台本概要

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タイトル 花が咲いた頃に
作者名 星空アルク  (@ArkHoshizora)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1) ※兼役あり
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 【舞台説明】
波風立てずに穏やかな生活をしていた優一(ユーイチ)。
花を愛して、花としか打ち解けられなかった、愛(メグミ)。

ある日、優一が歩いていると、ふと、熱心に花の様子を見ながら、
花に話しかけている女性(愛:メグミ)を見かける。
本当になんでもない気持ちで、話しかけてみる。
人付き合いに慣れていない愛は、警戒心を丸出しにしながらも、
花に関連する事だけ、受け答えをする。
二人が出会って、不器用に距離を縮めていく百日間の物語。

【補足】
途中で登場する、透子(トーコ)は、優一の元彼女。
ケンカ別れをしている。
気が強く思った事を口にすぐ出してしまう女性。
声質だけは愛に近いが、性格は正反対。

愛役、透子役と分けて演じられても問題はありませんが、
・透子のセリフはそこまで多く無い点
・声質が近いと優一も名言している点
この2点から、極力、愛と透子は兼役を推奨します。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
優一 109 優しいだけが取り柄のどこにでも居そうな青年。 大体の事は、受け入れてしまう。 あまり怒る事はないが、納得出来ない事があると静かに怒ってしまうタイプ。
108 花を愛する。口数も多くはない。 あまり喋らない為か、基本的に小さい声だが意外にも大きな声は通る。 過去に、ハナコと呼ばれ慣れ過ぎて、呼ばれたくないと思っている。
透子 12 ユーイチの元カノジョ。 思ったことをすぐに口に出してしまう。 ユーイチともケンカ別れをしている。 声がメグミと少し似ている。 メグミのクラスメートで、最も”ハナコ”と呼んで、からかっていた。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
「花が咲いた時に」 0:1日目 (優一M):僕はきっと“優しいだけ”の人で。 (優一M):刺激という刺激はきっと与えられないだろう。 (優一M):単純に。傷付けるのが、傷付いてる人を見るのが耐えられない。 (優一M):だから、何も波風の立たない生き方をしてきた。 (優一M):今日も、そんな一日にするつもりだった。 0: (愛M):私はきっと誰も“愛せ無い”人。 (愛M):花一つ一つに名前をつけて。 (愛M):花ばかりを愛でてしまう。 (愛M):『ハナコは本当に花が好きなんだねー。』 (愛M):学生時代はクラスメートに、よくそんな事を言われて。 (愛M):私の名前は、ハナコでは無い。 (愛M):周りからは、自然にそんなあだ名をつけられ。 (愛M):気に入っているわけでもない。 (愛M):だけど、何も気にしていない。 (愛M):今日も、変わらずそんな一日になるはずだから。 0: (優一M):本当に気紛れだった。ただ、なんとなく。 (優一M):花に話しかけている女性を見かけて、声をかけてみた。 0: 優一: 「綺麗なお花ですね。」 愛:「・・・。」 優一:「すみません、突然。びっくりしますよね。(笑)」 愛:「・・・。」 優一 :「何、話していたんですか?」 愛:「・・・くて。」 優一:「え?なんですか?」 愛:「ユーイチが元気が無くて!!(大きめな声)」 優一 :「・・・!!!びっくりしたぁ。そんな大きな声、出せるんですね。」 愛:「・・・ごめんなさい。」 優一:「それに、僕の名前を呼びましたけど、その花、ユーイチって言うんですか?」 愛:「・・・はい。ユーイチって名付けました。・・・同じ名前なんですか?」 優一 :「はい。優しいに漢数字の一。一番優しくなりますように。安直ですよ。」 愛:「・・・そうなんですか。」 優一:「そうなんです。それで、元気がなさそうなんですか? 