台本概要

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タイトル キルズハント
作者名 あまくケイ  (@amak0331)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男3、女2)
時間 60 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 キルズハントは、今日も殺しを狩っている

欲にまみれた殺し屋が蔓延る、とある街「カサドラ」で、殺し屋を狩っているバレットは
ある日、カフェ「サンクス」にて、一人の少年と出会う

ファンタジーな架空の街を舞台にした
殺し屋系のバトルアクションもの
…ですが割とSFとかファンタジーとか入ってます、そんな内容です

性転換可
物語の展開が崩れない軽微なアドリブは可

「迅雷の最適解」外伝
良ければ、
迅雷の最適解
迅雷の最適解Ⅱ~カサドラの雷鳴~
こちらも良ければどうぞ

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
バレット 168 「殺し狩りのバレット」と呼ばれている女性 赤いロングヘアに、肌が露出した黒ドレス カサドラの街で、殺し屋を狩っている 口が悪い、男勝りな性格 コーヒーが苦手で、りんごジュースが好き
ダルケス 155 カフェ「サンクス」の店主 ピンクの髪に、スタイルのいい体に、魅惑を誘う服装 余裕感のある、物腰が柔らかい性格 元殺し屋で、バレットに殺しを教えた師匠でもある 罠で相手をしとめることが多く、罠師のダルケスとも呼ばれている (性転換可。その場合、綺麗なオカマとして演じていただければと思います)
ジャック 87 カサドラの殺し屋 黒いスーツに黒いハットをかぶった背の高い男 バレット達の住む地域とは別の場所で殺しをしていた 表面は紳士的な性格だが、怪しい物言いをするなど、裏が読めない
リッパー 76 カサドラの殺し屋 青いジャケットにオールバックの髪型をした、鋭い目つきの男 ギャンブルと女が好き。戦闘欲も旺盛 考えるより先に手を出したがる性格 兄のジャックに対して、名前呼びすれば、アニキと呼ぶときもある
トレイア 76 カフェ「サンクス」へ息をきらしながらやってきた少年 グレーの髪に、幼い表情。年齢はバレットよりも下 ジャックとリッパーに標的にされている 毒舌を吐いたり、生意気な態度をとる お金に関してケチな一面も
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
バレット:朝日は清らかに顔を見せ バレット:キルズハントは、今日もどこかで狩っている 0: バレット:逃がしはしねえよ 0:1人の殺し屋を狙い撃つバレット バレット:そこまでだよ、殺し屋さん。聴けば、つい最近も手にかけたらしいじゃないか 0:相手は苦渋の表情を浮かべ、すぐさま拳銃を構える バレット:遅いよ 0:銃声が響き、ゆっくりと殺し屋は倒れた バレット:……女にしちゃ、良い動きだったよ 0: 0: 0:2週間後 0:カフェ「サンクス」で楽しそうにコーヒーを淹れているダルケス ダルケス:ふんふんふふん ダルケス:ふんふんふふん ダルケス:最後にひょいっと ダルケス:…あ、しまった ダルケス:…まぁ、これもありかしらね バレット:何やってんの? ダルケス:いらっしゃいの一言も言わせてくれないのね? バレット:よう、って挨拶したろ ダルケス:聞こえなかったわ バレット:聞こえなかったんじゃなくて、聞かなかったんだろ バレット:何そんなしかめた顔してんのさ ダルケス:これ バレット:? ダルケス:? って…分からない?  ダルケス:コーヒーアートよ バレット:それは分かるけど ダルケス:じゃ、これ分かる? 0:ダルケスはそう言って、バレットに覗かせた バレット:カエル? ダルケス:猫よ バレット:嘘だろ? ダルケス:ひっどい反応! バレット:元師匠とは思えないくらいの腕前 ダルケス:そう、殺しとアートは別世界 ダルケス:奥が深いわね、こういうの…面白いわ ダルケス:それで、最近どう? バレット:さらりとごまかすし… バレット:…二週間前に、1人狩った バレット:そんなに棘のある腕じゃなかったけど ダルケス:下っ端(ぱ)じゃ、大元(おおもと)の連中は分からなそうね ダルケス:根っこの浅い草で残念 ダルケス:報酬は? バレット:今日、金ができるって聞いたから。これから向かおうかと ダルケス:そう バレット:…あんたが無理に協力する事ないんだぜ? バレット:カサドラで、殺し屋を狩るって決めたのは、あたし自身だし ダルケス:その決意を現実にするためにお手伝いしたのは、誰かしらねぇ? バレット:それは感謝してるよ バレット:でも、そこまで突っ込むことじゃない バレット:足、洗ったんだろ? ダルケス:…え、バレットちゃん、足フェチなの? ダルケス:いやぁねぇもう~!急に性癖さらしちゃってぇ! バレット:殺し狩りに向かってよく言えるね、その冗談 ダルケス:どんな冗談でも受け止めなさいって教えなかったかしら? バレット:全く、これっぽっちも教わってねえから ダルケス:そうだったかしらね ダルケス:…色々、飽きちゃったのよ、私は ダルケス:金と、男と、ベッドと、銃 ダルケス:毎日見てたら、退屈だわ バレット:それで、経営に目覚めたと ダルケス:自分から動かなくて楽じゃない ダルケス:待ってるだけで人が来るんだもの バレット:それ、あんたのお得意技じゃねえか。罠師のダルケス ダルケス:さらっと異名出さないでくれるかしら バレット:一応、これでも元師匠を尊敬している、もと愛(まな)弟子のつもりなんで ダルケス:もうー、そういうこというんだからぁ ダルケス:…バレットちゃんはもう立派な狩り人よ ダルケス:教えたての頃から、随分と成長したわ ダルケス:だから、そろそろコーヒーくらい飲めてもいいんじゃない? バレット:うっ… バレット:それは苦手なんだって言ってるじゃん… ダルケス:りんごジュースじゃ、私のコーヒースキルが上がらないのよ バレット:悪かったな飲めなくて! ダルケス:うふふ ダルケス:その調子なら、カサドラの平和を夢見ても、良さそうね バレット:ご期待ありがとう、元師匠 バレット:…ほんとは、政府のアンドロイドにでも来てもらえば、一番いいんだろうけど ダルケス:はるばる東の彼方から? それはそれは長い旅になるわねぇ ダルケス:確かにこの街も、政府の管理下にすっぽり収まればいいのだろうけど ダルケス:それはそれで、この街も荒れそうな気がするわ ダルケス:表が政府でも、裏の世界はそう簡単に潰れない ダルケス:それがこのカサドラ ダルケス:ここの治安部隊なんて眉唾(まゆつば)ものだし