台本概要
370 views
タイトル | 花が咲いた頃に |
---|---|
作者名 | 星空アルク (@ArkHoshizora) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) ※兼役あり |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
【舞台説明】 波風立てずに穏やかな生活をしていた優一(ユーイチ)。 花を愛して、花としか打ち解けられなかった、愛(メグミ)。 ある日、優一が歩いていると、ふと、熱心に花の様子を見ながら、 花に話しかけている女性(愛:メグミ)を見かける。 本当になんでもない気持ちで、話しかけてみる。 人付き合いに慣れていない愛は、警戒心を丸出しにしながらも、 花に関連する事だけ、受け答えをする。 二人が出会って、不器用に距離を縮めていく百日間の物語。 【補足】 途中で登場する、透子(トーコ)は、優一の元彼女。 ケンカ別れをしている。 気が強く思った事を口にすぐ出してしまう女性。 声質だけは愛に近いが、性格は正反対。 愛役、透子役と分けて演じられても問題はありませんが、 ・透子のセリフはそこまで多く無い点 ・声質が近いと優一も名言している点 この2点から、極力、愛と透子は兼役を推奨します。 370 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
優一 | 男 | 109 | 優しいだけが取り柄のどこにでも居そうな青年。 大体の事は、受け入れてしまう。 あまり怒る事はないが、納得出来ない事があると静かに怒ってしまうタイプ。 |
愛 | 女 | 108 | 花を愛する。口数も多くはない。 あまり喋らない為か、基本的に小さい声だが意外にも大きな声は通る。 過去に、ハナコと呼ばれ慣れ過ぎて、呼ばれたくないと思っている。 |
透子 | 女 | 12 | ユーイチの元カノジョ。 思ったことをすぐに口に出してしまう。 ユーイチともケンカ別れをしている。 声がメグミと少し似ている。 メグミのクラスメートで、最も”ハナコ”と呼んで、からかっていた。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
「花が咲いた時に」
0:1日目
(優一M):僕はきっと“優しいだけ”の人で。
(優一M):刺激という刺激はきっと与えられないだろう。
(優一M):単純に。傷付けるのが、傷付いてる人を見るのが耐えられない。
(優一M):だから、何も波風の立たない生き方をしてきた。
(優一M):今日も、そんな一日にするつもりだった。
0:
(愛M):私はきっと誰も“愛せ無い”人。
(愛M):花一つ一つに名前をつけて。
(愛M):花ばかりを愛でてしまう。
(愛M):『ハナコは本当に花が好きなんだねー。』
(愛M):学生時代はクラスメートに、よくそんな事を言われて。
(愛M):私の名前は、ハナコでは無い。
(愛M):周りからは、自然にそんなあだ名をつけられ。
(愛M):気に入っているわけでもない。
(愛M):だけど、何も気にしていない。
(愛M):今日も、変わらずそんな一日になるはずだから。
0:
(優一M):本当に気紛れだった。ただ、なんとなく。
(優一M):花に話しかけている女性を見かけて、声をかけてみた。
0:
優一: 「綺麗なお花ですね。」
愛:「・・・。」
優一:「すみません、突然。びっくりしますよね。(笑)」
愛:「・・・。」
優一 :「何、話していたんですか?」
愛:「・・・くて。」
優一:「え?なんですか?」
愛:「ユーイチが元気が無くて!!(大きめな声)」
優一 :「・・・!!!びっくりしたぁ。そんな大きな声、出せるんですね。」
愛:「・・・ごめんなさい。」
優一:「それに、僕の名前を呼びましたけど、その花、ユーイチって言うんですか?」
愛:「・・・はい。ユーイチって名付けました。・・・同じ名前なんですか?」
優一 :「はい。優しいに漢数字の一。一番優しくなりますように。安直ですよ。」
愛:「・・・そうなんですか。」
優一:「そうなんです。それで、元気がなさそうなんですか?
