台本概要
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タイトル | 『Birld(バールド)』 第一羽「ツル」 |
---|---|
作者名 | 平塚 毅(こわし) (@kowasi_hiratuka) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ある冬の日、散歩をしていたら罠に掛かっている鶴を見つけた。可哀想に鳴いていたから、罠を外してやった。 その日の夜、誰かが家の戸を叩いた そこには・・・ 282 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
男 | 男 | 68 | 最近この村に引っ越してきた若者(30代)。 |
ツル | 女 | 63 | 年齢不詳。何事にも動じない軸がある |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
男:(ある冬の日、散歩をしていたら罠に掛かっている鶴を見つけた。可哀想に鳴いていたから、罠を外してやった。)
0:ツルの鳴き声
男:(その日の夜、誰かが家の戸を叩いた)
0:トントン
ツル:ごめんください
男:ん?
0:トントン
ツル:開けてくださーい
男:はいはい、どちら様ですか?
0:男、戸を開ける。ガラガラッ
男:うおっ!?
0:後ろに仰け反る男
男:(そこには)
ツル:あ、どうも、ありがとうございます
男:えぇ!?
ツル:な、なんですか?
男:鶴だ…!
ツル:?…そう、ですけど
男:しゃ、喋ってる…!
0:ツル、羽を少しバタつかせる。バサバサッ
ツル:それが何か?
男:(鶴が、立っていた)
0:BGMイン
ツル:すいません、とりあえず入っていいですか?もう寒くて寒くて
男:え、あ、はい。え入るの!?その姿で!?
ツル:あったりまえじゃないですか
0:ツル、狭い玄関に対し羽を動かしながら進んでいく。バサバサッ
男:うっわ、羽めっちゃ落ちるし
ツル:ふぅ。あ、すいません、開けてもらっていいですか?
男:もう入ってるじゃないですか
ツル:じゃなくて、チャックを
男:…チャック?
ツル:ん?あっ、ファスナー?
男:…え?
ツル:いや、チャックが噛んじゃって、しかもこの手じゃ上手く摘(つま)めないから開けられなくて
男:ど、どこ…?
ツル:いや後ろじゃなくて、前前
男:えぇ…?
ツル:下クチバシの先端にあるじゃないですか、ほら
男:…うわっ、本当だ
ツル:じゃ、お願いします
男:い、意外と、硬い
ツル:痛い痛い痛い、一回ちょっと上にあげて
男:んっ…おっ、いった
0:チャックが降ろされる音+ツルから人の姿になる音
ツル:ぷはあぁぁあ…
男:お、女の子になった…
ツル:ふぅ、ありがとうございます、助かりましたぁ
男:いえいえ、そんな…じゃなくて!
ツル:え?
男:なんというかその…見られて、大丈夫なんですか!?
ツル:だってあなたしか居ないじゃないですか
男:いやまあそうだけど…
ツル:もしかして…まだ見たことなかったですか?
男:2度あってたまるか!
ツル:じゃあ2度目を(チャックを上げる)
0:チャックを上げる音+ツルになる音(バサッ)
男:うわぁ!?
0:チャックが降ろされる音+ツルから人の姿になる音
ツル:おっ、チャック治った
男:どういう仕組み!?
0:チャックが降ろされる音+鶴から人の姿になる音
ツル:見ての通り
男:見ての通り?
ツル:まず、しゃがみます。
男:…はぁ
ツル:続いて、こちらのフードを被ります。
男:そんな料理番組みたいな
ツル:んで〜チャックを上まで引き上げたら
男:フード全部にチャック付いてる
0:SEヴァサッ!
男:うわっ!
ツル:ツルになれます
男:なんで!?
ツル:な、なにが?
男:ツルになるのも変だけど、なんというか、完璧にツルになり過ぎてないですか?
ツル:完璧に?
男:いやその、手が羽になるとか、肩から羽が生えるとかじゃなくて、もうまんまじゃん!まんまツルじゃん!
ツル:気になる?
男:は、はい
ツル:この布がそうさせるんですよ
男:布?
ツル:私の羽で織った布なんです。これを頭の先まで全身纏(まと)うと鳥になれるんですよね
男:そ、そんだけ?
ツル:そんだけ。
男:…すいません、ちょっと一旦頭ん中整理してもいいですか
ツル:どうぞ?
男:えーっと…なぜ、僕の家に?
ツル:最近ここへ引っ越してきたばかりだと思って、挨拶に
男:…あっ、もしかして、あの時罠にかかってたツル?
ツル:罠?
男:いやほら、恩返しとか、そういう…
ツル:恩返し?
男:…えぇ!?あれ関係無いの!?
ツル:それは多分、ただの野生のツルです。ノラヅルです。
男:ノラヅル…!
0:チャックを上げる音+ツルになる音(バサッ)
男:うわ!
ツル:ほら、どこにも無いでしょ?傷跡
男:・・・ほんとだ
ツル:んね?
0:チャックを降ろす。ツル、人の姿に戻る
男:なんか、昔話みたいですね…
ツル:昔話?