バレット:どうにもならないから、あたしが狩る バレット:カサドラを平穏の地にするためにな ダルケス:今、絶妙に主人公してるわよ、バレットちゃん ダルケス:はい、りんごジュース バレット:……飲み物で台無しにしてくれないかね ダルケス:あたしも嫌いじゃないけどねぇ、これ バレット:嫌味かよ ダルケス:その甘さも、あなたの魅力よ バレット:はいはい… 0:すると、突然ドアベルがなる トレイア:…っ! ダルケス:いらっしゃ… トレイア:か、匿(かく)まってくれ! ダルケス:えっ? バレット:なんだ、このガキ トレイア:ガキじゃない、トレイアだ バレット:あ? トレイア:追われてる! バレット:っ? ダルケス:客人はおもてなししないとね ダルケス:後ろへ隠れなさい、坊や 0:ダルケスがそう伝えると、トレイアはすぐさま、カウンターの後ろへ隠れた 0:それに続くかのように、店の入り口から、二人の男がやってくる ジャック:… リッパー:…シケた店だな ダルケス:あなた、バーと勘違いしてない? ジャック:申し訳ない ジャック:彼はあまり、こういう場所は苦手なようで バレット:苦手ならなんで来たんだよ ジャック:なに。夜の時間に慣れすぎているから ジャック:少しは陽の光を浴びてもらおうとね リッパー:おいジャック。それはてめえもだろ リッパー:最近も夜中に、はべらせたばっかだろうに ジャック:そうだったか? リッパー:楽しそうに息はいてたじゃねえか リッパー:腕がアンドロイドみてぇに綺麗だったとか ジャック:あぁ。それか ジャック:綺麗な体は格別さ ダルケス:…… ジャック:そんな体つきの良さを思い出していたら、おっと目の前に ジャック:浸りたい過去の思い出が ダルケス:スリル満点な夜だったかしらね ダルケス:残念ながら、ゆったりした夜伽(よとぎ)が好みなのよ、私 リッパー:お前、こいつと交わしてんのかよ ジャック:いや。寸前で断られたさ リッパー:ハメまわしには最適な体つきなのに、もったいねえ ジャック:残念ながら ジャック:互いの化けの皮が、はがれてしまってね バレット:ダルケス、知り合いか? ダルケス:昔の男 ダルケス:騙しあいの夜を過ごしたマトでもあるけど リッパー:あーあー、魅惑の再会を邪魔しちまったな リッパー:ごめんなぁ、アニキ ジャック:謝る気がないくせに ジャック:楽しそうだぞ、リッパー リッパー:はっははは!! リッパー:そりゃそうだ。…見た目で分かるぜ、そこの赤髪 リッパー:…お前、殺し狩りのバレットだろ バレット:夜遊びしたいってこと? そりゃどうも バレット:でも興味ねえからあたしは リッパー:肝も良い感じですわってらぁ(舌なめずりをする) バレット:何処の勢力だ、あんたら バレット:あんまりこの辺じゃ見ない顔だね リッパー:…酒はねえのかよ、ここ ダルケス:ちょっと、看板みてるかしら? リッパー:俺たちのシマなら、もう少し酔える店が多いもんだぜ バレット:気に入らなくて残念。それなら、そのまま回れ右しちまったら? ジャック:仕事をしにきたんだ ダルケス:何の? リッパー:子供、見かけなかったか? トレイア:っ! バレット:…さぁ、どうだろうね ダルケス:知ってたらどうするの? ジャック:おやおや ジャック:いつかの夜を思い出すな、ダルケス ジャック:君のその言いよう、変な匂いがする ジャック:夜遊びが下手になったかな? 0:ジャックはゆっくりと手をポケットに伸ばそうとする ダルケス:動かないで リッパー:お互い様だろ バレット:…っ! 0:4人、一斉に構え始める ジャック:… ダルケス:撃つなら弁償してよ、もう リッパー:負けたばっかだっていってんだろ、金なんかねえよ バレット:その前に狩らせてもらうぜ ジャック:一勝負の前に、ダルケスの珈琲でも味わいたかったが ダルケス:嬉しいじゃないのよぉ バレット:そんなもん飲んでたら集中できないよ ダルケス:そんなもんって…ちょっと酷くなぁい、それ リッパー:興味ねえな ダルケス:だから、あなたは来るところ間違えてるのよ ジャック:これからお酒でも出したらどうだ? ダルケス:まぁ……売れ行きが悪くなったら考えなくはないけど、来ないでよ? あなたたち、危ないから バレット:同感 ジャック:手厳しい リッパー:…あ リッパー:やべぇ リッパー:この感じ、これよな、これ バレット:こんな時に興奮かよ ダルケス:1人でやってきたら? リッパー:目の前に居るのに、1人でやるわけねぇだろうが ジャック:今日はいつにもまして荒いな、リッパー リッパー:いや、これが湧いてきちまった リッパー:もう撃っていいだろ、な? アニキ リッパー:止めらんねぇ ダルケス:お盛んだことで ダルケス:あまりそういうので、店を汚してほしくないんだけどねぇ リッパー:俺はとっとと汚したくて仕方がねぇ ジャック:なら、お前の好きなギャンブルで決めよう 0:ジャックは拳銃を構えながらゆっくりとコインを出す ジャック:どっちにする? リッパー:今の気分は リッパー:表だ ジャック:分かった ダルケス:それ、冗談? ジャック:さぁ、どっちだろうね バレット:……裏が出ることを祈りたいね ジャック:神(かみ)の帝(みかど)にでも祈るかい?殺し狩り バレット:昔の偉人は信じないタチでね ジャック:それは…… 0:ジャックはコインをはじいた ジャック:…残念だ 0:バレットは一瞬、コインを見やった 0:しかし、すぐに目を戻すと バレット:っ! 0:ジャックとリッパーは、引き金に指をかけていた 0:銃声が一気に鳴り響く リッパー:ヒャッハハハハハハハ!! ダルケス:もう! 結果が出てから撃ちなさいよ! ジャック:残念、これはギャンブルじゃなくて、殺しだ バレット:カフェは殺しをする場じゃないっての! リッパー:知らねえな! 0:リッパーは隙を見て、すかさずバレットに近づく バレット:っ……早い! リッパー:こちとらくだらねえ負け金(がね)使っちまったばっかりなんだ リッパー:だから代わりにてめえの股で満たしてくれや、殺し狩りィ!! 0:リッパーはすかさずナイフを取り出す バレット:くっ! リッパー:おらよォッ!! バレット:乱射野郎かと思ったら、器用にナイフを回しやがる…… バレット:何人殺(と)ってきたんだか リッパー:少なくとも、女に飽きねぇくらいはな! 0:ジャックはカウンターに向かって拳銃を撃ちこむ ジャック:さてと。仕事仕事 トレイア:っ!…あ! 0:トレイアはふと、カウンターから顔を出してしまう ジャック:おっと、発見 バレット:マセガキ!顔を出すな! トレイア:うるさいっ!…っ。