台本概要

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タイトル 迅雷の最適解
作者名 あまくケイ  (@amak0331)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男2、女1、不問2)
時間 60 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 「俺の、最適解は」
機械技術が発達した、政府「ネムズ」の管轄都市にて、生体兵器「TI(ティーアイ)」の暴走が発生する。
人であり機械でもあるサイボーグ「迅雷」は、全てが機械で出来たアンドロイド「ニテラ」、「アングイス」と共に生体兵器討伐へ向かう

・迅雷、アングイス、カツラギ、ラオは性転換可
・展開を崩さない程度のアドリブは可
・兼ね役は他の方に代わっていただいてもOK

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
迅雷 146 政府「ネムズ」に造られたサイボーグ 半分人間で、半分機械 金髪に青い瞳。首から下は機械の体 無欲でクール 必要な事以外は情報を得ないので、常識にうといところがある アンドロイドを同族と思っていて、仲間意識が強い
ニテラ 97 政府「ネムズ」に造られたアンドロイド 白髪のショートヘア。黒いベストに赤いスカート 感情豊かで、茶目っ気を感じられる性格 最近はコーヒーにハマっている 兼ね役:ヒナミ とある集落に住んでいる少女 自由気ままな性格 空を飛べる能力を持っている 迅雷のことを先輩と呼ぶ
アングイス 不問 103 政府「ネムズ」に造られたアンドロイド 一人称が「僕」 緑の長髪。黒いブレザーと黒パン。男性的な服装 気楽なリアリスト 携帯ゲームが趣味 迅雷のことはパイセンと呼ぶ 兼ね役:ハル 1話と8話で登場 とある集落に住んでいる少年 ヒナミと幼馴染で、何処にでもいく彼女のことを 危なっかしく心配している 女性として書いていますが不問
カツラギ 不問 98 政府「ネムズ」に所属する女性 迅雷達の指揮官 黒髪のショートヘア。全身スーツ。白シャツに黒ネクタイ 厳格で、機械で出来た迅雷たちに対して道具のように接する部分がある 女性として書いていますが、不問
ラオ 59 政府「ネムズ」の研究者 青い髪にメガネ。白いコートを羽織っている サイボーグやアンドロイドなどの研究開発にかかわった青年 好奇心旺盛で大人びた印象 生体兵器TIに関して知識があり、今回カツラギと共に迅雷たちのサポートにまわることにある 男性ですが、性転換可
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:夕方、のどかな村から離れ、人のいない丘へ来る ハル:待ってよ、ヒナミ ヒナミ:遅いよー、ハル ハル:ヒナミ、そんなに走ったら…… ヒナミ:もう、ハルったら、足遅いんだから ハル:ヒナミが早いんだろ……身軽(みがる)というかさ ヒナミ:遅いものは遅いんですー。もっと走るの頑張ったら? ハル:もう…… ヒナミ:ふふふっ ハル:……それで、こんな丘の方まで来て、何かあるの? ヒナミ:あ、そこ聞いちゃう? ハル:村から結構歩いてきたよ? 夜になったら辺りが暗くなって、帰れなくなっちゃうよ ヒナミ:大丈夫、それまでに帰るから ハル:そんなこと言って……この前だって、皆で川まで遊びに行った時も、日が落ちてたじゃないか ヒナミ:そうだったっけ? ハル:そうだよ ヒナミ:なんか楽しくって、忘れちゃった。そんなに暗かったかな? ハル:あれだけ暗かったら誰でも分かるよ? ヒナミ:それでもハルは一緒に遊んでくれたでしょ? ハル:ほっといたら、ヒナミずっと遊んでるだろ ヒナミ:心配してくれるの? すごい嬉しい ハル:茶化すなよ……。それで、ここに何しに来たの? ヒナミ:そうそう。こっちこっち ハル:こっちって……! この先崖だよ!?危ないよ! ヒナミ:危なくないよ? ハル:落ちちゃったら終わりじゃないか! ヒナミ:終わりじゃないよ?それっ。 0:ヒナミが崖から飛び降りる ハル:うわっ!?ヒナミ!!! ハル:えっ……! あっ! ヒナミ:どう?ハル? ハル:すごい…飛んでる 0:ヒナミは空を回った後、ハルの所へ戻ってくる ヒナミ:っと……。もう、分かってること言わないでよ。これ、結構練習したんだから ハル:なんで飛べるの!? ヒナミ:しっ ハル:……っ? ヒナミ:村の人達には、秘密にしてる ヒナミ:多分、これ知っちゃったら、あたし、どうなるか分かんないし。 ハル:……ヒナミ? ヒナミ:ある日ね、ホント自覚が無かったの。少し、高いところから足を滑らせそうになって……気づいたら、宙に浮いてた。それで、村の皆にバレない所へ行って、本格的に試してみたら、飛べちゃった。えへへ。 ハル:空を飛ぶ……そういえば ヒナミ:何? ハル:前に聞いたことがある。昔話で……えっと、何だっけ ヒナミ:白い大樹の話? ハル:そう。昔に大きな白い大樹があって ヒナミ:その大樹は、元は普通の少女で、空を飛ぶ能力があった ハル:…話の通りじゃないか ヒナミ:私ね。その伝説の大樹さんの、末裔(まつえい)みたい ハル:っ! ヒナミ:ふふ ヒナミ:……せっかくだから、ハルに見せておきたかったんだ ハル:… ヒナミ:顔、暗っ。…はぁ、あたしの手、触れて ハル:え、え!? ってうおっ!? ヒナミ:そーれっ! 0:ハルと手を繋いで、ヒナミと一緒に空を飛ぶ ハル:うわああああああ! ヒナミ:あははははははっ! ハル:お、落ちる……落ちるぅぅぅ??! ヒナミ:手を離したら落ちるかもね ハル:辞めてよ?! 0: 0: ハル:はぁ……はぁ……怖かったぁ ヒナミ:あ?楽しかったあ! ハルってこういうの苦手? ハル:苦手も何も、空なんて飛んだことないし……。ビックリするよ……。 ヒナミ:あはははっ。……でも、ありがとね。ハル。 ハル:……。村の人達には、秘密にしておく ヒナミ:……白い大樹は、元々は普通の女の子なんだって ヒナミ:その子が、大樹になって、最後に毒をまいて、世界を滅ぼしちゃった ヒナミ:その言い伝えも、知ってるよね? ハル:……。 ヒナミ:ハル。 ハル:何? ヒナミ:……これからも、ずっと居てくれる? ハル:えっ? ヒナミ:言葉の通りよ ハル:もちろん、ずっと居るよ! ヒナミ:ありがと。すごく嬉しい。私も、ハルと居て、ずっと楽しくて、 ヒナミ:辛い時も、悲しい時も、ハルは私の事を励ましてくれた。 ハル:……ヒナミ ヒナミ:……あっ。もう日が暮れるね ハル:……っ、そうだね ヒナミ:戻ろっか ハル:……うん……。 0:ヒナミが先に帰ろうとする ハル:  ハル:……ヒナミっ! ヒナミ:? ハル:……僕は、ずっと ハル:ヒナミの傍に、ずっと居るし、離れないから!! ヒナミ:っ……。 ヒナミ:…ありがと!ハル!! 迅雷:…… 0:目が覚めると、迅雷の目の前には、無機質な部屋が広がっていた ニテラ:あ、起きた ニテラ:おっはよーございます。先輩 迅雷:なんだ、ニテラか ニテラ:いい寝顔してたのに、起きた途端に台無しですね 迅雷:サイボーグに求めるな、そんなもの ニテラ:えー ニテラ:せんぱい、私達の中でいちばん人間に近いのに、人間じゃない反応してどうするんですか 迅雷:反応をしたところで、メリットはないし、戦闘能力が上昇するわけでもない ニテラ:うわ~。かった。鋼のように固すぎますよ、迅雷先輩 迅雷:アンドロイドも似たようなものだろ ニテラ:人間を真似てるだけで、生まれも育ちも全部機械です アングイス:戦えればどうでもいいじゃん、そんなこと 0:携帯ゲームをしながらアングイスはそういった アングイス:僕たちはアンドロイドなんだから、無駄じゃん、考えたところで ニテラ:無駄なんてことないよ、アング ニテラ:機械でも、命は命 ニテラ:ここにある大切なものなの、こういうの アングイス:ロマンチックだねー、二テラは アングイス:アンドロイドとは思えないくらい、感情豊かな発言で 迅雷:…確かに。自分の生命の重要さを認識すれば、生存率が高くなる検索結果はあるな アングイス:出た… ニテラ:はい!今日も検索大先輩、絶好調! 迅雷:馬鹿にしていると分析した アングイス:分析って…いやそこは気楽にいこうよ 迅雷:気楽が俺には理解ができない アングイス:…あーなんでだろ、機械なのにすっごい息が詰まる。 ニテラ:ぶっ。アングに呆れられてるじゃないですか~、先輩! ニテラ:「俺の名前は迅雷。今日も検索を導き出すサイボーグなのであーる」 迅雷:誰だそれは ニテラ:先輩の真似 アングイス:ニテラ、流石に草生えるよ、それ 迅雷:それは真似ではなく、改変というんだ…少しは検索しろ ニテラ:はい!検索大先輩からおしかり頂きましたー!ありがとうございます! アングイス:パイセンほんと知らなすぎ 迅雷:知ったところで何になる アングイス:楽しい事、知っておいて損ないけど? 戦闘データより価値あるよ、ぶっちゃけいうと 迅雷:……よくわからん ニテラ:ほんとーに、アンドロイドより機械チックですよね、先輩 迅雷:それが最適解だ 迅雷:人間のそういった感情は、時に戦闘において障害となる アングイス:…ま、そこは分かんない事、ないけど アングイス:ゲームだって、いちいちキレてたら、話になんないし ニテラ:アングはキレたことあるの? それこそ折っちゃうくらい アングイス:ただの一度も。だって、バカみたいじゃん。こんなの暇つぶしなんだからさ アングイス:戦闘だって一緒だよ 迅雷:戦闘は暇つぶしじゃない アングイス:暇つぶししてるのに怒ったら本末転倒でしょ? ニテラ:たまにはアングの怒るところ、見たいと思うけど アングイス:見せ物じゃないし ニテラ:先輩は、意外と怒ってる時、ありますよね 迅雷:どこがだ ニテラ:ほら、カツラギさんとかに対して アングイス:あー、確かに ニテラ:機械のこと馬鹿にされて突っかかってるじゃないですか 迅雷:…… 迅雷:卑下(ひげ)は、戦闘において重要じゃない ニテラ:隠すの下手ですね、バレバレです ニテラ:やっぱり人間なんですね、先輩も アングイス:パイセンも少しは趣味の一つや二つ持てば、どうでもよくなるのに 迅雷:趣味を持ったところで、何も変わらない、俺は アングイス:…かったいやつ ニテラ:あ、趣味といえば! 0:ニテラは部屋から出て、しばらくすると戻ってくる ニテラ:これ! 迅雷:…なんだその道具は アングイス:予想通り ニテラ:コーヒーですよ! 山ごもり老人もびっくりの検索大先輩様! 迅雷:余計なものは検索しないだけだ。それで? ニテラ:最近ハマってるんですよーこれ ニテラ:アングも飲む? アングイス:どっちでも ニテラ:じゃあ確定で 0:ニテラはその場でコーヒーを淹れ、迅雷とアングイスに出す ニテラ:はい、どーぞ アングイス:…豆、変えた? ニテラ:分かる? この前とは別のやつ! アングイス:前のほうが好きかな ニテラ:えー、せっかく変えたのにー 迅雷:……苦いな ニテラ:わぁ、先輩まで! 迅雷:……だが、……俺の味覚機能からすれば……うまい、な 迅雷:これが、コーヒー、か アングイス:生まれたての赤ん坊みたいな発言 ニテラ:そうですよそう! 先輩も分かってくれるんですね! ニテラ:じゃあ、今度は前の豆で…… 0:そこで、通信が入る カツラギ:聞こえるか? 迅雷:こちら迅雷。