台本概要

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タイトル 千日草を君に
作者名 伊露葉  (@irodorusekai12)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男2)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 「勿忘草を君に~誠~」の補完と続編です。
一応兼役という扱いではないのですが
夢の中では昌衛は主税として、恭祐は幸として喋ってます。Mはずっと本人です

前読みすごく推奨ですしもし可能なら前作からやったほうがいいです
前作と同じく男二人台本ですが、年齢が低いので女性も可。
やってくださったら喜びます。
アーカイブ残してくださったら聞きに行きます。
世界観、物語の流れを崩さない程度のアドリブは可。

読めないところ教えてください。フリガナふります。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
昌衛 55 八敷野昌衛(やしきのしょうえい)。大石良金(おおいしよしかね)の生まれ変わり。大柄。高校1年生
恭祐 51 小野正恭祐(おのまさきょうすけ)。相山幸之助(そうやまこうのすけ)の生まれ変わり。小柄。高校1年生。普段は猫被ってる。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:雪の降る庭 昌衛M:雪だ…雪が降っている… 昌衛M:これから何かを成し遂げに行くんだ… 昌衛M:「ついに…討ち取ったぞ!」 昌衛M:仲間の声が聞こえる。 昌衛M:僕たちはやり遂げたんだ 0:千日草を君に 昌衛M:これでもう思い残すことは何もない 昌衛:「あふ時は かたりつくすとおもへども 別れとなれば のこる言の葉」 0:切腹 昌衛M:僕は何を言っているんだ 昌衛M:何も思い残すことは無いはずなのに 0:首を斬る音 昌衛M:掠れていく視界の端で梅の木を見つめながら 昌衛M:僕は 0:目覚まし時計 昌衛:ん…またこの夢か… 昌衛M:もう何度も見ているこの夢 昌衛M:いつもモヤモヤしながら目を覚ます 昌衛M: 昌衛M:僕は何を思い残していたんだろう 0:どこかの寺の庭 恭祐:はあー。今日も修行しんどかったー 恭祐:…なんてな。生きていくことが地獄だった頃に比べたら全然苦しくない 恭祐:辛いのは俺だけじゃないと思って耐えてきたしそう思わないと気が狂いそうだったけど 恭祐:あの時が一番辛かった 恭祐:あと、目が覚めたらお前がいなかったとき? 恭祐:一方通行は寂しいな 恭祐:ばか!あほ!やーい!やーい!悔しかったら言い返してみろよ!! 恭祐:…返事がないのはわかってるけどな 恭祐:せっかく俺が自慢の長い髪を切って追いかけてきてやったんだから少しは感謝しろよ!! 恭祐M:なんで俺は喋らない相手にずっと語り掛けているんだ…? 恭祐M:よく見るこの夢。 恭祐M:相手の姿は見えないし返事があったことはない 恭祐M:自分が悪態をつきながら語り掛けるだけ 恭祐M: 恭祐M:俺は何と話していたんだろう 0:学校 昌衛M:今日は高校の入学式。 昌衛M:夢の内容にモヤモヤしつつ教室に入る 昌衛M:窓際の席に座る彼に釘付けになった 昌衛:見つけた 昌衛M:ずっと探していた気がする 昌衛M:この人が僕の思い残しだと直感的に思った 昌衛M:僕はまっすぐ進み、彼に抱き着いてしまった 恭祐:!? 恭祐:あの…?離してもらえますか? 昌衛:すみません!!(離す) 恭祐:いきなりなんですか? 昌衛:僕、八敷野昌衛(やしきのしょうえい)っていいます! 昌衛:あの、どこかで会ったことないですか? 