優一:そのユーイチ・・・クン?は。」
愛:「・・・はい。冬の時期って言うのもありますが。日が足りないみたいで。」
優一:「なるほど・・・。」
愛:「・・・はい。」
優一:「・・・。」
0:
(優一M):会話が途切れてしまった。
(優一M):この時は、何が起こるでもなく。
(優一M):僕自身としても、波風の立たない日々の1ページでしかなかった。
0:
(愛M):私は誰に対してもこういう感じになってしまう。
(愛M):笑顔を見せるのも、花の前。
(愛M):怒りの表情を見せるのも、花に関連して。
(愛M):哀しいと思うのも、花に対して。
(愛M):楽しいと感じるのも、花の事だけ。
(愛M):人に興味を示す事が出来なかった。
0:2日目
愛:「ユーイチ、ちょっと元気でたかなー?いい子だねぇ!」
優一:「こんにちは。」
愛:「・・・こんにちは。」
優一:「あらあら・・・さっきまでの笑顔が・・・。」
愛:「ごめんなさい。あまり人と話すのに慣れてなくて。」
優一:「そうなんですか?せっかくいい声なのに。勿体無い。」
愛:「・・・え?」
優一:「ちょっぴり、知り合いの声に似てるんですけど・・・。いい声ですよ。」
愛:「ありがとう、ございます・・・?」
優一:「いえいえ。そう言えば、僕は優一って明かしましたが。
優一:お名前、伺っても?」
愛:「・・・なんだと、思いますか?」
優一:「お、なんと、そんな切り返しが・・・?
優一:んー、安直だけど、ハナコさん、とか?」
愛:「やっぱり、そうですよね。」
優一:「・・・ん?違いましたか?」
愛:「ハナコで良いですよ。なんでもいいんです。」
優一:「なんでもは良くない気も・・・。本当はなんて言うんですか?」
愛:「ハナコで良いんじゃないですか。放っておいてください。」
優一:「お、そんな事言われると、気になっちゃう・・・」
愛:「放っておいて、く・だ・さ・い!!」(大声)
優一:「え・・・あ・・・。ごめん、なさい。
優一:気分を害してしまいました、ね。失礼します。」
愛:「・・・ぁ。」
(愛M):柄にも無く、あんな風に突っ返してしまった。
(愛M):でも、良いか。他の人たちのように、私を避けるだろうから。
(愛M):今日もまた、花と過ごす。
0:3日目
優一:「こんにちは。」
愛:「・・・こんにちは。」
優一:「昨日は、ごめんなさい。」
愛:「・・・え?」
優一:「失礼な事を言ってしまったようで。」
愛:「気にしないでください。いつものことなので。」
優一:「もう、話しかけない方がいいのかなって思ったんですけど。
優一:でも、ユーイチクン?とも仲良くしてみたいな。って。」
愛:「なんで、ですか?」
優一:「なんとなく。です。同じ名前だし?」
愛:「・・・そうですか。」
優一:「そうなんです。」
愛:「・・・変な人ですね。」
優一:「そうですね!って、えええ?そうですか???」
愛:「・・・はい。変な人です。」
優一:「がっくりだぁ・・・。」
愛:「ユーイチの事は、私が良く見てるので、譲りません。」
優一:「そんなぁ・・・。僕も優一ですけど?」
愛:「あなたの事じゃないです。こっちの、花の方です。」
優一:「がっくり・・・。」
愛:「・・・代わりに、隣の花、まだ名前を悩んでいて。」
愛:よかったら、考えてみませんか?」
優一:「がっくり・・・。・・・え?!いいんですか?!」
愛:「なんだか、忙しい人ですね。」
優一:「確かに・・・?ちょっと、頭冷やさないと。」
愛:「そうですね。」
優一:「・・・ふぅ・・・。よっし!で、名前、ですか?」
愛:「そうですね、可愛らしいお花なので。可愛らしい名前が良いかな、と。」
優一:「んーーー・・・・。」
愛:「・・・。」
優一:「んーーーーーー・・・。」
愛:「・・・。」
優一 :「メグミ。」
愛:「・・・ぇ?」
優一:「愛しい、とか。愛とかって書いてメグミ。どうですか?!」
愛:「・・・なんで?」(小声)
優一:「え?どうしました?!」
愛:「なんでも、ないです。良いんじゃないですか?」
優一:「我ながら、素晴らしいネーミングセンスだと思いました!えっへん!」
愛:「・・・。今日は、帰ります。失礼します。」
優一:「え、ちょっと・・・?!え・・・?」
(優一M):なんだろう、また、通称:”ハナコさん”って呼んだら怒っちゃうけど。
(優一M):また怒らせてしまったのかな・・・。
(優一M):それに、なんでこんなに気になるんだろう。困った。
(愛M):なんだろう、あの男の人。
(愛M):私に対しては、ハナコって答えておいて。
(愛M):花の名前は私の名前を言い当てるとか。
(愛M):なんなの、あの男の人。失礼。
(愛M):・・・もう!なんなの!あの男!