…カツラギ。なんだ カツラギ:緊急任務が入った。第3地区の2番通りに集合しろ カツラギ:以上 迅雷:… 迅雷:…行くぞ 迅雷:… アングイス:……でかい ニテラ:こんな遠くからでも見えるんだね カツラギ:聞こえるか? 0:迅雷たちの耳から、カツラギの通信音声が響く カツラギ:簡易的に述べる カツラギ:第3地区の研究所で爆発が起こった後、お前達が見えているあの巨大な樹……生物が現れた カツラギ:コードネーム「TI(ティーアイ)」。我々の駆除対象だ カツラギ:……ラオ ラオ:そんなに睨まないでくれたまえ、カツラギ君 0:カツラギの音声の他に、もう一人の男性の声が響いた ラオ:久しぶりだね、みんな カツラギ:あれは、ラオが研究所で作っていた兵器の一つだ カツラギ:研究所を破壊した後、奴が地上から伸び出るように現れた カツラギ:…私もこの目で見るまでは、ああいった生物兵器だとは知らなかった アングイス:……つまり、樹の形の、生体兵器ってこと? ラオ:その通りだよ。アングイス君 ラオ:厳重に保管していたんだけどね カツラギ:責任追及は免れないぞ。少しでも上層部からお咎(とが)めをもらいたくなければ、情報提供をくまなく頼む ラオ:……TIは、幹の中にコアがある。ただ、奴はデクノボウと呼ばれる人形を従えていてね ニテラ:人形? アンドロイドではなく? ラオ:いいや。TI自身が生み出している生命体だ ニテラ:生命体…… アングイス:科学の進歩ってすごいね ラオ:はは、アングイス君。研究所で造られたばかりの頃より、皮肉が板についているね アングイス:それはどうも カツラギ:お前達は、TIの元に向かいつつ、現れたデクノボウを駆除しろ ニテラ:他の人たちは? カツラギ:避難は完了している カツラギ:先行部隊としてアンドロイドを向かわせた 迅雷:……ターゲット情報、検索……。これか。…………なるほどな ラオ:早速検索をかけてくれているとは。一応、現時点でのTIとデクノボウのデータは記載させてもらったが、意外と仕事が早いじゃないか。迅雷君 迅雷:俺が信用出来ないか? カツラギ:当たり前だ 迅雷:それは、是非とも結果を残したいところだな カツラギ:まるで自分の立場が同等かのような言い方じゃないか。特殊試験体サイボーグ君 ラオ:正式名称は辞めたまえ。だからコードーネームを彼に与えているというのに アングイス:……結局さ。これってあんたらの汚点ってことでしょ カツラギ:…貴様 ニテラ:アングイス アングイス:っ ニテラ:今は喧嘩するところじゃないよ ニテラ:目の前のことを見よう ニテラ:終わったら、また私達の時間が戻るんだからさ アングイス:…ニテラ 迅雷:…お前たち「ネムズ」の犬になった覚えはない。任務をこなすだけだ カツラギ:それこそ、その任務を命じたのは我々、世界管理機関「ネムズ」だ カツラギ:機械だらけの君に、任務というものを与えたのはどこの誰になるんだろうな? 迅雷:…… ラオ:いいじゃないか、カツラギ君 ラオ:彼自身が、自分の考えで動くことも大切だよ カツラギ:サイボーグは信用できない。自分の立場をわきまえろ、ラオ ラオ:おやおや、それは手厳しい。カタブツだねぇ カツラギ:…迅雷。分かったら任務をこなせ。今、お前達の目に見えるものは、我々の命運を分けるものだ カツラギ:ここであの化物を止めなければ、ネムズは壊滅的な被害を受ける 迅雷:そんなに出世がしたいのか? それとも本音か? ニテラ:先輩 迅雷:……。すまない。任務に関係のない事項だった ニテラ:すぐに頭を冷やせるところも好きですよ、先輩 カツラギ:機械らしく、まともな思考を持っているらしいな、ニテラ ニテラ:カツラギさんの指導には、助けられていますから ニテラ:アンドロイドとの訓練の時も、的確じゃないですか、言う事 ニテラ:頼りにしています カツラギ:… カツラギ:とにかく、目的は一つだ カツラギ:これより、1300(ひとさんまるまる) カツラギ:TI討伐作戦を開始する ラオ:さてさて。どうなることやら カツラギ:お前の実験ではないぞ、これは ラオ:実験体がどういう成果をもたらすのは、研究者ならだれしも気になるだろう ラオ:君も一度、その堅物のマスクをとって、没頭してみたらどうだ? カツラギ:肩が凝りそうで勘弁願うよ ラオ:…迅雷君。彼が持っている神器(じんぎ)は、オリジナルではない。かつて昔に存在していた、古代の神器のその欠片……それを元に新しく作り上げた発明品だ ラオ:神器の中に含まれる「魔素」が、時に電力となり、風力となり、使用者が持つ感情の流れに伴って力が発揮される ラオ:アンドロイドの中身も、同じように「魔素」で構成されているが、機械の個体と武器では、また扱いが違ってくる カツラギ:サイボーグ、アンドロイド、そしてあの神器(じんぎ)の事は知っているが、TIの事に関しては、お前からしか情報筋がない カツラギ:責任を果たせよ ラオ:仕事はするさ 0: 0: ニテラ:こうやって3人で動いていると、前の任務を思い出しますね ニテラ:最後は、いつでしたっけ……そう アングイス:前の探索任務? ニテラ:そうそう、それ アングイス:パイセン暇そうだったもんな アングイス:まー分からないこと、ないけど 迅雷:… 0: 0: 0:一週間前 ニテラ:これと、これ……でっと 迅雷:… アングイス:あのさ。パイセン、仕事してくれない? 迅雷:…3人も必要か、この任務? アングイス:暇つぶしには最適じゃない? アングイス:それに、僕たちがこれで働けば働くほど、もっと暇になりそうだし ニテラ:「魔素」の制御装置の生産量を増やすために、砂漠なり廃墟なりにある、鉄や鉱石の塊をとってくる……不思議ですね。こんな無機物一つで、私達と同じ機械人形が生まれるんですから アングイス:何と戦おうとしてるんだろうね、政府って ニテラ:西の都市にあるカサドラだったっけ? そこを制圧して管理するために、準備しているのは聞いたことあるわね アングイス:でも、相手は人間ばっかりなのに、そんなに必要ないでしょ ニテラ:それとも、ほら、前にラオさんが言っていた…昔の化物の話 アングイス:ティリスト…イレス…だっけ? ニテラ:正解、アングえらいえらい アングイス:と、唐突になでるなよ ニテラ:それと同じ化物が現れてもいいように、アンドロイドを今から量産している、と私は推理してみます アングイス:なにそれ、おとぎ話にびびってるってこと? ニテラ:でも、ネムズってその、ティリスト・イレスとの戦いがきっかけで生まれた組織なんでしょ? それだったら、分からない事はない気もするけど アングイス:コスト使いすぎっしょ アングイス:ヒヤヒヤして手を出しすぎると、もっと追い込まれるじゃん ニテラ:ゲームも同じっていいたいのね? アングイス:良く分かっていることで 迅雷:仕事を続けるぞ アングイス:あ、パイセン。僕らがだべってるのを逆手にとって、自分仕事してるアピールしようとしてない? 迅雷:お前達が話し込んでいたら、いつまでたってもまとまらないだけだ ニテラ:厄介者扱いしないでくださいよ~ アングイス:さっきまで仕事してなかったのはどっちなんだか ニテラ:アングも結構サボってる時あるけどねー アングイス:手を抜いて仕事したほうがラクじゃん、実際 アングイス:どうせ、生かされてるだけの僕らなんだから ニテラ:…それは、ちょっとどうかと思うけど ニテラ:活かされてるなら、活かされてるなりにもっと、こうワンダフルにふるまってもいいのに アングイス:それはニテラじゃん アングイス:僕はそういうくだらないことはしないの ニテラ:くだらないって、そういう所は迅雷先輩と同じなのね アングイス:別に、パイセンと一緒じゃないし アングイス:パイセンはめんどくさいだけ ニテラ:アング、最近、先輩に対してちょっとツンケンしてるよね、なんかあった? アングイス:そう? 勘違いじゃない? ニテラ:ゲームしてくれないから? アングイス:…っ。は、はぁ? ニテラ:図星っぽいね~ 迅雷:…… ニテラ:迅雷先輩は私達の中で一番年上なんだから、下の面倒は見てくれないと、困りますよ~プンプン アングイス:…いや、別に困らないし 迅雷:…あまり、遊ぶという感覚が分からない 迅雷:俺と遊んだところで、アングイスにメリットはないだろう アングイス:……そういうことじゃ、ないんだけどな 迅雷:? アングイス:…何でもない アングイス:さ、仕事仕事 0: 0: 迅雷:……そういえば、そうだったな 迅雷:……アング アングイス:…? 迅雷:……この任務が終わったら、やるか アングイス:…な、なんだよ急に ニテラ:よし! じゃあ、3人でがんばろ! 迅雷:とっとと行くぞ ニテラ:はーい! ニテラ:良かったね、アング アングイス:うるさい 0:迅雷たちは第3地区を進む 迅雷:……建物の被害、およそ60%か ニテラ:… アングイス:ニテラ? ニテラ:…いいものじゃないね、こういうの ニテラ:アングイスは、どう? アングイス:…さぁ。よくわからない ニテラ:そう、よね。機械は壊れるだけ、だもんね ニテラ:…怖いなぁ、それって 迅雷:壊れはしない アングイス:パイセン? 迅雷:俺の仲間である以上、それはない ニテラ:……先輩 0: ラオ:熱いねぇ… カツラギ:随分と楽しそうだな ラオ:それもそうさ、迅雷君も、僕が造ったんだ カツラギ:その傑作たるゆえん、実力を見れるといいがな ラオ:…彼の持つ「雷神剣(らいじんけん)」は、感情に対して反応する カツラギ:…適応者、と呼んでいたな ラオ:そう。あれを使うには、機械であることと、人間であることが条件 ラオ:彼は、アンドロイド以上の結果をもたらすだろう カツラギ:他の二人は役に立たないと ラオ:君から見れば、どうだね? カツラギ:アンドロイドとの訓練データからみても、戦闘能力として、アングイスは上々だ カツラギ:ニテラに関しては、少々心配な部分はあるが…サポートとしては適切な能力値だ ラオ:……評価ができていることで 0: 迅雷:……? アングイス:……あれって? ニテラ:っ! 迅雷:他のアンドロイド…! カツラギ:……先発部隊 カツラギ:君たちより先に向かわせた、アンドロイドだ ラオ:これはこれは ラオ:四肢(しし)をもぎ取られているな ラオ:デクノボウは思っている以上に狂暴らしい ニテラ:……っ 迅雷:大丈夫か? ニテラ:…あはは、ごめん。先輩 ニテラ:震えちゃってるよ、私 アングイス:……震える事なんてないよ アングイス:…こいつらだって、別に恐怖を感じていない アングイス:…ただ、壊れただけなんだから 迅雷:アングイス アングイス:……ごめん 0: ラオ:ニテラが震えるか、無理もない ラオ:感情を植え付けているアンドロイドだからね カツラギ:……特別に感情をインストールした個体 カツラギ:……人間のようだな ラオ:あれ? おかしいな ラオ:機械嫌いのはずじゃなかったのかい? カツラギ:…彼女がああまで気持ちが変わるとは思っていなかったさ カツラギ:普段は皮を被ったような笑顔だったが、私の見間違いだったか 0: ニテラ:平気なのすごいね、アングイス ニテラ:機械は機械って考えてみようって思ったけど、やっぱり無理だ、私は アングイス:…ニテラは、ニテラだよ ニテラ:ううん、機械は、機械。