恭祐:突然なんですか!?そんな珍しい名前なら憶えてると思いますけど初対面です 昌衛:でも、なんだか…懐かしい感じがして… 恭祐:懐かしかったらいきなり抱き着くんですか!? 恭祐:…さっさと席についてください。みんな見てます 0:放課後(入学式とか自己紹介時間とか終えて) 昌衛:小野正くん。さっきはごめん 恭祐:いえ、大丈夫です。もう関わるのやめていただけますか 昌衛:クラスメイトなんだから仲良くしようよ 恭祐:最低限しか関わりたくありません 昌衛:朝のことは謝るから。お願いだよ 恭祐:いきなり抱き着いてくるようなやつと一緒にいたくねえっつってんだよ!!! 昌衛:…え? 恭祐:お前が仲良くしたいっつったんだろ。本来の俺はこうだ 昌衛:急に男らしくなるからびっくりしちゃった 恭祐:男子高校生なんてこんなもんだろ。幻滅したか? 昌衛:ううん。しない。小野正くんがいい 恭祐:大体の奴はこっち見せるとビビるし距離置くのに 恭祐:変な奴 昌衛:ずっと猫かぶってるの疲れるでしょ。僕の前では息抜きってことでどうかな? 恭祐:仕方ねーな。バレないように協力しろよ 昌衛:こっちの小野正くんは独り占めか。やった 恭祐:言ってろ 0:寺(恭祐の夢) 恭祐:お前今世間で人気らしいじゃねーか 恭祐:主君のために命を散らす若き英雄って女どもがキャーキャーしてるぜ 恭祐M:あいつと出会ってから夢の内容が少し変わった 恭祐M:今までぼんやりしていたものが少し明確に見えるようになった 恭祐:俺のなのに 恭祐:実際のお前なんか!ボーっとしてて変な奴で!頑固で!自分勝手で! 恭祐:…早く迎えに来いよ…ばか 恭祐M:俺が話しかけていたのは小さな刀だった 恭祐M:返事がないはずだ 恭祐M:熱心に話しかけているし大切な人のものだった…のか? 恭祐M: 恭祐M:俺は誰を失ったのだろう 0:京都。見世の中(昌衛の夢) 昌衛:朝か…離れたく…ないな 昌衛M:誰かが隣で寝ている。顔はよく見えない。 昌衛M:僕は愛おしそうに頬をなでた 昌衛:昨日、思いは全て伝えたと思ったのに 昌衛:きっと、起きている姿を見たら、声を聴いたら、 昌衛:私は弱くなってしまうから… 昌衛M:寝ているその人に僕はそっとくちづけをした 昌衛:行ってきます。どうか元気で。 昌衛:…愛してる 昌衛M:そうか…僕は 昌衛M:この人を愛していたんだ 0:学校 恭祐M:どんな夢を見ても日々は続く 恭祐M:八敷野は毎日俺に話しかけてきた 0:体育の時間 昌衛:小野正くん!二人一組だって!組も!! 恭祐:は、はい… 0:昼休み 昌衛:小野正くん!お弁当一緒に食べよ!! 恭祐:え、ええ。いいですよ 0:放課後 昌衛:小野正くん!一緒に帰ろ! 恭祐:はい… 0:下校中 恭祐:お前さ、俺以外に友達作った方がいいんじゃねえの? 昌衛:なんで?小野正くんがいればいいじゃん 恭祐:まわりにすごい仲良しだと思われてるのなんか癪だし 昌衛:実際すごく仲良しじゃん 恭祐:そんなことねえ 昌衛:だって小野正くん断らないし 恭祐:人前だから猫かぶってるだけだ。実際は断りたいと思ってる 昌衛:そうなんだ。じゃあ何か誘うときは人前にしよ 恭祐:そういうことじゃねえ 昌衛:小野正くん優しいよ。 昌衛:だって、誘ったのは人前だったけど今は二人で帰ってくれてる 昌衛:僕を置いて行くこともできるのに 恭祐:そうだな。じゃあ一人で帰るか 昌衛:どうせ方向一緒じゃん!置いて行かないで!! 