優一:そのユーイチ・・・クン?は。」 愛:「・・・はい。冬の時期って言うのもありますが。日が足りないみたいで。」 優一:「なるほど・・・。」 愛:「・・・はい。」 優一:「・・・。」 0: (優一M):会話が途切れてしまった。 (優一M):この時は、何が起こるでもなく。 (優一M):僕自身としても、波風の立たない日々の1ページでしかなかった。 0: (愛M):私は誰に対してもこういう感じになってしまう。 (愛M):笑顔を見せるのも、花の前。 (愛M):怒りの表情を見せるのも、花に関連して。 (愛M):哀しいと思うのも、花に対して。 (愛M):楽しいと感じるのも、花の事だけ。 (愛M):人に興味を示す事が出来なかった。 0:2日目 愛:「ユーイチ、ちょっと元気でたかなー?いい子だねぇ!」 優一:「こんにちは。」 愛:「・・・こんにちは。」 優一:「あらあら・・・さっきまでの笑顔が・・・。」 愛:「ごめんなさい。あまり人と話すのに慣れてなくて。」 優一:「そうなんですか?せっかくいい声なのに。勿体無い。」 愛:「・・・え?」 優一:「ちょっぴり、知り合いの声に似てるんですけど・・・。いい声ですよ。」 愛:「ありがとう、ございます・・・?」 優一:「いえいえ。そう言えば、僕は優一って明かしましたが。 優一:お名前、伺っても?」 愛:「・・・なんだと、思いますか?」 優一:「お、なんと、そんな切り返しが・・・? 優一:んー、安直だけど、ハナコさん、とか?」 愛:「やっぱり、そうですよね。」 優一:「・・・ん?違いましたか?」 愛:「ハナコで良いですよ。なんでもいいんです。」 優一:「なんでもは良くない気も・・・。本当はなんて言うんですか?」 愛:「ハナコで良いんじゃないですか。放っておいてください。」 優一:「お、そんな事言われると、気になっちゃう・・・」 愛:「放っておいて、く・だ・さ・い!!」(大声) 優一:「え・・・あ・・・。ごめん、なさい。 優一:気分を害してしまいました、ね。失礼します。」 愛:「・・・ぁ。」 (愛M):柄にも無く、あんな風に突っ返してしまった。 (愛M):でも、良いか。他の人たちのように、私を避けるだろうから。 (愛M):今日もまた、花と過ごす。 0:3日目 優一:「こんにちは。」 愛:「・・・こんにちは。」 優一:「昨日は、ごめんなさい。」 愛:「・・・え?」 優一:「失礼な事を言ってしまったようで。」 愛:「気にしないでください。いつものことなので。」 優一:「もう、話しかけない方がいいのかなって思ったんですけど。 優一:でも、ユーイチクン?とも仲良くしてみたいな。って。」 愛:「なんで、ですか?」 優一:「なんとなく。です。同じ名前だし?」 愛:「・・・そうですか。」 優一:「そうなんです。」 愛:「・・・変な人ですね。」 優一:「そうですね!って、えええ?そうですか???」 愛:「・・・はい。変な人です。」 優一:「がっくりだぁ・・・。」 愛:「ユーイチの事は、私が良く見てるので、譲りません。」 優一:「そんなぁ・・・。僕も優一ですけど?」 愛:「あなたの事じゃないです。こっちの、花の方です。」 優一:「がっくり・・・。」 愛:「・・・代わりに、隣の花、まだ名前を悩んでいて。」 愛:よかったら、考えてみませんか?」 優一:「がっくり・・・。・・・え?!いいんですか?!」 愛:「なんだか、忙しい人ですね。」 優一:「確かに・・・?ちょっと、頭冷やさないと。」 愛:「そうですね。」 優一:「・・・ふぅ・・・。よっし!で、名前、ですか?」 愛:「そうですね、可愛らしいお花なので。可愛らしい名前が良いかな、と。」 優一:「んーーー・・・・。」 愛:「・・・。」 優一:「んーーーーーー・・・。」 愛:「・・・。」 優一 :「メグミ。」 愛:「・・・ぇ?」 優一:「愛しい、とか。愛とかって書いてメグミ。どうですか?!」 愛:「・・・なんで?」(小声) 優一:「え?どうしました?!」 愛:「なんでも、ないです。良いんじゃないですか?」 優一:「我ながら、素晴らしいネーミングセンスだと思いました!えっへん!」 愛:「・・・。今日は、帰ります。失礼します。」 優一:「え、ちょっと・・・?!え・・・?」 (優一M):なんだろう、また、通称:”ハナコさん”って呼んだら怒っちゃうけど。 (優一M):また怒らせてしまったのかな・・・。 (優一M):それに、なんでこんなに気になるんだろう。困った。 (愛M):なんだろう、あの男の人。 (愛M):私に対しては、ハナコって答えておいて。 (愛M):花の名前は私の名前を言い当てるとか。 (愛M):なんなの、あの男の人。失礼。 (愛M):・・・もう!なんなの!あの男! (愛M):当てるなら、私に対して当ててよ。 0:4日目 優一:「・・・あれ?」 (優一M):ハナコさん、来てないな・・・。 (優一M):怒らせてしまったから、かなぁ・・・? 0: 0:ーーーー 0: (優一M):それから4日間通い続けたが、一向に現れなかった。 (優一M):ハナコさんに、謝りたかったのに。 (優一M):明日、居なかったら諦めよう。 (優一M):それまでは、ユーイチとメグミに話しかける、変な男の人で居る。 0:8日目 0: 優一:「あ!!!居た!!」 愛:「・・・あ。どうも。」 優一:「ふぅ・・・嫌われたかと思いましたよ!」 愛:「・・・え?」 優一:「四日間、ずっとここに通って、ユーイチとメグミに話しかけていたんですから!」 愛:「・・・そうなんですか。」 優一:「そうなんです!・・・あと。ごめんなさい。」 愛:「・・・何が、ですか?」 優一:「いや、何かいつも怒らせてしまってるな、と。」 愛:「そんな事は無いですよ。少し面倒だとは思ってますけど。」 優一:「良かったぁ・・・って、面倒、ですか?!」 愛:「はい。」(微笑み) 優一:「そんなぁ・・・って、笑えるんですね。」 愛:「・・・はい?」 優一:「ユーイチ・・・花のね?僕じゃなくて。 優一:の前とかだと、いつも笑ってるけど。 優一:僕に対して笑っているのは初めてだな。って。」 愛:「・・・そうかもしれないですね。」 優一:「ちょっぴり嬉しいです。」 愛:「何がですか?」 優一:「笑顔が見れて?」 愛:「・・・本当、変な人ですね。」 優一:「ええ、変な人なんです。」 愛:「・・・はぁ。認めちゃった・・・。」 優一:「・・・(ニコニコ)。」 愛:「・・・なんですか?」 優一:「笑顔、綺麗だったな、って。」 愛:「・・・もう、来ないでください・・・(小声)」 優一:「嫌です!」 愛:「聞こえてたんですか?!」 優一:「なんとなくです!」 愛:「・・・はぁ・・・。変な人、ですね。もう。」 優一:「はい。ここ四日間、花に話しかける変な男って言われ続けたので、慣れました!」 愛: 「・・・もう、なんでもいいです。」 優一:「はいっ!」 愛:「・・・。」 (愛M):なんなんだろう、この人。 (愛M):あれから、ハナコとは呼んでこないけど。 (愛M):馴れ馴れしいクセに、ズケズケと入り込んでくる。 (愛M):ペースが乱される。イヤ。 (優一M):ちょっとずつだけど、話してくれるようになった。 (優一M):初めて、笑顔が見れた。 (優一M):はっきり言って、めちゃくちゃ美人だった。 (優一M):笑顔の素敵な人って、やっぱり良いよなぁ・・・。 (優一M):また、通っちゃうじゃないか。 0:9日目 優一:「来ちゃいました。」 愛:「どうも。」 優一:「そう言えば、昨日、聞こうと思っていたんですけど。」 愛:「なんですか?」 優一:「四日間、いらっしゃらなかったのって、何があったのかな。って」 愛:「いきなりですね。」 優一:「気になっていたんですが、昨日はなんとなく聞き出しにくくて。」 愛:「・・・ここだけじゃ、無いんですよ。」 優一:「というと?」 愛:「ユーイチや・・・メグミ以外にも、会いに行ってるんです。」 優一:「なるほど。ここ以外にも、いらっしゃるわけですね。」 愛:「そうなんです。」 優一: 「次は、どこに行くんですか?」 愛:「・・・え?」 優一:「僕も、会ってみたいなって。」 愛:「別に、面白く無いですよ?」 優一:「面白くなかったら、僕は、何度もここに来ないですよ?」 愛:「・・・本当に、変な人ですね。」 優一:「はい。変な人なんです。」 愛:「明日は、9丁目12番地の空き地です。」 優一:「なるほど、そこに行けば良いんですね?」 