あんなにガラクタのように積まれているのをみて、改めて思った ニテラ:結局、私もニテラという名前がついているだけの存在、なのかもね アングイス:…いや、それは 迅雷:恐怖心は、生存本能には欠かせない 迅雷:それがあることで、生き延びようとする ニテラ:…? アングイス:パイセン… 迅雷:実際に、生存する確率はあがるデータはある 迅雷:ただの検索結果だ ニテラ:はは ニテラ:さすが、検索大先輩。頼りになります 迅雷:…行くぞ 迅雷:…同胞の仇はとる 0: カツラギ:…本当に、変わった奴だ カツラギ:唯一の「人間」が混ざった機械が、アンドロイドの事を、同胞と呼ぶとは ラオ:やはり…… ラオ:彼は、素質があるな カツラギ:何? ラオ:いやいや ラオ:興味深くてね。彼の奥底にあるものが 0: 迅雷:…! ニテラ:あれは、デクノボウ…! カツラギ:各体、武器を展開しろ 迅雷:…戦闘モード起動 迅雷:戦闘バッテリ―消費予測、10% ニテラ:敵行動予測、戦闘データと照合完了 アングイス:予測曲線の変化、5% アングイス:……やれる カツラギ:迅雷は前面の敵を、アングイスは両脇を片付けろ。 カツラギ:ニテラは二人の死角を警戒。サポートに入れ ニテラ:了解! 迅雷:これより、攻撃を開始する 0:迅雷は剣を抜いた 迅雷:邪魔だッ! アングイス:攻撃パターンは、アンドロイドの訓練と同様! アングイス:とっとと片付けるっての! 迅雷:! 後ろ!? ニテラ:除去コード 05(ぜろご)! ニテラ:「ロールバッシュ」! 迅雷:…すまない ニテラ:サポート完璧でしょ、今の動き? アングイス:こっちも頼むよ、ニテラ ニテラ:分かってるわ! 0: カツラギ:…連携に問題なし。順調だ ラオ:……デクノボウ ラオ:ティリスト・イレスが操っていた木の人形 カツラギ:……古代の大樹の話か ラオ:TIはそれを再現した兵器だったが、こうも似ているとはな ラオ:我ながら驚きだよ カツラギ:…恐ろしいものを作る カツラギ:奴らを残らず消し去るにはどうすればいい ラオ:それは、本体を倒さないとね。奴らは湧いて出てくるから 0: 迅雷:敵掃討、完了 アングイス:周囲に……敵は…っ!? 迅雷:……ニテラ? ニテラ:……あ… アングイス:!? デクノボウ…!? 0:ニテラの後ろで、デクノボウが腕を鋭い剣に変えて、彼女を刺していた カツラギ:何!? ラオ:ただ…強い個体がこうも現れるとは、思っていなかったがね。デクノボウも成長をしている、ということか 0: 迅雷:っ!! ニテラ:あ……あ……ぁ アングイス:…ニ、ニテラ…! カツラギ:迅雷!! 迅雷:っ! ニテラから離れろ!!! ニテラ:……っ…… 0:迅雷は、ニテラを刺していたデクノボウをはがした アングイス:……あ、あ ニテラ:…ありがとう、ございます アングイス:…こいつ…! アングイス:…くそが! アングイス:…死ね! 死ねよ! 死ねよお前!! 迅雷:アングイス!! アングイス:っ! 迅雷:…デクノボウの反応は消えた ニテラ:……先輩 ニテラ:ごめん…なさい 迅雷:……っ ニテラ:……アング…… アングイス:い、嫌だ……ニテラ…そんな ニテラ:は……はは ニテラ:らしく…ない…よ? アング 0:ニテラはアングの頬に手を添えた ニテラ:…せん……ぱい ニテラ:…壊れるって……こんな感じ……なんですね アングイス:…っ……ぁ ニテラ:…まだ…みんなと ニテラ:…楽しく……過ごしたかっ…… 0:ニテラの意識が消滅し、体が人形のようにうなだれた アングイス:…パイセン アングイス:…ニテラの アングイス:…ニテラの反応は 迅雷:……消えた アングイス:…っ……そうだよ……消えた アングイス:……ニテラは、消えて……壊れた…だけ…なんだ アングイス:……っ……ぁ 迅雷:…… 0: カツラギ:ニテラ…… ラオ:はは…面白いな… ラオ:彼女の死が、取り残されたサイボーグと、アンドロイドの情を刺激するか… ラオ:感情のあるあの子がもたらした、面白い反応だ カツラギ:…口を閉じろ、ラオ ラオ:……やはり ラオ:機械嫌いって嘘っぱちだね、カツラギ君 カツラギ:……迅雷、聞こえるか 0: 迅雷:……ああ カツラギ:TIはまだ消滅していない カツラギ:デクノボウは、奴を倒さない限り、無限に現れ続ける 迅雷:やることは変わらない 迅雷:…アングイス アングイス:…… 迅雷:行くぞ アングイス:……了解 0: 0: 迅雷:……目標(ターゲット)、発見 アングイス:……TI ラオ:見れば見るほど、大きいな。迅雷君たちの視界データを介しても、迫力は段違いだ ラオ:作戦前にも言ったが、TIの幹の中に「核」がある、それを壊せば、僕たちの勝利だ ラオ:TIに敗れたアンドロイドのデータも、ネムズのサーバーに随時転送している ラオ:死者の遺言は引き継がないとね カツラギ:TIに壊されたアンドロイドは、君たちの目然に広がっている カツラギ:僅かの時間に、これだけの数が破壊された。 カツラギ:それに比例して、TIのデータの蓄積量も増えている。有効に使え 迅雷:敵行動予測再確認。雷神剣の電力チャージ開始……。 迅雷:ネムズからTIのデータをインストール 迅雷:……完了 迅雷:敵の攻撃パターン、分析。…予測曲線の変化率、50% 迅雷:損傷率、80% 迅雷:…最適解は既に決まっている アングイス:……そっか 迅雷:どうした? アングイス:……今になってわかったよ アングイス:怒るって感覚 迅雷:… アングイス:TIは、必ず殺すよ カツラギ:迅雷、アングイス、頼むぞ カツラギ:…作戦時刻1400(ひとよんまるまる)。これよりTI本体への攻撃を始める! 迅雷:……行くぞ、TI! 0:TIの蔓攻撃が飛んでくる 迅雷:お前の攻撃パターンは既に分析している、無駄だ! アングイス:その蔓(つる)、邪魔なんだよ! カツラギ:敵ダメージ予測50%! 迅雷、アングイス、その調子だ。 ペースを崩すな! 迅雷:TIの攻撃、おおよそ98%予測。全て正確に回避。異常は見られない。 迅雷:このまま行けば、奴の破壊は造作もない!! ラオ:98%……素晴らしい、素晴らしい数値だ、迅雷君 アングイス:斬り尽くしてやる!! アングイス:除去コード06(ぜろ ろく)「スケイルラージ」! 0:アングイスが二刀で一気にTIへ斬りこんだ アングイス:はぁぁぁっ! カツラギ:TIの外殻(がいかく)がはがれた…! ラオ:除去コードのモーション練度も高い……アングイスも見事だね アングイス:外側は破壊した! あとは核を! …? カツラギ:!? 蔓(つる)を集結させた!?  アングイス:…! しまっ…… 0:アングイスが反応に遅れ、攻撃を受けてしまう カツラギ:! アングイス! アングイス:あっ……が… 迅雷:除去コード 045(ぜろ よん ご)! 迅雷:天雷一閃(てんらいいっせん)! 0:雷を纏わせた迅雷の攻撃がTIを貫き、動きが止まった 迅雷:アングイス…ッ! アングイス:パイ…セン…… アングイス:…パイ…セン アングイス:ミス…った… 迅雷:喋るな! 迅雷:カツラギ! アングイスの損傷度は!? カツラギ:……100%を超えている ラオ:あの一瞬で……攻撃予測を上回るとは…… ラオ:なるほど……データでは測れない領域にいる、存在という事か、TIは… 迅雷:……! アングイス:……はは。ごめん、パイ……セン アングイス:ニテラが死んで…分かった アングイス:僕は、……いなくなるのが、淋(さみ)しかっただけ…なんだって アングイス:その気持ちを……気まぐれに、ごまかしてた 迅雷:……お前 アングイス:こうやってみると……パイセンって……お兄さん…みたいで… アングイス:機械の体なのに、あったかいな… 迅雷:… アングイス:…そっか、僕、やっぱり… アングイス:……はは アングイス:欲しかったんだね…そういうのが 迅雷:…っ! アングイス:…パイセン、嬉しかった アングイス:帰ったら、ゲームしようって言ってくれて アングイス:…はぁ、惜しいなぁ アングイス:…一緒に、出来なくて… 0:アングイスの腕から力が消えた 迅雷:………… カツラギ:アングイスの生体反応……停止 ラオ:ただ、アングイス君の戦闘データも保存はされた。TIには対処しやすくなった 迅雷:……了解 迅雷:戦闘データ、インストール 迅雷:…… 迅雷:……完了 0:迅雷は、アングイスの空いた目を伏せる 0:自身の拳を強く握り、雷神剣に手を伸ばす 迅雷:あとは……TIの核を破壊するのみだ……! 0:そこで、TIの幹の部分から割れるような音が鳴る カツラギ:なんだ……? TIの中から、何かが出てくる? ラオ:クク… カツラギ:油断をするな、迅雷! 迅雷:分かっている…! 迅雷:……? あれは…幹の中から……少女? 0:TIの幹の中から、巨大な花が出てくる。その花の中央部には、少女が居た ヒナミ:ハル! 0:  0:  迅雷:っ!!!!ぐっ?!あっ……!がぁ……! カツラギ:どうした! 迅雷!! 迅雷:なんだ……この……痛み……は!? 迅雷:……TIの、攻撃!? ……いや、これも……検索結果には……ない……!? 迅雷:俺の、頭に……何が……!? 迅雷:……が、があああッ! カツラギ:!? 迅雷の脳に大きな……損傷ダメージ!? 致命的な欠陥はなかったはず……そのはずだ カツラギ:……待て  カツラギ:なんだ……これは? カツラギ:迅雷の脳から……ダメージが「生まれて」いるだと? ラオ:はは、ははは! カツラギ:これは一体どういうことだ…ラオっ…! ラオ:落ち着けよ、カツラギ君 カツラギ:…っ! ラオ:痛いじゃないか、そんなに掴んだら ラオ:僕は機械じゃないんだ、もう少し優しく扱ってほしいんだがね カツラギ:状況を分かっているのか! ラオ:何事にも真剣になりすぎだ ラオ:そんな掴みかかってきてさぁ ラオ:君のそういうところ嫌いなんだよ僕 カツラギ:…お前! ラオ:何も考えずに従い、ぬるい檻(おり)で威勢よく生きてるその感じが ラオ:古臭いんだよ、君さ カツラギ:…答えろ、ラオ。…TIの核が、人間などと聞いていない! ラオ:それがTIの正体だよ ラオ:まぁ…無理もないか。それを知ってるのは僕と、政府の一部の上層部だけ ラオ:古代に存在していた大樹…ティリスト・イレスは、元は1人の少女だった ラオ:だから、その人間で出来ているのだよ ラオ:あれは、ティリスト・イレスの末裔(まつえい)だ カツラギ:…なに!? ラオ:あれについては研究していたが、よもやその末裔(まつえい)が見つかるなどと思っていなかったからね……運命とは不思議なものだ…そして、その結末もね……はは カツラギ:…なぜ、私には何も知らされて…… ラオ:それは君が、都合のいい道具だからだ、カツラギ君 ラオ:…僕と同じように カツラギ:…? ラオ:さて、迅雷君……君は、どうするかな? 0:頭が割れる感覚と、激しい感情に迅雷は襲われる 迅雷:……あ、あぁ、あ…………ぁぁあ……あ。 迅雷:ヒ、ヒナ…………ミ……? 迅雷:ぐっ、ああああぁぁああああああああああ!! 0:     ヒナミ:ハル 0:   迅雷:辞めろ……辞めろ!! 迅雷:その声で……その名前で、俺を呼ぶなあああっ!! 0:     ヒナミ:ハル 0:   迅雷:黙れ……黙れ……黙れええええええええ! 0: ハル:…… ヒナミ:ハル、今日は眠たそう ハル:……さすがに君が飛んでるところみたばかりだしさ ヒナミ:あはは~ごめんごめん。でも、ハルに見てもらえてよかった ハル:てっきり何か見つけただけかと思ってたよ ヒナミ:それが実は ハル:魔法のように飛べるなんて、誰も思わないでしょ ヒナミ:そうよね~。 