台本概要
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タイトル | 幽世アフターストーリー「サマータイム・バケーション」 |
---|---|
作者名 | ハスキ (@e8E3z1ze9Yecxs2) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
シナリオ「 幽世」のアフターストーリー。主人公の悟(さとる)は歳の離れた妹の神楽(かぐら)が大好きなシスコン兄だった。幸せそうな兄弟だったが、辛い過去を持っていた。それは妹の神楽のある不思議な力が原因だった…。 男女不問、世界観を壊さない程度のアドリブOK! 177 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
悟 | 男 | 115 | 悟(さとる)男。妹の神楽の兄。歳の離れた妹が大好きなシスコン兄。ノリと勢いで生きている。ボケ気質。 |
神 | 女 | 101 | 神楽(かぐら)女。子供の時から不思議な力を持って生まれた少女。いい加減な兄を持ち日々振り回されるも実はブラコン。不幸な生い立ちに負けない強い心の持ち主。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
神:兄者ー!
悟:うーん⋯
神:兄者ー!起きろー!起きんか~!
悟:う、う~ん、後五時間⋯
神:こら!何が後、五時間じゃ!そこは普通、五分とかじゃろ!
悟:じゃあ、あと五分⋯
神:今絶対起きとったじゃろ!?まったく今何時だと思っとる!早くせんと昼を回ってしまうであろうが!
悟:はっ!
悟:あ、あれ?神楽(かぐら)⋯?
神:やっと起きたか
悟:な、なんで神楽(かぐら)が起こしに来たんだ?今日、俺休みの日だったよな?
神:何を言っておる、今は夏休みなのだから当たり前じゃろ
悟:そうだった⋯明日も学校休みじゃん⋯よし、寝よう
神:こらー!また寝ようとするな!
悟:痛!ちょ、神楽、お腹蹴っちゃ駄目!ぐはっ!
神:どうじゃ?起きる気になったかの?
悟:はい⋯痛みで目覚めもバッチリです⋯
神:よし、ではさっさと起きて行く準備をするのじゃ
悟:ん?行く準備⋯?
神:は~⋯。わしとの約束、忘れておろう?
悟:約束⋯
神:⋯
悟:お、おー!そうだった!今週の休みは予定無いから虫取りに連れてってやる予定だったな!も、もちろん覚えてるぞ~?
神:ほーん⋯?
悟:⋯すみません、完全に忘れてました
神:はぁ⋯どうせそんな事だろうと思っておったわ
悟:す、すまないな神楽
神:まったく⋯せっかく楽しみにしておったと言うのに⋯
悟:え?今何て?
神:な、なんでもないわ!
悟:しかし神楽、小学校高学年になってまで、虫取りって楽しいのか?
神:いいんじゃよ、わしが昔からずっと虫取りが好きなんじゃから
悟:⋯いったい何が、神楽をそこまで突き動かしてるのか、謎だな⋯
神:ほれ、早く着替えて、降りて来るんじゃ!
悟:あ、神楽、ちょっといいか?
神:なんじゃ?
悟:いや⋯その喋り方、なんとかならないのか?
神:何か問題でもあるのか?
悟:なんか、ジジくさいと言うか⋯
神:兄者は知らんのか?最近小学校で流行ってる、「のじゃ魔女」を
悟:いや、何それ?
神:のじゃロリっ子?とか言う、可愛い魔法少女が出てくる、大人気アニメなのじゃ
悟:だ、だからそんな変な喋り方なのか⋯
神:この喋り方、可愛いじゃろ?学校の友達なぞ、みんな真似してるんじゃぞ?
悟:いや、どんなクラスだよ!?今の小学生の可愛いの基準、絶対おかしいって!
神:そんな事より、早く降りて来るんじゃぞ
悟:あっ、神楽!
悟:⋯行っちまったか
悟:兄として、アレは直させるべきなのか、悩むな⋯
:間
神:お、やっと来おったな、待ちくたびれたぞ
悟:悪い悪い。ん?なんかいい匂いだな?
神:ほれ、朝ごはんじゃ
悟:お!これ、もしかして神楽が作ったのか!?
神:そりゃそうじゃ、母も父も今は海外旅行中じゃからな、わし以外に誰が作るんじゃ
悟:うお~、これまた美味そうだな~
悟:神楽、また料理の腕上げたな~。⋯こうやってまた一つ、大人になって行くんだな⋯お兄ちゃん寂しい(涙目)
神:またそうやって、なんでもかんでもすぐ泣きおる。相変わらず、兄者は泣き虫じゃなー
悟:神楽~、お兄ちゃんを置いて勝手に成長しないでくれよ?お兄ちゃん、お前の成長する姿を見ていくのが生きがいなんだからな~!?
神:え~い!寄るでない!暑苦しいー!
悟:ええ~⋯、兄妹なんだから、良いだろ〜?
神:わ・し・が!良くないんじゃ!まったく、そのシスコンっぷりも大概(たいがい)にせんか!
悟:はーい⋯
悟:しかし⋯母さん達も、俺たちを置いて海外旅行行くなんて、ズルいよなー
神:仕方なかろう?父も母も、出来ちゃった婚とか?で、結婚式も、新婚旅行もしてないと言っておったみたいだからの
悟:あー⋯。俺が生まれたから、だったな⋯
悟:確かに、母さんの父さん、爺さんは怖い人だったし、大変だったんだろうな⋯
神:そうだったのか?最近はわしが会いに行ったら必ずお小遣いくれるぞ?
悟:⋯俺にはゲンコツしかくれなかったのに。丸くなったな、爺さん。
悟:なら、夫婦水入らず、新婚旅行気分で、楽しんで来てもらうとするか
神:うむ、わしらをここまで元気に育ててくれた分、ぜひゆっくりして来てもらうとしよう
悟:だな。お、この卵焼き美味いな!このレンコンの煮物もダシが効いてる、将来はいいお嫁さんになるぞ~
神:そ、そうか⋯。まあ、口に合ったようで良かったぞ⋯
悟:うん、これなら間違いなく、嫁の貰い手が⋯嫁、嫁⋯?
神:ん?どうかしたのか?
悟:よ、嫁にはやらんぞーー!
神:はあ~!?
悟:こんな可愛い神楽を何処の馬の骨かも分からない奴に、渡せるか~!
神:お前は父か!まったく、ふざけた事言っとらんで、早く飯を食べんか!
悟:はーい⋯。でも、なんかいいな
神:ん、何がじゃ?
悟:こうやって、何気ない日常を神楽と楽しく過ごせるのは
神:何、年寄りくさい事を言っとるんじゃ
悟:のじゃってる神楽には言われたくないぞ⋯
神:で、なぜ突然そのように思ったんじゃ?
悟:え?あー、なんでだろ、ふと、そう思ったんだ
神:自分でもよく分からんて顔じゃな
悟:はは、そうだな
神:まあ⋯わしも、分からんでも、ないがな
悟:ん?
神:何気なくて、気が付きにくいが⋯健康で毎日を過ごせる、こういうのを幸せ、と言う奴じゃろうな
悟:神楽⋯ほんとに小学生?
:間
神:あ、兄者⋯
悟:なんだ、我が愛しの妹よ
神:やかましい、黙ってあそこを見ろ
悟:ん?⋯木の上の方で何か動いてるな
神:兄者、兄者!あれが噂のヘラクレスオオカブトなのか!?
悟:へ、ヘラクレスオオカブト~?
神:そうじゃ。キングオブカブトじゃぞ、知らんのか?
悟:いや知ってるけど!こんな日本の田舎に居ないから!?
神:ななっ!なんじゃ⋯おらんのか⋯
悟:あ、い、いや~、ま、待て、他のカブトならいるかもしれないぞ!
神:ほ、ほんとか!?
悟:ああ、この森にはカブト虫が集まるスポットがあるらしいぞー?
神:なぬ!ほんとうか!
悟:ああ!お兄ちゃん、下調べはネットでバッチリしてきたからな。任せとけ!
神:⋯なんぞいまいち頼りにならんが、任せたぞ?
悟:よし、いっちょこの木に登って、神楽にカブト取って来てやるぞ!
神:うむ、頑張るんじゃぞ、兄者!
悟:よーし⋯フンッ!ぬお~!!
神:⋯
悟:ふぬ~!!
神:お、おい⋯
悟:こなくそ~~!!
神:って全然登れてないではないか!?
悟:ふー、神楽よ。お兄ちゃん、運動神経悪いの、すっかり忘れてたよ
神:阿呆(あほ)うか!あれだけ見得を切っといて何しとるんじゃ~!
悟:うぅ⋯不甲斐ないお兄ちゃんで⋯すまない⋯
神:はあ⋯まったく。兄者、そこで見ておけ
悟:え、神楽⋯?いったい何を⋯?
神:む⋯よっ!
悟:か、神楽!木に掴まって何をする気だ!?
神:そりゃ登るに決まっておるだろ?
悟:あ、危ないから、降りて来なさーい!
神:兄者、わしが学校で何と呼ばれてるか知っとるか?
悟:え⋯?な、何て呼ばれてるんだ?
神:木登り名人の⋯神楽ちゃんじゃ!
悟:な、嘘だろ!あんな大きな木を登っていってるだと~!?
神:よし、もう、少し!
悟:よ、よし、神楽、そこだ!行け~!
神:んっ⋯しょ!や、やったぞ兄者~!カブト、取れたぞ~!
悟:うおっしゃ~!!我が愛しのマイシスター神楽!良くやったぞ~!
神:ちゃんと見ておったか兄者!
悟:ああ、バッチリお前の勇姿、この目に焼き付けたからな~!
神:よ、よし、今、兄者にも見せてやるから⋯っ!うわっ!
悟:え?あ、あの馬鹿!
神:う、うわー!落ちる~!!
悟:くっ!神楽ーー!!
:間
神:うぅ⋯
神:あ、あれ⋯?い、痛く⋯ない?
悟:神楽、大丈夫か?
神:あ、兄者⋯?
悟:そうだ、兄だぞ
神:兄者が⋯助けてくれたのか⋯?
悟:ああ、間一髪、滑り込みダイビングキャッチだったな
神:運動神経無いのにか⋯?
悟:そ、そこは⋯愛の力だ
神:なんじゃそれ。でも、ありがとうなのじゃ⋯
悟:それより、あんな場所で、慌てて動いたら駄目だろ?
神:そ、それは⋯早く⋯兄者に、み、見せたくての⋯
悟:うん、その気持ちは嬉しいぞ、ありがとうな
神:うぅ⋯
悟:神楽?
神:こ、こ、怖かったぞ~!
悟:うんうん、怖かったな、よしよし。もう大丈夫だからな
:間
神:しかし⋯この格好は、な、なんとかならんのか⋯?
悟:え?この、お姫様抱っこの事か?
神:そ、そうじゃ!わしが腰を抜かしてるのをいい事に、こ、こんな恥ずかしい格好させおって!
悟:えー?だって、この持ち方の方がなんか、しっくりくると言うか、安心するんだよなー
神:ま、まあ⋯わしもそこまで⋯嫌じゃないがの⋯
悟:おやおや~?急なデレ発動かな~?うちのマイエンジェルシスターは~?
神:調子に乗るな!テイッ!
悟:あ痛ー!ちょっ、神楽、鼻デコピンは反則だぞ~!?
神:ふん、天罰じゃ。
:間
悟:しかし、こんなランチボックスに大量のカブト、入れてて大丈夫なのか⋯?うわっ、なんか、ガサガサ言ってる!?
悟:ちょ、神楽、少し多いから、カブト逃がしてやるか?⋯ん?
神:う、うーん⋯(睡眠中)
悟:あー⋯疲れて寝ちゃったか。まあ、あんだけ朝からテンション高かったら、こうもなるか
神:う、うーん⋯兄者⋯それはレンコンじゃ⋯
悟:ど、どんな夢見てるんだよ⋯
悟:⋯でも、神楽が元気になってくれて、ほんとに良かったな⋯
:少しの間
悟:(N)神楽は生まれつき、不思議な力があった
悟:(N)その力とは、死んだ人の魂、幽霊が見えて、その人と会話が出来ると言うものだった
悟:(N)最初両親も心配してたみたいだが、成長するとそのうち見えなくなると楽観的だった
悟:(N)しかし、残酷な事に、小学校に入ってその事が周りに知られてしまうと、神楽は友達からも変な目で見られるようになり、やがて孤立し、イジメられるようになった
:少しの間
悟:何とか転校してからは、アレも最近は出なくなったようだし、ほんとに良かったよ⋯
悟:あの時の神楽を見てるのは⋯兄としてほんとに辛かったからな⋯
神:兄者⋯
悟:か、神楽!⋯今の、聞いてたのか⋯?
神:うむ⋯
悟:⋯
神:兄者にも心配をかけていたんじゃな⋯
悟:ま、待て!神楽は悪くないだろ!?その力のせいなんだから!
神:そうだが⋯。その力のせいで、引越ししなくてはならなくなったのだろ!
悟:っ!それは神楽を守る為に仕方のない事だったんだ!
神:こんな⋯こんな力なんて、無かったら良かったのじゃ⋯
悟:⋯神楽、その力はきっと、神様がくれた物だと思う。
神:神様⋯?
悟:そうだ。きっと何か意味があって、神楽に備(そな)わった力だと思うんだ。
神:何かの⋯意味?
悟:ああ、そんな不思議な力は誰でも持ってる訳じゃないんだ。だから、いずれ力を持ってて良かったと思える時が来るかも知れない⋯その、何か特別なタイミングに。
神:なんじゃ⋯その、ふわっとした考えは?
悟:えー?なかなか名推理だと思ったんだがなー
神:まあ、でも、そう考えたらなんだか⋯少しは楽になった気はするの
悟:それにもう、前より見なくなってきたんだよな?
神:うむ⋯以前より力が無くなってきている感じじゃ
悟:なら大丈夫だ。たぶんその力の役目?が終わって来たんだろうな、きっと
神:そんなもの、なのか?
悟:⋯わからん!
神:はあ⋯
悟:それにな、このまま神楽が力を持ったままでも、問題はまったくないぞ
神:え⋯?それは、どういう事じゃ?
悟:世界中の誰だろうが、神楽の事を悪く言う様な奴がいたら、これからもこの兄が、ぶっ飛ばして守ってやる!だから安心しろ。
神:あ、兄者⋯その⋯とても嬉しいぞ⋯
悟:だから、この先何か辛い事があっても、神楽には強力な味方がついてるんだから、ドーンと構えていろ!
神:う、うむ!これからも、その⋯頼りにしておるぞ⋯
悟:よし、神楽!帰ったら明日の予定を考えるぞ!
神:えっ!?急にどうしたのじゃ!?
悟:ふっふっふ⋯。もちろん、明日も二人で遊ぶからだ!
神:え⋯?い、いいのか?わしの為に、兄者の大事な休みを使っても⋯?
悟:当たり前だろ?こーんな可愛い妹と遊べるんだからな。これほど幸せな事があるか?いや無い!
神:な、だから可愛いとか、やめんかまったく⋯
悟:俺たちの夏休みは、まだ始まったばかりだ!だから、これから時間いっぱい遊びまくるぞ!!
神:う、うむ!わしもいっぱい、いっぱい、兄者と遊びまくるぞ!!
悟:よーし!二人で夏の思い出、たくさん作ろうな!
神:⋯うん!
悟:(N)この後、何故か力が完全復活した神楽が、次々と霊障(れいしょう)事件を解決しまくっていき新たに霊障探偵事務所を立ち上がるが、それはまた、別のお話。
:終
神:兄者ー!
悟:うーん⋯
神:兄者ー!起きろー!起きんか~!
悟:う、う~ん、後五時間⋯
神:こら!何が後、五時間じゃ!そこは普通、五分とかじゃろ!
悟:じゃあ、あと五分⋯
神:今絶対起きとったじゃろ!?まったく今何時だと思っとる!早くせんと昼を回ってしまうであろうが!
悟:はっ!
悟:あ、あれ?神楽(かぐら)⋯?
神:やっと起きたか
悟:な、なんで神楽(かぐら)が起こしに来たんだ?今日、俺休みの日だったよな?
神:何を言っておる、今は夏休みなのだから当たり前じゃろ
悟:そうだった⋯明日も学校休みじゃん⋯よし、寝よう
神:こらー!また寝ようとするな!
悟:痛!ちょ、神楽、お腹蹴っちゃ駄目!ぐはっ!
神:どうじゃ?起きる気になったかの?
悟:はい⋯痛みで目覚めもバッチリです⋯
神:よし、ではさっさと起きて行く準備をするのじゃ
悟:ん?行く準備⋯?
神:は~⋯。わしとの約束、忘れておろう?
悟:約束⋯
神:⋯
悟:お、おー!そうだった!今週の休みは予定無いから虫取りに連れてってやる予定だったな!も、もちろん覚えてるぞ~?
神:ほーん⋯?
悟:⋯すみません、完全に忘れてました
神:はぁ⋯どうせそんな事だろうと思っておったわ
悟:す、すまないな神楽
神:まったく⋯せっかく楽しみにしておったと言うのに⋯
悟:え?今何て?
神:な、なんでもないわ!
悟:しかし神楽、小学校高学年になってまで、虫取りって楽しいのか?
神:いいんじゃよ、わしが昔からずっと虫取りが好きなんじゃから
悟:⋯いったい何が、神楽をそこまで突き動かしてるのか、謎だな⋯
神:ほれ、早く着替えて、降りて来るんじゃ!
悟:あ、神楽、ちょっといいか?
神:なんじゃ?
悟:いや⋯その喋り方、なんとかならないのか?
神:何か問題でもあるのか?
悟:なんか、ジジくさいと言うか⋯
神:兄者は知らんのか?最近小学校で流行ってる、「のじゃ魔女」を
悟:いや、何それ?
神:のじゃロリっ子?とか言う、可愛い魔法少女が出てくる、大人気アニメなのじゃ
悟:だ、だからそんな変な喋り方なのか⋯
神:この喋り方、可愛いじゃろ?学校の友達なぞ、みんな真似してるんじゃぞ?
悟:いや、どんなクラスだよ!?今の小学生の可愛いの基準、絶対おかしいって!
神:そんな事より、早く降りて来るんじゃぞ
悟:あっ、神楽!
悟:⋯行っちまったか
悟:兄として、アレは直させるべきなのか、悩むな⋯
:間
神:お、やっと来おったな、待ちくたびれたぞ
悟:悪い悪い。ん?なんかいい匂いだな?
神:ほれ、朝ごはんじゃ
悟:お!これ、もしかして神楽が作ったのか!?
神:そりゃそうじゃ、母も父も今は海外旅行中じゃからな、わし以外に誰が作るんじゃ
悟:うお~、これまた美味そうだな~
悟:神楽、また料理の腕上げたな~。⋯こうやってまた一つ、大人になって行くんだな⋯お兄ちゃん寂しい(涙目)
神:またそうやって、なんでもかんでもすぐ泣きおる。相変わらず、兄者は泣き虫じゃなー
悟:神楽~、お兄ちゃんを置いて勝手に成長しないでくれよ?お兄ちゃん、お前の成長する姿を見ていくのが生きがいなんだからな~!?
神:え~い!寄るでない!暑苦しいー!
悟:ええ~⋯、兄妹なんだから、良いだろ〜?
神:わ・し・が!良くないんじゃ!まったく、そのシスコンっぷりも大概(たいがい)にせんか!
悟:はーい⋯
悟:しかし⋯母さん達も、俺たちを置いて海外旅行行くなんて、ズルいよなー
神:仕方なかろう?父も母も、出来ちゃった婚とか?で、結婚式も、新婚旅行もしてないと言っておったみたいだからの
悟:あー⋯。俺が生まれたから、だったな⋯
悟:確かに、母さんの父さん、爺さんは怖い人だったし、大変だったんだろうな⋯
神:そうだったのか?最近はわしが会いに行ったら必ずお小遣いくれるぞ?
悟:⋯俺にはゲンコツしかくれなかったのに。丸くなったな、爺さん。
悟:なら、夫婦水入らず、新婚旅行気分で、楽しんで来てもらうとするか
神:うむ、わしらをここまで元気に育ててくれた分、ぜひゆっくりして来てもらうとしよう
悟:だな。お、この卵焼き美味いな!このレンコンの煮物もダシが効いてる、将来はいいお嫁さんになるぞ~
神:そ、そうか⋯。まあ、口に合ったようで良かったぞ⋯
悟:うん、これなら間違いなく、嫁の貰い手が⋯嫁、嫁⋯?
神:ん?どうかしたのか?
悟:よ、嫁にはやらんぞーー!
神:はあ~!?
悟:こんな可愛い神楽を何処の馬の骨かも分からない奴に、渡せるか~!
神:お前は父か!まったく、ふざけた事言っとらんで、早く飯を食べんか!
悟:はーい⋯。でも、なんかいいな
神:ん、何がじゃ?
悟:こうやって、何気ない日常を神楽と楽しく過ごせるのは
神:何、年寄りくさい事を言っとるんじゃ
悟:のじゃってる神楽には言われたくないぞ⋯
神:で、なぜ突然そのように思ったんじゃ?
悟:え?あー、なんでだろ、ふと、そう思ったんだ
神:自分でもよく分からんて顔じゃな
悟:はは、そうだな
神:まあ⋯わしも、分からんでも、ないがな
悟:ん?
神:何気なくて、気が付きにくいが⋯健康で毎日を過ごせる、こういうのを幸せ、と言う奴じゃろうな
悟:神楽⋯ほんとに小学生?
:間
神:あ、兄者⋯
悟:なんだ、我が愛しの妹よ
神:やかましい、黙ってあそこを見ろ
悟:ん?⋯木の上の方で何か動いてるな
神:兄者、兄者!あれが噂のヘラクレスオオカブトなのか!?
悟:へ、ヘラクレスオオカブト~?
神:そうじゃ。キングオブカブトじゃぞ、知らんのか?
悟:いや知ってるけど!こんな日本の田舎に居ないから!?
神:ななっ!なんじゃ⋯おらんのか⋯
悟:あ、い、いや~、ま、待て、他のカブトならいるかもしれないぞ!
神:ほ、ほんとか!?
悟:ああ、この森にはカブト虫が集まるスポットがあるらしいぞー?
神:なぬ!ほんとうか!
悟:ああ!お兄ちゃん、下調べはネットでバッチリしてきたからな。任せとけ!
神:⋯なんぞいまいち頼りにならんが、任せたぞ?
悟:よし、いっちょこの木に登って、神楽にカブト取って来てやるぞ!
神:うむ、頑張るんじゃぞ、兄者!
悟:よーし⋯フンッ!ぬお~!!
神:⋯
悟:ふぬ~!!
神:お、おい⋯
悟:こなくそ~~!!
神:って全然登れてないではないか!?
悟:ふー、神楽よ。お兄ちゃん、運動神経悪いの、すっかり忘れてたよ
神:阿呆(あほ)うか!あれだけ見得を切っといて何しとるんじゃ~!
悟:うぅ⋯不甲斐ないお兄ちゃんで⋯すまない⋯
神:はあ⋯まったく。兄者、そこで見ておけ
悟:え、神楽⋯?いったい何を⋯?
神:む⋯よっ!
悟:か、神楽!木に掴まって何をする気だ!?
神:そりゃ登るに決まっておるだろ?
悟:あ、危ないから、降りて来なさーい!
神:兄者、わしが学校で何と呼ばれてるか知っとるか?
悟:え⋯?な、何て呼ばれてるんだ?
神:木登り名人の⋯神楽ちゃんじゃ!
悟:な、嘘だろ!あんな大きな木を登っていってるだと~!?
神:よし、もう、少し!
悟:よ、よし、神楽、そこだ!行け~!
神:んっ⋯しょ!や、やったぞ兄者~!カブト、取れたぞ~!
悟:うおっしゃ~!!我が愛しのマイシスター神楽!良くやったぞ~!
神:ちゃんと見ておったか兄者!
悟:ああ、バッチリお前の勇姿、この目に焼き付けたからな~!
神:よ、よし、今、兄者にも見せてやるから⋯っ!うわっ!
悟:え?あ、あの馬鹿!
神:う、うわー!落ちる~!!
悟:くっ!神楽ーー!!
:間
神:うぅ⋯
神:あ、あれ⋯?い、痛く⋯ない?
悟:神楽、大丈夫か?
神:あ、兄者⋯?
悟:そうだ、兄だぞ
神:兄者が⋯助けてくれたのか⋯?
悟:ああ、間一髪、滑り込みダイビングキャッチだったな
神:運動神経無いのにか⋯?
悟:そ、そこは⋯愛の力だ
神:なんじゃそれ。でも、ありがとうなのじゃ⋯
悟:それより、あんな場所で、慌てて動いたら駄目だろ?
神:そ、それは⋯早く⋯兄者に、み、見せたくての⋯
悟:うん、その気持ちは嬉しいぞ、ありがとうな
神:うぅ⋯
悟:神楽?
神:こ、こ、怖かったぞ~!
悟:うんうん、怖かったな、よしよし。もう大丈夫だからな
:間
神:しかし⋯この格好は、な、なんとかならんのか⋯?
悟:え?この、お姫様抱っこの事か?
神:そ、そうじゃ!わしが腰を抜かしてるのをいい事に、こ、こんな恥ずかしい格好させおって!
悟:えー?だって、この持ち方の方がなんか、しっくりくると言うか、安心するんだよなー
神:ま、まあ⋯わしもそこまで⋯嫌じゃないがの⋯
悟:おやおや~?急なデレ発動かな~?うちのマイエンジェルシスターは~?
神:調子に乗るな!テイッ!
悟:あ痛ー!ちょっ、神楽、鼻デコピンは反則だぞ~!?