愛:「はい。ただ、雨天の場合は行きません。」 優一:「大丈夫です!明日は、晴れます!」 愛:「そうなんですか??」 優一:「気象予報の資格を勉強してましてね!明日はそんな予報です!」 愛:「そうなんですか?!」 優一:「え・・・?あ、はい! 優一:(え、やばい。嘘って言えないぞ、これ。)」 愛:「嘘、なんですか?」 優一:「え?!ナゼバレタンデスカ?!」 愛:「勘です。嘘、下手なんですね。あははははっ!」 優一:「そんな笑わなくても?!」 愛:「嘘つきは、キライです。」 優一:「ごめんなさい。」 愛:「じゃ、また、明日。」 優一:「はい!!また!!」 (優一M):その翌日も。その次の日も。 (優一M):あまり多くは語らないけれど。 (優一M):のどかで柔らかい。 (優一M):冬だけど、温かい日々が流れていった。 (愛M):何回も、何回も、何回も。 (愛M):何回来るんだろう。この人は。 (愛M):その度に、知らなかった感情が出てきてしまう。 (愛M):それを楽しみにしてしまっている自分に驚いた。 (愛M):雨の日は、花に会えなくて寂しいと思っていたけど。 (愛M):人に会えなくて寂しいなんて思う自分が不思議だった。 (愛M):・・・本当に、変な人だ。 0:91日目 優一:「こんにちは。」 愛:「こんにちは。」 優一:「ユーイチとメグミじゃなくなっちゃって、ちょっと寂しいです。」 愛:「・・・そうですね。花だから、仕方ないんです。」 優一:「・・・そうですね。どんな名前か、決めてますか?」 愛:「まだです。新しく咲いてからいつも決めてるので。」 優一:「そうですか。楽しみだなぁ。」 透子:「優一??わぁ、久しぶりぃ!」 優一:「え?あぁ・・・トーコ。久しぶり。」 透子:「元気ー?って、あー、お取り込み中?」 愛:「・・・(ぺこり)」 透子:「・・・?アンタ、ハナコじゃない?」 愛:「・・・え?」 透子:「まぁ、覚えてないよね。人に興味が無くって花にしか興味無しのアンタだし。」 愛:「・・・ごめんなさい。」 透子:「別に謝らなくていいよ。で、何?付き合ってるの?アンタら。」 優一:「そういうわけでは・・・」 透子:「こーゆー、地味ーなのがタイプなの?ユーイチ?」 優一:「地味って・・・。落ち着いてて、素敵な人だよ。」 透子:「なに?アタシがウルサイって話??」 優一:「そこまで言ってないだろ?!」 透子:「・・・はいはい。ところでさ、ハナコ?」 愛:「ハナコじゃないです・・・」 透子:「はぁ?ハナコでしょ?アンタなんか。」 愛:「ハナコじゃ・・・」 優一:「メグミさんだ!!」 愛:「・・・え?」 透子:「・・・は?なんでユーイチがムキになるの?」 優一:「メグミさんが、今までどれだけ苦しんでたか!知らないだろう?!」 透子:「知るわけないじゃん」 優一:「・・・帰ってくれ」 透子:「・・・はいはい。お幸せに?・・・ムカつく。」 愛:「ありがとう、ございます。あ、あの・・・?」 優一:「ごめんなさい、みっともない所を・・・。」 愛:「あ、あの・・・。名前・・・教えてない・・・」 優一:「確かに、直接は聞いてないです。けど、メグミさん。」 愛:「・・・はい?」 優一:「嘘、下手ですね。」 愛:「・・・はい??」 優一:「花のメグミって呼ぶ度に、反応してたじゃないですか?」 愛:「え・・・嘘・・・?!」 優一:「だから、確証は無かったけど。当たってて良かったです。」 愛:「・・・はい。あと、さっきは、ありがとうございました。」 優一:「ああ・・・。元カノが、ごめんね。」 愛:「元・・・カノ・・・?」 優一:「はい。いつも喧嘩ばかりしてました。」 優一:あと、少しだけ・・・ 優一:(メグミさんと透子の声が似てるんだよ。言えないけど)」 愛:「・・・?」 優一:「いえ。なんでもないです。」 愛:「ところで・・・。」 優一:「はい?」 愛:「お名前で、呼んでも、良いですか?」 優一: 「もちろんです。」 0:100日目 優一 :「メグミさん?」 愛:「なんですか?」 優一:「新しい花、咲いてきましたね。名前、決めました?」 愛:「まだ・・・ですかね。ユーイチさんは?」 優一:「アラタ。かな。」 愛:「素敵ですね。