ハル:…… ヒナミ:ねぇ、ハル ハル:ん? ヒナミ:白い大樹の話、覚えてる? ハル:うん ヒナミ:……もしさ。もし、私が、その大樹になったらさ ハル:ヒナミ? ヒナミ:聞いて。 ハル:…… ヒナミ:白い大樹は、特殊な力を持った人間の慣れの果て ヒナミ:分かるんだ、私の中に居る「化物」が、そう伝えてきてる ハル:… ヒナミ:……もし、自分がそうなって、村の人たちを……殺したらと思うと……体が震えちゃうんだ ヒナミ:……ねぇ、どうしよう。私、もうこのまま、どこかに飛んで行って……居なくなった方がいいのかな…… ハル:……そんなことにはさせない ヒナミ:……ハル? ハル:ヒナミが化物になる未来なんて、まだ決まってない。 ヒナミ:でも、私は! ハル:勝手に決めちゃいけない。決めてしまったら、ほんとにそうなっちゃう。だから、僕が変える ヒナミ:……! ハル:…ヒナミがそうならないように、助ける方法を考える。白い大樹になったとしても、そこから人間に戻る方法だってあるはずだ ヒナミ:ハル…… ハル:僕は、必ずヒナミを救う。 ヒナミ:…。なんか、まるで昔のナイト様みたいだね、ハルって ハル:なんでも、構わないさ ハル:だから、化物になっても大丈夫。大丈夫だから。 ハル:絶対に、僕がヒナミを助けるから ヒナミ:……うん。 ヒナミ:……ありがとう、ハル。 0: ニテラ:せーんぱい 迅雷:なんだ? ニテラ:好きです 迅雷:どういうことだ? アングイス:ニ、ニテラ? ニテラ:あ、でもあれですよ。ラブじゃなくて、ライクのほう 迅雷:… アングイス:…そっか ニテラ:あれ? どしたの?アング アングイス:いや。ニテラがまた変なことを言ってるなーって 迅雷:変、というよりは、理解ができないことだ ニテラ:えー 迅雷:それを言った所でどうなる? ニテラ:だーかーら、そうじゃないのにぃ……ってまだ先輩には早いのかもですね アングイス:……別に早くなくていいんだけど ニテラ:そんなこと言ったら、先輩可哀想でしょ、アング 迅雷:俺の成長速度は、成人男性と変わらない ニテラ:はいはいロジカルシンキングオタク~。今日も最適解ご苦労様でーす アングイス:ロジカルシンキングオタクは草 迅雷:馬鹿にしていると分析した アングイス:早速オタクぶりを発揮 ニテラ:馬鹿にされてるって自覚があるの、面白いですよね、先輩 ニテラ:でも、いつか分かりますよ 迅雷:「好き」という感情が、か? ニテラ:はい ニテラ:だから、いつでも言いますよ ニテラ:私は、先輩が、好きですって ニテラ:…といっても、これもインストールされた感情でしかないんだけど アングイス:結局、政府が造ったデータじゃん ニテラ:でも、それじゃ、つまんないよ アングイス:? ニテラ:私の感情でありたいじゃない 迅雷:私の、感情……。 ニテラ:確かに人から与えられた、プロットで出来た感情かもしれない。でも私は、これが好き ニテラ:毎日心が躍りそうで、先輩のこといじったり、お話したり、こういう時間を楽しいと思える、この「感情」が ニテラ:もちろん、私だけじゃなくて、アングも…先輩も ニテラ:その感情の動きが「好き」なんです 迅雷:……よく、分からないな ニテラ:先輩ならわかりますよ ニテラ:じゃあ、先に訓練行ってますね~! 迅雷:… アングイス:…感情なんて、分からないよ、ニテラ アングイス:このゲームの中にいるキャラと変わらない アングイス:…僕も、造られたキャラの一人 アングイス:…でも 迅雷:…?  アングイス:……キャラクターでも…その、楽しさは、共有できるのかな、と思ったこともあって アングイス:……だからさ、パイセン アングイス:今度…一緒に…ゲー(ムを) 迅雷:(かぶせて言う)訓練の時間だ、行くぞ アングイス:…。あっそ 0: アングイス:そういうところ、変わんないね、パイセンは 0: 迅雷:…アングイス 0: ニテラ:またコーヒー、飲みましょ、先輩 0: 迅雷:ニテラ…… 0: 迅雷:俺は…お前たちを……救えなくて… 0: 0: 迅雷:…だから……俺は…… 迅雷:ニテラと…アングイスを……救…って 迅雷:TIを……ヒナ…ミを…殺し…て… 迅雷:……救って……殺して 迅雷:……救って……殺して…… 迅雷:だから…… 0: ヒナミ:ありがとう、ハル 0: 迅雷:が、が…ああ……あ 0: 迅雷:ああああああああああああああああっ!!! 0: 0: 0: 迅雷:……俺の 0: 0: 迅雷:……俺の……最適解……は 0: 迅雷:…はは……はははは……ははは! 0: 0: 迅雷:はははははははは! ヒナミ:……ハル? 0: カツラギ:迅雷!  迅雷:……っ 0:迅雷は、TIの蔓(つる)による攻撃を一気に切り伏せた ラオ:…ほう、一撃で! 0:そして、強く、機械の手が壊れるほどに、雷神剣を握る 0:それと同時に、迅雷の口から、笑みがこぼれおちた 迅雷:…はは……はははは 迅雷:はははははははは!! はははははははははは!! カツラギ:…! 雷神剣のエネルギーが…大幅に、上昇している 迅雷:…「魔素」…転換! 迅雷:……雷神剣。電力エネルギーチャージ、開始…! ラオ:そう…そうだ。それでいい! ラオ:その人間としての「感情」が、雷神剣の出力を上げる…! ラオ:それが君の力だよ…! 迅雷君! 迅雷:ははは…はは…ははは 迅雷:TI… 迅雷:…俺の 迅雷:俺の最適解は…… 迅雷:貴様を…殺すことだ!! 迅雷:殺して……すく…って 迅雷:ヒナ…ミを…ころ…して…ニテラも…アングイスも…救って! 迅雷:だから…ヤツを…殺す!! 迅雷:はは……ははははは! 迅雷:ははははははっ!!!!! カツラギ:出力が規定値を… カツラギ:……雷神剣…これが、神器(じんぎ)の力 ラオ:…この力、クク ラオ:古代のナイトに、強大な実力を持っている人間がいると聞いたことがあるが ラオ:まるで、そのナイトのようだ 0: 迅雷:チャージスロット、リミッター解除! 迅雷:雷神剣、フルチャージ! 迅雷:電力エネルギーフル解放! 迅雷:殺す……殺す……! 迅雷:殺して……救って…殺してやる!  迅雷:TI……!貴様を……殺す!! 迅雷:除去コード111(イチ イチ イチ)!! 迅雷:雷極刃覇衝(らいごくじんはしょう)!! 迅雷:あああアあアアアああああアあああああああああっッ!!!! 0:迅雷は大きく雷神剣をふるった。 0:空から降り注ぐ「雷」が落ちるように、TIが縦に切り裂かれた 0:雷鳴が、辺りに響き渡る 0: カツラギ:…終わった、のか ラオ:…見てみろ ラオ:…TIは見事に、粉々だ。素晴らしい カツラギ:… 0: 0:ふわり、ふわりと 0:上半身が破ける、宙に浮いた少女は、涙を流しながら、迅雷を見た ヒナミ:ハ…ル…… 0:少女は砂のように消え、TIは崩れていった 0: 0:迅雷は笑う 0:笑った後、彼は頭を抱え、嗚咽(おえつ)を漏らした。 迅雷:は、ははは…ははっ、はは、あ……あっ……あ、ぁぁ…ああ…あ…ぁ……ぁぁ 0:  カツラギ:…… 迅雷:…カツラギ 迅雷:聞きたいことがある カツラギ:…なんだ? 迅雷:……俺は、誰なんだ 迅雷:ハルとは、なんだ カツラギ:…私にも、分からない 迅雷:なら、この感覚はなんだ?? 迅雷:敵は倒した 迅雷:ニテラや、アングイス。同胞の仇はうった……なのに…なのに… 迅雷:……最適解じゃない 迅雷:最適解じゃないと、俺の頭が否定してくるんだよ 迅雷:もう気持ち悪くて、仕方がないんだ ラオ:君は、街を救った英雄さ ラオ:その事実は覆らない ラオ:そうだろう、カツラギ君 カツラギ:…迅雷 カツラギ:この件に関しては、まだ不透明なことが多い カツラギ:ただ、まずは戻ってこい カツラギ:メンテナンスが必要だろう 迅雷:…了解した 0: 0:数時間後 0:ネムズの政府本拠地から離れた街の路地 カツラギ:… ラオ:おや、カツラギ君 ラオ:呼び出しておいて銃を向けるなんて…何のつもりだい? ラオ:それとも、排除の命令でも下ったかな? カツラギ:あれは、なんだ? ラオ:なんだと思う? カツラギ:…迅雷のあの様子は、普通じゃない カツラギ:TIの中に居た少女と、何らかの関係がある カツラギ:お前は、それを分かっていて、迅雷を作った。違うか? ラオ:…僕は ラオ:盗られただけだ カツラギ:何? ラオ:その結末が、あれだったということさ ラオ:でも、見事なものだった。僕があれを造ったと思うと、心地のいい感覚を覚える カツラギ:その過程を詳しく聞きたいところだ、ラオ カツラギ:ただ、同行しないのあれば、排除するしかない。それが命令だ ラオ:飼われているね、君は カツラギ:何度でも言え ラオ:どうとも思わないのかい? ネムズに対して? カツラギ:…… カツラギ:お前にそれを答えたところで、何もない ラオ:本当に堅物だな、君は。まるで機械のようで ラオ:つまらないよ カツラギ:…それで、どうするんだ? ラオ:よほど疑われているようだね、僕は 0:ラオが宙から、何かレーザーのようなものを放った カツラギ:っ!? 0:カツラギは物陰に隠れ、もう一度銃を向けようとしたが、ラオはいなかった カツラギ:…逃げられたか… 0:2ヶ月後 迅雷:…… カツラギ:調子はどうだ? 迅雷:視界良好。魔素の転換装置、および電力エネルギーに問題はない カツラギ:よし 迅雷:… カツラギ:そっちの傷は癒えたか? 迅雷:もう二か月前の話だ 迅雷:それに俺は、サイボーグだ カツラギ:それでも カツラギ:お前には人間の部分がある、そうだろ 迅雷:…随分丸くなったな、カツラギ カツラギ:いや…そもそも丸かったのかもな 迅雷:? カツラギ:誰かを失うことを恐れて、私は壁を作った カツラギ:これ以上、失いたくはない。その気持ちが、私を固くしてしまった カツラギ:必要以上に干渉してしまえば、事を仕損じてしまうと、長らく思っていたのかもな… カツラギ:大切なものが近くにある時に限って気づかない カツラギ:鈍感な人間だよ、私は 迅雷:…… 迅雷:それも、カツラギのいい部分だと分析する カツラギ:分析ではなくて、慰(なぐさ)めじゃないか? それは カツラギ:人間らしいことをするな、サイボーグ カツラギ:…これから、お前には西にある都市カサドラへ向かってもらう カツラギ:目標は、ラオの排除 カツラギ:ネムズからの命令だ 迅雷:……ラオ 迅雷:……TIを作り出したのも、俺を作ったのも、奴だ カツラギ:2か月前の討伐戦で終わりではない、ということだ カツラギ:ラオの足取りはカサドラだと掴めているが、都市の何処にいるかはわからない カツラギ:…本当は奴を掴まえて聞き出したいところだが、政府が排除と判断した以上、それに従わざるをえない カツラギ:…また、今回の任務に関しては、お前に全ての行動権をゆだねる カツラギ:必要最低限の報告のみでとどめろ 迅雷:……了解した 0:ふと、迅雷は自分を手を見やった 迅雷:… カツラギ:どうした? 迅雷:…TIを斬ってから、手が震えるようになった。それだけの事だ カツラギ:…「政府の犬になった覚えはない」といったのは、どこのだれかね? 迅雷:っ? カツラギ:君が野生の動物なら、震える前に、人間へ牙をむく カツラギ:いや、昔に存在していた、魔物に例えてもいいのかもしれないな 迅雷:……俺は機械だ 迅雷:野生の動物ではない カツラギ:その口のきき方が出来れば、問題はない カツラギ:いつものように、私に突っかかる心意気があれば、今回の任務も問題はない カツラギ:お前なりの答えは、おそらく見つかる 迅雷:……答えといえば、ラオの研究所から何か見つかったのか? カツラギ:いや、データベースはひととおり洗ったが消されている カツラギ:復元作業にとりかかっているが、まだまだ時間はかかる 迅雷:そうか 迅雷:……俺のミスで、ニテラも、アングイスも、失った カツラギ:…デクノボウにしろ、TIにしろ、予想を上回るものだった。未知は常に、我々を凌駕(りょうが)してくる カツラギ:…それに対応できなかった私の失態だ カツラギ:お前が責任を負う必要はない 迅雷:…… カツラギ:…飛行機能はどうだ? 重たいか? 迅雷:……いや、問題ない カツラギ:お前からその機能をつけたいと聞いた時は驚いた カツラギ:ニテラやアングイスが聞けば、なんというだろうな 迅雷:…カサドラについて検索をかけたが 迅雷:どうにも、殺し屋など、裏社会の人間が多いと聞いた 迅雷:ネムズの都市よりは危険度は上だと、容易に推測できる カツラギ:カサドラか… カツラギ:…ネムズ管轄の都市とは違い、アンドロイド技術は発展していない、時代が遅れている都市だ カツラギ:それでも、警戒はおこたるな 迅雷:…これより、カサドラへと向かう カツラギ:ああ。健闘を祈る 0:迅雷は空へと飛び、目的地へ向かった 迅雷:これが、空を飛ぶ感覚……か 迅雷:……悪くはないな 0:

0:夕方、のどかな村から離れ、人のいない丘へ来る ハル:待ってよ、ヒナミ ヒナミ:遅いよー、ハル ハル:ヒナミ、そんなに走ったら…… ヒナミ:もう、ハルったら、足遅いんだから ハル:ヒナミが早いんだろ……身軽(みがる)というかさ ヒナミ:遅いものは遅いんですー。もっと走るの頑張ったら? ハル:もう…… ヒナミ:ふふふっ ハル:……それで、こんな丘の方まで来て、何かあるの? ヒナミ:あ、そこ聞いちゃう? ハル:村から結構歩いてきたよ? 夜になったら辺りが暗くなって、帰れなくなっちゃうよ ヒナミ:大丈夫、それまでに帰るから ハル:そんなこと言って……この前だって、皆で川まで遊びに行った時も、日が落ちてたじゃないか ヒナミ:そうだったっけ? ハル:そうだよ ヒナミ:なんか楽しくって、忘れちゃった。そんなに暗かったかな? ハル:あれだけ暗かったら誰でも分かるよ? ヒナミ:それでもハルは一緒に遊んでくれたでしょ? ハル:ほっといたら、ヒナミずっと遊んでるだろ ヒナミ:心配してくれるの? すごい嬉しい ハル:茶化すなよ……。それで、ここに何しに来たの? ヒナミ:そうそう。こっちこっち ハル:こっちって……! この先崖だよ!?危ないよ! ヒナミ:危なくないよ? ハル:落ちちゃったら終わりじゃないか! ヒナミ:終わりじゃないよ?それっ。 0:ヒナミが崖から飛び降りる ハル:うわっ!?ヒナミ!!! ハル:えっ……! あっ! ヒナミ:どう?ハル? ハル:すごい…飛んでる 0:ヒナミは空を回った後、ハルの所へ戻ってくる ヒナミ:っと……。もう、分かってること言わないでよ。これ、結構練習したんだから ハル:なんで飛べるの!? ヒナミ:しっ ハル:……っ? ヒナミ:村の人達には、秘密にしてる ヒナミ:多分、これ知っちゃったら、あたし、どうなるか分かんないし。 ハル:……ヒナミ? ヒナミ:ある日ね、ホント自覚が無かったの。少し、高いところから足を滑らせそうになって……気づいたら、宙に浮いてた。それで、村の皆にバレない所へ行って、本格的に試してみたら、飛べちゃった。えへへ。 ハル:空を飛ぶ……そういえば ヒナミ:何? ハル:前に聞いたことがある。昔話で……えっと、何だっけ ヒナミ:白い大樹の話? ハル:そう。昔に大きな白い大樹があって ヒナミ:その大樹は、元は普通の少女で、空を飛ぶ能力があった ハル:…話の通りじゃないか ヒナミ:私ね。その伝説の大樹さんの、末裔(まつえい)みたい ハル:っ! ヒナミ:ふふ ヒナミ:……せっかくだから、ハルに見せておきたかったんだ ハル:… ヒナミ:顔、暗っ。…はぁ、あたしの手、触れて ハル:え、え!? ってうおっ!? ヒナミ:そーれっ! 0:ハルと手を繋いで、ヒナミと一緒に空を飛ぶ ハル:うわああああああ! ヒナミ:あははははははっ! ハル:お、落ちる……落ちるぅぅぅ??! ヒナミ:手を離したら落ちるかもね ハル:辞めてよ?! 0: 0: ハル:はぁ……はぁ……怖かったぁ ヒナミ:あ?楽しかったあ! ハルってこういうの苦手? ハル:苦手も何も、空なんて飛んだことないし……。ビックリするよ……。 ヒナミ:あはははっ。……でも、ありがとね。ハル。 ハル:……。村の人達には、秘密にしておく ヒナミ:……白い大樹は、元々は普通の女の子なんだって ヒナミ:その子が、大樹になって、最後に毒をまいて、世界を滅ぼしちゃった ヒナミ:その言い伝えも、知ってるよね? ハル:……。 ヒナミ:ハル。 ハル:何? ヒナミ:……これからも、ずっと居てくれる? ハル:えっ? ヒナミ:言葉の通りよ ハル:もちろん、ずっと居るよ! ヒナミ:ありがと。すごく嬉しい。私も、ハルと居て、ずっと楽しくて、 ヒナミ:辛い時も、悲しい時も、ハルは私の事を励ましてくれた。 ハル:……ヒナミ ヒナミ:……あっ。もう日が暮れるね ハル:……っ、そうだね ヒナミ:戻ろっか ハル:……うん……。 0:ヒナミが先に帰ろうとする ハル:  ハル:……ヒナミっ! ヒナミ:? ハル:……僕は、ずっと ハル:ヒナミの傍に、ずっと居るし、離れないから!! ヒナミ:っ……。 ヒナミ:…ありがと!ハル!! 迅雷:…… 0:目が覚めると、迅雷の目の前には、無機質な部屋が広がっていた ニテラ:あ、起きた ニテラ:おっはよーございます。先輩 迅雷:なんだ、ニテラか ニテラ:いい寝顔してたのに、起きた途端に台無しですね 迅雷:サイボーグに求めるな、そんなもの ニテラ:えー ニテラ:せんぱい、私達の中でいちばん人間に近いのに、人間じゃない反応してどうするんですか 迅雷:反応をしたところで、メリットはないし、戦闘能力が上昇するわけでもない ニテラ:うわ~。かった。鋼のように固すぎますよ、迅雷先輩 迅雷:アンドロイドも似たようなものだろ ニテラ:人間を真似てるだけで、生まれも育ちも全部機械です アングイス:戦えればどうでもいいじゃん、そんなこと 0:携帯ゲームをしながらアングイスはそういった アングイス:僕たちはアンドロイドなんだから、無駄じゃん、考えたところで ニテラ:無駄なんてことないよ、アング ニテラ:機械でも、命は命 ニテラ:ここにある大切なものなの、こういうの アングイス:ロマンチックだねー、二テラは アングイス:アンドロイドとは思えないくらい、感情豊かな発言で 迅雷:…確かに。自分の生命の重要さを認識すれば、生存率が高くなる検索結果はあるな アングイス:出た… ニテラ:はい!今日も検索大先輩、絶好調! 迅雷:馬鹿にしていると分析した アングイス:分析って…いやそこは気楽にいこうよ 迅雷:気楽が俺には理解ができない アングイス:…あーなんでだろ、機械なのにすっごい息が詰まる。 ニテラ:ぶっ。アングに呆れられてるじゃないですか~、先輩! ニテラ:「俺の名前は迅雷。今日も検索を導き出すサイボーグなのであーる」 迅雷:誰だそれは ニテラ:先輩の真似 アングイス:ニテラ、流石に草生えるよ、それ 迅雷:それは真似ではなく、改変というんだ…少しは検索しろ ニテラ:はい!検索大先輩からおしかり頂きましたー!ありがとうございます! アングイス:パイセンほんと知らなすぎ 迅雷:知ったところで何になる アングイス:楽しい事、知っておいて損ないけど? 戦闘データより価値あるよ、ぶっちゃけいうと 迅雷:……よくわからん ニテラ:ほんとーに、アンドロイドより機械チックですよね、先輩 迅雷:それが最適解だ 迅雷:人間のそういった感情は、時に戦闘において障害となる アングイス:…ま、そこは分かんない事、ないけど アングイス:ゲームだって、いちいちキレてたら、話になんないし ニテラ:アングはキレたことあるの? それこそ折っちゃうくらい アングイス:ただの一度も。だって、バカみたいじゃん。こんなの暇つぶしなんだからさ アングイス:戦闘だって一緒だよ 迅雷:戦闘は暇つぶしじゃない アングイス:暇つぶししてるのに怒ったら本末転倒でしょ? ニテラ:たまにはアングの怒るところ、見たいと思うけど アングイス:見せ物じゃないし ニテラ:先輩は、意外と怒ってる時、ありますよね 迅雷:どこがだ ニテラ:ほら、カツラギさんとかに対して アングイス:あー、確かに ニテラ:機械のこと馬鹿にされて突っかかってるじゃないですか 迅雷:…… 迅雷:卑下(ひげ)は、戦闘において重要じゃない ニテラ:隠すの下手ですね、バレバレです ニテラ:やっぱり人間なんですね、先輩も アングイス:パイセンも少しは趣味の一つや二つ持てば、どうでもよくなるのに 迅雷:趣味を持ったところで、何も変わらない、俺は アングイス:…かったいやつ ニテラ:あ、趣味といえば! 0:ニテラは部屋から出て、しばらくすると戻ってくる ニテラ:これ! 迅雷:…なんだその道具は アングイス:予想通り ニテラ:コーヒーですよ! 山ごもり老人もびっくりの検索大先輩様! 迅雷:余計なものは検索しないだけだ。それで? ニテラ:最近ハマってるんですよーこれ ニテラ:アングも飲む? アングイス:どっちでも ニテラ:じゃあ確定で 0:ニテラはその場でコーヒーを淹れ、迅雷とアングイスに出す ニテラ:はい、どーぞ アングイス:…豆、変えた? ニテラ:分かる? この前とは別のやつ! アングイス:前のほうが好きかな ニテラ:えー、せっかく変えたのにー 迅雷:……苦いな ニテラ:わぁ、先輩まで! 迅雷:……だが、……俺の味覚機能からすれば……うまい、な 迅雷:これが、コーヒー、か アングイス:生まれたての赤ん坊みたいな発言 ニテラ:そうですよそう! 先輩も分かってくれるんですね! ニテラ:じゃあ、今度は前の豆で…… 0:そこで、通信が入る カツラギ:聞こえるか? 迅雷:こちら迅雷。…カツラギ。なんだ カツラギ:緊急任務が入った。第3地区の2番通りに集合しろ カツラギ:以上 迅雷:… 迅雷:…行くぞ 迅雷:… アングイス:……でかい ニテラ:こんな遠くからでも見えるんだね カツラギ:聞こえるか? 0:迅雷たちの耳から、カツラギの通信音声が響く カツラギ:簡易的に述べる カツラギ:第3地区の研究所で爆発が起こった後、お前達が見えているあの巨大な樹……生物が現れた カツラギ:コードネーム「TI(ティーアイ)」。我々の駆除対象だ カツラギ:……ラオ ラオ:そんなに睨まないでくれたまえ、カツラギ君 0:カツラギの音声の他に、もう一人の男性の声が響いた ラオ:久しぶりだね、みんな カツラギ:あれは、ラオが研究所で作っていた兵器の一つだ カツラギ:研究所を破壊した後、奴が地上から伸び出るように現れた カツラギ:…私もこの目で見るまでは、ああいった生物兵器だとは知らなかった アングイス:……つまり、樹の形の、生体兵器ってこと? ラオ:その通りだよ。アングイス君 ラオ:厳重に保管していたんだけどね カツラギ:責任追及は免れないぞ。少しでも上層部からお咎(とが)めをもらいたくなければ、情報提供をくまなく頼む ラオ:……TIは、幹の中にコアがある。ただ、奴はデクノボウと呼ばれる人形を従えていてね ニテラ:人形? アンドロイドではなく? ラオ:いいや。