台本概要
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タイトル | ふわふわはともにあり |
---|---|
作者名 | 野菜 (@irodlinatuyasai) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(不問2) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
龍神は高らかに、こう、ちゃんと、神々しく12年ぶりに顕現した。 ……はずだった。 昔ここ、自分を祀ってたはずの神社だったのにゴミ捨て場になってるんだけど?あれ?向こうの方に新しいの建ってる?聞いてないんだけど? おかげでなんとなく不時着した気がする。なーんか、踏んでる気がする。 そっと体をどけると、案の定……案の定、やらかしていた。 頑張りたくない、まったりしたい時向け台本。にんげんの「俺」部分は自由に変えてください。 320 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
寝子 | 不問 | 43 | 寝てばかりで働かないので八百万系神様から「寝子(ねこ)」と呼ばれる雑種犬。猫ではない。にんげん曰く、「チャウチャウの遺伝子濃いめ」。可愛くなくていいのでだらだらしてください。 |
にんげん | 不問 | 47 | 追い詰められて道を踏み外した生き物。悪事でおててが汚れてる自覚はたっぷり持っている。投げやりにまったりどうぞ。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:誰からも忘れられた、山奥の不法投棄所。とてとてと歩くふわふわとした生き物。
寝子:あ~。めんどいんじゃ~。一生寝てたいんじゃ~。
にんげん:なにか……聞こえる?
寝子:毎年お仕えする人が変わるシステムなんなの?なんで皆おんなじ祠に住んでないの?これもにんげんのせいなのね?そうなのね?
にんげん:あれ、体動かない。うっわ口の中じゃりじゃりする。土?え?埋まってる?俺埋まってるの?
寝子:住んでるところのご主人に仕えないと生きていけない。世知辛い。ちっこい我々、とても世知辛い。
にんげん:そりゃ!!あ、首だけちょっと出た。森?山?ええ?
寝子:正月くらい寝てたい。あ、間違えた。一生寝てたいんじゃ。……ん?足元がもじゃもじゃ。
にんげん:ぐふっ。
寝子:なんか踏んでる。
にんげん:もごご(どいて)。
寝子:動かんけどなんか言ってる……こわい……。
にんげん:もごごいもごご(おねがいどいて)。
寝子:ふんじゃったよ~。ねこなんか汚いのふんじゃったやだ~。
にんげん:ぶはっ……。助けて……くれませんか?
寝子:ん?
にんげん:ん?
寝子:(げんなり)うわ……にんげんだあ……。
にんげん:チャウチャウ……??
0:
0:さくさくと山道を歩きながら進む寝子。ついていくにんげん。
寝子:ねこ、とても疲れた。
にんげん:なんかごめん。助かったよ。……猫?
寝子:にんげんがついてくる。ねこ、とても困る……。
にんげん:だってあんなところにいたら寒くて死んじゃうよ。……猫って言った?
寝子:死体のにんげんも困る。でもついてくるのもいや……。
にんげん:車で初日の出を見に来たはずなんだけどな。車泥棒かな。マズいなー。
寝子:にんげんだけ、土に埋められてた。雑に。
にんげん:計画犯にやられた感じじゃないよね。浅かったし。
寝子:にんげんのつくるおうちとごはんは好き。でもにんげんは、とても、面倒。
にんげん:面倒。そうね。面倒だね。
寝子:ひとりでずっと寝てたい……なにもかもめんどうくさいのじゃ……。
にんげん:これはどこに向かっているの?
寝子:みじゅち様に新年のあいさつに行くの。
にんげん:みじゅち?
寝子:ちがーう!み・じゅ・ち!
にんげん:み・じゅ・ち?
寝子:ちっがーう!み!じゅ!てぃ!
にんげん:家に向かってる的な感じ?じゃあ道ある?