(愛M):当てるなら、私に対して当ててよ。
0:4日目
優一:「・・・あれ?」
(優一M):ハナコさん、来てないな・・・。
(優一M):怒らせてしまったから、かなぁ・・・?
0:
0:ーーーー
0:
(優一M):それから4日間通い続けたが、一向に現れなかった。
(優一M):ハナコさんに、謝りたかったのに。
(優一M):明日、居なかったら諦めよう。
(優一M):それまでは、ユーイチとメグミに話しかける、変な男の人で居る。
0:8日目
0:
優一:「あ!!!居た!!」
愛:「・・・あ。どうも。」
優一:「ふぅ・・・嫌われたかと思いましたよ!」
愛:「・・・え?」
優一:「四日間、ずっとここに通って、ユーイチとメグミに話しかけていたんですから!」
愛:「・・・そうなんですか。」
優一:「そうなんです!・・・あと。ごめんなさい。」
愛:「・・・何が、ですか?」
優一:「いや、何かいつも怒らせてしまってるな、と。」
愛:「そんな事は無いですよ。少し面倒だとは思ってますけど。」
優一:「良かったぁ・・・って、面倒、ですか?!」
愛:「はい。」(微笑み)
優一:「そんなぁ・・・って、笑えるんですね。」
愛:「・・・はい?」
優一:「ユーイチ・・・花のね?僕じゃなくて。
優一:の前とかだと、いつも笑ってるけど。
優一:僕に対して笑っているのは初めてだな。って。」
愛:「・・・そうかもしれないですね。」
優一:「ちょっぴり嬉しいです。」
愛:「何がですか?」
優一:「笑顔が見れて?」
愛:「・・・本当、変な人ですね。」
優一:「ええ、変な人なんです。」
愛:「・・・はぁ。認めちゃった・・・。」
優一:「・・・(ニコニコ)。」
愛:「・・・なんですか?」
優一:「笑顔、綺麗だったな、って。」
愛:「・・・もう、来ないでください・・・(小声)」
優一:「嫌です!」
愛:「聞こえてたんですか?!」
優一:「なんとなくです!」
愛:「・・・はぁ・・・。変な人、ですね。もう。」
優一:「はい。ここ四日間、花に話しかける変な男って言われ続けたので、慣れました!」
愛: 「・・・もう、なんでもいいです。」
優一:「はいっ!」
愛:「・・・。」
(愛M):なんなんだろう、この人。
(愛M):あれから、ハナコとは呼んでこないけど。
(愛M):馴れ馴れしいクセに、ズケズケと入り込んでくる。
(愛M):ペースが乱される。イヤ。
(優一M):ちょっとずつだけど、話してくれるようになった。
(優一M):初めて、笑顔が見れた。
(優一M):はっきり言って、めちゃくちゃ美人だった。
(優一M):笑顔の素敵な人って、やっぱり良いよなぁ・・・。
(優一M):また、通っちゃうじゃないか。
0:9日目
優一:「来ちゃいました。」
愛:「どうも。」
優一:「そう言えば、昨日、聞こうと思っていたんですけど。」
愛:「なんですか?」
優一:「四日間、いらっしゃらなかったのって、何があったのかな。って」
愛:「いきなりですね。」
優一:「気になっていたんですが、昨日はなんとなく聞き出しにくくて。」
愛:「・・・ここだけじゃ、無いんですよ。」
優一:「というと?」
愛:「ユーイチや・・・メグミ以外にも、会いに行ってるんです。」
優一:「なるほど。ここ以外にも、いらっしゃるわけですね。」
愛:「そうなんです。」
優一: 「次は、どこに行くんですか?」
愛:「・・・え?」
優一:「僕も、会ってみたいなって。」
愛:「別に、面白く無いですよ?」
優一:「面白くなかったら、僕は、何度もここに来ないですよ?」
愛:「・・・本当に、変な人ですね。」
優一:「はい。変な人なんです。」
愛:「明日は、9丁目12番地の空き地です。」
優一:「なるほど、そこに行けば良いんですね?」
愛:「はい。ただ、雨天の場合は行きません。」
優一:「大丈夫です!明日は、晴れます!」
愛:「そうなんですか??」
優一:「気象予報の資格を勉強してましてね!明日はそんな予報です!」
愛:「そうなんですか?!」
優一:「え・・・?あ、はい!