なら、私は・・・ノゾミ。」 優一:「素敵ですね!あと・・・。メグミさん。」 愛:「なんですか?」 優一:「アナタが、好きです。僕と付き合って下さい。」 愛:「・・・え?」 優一:「取り柄なんてそんなに無いと思いますが・・・」 愛:「それに、変な人ですしね?」 優一:「うっ・・・」 愛:「それに、人の名前を勝手に想像する人ですし?」 優一:「え、でも・・・」 愛:「それに、雨の日は来ないって言ってるのに、来るし」 優一:「なんで知って・・・?!え、メグミさん、来てたの?」 愛:「・・・行ってないです。」 優一:「じー・・・」 愛:「ユーイチさんに会えるとか、別に思ってなかったです」 優一:「・・・ぷっ」 愛:「なんですか?!」 優一:「カワイイ」 愛:「・・・からかってますか?」 優一:「メグミさんだって。はぐらかしてるじゃないですか!」 愛:「・・・うぅ・・・」 優一:「無理にとは言いませんが・・・」 愛:「・・・・ます。」 優一:「え?」 愛:「よろしく、お願いします。」 優一:「・・・ええ。」 愛:「私も、好きです。優一さん。」 優一:「僕もです。愛さん。」 0:了

「花が咲いた時に」 0:1日目 (優一M):僕はきっと“優しいだけ”の人で。 (優一M):刺激という刺激はきっと与えられないだろう。 (優一M):単純に。傷付けるのが、傷付いてる人を見るのが耐えられない。 (優一M):だから、何も波風の立たない生き方をしてきた。 (優一M):今日も、そんな一日にするつもりだった。 0: (愛M):私はきっと誰も“愛せ無い”人。 (愛M):花一つ一つに名前をつけて。 (愛M):花ばかりを愛でてしまう。 (愛M):『ハナコは本当に花が好きなんだねー。』 (愛M):学生時代はクラスメートに、よくそんな事を言われて。 (愛M):私の名前は、ハナコでは無い。 (愛M):周りからは、自然にそんなあだ名をつけられ。 (愛M):気に入っているわけでもない。 (愛M):だけど、何も気にしていない。 (愛M):今日も、変わらずそんな一日になるはずだから。 0: (優一M):本当に気紛れだった。ただ、なんとなく。 (優一M):花に話しかけている女性を見かけて、声をかけてみた。 0: 優一: 「綺麗なお花ですね。」 愛:「・・・。」 優一:「すみません、突然。びっくりしますよね。(笑)」 愛:「・・・。」 優一 :「何、話していたんですか?」 愛:「・・・くて。」 優一:「え?なんですか?」 愛:「ユーイチが元気が無くて!!(大きめな声)」 優一 :「・・・!!!びっくりしたぁ。そんな大きな声、出せるんですね。」 愛:「・・・ごめんなさい。」 優一:「それに、僕の名前を呼びましたけど、その花、ユーイチって言うんですか?」 愛:「・・・はい。ユーイチって名付けました。・・・同じ名前なんですか?」 優一 :「はい。優しいに漢数字の一。一番優しくなりますように。安直ですよ。」 愛:「・・・そうなんですか。」 優一:「そうなんです。それで、元気がなさそうなんですか? 優一:そのユーイチ・・・クン?は。」 愛:「・・・はい。冬の時期って言うのもありますが。日が足りないみたいで。」 優一:「なるほど・・・。」 愛:「・・・はい。」 優一:「・・・。」 0: (優一M):会話が途切れてしまった。 (優一M):この時は、何が起こるでもなく。 (優一M):僕自身としても、波風の立たない日々の1ページでしかなかった。 0: (愛M):私は誰に対してもこういう感じになってしまう。 (愛M):笑顔を見せるのも、花の前。 (愛M):怒りの表情を見せるのも、花に関連して。 (愛M):哀しいと思うのも、花に対して。 (愛M):楽しいと感じるのも、花の事だけ。 (愛M):人に興味を示す事が出来なかった。 0:2日目 愛:「ユーイチ、ちょっと元気でたかなー?いい子だねぇ!」 優一:「こんにちは。」 愛:「・・・こんにちは。」 優一:「あらあら・・・さっきまでの笑顔が・・・。」 愛:「ごめんなさい。あまり人と話すのに慣れてなくて。」 優一:「そうなんですか?せっかくいい声なのに。勿体無い。」 愛:「・・・え?」 優一:「ちょっぴり、知り合いの声に似てるんですけど・・・。