ひぃ! ジャック:外れたか ジャック:オーケーオーケー、気楽にいこう ジャック:次は君に、銃弾をちゃんとプレゼントしなくちゃ ダルケス:なら、代わりにあげるわ ダルケス:私からのプレゼント ジャック:君からは、より欲しいものがあるんだけどな ジャック:例えば、キスとか ジャック:その、体とか ダルケス:あらそう、プレゼントの中身、間違えたかしらね! 0:ダルケスはそう言って撃ち返す トレイア:ダルケス…ど、どうするのさ ダルケス:隙を見て、裏口から逃げるしかないわ ダルケス:…バレットちゃん! バレット:分かってる! ジャック:ふむ、なら先に殺し狩りを殺(と)るか 0:ジャックが標的をバレットに向けた リッパー:おい!ジャック!俺の女だぜ! ジャック:マトを潰すより、こっちのほうが厄介だ リッパー:…オイオイ。2対1なら、殺(と)ったようなもんだろ リッパー:あーあ、興(きょう)ざめだ バレット:2対1…か バレット:だったら、こっちも2つ 0:バレットはとっさにワンピースの中から拳銃を取り出す リッパー:…まさか リッパー:2匹狩るってか? バレット:あたしなら、あんたら二人まとめて、狩れる リッパー:はは……おもしれえ! せいぜいあがいてみろや! リッパー:鉛だらけにして、ハメまわしてやんよ!! ジャック:お疲れさま、ハンターさん トレイア:っ! ダルケス:こら、出ちゃだめよ トレイア:あれじゃ、殺されて… ダルケス:殺されないのがあの子なのよ トレイア:…っ! 0:リッパーとジャックは、バレットに銃口を構える バレット:…… ジャック:…? リッパー:なんだ…この感覚? バレット:…踊(おど)り狂(くる)え バレット:「マカブリットダンサー」 0:バレットは目の色を変え、二人にめがけて撃ち放った ジャック:っ! リッパー! リッパー:チィッ!! 0: トレイア:…すごい ダルケス:それは、私の弟子だもの ダルケス:ただ、……改装費どれだけかかることやら ダルケス:バレットちゃ~ん! そろそろずらかるわよ! バレット:ああ! ジャック:逃がすか…! ダルケス:残念ながら、最後にトラップを1つ、ぽちっとな リッパー:!? リッパー:派手にしびれるなァこいつは ジャック:電気が流れる……ピアノ線? 変わった芸当だ ダルケス:かかっちゃってもいいのよ? そういうのがお好みなら バレット:とっとと逃げるぞ! ジャック:……引こう リッパー:なんだよ、つまんね リッパー:こっからがメインディッシュなのによ ジャック:もう少しお腹を空かせておけ ジャック:どちらにしよ、仕留めるのだから 0: 0: バレット:…撒(ま)いたか? ダルケス:そりゃ、ビリビリ仕掛けたからね バレット:事前に言っておいてくれよ、あんな罠があるなんて バレット:あやまってかかっちまったら、どうするんだい? ダルケス:欺(あざむ)く時はまず味方からよ、うふふ ダルケス:それに、バレットちゃんなら私の罠くらい、ちょちょいのちょいでかわせるでしょ バレット:買い被りすぎだぜ トレイア:… バレット:とっとと逃げな バレット:用心棒じゃないんだ、あたしは トレイア:なら、金を払う バレット:あ? トレイア:僕を守れ トレイア:それで、あいつらを殺してくれよ トレイア:あんたら強そうだし バレット:ほう、いい態度してんじゃないのさ トレイア:いや、雇ったほうが偉(えら)いから ダルケス:あらぁー。ずいぶん腰の据わった坊やね バレット:ざけんなマセガキ バレット:あたしを昔のナイトとでも勘違いしてんのかい? バレット:そんなヒーローみたいな連中、幻想だよ ダルケス:バレットちゃんの子供嫌い、相変わらずね バレット:うるさい トレイア:ぶっ…。あんたみたいな野蛮な人が、昔のナイト? それ、ウケ狙ってる? 笑えないんだけど バレット:んだと……! ダルケス:毒舌は一人前ねぇ坊や。嫌いじゃないわ ダルケス:…狩りの依頼じゃないけど、とりあえずこの子の用心棒として受けたら? バレットちゃん ダルケス:さっきの二人の殺し屋も、放っておいたら大きくなりそうだし バレット:…で バレット:なんで追われてたんだよ? トレイア:さぁ? 知らないよ、そんなこと トレイア:この街じゃ、誰だって狙われる危険性はある トレイア:それに選ばれただけじゃない? バレット:お前、カタギ? トレイア:ごく一般人だよ バレット:全然信用できねえんだけど、それ トレイア:……ま、それもそうか トレイア:流石に何も言わないのもあれだし トレイア:せっかくだから、その男勝りなところに敬意を評して言ってあげるよ バレット:このマセガキ……! トレイア:……母が殺された バレット:…… トレイア:おそらく、あの二人組 トレイア:母さんは、ヤクの取引にかかわってたから トレイア:依頼主は、母さんが横流ししてたのを知って、マトに選ばれ、あいつらに殺された トレイア:でも、息子の僕も、ヤクの情報知ってると思って、狙ってきてるんだと思う ダルケス:…トレイアちゃんは、関わってないと? トレイア:母さんがヤクに関わってたなんて話、最近聞いたばかりだから バレット:それで トレイア:? バレット:あたしは、何をすればいいのさ ダルケス:やる気ねぇ バレット:ただ。こっちにもキッチリした対価がないとな トレイア:対価? 体とか? 死んでもごめんだね、あんたとは バレット:……口を開けばイラつくことばっかり…… バレット:ほら、とっととだせ、マセガキ トレイア:はい バレット:…… トレイア:どうしたの? バレット:……舐めてんの、あんた? トレイア:コイン一枚に価値がないと? バレット:ああ……こいつ本気で撃っていい?!  ダルケス:落ち着きなさいって バレット:ダルケス!いくら何でも冷静すぎたっての! ダルケス:でもほら、バレットちゃんはキルのほうじゃなくて ダルケス:キルズ達をハントするほうだからさ バレット:だからなんだよ!!! バレット:「殺し屋」じゃなくて「殺し狩り」はタダでやれってか!? ダルケス:まぁまぁ。それに、さっきも言ったけど。あの二人をここで仕留めれば、後々ラクになるかも。私は受けてもいいと思うけどねぇ バレット:…… トレイア:…だめ? バレット:……っ。はぁ バレット:分かった。やるよ。やればいいんだろ トレイア:よし バレット:ガキ、お前ちょっと笑ったろ トレイア:被害妄想じゃない? バレット:殺す!! ダルケス:うふふ、にぎやかねぇホント バレット:悪い意味でな! 0: 0: 0:カフェ「サンクス」 0:カウンターの木材に無数の穴があき、窓も割れ、粉々にグラスがあちこちへと飛散している ジャック:損ねてしまったね リッパー:これからが山場だってのに ジャック:勝手に君が撃つからだろう ジャック:どっちだったか分からない リッパー:嘘つけ。心の中でヨダレたらすなよ、ジャック リッパー:…お。 