優一:(え、やばい。嘘って言えないぞ、これ。)」
愛:「嘘、なんですか?」
優一:「え?!ナゼバレタンデスカ?!」
愛:「勘です。嘘、下手なんですね。あははははっ!」
優一:「そんな笑わなくても?!」
愛:「嘘つきは、キライです。」
優一:「ごめんなさい。」
愛:「じゃ、また、明日。」
優一:「はい!!また!!」
(優一M):その翌日も。その次の日も。
(優一M):あまり多くは語らないけれど。
(優一M):のどかで柔らかい。
(優一M):冬だけど、温かい日々が流れていった。
(愛M):何回も、何回も、何回も。
(愛M):何回来るんだろう。この人は。
(愛M):その度に、知らなかった感情が出てきてしまう。
(愛M):それを楽しみにしてしまっている自分に驚いた。
(愛M):雨の日は、花に会えなくて寂しいと思っていたけど。
(愛M):人に会えなくて寂しいなんて思う自分が不思議だった。
(愛M):・・・本当に、変な人だ。
0:91日目
優一:「こんにちは。」
愛:「こんにちは。」
優一:「ユーイチとメグミじゃなくなっちゃって、ちょっと寂しいです。」
愛:「・・・そうですね。花だから、仕方ないんです。」
優一:「・・・そうですね。どんな名前か、決めてますか?」
愛:「まだです。新しく咲いてからいつも決めてるので。」
優一:「そうですか。楽しみだなぁ。」
透子:「優一??わぁ、久しぶりぃ!」
優一:「え?あぁ・・・トーコ。久しぶり。」
透子:「元気ー?って、あー、お取り込み中?」
愛:「・・・(ぺこり)」
透子:「・・・?アンタ、ハナコじゃない?」
愛:「・・・え?」
透子:「まぁ、覚えてないよね。人に興味が無くって花にしか興味無しのアンタだし。」
愛:「・・・ごめんなさい。」
透子:「別に謝らなくていいよ。で、何?付き合ってるの?アンタら。」
優一:「そういうわけでは・・・」
透子:「こーゆー、地味ーなのがタイプなの?ユーイチ?」
優一:「地味って・・・。落ち着いてて、素敵な人だよ。」
透子:「なに?アタシがウルサイって話??」
優一:「そこまで言ってないだろ?!」
透子:「・・・はいはい。ところでさ、ハナコ?」
愛:「ハナコじゃないです・・・」
透子:「はぁ?ハナコでしょ?アンタなんか。」
愛:「ハナコじゃ・・・」
優一:「メグミさんだ!!」
愛:「・・・え?」
透子:「・・・は?なんでユーイチがムキになるの?」
優一:「メグミさんが、今までどれだけ苦しんでたか!知らないだろう?!」
透子:「知るわけないじゃん」
優一:「・・・帰ってくれ」
透子:「・・・はいはい。お幸せに?・・・ムカつく。」
愛:「ありがとう、ございます。あ、あの・・・?」
優一:「ごめんなさい、みっともない所を・・・。」
愛:「あ、あの・・・。名前・・・教えてない・・・」
優一:「確かに、直接は聞いてないです。けど、メグミさん。」
愛:「・・・はい?」
優一:「嘘、下手ですね。」
愛:「・・・はい??」
優一:「花のメグミって呼ぶ度に、反応してたじゃないですか?」
愛:「え・・・嘘・・・?!」
優一:「だから、確証は無かったけど。当たってて良かったです。」
愛:「・・・はい。あと、さっきは、ありがとうございました。」
優一:「ああ・・・。元カノが、ごめんね。」
愛:「元・・・カノ・・・?」
優一:「はい。いつも喧嘩ばかりしてました。」
優一:あと、少しだけ・・・
優一:(メグミさんと透子の声が似てるんだよ。言えないけど)」
愛:「・・・?」
優一:「いえ。なんでもないです。」
愛:「ところで・・・。」
優一:「はい?」
愛:「お名前で、呼んでも、良いですか?」
優一: 「もちろんです。」
0:100日目
優一 :「メグミさん?」
愛:「なんですか?」
優一:「新しい花、咲いてきましたね。名前、決めました?」
愛:「まだ・・・ですかね。ユーイチさんは?」
優一:「アラタ。かな。」
愛:「素敵ですね。なら、私は・・・ノゾミ。」
優一:「素敵ですね!あと・・・。メグミさん。」
愛:「なんですか?」
優一:「アナタが、好きです。僕と付き合って下さい。」
愛:「・・・え?」
優一:「取り柄なんてそんなに無いと思いますが・・・」