神:ふん、天罰じゃ。
:間
悟:しかし、こんなランチボックスに大量のカブト、入れてて大丈夫なのか⋯?うわっ、なんか、ガサガサ言ってる!?
悟:ちょ、神楽、少し多いから、カブト逃がしてやるか?⋯ん?
神:う、うーん⋯(睡眠中)
悟:あー⋯疲れて寝ちゃったか。まあ、あんだけ朝からテンション高かったら、こうもなるか
神:う、うーん⋯兄者⋯それはレンコンじゃ⋯
悟:ど、どんな夢見てるんだよ⋯
悟:⋯でも、神楽が元気になってくれて、ほんとに良かったな⋯
:少しの間
悟:(N)神楽は生まれつき、不思議な力があった
悟:(N)その力とは、死んだ人の魂、幽霊が見えて、その人と会話が出来ると言うものだった
悟:(N)最初両親も心配してたみたいだが、成長するとそのうち見えなくなると楽観的だった
悟:(N)しかし、残酷な事に、小学校に入ってその事が周りに知られてしまうと、神楽は友達からも変な目で見られるようになり、やがて孤立し、イジメられるようになった
:少しの間
悟:何とか転校してからは、アレも最近は出なくなったようだし、ほんとに良かったよ⋯
悟:あの時の神楽を見てるのは⋯兄としてほんとに辛かったからな⋯
神:兄者⋯
悟:か、神楽!⋯今の、聞いてたのか⋯?
神:うむ⋯
悟:⋯
神:兄者にも心配をかけていたんじゃな⋯
悟:ま、待て!神楽は悪くないだろ!?その力のせいなんだから!
神:そうだが⋯。その力のせいで、引越ししなくてはならなくなったのだろ!
悟:っ!それは神楽を守る為に仕方のない事だったんだ!
神:こんな⋯こんな力なんて、無かったら良かったのじゃ⋯
悟:⋯神楽、その力はきっと、神様がくれた物だと思う。
神:神様⋯?
悟:そうだ。きっと何か意味があって、神楽に備(そな)わった力だと思うんだ。
神:何かの⋯意味?
悟:ああ、そんな不思議な力は誰でも持ってる訳じゃないんだ。だから、いずれ力を持ってて良かったと思える時が来るかも知れない⋯その、何か特別なタイミングに。
神:なんじゃ⋯その、ふわっとした考えは?
悟:えー?なかなか名推理だと思ったんだがなー
神:まあ、でも、そう考えたらなんだか⋯少しは楽になった気はするの
悟:それにもう、前より見なくなってきたんだよな?
神:うむ⋯以前より力が無くなってきている感じじゃ
悟:なら大丈夫だ。たぶんその力の役目?が終わって来たんだろうな、きっと
神:そんなもの、なのか?
悟:⋯わからん!
神:はあ⋯
悟:それにな、このまま神楽が力を持ったままでも、問題はまったくないぞ
神:え⋯?それは、どういう事じゃ?
悟:世界中の誰だろうが、神楽の事を悪く言う様な奴がいたら、これからもこの兄が、ぶっ飛ばして守ってやる!だから安心しろ。
神:あ、兄者⋯その⋯とても嬉しいぞ⋯
悟:だから、この先何か辛い事があっても、神楽には強力な味方がついてるんだから、ドーンと構えていろ!
神:う、うむ!これからも、その⋯頼りにしておるぞ⋯
悟:よし、神楽!帰ったら明日の予定を考えるぞ!
神:えっ!?急にどうしたのじゃ!?
悟:ふっふっふ⋯。もちろん、明日も二人で遊ぶからだ!
神:え⋯?い、いいのか?わしの為に、兄者の大事な休みを使っても⋯?
悟:当たり前だろ?こーんな可愛い妹と遊べるんだからな。これほど幸せな事があるか?いや無い!
神:な、だから可愛いとか、やめんかまったく⋯
悟:俺たちの夏休みは、まだ始まったばかりだ!だから、これから時間いっぱい遊びまくるぞ!!
神:う、うむ!わしもいっぱい、いっぱい、兄者と遊びまくるぞ!!
悟:よーし!二人で夏の思い出、たくさん作ろうな!
神:⋯うん!
悟:(N)この後、何故か力が完全復活した神楽が、次々と霊障(れいしょう)事件を解決しまくっていき新たに霊障探偵事務所を立ち上がるが、それはまた、別のお話。
:終