リッパー:表だぜ 0:リッパーは落ちていたコインを拾った ジャック:景品は逃げてしまったがね リッパー:どこ行きやがったんだか ジャック:心当たりはある リッパー:なんだよ。夜遊び相手の行き先は、手に取るようにわかるってか? ジャック:直接交わさなくても、ある程度、人の考えは分かってしまうもの ジャック:その人のクセ、思考、殺し方 リッパー:だりぃ リッパー:とっとと見つけて殺しちまったほうが早い リッパー:つまらなすぎで同業者に殺(と)られちまいそうだ ジャック:マイペースも悪くないものだよ、リッパー リッパー:虫唾が走るぜ リッパー:口より手を出す リッパー:ピロートークより先にハメる リッパー:価値観の違いは尊重しようぜ、アニキ ジャック:昔からそうだ、お前は ジャック:俺が玩具の人形を綺麗に切り取っている隣で、お前はすぐに壊してしまう ジャック:獲物を追い詰めるほうが最もラクで、最も快楽を得られるというのに リッパー:前座はいらねえ リッパー:早めに裂いちまったほうが美味いだろ ジャック:匂いから楽しむのも一興(いっきょう)ではあると思うけどね リッパー:ケッ。…それにしても、あの殺し狩り リッパー:…強いなぁ、はは リッパー:一回だけじゃ物足りねぇ快感だ、ありゃ リッパー:あいつの股、しっぽりハメた後に裂いてみてぇな ジャック:強者は常に犯し、弱者は犯される ジャック:欲にまみれた強者が、ここでは生き残る ジャック:カサドラの殺し屋は、魔物のようなものさ リッパー:金と、暴力と、女と、あー、なんだ ジャック:音楽 リッパー:アンドロイドは? ジャック:この街にはまだ「無い」 ジャック:…無いといえば、連絡も リッパー:詰め込みすぎて死んだか? ジャック:誰かに殺(と)られていてもおかしくない…か ジャック:一旦、戻るとしよう 0: 0: リッパー:はっ。言った傍から リッパー:見てみろよ リッパー:いい顔して死んでるじゃねえか ジャック:…今日は冴えているかもしれない ジャック:リッパー。今日はお前と賭け事をしても、勝てそうだ リッパー:それは賭博場(とばくじょう)で言うんだな リッパー:一度も俺に勝ったことねぇくせによ リッパー:にしても、…依頼主もご愁傷様だぜ、こいつは ジャック:酷い顔をしている ジャック:生前は優しさにあふれた顔をしていたのに ジャック:恨みつらみも、ここまで来ると圧巻だ リッパー:俺たちが変なものでも、ひきつれちまったか? ジャック:面白いね、リッパー ジャック:ナイトの幽霊に刺されたと ジャック:まるでおとぎ話ようで、ロマンがある、それは リッパー:ただ残念ながら、やったのは生きてる人間だし、刃物じゃねえ リッパー:足跡がかすかに残ってる。リアルって怖いよなァ ジャック:…この様子だと今日の出来事、かな。俺たちと入れ違いか、はたまた狙っていたか リッパー:アンドロイドが来ちまったか? リッパー:それとも噂のサイボーグか ジャック:前者だと良かったのに ジャック:完璧なほうが好きだ ジャック:会って、その四肢を…… リッパー:穴に挿(い)れたほうが、楽しそうだけどな リッパー:人間と違って、100%鉄のカタマリ女ってのはどんな感触やら、はは リッパー:…んで、カマしたあとは……外に出て ジャック:…この方角へ、と ジャック:…はは ジャック:なるほど、なるほど ジャック:命を運ぶと書いて運命 ジャック:基本的に人間は、人間をうらみ続ける、ということか リッパー:…だから、まとめて殺しちまったほうが早いってのに リッパー:ゴタゴタした絡みは好きじゃねえんだよ リッパー:ギャンブルだってそうだ リッパー:一発ハジいて、儲けたほうが快感 リッパー:ちまちま頭使うより、ガッポリ得(え)ちまったほうが好きだ リッパー:それが金にしろ、女の穴にしてもな ジャック:お前とは一緒に、女をモノには出来なさそうだ ジャック:…依頼人は死んだが、殺し狩りは後々脅威となる。ここからはボランティアだ リッパー:ボランティア精神で殺すってな、はは! ジャック:…さて、ぼちぼち行こうか ジャック:神(かみ)の帝(みかど)は、俺達の命を運んでくれるやら リッパー:ジャックも変わってるよな リッパー:カサドラじゃその神(かみ)の帝(みかど)は、汚物(おぶつ)のシンボルなのによ ジャック:なに ジャック:言葉の響きが好きなだけさ 0: 0: トレイア:ねぇ、まだ行くの? バレット:追われてる奴が言うセリフじゃねえんだけど、それ トレイア:どうせあんたら、強いし トレイア:勝てるでしょ バレット:今見捨てちまってもいいんだぜ、マセガキ? ダルケス:トレイアちゃん、勿体ないわね ダルケス:バレットちゃんに対して…。怖いもの知らずというか ダルケス:控えめに言って殺し、向いてるわよ トレイア:……向いてないよ トレイア:母だって、そう思ってただろうし トレイア:トレイアに殺し屋は向かないって トレイア:そんな扱いだよ、僕なんて バレット:あー辛気臭い バレット:そういう話がしたいならよそでやれ トレイア:… ダルケス:バレットちゃん ダルケス:殺し屋の息子でも、一般人なのよ バレット:はぁ。…つか、ここからどうする? バレット:このままじゃ確実に狙われるぜ、あたしたち ダルケス:やれやれ ダルケス:いい場所があるわ バレット:なんだよ? ダルケス:とっておきの隠れ家 ダルケス:ただ、すこーし道がそれるけど 0: トレイア:く、くらい…… ダルケス:それもそうよ。使われてない地下通路だったわけだし バレット:こんな抜け道があるとはね ダルケス:秘密基地ってわくわくするじゃない? ダルケス:私も小さいころは茂みにわざと秘密基地つくったりで バレット:んなことしてたらやられるぞ ダルケス:その頃から、罠のセンスあったみたい、私 バレット:…あー。返り討ちってか トレイア:小さいころから、住んでるの? ダルケス:生まれ故郷だし トレイア:殺しの街が故郷って、外の人たちから見たらどう思うんだろうね バレット:それなら出ていけばいいじゃねえか バレット:狙われなくて済む トレイア:…東の都市まで、すごい距離あるし トレイア:途中の集落や村だって、僕を受け入れてくれるか分からない トレイア:あとは廃墟とか砂漠とか、そんなのばっかだし トレイア:それに、殺し屋の母を、置いていきたくなかった バレット:… ダルケス:政府が中心になってる東の都市、噂には聞くけど、ここより随分と発達しているみたいね バレット:アンドロイド、サイボーグ……耳にするくらいで、実際どんなのか見たことない ダルケス:政府が介入すれば、カサドラは変わっちゃうでしょうね トレイア:サイボーグ…か トレイア:…機械になれば トレイア:痛みなんて、持たなくてすむのかな バレット:バーン 0:バレットが指でトレイアを撃つフリをした トレイア:……っ? バレット:……はぁ バレット:ったく バレット:イチイチ振り返ってんじゃねえよ、バーカ トレイア:っ バレット:今を見ろよ、今を バレット:あんたは今、生きてるだろ トレイア:…何の話? バレット:あたしも、殺されたのさ バレット:…母親 トレイア:…え? バレット:強くなれって、言われてた バレット:この街で生まれたからには バレット:強くなれって バレット:そんだけ トレイア:…… トレイア:……そう、なんだ ダルケス:カサドラにとどまるのよね、バレットちゃんは バレット:別に、嫌いじゃないし バレット:意外と、景色良かったり、街並みも嫌いじゃない バレット:それに、あんたみたいなくだらねえマセガキもいる トレイア:…ぶっ。