寝子:……にんげんのつくるおっきい道はない。
にんげん:そうかあ。
寝子:みじゅち様なら何か知っているかもしれない。
にんげん:ここにずっと住んでるの?その……えっと、その方って。
寝子:この山で生きてくのも、この場所を通るのも、ごあいさつすべき。そうすべき。
にんげん:うーん、お偉いさんに挨拶とか、苦手だなあ。
寝子:その気持ちはねこよくわかる。今とてもよくわかる。帰って寝たい。
にんげん:まあ、しょうがないよねえ。ついていくからよろしくね、フォロー。
寝子:にんげんがついてきている……ねこはとても困る……。
にんげん:ところで、チャウチャウって知ってる?ふわふわな犬なんだけど。
寝子:ねこはねこってみんなに呼ばれる。
にんげん:そっかあ。
0:
0:苔に覆われ、時間の流れを感じさせられる石の祠。辰の紋・龍の文字が読み取れるそれの前に、不釣り合いなふわふわがもちもちと踊る。
寝子:かしこみ~、かしこみ~。
にんげん:蛟(みずち)様だったか。こんな山奥にも祠あったんだなあ。
寝子:かしこみ~、かしこみ~。
にんげん:祠……うーん。蔵とか本殿みたいなものはないのか。いや、この祠だけでも十分……。
寝子:かしこみ~、かしこみ~。
にんげん:ねえその参拝方法本当にそれで合ってる?他に言うこともっとあるよね、それ序文だよね?
寝子:みじゅち様がにんげんに伝言してって。
にんげん:あれで意思疎通できてたのか。……怒ってる?
寝子:なんか引いてる。
にんげん:引いてる?
寝子:えっとね、「などいきたりやー」。
にんげん:うーん?
寝子:なんで生きてんのこっわ、って言ってる。
にんげん:疑うわけじゃないけど翻訳合ってる?
寝子:「おぼえず車ごと踏みにけるに」。うっかり踏んじゃったんだって。ねこと一緒一緒。
にんげん:確かに車で朝日見に来てから記憶がないけれど……。え、踏んだの?龍神が?
寝子:「あなや、埋めおきしに、動けり」。うっわ埋めておいたのに動いてんだけど。
にんげん:神様そんなフランクに酷いこと言ってる?ふわふわ適当に翻訳してない?
寝子:「おどろおどろしければ、帰らなむ……」。不気味だからかえってほしいって、良かったねえにんげん。
にんげん:散々な言われようなんだけど、帰れるなら……帰りたいね。みずち様、俺の車について知らないかな?
寝子:「思い絶ゆるが吉」。
にんげん:すごく悲しいおみくじを引いたみたいなこと言われたよ。
寝子:かしこみ~、かしこみ~。
にんげん:ああ、終わった。
寝子:かしこみ~、かしこみ~。
にんげん:ふわふわちゃんはここに残るの?
寝子:ちゃんと捨ててきなさいって言われた。早くにんげん捨てて寝る。
にんげん:出来れば他のにんげんのいる所に捨ててほしいな。
0:
0:山をしばらく進み、アスファルトの見える開けた場所に到着した。
にんげん:ああ、ここでいいよ。
寝子:もう来るなよにんげん。
にんげん:気を付けるよ。他にも俺のように迷い込むにんげんはいたのかな。
寝子:たまに。でも「にんげんみたいな変なもの」は初めてだよ。
にんげん:……そうかあ。俺はにんげんだよ。生きてるんならね。
寝子:せめて次来るときはごはんもってこいごはん。毛布でもよし。
にんげん:考えとく。
寝子:ねこ、帰って寝る。
にんげん:うん、じゃあな。
0:
0:寝子を見送る人間。姿が見えなくなったのを確認すると、すいすいと蛍光灯の方へ進む。
0:そこには比較的新しい、神社があった。
にんげん:あーあ。なんで無事なのかねえ。神のご加護?いや、俺みたいなのにあっちゃダメだろ、ご加護なんて。
0:土で汚れたパーカーの内ポケットから、ひび割れ、黒ずんだ、木札を取り出した。
にんげん:「にんげんみたいな変なもの」、ね。俺なんかよりよっぽどお人好しだよ。神様ってのは。
0:つい最近壊されたような、修繕のあとも進入禁止もない祠の戸を開くにんげん。
にんげん:……猫だの犬だの引き取って、一から頑張ってみるか。あーあ、帰り道に死なねえかなあ。
寝子:もう来るなよ、にんげん。
にんげん:……ついてきて、ないよな?はあ、悪いことは、するもんじゃねえなあ。
0:御神体を取り戻した神社は、静けさを取り戻した。
0:誰からも忘れられた、山奥の不法投棄所。とてとてと歩くふわふわとした生き物。
寝子:あ~。めんどいんじゃ~。一生寝てたいんじゃ~。
にんげん:なにか……聞こえる?