愛:「それに、変な人ですしね?」
優一:「うっ・・・」
愛:「それに、人の名前を勝手に想像する人ですし?」
優一:「え、でも・・・」
愛:「それに、雨の日は来ないって言ってるのに、来るし」
優一:「なんで知って・・・?!え、メグミさん、来てたの?」
愛:「・・・行ってないです。」
優一:「じー・・・」
愛:「ユーイチさんに会えるとか、別に思ってなかったです」
優一:「・・・ぷっ」
愛:「なんですか?!」
優一:「カワイイ」
愛:「・・・からかってますか?」
優一:「メグミさんだって。はぐらかしてるじゃないですか!」
愛:「・・・うぅ・・・」
優一:「無理にとは言いませんが・・・」
愛:「・・・・ます。」
優一:「え?」
愛:「よろしく、お願いします。」
優一:「・・・ええ。」
愛:「私も、好きです。優一さん。」
優一:「僕もです。愛さん。」
0:了
「花が咲いた時に」
0:1日目
(優一M):僕はきっと“優しいだけ”の人で。
(優一M):刺激という刺激はきっと与えられないだろう。
(優一M):単純に。傷付けるのが、傷付いてる人を見るのが耐えられない。
(優一M):だから、何も波風の立たない生き方をしてきた。
(優一M):今日も、そんな一日にするつもりだった。
0:
(愛M):私はきっと誰も“愛せ無い”人。
(愛M):花一つ一つに名前をつけて。
(愛M):花ばかりを愛でてしまう。
(愛M):『ハナコは本当に花が好きなんだねー。』
(愛M):学生時代はクラスメートに、よくそんな事を言われて。
(愛M):私の名前は、ハナコでは無い。
(愛M):周りからは、自然にそんなあだ名をつけられ。
(愛M):気に入っているわけでもない。
(愛M):だけど、何も気にしていない。
(愛M):今日も、変わらずそんな一日になるはずだから。
0:
(優一M):本当に気紛れだった。ただ、なんとなく。
(優一M):花に話しかけている女性を見かけて、声をかけてみた。
0:
優一: 「綺麗なお花ですね。」
愛:「・・・。」
優一:「すみません、突然。びっくりしますよね。(笑)」
愛:「・・・。」
優一 :「何、話していたんですか?」
愛:「・・・くて。」
優一:「え?なんですか?」
愛:「ユーイチが元気が無くて!!(大きめな声)」
優一 :「・・・!!!びっくりしたぁ。そんな大きな声、出せるんですね。」
愛:「・・・ごめんなさい。」
優一:「それに、僕の名前を呼びましたけど、その花、ユーイチって言うんですか?」
愛:「・・・はい。ユーイチって名付けました。・・・同じ名前なんですか?」
優一 :「はい。優しいに漢数字の一。一番優しくなりますように。安直ですよ。」
愛:「・・・そうなんですか。」
優一:「そうなんです。それで、元気がなさそうなんですか?
優一:そのユーイチ・・・クン?は。」
愛:「・・・はい。冬の時期って言うのもありますが。日が足りないみたいで。」
優一:「なるほど・・・。」
愛:「・・・はい。」
優一:「・・・。」
0:
(優一M):会話が途切れてしまった。
(優一M):この時は、何が起こるでもなく。
(優一M):僕自身としても、波風の立たない日々の1ページでしかなかった。
0:
(愛M):私は誰に対してもこういう感じになってしまう。
(愛M):笑顔を見せるのも、花の前。
(愛M):怒りの表情を見せるのも、花に関連して。
(愛M):哀しいと思うのも、花に対して。
(愛M):楽しいと感じるのも、花の事だけ。
(愛M):人に興味を示す事が出来なかった。
0:2日目
愛:「ユーイチ、ちょっと元気でたかなー?いい子だねぇ!」
優一:「こんにちは。」
愛:「・・・こんにちは。」
優一:「あらあら・・・さっきまでの笑顔が・・・。」
愛:「ごめんなさい。あまり人と話すのに慣れてなくて。」
優一:「そうなんですか?せっかくいい声なのに。勿体無い。」
愛:「・・・え?」
優一:「ちょっぴり、知り合いの声に似てるんですけど・・・。いい声ですよ。」
愛:「ありがとう、ございます・・・?」
優一:「いえいえ。そう言えば、僕は優一って明かしましたが。
優一:お名前、伺っても?」
愛:「・・・なんだと、思いますか?」
優一:「お、なんと、そんな切り返しが・・・?