男:いや、「鶴の恩返し」ってあるじゃないですか。ツルを助けたら女の子が現れて恩返しするーみたいな。思ってたのと全然違うけど
ツル:あぁ、あのベストセラーの
男:ベストセラーっていうか…まあ…
ツル:それ多分、私です。だいぶ脚色加わってますけど
男:えぇ!?
ツル:もう〜550年くらい前ですかね
男:し、死なないん、ですか…?
ツル:さぁ笑 まあでも「鶴は千年」とか言われてますし、あと450年くらいは生きるんじゃないんですかね?
男:妖怪みたいだ…
ツル:懐かしい響き笑
男:もしかして・・そのパーカー、僕も羽織ったら、鳥になれますか…?
ツル:無理ですね
男:あ、だめなんだ
ツル:生地に私の模様がついちゃってるんで
男:模様?
ツル:新品のものを一度羽織って鳥になると、この布生地が着た人のことを認識しちゃうみたいで、それ以降は他の人が羽織ってチャックを上げても鳥になれないんですよ
男:認識…?
ツル:鳥になった時の模様が布生地に写っちゃうんです。私はほら、タンチョウだからフードのてっぺんが赤くなってる。あと袖も黒い。
男:ほんとだ。
ツル:だからこのパーカーは私以外が羽織ってチャックを上げてもダメなんです。
男:そう、上手くいかないですよね…ははっ…
ツル:飛びたいんですか?
男:…そりゃあ、まあ。
ツル:どうして?
男:仕事とか人間関係とか、全部嫌になったから一人でこの村へ来たのに…あの時の罵声とかは脳裏に焼き付いてるから、結局ストレス抱えたままで…でも絶対戻りたくないし…。
ツル:あーわかります。
男:え?…あ、だからまあ、鳥になって飛べたら、嫌なこと全部忘れられるのかな、って…
ツル:なれますよ?
男:…え?
ツル:新品のものさえ羽織れば、誰でも鳥になれます。ま、布を織るのは私なので時間は掛かりますが…!
男:ほ、ほんとに、誰でも鳥になれるんですか?!
ツル:現に見てるじゃないですか
男:いや、あなただけ……
ツル:…あそっか、まだ他の人たちを見てないですもんね
男:他の…?
ツル:もうこの村で、あなただけですよ?
男:…まさか
ツル:鳥になれないのは
男:…えええええ!?!?!?
ツル:歩く、走る、泳ぐ、崖をのぼる、道具を使う、言葉を話す、なんでも出来ると言われた人間が唯一単身で行えない「空を飛ぶ」ということ。それが可能になったこの景色、最高に気持ち良いですよ。
男:山ん中なのにカモメとクジャクとか…なんか色んな鳥が多いなと思ったら…
ツル:ようこそ、「Birld(バールド)」へ
男:(ある冬の日、散歩をしていたら罠に掛かっている鶴を見つけた。可哀想に鳴いていたから、罠を外してやった。)
0:ツルの鳴き声
男:(その日の夜、誰かが家の戸を叩いた)
0:トントン
ツル:ごめんください
男:ん?
0:トントン
ツル:開けてくださーい
男:はいはい、どちら様ですか?
0:男、戸を開ける。ガラガラッ
男:うおっ!?
0:後ろに仰け反る男
男:(そこには)
ツル:あ、どうも、ありがとうございます
男:えぇ!?
ツル:な、なんですか?
男:鶴だ…!
ツル:?…そう、ですけど
男:しゃ、喋ってる…!
0:ツル、羽を少しバタつかせる。バサバサッ
ツル:それが何か?
男:(鶴が、立っていた)
0:BGMイン
ツル:すいません、とりあえず入っていいですか?もう寒くて寒くて
男:え、あ、はい。え入るの!?その姿で!?
ツル:あったりまえじゃないですか
0:ツル、狭い玄関に対し羽を動かしながら進んでいく。バサバサッ
男:うっわ、羽めっちゃ落ちるし
ツル:ふぅ。あ、すいません、開けてもらっていいですか?
男:もう入ってるじゃないですか
ツル:じゃなくて、チャックを
男:…チャック?
ツル:ん?あっ、ファスナー?
男:…え?
ツル:いや、チャックが噛んじゃって、しかもこの手じゃ上手く摘(つま)めないから開けられなくて
男:ど、どこ…?
ツル:いや後ろじゃなくて、前前
男:えぇ…?
ツル:下クチバシの先端にあるじゃないですか、ほら
男:…うわっ、本当だ
ツル:じゃ、お願いします
男:い、意外と、硬い
ツル:痛い痛い痛い、一回ちょっと上にあげて
男:んっ…おっ、いった
0:チャックが降ろされる音+ツルから人の姿になる音
ツル:ぷはあぁぁあ…
男:お、女の子になった…
ツル:ふぅ、ありがとうございます、助かりましたぁ
男:いえいえ、そんな…じゃなくて!
ツル:え?
男:なんというかその…見られて、大丈夫なんですか!?