寝子:毎年お仕えする人が変わるシステムなんなの?なんで皆おんなじ祠に住んでないの?これもにんげんのせいなのね?そうなのね?
にんげん:あれ、体動かない。うっわ口の中じゃりじゃりする。土?え?埋まってる?俺埋まってるの?
寝子:住んでるところのご主人に仕えないと生きていけない。世知辛い。ちっこい我々、とても世知辛い。
にんげん:そりゃ!!あ、首だけちょっと出た。森?山?ええ?
寝子:正月くらい寝てたい。あ、間違えた。一生寝てたいんじゃ。……ん?足元がもじゃもじゃ。
にんげん:ぐふっ。
寝子:なんか踏んでる。
にんげん:もごご(どいて)。
寝子:動かんけどなんか言ってる……こわい……。
にんげん:もごごいもごご(おねがいどいて)。
寝子:ふんじゃったよ~。ねこなんか汚いのふんじゃったやだ~。
にんげん:ぶはっ……。助けて……くれませんか?
寝子:ん?
にんげん:ん?
寝子:(げんなり)うわ……にんげんだあ……。
にんげん:チャウチャウ……??
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0:さくさくと山道を歩きながら進む寝子。ついていくにんげん。
寝子:ねこ、とても疲れた。
にんげん:なんかごめん。助かったよ。……猫?
寝子:にんげんがついてくる。ねこ、とても困る……。
にんげん:だってあんなところにいたら寒くて死んじゃうよ。……猫って言った?
寝子:死体のにんげんも困る。でもついてくるのもいや……。
にんげん:車で初日の出を見に来たはずなんだけどな。車泥棒かな。マズいなー。
寝子:にんげんだけ、土に埋められてた。雑に。
にんげん:計画犯にやられた感じじゃないよね。浅かったし。
寝子:にんげんのつくるおうちとごはんは好き。でもにんげんは、とても、面倒。
にんげん:面倒。そうね。面倒だね。
寝子:ひとりでずっと寝てたい……なにもかもめんどうくさいのじゃ……。
にんげん:これはどこに向かっているの?
寝子:みじゅち様に新年のあいさつに行くの。
にんげん:みじゅち?
寝子:ちがーう!み・じゅ・ち!
にんげん:み・じゅ・ち?
寝子:ちっがーう!み!じゅ!てぃ!
にんげん:家に向かってる的な感じ?じゃあ道ある?