優一:んー、安直だけど、ハナコさん、とか?」
愛:「やっぱり、そうですよね。」
優一:「・・・ん?違いましたか?」
愛:「ハナコで良いですよ。なんでもいいんです。」
優一:「なんでもは良くない気も・・・。本当はなんて言うんですか?」
愛:「ハナコで良いんじゃないですか。放っておいてください。」
優一:「お、そんな事言われると、気になっちゃう・・・」
愛:「放っておいて、く・だ・さ・い!!」(大声)
優一:「え・・・あ・・・。ごめん、なさい。
優一:気分を害してしまいました、ね。失礼します。」
愛:「・・・ぁ。」
(愛M):柄にも無く、あんな風に突っ返してしまった。
(愛M):でも、良いか。他の人たちのように、私を避けるだろうから。
(愛M):今日もまた、花と過ごす。
0:3日目
優一:「こんにちは。」
愛:「・・・こんにちは。」
優一:「昨日は、ごめんなさい。」
愛:「・・・え?」
優一:「失礼な事を言ってしまったようで。」
愛:「気にしないでください。いつものことなので。」
優一:「もう、話しかけない方がいいのかなって思ったんですけど。
優一:でも、ユーイチクン?とも仲良くしてみたいな。って。」
愛:「なんで、ですか?」
優一:「なんとなく。です。同じ名前だし?」
愛:「・・・そうですか。」
優一:「そうなんです。」
愛:「・・・変な人ですね。」
優一:「そうですね!って、えええ?そうですか???」
愛:「・・・はい。変な人です。」
優一:「がっくりだぁ・・・。」
愛:「ユーイチの事は、私が良く見てるので、譲りません。」
優一:「そんなぁ・・・。僕も優一ですけど?」
愛:「あなたの事じゃないです。こっちの、花の方です。」
優一:「がっくり・・・。」
愛:「・・・代わりに、隣の花、まだ名前を悩んでいて。」
愛:よかったら、考えてみませんか?」
優一:「がっくり・・・。・・・え?!いいんですか?!」
愛:「なんだか、忙しい人ですね。」
優一:「確かに・・・?ちょっと、頭冷やさないと。」
愛:「そうですね。」
優一:「・・・ふぅ・・・。よっし!で、名前、ですか?」
愛:「そうですね、可愛らしいお花なので。可愛らしい名前が良いかな、と。」
優一:「んーーー・・・・。」
愛:「・・・。」
優一:「んーーーーーー・・・。」
愛:「・・・。」
優一 :「メグミ。」
愛:「・・・ぇ?」
優一:「愛しい、とか。愛とかって書いてメグミ。どうですか?!」
愛:「・・・なんで?」(小声)
優一:「え?どうしました?!」
愛:「なんでも、ないです。良いんじゃないですか?」
優一:「我ながら、素晴らしいネーミングセンスだと思いました!えっへん!」
愛:「・・・。今日は、帰ります。失礼します。」
優一:「え、ちょっと・・・?!え・・・?」
(優一M):なんだろう、また、通称:”ハナコさん”って呼んだら怒っちゃうけど。
(優一M):また怒らせてしまったのかな・・・。
(優一M):それに、なんでこんなに気になるんだろう。困った。
(愛M):なんだろう、あの男の人。
(愛M):私に対しては、ハナコって答えておいて。
(愛M):花の名前は私の名前を言い当てるとか。
(愛M):なんなの、あの男の人。失礼。
(愛M):・・・もう!なんなの!あの男!
(愛M):当てるなら、私に対して当ててよ。
0:4日目
優一:「・・・あれ?」
(優一M):ハナコさん、来てないな・・・。
(優一M):怒らせてしまったから、かなぁ・・・?