昌衛M:僕の頑張りの甲斐があり 昌衛M:学校ではすっかりセット扱い 昌衛M:半年を過ぎて寒くなり始めた季節でも 昌衛M:僕らの関係は相変わらずだった 0:昌衛の夢 昌衛M: 昌衛M:そんなある日 昌衛M:今まで見たことのない夢を見た 昌衛M:これは僕…私の記憶 昌衛M:歌舞伎を観に行って 昌衛M:色子の幸と出会って 昌衛M:契って 昌衛M:別れて…僕の心残りは、君だったんだ 0:恭祐の夢 恭祐M:今まで見たことのない夢を見た 恭祐M:これは俺…俺の記憶 恭祐M:俺は四条河原の色子で 恭祐M:歌舞伎やってて 恭祐M:年下のガキに初めて恋をして 恭祐M:契って 恭祐M:何も言わずに出て行ったあいつのぬくもりを探していたんだ 0:翌朝。登校時 昌衛:小野正くん!あのね!今日夢を見たんだ!君との夢を! 恭祐:奇遇だな。俺もだ 昌衛:僕と小野正くんはやっぱり運命なんだよ! 恭祐:そうかもな。何も言わずに出て行きやがって 昌衛:あの時はごめん。別れるのが辛くて 昌衛:決意が鈍りそうだったから 恭祐:いーよ 恭祐:どうせ昔の話だし 恭祐:今の俺には関係ない 昌衛:え? 恭祐:確かに俺は相山幸之助としての記憶を夢で見た 恭祐:でも俺は小野正恭祐だ 恭祐:お前が好きだった幸之助じゃない 昌衛:どうしてそんなこと言うの? 昌衛:幸之助は幸之助でしょ? 恭祐:お前も今は大石良金じゃなくて八敷野昌衛だろ 恭祐:現実見ろよ 昌衛M:そう言って彼は立ち去ってしまう 昌衛M:僕は小野正くんの中にある幸の部分に惹かれていただけなのかな 昌衛M:この感情は僕のものじゃないのかな 昌衛M:こんなことなら思い出したくなかった 昌衛M:僕はただ、二人でいられればそれでよかったのに 恭祐M:全て記憶が鮮明になった 恭祐M:俺は相山幸之助としての記憶を所持していた 恭祐M:この感覚はあいつにもあるのだろう 恭祐M:あのお花畑野郎は思い出せて嬉しいとでも思ったのだろうか 恭祐M:あの後すぐに名誉の戦死をした奴は、さぞ嬉しかっただろう 恭祐M:俺は一緒にあいつを失った50年の記憶も一緒に思い出した 恭祐M: 恭祐M:怖いだろ。また目の前に現れて、また消えてしまうのかと思ったら 恭祐M:あいつと一緒に、いられなくなった 恭祐M: 恭祐M:八敷野にあんなこと言っておいて 恭祐M:前世の記憶を気にしているのは…俺だ 昌衛M:それから僕たちは口を利かなくなった 恭祐M:正確には、俺が八敷野を避けた 0:12月。雪が降る季節になる 恭祐M:12月。雪が降り始める季節。 恭祐M:この季節がずっと苦手だった 恭祐M:寒いし寂しくなるし 恭祐M:胸の奥が震える感じがして 恭祐M: 恭祐M:どうして苦手かわかった 恭祐M:お前が死んだ季節だからだ 恭祐M: 恭祐M:思い出した今だからはっきりわかる 恭祐M:もう俺はあの思いに耐えられない 恭祐M:お前との約束だから天寿全うしたけどよ 恭祐M:もう二度とあんな思いはしたくない 昌衛M:12月。僕らが討ち入りを果たした季節 昌衛M:多くのものが犠牲になった 昌衛M: 昌衛M:幸之助のことをずっと考えていた 昌衛M:僕が死んで、勝手なお願いをして、迷惑をかけてしまった 昌衛M:今も好きでいてほしいなんて、虫が良すぎるよね 昌衛M: 昌衛M:幸之助じゃなくて小野正恭祐。 昌衛M:そういわれて改めて小野正くんを見ていた 昌衛M:たしかにまるっきり幸之助と同じじゃない 昌衛M:育った環境も年も違う 昌衛M:小野正くんは小野正くんだ 昌衛M:僕が好きなのは幸之助じゃなくて小野正くんだ 0:冬。某日。泉岳寺にて 昌衛M:過去に決別するために自分の墓を訪れた 昌衛:え… 昌衛M:そこには小野正くんの姿があった 昌衛:来てくれたの…? 恭祐:は? 昌衛M:すぐ逃げようとする彼の腕をつかむ 昌衛:もう逃げないでよ(泣きそうになっている) 恭祐:別に…今日は記念日でもなんでもねえしすいてるかと思って 昌衛:今日にした理由は聞いてないよ 昌衛:来てくれて嬉しいよ 恭祐:…ここ、綺麗になったな 昌衛:昔は汚かったの? 