慰めてるつもり、それ? バレット:なっ…! せっかくあたしの言葉を! ダルケス:バレットちゃん、そういうところ可愛いわよねえ ダルケス:今度りんごジュース、タダにしてあげるわ トレイア:りんごジュース? ダルケス:好きなのよ、甘いもの バレット:ダルケス!あんたなぁ! トレイア:ぶっ、はは! バレット:ほら、予想通りの反応 トレイア:…っ…! トレイア:いや、別に トレイア:面白いとか、思ってないし ダルケス:顔が笑ってるわよ、トレイアちゃん トレイア:笑ってない トレイア:笑って、ないから ダルケス:… ダルケス:さ、そろそろつくわよ 0:地下通路を出ると、ひっそりとした館へたどり着いた バレット:へぇ バレット:使われいてない館、か バレット:家主(やぬし)は? ダルケス:そりゃ私よ バレット:買い取ってんのかここ?! ダルケス:報酬という名の、貯まった退職金でね ダルケス:本当はカフェ経営のお金で買いたかったんだけどねぇ バレット:どっちでもいいだろ ダルケス:後者の方がオーナーっぽいじゃない ダルケス:私の夢だったんだけどねぇ、そういう金で買い取るって ダルケス:現実は厳しいわ トレイア:ここに隠れるの? ダルケス:今は、カフェに戻るよりはマシよ トレイア:でもここ、誰にも入られてない? トレイア:一回もここに住み込んだことない、なんてわけじゃないでしょ? ダルケス:知ってても入れないわけがあるのよ、ここは ダルケス:さ、行きましょ 0: 0: バレット:うわ、きったな。掃除しろよ ダルケス:文句いわないでよぉ、しばらくほったらかしだったんだから トレイア:誰かに「使われた」可能性は? ダルケス:答えはノー ダルケス:傷跡がないもの トレイア:傷跡? ダルケス:あ、そこ危ないわよ トレイア:えっ ダルケス:踏んだらビリっと一発。ゲームオーバー トレイア:っ! バレット:そういうことかい ダルケス:私にあとについてきて ダルケス:少しでも乱れたら、死後の世界で冥王様とご対面よ、うふふ バレット:敵じゃなくて良かったぜ… ダルケス:誉め言葉、ありがとう 0: ダルケス:この部屋なら、罠はないわ バレット:綱渡りってこんな気分なんかね ダルケス:修羅場を潜り抜けてきたレディが何を言うんだか バレット:厳しい師匠は健在と バレット:…まぁここなら、遠くから狙われることはないし トレイア:殺し屋って、罠とか張ったりするんだね トレイア:てっきり、撃ち合いの達人くらいに思ってた ダルケス:撃ち合いだけが殺しじゃないわよ ダルケス:物事って、一部だけ取り上げられやすいけど、もっと複雑 ダルケス:この館だって、人間だって、そう ダルケス:コーヒーアートだって、複雑さが必要なんだから バレット:ここじゃ出来ないけどな ダルケス:それが残念ねぇ バレット:トラップだらけのカフェなんて潰れちまうぜ ダルケス:スリルあるカフェタイムをご提供するって宣伝したら、意外といけそうだったり? バレット:しない ダルケス:もう、辛辣(しんらつ)ねぇ! トレイア:っ…足音! バレット:…来たな バレット:トレイア、隠れてろ トレイア:……うん ダルケス:さぁ、喋ってたらもう客人が バレット:何の客だよ ダルケス:トラップの体験客 ジャック:…いい匂いだ リッパー:ああ、変な匂いだ ジャック:気配がする リッパー:居るってか? ジャック:なに ジャック:進めばわかるさ ダルケス:進む前に落ちちゃうかもねぇ ジャック:…ダルケス リッパー:大当たり リッパー:居場所まで分かっちまうのかよ、アニキ ジャック:さぁ、どうだろうね ジャック:運ばれただけさ ダルケス:あら、恐ろしい ダルケス:その洞察力、大したものよねぇ ダルケス:心も裸にされているようで、あの夜は大変だったわ リッパー:おい リッパー:殺し狩りはどこだよ? ダルケス:もちろんいるわよ リッパー:とっとと会わせろ リッパー:退屈してきた ダルケス:なら、こちらへ来て見なさいな リッパー:クソアマが!! 0:リッパーはライフルを構えて、ダルケスの方向へ撃つ ダルケス:おっと ダルケス:そんなに撃ってちゃ作動しちゃうわよ ジャック:…? ジャック:辺りに光…? いや、なんだ? ダルケス:さてさて、電気の花火といこうかしら ダルケス:「ライトニング・マイト」。なんちゃって ジャック:っ! ダルケス:……ってまぁ、名前つけても雰囲気だけなんだけどねぇ ダルケス:きっと大昔はこんな魔法だったんでしょうって リッパー:オイオイ… ジャック:この広間一帯に、電気を放出するような仕掛け。それも大量に リッパー:はっ! 電気攻め大好きってか! ダルケス:他にもあるわよ? ダルケス:ポチっとな リッパー:!? リッパー:なんだ、あれ? ダルケス:壁が開いて、ジャジャジャジャーン♪ ダルケス:必殺。名付けて「マシンスター」 ダルケス:派手にガンガン、イっちゃうわよぉ! 0:壁から出た設置型ガトリング砲から弾が発射される リッパー:馬鹿でけぇトラップだぜ、まったく ジャック:リッパー リッパー:なんだよ ジャック:俺が「罠」を壊す ジャック:彼女の事は、よく「わかる」 0: ダルケス:!? 0:ジャックはダルケスをけん制射撃しながら、罠の位置を予測して銃弾を当てる 0:すると、当たった箇所に機械のようなものが次々と飛び出て、ガラクタのように崩れ落ちる ダルケス:怖いわねぇ、男って ジャック:楽しいオモチャが満載だね、ダルケス リッパー:だが、しゃらくせえ攻撃も終いだ ダルケス:っ! バレットちゃん! バレット:分かってるつーのっ!!! 0:バレットが奥のほうから飛び出て、リッパーに対して足で攻撃する リッパー:はは…なんだ… リッパー:居るじゃねえかよ…殺し狩りィ!!! 