TI自身が生み出している生命体だ ニテラ:生命体…… アングイス:科学の進歩ってすごいね ラオ:はは、アングイス君。研究所で造られたばかりの頃より、皮肉が板についているね アングイス:それはどうも カツラギ:お前達は、TIの元に向かいつつ、現れたデクノボウを駆除しろ ニテラ:他の人たちは? カツラギ:避難は完了している カツラギ:先行部隊としてアンドロイドを向かわせた 迅雷:……ターゲット情報、検索……。これか。…………なるほどな ラオ:早速検索をかけてくれているとは。一応、現時点でのTIとデクノボウのデータは記載させてもらったが、意外と仕事が早いじゃないか。迅雷君 迅雷:俺が信用出来ないか? カツラギ:当たり前だ 迅雷:それは、是非とも結果を残したいところだな カツラギ:まるで自分の立場が同等かのような言い方じゃないか。特殊試験体サイボーグ君 ラオ:正式名称は辞めたまえ。だからコードーネームを彼に与えているというのに アングイス:……結局さ。これってあんたらの汚点ってことでしょ カツラギ:…貴様 ニテラ:アングイス アングイス:っ ニテラ:今は喧嘩するところじゃないよ ニテラ:目の前のことを見よう ニテラ:終わったら、また私達の時間が戻るんだからさ アングイス:…ニテラ 迅雷:…お前たち「ネムズ」の犬になった覚えはない。任務をこなすだけだ カツラギ:それこそ、その任務を命じたのは我々、世界管理機関「ネムズ」だ カツラギ:機械だらけの君に、任務というものを与えたのはどこの誰になるんだろうな? 迅雷:…… ラオ:いいじゃないか、カツラギ君 ラオ:彼自身が、自分の考えで動くことも大切だよ カツラギ:サイボーグは信用できない。自分の立場をわきまえろ、ラオ ラオ:おやおや、それは手厳しい。カタブツだねぇ カツラギ:…迅雷。分かったら任務をこなせ。今、お前達の目に見えるものは、我々の命運を分けるものだ カツラギ:ここであの化物を止めなければ、ネムズは壊滅的な被害を受ける 迅雷:そんなに出世がしたいのか? それとも本音か? ニテラ:先輩 迅雷:……。すまない。任務に関係のない事項だった ニテラ:すぐに頭を冷やせるところも好きですよ、先輩 カツラギ:機械らしく、まともな思考を持っているらしいな、ニテラ ニテラ:カツラギさんの指導には、助けられていますから ニテラ:アンドロイドとの訓練の時も、的確じゃないですか、言う事 ニテラ:頼りにしています カツラギ:… カツラギ:とにかく、目的は一つだ カツラギ:これより、1300(ひとさんまるまる) カツラギ:TI討伐作戦を開始する ラオ:さてさて。どうなることやら カツラギ:お前の実験ではないぞ、これは ラオ:実験体がどういう成果をもたらすのは、研究者ならだれしも気になるだろう ラオ:君も一度、その堅物のマスクをとって、没頭してみたらどうだ? カツラギ:肩が凝りそうで勘弁願うよ ラオ:…迅雷君。彼が持っている神器(じんぎ)は、オリジナルではない。かつて昔に存在していた、古代の神器のその欠片……それを元に新しく作り上げた発明品だ ラオ:神器の中に含まれる「魔素」が、時に電力となり、風力となり、使用者が持つ感情の流れに伴って力が発揮される ラオ:アンドロイドの中身も、同じように「魔素」で構成されているが、機械の個体と武器では、また扱いが違ってくる カツラギ:サイボーグ、アンドロイド、そしてあの神器(じんぎ)の事は知っているが、TIの事に関しては、お前からしか情報筋がない カツラギ:責任を果たせよ ラオ:仕事はするさ 0: 0: ニテラ:こうやって3人で動いていると、前の任務を思い出しますね ニテラ:最後は、いつでしたっけ……そう アングイス:前の探索任務? ニテラ:そうそう、それ アングイス:パイセン暇そうだったもんな アングイス:まー分からないこと、ないけど 迅雷:… 0: 0: 0:一週間前 ニテラ:これと、これ……でっと 迅雷:… アングイス:あのさ。パイセン、仕事してくれない? 迅雷:…3人も必要か、この任務? アングイス:暇つぶしには最適じゃない? アングイス:それに、僕たちがこれで働けば働くほど、もっと暇になりそうだし ニテラ:「魔素」の制御装置の生産量を増やすために、砂漠なり廃墟なりにある、鉄や鉱石の塊をとってくる……不思議ですね。こんな無機物一つで、私達と同じ機械人形が生まれるんですから アングイス:何と戦おうとしてるんだろうね、政府って ニテラ:西の都市にあるカサドラだったっけ? そこを制圧して管理するために、準備しているのは聞いたことあるわね アングイス:でも、相手は人間ばっかりなのに、そんなに必要ないでしょ ニテラ:それとも、ほら、前にラオさんが言っていた…昔の化物の話 アングイス:ティリスト…イレス…だっけ? ニテラ:正解、アングえらいえらい アングイス:と、唐突になでるなよ ニテラ:それと同じ化物が現れてもいいように、アンドロイドを今から量産している、と私は推理してみます アングイス:なにそれ、おとぎ話にびびってるってこと? ニテラ:でも、ネムズってその、ティリスト・イレスとの戦いがきっかけで生まれた組織なんでしょ? それだったら、分からない事はない気もするけど アングイス:コスト使いすぎっしょ アングイス:ヒヤヒヤして手を出しすぎると、もっと追い込まれるじゃん ニテラ:ゲームも同じっていいたいのね? アングイス:良く分かっていることで 迅雷:仕事を続けるぞ アングイス:あ、パイセン。僕らがだべってるのを逆手にとって、自分仕事してるアピールしようとしてない? 迅雷:お前達が話し込んでいたら、いつまでたってもまとまらないだけだ ニテラ:厄介者扱いしないでくださいよ~ アングイス:さっきまで仕事してなかったのはどっちなんだか ニテラ:アングも結構サボってる時あるけどねー アングイス:手を抜いて仕事したほうがラクじゃん、実際 アングイス:どうせ、生かされてるだけの僕らなんだから ニテラ:…それは、ちょっとどうかと思うけど ニテラ:活かされてるなら、活かされてるなりにもっと、こうワンダフルにふるまってもいいのに アングイス:それはニテラじゃん アングイス:僕はそういうくだらないことはしないの ニテラ:くだらないって、そういう所は迅雷先輩と同じなのね アングイス:別に、パイセンと一緒じゃないし アングイス:パイセンはめんどくさいだけ ニテラ:アング、最近、先輩に対してちょっとツンケンしてるよね、なんかあった? アングイス:そう? 勘違いじゃない? ニテラ:ゲームしてくれないから? アングイス:…っ。は、はぁ? ニテラ:図星っぽいね~ 迅雷:…… ニテラ:迅雷先輩は私達の中で一番年上なんだから、下の面倒は見てくれないと、困りますよ~プンプン アングイス:…いや、別に困らないし 迅雷:…あまり、遊ぶという感覚が分からない 迅雷:俺と遊んだところで、アングイスにメリットはないだろう アングイス:……そういうことじゃ、ないんだけどな 迅雷:? アングイス:…何でもない アングイス:さ、仕事仕事 0: 0: 迅雷:……そういえば、そうだったな 迅雷:……アング アングイス:…? 迅雷:……この任務が終わったら、やるか アングイス:…な、なんだよ急に ニテラ:よし! じゃあ、3人でがんばろ! 迅雷:とっとと行くぞ ニテラ:はーい! ニテラ:良かったね、アング アングイス:うるさい 0:迅雷たちは第3地区を進む 迅雷:……建物の被害、およそ60%か ニテラ:… アングイス:ニテラ? ニテラ:…いいものじゃないね、こういうの ニテラ:アングイスは、どう? アングイス:…さぁ。よくわからない ニテラ:そう、よね。機械は壊れるだけ、だもんね ニテラ:…怖いなぁ、それって 迅雷:壊れはしない アングイス:パイセン? 迅雷:俺の仲間である以上、それはない ニテラ:……先輩 0: ラオ:熱いねぇ… カツラギ:随分と楽しそうだな ラオ:それもそうさ、迅雷君も、僕が造ったんだ カツラギ:その傑作たるゆえん、実力を見れるといいがな ラオ:…彼の持つ「雷神剣(らいじんけん)」は、感情に対して反応する カツラギ:…適応者、と呼んでいたな ラオ:そう。あれを使うには、機械であることと、人間であることが条件 ラオ:彼は、アンドロイド以上の結果をもたらすだろう カツラギ:他の二人は役に立たないと ラオ:君から見れば、どうだね? カツラギ:アンドロイドとの訓練データからみても、戦闘能力として、アングイスは上々だ カツラギ:ニテラに関しては、少々心配な部分はあるが…サポートとしては適切な能力値だ ラオ:……評価ができていることで 0: 迅雷:……? アングイス:……あれって? ニテラ:っ! 迅雷:他のアンドロイド…! カツラギ:……先発部隊 カツラギ:君たちより先に向かわせた、アンドロイドだ ラオ:これはこれは ラオ:四肢(しし)をもぎ取られているな ラオ:デクノボウは思っている以上に狂暴らしい ニテラ:……っ 迅雷:大丈夫か? ニテラ:…あはは、ごめん。先輩 ニテラ:震えちゃってるよ、私 アングイス:……震える事なんてないよ アングイス:…こいつらだって、別に恐怖を感じていない アングイス:…ただ、壊れただけなんだから 迅雷:アングイス アングイス:……ごめん 0: ラオ:ニテラが震えるか、無理もない ラオ:感情を植え付けているアンドロイドだからね カツラギ:……特別に感情をインストールした個体 カツラギ:……人間のようだな ラオ:あれ? おかしいな ラオ:機械嫌いのはずじゃなかったのかい? カツラギ:…彼女がああまで気持ちが変わるとは思っていなかったさ カツラギ:普段は皮を被ったような笑顔だったが、私の見間違いだったか 0: ニテラ:平気なのすごいね、アングイス ニテラ:機械は機械って考えてみようって思ったけど、やっぱり無理だ、私は アングイス:…ニテラは、ニテラだよ ニテラ:ううん、機械は、機械。あんなにガラクタのように積まれているのをみて、改めて思った ニテラ:結局、私もニテラという名前がついているだけの存在、なのかもね アングイス:…いや、それは 迅雷:恐怖心は、生存本能には欠かせない 迅雷:それがあることで、生き延びようとする ニテラ:…? アングイス:パイセン… 迅雷:実際に、生存する確率はあがるデータはある 迅雷:ただの検索結果だ ニテラ:はは ニテラ:さすが、検索大先輩。頼りになります 迅雷:…行くぞ 迅雷:…同胞の仇はとる 0: カツラギ:…本当に、変わった奴だ カツラギ:唯一の「人間」が混ざった機械が、アンドロイドの事を、同胞と呼ぶとは ラオ:やはり…… ラオ:彼は、素質があるな カツラギ:何? ラオ:いやいや ラオ:興味深くてね。彼の奥底にあるものが 0: 迅雷:…! ニテラ:あれは、デクノボウ…! カツラギ:各体、武器を展開しろ 迅雷:…戦闘モード起動 迅雷:戦闘バッテリ―消費予測、10% ニテラ:敵行動予測、戦闘データと照合完了 アングイス:予測曲線の変化、5% アングイス:……やれる カツラギ:迅雷は前面の敵を、アングイスは両脇を片付けろ。 カツラギ:ニテラは二人の死角を警戒。サポートに入れ ニテラ:了解! 迅雷:これより、攻撃を開始する 0:迅雷は剣を抜いた 迅雷:邪魔だッ! アングイス:攻撃パターンは、アンドロイドの訓練と同様! アングイス:とっとと片付けるっての! 迅雷:! 後ろ!? ニテラ:除去コード 05(ぜろご)! ニテラ:「ロールバッシュ」! 