寝子:……にんげんのつくるおっきい道はない。
にんげん:そうかあ。
寝子:みじゅち様なら何か知っているかもしれない。
にんげん:ここにずっと住んでるの?その……えっと、その方って。
寝子:この山で生きてくのも、この場所を通るのも、ごあいさつすべき。そうすべき。
にんげん:うーん、お偉いさんに挨拶とか、苦手だなあ。
寝子:その気持ちはねこよくわかる。今とてもよくわかる。帰って寝たい。
にんげん:まあ、しょうがないよねえ。ついていくからよろしくね、フォロー。
寝子:にんげんがついてきている……ねこはとても困る……。
にんげん:ところで、チャウチャウって知ってる?ふわふわな犬なんだけど。
寝子:ねこはねこってみんなに呼ばれる。
にんげん:そっかあ。
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0:苔に覆われ、時間の流れを感じさせられる石の祠。辰の紋・龍の文字が読み取れるそれの前に、不釣り合いなふわふわがもちもちと踊る。
寝子:かしこみ~、かしこみ~。
にんげん:蛟(みずち)様だったか。こんな山奥にも祠あったんだなあ。
寝子:かしこみ~、かしこみ~。
にんげん:祠……うーん。蔵とか本殿みたいなものはないのか。いや、この祠だけでも十分……。
寝子:かしこみ~、かしこみ~。
にんげん:ねえその参拝方法本当にそれで合ってる?他に言うこともっとあるよね、それ序文だよね?
寝子:みじゅち様がにんげんに伝言してって。
にんげん:あれで意思疎通できてたのか。……怒ってる?
寝子:なんか引いてる。
にんげん:引いてる?
寝子:えっとね、「などいきたりやー」。
にんげん:うーん?
寝子:なんで生きてんのこっわ、って言ってる。
にんげん:疑うわけじゃないけど翻訳合ってる?
寝子:「おぼえず車ごと踏みにけるに」。うっかり踏んじゃったんだって。ねこと一緒一緒。
にんげん:確かに車で朝日見に来てから記憶がないけれど……。え、踏んだの?龍神が?
寝子:「あなや、埋めおきしに、動けり」。うっわ埋めておいたのに動いてんだけど。
にんげん:神様そんなフランクに酷いこと言ってる?ふわふわ適当に翻訳してない?
寝子:「おどろおどろしければ、帰らなむ……」。不気味だからかえってほしいって、良かったねえにんげん。
にんげん:散々な言われようなんだけど、帰れるなら……帰りたいね。みずち様、俺の車について知らないかな?
寝子:「思い絶ゆるが吉」。
にんげん:すごく悲しいおみくじを引いたみたいなこと言われたよ。
寝子:かしこみ~、かしこみ~。
にんげん:ああ、終わった。
寝子:かしこみ~、かしこみ~。
にんげん:ふわふわちゃんはここに残るの?
寝子:ちゃんと捨ててきなさいって言われた。早くにんげん捨てて寝る。
にんげん:出来れば他のにんげんのいる所に捨ててほしいな。
0:
0:山をしばらく進み、アスファルトの見える開けた場所に到着した。
にんげん:ああ、ここでいいよ。
寝子:もう来るなよにんげん。
にんげん:気を付けるよ。他にも俺のように迷い込むにんげんはいたのかな。
寝子:たまに。でも「にんげんみたいな変なもの」は初めてだよ。
にんげん:……そうかあ。俺はにんげんだよ。生きてるんならね。
寝子:せめて次来るときはごはんもってこいごはん。毛布でもよし。
にんげん:考えとく。
寝子:ねこ、帰って寝る。
にんげん:うん、じゃあな。
0:
0:寝子を見送る人間。姿が見えなくなったのを確認すると、すいすいと蛍光灯の方へ進む。
0:そこには比較的新しい、神社があった。
にんげん:あーあ。なんで無事なのかねえ。神のご加護?いや、俺みたいなのにあっちゃダメだろ、ご加護なんて。
0:土で汚れたパーカーの内ポケットから、ひび割れ、黒ずんだ、木札を取り出した。
にんげん:「にんげんみたいな変なもの」、ね。俺なんかよりよっぽどお人好しだよ。神様ってのは。
0:つい最近壊されたような、修繕のあとも進入禁止もない祠の戸を開くにんげん。
にんげん:……猫だの犬だの引き取って、一から頑張ってみるか。あーあ、帰り道に死なねえかなあ。
寝子:もう来るなよ、にんげん。
にんげん:……ついてきて、ないよな?はあ、悪いことは、するもんじゃねえなあ。
0:御神体を取り戻した神社は、静けさを取り戻した。