子じゃなかったね。
ハーパー:1 年や2年も経てば変わることもあるよ。物騒な事件も多いしね。
ジル:そうだな。
:玄関扉の音
ハーパー:もしかして
ジル:…妹が動いたかもしれない。行こう。
:外
ハーパー:寒いね…なのにあんな薄着で。
ジル:あぁ。
ハーパー:にしても本当にこんな時間に。
ジル:ほぼ毎日だ。
ハーパー:聞き忘れてたけど、それっていつから。
ジル:四日…いや、もう日付が変わってるから五日だな。
ハーパー:そりゃシスコン君(ちゃん)も心配になるわけだ。
ジル:そういうこと。
ハーパー:…あそこは
ジル:倉庫?
ハーパー:あの倉庫ってイチゴの爺ちゃんが管理してた場所だよね。
ジル:なんであんな所に。
ハーパー:行ってみよう。
:倉庫の外から中の様子を静かに伺う二人
クレメント:今日も来てくれた。嬉しいな。
クレメント:やっぱり、君も変化を望んでる。
:ジル、ハーパー。小声。
ジル:クレメント?なんで
ハーパー:よく聞こえないけど、君の妹もやっぱりいるね。
:ジル、前のめりになる。
ハーパー:馬鹿!あんま顔出すとバレる!
クレメント:…うん、大丈夫。君の気持ちはよくわかってるよ。
クレメント:…可哀そうに。
クレメント:変化を望むからここに来たんだろう。大丈夫、私は君を救える。今日の日付が変わるころ、君は君を捨てれるよ。
クレメント:君に、幸あらんことを祈る。
:妹、その場で倒れる。クレメント退場
ジル:っ!!
ハーパー:息はある。気を失ってるだけだよ。落ち着いて
ジル:落ち着けるわけないだろ!アイツのせいだろどう見ても!
ハーパー:まぁ、ね。
ジル:…とりあえずいったん家に帰ろう。
ジル:こいつが風邪をひいたら大変だ。
ハーパー:そうだね、そっち持って。
ジル:俺(私)一人で持てる。
ハーパー:そう。
:家にて
ジル:…どう思う。
ハーパー:クレメントのこと。
ジル:ああ。
ハーパー:見たものが全て…だと思う。
ハーパー:というかそれ以外は考えたくないかも。
ジル:お前は、あいつのこと好きだったもんな。
ハーパー:うん。高校のときは三人でよく遊んだね。
ジル:俺(私)も、あまり悪いようには考えたくない。
ジル:でも、見ちゃったから。
ハーパー:うん。
:二日後
クレメント:この世界のありとあらゆる事象は、全て人間のせいだと私は考えている。
クレメント:苦しむ人もたくさんいるね。誰がそんな人たちを助けてあげられるかな。
クレメント:うん。私だ。私が、そんな人たちを救うんだ。
クレメント:この綺麗で汚い世界に生きる可哀そうな君たちを、楽園に!
ジル:クレメント!(同時に)
ハーパー:クレちゃん!(同時に)
クレメント:あれ。二人ともどうしたの。
ジル:どうしたのじゃねえ。
ジル:お前の、お前のせいでマティは。
ハーパー:ねぇ、クレちゃん。なんでこんな。
クレメント:マティちゃんね。君の妹だったんだ。知らなかったよ。
ジル:てめぇ。
クレメント:でもよかったね。君の妹は楽園に行けたんだ。もう苦しむことはないね。本当に良かった。
ハーパー:っ…
ジル:イカれてんのか。何が楽園だよ。この町で行方不明者を出してるのはお前だな。
クレメント:警察ごっこ?懐かしいね、昔よくやったよね。でも、君の言い方はちょっと違うよ。あの子たちが望んだんだ。
ジル:は。
クレメント:この町、いやこの世界で彼女たちはいつも何かに怯えて、苦しんでる。そんなの可哀そうだろ。
クレメント:死にたい。消えたい。何もしたくない。全部願いだ。神様がいないなら、誰も救ってあげないなら、私が彼女らを救うんだ。
ハーパー:そんなの。
クレメント:ふふ、心の底では思っていない。なんてあり得ないんだよ。願うから私のもとに来る。
ジル:願わない奴は。
クレメント:来ない。君たちも例外じゃない。
ハーパー:僕(私)らの願いを知ったような口ぶりだね。
クレメント:そうだね。知ってるから。
ジル:願いをかなえて、悩める人たちを救うんだろ?教祖様みたいなことしてんな。なら俺(私)らの願いも叶えてみろよ。
クレメント:まだ無理だよ。
ジル:怖いのか。
クレメント:まさか。そうじゃなくてね、君たちの願いはこう、なんていうのかな。矛盾してるんだ。
ハーパー:矛盾。
クレメント:私に死んでほしいと思っているだろう。妹を殺した、裏切ったからと。
私にはそんなつもりないけど。
クレメント:でもそんな願いを抱きながら、昔のように戻りたい、ただ目の前のことに全力で、無知だったその頃に戻りたいって。
ジル:そう、かもな。
クレメント:過去はかえらないし、私も死なない。まだ救いを求める人はいるからね。
ジル:そうか。
ハーパー:ねぇクレちゃん。もう本当にやめよう。僕(私)も一緒に行くから警察に行こう。
クレメント:どうして。
ハーパー:どうしてって。
クレメント:私は何も悪いことはしてないよ。救いを求める人たちに手を差し伸べてるだけだ。可哀そうな彼女らを救うことのどこが、悪いことだと思うの?放っておく方が可哀そうだよ。
ジル:可哀そうだの救うだのごちゃごちゃうるせーんだよ!だから!お前は!
ハーパー:ジル!
:クレメントに飛びかかり押し倒すジル。首を絞める。
クレメント:あ”…ッ
ジル:もうお前の戯言は聞き飽きたんだよ。もういい。ここで、死んでしまえ。
クレメント:う…ぐッ…
クレメント:は…はは。私を殺せば、もう誰も、救いは、得られない。哀れな子たちが、涙を、流す。
ジル:あぁそうかよ。でもな。お前が手をかけたせいで泣く奴らもいるんだよ。俺(私)みたいに。
クレメント:ぁ…がっ…
ハーパー:ジル!!もう、もう!
ジル:うるせぇ!こいつだけは、こいつだけは!
:クレメント、息絶える。ジル、手を放す。
ジル:……はぁ。
ハーパー:クレちゃん…
ジル:もう、いいだろ。此奴は、もうどうにもならなかった。
:ハーパー、嗚咽を漏らしながら泣き崩れる
ハーパーM:それから、町での事件は無くなり平穏な毎日が戻ってきた。ただ一つ、いなくなった人たちを除けば。
ハーパーM:クレちゃんは、優しすぎた。優しすぎたから、間違えた。僕(私)たちの願いは、もう、叶わない。
ハーパー:だけど、それでよかったんじゃないかなぁって、信じてみるね。