迅雷:…すまない ニテラ:サポート完璧でしょ、今の動き? アングイス:こっちも頼むよ、ニテラ ニテラ:分かってるわ! 0: カツラギ:…連携に問題なし。順調だ ラオ:……デクノボウ ラオ:ティリスト・イレスが操っていた木の人形 カツラギ:……古代の大樹の話か ラオ:TIはそれを再現した兵器だったが、こうも似ているとはな ラオ:我ながら驚きだよ カツラギ:…恐ろしいものを作る カツラギ:奴らを残らず消し去るにはどうすればいい ラオ:それは、本体を倒さないとね。奴らは湧いて出てくるから 0: 迅雷:敵掃討、完了 アングイス:周囲に……敵は…っ!? 迅雷:……ニテラ? ニテラ:……あ… アングイス:!? デクノボウ…!? 0:ニテラの後ろで、デクノボウが腕を鋭い剣に変えて、彼女を刺していた カツラギ:何!? ラオ:ただ…強い個体がこうも現れるとは、思っていなかったがね。デクノボウも成長をしている、ということか 0: 迅雷:っ!! ニテラ:あ……あ……ぁ アングイス:…ニ、ニテラ…! カツラギ:迅雷!! 迅雷:っ! ニテラから離れろ!!! ニテラ:……っ…… 0:迅雷は、ニテラを刺していたデクノボウをはがした アングイス:……あ、あ ニテラ:…ありがとう、ございます アングイス:…こいつ…! アングイス:…くそが! アングイス:…死ね! 死ねよ! 死ねよお前!! 迅雷:アングイス!! アングイス:っ! 迅雷:…デクノボウの反応は消えた ニテラ:……先輩 ニテラ:ごめん…なさい 迅雷:……っ ニテラ:……アング…… アングイス:い、嫌だ……ニテラ…そんな ニテラ:は……はは ニテラ:らしく…ない…よ? アング 0:ニテラはアングの頬に手を添えた ニテラ:…せん……ぱい ニテラ:…壊れるって……こんな感じ……なんですね アングイス:…っ……ぁ ニテラ:…まだ…みんなと ニテラ:…楽しく……過ごしたかっ…… 0:ニテラの意識が消滅し、体が人形のようにうなだれた アングイス:…パイセン アングイス:…ニテラの アングイス:…ニテラの反応は 迅雷:……消えた アングイス:…っ……そうだよ……消えた アングイス:……ニテラは、消えて……壊れた…だけ…なんだ アングイス:……っ……ぁ 迅雷:…… 0: カツラギ:ニテラ…… ラオ:はは…面白いな… ラオ:彼女の死が、取り残されたサイボーグと、アンドロイドの情を刺激するか… ラオ:感情のあるあの子がもたらした、面白い反応だ カツラギ:…口を閉じろ、ラオ ラオ:……やはり ラオ:機械嫌いって嘘っぱちだね、カツラギ君 カツラギ:……迅雷、聞こえるか 0: 迅雷:……ああ カツラギ:TIはまだ消滅していない カツラギ:デクノボウは、奴を倒さない限り、無限に現れ続ける 迅雷:やることは変わらない 迅雷:…アングイス アングイス:…… 迅雷:行くぞ アングイス:……了解 0: 0: 迅雷:……目標(ターゲット)、発見 アングイス:……TI ラオ:見れば見るほど、大きいな。迅雷君たちの視界データを介しても、迫力は段違いだ ラオ:作戦前にも言ったが、TIの幹の中に「核」がある、それを壊せば、僕たちの勝利だ ラオ:TIに敗れたアンドロイドのデータも、ネムズのサーバーに随時転送している ラオ:死者の遺言は引き継がないとね カツラギ:TIに壊されたアンドロイドは、君たちの目然に広がっている カツラギ:僅かの時間に、これだけの数が破壊された。 カツラギ:それに比例して、TIのデータの蓄積量も増えている。有効に使え 迅雷:敵行動予測再確認。雷神剣の電力チャージ開始……。 迅雷:ネムズからTIのデータをインストール 迅雷:……完了 迅雷:敵の攻撃パターン、分析。…予測曲線の変化率、50% 迅雷:損傷率、80% 迅雷:…最適解は既に決まっている アングイス:……そっか 迅雷:どうした? アングイス:……今になってわかったよ アングイス:怒るって感覚 迅雷:… アングイス:TIは、必ず殺すよ カツラギ:迅雷、アングイス、頼むぞ カツラギ:…作戦時刻1400(ひとよんまるまる)。これよりTI本体への攻撃を始める! 迅雷:……行くぞ、TI! 0:TIの蔓攻撃が飛んでくる 迅雷:お前の攻撃パターンは既に分析している、無駄だ! アングイス:その蔓(つる)、邪魔なんだよ! カツラギ:敵ダメージ予測50%! 迅雷、アングイス、その調子だ。 ペースを崩すな! 迅雷:TIの攻撃、おおよそ98%予測。全て正確に回避。異常は見られない。 迅雷:このまま行けば、奴の破壊は造作もない!! ラオ:98%……素晴らしい、素晴らしい数値だ、迅雷君 アングイス:斬り尽くしてやる!! アングイス:除去コード06(ぜろ ろく)「スケイルラージ」! 0:アングイスが二刀で一気にTIへ斬りこんだ アングイス:はぁぁぁっ! カツラギ:TIの外殻(がいかく)がはがれた…! ラオ:除去コードのモーション練度も高い……アングイスも見事だね アングイス:外側は破壊した! あとは核を! …? カツラギ:!? 蔓(つる)を集結させた!?  アングイス:…! しまっ…… 0:アングイスが反応に遅れ、攻撃を受けてしまう カツラギ:! アングイス! アングイス:あっ……が… 迅雷:除去コード 045(ぜろ よん ご)! 迅雷:天雷一閃(てんらいいっせん)! 0:雷を纏わせた迅雷の攻撃がTIを貫き、動きが止まった 迅雷:アングイス…ッ! アングイス:パイ…セン…… アングイス:…パイ…セン アングイス:ミス…った… 迅雷:喋るな! 迅雷:カツラギ! アングイスの損傷度は!? カツラギ:……100%を超えている ラオ:あの一瞬で……攻撃予測を上回るとは…… ラオ:なるほど……データでは測れない領域にいる、存在という事か、TIは… 迅雷:……! アングイス:……はは。ごめん、パイ……セン アングイス:ニテラが死んで…分かった アングイス:僕は、……いなくなるのが、淋(さみ)しかっただけ…なんだって アングイス:その気持ちを……気まぐれに、ごまかしてた 迅雷:……お前 アングイス:こうやってみると……パイセンって……お兄さん…みたいで… アングイス:機械の体なのに、あったかいな… 迅雷:… アングイス:…そっか、僕、やっぱり… アングイス:……はは アングイス:欲しかったんだね…そういうのが 迅雷:…っ! アングイス:…パイセン、嬉しかった アングイス:帰ったら、ゲームしようって言ってくれて アングイス:…はぁ、惜しいなぁ アングイス:…一緒に、出来なくて… 0:アングイスの腕から力が消えた 迅雷:………… カツラギ:アングイスの生体反応……停止 ラオ:ただ、アングイス君の戦闘データも保存はされた。TIには対処しやすくなった 迅雷:……了解 迅雷:戦闘データ、インストール 迅雷:…… 迅雷:……完了 0:迅雷は、アングイスの空いた目を伏せる 0:自身の拳を強く握り、雷神剣に手を伸ばす 迅雷:あとは……TIの核を破壊するのみだ……! 0:そこで、TIの幹の部分から割れるような音が鳴る カツラギ:なんだ……? TIの中から、何かが出てくる? ラオ:クク… カツラギ:油断をするな、迅雷! 迅雷:分かっている…! 迅雷:……? あれは…幹の中から……少女? 0:TIの幹の中から、巨大な花が出てくる。その花の中央部には、少女が居た ヒナミ:ハル! 0:  0:  迅雷:っ!!!!ぐっ?!あっ……!がぁ……! カツラギ:どうした! 迅雷!! 迅雷:なんだ……この……痛み……は!? 迅雷:……TIの、攻撃!? ……いや、これも……検索結果には……ない……!? 迅雷:俺の、頭に……何が……!? 迅雷:……が、があああッ! カツラギ:!? 迅雷の脳に大きな……損傷ダメージ!? 致命的な欠陥はなかったはず……そのはずだ カツラギ:……待て  カツラギ:なんだ……これは? カツラギ:迅雷の脳から……ダメージが「生まれて」いるだと? ラオ:はは、ははは! カツラギ:これは一体どういうことだ…ラオっ…! ラオ:落ち着けよ、カツラギ君 カツラギ:…っ! ラオ:痛いじゃないか、そんなに掴んだら ラオ:僕は機械じゃないんだ、もう少し優しく扱ってほしいんだがね カツラギ:状況を分かっているのか! ラオ:何事にも真剣になりすぎだ ラオ:そんな掴みかかってきてさぁ ラオ:君のそういうところ嫌いなんだよ僕 カツラギ:…お前! ラオ:何も考えずに従い、ぬるい檻(おり)で威勢よく生きてるその感じが ラオ:古臭いんだよ、君さ カツラギ:…答えろ、ラオ。…TIの核が、人間などと聞いていない! ラオ:それがTIの正体だよ ラオ:まぁ…無理もないか。それを知ってるのは僕と、政府の一部の上層部だけ ラオ:古代に存在していた大樹…ティリスト・イレスは、元は1人の少女だった ラオ:だから、その人間で出来ているのだよ ラオ:あれは、ティリスト・イレスの末裔(まつえい)だ カツラギ:…なに!? ラオ:あれについては研究していたが、よもやその末裔(まつえい)が見つかるなどと思っていなかったからね……運命とは不思議なものだ…そして、その結末もね……はは カツラギ:…なぜ、私には何も知らされて…… ラオ:それは君が、都合のいい道具だからだ、カツラギ君 ラオ:…僕と同じように カツラギ:…? ラオ:さて、迅雷君……君は、どうするかな? 0:頭が割れる感覚と、激しい感情に迅雷は襲われる 迅雷:……あ、あぁ、あ…………ぁぁあ……あ。 迅雷:ヒ、ヒナ…………ミ……? 迅雷:ぐっ、ああああぁぁああああああああああ!! 0:     ヒナミ:ハル 0:   迅雷:辞めろ……辞めろ!! 迅雷:その声で……その名前で、俺を呼ぶなあああっ!! 0:     ヒナミ:ハル 0:   迅雷:黙れ……黙れ……黙れええええええええ! 0: ハル:…… ヒナミ:ハル、今日は眠たそう ハル:……さすがに君が飛んでるところみたばかりだしさ ヒナミ:あはは~ごめんごめん。でも、ハルに見てもらえてよかった ハル:てっきり何か見つけただけかと思ってたよ ヒナミ:それが実は ハル:魔法のように飛べるなんて、誰も思わないでしょ ヒナミ:そうよね~。 ハル:…… ヒナミ:ねぇ、ハル ハル:ん? ヒナミ:白い大樹の話、覚えてる? ハル:うん ヒナミ:……もしさ。もし、私が、その大樹になったらさ ハル:ヒナミ? ヒナミ:聞いて。 ハル:…… ヒナミ:白い大樹は、特殊な力を持った人間の慣れの果て ヒナミ:分かるんだ、私の中に居る「化物」が、そう伝えてきてる ハル:… ヒナミ:……もし、自分がそうなって、村の人たちを……殺したらと思うと……体が震えちゃうんだ ヒナミ:……ねぇ、どうしよう。私、もうこのまま、どこかに飛んで行って……居なくなった方がいいのかな…… ハル:……そんなことにはさせない ヒナミ:……ハル? ハル:ヒナミが化物になる未来なんて、まだ決まってない。 ヒナミ:でも、私は! ハル:勝手に決めちゃいけない。決めてしまったら、ほんとにそうなっちゃう。だから、僕が変える ヒナミ:……! ハル:…ヒナミがそうならないように、助ける方法を考える。白い大樹になったとしても、そこから人間に戻る方法だってあるはずだ ヒナミ:ハル…… ハル:僕は、必ずヒナミを救う。 ヒナミ:…。なんか、まるで昔のナイト様みたいだね、ハルって ハル:なんでも、構わないさ ハル:だから、化物になっても大丈夫。大丈夫だから。 ハル:絶対に、僕がヒナミを助けるから ヒナミ:……うん。 ヒナミ:……ありがとう、ハル。 