恭祐:良金が死んだ直後は酷かったぜ 恭祐:住職がお前らの持ち物で金儲けしようとしたり 恭祐:墓が荒れ放題だったり 昌衛:そうだったんだ 恭祐:そのおかげであの時の脇差を買えたけどな 昌衛:僕の刀を持っててくれたの? 恭祐:ああ、見世の金盗んで買った 昌衛:それダメなことじゃない? 恭祐:俺が働いた金だ 恭祐:今まで好きに買い物なんてしたことなかったんだから少しくらいいいだろ 恭祐:本当は墓の荒れ具合をどうにかしたかったけど 恭祐:俺一人じゃどうにもできなくて 恭祐:寺に来てた劇の台本作家?に赤穂の事件とかどうだ?って勧めておいた 昌衛:え?そうだったの? 恭祐:題材悩んでたみたいだし? 恭祐:そしたら超大作の人気上演になって驚いた 恭祐:屑な住職がファンの墓参りで金集めしてたのは気に入らねえけど 恭祐:人気のおかげでだいぶマシになったはずだ 昌衛:戦争で燃えた後も寄付とか善意で綺麗にしてもらえたんだもんね 恭祐:今や大人気の英雄だな 昌衛:思ってもないくせに…ふふっ 恭祐:なんだよ気持ち悪ぃ 昌衛:久しぶりに小野正くんと話せて嬉しいなって思って 恭祐:俺となんか話せなくていいだろ 昌衛:よくないよ 昌衛:ずっと話したかったんだから 恭祐:悪かったよ 恭祐:あんなこと言ったのに前世のこと気にしていたのは俺だったんだ 昌衛:前世と今は違うって言ったこと? 恭祐:そう。お前のいない五十年間を思い出すと 恭祐:お前のそばにいられなかった 昌衛:小野正くんかわい 恭祐:うっせ 昌衛:寂しい思いさせてごめんね 昌衛:これからはもう離れない 恭祐:俺より先に死ぬのは無しだからな 昌衛:うん。そばに居る 恭祐:もし先に死んだらお前のそばで切腹してやるよ 昌衛:あれ苦しいからおすすめしないよ? 昌衛:介錯してくれる人いないとずっと痛いし 恭祐:そういうことじゃねえ 恭祐:離れんな死ぬなって言ってるだけだ 昌衛:僕は大石良金の記憶も持っているけど 昌衛:八敷野昌衛として小野正恭祐が好き 昌衛:はじまりは良金の記憶だったけど 昌衛:小野正くんの不器用なところも僕だけに見せてくれる悪態も 昌衛:小さいことで悩んじゃうところも大好き 恭祐:恥ずかしいやつ 昌衛:小野正くんは? 恭祐:…俺も相山幸之助じゃなくて小野正恭祐として 恭祐:八敷野昌衛が好きだ 恭祐:俺なんかを想ってくれて…嬉しいよ 昌衛:これからは一緒に時を重ねていこう 恭祐:そうだな 昌衛:苗字じゃなくて、名前で呼んでいい? 恭祐:さすがに小指は切らないぞ 昌衛:あの時は急かしてたのに 恭祐:これからはずっと一緒なんだろ…昌衛 昌衛:うん。ずっと一緒だよ。恭祐 0:千日草を君に 完

0:雪の降る庭 昌衛M:雪だ…雪が降っている… 昌衛M:これから何かを成し遂げに行くんだ… 昌衛M:「ついに…討ち取ったぞ!」 昌衛M:仲間の声が聞こえる。 昌衛M:僕たちはやり遂げたんだ 0:千日草を君に 昌衛M:これでもう思い残すことは何もない 昌衛:「あふ時は かたりつくすとおもへども 別れとなれば のこる言の葉」 0:切腹 昌衛M:僕は何を言っているんだ 昌衛M:何も思い残すことは無いはずなのに 0:首を斬る音 昌衛M:掠れていく視界の端で梅の木を見つめながら 昌衛M:僕は 0:目覚まし時計 昌衛:ん…またこの夢か… 昌衛M:もう何度も見ているこの夢 昌衛M:いつもモヤモヤしながら目を覚ます 昌衛M: 昌衛M:僕は何を思い残していたんだろう 0:どこかの寺の庭 恭祐:はあー。今日も修行しんどかったー 恭祐:…なんてな。生きていくことが地獄だった頃に比べたら全然苦しくない 恭祐:辛いのは俺だけじゃないと思って耐えてきたしそう思わないと気が狂いそうだったけど 恭祐:あの時が一番辛かった 恭祐:あと、目が覚めたらお前がいなかったとき? 