0:リッパーもすかさず腕で防ぎ、蹴りを放つ バレット:っと! バレット:いちいちうるさいのよ、あんたは! リッパー:(舌なめずり)…たまらねぇぜ リッパー:こういう展開だよ、俺が欲しかったのは ジャック:同感 ジャック:俺も、魅惑の過去に再会できた ダルケス:まったく、嬉しくないわね バレット:このまま仕留める……! バレット:踊り狂え……! マカブリット……! リッパー:二度もやらせねえよ バレット:なっ?! リッパー:黒(くろ)に裂かれろや リッパー:黒魔 死錬突(こくま しれんとつ)! バレット:がっ……あ リッパー:…かすったか バレット:…なんだよさっきの バレット:ファンタジーじゃないっての本当に リッパー:ハハハ! てめえも同類だろうよ、殺し狩り ダルケス:バレットちゃん! バレット:問題ねえ! 絶対に仕留めるさ バレット:殺し狩りのバレットを舐めすぎだぜ、師匠 ダルケス:…… ジャック:よそ見なんて傷つくじゃないか、ダルケス ジャック:淋しくなるだろ ダルケス:だいじょうぶよ ジャック:! 後ろ!? 0:後ろの壁から刃物をしばりつけたトラップが回転し、ジャックに迫る ジャック:抱擁(ほうよう)にしては、少し厳しいかな ダルケス:残念、貴方の首がちょんぎれてたのに ジャック:君だけ責めるなんて不公平だ ダルケス:…? 構え方が変わった? ジャック:冥(みょう)へと朽(く)ちよ ジャック:「冥禍 楼苑葬(めいか ろうえんそう)」 ダルケス:っ! …っ…あ…! ダルケス:み、見えなかった……? ダルケス:というか、さっきの……ほんとに銃撃、なの? ジャック:いかがだったかい、殺しのマジックは? ダルケス:…最悪ね…… ジャック:足は撃った……これで動けない ジャック:……はは ジャック:いいね、いい ジャック:動けない物に対しての、この高揚感 ジャック:これだから殺しはやめられない ダルケス:……でも、残念 ジャック:…?  ダルケス:足元、踏んでるわよ ダルケス:最後は甘いのね ジャック:っ! ダルケス:「ショットゼロ」 ダルケス:床から散弾ばらまくってね ジャック:……あ……っ リッパー:アニキ!! リッパー:くそ、くそっ…クソッタレ! バレット:乱れたね リッパー:っ! バレット:命取りだよ、それ 0:バレットはリッパーの隙をつき、銃弾を放つ リッパー:がっ……あ リッパー:…っ バレット:ここまでだよ ジャック:っ…は…はは ダルケス:まだ生きてるのね…しつこい人 ジャック:……しつこいのは、果たして、俺だけ…かな? ダルケス:……? 何の話? ジャック:まぁ…いいさ ジャック:しかし…残念だ。もう少しで、手が届きそうだったのに ダルケス:出会いから間違ってたわね、ごめんなさいな リッパー:あ……アニ、キ…… ジャック:……そう、だな ジャック:まだ…ここで終わりたくはない ジャック:じゃあ、僕からのプレゼントを ジャック:親愛なるダルケスへ 0:ジャックはスーツ中から丸い玉のような「物」を目の前へ投げる ダルケス:!? 爆弾…!? ジャック:マジックさ トレイア:っ! 0:辺り一帯は、大きな炎に包まれる バレット:くそっ! ジャック:ジャック&リッパーは、そう易々と死なないさ ジャック:そうだろ? 弟? リッパー:…ハハ、流石アニキ リッパー:…殺し狩り リッパー:また、ヤろうぜ バレット:っ! 0:ジャックたちは噴煙の中に消えていく ダルケス:地下通路へ逃げるわよ! 0: 0:地下道 ダルケス:はぁ、燃えちゃったじゃないの バレット:改装には、一苦労だな ダルケス:そうね ダルケス:…ただジャックの言い残した言葉が気になるけど ダルケス:っ、痛っ ダルケス:情けないわね、私も トレイア:…機械だったら、良かったのに ダルケス:言われてみれば。痛みも感じずにすむかしら バレット:改造はごめんだよ トレイア:でも トレイア:痛みを感じない方が、楽なのかもね トレイア:そのほうが、やりやすい バレット:…? っ!! 0:バレットは後ろを振り向く 0:トレイアがダルケスの首に刃物をつきたて、もう片方の手で銃を持ち、バレットに向けていた 0:バレットもすかさず銃を抜く バレット:ダルケス! ダルケス:ぐ……っ ダルケス:油断……したわ トレイア:動いたらその首、斬るよ バレット:…あんた トレイア:…ここで死んでくれよ、殺し狩り バレット:…殺しの目、してるね バレット:…全く殺気を感じなかった バレット:一体、どういうことだい? トレイア:…母さんは トレイア:お前に狩られたってことだよ バレット:っ。まさか…2週間前の…あの女の殺し屋…? バレット:…そういうことかい バレット:…そんな話、あるんだね、実際 トレイア:お前は殺し屋を狩って、依頼主は邪魔者が潰せて、お互いに得をしてる トレイア:でも、それで終わらせるわけにはいかない トレイア:だから僕はまず、依頼主を殺した トレイア:ただ、依頼主は僕を消すつもりでジャック達を差し向けていたから、彼らも排除する必要があった トレイア:…事前に、「サンクス」のことも調べていたさ ダルケス:用意…周到ね トレイア:だから店に入って、ジャック達を狩ってもらい、最後に僕がお前を殺す、そういう算段だった…少しくるったけど トレイア:目的が果たせればどうでもいい バレット:…どうすんだよ? トレイア:カサドラなんて、腐った街だ トレイア:全員、クソッタレだ トレイア:機械のほうが、よっぽどましだよ トレイア:こんな……醜い気持ち、覚えなくていいんだからさ トレイア:…だから トレイア:…引く…引いてやるっ! トレイア:母さんの……仇を! バレット:…引けよ バレット:…殺されるぜ? トレイア:…っ…あ… 0:トレイアの手が、震える トレイア:……なんで。……なんでだ、ちくしょう トレイア:…指に、力が…入らない トレイア:なんで、お前なんかに トレイア:お前なんかに……重ねているんだ、僕は トレイア:…母さんは、僕を見下してた トレイア:…ぶっきらぼうなその目で、僕を見て。殺しの出来ないガキだって トレイア:でも、そんな母さんも、僕は好きだった トレイア:だから、殺した奴は、必ず僕が殺すって決めてた トレイア:…なのに…なのに! トレイア:何で、お前さ… トレイア:こんなに、母さんに似てるんだよ バレット:… ダルケス:…トレイア…ちゃん トレイア:…僕も、サイボーグだったら良かった トレイア:簡単に……引き金を引けるから トレイア:そしたら、こんな心の痛みも、苦しみも トレイア:何も感じなくて、すんだのかもしれない バレット:…サイボーグがどういう存在かなんて、知らないけど バレット:人間らしくて、魅力的だよ、あんた トレイア:…っ! トレイア:…ぁぁぁああああっ! 