0:
0:ーーーー
0:
(優一M):それから4日間通い続けたが、一向に現れなかった。
(優一M):ハナコさんに、謝りたかったのに。
(優一M):明日、居なかったら諦めよう。
(優一M):それまでは、ユーイチとメグミに話しかける、変な男の人で居る。
0:8日目
0:
優一:「あ!!!居た!!」
愛:「・・・あ。どうも。」
優一:「ふぅ・・・嫌われたかと思いましたよ!」
愛:「・・・え?」
優一:「四日間、ずっとここに通って、ユーイチとメグミに話しかけていたんですから!」
愛:「・・・そうなんですか。」
優一:「そうなんです!・・・あと。ごめんなさい。」
愛:「・・・何が、ですか?」
優一:「いや、何かいつも怒らせてしまってるな、と。」
愛:「そんな事は無いですよ。少し面倒だとは思ってますけど。」
優一:「良かったぁ・・・って、面倒、ですか?!」
愛:「はい。」(微笑み)
優一:「そんなぁ・・・って、笑えるんですね。」
愛:「・・・はい?」
優一:「ユーイチ・・・花のね?僕じゃなくて。
優一:の前とかだと、いつも笑ってるけど。
優一:僕に対して笑っているのは初めてだな。って。」
愛:「・・・そうかもしれないですね。」
優一:「ちょっぴり嬉しいです。」
愛:「何がですか?」
優一:「笑顔が見れて?」
愛:「・・・本当、変な人ですね。」
優一:「ええ、変な人なんです。」
愛:「・・・はぁ。認めちゃった・・・。」
優一:「・・・(ニコニコ)。」
愛:「・・・なんですか?」
優一:「笑顔、綺麗だったな、って。」
愛:「・・・もう、来ないでください・・・(小声)」
優一:「嫌です!」
愛:「聞こえてたんですか?!」
優一:「なんとなくです!」
愛:「・・・はぁ・・・。変な人、ですね。もう。」
優一:「はい。ここ四日間、花に話しかける変な男って言われ続けたので、慣れました!」
愛: 「・・・もう、なんでもいいです。」
優一:「はいっ!」
愛:「・・・。」
(愛M):なんなんだろう、この人。
(愛M):あれから、ハナコとは呼んでこないけど。
(愛M):馴れ馴れしいクセに、ズケズケと入り込んでくる。
(愛M):ペースが乱される。イヤ。
(優一M):ちょっとずつだけど、話してくれるようになった。
(優一M):初めて、笑顔が見れた。
(優一M):はっきり言って、めちゃくちゃ美人だった。
(優一M):笑顔の素敵な人って、やっぱり良いよなぁ・・・。
(優一M):また、通っちゃうじゃないか。
0:9日目
優一:「来ちゃいました。」
愛:「どうも。」
優一:「そう言えば、昨日、聞こうと思っていたんですけど。」
愛:「なんですか?」
優一:「四日間、いらっしゃらなかったのって、何があったのかな。って」
愛:「いきなりですね。」
優一:「気になっていたんですが、昨日はなんとなく聞き出しにくくて。」
愛:「・・・ここだけじゃ、無いんですよ。」
優一:「というと?」
愛:「ユーイチや・・・メグミ以外にも、会いに行ってるんです。」
優一:「なるほど。ここ以外にも、いらっしゃるわけですね。」
愛:「そうなんです。」
優一: 「次は、どこに行くんですか?」
愛:「・・・え?」
優一:「僕も、会ってみたいなって。」
愛:「別に、面白く無いですよ?」
優一:「面白くなかったら、僕は、何度もここに来ないですよ?」
愛:「・・・本当に、変な人ですね。」
優一:「はい。変な人なんです。」
愛:「明日は、9丁目12番地の空き地です。」
優一:「なるほど、そこに行けば良いんですね?」
愛:「はい。ただ、雨天の場合は行きません。」
優一:「大丈夫です!明日は、晴れます!」
愛:「そうなんですか??」
優一:「気象予報の資格を勉強してましてね!明日はそんな予報です!」
愛:「そうなんですか?!」
優一:「え・・・?あ、はい!