恭祐:一方通行は寂しいな 恭祐:ばか!あほ!やーい!やーい!悔しかったら言い返してみろよ!! 恭祐:…返事がないのはわかってるけどな 恭祐:せっかく俺が自慢の長い髪を切って追いかけてきてやったんだから少しは感謝しろよ!! 恭祐M:なんで俺は喋らない相手にずっと語り掛けているんだ…? 恭祐M:よく見るこの夢。 恭祐M:相手の姿は見えないし返事があったことはない 恭祐M:自分が悪態をつきながら語り掛けるだけ 恭祐M: 恭祐M:俺は何と話していたんだろう 0:学校 昌衛M:今日は高校の入学式。 昌衛M:夢の内容にモヤモヤしつつ教室に入る 昌衛M:窓際の席に座る彼に釘付けになった 昌衛:見つけた 昌衛M:ずっと探していた気がする 昌衛M:この人が僕の思い残しだと直感的に思った 昌衛M:僕はまっすぐ進み、彼に抱き着いてしまった 恭祐:!? 恭祐:あの…?離してもらえますか? 昌衛:すみません!!(離す) 恭祐:いきなりなんですか? 昌衛:僕、八敷野昌衛(やしきのしょうえい)っていいます! 昌衛:あの、どこかで会ったことないですか? 恭祐:突然なんですか!?そんな珍しい名前なら憶えてると思いますけど初対面です 昌衛:でも、なんだか…懐かしい感じがして… 恭祐:懐かしかったらいきなり抱き着くんですか!? 恭祐:…さっさと席についてください。みんな見てます 0:放課後(入学式とか自己紹介時間とか終えて) 昌衛:小野正くん。さっきはごめん 恭祐:いえ、大丈夫です。もう関わるのやめていただけますか 昌衛:クラスメイトなんだから仲良くしようよ 恭祐:最低限しか関わりたくありません 昌衛:朝のことは謝るから。お願いだよ 恭祐:いきなり抱き着いてくるようなやつと一緒にいたくねえっつってんだよ!!! 昌衛:…え? 恭祐:お前が仲良くしたいっつったんだろ。本来の俺はこうだ 昌衛:急に男らしくなるからびっくりしちゃった 恭祐:男子高校生なんてこんなもんだろ。幻滅したか? 昌衛:ううん。しない。小野正くんがいい 恭祐:大体の奴はこっち見せるとビビるし距離置くのに 恭祐:変な奴 昌衛:ずっと猫かぶってるの疲れるでしょ。僕の前では息抜きってことでどうかな? 恭祐:仕方ねーな。バレないように協力しろよ 昌衛:こっちの小野正くんは独り占めか。やった 恭祐:言ってろ 0:寺(恭祐の夢) 恭祐:お前今世間で人気らしいじゃねーか 恭祐:主君のために命を散らす若き英雄って女どもがキャーキャーしてるぜ 恭祐M:あいつと出会ってから夢の内容が少し変わった 恭祐M:今までぼんやりしていたものが少し明確に見えるようになった 恭祐:俺のなのに 恭祐:実際のお前なんか!ボーっとしてて変な奴で!頑固で!自分勝手で! 恭祐:…早く迎えに来いよ…ばか 恭祐M:俺が話しかけていたのは小さな刀だった 恭祐M:返事がないはずだ 恭祐M:熱心に話しかけているし大切な人のものだった…のか? 恭祐M: 恭祐M:俺は誰を失ったのだろう 0:京都。見世の中(昌衛の夢) 昌衛:朝か…離れたく…ないな 昌衛M:誰かが隣で寝ている。顔はよく見えない。 昌衛M:僕は愛おしそうに頬をなでた 昌衛:昨日、思いは全て伝えたと思ったのに 昌衛:きっと、起きている姿を見たら、声を聴いたら、 昌衛:私は弱くなってしまうから… 昌衛M:寝ているその人に僕はそっとくちづけをした 昌衛:行ってきます。どうか元気で。 昌衛:…愛してる 昌衛M:そうか…僕は 昌衛M:この人を愛していたんだ 0:学校 恭祐M:どんな夢を見ても日々は続く 恭祐M:八敷野は毎日俺に話しかけてきた 0:体育の時間 昌衛:小野正くん!二人一組だって!組も!! 恭祐:は、はい… 0:昼休み 昌衛:小野正くん!お弁当一緒に食べよ!! 恭祐:え、ええ。