ツル:だってあなたしか居ないじゃないですか
男:いやまあそうだけど…
ツル:もしかして…まだ見たことなかったですか?
男:2度あってたまるか!
ツル:じゃあ2度目を(チャックを上げる)
0:チャックを上げる音+ツルになる音(バサッ)
男:うわぁ!?
0:チャックが降ろされる音+ツルから人の姿になる音
ツル:おっ、チャック治った
男:どういう仕組み!?
0:チャックが降ろされる音+鶴から人の姿になる音
ツル:見ての通り
男:見ての通り?
ツル:まず、しゃがみます。
男:…はぁ
ツル:続いて、こちらのフードを被ります。
男:そんな料理番組みたいな
ツル:んで〜チャックを上まで引き上げたら
男:フード全部にチャック付いてる
0:SEヴァサッ!
男:うわっ!
ツル:ツルになれます
男:なんで!?
ツル:な、なにが?
男:ツルになるのも変だけど、なんというか、完璧にツルになり過ぎてないですか?
ツル:完璧に?
男:いやその、手が羽になるとか、肩から羽が生えるとかじゃなくて、もうまんまじゃん!まんまツルじゃん!
ツル:気になる?
男:は、はい
ツル:この布がそうさせるんですよ
男:布?
ツル:私の羽で織った布なんです。これを頭の先まで全身纏(まと)うと鳥になれるんですよね
男:そ、そんだけ?
ツル:そんだけ。
男:…すいません、ちょっと一旦頭ん中整理してもいいですか
ツル:どうぞ?
男:えーっと…なぜ、僕の家に?
ツル:最近ここへ引っ越してきたばかりだと思って、挨拶に
男:…あっ、もしかして、あの時罠にかかってたツル?
ツル:罠?
男:いやほら、恩返しとか、そういう…
ツル:恩返し?
男:…えぇ!?あれ関係無いの!?
ツル:それは多分、ただの野生のツルです。ノラヅルです。
男:ノラヅル…!
0:チャックを上げる音+ツルになる音(バサッ)
男:うわ!
ツル:ほら、どこにも無いでしょ?傷跡
男:・・・ほんとだ
ツル:んね?
0:チャックを降ろす。ツル、人の姿に戻る
男:なんか、昔話みたいですね…
ツル:昔話?
男:いや、「鶴の恩返し」ってあるじゃないですか。ツルを助けたら女の子が現れて恩返しするーみたいな。思ってたのと全然違うけど
ツル:あぁ、あのベストセラーの
男:ベストセラーっていうか…まあ…
ツル:それ多分、私です。だいぶ脚色加わってますけど
男:えぇ!?
ツル:もう〜550年くらい前ですかね
男:し、死なないん、ですか…?
ツル:さぁ笑 まあでも「鶴は千年」とか言われてますし、あと450年くらいは生きるんじゃないんですかね?
男:妖怪みたいだ…
ツル:懐かしい響き笑
男:もしかして・・そのパーカー、僕も羽織ったら、鳥になれますか…?
ツル:無理ですね
男:あ、だめなんだ
ツル:生地に私の模様がついちゃってるんで
男:模様?
ツル:新品のものを一度羽織って鳥になると、この布生地が着た人のことを認識しちゃうみたいで、それ以降は他の人が羽織ってチャックを上げても鳥になれないんですよ
男:認識…?
ツル:鳥になった時の模様が布生地に写っちゃうんです。私はほら、タンチョウだからフードのてっぺんが赤くなってる。あと袖も黒い。
男:ほんとだ。
ツル:だからこのパーカーは私以外が羽織ってチャックを上げてもダメなんです。
男:そう、上手くいかないですよね…ははっ…
ツル:飛びたいんですか?
男:…そりゃあ、まあ。
ツル:どうして?
男:仕事とか人間関係とか、全部嫌になったから一人でこの村へ来たのに…あの時の罵声とかは脳裏に焼き付いてるから、結局ストレス抱えたままで…でも絶対戻りたくないし…。
ツル:あーわかります。
男:え?…あ、だからまあ、鳥になって飛べたら、嫌なこと全部忘れられるのかな、って…
ツル:なれますよ?
男:…え?
ツル:新品のものさえ羽織れば、誰でも鳥になれます。ま、布を織るのは私なので時間は掛かりますが…!
男:ほ、ほんとに、誰でも鳥になれるんですか?!
ツル:現に見てるじゃないですか
男:いや、あなただけ……
ツル:…あそっか、まだ他の人たちを見てないですもんね
男:他の…?
ツル:もうこの村で、あなただけですよ?
男:…まさか
ツル:鳥になれないのは
男:…えええええ!?!?!?
ツル:歩く、走る、泳ぐ、崖をのぼる、道具を使う、言葉を話す、なんでも出来ると言われた人間が唯一単身で行えない「空を飛ぶ」ということ。それが可能になったこの景色、最高に気持ち良いですよ。
男:山ん中なのにカモメとクジャクとか…なんか色んな鳥が多いなと思ったら…
ツル:ようこそ、「Birld(バールド)」へ