0:両者は銃を引いた トレイア:…が……あ ダルケス:…っ 0:トレイアはゆっくりと倒れる バレット:…でも バレット:銃の扱いは、半人前だね トレイア:…くそ…ちく…しょう トレイア:…お前に トレイア:会わなきゃ……良かった バレット:あたしも、嫌いだったよ バレット:その生意気なところ トレイア:…僕も、お前なんか…嫌いだ 0:トレイアはそう言って、息を引き取った バレット:あばよ、マセガキ 0:数日後、カフェ「サンクス」にて バレット:… ダルケス:今日は、何にするかしら? バレット:…コーヒーで ダルケス:…本気? バレット:いいから ダルケス:……オチは見えてそうだけど ダルケス:はぁ、にしても、またこの店も整理しなきゃ 0: ダルケス:とりあえず、はい バレット:…にっが ダルケス:背伸びしなくてもいいのに ダルケス:それとも、発育のいいからだが欲しくなったかしら? こんな胸とか? 0:そういってダルケスが服を開いて、胸を見せる バレット:胸をさらすな、胸を ダルケス:バレットちゃんも、まぁ、平らではないし、伸びしろはあるわよ バレット:うるせえ、撃つぞ バレット:…… バレット:こういうのは、引きずったら負けだろ バレット:殺し屋を狩ってるんだ バレット:苦いもの飲み込んで流さなきゃ、やられちまうよ ダルケス:敵を欺(あざむ)く時はまず味方から ダルケス:あの子も素質はあったわね バレット:甘いさ、全然 バレット:甘かったよ ダルケス:… ダルケス:はぁ、隠れ家もしばらく入れずかぁ バレット:あの後、どうなったんだよ ダルケス:治安部隊に、隠れ家も通路も入られた ダルケス:ただ、知り合いがいるもので ダルケス:私の店までは立ち入らないようにしてもらったわ バレット:顔が広いやつ バレット:間違えてトラップかけちまうなよ? 罠師のダルケスさん ダルケス:ふふ。私、味方には罠じゃなくて、蜜をあげちゃうほうなのよ ダルケス:特にクールなイケメンとかねぇ…ふふ バレット:蜜以上に違うものが混ざってる気がするけどな… バレット:サイボーグなら、そういうイケメン、いるんじゃないの? ダルケス:でもそれは、顔を見ないと ダルケス:性格だけで人は判断できないわ バレット:顔だけの間違いじゃないのかよ ダルケス:見た目が9割っていうからねぇ バレット:サイボーグの見た目は、ほぼ9割機械だろ ダルケス:どうなのかしらねぇ バレット:まぁ、確かに。どうなんだろうなぁ。見たことないしな。サイボーグにしろ、アンドロイドにしろ… ダルケス:まぁ、どっちでもいいわ バレット:じゃあ、いつぞやの殺し屋は? ダルケス:あれはイカれてたもの ダルケス:ベッドの上でも、キルオーラむんむんだったから バレット:分かったのかよ? ダルケス:香水というか、匂いというか ダルケス:まぁそこは、彼も同じだと思うけど バレット:でも、取り逃がしたのはミスったな… ダルケス:もう少しだったのにね バレット:変な技は使うし、うるさいし… バレット:次会った時は、更に狂暴になってそう ダルケス:あぁ、弟のほう バレット:どうにも変な奴にモテるのかね、あたしは ダルケス:バレットちゃんには、それこそクールなサイボーグキャラが彼氏さんだとお似合いよね バレット:何の話してんだよ ダルケス:殺し狩りにも、色恋沙汰はあったほうがいいと思って バレット:いらねーから、そのクールキャラはお前の好みだろ ダルケス:真面目でいい子が好きだけなのよ。バレットちゃんとかね バレット:あっそ バレット:……なんかしらけちまった バレット:やっぱ、りんごジュースで ダルケス:はいはい ダルケス:今日も甘い朝のようで 0: 0: 0: バレット:狩りの銃弾は放たれる ダルケス:罠は密かに、愛を誘う ジャック:冥(みょう)は魅惑を追い詰めて リッパー:黒(くろ)は快楽を抉(えぐ)りとる トレイア:やがて心の隠者(いんじゃ)は、命を奪われた 0: バレット:朝日は清らかに顔を見せ バレット:キルズハントは、今日もどこかで狩っている

バレット:朝日は清らかに顔を見せ バレット:キルズハントは、今日もどこかで狩っている 0: バレット:逃がしはしねえよ 0:1人の殺し屋を狙い撃つバレット バレット:そこまでだよ、殺し屋さん。聴けば、つい最近も手にかけたらしいじゃないか 0:相手は苦渋の表情を浮かべ、すぐさま拳銃を構える バレット:遅いよ 0:銃声が響き、ゆっくりと殺し屋は倒れた バレット:……女にしちゃ、良い動きだったよ 0: 0: 0:2週間後 0:カフェ「サンクス」で楽しそうにコーヒーを淹れているダルケス ダルケス:ふんふんふふん ダルケス:ふんふんふふん ダルケス:最後にひょいっと ダルケス:…あ、しまった ダルケス:…まぁ、これもありかしらね バレット:何やってんの? ダルケス:いらっしゃいの一言も言わせてくれないのね? バレット:よう、って挨拶したろ ダルケス:聞こえなかったわ バレット:聞こえなかったんじゃなくて、聞かなかったんだろ バレット:何そんなしかめた顔してんのさ ダルケス:これ バレット:? ダルケス:? って…分からない?  ダルケス:コーヒーアートよ バレット:それは分かるけど ダルケス:じゃ、これ分かる? 0:ダルケスはそう言って、バレットに覗かせた バレット:カエル? ダルケス:猫よ バレット:嘘だろ? ダルケス:ひっどい反応! バレット:元師匠とは思えないくらいの腕前 ダルケス:そう、殺しとアートは別世界 ダルケス:奥が深いわね、こういうの…面白いわ ダルケス:それで、最近どう? バレット:さらりとごまかすし… バレット:…二週間前に、1人狩った バレット:そんなに棘のある腕じゃなかったけど ダルケス:下っ端(ぱ)じゃ、大元(おおもと)の連中は分からなそうね ダルケス:根っこの浅い草で残念 ダルケス:報酬は? バレット:今日、金ができるって聞いたから。これから向かおうかと ダルケス:そう バレット:…あんたが無理に協力する事ないんだぜ? バレット:カサドラで、殺し屋を狩るって決めたのは、あたし自身だし ダルケス:その決意を現実にするためにお手伝いしたのは、誰かしらねぇ? バレット:それは感謝してるよ バレット:でも、そこまで突っ込むことじゃない バレット:足、洗ったんだろ? ダルケス:…え、バレットちゃん、足フェチなの? ダルケス:いやぁねぇもう~!急に性癖さらしちゃってぇ! バレット:殺し狩りに向かってよく言えるね、その冗談 ダルケス:どんな冗談でも受け止めなさいって教えなかったかしら? バレット:全く、これっぽっちも教わってねえから ダルケス:そうだったかしらね ダルケス:…色々、飽きちゃったのよ、私は ダルケス:金と、男と、ベッドと、銃 ダルケス:毎日見てたら、退屈だわ バレット:それで、経営に目覚めたと ダルケス:自分から動かなくて楽じゃない ダルケス:待ってるだけで人が来るんだもの バレット:それ、あんたのお得意技じゃねえか。