いいですよ 0:放課後 昌衛:小野正くん!一緒に帰ろ! 恭祐:はい… 0:下校中 恭祐:お前さ、俺以外に友達作った方がいいんじゃねえの? 昌衛:なんで?小野正くんがいればいいじゃん 恭祐:まわりにすごい仲良しだと思われてるのなんか癪だし 昌衛:実際すごく仲良しじゃん 恭祐:そんなことねえ 昌衛:だって小野正くん断らないし 恭祐:人前だから猫かぶってるだけだ。実際は断りたいと思ってる 昌衛:そうなんだ。じゃあ何か誘うときは人前にしよ 恭祐:そういうことじゃねえ 昌衛:小野正くん優しいよ。 昌衛:だって、誘ったのは人前だったけど今は二人で帰ってくれてる 昌衛:僕を置いて行くこともできるのに 恭祐:そうだな。じゃあ一人で帰るか 昌衛:どうせ方向一緒じゃん!置いて行かないで!! 昌衛M:僕の頑張りの甲斐があり 昌衛M:学校ではすっかりセット扱い 昌衛M:半年を過ぎて寒くなり始めた季節でも 昌衛M:僕らの関係は相変わらずだった 0:昌衛の夢 昌衛M: 昌衛M:そんなある日 昌衛M:今まで見たことのない夢を見た 昌衛M:これは僕…私の記憶 昌衛M:歌舞伎を観に行って 昌衛M:色子の幸と出会って 昌衛M:契って 昌衛M:別れて…僕の心残りは、君だったんだ 0:恭祐の夢 恭祐M:今まで見たことのない夢を見た 恭祐M:これは俺…俺の記憶 恭祐M:俺は四条河原の色子で 恭祐M:歌舞伎やってて 恭祐M:年下のガキに初めて恋をして 恭祐M:契って 恭祐M:何も言わずに出て行ったあいつのぬくもりを探していたんだ 0:翌朝。登校時 昌衛:小野正くん!あのね!今日夢を見たんだ!君との夢を! 恭祐:奇遇だな。俺もだ 昌衛:僕と小野正くんはやっぱり運命なんだよ! 恭祐:そうかもな。何も言わずに出て行きやがって 昌衛:あの時はごめん。別れるのが辛くて 昌衛:決意が鈍りそうだったから 恭祐:いーよ 恭祐:どうせ昔の話だし 恭祐:今の俺には関係ない 昌衛:え? 恭祐:確かに俺は相山幸之助としての記憶を夢で見た 恭祐:でも俺は小野正恭祐だ 恭祐:お前が好きだった幸之助じゃない 昌衛:どうしてそんなこと言うの? 昌衛:幸之助は幸之助でしょ? 恭祐:お前も今は大石良金じゃなくて八敷野昌衛だろ 恭祐:現実見ろよ 昌衛M:そう言って彼は立ち去ってしまう 昌衛M:僕は小野正くんの中にある幸の部分に惹かれていただけなのかな 昌衛M:この感情は僕のものじゃないのかな 昌衛M:こんなことなら思い出したくなかった 昌衛M:僕はただ、二人でいられればそれでよかったのに 恭祐M:全て記憶が鮮明になった 恭祐M:俺は相山幸之助としての記憶を所持していた 恭祐M:この感覚はあいつにもあるのだろう 恭祐M:あのお花畑野郎は思い出せて嬉しいとでも思ったのだろうか 恭祐M:あの後すぐに名誉の戦死をした奴は、さぞ嬉しかっただろう 恭祐M:俺は一緒にあいつを失った50年の記憶も一緒に思い出した 恭祐M: 恭祐M:怖いだろ。また目の前に現れて、また消えてしまうのかと思ったら 恭祐M:あいつと一緒に、いられなくなった 恭祐M: 恭祐M:八敷野にあんなこと言っておいて 恭祐M:前世の記憶を気にしているのは…俺だ 昌衛M:それから僕たちは口を利かなくなった 恭祐M:正確には、俺が八敷野を避けた 0:12月。雪が降る季節になる 恭祐M:12月。雪が降り始める季節。 恭祐M:この季節がずっと苦手だった 恭祐M:寒いし寂しくなるし 恭祐M:胸の奥が震える感じがして 恭祐M: 恭祐M:どうして苦手かわかった 恭祐M:お前が死んだ季節だからだ 恭祐M: 恭祐M:思い出した今だからはっきりわかる 恭祐M:もう俺はあの思いに耐えられない 恭祐M:お前との約束だから天寿全うしたけどよ 恭祐M:もう二度とあんな思いはしたくない 昌衛M:12月。