0: ニテラ:せーんぱい 迅雷:なんだ? ニテラ:好きです 迅雷:どういうことだ? アングイス:ニ、ニテラ? ニテラ:あ、でもあれですよ。ラブじゃなくて、ライクのほう 迅雷:… アングイス:…そっか ニテラ:あれ? どしたの?アング アングイス:いや。ニテラがまた変なことを言ってるなーって 迅雷:変、というよりは、理解ができないことだ ニテラ:えー 迅雷:それを言った所でどうなる? ニテラ:だーかーら、そうじゃないのにぃ……ってまだ先輩には早いのかもですね アングイス:……別に早くなくていいんだけど ニテラ:そんなこと言ったら、先輩可哀想でしょ、アング 迅雷:俺の成長速度は、成人男性と変わらない ニテラ:はいはいロジカルシンキングオタク~。今日も最適解ご苦労様でーす アングイス:ロジカルシンキングオタクは草 迅雷:馬鹿にしていると分析した アングイス:早速オタクぶりを発揮 ニテラ:馬鹿にされてるって自覚があるの、面白いですよね、先輩 ニテラ:でも、いつか分かりますよ 迅雷:「好き」という感情が、か? ニテラ:はい ニテラ:だから、いつでも言いますよ ニテラ:私は、先輩が、好きですって ニテラ:…といっても、これもインストールされた感情でしかないんだけど アングイス:結局、政府が造ったデータじゃん ニテラ:でも、それじゃ、つまんないよ アングイス:? ニテラ:私の感情でありたいじゃない 迅雷:私の、感情……。 ニテラ:確かに人から与えられた、プロットで出来た感情かもしれない。でも私は、これが好き ニテラ:毎日心が躍りそうで、先輩のこといじったり、お話したり、こういう時間を楽しいと思える、この「感情」が ニテラ:もちろん、私だけじゃなくて、アングも…先輩も ニテラ:その感情の動きが「好き」なんです 迅雷:……よく、分からないな ニテラ:先輩ならわかりますよ ニテラ:じゃあ、先に訓練行ってますね~! 迅雷:… アングイス:…感情なんて、分からないよ、ニテラ アングイス:このゲームの中にいるキャラと変わらない アングイス:…僕も、造られたキャラの一人 アングイス:…でも 迅雷:…?  アングイス:……キャラクターでも…その、楽しさは、共有できるのかな、と思ったこともあって アングイス:……だからさ、パイセン アングイス:今度…一緒に…ゲー(ムを) 迅雷:(かぶせて言う)訓練の時間だ、行くぞ アングイス:…。あっそ 0: アングイス:そういうところ、変わんないね、パイセンは 0: 迅雷:…アングイス 0: ニテラ:またコーヒー、飲みましょ、先輩 0: 迅雷:ニテラ…… 0: 迅雷:俺は…お前たちを……救えなくて… 0: 0: 迅雷:…だから……俺は…… 迅雷:ニテラと…アングイスを……救…って 迅雷:TIを……ヒナ…ミを…殺し…て… 迅雷:……救って……殺して 迅雷:……救って……殺して…… 迅雷:だから…… 0: ヒナミ:ありがとう、ハル 0: 迅雷:が、が…ああ……あ 0: 迅雷:ああああああああああああああああっ!!! 0: 0: 0: 迅雷:……俺の 0: 0: 迅雷:……俺の……最適解……は 0: 迅雷:…はは……はははは……ははは! 0: 0: 迅雷:はははははははは! ヒナミ:……ハル? 0: カツラギ:迅雷!  迅雷:……っ 0:迅雷は、TIの蔓(つる)による攻撃を一気に切り伏せた ラオ:…ほう、一撃で! 0:そして、強く、機械の手が壊れるほどに、雷神剣を握る 0:それと同時に、迅雷の口から、笑みがこぼれおちた 迅雷:…はは……はははは 迅雷:はははははははは!! はははははははははは!! カツラギ:…! 雷神剣のエネルギーが…大幅に、上昇している 迅雷:…「魔素」…転換! 迅雷:……雷神剣。電力エネルギーチャージ、開始…! ラオ:そう…そうだ。それでいい! ラオ:その人間としての「感情」が、雷神剣の出力を上げる…! ラオ:それが君の力だよ…! 迅雷君! 迅雷:ははは…はは…ははは 迅雷:TI… 迅雷:…俺の 迅雷:俺の最適解は…… 迅雷:貴様を…殺すことだ!! 迅雷:殺して……すく…って 迅雷:ヒナ…ミを…ころ…して…ニテラも…アングイスも…救って! 迅雷:だから…ヤツを…殺す!! 迅雷:はは……ははははは! 迅雷:ははははははっ!!!!! カツラギ:出力が規定値を… カツラギ:……雷神剣…これが、神器(じんぎ)の力 ラオ:…この力、クク ラオ:古代のナイトに、強大な実力を持っている人間がいると聞いたことがあるが ラオ:まるで、そのナイトのようだ 0: 迅雷:チャージスロット、リミッター解除! 迅雷:雷神剣、フルチャージ! 迅雷:電力エネルギーフル解放! 迅雷:殺す……殺す……! 迅雷:殺して……救って…殺してやる!  迅雷:TI……!貴様を……殺す!! 迅雷:除去コード111(イチ イチ イチ)!! 迅雷:雷極刃覇衝(らいごくじんはしょう)!! 迅雷:あああアあアアアああああアあああああああああっッ!!!! 0:迅雷は大きく雷神剣をふるった。 0:空から降り注ぐ「雷」が落ちるように、TIが縦に切り裂かれた 0:雷鳴が、辺りに響き渡る 0: カツラギ:…終わった、のか ラオ:…見てみろ ラオ:…TIは見事に、粉々だ。素晴らしい カツラギ:… 0: 0:ふわり、ふわりと 0:上半身が破ける、宙に浮いた少女は、涙を流しながら、迅雷を見た ヒナミ:ハ…ル…… 0:少女は砂のように消え、TIは崩れていった 0: 0:迅雷は笑う 0:笑った後、彼は頭を抱え、嗚咽(おえつ)を漏らした。 迅雷:は、ははは…ははっ、はは、あ……あっ……あ、ぁぁ…ああ…あ…ぁ……ぁぁ 0:  カツラギ:…… 迅雷:…カツラギ 迅雷:聞きたいことがある カツラギ:…なんだ? 迅雷:……俺は、誰なんだ 迅雷:ハルとは、なんだ カツラギ:…私にも、分からない 迅雷:なら、この感覚はなんだ?? 迅雷:敵は倒した 迅雷:ニテラや、アングイス。同胞の仇はうった……なのに…なのに… 迅雷:……最適解じゃない 迅雷:最適解じゃないと、俺の頭が否定してくるんだよ 迅雷:もう気持ち悪くて、仕方がないんだ ラオ:君は、街を救った英雄さ ラオ:その事実は覆らない ラオ:そうだろう、カツラギ君 カツラギ:…迅雷 カツラギ:この件に関しては、まだ不透明なことが多い カツラギ:ただ、まずは戻ってこい カツラギ:メンテナンスが必要だろう 迅雷:…了解した 0: 0:数時間後 0:ネムズの政府本拠地から離れた街の路地 カツラギ:… ラオ:おや、カツラギ君 ラオ:呼び出しておいて銃を向けるなんて…何のつもりだい? ラオ:それとも、排除の命令でも下ったかな? カツラギ:あれは、なんだ? ラオ:なんだと思う? カツラギ:…迅雷のあの様子は、普通じゃない カツラギ:TIの中に居た少女と、何らかの関係がある カツラギ:お前は、それを分かっていて、迅雷を作った。違うか? ラオ:…僕は ラオ:盗られただけだ カツラギ:何? ラオ:その結末が、あれだったということさ ラオ:でも、見事なものだった。僕があれを造ったと思うと、心地のいい感覚を覚える カツラギ:その過程を詳しく聞きたいところだ、ラオ カツラギ:ただ、同行しないのあれば、排除するしかない。それが命令だ ラオ:飼われているね、君は カツラギ:何度でも言え ラオ:どうとも思わないのかい? ネムズに対して? カツラギ:…… カツラギ:お前にそれを答えたところで、何もない ラオ:本当に堅物だな、君は。まるで機械のようで ラオ:つまらないよ カツラギ:…それで、どうするんだ? ラオ:よほど疑われているようだね、僕は 0:ラオが宙から、何かレーザーのようなものを放った カツラギ:っ!? 0:カツラギは物陰に隠れ、もう一度銃を向けようとしたが、ラオはいなかった カツラギ:…逃げられたか… 0:2ヶ月後 迅雷:…… カツラギ:調子はどうだ? 迅雷:視界良好。魔素の転換装置、および電力エネルギーに問題はない カツラギ:よし 迅雷:… カツラギ:そっちの傷は癒えたか? 迅雷:もう二か月前の話だ 迅雷:それに俺は、サイボーグだ カツラギ:それでも カツラギ:お前には人間の部分がある、そうだろ 迅雷:…随分丸くなったな、カツラギ カツラギ:いや…そもそも丸かったのかもな 迅雷:? カツラギ:誰かを失うことを恐れて、私は壁を作った カツラギ:これ以上、失いたくはない。その気持ちが、私を固くしてしまった カツラギ:必要以上に干渉してしまえば、事を仕損じてしまうと、長らく思っていたのかもな… カツラギ:大切なものが近くにある時に限って気づかない カツラギ:鈍感な人間だよ、私は 迅雷:…… 迅雷:それも、カツラギのいい部分だと分析する カツラギ:分析ではなくて、慰(なぐさ)めじゃないか? それは カツラギ:人間らしいことをするな、サイボーグ カツラギ:…これから、お前には西にある都市カサドラへ向かってもらう カツラギ:目標は、ラオの排除 カツラギ:ネムズからの命令だ 迅雷:……ラオ 迅雷:……TIを作り出したのも、俺を作ったのも、奴だ カツラギ:2か月前の討伐戦で終わりではない、ということだ カツラギ:ラオの足取りはカサドラだと掴めているが、都市の何処にいるかはわからない カツラギ:…本当は奴を掴まえて聞き出したいところだが、政府が排除と判断した以上、それに従わざるをえない カツラギ:…また、今回の任務に関しては、お前に全ての行動権をゆだねる カツラギ:必要最低限の報告のみでとどめろ 迅雷:……了解した 0:ふと、迅雷は自分を手を見やった 迅雷:… カツラギ:どうした? 迅雷:…TIを斬ってから、手が震えるようになった。それだけの事だ カツラギ:…「政府の犬になった覚えはない」といったのは、どこのだれかね? 迅雷:っ? カツラギ:君が野生の動物なら、震える前に、人間へ牙をむく カツラギ:いや、昔に存在していた、魔物に例えてもいいのかもしれないな 迅雷:……俺は機械だ 迅雷:野生の動物ではない カツラギ:その口のきき方が出来れば、問題はない カツラギ:いつものように、私に突っかかる心意気があれば、今回の任務も問題はない カツラギ:お前なりの答えは、おそらく見つかる 迅雷:……答えといえば、ラオの研究所から何か見つかったのか? カツラギ:いや、データベースはひととおり洗ったが消されている カツラギ:復元作業にとりかかっているが、まだまだ時間はかかる 迅雷:そうか 迅雷:……俺のミスで、ニテラも、アングイスも、失った カツラギ:…デクノボウにしろ、TIにしろ、予想を上回るものだった。未知は常に、我々を凌駕(りょうが)してくる カツラギ:…それに対応できなかった私の失態だ カツラギ:お前が責任を負う必要はない 迅雷:…… カツラギ:…飛行機能はどうだ? 重たいか? 迅雷:……いや、問題ない カツラギ:お前からその機能をつけたいと聞いた時は驚いた カツラギ:ニテラやアングイスが聞けば、なんというだろうな 迅雷:…カサドラについて検索をかけたが 迅雷:どうにも、殺し屋など、裏社会の人間が多いと聞いた 迅雷:ネムズの都市よりは危険度は上だと、容易に推測できる カツラギ:カサドラか… カツラギ:…ネムズ管轄の都市とは違い、アンドロイド技術は発展していない、時代が遅れている都市だ カツラギ:それでも、警戒はおこたるな 迅雷:…これより、カサドラへと向かう カツラギ:ああ。健闘を祈る 0:迅雷は空へと飛び、目的地へ向かった 迅雷:これが、空を飛ぶ感覚……か 迅雷:……悪くはないな 0: