台本概要

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タイトル 期間限定の恋
作者名 かりんと  (@karintoo_mgmg)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 期間限定。僕はそんな言葉に極端に弱くて。
飛びつくのに時間は掛からなかった。
沢山の言葉をかけたくて、沢山の愛を注ぎたくて。
今日もまた、僕は君を起こすのだ

男女サシ台本【1:1:0】
性別変更可能ですが、その場合前読みを推奨します。
大幅な改変は不可

無料配信による使用(投げ銭を含む)では連絡不要です。
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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
美星 93 (みほし)春樹の彼女。なんだかんだで春樹のことが好き。
春樹 93 (はるき)美星のことをとても想っている。なるべく気持ちを言葉にして伝える努力をしている。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
春樹:(はるき)美星のことをとても想っている。なるべく気持ちを言葉にして伝える努力をしている。 美星:(みほし)春樹の彼女。なんだかんだで春樹のことが好き。 0: 0:ここより本文 春樹:(M)期間限定。僕はそんな言葉に極端に弱くて。 春樹:(M)飛びつくのに時間は掛からなかった。 春樹: 春樹: 春樹:(M)沢山の言葉をかけたくて、沢山の愛を注ぎたくて。 春樹:(M)今日もまた、僕は君を起こすのだ。 0: 美星:あぁ、おはようございます。 春樹:おはよう。 春樹:…あのさ、 美星:なんですか? 春樹:今日もかわいいね 美星:ふふ、またそれですか? 春樹:いや、毎日言っとかないと。 美星:ふふふ。ありがとうございます。 春樹:今日は…っと。手帳手帳、どこだったかな。 美星:今日は春樹さんは午前中は9時からお仕事、10時に会議で、お昼は同僚のユキさんと会社から徒歩10分のカフェでお食事、午後もお昼のあと直ぐにお仕事です。 春樹:はは、はーい。ありがと。お昼のとこだけ細かいな、嫉妬してんのか、このぉ。 美星:そんなことありませんよ? 春樹:えぇ、嫉妬くらいしてくれよぉ。 美星:お仕事の人間関係も大事です。そのくらいの聞き分けはあります。 春樹:やっぱちょっと気にしてるじゃんか。 美星:気にしてませんっ。 春樹:はいはい。 美星:もう、全然分かってない。 春樹:分かってる分かってる。ユキともなるべく二人きりでご飯とかは行かないからさ。 美星:もうぅぅぅ! 春樹:はは、朝からからかい甲斐(がい)があるな。 美星:春樹さんなんて知らない。 春樹:え?おこった? 美星:激おこです! 春樹:機嫌直して?ね。 美星:ふふふ、冗談ですよ。 春樹:あぁ、よかったぁ。辞めてくれよ、そんな冗談。 美星:慌てる春樹さんかわいいんですもん。 美星:あ、今日は朝ごはんは? 春樹:君を起こす前に食べたよ。 美星:あぁ、、、そっか、、、。 美星:いつもごめんなさい。 春樹:いいのいいの。 美星:…うーん。 春樹:はいはい、もういいから。ほら、僕のネクタイ締めて。 美星:あ、はーい。これでいいですか? 春樹:うん。ありがと。 春樹:じゃあ行ってくるね。 美星:行ってらっしゃい。 美星:あ、春樹さん! 春樹:どうした? 美星:今日は雨の予定ですよ、傘を。 春樹:げっ。まじで? 美星:マジです。 春樹:どのくらい? 美星:ものすごく。 春樹:嘘だろぉ。おっきい長傘持ってかないと。 美星:嘘です。にわか雨程度だそうです。 春樹:よし!じゃあ折り畳み傘にしよう。 美星:ダメですよ! 春樹:え、なんで? 美星:前もって分かってるんだから、おっきい傘持っていって下さい。風邪、引きますよ? 春樹:えーめんどくさいなぁ。 美星:なんと言ってもダメです。はい、傘どうぞ。 春樹:僕は案外、丈夫だぞ? 美星:だーめーでーす。 春樹:分かった分かった。持ってくよ。教えてくれてありがとう。 美星:ふふ、どういたしまして。 春樹:あ、ねぇ? 美星:どうしたんですか?春樹さん? 春樹:大好きだよ。 美星:こちらこそ大好きですよ。行ってらっしゃい。 春樹:はぁい、行ってきます。 0:間 0:(その日の夜) 美星:あ、春樹さん。おかえりなさい。 春樹:ただいま。 美星:晩御飯はどうしました? 春樹:済ませたよ。 美星:そう…ですか…。 春樹:そんなしょんぼりしないでよ。 美星:うーん、ちなみに何を食べたのです? 春樹:今日はね、中華。 美星:えっと職場の近くのおいしくないことで有名なところ? 春樹:そうそう。そこそこ。実はあそこのお店、春巻きだけはおいしいことで有名なんだ。 美星:それはまたなんで。 春樹:あそこ、春巻きだけは作らずに冷凍食品で出してるからな。 美星:ふふふ、おっもしろい。 美星:晩御飯はおひとりで? 春樹:うん。お昼に同僚と食べるだけでも嫉妬しちゃう子がうちにはいるからね。 美星:もう!またそれですか? 春樹:はは、ほんっとにかわいいなぁ。 美星:(ためらってから)・・・・・・春樹さん? 春樹:なに? 美星:私のことは気にせずにご飯、食べてよかったんですよ。 春樹:・・・あぁ、分かってるよ。 美星:…。 美星:春樹さん? 春樹:なに? 美星:今日で…最後ですよ。 春樹:あぁ、分かってる。 美星:お別れ…言わなくていいんですか?そのための私です。 春樹:…っ。言えないよ。 美星:私じゃ、やっぱり美星さんにはなれませんでした? 春樹:…。 美星:そう…ですよね。どんなに優秀なAI(エーアイ)でも、どんなに美星さんに似せられて加工されても、やっぱり私は機械仕掛けですもんね。 春樹:違くて! 美星:三年一緒に過ごしてけど、一度も私のことを名前を呼んでくれたことすらないですもんね。 春樹:だから、それは!!違うんだ! 美星:なにが? 春樹:だって、、、君は君だから。 美星:え? 春樹:君は君じゃないか。美星と違う。 美星:やっぱ、AI失格でしたか。お力になれなくて、すみません。 春樹:そうじゃなくて! 美星:そうでしょ?だって私はなくなった美星さんの代わりに借り入れられたAIです。 春樹:うん…。確かに僕は国の制度を利用して、三年間限定で死んだ人間の代理品AIを手に入れた。 美星:それが…私。…分かっています。だからこそ、今日までに言わなきゃいけないことを言わないと。また、言えないままお別れになってしまいます。 春樹:うん、僕は美星に言えなかったことを沢山言おうと思ったんだ。 美星:ふふふ、沢山もらいましたよ。代理品でも嬉しかったです。 美星:だからほら、最期の言葉を。 春樹:でもね、やっぱり美星は美星。君は君なんだ。 美星:なん…で。 春樹:そりゃぁ、僕と過ごしてる時間が美星と君とで違うからだよ。 美星:そうですよね…。私が一緒に過ごしたのはたかが三年、美星さんの半分にも満たない。 春樹:長さの話じゃない。美星と君で違う、それだけなんだ。 美星:春樹さん?何を言ってるのです? 春樹:自分でも分からないんだ。なんて言えばいいのかなぁ。美星のことも愛してた。 春樹:でも君には美星に言えなかった言葉を、ホントにちゃんと沢山たくさん捧(ささ)いだんだ。好きだよって、愛してるよって、かわいいねって。 美星:沢山もらったよ春樹さんの言葉。照れて半分も受け止められなかったけど。 春樹:今更、美星になっても無駄だよ。 美星:…え? 春樹:…美星は!僕と一緒に沢山ご飯を楽しむ子だった。 美星:っ…。 春樹:美星は!充電したり、毎晩毎朝、電源を切ったり入れたり!そんな必要なかった。 美星:…そう…ですよね。 春樹:でもね、美星は僕の一日の予定を朝に話したり、出かける前に天気を教えてくれたりしないんだよ。 美星:…それは…春樹さんがおっちょこちょいだから。 春樹:美星はね、好きだよって言っても好きだなんて返してくれなかったんだ。 美星:それは!春樹さんが寂しそうな眼をするから…。 春樹:君はね、僕と過ごしていくうちに変わっていったんだ。 美星:それは、私が…AIだから。学習していくから。 春樹:そうかもしれない。でも…。でも!! 春樹:それでもね、君のことが、美星じゃなくて君が、好きになったんだ。 美星:私を…好き? 春樹:そうだよ、君のことが好きなんだ。 美星:でも…、私は、AIで。美星さんの代わりで…。 春樹:美星はもういない。そっくりの君と生活して…君がそっくりだったからこそ!分かっちゃったんだ。 春樹:美星はもう…いない人なんだって…。 美星:…春樹…さん。 春樹:だからね。これ。受け取ってくれない? 美星:これ…は? 春樹:みて分からない?指輪だよ。 美星:私に? 春樹:そう。君に。僕からの気持ち。 美星:でも、私にはもう、指輪が。 春樹:それは美星のだろ。確か、MIHOSHIって掘ってある。 美星:それは…そうですけど…。 春樹:これはさ、君の。君につけて欲しくて、探し回ったんだ。 美星:春樹さん…。 春樹:ねぇ?僕がこの指輪、君に嵌(は)めてみてもいい? 美星:…っ。はい。 春樹:手出して。 美星:これで…良いですか? 春樹:こういう時は、手のひらじゃなくて手の甲見せるものじゃない? 美星:えっと、じゃあ、こう? 春樹:そうそう。あーごめんな。ずっと美星の指輪つけてたんだな。酷いことした。 美星:ふふ、そのための私だったんですから良いんですよ。 春樹:それでも・・・ごめん。 美星:優しいんですね。 春樹:・・・はい、うん、ピッタリ。やっぱりこの方がいい。 美星:…あはは、素敵。ありがとうございます。 春樹:あぁ、似合ってるよ。こちらこそ、受け取ってくれてありがとう。 0:間 春樹:・・・時間だ。もうそろそろ…君の電源…切るね。 美星:うんうん、いいんです。今日は…最後だから。 春樹:あぁ…、そっか。 美星:うん…。 春樹:ねぇ。 美星:なぁに、春樹さん。 春樹:ほんとに…行っちゃうの? 美星:ほんとに。…もう、戻らないといけないんです。そうプログラミングされてるから。 春樹:そっか。 美星:・・・春樹さん…。もう、寝て…? 春樹:どうして。君と一秒でも話していたいのに。 美星:これ以上は…別れるのが辛くなる。 春樹:…っ。 美星:いつも気を遣ってご飯を外で食べてくる春樹さんが好きでした。 春樹:うん…。 美星:美星さんに向けたものでも何でも、気持ちを伝えてくれる春樹さんに心が安らいだんです。 春樹:…それは、君への言葉だったんだよ。 美星:ふふ、そうでしたね。不器用なひと。 春樹:ごめん。 美星:うんうん。いいんです。最後に春樹さんの気持ちを知れたから。アンドロイドでも…、恋…していいって思えたから。 春樹:…。 美星:ありがとう、私を、私自身を愛してくれて。ありがとう。本当に、ありがとう。 春樹:…どうして昔のことみたいに。 美星:だってもう、最後だから。 春樹:…っ。好きだよ。大好き。愛してる。 美星:私も……愛してる。 美星:・・・もう、おやすみなさい。 春樹:いやだ、寝ない。眠れない。 美星:…っ、ねぇ、春樹さん?私の目をよく見て。 春樹:君の…目? 美星:私の自慢の目、綺麗でしょ。そう、よく見て。 春樹:あぁ、ほんとだ…綺麗な…目。(眠りにつく) 美星:よかった。…上手く催眠機能が働いた。 美星:…おやすみなさい。…春樹さん。 0: 美星:(M)私はこの日、この人の寝顔を初めて見つめた。 美星:(M)彼の頬に伝う涙を拭うと、指先が水分を感じ取り脳内に警告音が響きわたる。 美星:(M)この心憂(こころう)い気持ちは、私に組み込まれた『美星』のものだ。 美星:(М)三年間の期間限定のものだ。 美星: 美星:(M)何も名前の掘られていない美星サイズの銀のリングを外し、三年ぶりに春樹の家を出る。 美星: 美星:「こちらCAUJ(シーエーユージェイ)三〇四五(サンマルヨンゴ)。次は…どこのお宅でしょう。」 美星:「…っ。了解しました。表情データ、感情データ等を受け取りに参ります。」 0:終

春樹:(はるき)美星のことをとても想っている。なるべく気持ちを言葉にして伝える努力をしている。 美星:(みほし)春樹の彼女。なんだかんだで春樹のことが好き。 0: 0:ここより本文 春樹:(M)期間限定。僕はそんな言葉に極端に弱くて。 春樹:(M)飛びつくのに時間は掛からなかった。 春樹: 春樹: 春樹:(M)沢山の言葉をかけたくて、沢山の愛を注ぎたくて。 春樹:(M)今日もまた、僕は君を起こすのだ。 0: 美星:あぁ、おはようございます。 春樹:おはよう。 春樹:…あのさ、 美星:なんですか? 春樹:今日もかわいいね 美星:ふふ、またそれですか? 春樹:いや、毎日言っとかないと。 美星:ふふふ。ありがとうございます。 春樹:今日は…っと。手帳手帳、どこだったかな。 美星:今日は春樹さんは午前中は9時からお仕事、10時に会議で、お昼は同僚のユキさんと会社から徒歩10分のカフェでお食事、午後もお昼のあと直ぐにお仕事です。 春樹:はは、はーい。ありがと。お昼のとこだけ細かいな、嫉妬してんのか、このぉ。 美星:そんなことありませんよ? 春樹:えぇ、嫉妬くらいしてくれよぉ。 美星:お仕事の人間関係も大事です。そのくらいの聞き分けはあります。 春樹:やっぱちょっと気にしてるじゃんか。 美星:気にしてませんっ。 春樹:はいはい。 美星:もう、全然分かってない。 春樹:分かってる分かってる。ユキともなるべく二人きりでご飯とかは行かないからさ。 美星:もうぅぅぅ! 春樹:はは、朝からからかい甲斐(がい)があるな。 美星:春樹さんなんて知らない。 春樹:え?おこった? 美星:激おこです! 春樹:機嫌直して?ね。 美星:ふふふ、冗談ですよ。 春樹:あぁ、よかったぁ。辞めてくれよ、そんな冗談。 美星:慌てる春樹さんかわいいんですもん。 美星:あ、今日は朝ごはんは? 春樹:君を起こす前に食べたよ。 美星:あぁ、、、そっか、、、。 美星:いつもごめんなさい。 春樹:いいのいいの。 美星:…うーん。 春樹:はいはい、もういいから。ほら、僕のネクタイ締めて。 美星:あ、はーい。これでいいですか? 春樹:うん。ありがと。 春樹:じゃあ行ってくるね。 美星:行ってらっしゃい。 美星:あ、春樹さん! 春樹:どうした? 美星:今日は雨の予定ですよ、傘を。 春樹:げっ。まじで? 美星:マジです。 春樹:どのくらい? 美星:ものすごく。 春樹:嘘だろぉ。おっきい長傘持ってかないと。 美星:嘘です。にわか雨程度だそうです。 春樹:よし!じゃあ折り畳み傘にしよう。 美星:ダメですよ! 春樹:え、なんで? 美星:前もって分かってるんだから、おっきい傘持っていって下さい。風邪、引きますよ? 春樹:えーめんどくさいなぁ。 美星:なんと言ってもダメです。はい、傘どうぞ。 春樹:僕は案外、丈夫だぞ? 美星:だーめーでーす。 春樹:分かった分かった。持ってくよ。教えてくれてありがとう。 美星:ふふ、どういたしまして。 春樹:あ、ねぇ? 美星:どうしたんですか?春樹さん? 春樹:大好きだよ。 美星:こちらこそ大好きですよ。行ってらっしゃい。 春樹:はぁい、行ってきます。 0:間 0:(その日の夜) 美星:あ、春樹さん。おかえりなさい。 春樹:ただいま。 美星:晩御飯はどうしました? 春樹:済ませたよ。 美星:そう…ですか…。 春樹:そんなしょんぼりしないでよ。 美星:うーん、ちなみに何を食べたのです? 春樹:今日はね、中華。 美星:えっと職場の近くのおいしくないことで有名なところ? 春樹:そうそう。そこそこ。実はあそこのお店、春巻きだけはおいしいことで有名なんだ。 美星:それはまたなんで。 春樹:あそこ、春巻きだけは作らずに冷凍食品で出してるからな。 美星:ふふふ、おっもしろい。 美星:晩御飯はおひとりで? 春樹:うん。お昼に同僚と食べるだけでも嫉妬しちゃう子がうちにはいるからね。 美星:もう!またそれですか? 春樹:はは、ほんっとにかわいいなぁ。 美星:(ためらってから)・・・・・・春樹さん? 春樹:なに? 美星:私のことは気にせずにご飯、食べてよかったんですよ。 春樹:・・・あぁ、分かってるよ。 美星:…。 美星:春樹さん? 春樹:なに? 美星:今日で…最後ですよ。 春樹:あぁ、分かってる。 美星:お別れ…言わなくていいんですか?そのための私です。 春樹:…っ。言えないよ。 美星:私じゃ、やっぱり美星さんにはなれませんでした? 春樹:…。 美星:そう…ですよね。どんなに優秀なAI(エーアイ)でも、どんなに美星さんに似せられて加工されても、やっぱり私は機械仕掛けですもんね。 春樹:違くて! 美星:三年一緒に過ごしてけど、一度も私のことを名前を呼んでくれたことすらないですもんね。 春樹:だから、それは!!違うんだ! 美星:なにが? 春樹:だって、、、君は君だから。 美星:え? 春樹:君は君じゃないか。美星と違う。 美星:やっぱ、AI失格でしたか。お力になれなくて、すみません。 春樹:そうじゃなくて! 美星:そうでしょ?だって私はなくなった美星さんの代わりに借り入れられたAIです。 春樹:うん…。確かに僕は国の制度を利用して、三年間限定で死んだ人間の代理品AIを手に入れた。 美星:それが…私。…分かっています。だからこそ、今日までに言わなきゃいけないことを言わないと。また、言えないままお別れになってしまいます。 春樹:うん、僕は美星に言えなかったことを沢山言おうと思ったんだ。 美星:ふふふ、沢山もらいましたよ。代理品でも嬉しかったです。 美星:だからほら、最期の言葉を。 春樹:でもね、やっぱり美星は美星。君は君なんだ。 美星:なん…で。 春樹:そりゃぁ、僕と過ごしてる時間が美星と君とで違うからだよ。 美星:そうですよね…。私が一緒に過ごしたのはたかが三年、美星さんの半分にも満たない。 春樹:長さの話じゃない。美星と君で違う、それだけなんだ。 美星:春樹さん?何を言ってるのです? 春樹:自分でも分からないんだ。なんて言えばいいのかなぁ。美星のことも愛してた。 春樹:でも君には美星に言えなかった言葉を、ホントにちゃんと沢山たくさん捧(ささ)いだんだ。好きだよって、愛してるよって、かわいいねって。 美星:沢山もらったよ春樹さんの言葉。照れて半分も受け止められなかったけど。 春樹:今更、美星になっても無駄だよ。 美星:…え? 春樹:…美星は!僕と一緒に沢山ご飯を楽しむ子だった。 美星:っ…。 春樹:美星は!充電したり、毎晩毎朝、電源を切ったり入れたり!そんな必要なかった。 美星:…そう…ですよね。 春樹:でもね、美星は僕の一日の予定を朝に話したり、出かける前に天気を教えてくれたりしないんだよ。 美星:…それは…春樹さんがおっちょこちょいだから。 春樹:美星はね、好きだよって言っても好きだなんて返してくれなかったんだ。 美星:それは!春樹さんが寂しそうな眼をするから…。 春樹:君はね、僕と過ごしていくうちに変わっていったんだ。 美星:それは、私が…AIだから。学習していくから。 春樹:そうかもしれない。でも…。でも!! 春樹:それでもね、君のことが、美星じゃなくて君が、好きになったんだ。 美星:私を…好き? 春樹:そうだよ、君のことが好きなんだ。 美星:でも…、私は、AIで。美星さんの代わりで…。 春樹:美星はもういない。そっくりの君と生活して…君がそっくりだったからこそ!分かっちゃったんだ。 春樹:美星はもう…いない人なんだって…。 美星:…春樹…さん。 春樹:だからね。これ。受け取ってくれない? 美星:これ…は? 春樹:みて分からない?指輪だよ。 美星:私に? 春樹:そう。君に。僕からの気持ち。 美星:でも、私にはもう、指輪が。 春樹:それは美星のだろ。確か、MIHOSHIって掘ってある。 美星:それは…そうですけど…。 春樹:これはさ、君の。君につけて欲しくて、探し回ったんだ。 美星:春樹さん…。 春樹:ねぇ?僕がこの指輪、君に嵌(は)めてみてもいい? 美星:…っ。はい。 春樹:手出して。 美星:これで…良いですか? 春樹:こういう時は、手のひらじゃなくて手の甲見せるものじゃない? 美星:えっと、じゃあ、こう? 春樹:そうそう。あーごめんな。ずっと美星の指輪つけてたんだな。酷いことした。 美星:ふふ、そのための私だったんですから良いんですよ。 春樹:それでも・・・ごめん。 美星:優しいんですね。 春樹:・・・はい、うん、ピッタリ。やっぱりこの方がいい。 美星:…あはは、素敵。ありがとうございます。 春樹:あぁ、似合ってるよ。こちらこそ、受け取ってくれてありがとう。 0:間 春樹:・・・時間だ。もうそろそろ…君の電源…切るね。 美星:うんうん、いいんです。今日は…最後だから。 春樹:あぁ…、そっか。 美星:うん…。 春樹:ねぇ。 美星:なぁに、春樹さん。 春樹:ほんとに…行っちゃうの? 美星:ほんとに。…もう、戻らないといけないんです。そうプログラミングされてるから。 春樹:そっか。 美星:・・・春樹さん…。もう、寝て…? 春樹:どうして。君と一秒でも話していたいのに。 美星:これ以上は…別れるのが辛くなる。 春樹:…っ。 美星:いつも気を遣ってご飯を外で食べてくる春樹さんが好きでした。 春樹:うん…。 美星:美星さんに向けたものでも何でも、気持ちを伝えてくれる春樹さんに心が安らいだんです。 春樹:…それは、君への言葉だったんだよ。 美星:ふふ、そうでしたね。不器用なひと。 春樹:ごめん。 美星:うんうん。いいんです。最後に春樹さんの気持ちを知れたから。アンドロイドでも…、恋…していいって思えたから。 春樹:…。 美星:ありがとう、私を、私自身を愛してくれて。ありがとう。本当に、ありがとう。 春樹:…どうして昔のことみたいに。 美星:だってもう、最後だから。 春樹:…っ。好きだよ。大好き。愛してる。 美星:私も……愛してる。 美星:・・・もう、おやすみなさい。 春樹:いやだ、寝ない。眠れない。 美星:…っ、ねぇ、春樹さん?私の目をよく見て。 春樹:君の…目? 美星:私の自慢の目、綺麗でしょ。そう、よく見て。 春樹:あぁ、ほんとだ…綺麗な…目。(眠りにつく) 美星:よかった。…上手く催眠機能が働いた。 美星:…おやすみなさい。…春樹さん。 0: 美星:(M)私はこの日、この人の寝顔を初めて見つめた。 美星:(M)彼の頬に伝う涙を拭うと、指先が水分を感じ取り脳内に警告音が響きわたる。 美星:(M)この心憂(こころう)い気持ちは、私に組み込まれた『美星』のものだ。 美星:(М)三年間の期間限定のものだ。 美星: 美星:(M)何も名前の掘られていない美星サイズの銀のリングを外し、三年ぶりに春樹の家を出る。 美星: 美星:「こちらCAUJ(シーエーユージェイ)三〇四五(サンマルヨンゴ)。次は…どこのお宅でしょう。」 美星:「…っ。了解しました。表情データ、感情データ等を受け取りに参ります。」 0:終