いい声ですよ。」 愛:「ありがとう、ございます・・・?」 優一:「いえいえ。そう言えば、僕は優一って明かしましたが。 優一:お名前、伺っても?」 愛:「・・・なんだと、思いますか?」 優一:「お、なんと、そんな切り返しが・・・? 優一:んー、安直だけど、ハナコさん、とか?」 愛:「やっぱり、そうですよね。」 優一:「・・・ん?違いましたか?」 愛:「ハナコで良いですよ。なんでもいいんです。」 優一:「なんでもは良くない気も・・・。本当はなんて言うんですか?」 愛:「ハナコで良いんじゃないですか。放っておいてください。」 優一:「お、そんな事言われると、気になっちゃう・・・」 愛:「放っておいて、く・だ・さ・い!!」(大声) 優一:「え・・・あ・・・。ごめん、なさい。 優一:気分を害してしまいました、ね。失礼します。」 愛:「・・・ぁ。」 (愛M):柄にも無く、あんな風に突っ返してしまった。 (愛M):でも、良いか。他の人たちのように、私を避けるだろうから。 (愛M):今日もまた、花と過ごす。 0:3日目 優一:「こんにちは。」 愛:「・・・こんにちは。」 優一:「昨日は、ごめんなさい。」 愛:「・・・え?」 優一:「失礼な事を言ってしまったようで。」 愛:「気にしないでください。いつものことなので。」 優一:「もう、話しかけない方がいいのかなって思ったんですけど。 優一:でも、ユーイチクン?とも仲良くしてみたいな。って。」 愛:「なんで、ですか?」 優一:「なんとなく。です。同じ名前だし?」 愛:「・・・そうですか。」 優一:「そうなんです。」 愛:「・・・変な人ですね。」 優一:「そうですね!って、えええ?そうですか???」 愛:「・・・はい。変な人です。」 優一:「がっくりだぁ・・・。」 愛:「ユーイチの事は、私が良く見てるので、譲りません。」 優一:「そんなぁ・・・。僕も優一ですけど?」 愛:「あなたの事じゃないです。こっちの、花の方です。」 優一:「がっくり・・・。」 愛:「・・・代わりに、隣の花、まだ名前を悩んでいて。」 愛:よかったら、考えてみませんか?」 優一:「がっくり・・・。・・・え?!いいんですか?!」 愛:「なんだか、忙しい人ですね。」 優一:「確かに・・・?ちょっと、頭冷やさないと。」 愛:「そうですね。」 優一:「・・・ふぅ・・・。よっし!で、名前、ですか?」 愛:「そうですね、可愛らしいお花なので。可愛らしい名前が良いかな、と。」 優一:「んーーー・・・・。」 愛:「・・・。」 優一:「んーーーーーー・・・。」 愛:「・・・。」 優一 :「メグミ。」 愛:「・・・ぇ?」 優一:「愛しい、とか。愛とかって書いてメグミ。どうですか?!」 愛:「・・・なんで?」(小声) 優一:「え?どうしました?!」 愛:「なんでも、ないです。良いんじゃないですか?」 優一:「我ながら、素晴らしいネーミングセンスだと思いました!えっへん!」 愛:「・・・。今日は、帰ります。失礼します。」 優一:「え、ちょっと・・・?!え・・・?」 (優一M):なんだろう、また、通称:”ハナコさん”って呼んだら怒っちゃうけど。 (優一M):また怒らせてしまったのかな・・・。 (優一M):それに、なんでこんなに気になるんだろう。困った。 (愛M):なんだろう、あの男の人。 (愛M):私に対しては、ハナコって答えておいて。 (愛M):花の名前は私の名前を言い当てるとか。 (愛M):なんなの、あの男の人。失礼。 (愛M):・・・もう!なんなの!あの男! (愛M):当てるなら、私に対して当ててよ。 0:4日目 優一:「・・・あれ?」 (優一M):ハナコさん、来てないな・・・。 (優一M):怒らせてしまったから、かなぁ・・・? 0: 0:ーーーー 0: (優一M):それから4日間通い続けたが、一向に現れなかった。 (優一M):ハナコさんに、謝りたかったのに。 (優一M):明日、居なかったら諦めよう。 (優一M):それまでは、ユーイチとメグミに話しかける、変な男の人で居る。 0:8日目 0: 優一:「あ!!!居た!!」 愛:「・・・あ。どうも。」 優一:「ふぅ・・・嫌われたかと思いましたよ!」 愛:「・・・え?」 