僕らが討ち入りを果たした季節 昌衛M:多くのものが犠牲になった 昌衛M: 昌衛M:幸之助のことをずっと考えていた 昌衛M:僕が死んで、勝手なお願いをして、迷惑をかけてしまった 昌衛M:今も好きでいてほしいなんて、虫が良すぎるよね 昌衛M: 昌衛M:幸之助じゃなくて小野正恭祐。 昌衛M:そういわれて改めて小野正くんを見ていた 昌衛M:たしかにまるっきり幸之助と同じじゃない 昌衛M:育った環境も年も違う 昌衛M:小野正くんは小野正くんだ 昌衛M:僕が好きなのは幸之助じゃなくて小野正くんだ 0:冬。某日。泉岳寺にて 昌衛M:過去に決別するために自分の墓を訪れた 昌衛:え… 昌衛M:そこには小野正くんの姿があった 昌衛:来てくれたの…? 恭祐:は? 昌衛M:すぐ逃げようとする彼の腕をつかむ 昌衛:もう逃げないでよ(泣きそうになっている) 恭祐:別に…今日は記念日でもなんでもねえしすいてるかと思って 昌衛:今日にした理由は聞いてないよ 昌衛:来てくれて嬉しいよ 恭祐:…ここ、綺麗になったな 昌衛:昔は汚かったの? 恭祐:良金が死んだ直後は酷かったぜ 恭祐:住職がお前らの持ち物で金儲けしようとしたり 恭祐:墓が荒れ放題だったり 昌衛:そうだったんだ 恭祐:そのおかげであの時の脇差を買えたけどな 昌衛:僕の刀を持っててくれたの? 恭祐:ああ、見世の金盗んで買った 昌衛:それダメなことじゃない? 恭祐:俺が働いた金だ 恭祐:今まで好きに買い物なんてしたことなかったんだから少しくらいいいだろ 恭祐:本当は墓の荒れ具合をどうにかしたかったけど 恭祐:俺一人じゃどうにもできなくて 恭祐:寺に来てた劇の台本作家?に赤穂の事件とかどうだ?って勧めておいた 昌衛:え?そうだったの? 恭祐:題材悩んでたみたいだし? 恭祐:そしたら超大作の人気上演になって驚いた 恭祐:屑な住職がファンの墓参りで金集めしてたのは気に入らねえけど 恭祐:人気のおかげでだいぶマシになったはずだ 昌衛:戦争で燃えた後も寄付とか善意で綺麗にしてもらえたんだもんね 恭祐:今や大人気の英雄だな 昌衛:思ってもないくせに…ふふっ 恭祐:なんだよ気持ち悪ぃ 昌衛:久しぶりに小野正くんと話せて嬉しいなって思って 恭祐:俺となんか話せなくていいだろ 昌衛:よくないよ 昌衛:ずっと話したかったんだから 恭祐:悪かったよ 恭祐:あんなこと言ったのに前世のこと気にしていたのは俺だったんだ 昌衛:前世と今は違うって言ったこと? 恭祐:そう。お前のいない五十年間を思い出すと 恭祐:お前のそばにいられなかった 昌衛:小野正くんかわい 恭祐:うっせ 昌衛:寂しい思いさせてごめんね 昌衛:これからはもう離れない 恭祐:俺より先に死ぬのは無しだからな 昌衛:うん。そばに居る 恭祐:もし先に死んだらお前のそばで切腹してやるよ 昌衛:あれ苦しいからおすすめしないよ? 昌衛:介錯してくれる人いないとずっと痛いし 恭祐:そういうことじゃねえ 恭祐:離れんな死ぬなって言ってるだけだ 昌衛:僕は大石良金の記憶も持っているけど 昌衛:八敷野昌衛として小野正恭祐が好き 昌衛:はじまりは良金の記憶だったけど 昌衛:小野正くんの不器用なところも僕だけに見せてくれる悪態も 昌衛:小さいことで悩んじゃうところも大好き 恭祐:恥ずかしいやつ 昌衛:小野正くんは? 恭祐:…俺も相山幸之助じゃなくて小野正恭祐として 恭祐:八敷野昌衛が好きだ 恭祐:俺なんかを想ってくれて…嬉しいよ 昌衛:これからは一緒に時を重ねていこう 恭祐:そうだな 昌衛:苗字じゃなくて、名前で呼んでいい? 恭祐:さすがに小指は切らないぞ 昌衛:あの時は急かしてたのに 恭祐:これからはずっと一緒なんだろ…昌衛 昌衛:うん。ずっと一緒だよ。恭祐 0:千日草を君に 完