台本概要
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タイトル | メイド喫茶を忘れない |
---|---|
作者名 | 雪狐 (@yukikitsune_vg) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
俺はきっと、あの日のことを忘れない。
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
俺 | 男 | 54 | いざあこがれのメイド喫茶へ! |
メイド | 女 | 54 | 本名は陽奈 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:メイド喫茶を忘れない
俺:いざあこがれのメイド喫茶へ!
俺M:俺のモノローグ
メイド:本名は陽奈。
:
俺M:蝉がうるさい夏のある日のこと、俺はある建物を前に唸っていた。
俺:「人生初のメイド喫茶…どっちにしようかなぁ…?こっちの方がタイプかも…?いや、あっちの方が…」
俺:「よしっ、こっちのメイド喫茶にしよう!看板もシンプルだし、空いてるし!」
メイド:「ねぇ、そこのお兄さん!よかったらわたしが働いてるメイド喫茶にしない?」
俺:「えっ?」
俺M:急に声がしたので後ろを振り向くと、そこにはかわいらしいメイドさんが立っていた。
メイド:「えっと、急にごめんなさい!お兄さんメイド喫茶探してるみたいだったから…」
俺:「あぁ、いや気にしてないよ!よかったら君の店に行ってもいいかな?」
メイド:「あっ…うんっ!わたしの店すぐそこなんだけど、準備するから20分後にきてね!」
俺:「あぁ、わかったよ」
俺M:そうして俺は約束の時間にメイド喫茶の扉を開けた。まるで運命に導かれるように…
:
メイド:「おかえりなさいませ!ご主人様!やっと帰ってきたんですね!?待ちくたびれましたよぉ!さぁさぁ、席についてくださいっ!」
俺:「え、えーっと…?」
メイド:「ほらほら、はーやーくぅー!」
俺:「あ、はいっ!」
俺M:とりあえず俺は席についた。先程準備が終わったからか、周りに他の客はいないみたいだ。
メイド:「はい、こちらおしぼりとお水です。こほん、早速ですがご主人様、SセットとTセットがあるんですけど…どちらにされますか?」
俺:「セットの違いって何かあるの?」
メイド:「そうですね…ただいまキャンペーンをしてるのでTセットがオススメですよ!」
俺:「なら、Tセットにしようかな」
メイド:「ふぅん?ならTセットで決まりね。じゃあ、セットメニュー持ってくるから」
俺:「あれ?なんだか急に対応が雑に…?」
メイド:「何か文句ある?」
俺:「えっと、どうして急に…?」
メイド:「アンタがTセット選んだからよ。Tセットはお客様にツンデレメイドを体験してもらうセットなの、わかった?」
俺:「そんな…俺、メイド喫茶のあの感じ楽しみにしてたのに…」
メイド:「アンタがTセットって言ったんでしょ?いいから楽しんでいきなさいよ?」
俺:「うぅ…でも…」
メイド:「…わたしも、楽しんでもらえるように頑張るから」
俺M:その言葉に不覚にもドキッとしてしまった俺は、頷くことしかできなかった…。
:
メイド:「はい、これ。セットメニューのオムライス」
俺:「オム…ライス…?」
メイド:「そうよ?オムライスよ?…ってアンタもしかしてオムライスも知らないの!?」
俺:「いや!?オムライスは知ってるけど、これは…」
俺M:そう、目の前にあったのはかなり不恰好なオムライスだった、いやオムライスと言われなければ気づかない代物だった。
メイド:「なによぉ…せっかくアンタのために作ったのに…ふんっ!」
俺:「あわわ…ごめん、そうだよね!俺のために作ってくれたんだもんね!ありがと!」
メイド:「…チョッロ♡」
俺:「ん!?」
メイド:「なんでもないわ!さて、このまま食べてもいいけど…よかったらわたしと勝負しない?」
俺:「勝負?」
メイド:「そう!勝負に勝ったらわたしがアンタのためにケチャップで好きな言葉を書いてあげるわ!」
俺:「ちなみに、勝負って何するの?」
メイド:「そうねぇ…よし、リバーシにしましょ!」
俺:「え、リバーシ…?こういうのってジャンケンとかじゃないの?ほら、萌え萌えジャンケン〜…みたいな」
メイド:「はぁ?バカじゃないの?なんでそんなことしなきゃいけないのよ?」
俺:「えっと、なんか…すんません…」
俺M:言葉の暴力に涙目になっていると、メイドさんがそばに寄ってきて…
メイド:「(耳元で)だって、リバーシならアンタと長く一緒にいられるじゃない?」
俺:「!?」
メイド:「ね?リバーシ…しよ?」
俺:「喜んで!!」
メイド:「(小声で)やっぱチョロいわね、こいつ…」
俺:「?」
メイド:「なんでもないわ。すぐ用意するから待っててね」
俺:「はいっ!」
:
メイド:「ちなみに勝ったらなんて書いてもらいたいの?」
俺:「そうだなぁ…そのぉ…『大好き♡(ハート)』って書いて欲しいなぁ…」
メイド:「あっそ、わかったわ。それじゃ始めましょ?」
俺M:そうしてリバーシに没頭していく俺たち。今のところ俺が優勢。メイドさんはなかなか石を取れないでいる。
メイド:「むぅ…アンタ、強いじゃない」
俺:「そうかな?」
メイド:「ちょっとくらい手加減してくれても…いいのよ?」
俺:「えっと…じゃあ手加減(しようかなぁ)」
メイド:「(被せて)ま、手加減なんていらないんだけどね」
俺:「…?それはどういう…っ!?」
俺M:そこまで言って俺は気づいた。俺の置く場所はかなり限られており、正直なところ詰んでいた。
メイド:「ばぁか♡リバーシは先にたくさん取った方が負けるのよ?というわけで、はいっ!わたしの勝ちねっ♪」
俺:「そ、そんなぁ…」
メイド:「ざぁこざぁこ♡まぁ…アンタとのリバーシ、楽しかったわよ?とりあえず、ちょっと待ってなさい」
俺M:そう言って席を離れるメイドさん。ちょっとって言ったけど、何故かそこそこ時間がかかっている。
メイド:「…お待たせ」
俺M:そう言って戻ってきたメイドさんの手には新しいオムライスが用意されていた。
メイド:「リバーシしてたから、アンタの冷めちゃったでしょ?出来立てだからこっち食べて」
俺:「ありがと………って!?」
メイド:「なによぉ?何か文句でもあんの?」
俺M:だって机に置かれたオムライスには、ケチャップで『大好き♡』と書かれていたからだ。
俺:「だって…これ…」
メイド:「あーもう、じれったいわねぇっ!はいっ!あーんっ!!」
俺:「えっ!?もがっ!?」
メイド:「ほら、ちゃちゃっと食べる!」
俺:「ちょ、まだ口に入って…!?」
メイド:「もー、ほら!!」
俺:「自分で食べるから!?やーめーてー!?」
:
メイド:「さて、あと残りは…写真撮影ね」
俺:「えーっと、写真撮影って?」
メイド:「一緒にチェキで写真撮って、それを持って帰ってもらうのよ」
俺:「へぇー、なるほど?」
メイド:「一緒に写真撮ってあげるけど、ポーズの指定とかある?」
俺:「んー、よくわかんないからおまかせで…」
メイド:「ふぅん?わかったわ。みーちゃん、ちょっと手伝ってー!」
俺M:すると奥からクラシカルなメイド服に身を包んだ美人なお姉さんがやってきた。どうやらみーちゃんさんが写真を撮ってくれるらしい。
メイド:「ほら、もっと寄って?じゃないと写真撮れないから」
俺:「近くない!?」
メイド:「だいじょーぶよ…って何ニヤニヤしてんの?」
俺:「だって、メイドさん、めちゃくちゃ綺麗だから…」
メイド:「…バカじゃないの?あと、わたしの名前、陽奈だから」
俺:「ひ…な…?」
メイド:「ほーら、シャキッとしないと間抜けヅラが残るわよ?」
俺:「え、あぁ…うん…」
俺M:陽奈…その名前には聞き覚えがあった。しかし、どこで聞いたのか思い出せない…
メイド:「みーちゃん、わたしが合図出したらシャッター押してねー!いい?3…2…1…」
俺M:陽奈さんが合図を出して、みーちゃんさんがシャッターを切るその刹那、頬に柔らかい感触が触れた。
俺:「えっ…!?」
メイド:「ふふんっ、これで最高の間抜けヅラが撮れたわね?はいこれ!帰りながら見てよね!」
俺:「いや、その…!?」
メイド:「もー、気にしないの!ねぇ…今日は楽しかった?」
俺:「…もちろん、すごく楽しかった」
メイド:「そっか、それはよかった。ねぇ?その写真、ずっと大切にしてね?約束よ?」
俺:「こんなにいい写真なんだから、大切にするよ!」
メイド:「…うん。それ見てわたしのこと、ときどき思い出してね?」
俺:「…?」
俺M:何故か陽奈さんの顔は今にも泣きそうで、寂しそうな顔をしていた。
俺:「ちゃんと覚えてるし、なんならまたすぐ遊びに来るよ!」
メイド:「そっ…か。うん、待ってるから!」
俺:「ああ!」
俺M:そうして俺はメイド喫茶を後にした。
:
: (この先、劇中に演じても演じなくても可)
:
俺:「思ってたメイド喫茶とは違ったけど、楽しかったなぁ…そうだ、写真見返そう!」
俺M:そうして俺は写真を手に取る。そこには俺のデレデレした顔が写っていた。
俺:「…あれ?陽奈さんは?」
俺M:そう、写真にはデレデレした俺の顔しか写っておらず、一緒にいたはずの陽奈さんの姿は写っていなかった。代わりに手書きで『忘れないで』の文字が書かれていた。
俺:「……あ……あぁっ…陽奈、陽奈っ…!」
俺M:俺は思い出した。10年前、事故によって命を落とした幼馴染の存在を。
メイド:「メイドさん好きなの?アンタ、ほんと変わってるわよね?…決めた、わたしアンタの専属メイドになるんだから!だってアンタ鈍臭いし…わたしがついてなきゃダメだもんね!」
俺M:…俺はショックのあまり、彼女のことを記憶から消してしまった。陽奈のことが大好きだったから、いなくなった現実に耐えられなかったから。
俺:「そっか、今日は15日か…」
俺M:最初メイド喫茶に入ったとき、陽奈は確かにこう言った。
メイド:「おかえりなさいませ!ご主人様!やっと帰ってきたんですね!?待ちくたびれましたよぉ!さぁさぁ、席についてくださいっ!」
俺M:そう、陽奈はずっと俺が思い出すのを待っていたのだ。俺に会えるのを10年も…。
俺:「俺…また、会いにいくから。約束するよ」
俺M:そんな小さな呟きは、蝉の鳴き声に掻き消されることなくふわりと宙を舞った。
:
俺M:俺は今日の夢のようなメイド喫茶を、一生忘れない。
0:メイド喫茶を忘れない
俺:いざあこがれのメイド喫茶へ!
俺M:俺のモノローグ
メイド:本名は陽奈。
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俺M:蝉がうるさい夏のある日のこと、俺はある建物を前に唸っていた。
俺:「人生初のメイド喫茶…どっちにしようかなぁ…?こっちの方がタイプかも…?いや、あっちの方が…」
俺:「よしっ、こっちのメイド喫茶にしよう!看板もシンプルだし、空いてるし!」
メイド:「ねぇ、そこのお兄さん!よかったらわたしが働いてるメイド喫茶にしない?」
俺:「えっ?」
俺M:急に声がしたので後ろを振り向くと、そこにはかわいらしいメイドさんが立っていた。
メイド:「えっと、急にごめんなさい!お兄さんメイド喫茶探してるみたいだったから…」
俺:「あぁ、いや気にしてないよ!よかったら君の店に行ってもいいかな?」
メイド:「あっ…うんっ!わたしの店すぐそこなんだけど、準備するから20分後にきてね!」
俺:「あぁ、わかったよ」
俺M:そうして俺は約束の時間にメイド喫茶の扉を開けた。まるで運命に導かれるように…
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メイド:「おかえりなさいませ!ご主人様!やっと帰ってきたんですね!?待ちくたびれましたよぉ!さぁさぁ、席についてくださいっ!」
俺:「え、えーっと…?」
メイド:「ほらほら、はーやーくぅー!」
俺:「あ、はいっ!」
俺M:とりあえず俺は席についた。先程準備が終わったからか、周りに他の客はいないみたいだ。
メイド:「はい、こちらおしぼりとお水です。こほん、早速ですがご主人様、SセットとTセットがあるんですけど…どちらにされますか?」
俺:「セットの違いって何かあるの?」
メイド:「そうですね…ただいまキャンペーンをしてるのでTセットがオススメですよ!」
俺:「なら、Tセットにしようかな」
メイド:「ふぅん?ならTセットで決まりね。じゃあ、セットメニュー持ってくるから」
俺:「あれ?なんだか急に対応が雑に…?」
メイド:「何か文句ある?」
俺:「えっと、どうして急に…?」
メイド:「アンタがTセット選んだからよ。Tセットはお客様にツンデレメイドを体験してもらうセットなの、わかった?」
俺:「そんな…俺、メイド喫茶のあの感じ楽しみにしてたのに…」
メイド:「アンタがTセットって言ったんでしょ?いいから楽しんでいきなさいよ?」
俺:「うぅ…でも…」
メイド:「…わたしも、楽しんでもらえるように頑張るから」
俺M:その言葉に不覚にもドキッとしてしまった俺は、頷くことしかできなかった…。
:
メイド:「はい、これ。セットメニューのオムライス」
俺:「オム…ライス…?」
メイド:「そうよ?オムライスよ?…ってアンタもしかしてオムライスも知らないの!?」
俺:「いや!?オムライスは知ってるけど、これは…」
俺M:そう、目の前にあったのはかなり不恰好なオムライスだった、いやオムライスと言われなければ気づかない代物だった。
メイド:「なによぉ…せっかくアンタのために作ったのに…ふんっ!」
俺:「あわわ…ごめん、そうだよね!俺のために作ってくれたんだもんね!ありがと!」
メイド:「…チョッロ♡」
俺:「ん!?」
メイド:「なんでもないわ!さて、このまま食べてもいいけど…よかったらわたしと勝負しない?」
俺:「勝負?」
メイド:「そう!勝負に勝ったらわたしがアンタのためにケチャップで好きな言葉を書いてあげるわ!」
俺:「ちなみに、勝負って何するの?」
メイド:「そうねぇ…よし、リバーシにしましょ!」
俺:「え、リバーシ…?こういうのってジャンケンとかじゃないの?ほら、萌え萌えジャンケン〜…みたいな」
メイド:「はぁ?バカじゃないの?なんでそんなことしなきゃいけないのよ?」
俺:「えっと、なんか…すんません…」
俺M:言葉の暴力に涙目になっていると、メイドさんがそばに寄ってきて…
メイド:「(耳元で)だって、リバーシならアンタと長く一緒にいられるじゃない?」
俺:「!?」
メイド:「ね?リバーシ…しよ?」
俺:「喜んで!!」
メイド:「(小声で)やっぱチョロいわね、こいつ…」
俺:「?」
メイド:「なんでもないわ。すぐ用意するから待っててね」
俺:「はいっ!」
:
メイド:「ちなみに勝ったらなんて書いてもらいたいの?」
俺:「そうだなぁ…そのぉ…『大好き♡(ハート)』って書いて欲しいなぁ…」
メイド:「あっそ、わかったわ。それじゃ始めましょ?」
俺M:そうしてリバーシに没頭していく俺たち。今のところ俺が優勢。メイドさんはなかなか石を取れないでいる。
メイド:「むぅ…アンタ、強いじゃない」
俺:「そうかな?」
メイド:「ちょっとくらい手加減してくれても…いいのよ?」
俺:「えっと…じゃあ手加減(しようかなぁ)」
メイド:「(被せて)ま、手加減なんていらないんだけどね」
俺:「…?それはどういう…っ!?」
俺M:そこまで言って俺は気づいた。俺の置く場所はかなり限られており、正直なところ詰んでいた。
メイド:「ばぁか♡リバーシは先にたくさん取った方が負けるのよ?というわけで、はいっ!わたしの勝ちねっ♪」
俺:「そ、そんなぁ…」
メイド:「ざぁこざぁこ♡まぁ…アンタとのリバーシ、楽しかったわよ?とりあえず、ちょっと待ってなさい」
俺M:そう言って席を離れるメイドさん。ちょっとって言ったけど、何故かそこそこ時間がかかっている。
メイド:「…お待たせ」
俺M:そう言って戻ってきたメイドさんの手には新しいオムライスが用意されていた。
メイド:「リバーシしてたから、アンタの冷めちゃったでしょ?出来立てだからこっち食べて」
俺:「ありがと………って!?」
メイド:「なによぉ?何か文句でもあんの?」
俺M:だって机に置かれたオムライスには、ケチャップで『大好き♡』と書かれていたからだ。
俺:「だって…これ…」
メイド:「あーもう、じれったいわねぇっ!はいっ!あーんっ!!」
俺:「えっ!?もがっ!?」
メイド:「ほら、ちゃちゃっと食べる!」
俺:「ちょ、まだ口に入って…!?」
メイド:「もー、ほら!!」
俺:「自分で食べるから!?やーめーてー!?」
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メイド:「さて、あと残りは…写真撮影ね」
俺:「えーっと、写真撮影って?」
メイド:「一緒にチェキで写真撮って、それを持って帰ってもらうのよ」
俺:「へぇー、なるほど?」
メイド:「一緒に写真撮ってあげるけど、ポーズの指定とかある?」
俺:「んー、よくわかんないからおまかせで…」
メイド:「ふぅん?わかったわ。みーちゃん、ちょっと手伝ってー!」
俺M:すると奥からクラシカルなメイド服に身を包んだ美人なお姉さんがやってきた。どうやらみーちゃんさんが写真を撮ってくれるらしい。
メイド:「ほら、もっと寄って?じゃないと写真撮れないから」
俺:「近くない!?」
メイド:「だいじょーぶよ…って何ニヤニヤしてんの?」
俺:「だって、メイドさん、めちゃくちゃ綺麗だから…」
メイド:「…バカじゃないの?あと、わたしの名前、陽奈だから」
俺:「ひ…な…?」
メイド:「ほーら、シャキッとしないと間抜けヅラが残るわよ?」
俺:「え、あぁ…うん…」
俺M:陽奈…その名前には聞き覚えがあった。しかし、どこで聞いたのか思い出せない…
メイド:「みーちゃん、わたしが合図出したらシャッター押してねー!いい?3…2…1…」
俺M:陽奈さんが合図を出して、みーちゃんさんがシャッターを切るその刹那、頬に柔らかい感触が触れた。
俺:「えっ…!?」
メイド:「ふふんっ、これで最高の間抜けヅラが撮れたわね?はいこれ!帰りながら見てよね!」
俺:「いや、その…!?」
メイド:「もー、気にしないの!ねぇ…今日は楽しかった?」
俺:「…もちろん、すごく楽しかった」
メイド:「そっか、それはよかった。ねぇ?その写真、ずっと大切にしてね?約束よ?」
俺:「こんなにいい写真なんだから、大切にするよ!」
メイド:「…うん。それ見てわたしのこと、ときどき思い出してね?」
俺:「…?」
俺M:何故か陽奈さんの顔は今にも泣きそうで、寂しそうな顔をしていた。
俺:「ちゃんと覚えてるし、なんならまたすぐ遊びに来るよ!」
メイド:「そっ…か。うん、待ってるから!」
俺:「ああ!」
俺M:そうして俺はメイド喫茶を後にした。
:
: (この先、劇中に演じても演じなくても可)
:
俺:「思ってたメイド喫茶とは違ったけど、楽しかったなぁ…そうだ、写真見返そう!」
俺M:そうして俺は写真を手に取る。そこには俺のデレデレした顔が写っていた。
俺:「…あれ?陽奈さんは?」
俺M:そう、写真にはデレデレした俺の顔しか写っておらず、一緒にいたはずの陽奈さんの姿は写っていなかった。代わりに手書きで『忘れないで』の文字が書かれていた。
俺:「……あ……あぁっ…陽奈、陽奈っ…!」
俺M:俺は思い出した。10年前、事故によって命を落とした幼馴染の存在を。
メイド:「メイドさん好きなの?アンタ、ほんと変わってるわよね?…決めた、わたしアンタの専属メイドになるんだから!だってアンタ鈍臭いし…わたしがついてなきゃダメだもんね!」
俺M:…俺はショックのあまり、彼女のことを記憶から消してしまった。陽奈のことが大好きだったから、いなくなった現実に耐えられなかったから。
俺:「そっか、今日は15日か…」
俺M:最初メイド喫茶に入ったとき、陽奈は確かにこう言った。
メイド:「おかえりなさいませ!ご主人様!やっと帰ってきたんですね!?待ちくたびれましたよぉ!さぁさぁ、席についてくださいっ!」
俺M:そう、陽奈はずっと俺が思い出すのを待っていたのだ。俺に会えるのを10年も…。
俺:「俺…また、会いにいくから。約束するよ」
俺M:そんな小さな呟きは、蝉の鳴き声に掻き消されることなくふわりと宙を舞った。
:
俺M:俺は今日の夢のようなメイド喫茶を、一生忘れない。