優一:「四日間、ずっとここに通って、ユーイチとメグミに話しかけていたんですから!」 愛:「・・・そうなんですか。」 優一:「そうなんです!・・・あと。ごめんなさい。」 愛:「・・・何が、ですか?」 優一:「いや、何かいつも怒らせてしまってるな、と。」 愛:「そんな事は無いですよ。少し面倒だとは思ってますけど。」 優一:「良かったぁ・・・って、面倒、ですか?!」 愛:「はい。」(微笑み) 優一:「そんなぁ・・・って、笑えるんですね。」 愛:「・・・はい?」 優一:「ユーイチ・・・花のね?僕じゃなくて。 優一:の前とかだと、いつも笑ってるけど。 優一:僕に対して笑っているのは初めてだな。って。」 愛:「・・・そうかもしれないですね。」 優一:「ちょっぴり嬉しいです。」 愛:「何がですか?」 優一:「笑顔が見れて?」 愛:「・・・本当、変な人ですね。」 優一:「ええ、変な人なんです。」 愛:「・・・はぁ。認めちゃった・・・。」 優一:「・・・(ニコニコ)。」 愛:「・・・なんですか?」 優一:「笑顔、綺麗だったな、って。」 愛:「・・・もう、来ないでください・・・(小声)」 優一:「嫌です!」 愛:「聞こえてたんですか?!」 優一:「なんとなくです!」 愛:「・・・はぁ・・・。変な人、ですね。もう。」 優一:「はい。ここ四日間、花に話しかける変な男って言われ続けたので、慣れました!」 愛: 「・・・もう、なんでもいいです。」 優一:「はいっ!」 愛:「・・・。」 (愛M):なんなんだろう、この人。 (愛M):あれから、ハナコとは呼んでこないけど。 (愛M):馴れ馴れしいクセに、ズケズケと入り込んでくる。 (愛M):ペースが乱される。イヤ。 (優一M):ちょっとずつだけど、話してくれるようになった。 (優一M):初めて、笑顔が見れた。 (優一M):はっきり言って、めちゃくちゃ美人だった。 (優一M):笑顔の素敵な人って、やっぱり良いよなぁ・・・。 (優一M):また、通っちゃうじゃないか。 0:9日目 優一:「来ちゃいました。」 愛:「どうも。」 優一:「そう言えば、昨日、聞こうと思っていたんですけど。」 愛:「なんですか?」 優一:「四日間、いらっしゃらなかったのって、何があったのかな。って」 愛:「いきなりですね。」 優一:「気になっていたんですが、昨日はなんとなく聞き出しにくくて。」 愛:「・・・ここだけじゃ、無いんですよ。」 優一:「というと?」 愛:「ユーイチや・・・メグミ以外にも、会いに行ってるんです。」 優一:「なるほど。ここ以外にも、いらっしゃるわけですね。」 愛:「そうなんです。」 優一: 「次は、どこに行くんですか?」 愛:「・・・え?」 優一:「僕も、会ってみたいなって。」 愛:「別に、面白く無いですよ?」 優一:「面白くなかったら、僕は、何度もここに来ないですよ?」 愛:「・・・本当に、変な人ですね。」 優一:「はい。変な人なんです。」 愛:「明日は、9丁目12番地の空き地です。」 優一:「なるほど、そこに行けば良いんですね?」 愛:「はい。ただ、雨天の場合は行きません。」 優一:「大丈夫です!明日は、晴れます!」 愛:「そうなんですか??」 優一:「気象予報の資格を勉強してましてね!明日はそんな予報です!」 愛:「そうなんですか?!」 優一:「え・・・?あ、はい! 優一:(え、やばい。嘘って言えないぞ、これ。)」 愛:「嘘、なんですか?」 優一:「え?!ナゼバレタンデスカ?!」 愛:「勘です。嘘、下手なんですね。あははははっ!」 優一:「そんな笑わなくても?!」 愛:「嘘つきは、キライです。」 優一:「ごめんなさい。」 愛:「じゃ、また、明日。」 優一:「はい!!また!!」 (優一M):その翌日も。その次の日も。 (優一M):あまり多くは語らないけれど。 (優一M):のどかで柔らかい。 (優一M):冬だけど、温かい日々が流れていった。 (愛M):何回も、何回も、何回も。 (愛M):何回来るんだろう。この人は。 (愛M):その度に、知らなかった感情が出てきてしまう。 (愛M):それを楽しみにしてしまっている自分に驚いた。 (愛M):雨の日は、花に会えなくて寂しいと思っていたけど。 (愛M):人に会えなくて寂しいなんて思う自分が不思議だった。 (愛M):・・・本当に、変な人だ。 0:91日目 優一:「こんにちは。」 愛:「こんにちは。」 優一:「ユーイチとメグミじゃなくなっちゃって、ちょっと寂しいです。」 愛:「・・・そうですね。花だから、仕方ないんです。」 優一:「・・・そうですね。どんな名前か、決めてますか?」 愛:「まだです。新しく咲いてからいつも決めてるので。」 優一:「そうですか。楽しみだなぁ。」 透子:「優一??わぁ、久しぶりぃ!」 優一:「え?あぁ・・・トーコ。久しぶり。」 透子:「元気ー?って、あー、お取り込み中?」 愛:「・・・(ぺこり)」 透子:「・・・?アンタ、ハナコじゃない?」 愛:「・・・え?」 透子:「まぁ、覚えてないよね。人に興味が無くって花にしか興味無しのアンタだし。」 愛:「・・・ごめんなさい。」 透子:「別に謝らなくていいよ。で、何?付き合ってるの?アンタら。」 優一:「そういうわけでは・・・」 透子:「こーゆー、地味ーなのがタイプなの?ユーイチ?」 優一:「地味って・・・。落ち着いてて、素敵な人だよ。」 透子:「なに?アタシがウルサイって話??」 優一:「そこまで言ってないだろ?!」 透子:「・・・はいはい。ところでさ、ハナコ?」 愛:「ハナコじゃないです・・・」 透子:「はぁ?ハナコでしょ?アンタなんか。」 愛:「ハナコじゃ・・・」 優一:「メグミさんだ!!」 愛:「・・・え?」 透子:「・・・は?なんでユーイチがムキになるの?」 優一:「メグミさんが、今までどれだけ苦しんでたか!知らないだろう?!」 透子:「知るわけないじゃん」 優一:「・・・帰ってくれ」 透子:「・・・はいはい。お幸せに?・・・ムカつく。」 愛:「ありがとう、ございます。あ、あの・・・?」 優一:「ごめんなさい、みっともない所を・・・。」 愛:「あ、あの・・・。名前・・・教えてない・・・」 優一:「確かに、直接は聞いてないです。けど、メグミさん。」 愛:「・・・はい?」 優一:「嘘、下手ですね。」 愛:「・・・はい??」 優一:「花のメグミって呼ぶ度に、反応してたじゃないですか?」 愛:「え・・・嘘・・・?!」 優一:「だから、確証は無かったけど。当たってて良かったです。」 愛:「・・・はい。あと、さっきは、ありがとうございました。」 優一:「ああ・・・。元カノが、ごめんね。」 愛:「元・・・カノ・・・?」 優一:「はい。いつも喧嘩ばかりしてました。」 優一:あと、少しだけ・・・ 優一:(メグミさんと透子の声が似てるんだよ。言えないけど)」 愛:「・・・?」 優一:「いえ。なんでもないです。」 愛:「ところで・・・。」 優一:「はい?」 愛:「お名前で、呼んでも、良いですか?」 優一: 「もちろんです。」 0:100日目 優一 :「メグミさん?」 愛:「なんですか?」 優一:「新しい花、咲いてきましたね。名前、決めました?」 愛:「まだ・・・ですかね。ユーイチさんは?」 優一:「アラタ。かな。」 愛:「素敵ですね。なら、私は・・・ノゾミ。」 優一:「素敵ですね!あと・・・。メグミさん。」 愛:「なんですか?」 優一:「アナタが、好きです。僕と付き合って下さい。」 愛:「・・・え?」 優一:「取り柄なんてそんなに無いと思いますが・・・」 愛:「それに、変な人ですしね?」 優一:「うっ・・・」 愛:「それに、人の名前を勝手に想像する人ですし?」 優一:「え、でも・・・」 愛:「それに、雨の日は来ないって言ってるのに、来るし」 優一:「なんで知って・・・?!え、メグミさん、来てたの?」 愛:「・・・行ってないです。」 優一:「じー・・・」 愛:「ユーイチさんに会えるとか、別に思ってなかったです」 優一:「・・・ぷっ」 愛:「なんですか?!」 優一:「カワイイ」 愛:「・・・からかってますか?」 優一:「メグミさんだって。はぐらかしてるじゃないですか!」 愛:「・・・うぅ・・・」 優一:「無理にとは言いませんが・・・」 愛:「・・・・ます。」 優一:「え?」 愛:「よろしく、お願いします。」 優一:「・・・ええ。」 愛:「私も、好きです。優一さん。」 優一:「僕もです。愛さん。」 0:了