優一:(え、やばい。嘘って言えないぞ、これ。)」
愛:「嘘、なんですか?」
優一:「え?!ナゼバレタンデスカ?!」
愛:「勘です。嘘、下手なんですね。あははははっ!」
優一:「そんな笑わなくても?!」
愛:「嘘つきは、キライです。」
優一:「ごめんなさい。」
愛:「じゃ、また、明日。」
優一:「はい!!また!!」
(優一M):その翌日も。その次の日も。
(優一M):あまり多くは語らないけれど。
(優一M):のどかで柔らかい。
(優一M):冬だけど、温かい日々が流れていった。
(愛M):何回も、何回も、何回も。
(愛M):何回来るんだろう。この人は。
(愛M):その度に、知らなかった感情が出てきてしまう。
(愛M):それを楽しみにしてしまっている自分に驚いた。
(愛M):雨の日は、花に会えなくて寂しいと思っていたけど。
(愛M):人に会えなくて寂しいなんて思う自分が不思議だった。
(愛M):・・・本当に、変な人だ。
0:91日目
優一:「こんにちは。」
愛:「こんにちは。」
優一:「ユーイチとメグミじゃなくなっちゃって、ちょっと寂しいです。」
愛:「・・・そうですね。花だから、仕方ないんです。」
優一:「・・・そうですね。どんな名前か、決めてますか?」
愛:「まだです。新しく咲いてからいつも決めてるので。」
優一:「そうですか。楽しみだなぁ。」
透子:「優一??わぁ、久しぶりぃ!」
優一:「え?あぁ・・・トーコ。久しぶり。」
透子:「元気ー?って、あー、お取り込み中?」
愛:「・・・(ぺこり)」
透子:「・・・?アンタ、ハナコじゃない?」
愛:「・・・え?」
透子:「まぁ、覚えてないよね。人に興味が無くって花にしか興味無しのアンタだし。」
愛:「・・・ごめんなさい。」
透子:「別に謝らなくていいよ。で、何?付き合ってるの?アンタら。」
優一:「そういうわけでは・・・」
透子:「こーゆー、地味ーなのがタイプなの?ユーイチ?」
優一:「地味って・・・。落ち着いてて、素敵な人だよ。」
透子:「なに?アタシがウルサイって話??」
優一:「そこまで言ってないだろ?!」
透子:「・・・はいはい。ところでさ、ハナコ?」
愛:「ハナコじゃないです・・・」
透子:「はぁ?ハナコでしょ?アンタなんか。」
愛:「ハナコじゃ・・・」
優一:「メグミさんだ!!」
愛:「・・・え?」
透子:「・・・は?なんでユーイチがムキになるの?」
優一:「メグミさんが、今までどれだけ苦しんでたか!知らないだろう?!」
透子:「知るわけないじゃん」
優一:「・・・帰ってくれ」
透子:「・・・はいはい。お幸せに?・・・ムカつく。」
愛:「ありがとう、ございます。あ、あの・・・?」
優一:「ごめんなさい、みっともない所を・・・。」
愛:「あ、あの・・・。名前・・・教えてない・・・」
優一:「確かに、直接は聞いてないです。けど、メグミさん。」
愛:「・・・はい?」
優一:「嘘、下手ですね。」
愛:「・・・はい??」
優一:「花のメグミって呼ぶ度に、反応してたじゃないですか?」
愛:「え・・・嘘・・・?!」
優一:「だから、確証は無かったけど。当たってて良かったです。」
愛:「・・・はい。あと、さっきは、ありがとうございました。」
優一:「ああ・・・。元カノが、ごめんね。」
愛:「元・・・カノ・・・?」
優一:「はい。いつも喧嘩ばかりしてました。」
優一:あと、少しだけ・・・
優一:(メグミさんと透子の声が似てるんだよ。言えないけど)」
愛:「・・・?」
優一:「いえ。なんでもないです。」
愛:「ところで・・・。」
優一:「はい?」
愛:「お名前で、呼んでも、良いですか?」
優一: 「もちろんです。」
0:100日目
優一 :「メグミさん?」
愛:「なんですか?」
優一:「新しい花、咲いてきましたね。名前、決めました?」
愛:「まだ・・・ですかね。ユーイチさんは?」
優一:「アラタ。かな。」
愛:「素敵ですね。なら、私は・・・ノゾミ。」
優一:「素敵ですね!あと・・・。メグミさん。」
愛:「なんですか?」
優一:「アナタが、好きです。僕と付き合って下さい。」
愛:「・・・え?」
優一:「取り柄なんてそんなに無いと思いますが・・・」
愛:「それに、変な人ですしね?」
優一:「うっ・・・」
愛:「それに、人の名前を勝手に想像する人ですし?」
優一:「え、でも・・・」
愛:「それに、雨の日は来ないって言ってるのに、来るし」
優一:「なんで知って・・・?!え、メグミさん、来てたの?」
愛:「・・・行ってないです。」
優一:「じー・・・」
愛:「ユーイチさんに会えるとか、別に思ってなかったです」
優一:「・・・ぷっ」
愛:「なんですか?!」
優一:「カワイイ」
愛:「・・・からかってますか?」
優一:「メグミさんだって。はぐらかしてるじゃないですか!」
愛:「・・・うぅ・・・」
優一:「無理にとは言いませんが・・・」
愛:「・・・・ます。」
優一:「え?」
愛:「よろしく、お願いします。」
優一:「・・・ええ。」
愛:「私も、好きです。優一さん。」
優一:「僕もです。愛さん。」
0:了