罠師のダルケス ダルケス:さらっと異名出さないでくれるかしら バレット:一応、これでも元師匠を尊敬している、もと愛(まな)弟子のつもりなんで ダルケス:もうー、そういうこというんだからぁ ダルケス:…バレットちゃんはもう立派な狩り人よ ダルケス:教えたての頃から、随分と成長したわ ダルケス:だから、そろそろコーヒーくらい飲めてもいいんじゃない? バレット:うっ… バレット:それは苦手なんだって言ってるじゃん… ダルケス:りんごジュースじゃ、私のコーヒースキルが上がらないのよ バレット:悪かったな飲めなくて! ダルケス:うふふ ダルケス:その調子なら、カサドラの平和を夢見ても、良さそうね バレット:ご期待ありがとう、元師匠 バレット:…ほんとは、政府のアンドロイドにでも来てもらえば、一番いいんだろうけど ダルケス:はるばる東の彼方から? それはそれは長い旅になるわねぇ ダルケス:確かにこの街も、政府の管理下にすっぽり収まればいいのだろうけど ダルケス:それはそれで、この街も荒れそうな気がするわ ダルケス:表が政府でも、裏の世界はそう簡単に潰れない ダルケス:それがこのカサドラ ダルケス:ここの治安部隊なんて眉唾(まゆつば)ものだし バレット:どうにもならないから、あたしが狩る バレット:カサドラを平穏の地にするためにな ダルケス:今、絶妙に主人公してるわよ、バレットちゃん ダルケス:はい、りんごジュース バレット:……飲み物で台無しにしてくれないかね ダルケス:あたしも嫌いじゃないけどねぇ、これ バレット:嫌味かよ ダルケス:その甘さも、あなたの魅力よ バレット:はいはい… 0:すると、突然ドアベルがなる トレイア:…っ! ダルケス:いらっしゃ… トレイア:か、匿(かく)まってくれ! ダルケス:えっ? バレット:なんだ、このガキ トレイア:ガキじゃない、トレイアだ バレット:あ? トレイア:追われてる! バレット:っ? ダルケス:客人はおもてなししないとね ダルケス:後ろへ隠れなさい、坊や 0:ダルケスがそう伝えると、トレイアはすぐさま、カウンターの後ろへ隠れた 0:それに続くかのように、店の入り口から、二人の男がやってくる ジャック:… リッパー:…シケた店だな ダルケス:あなた、バーと勘違いしてない? ジャック:申し訳ない ジャック:彼はあまり、こういう場所は苦手なようで バレット:苦手ならなんで来たんだよ ジャック:なに。夜の時間に慣れすぎているから ジャック:少しは陽の光を浴びてもらおうとね リッパー:おいジャック。それはてめえもだろ リッパー:最近も夜中に、はべらせたばっかだろうに ジャック:そうだったか? リッパー:楽しそうに息はいてたじゃねえか リッパー:腕がアンドロイドみてぇに綺麗だったとか ジャック:あぁ。それか ジャック:綺麗な体は格別さ ダルケス:…… ジャック:そんな体つきの良さを思い出していたら、おっと目の前に ジャック:浸りたい過去の思い出が ダルケス:スリル満点な夜だったかしらね ダルケス:残念ながら、ゆったりした夜伽(よとぎ)が好みなのよ、私 リッパー:お前、こいつと交わしてんのかよ ジャック:いや。寸前で断られたさ リッパー:ハメまわしには最適な体つきなのに、もったいねえ ジャック:残念ながら ジャック:互いの化けの皮が、はがれてしまってね バレット:ダルケス、知り合いか? ダルケス:昔の男 ダルケス:騙しあいの夜を過ごしたマトでもあるけど リッパー:あーあー、魅惑の再会を邪魔しちまったな リッパー:ごめんなぁ、アニキ ジャック:謝る気がないくせに ジャック:楽しそうだぞ、リッパー リッパー:はっははは!! リッパー:そりゃそうだ。…見た目で分かるぜ、そこの赤髪 リッパー:…お前、殺し狩りのバレットだろ バレット:夜遊びしたいってこと? そりゃどうも バレット:でも興味ねえからあたしは リッパー:肝も良い感じですわってらぁ(舌なめずりをする) バレット:何処の勢力だ、あんたら バレット:あんまりこの辺じゃ見ない顔だね リッパー:…酒はねえのかよ、ここ ダルケス:ちょっと、看板みてるかしら? リッパー:俺たちのシマなら、もう少し酔える店が多いもんだぜ バレット:気に入らなくて残念。それなら、そのまま回れ右しちまったら? ジャック:仕事をしにきたんだ ダルケス:何の? リッパー:子供、見かけなかったか? トレイア:っ! バレット:…さぁ、どうだろうね ダルケス:知ってたらどうするの? ジャック:おやおや ジャック:いつかの夜を思い出すな、ダルケス ジャック:君のその言いよう、変な匂いがする ジャック:夜遊びが下手になったかな? 0:ジャックはゆっくりと手をポケットに伸ばそうとする ダルケス:動かないで リッパー:お互い様だろ バレット:…っ! 0:4人、一斉に構え始める ジャック:… ダルケス:撃つなら弁償してよ、もう リッパー:負けたばっかだっていってんだろ、金なんかねえよ バレット:その前に狩らせてもらうぜ ジャック:一勝負の前に、ダルケスの珈琲でも味わいたかったが ダルケス:嬉しいじゃないのよぉ バレット:そんなもん飲んでたら集中できないよ ダルケス:そんなもんって…ちょっと酷くなぁい、それ リッパー:興味ねえな ダルケス:だから、あなたは来るところ間違えてるのよ ジャック:これからお酒でも出したらどうだ? ダルケス:まぁ……売れ行きが悪くなったら考えなくはないけど、来ないでよ? あなたたち、危ないから バレット:同感 ジャック:手厳しい リッパー:…あ リッパー:やべぇ リッパー:この感じ、これよな、これ バレット:こんな時に興奮かよ ダルケス:1人でやってきたら? リッパー:目の前に居るのに、1人でやるわけねぇだろうが ジャック:今日はいつにもまして荒いな、リッパー リッパー:いや、これが湧いてきちまった リッパー:もう撃っていいだろ、な? アニキ リッパー:止めらんねぇ ダルケス:お盛んだことで ダルケス:あまりそういうので、店を汚してほしくないんだけどねぇ リッパー:俺はとっとと汚したくて仕方がねぇ ジャック:なら、お前の好きなギャンブルで決めよう 0:ジャックは拳銃を構えながらゆっくりとコインを出す ジャック:どっちにする? リッパー:今の気分は リッパー:表だ ジャック:分かった ダルケス:それ、冗談? ジャック:さぁ、どっちだろうね バレット:……裏が出ることを祈りたいね ジャック:神(かみ)の帝(みかど)にでも祈るかい?殺し狩り バレット:昔の偉人は信じないタチでね ジャック:それは…… 0:ジャックはコインをはじいた ジャック:…残念だ 0:バレットは一瞬、コインを見やった 0:しかし、すぐに目を戻すと バレット:っ! 0:ジャックとリッパーは、引き金に指をかけていた 0:銃声が一気に鳴り響く リッパー:ヒャッハハハハハハハ!! ダルケス:もう! 結果が出てから撃ちなさいよ! ジャック:残念、これはギャンブルじゃなくて、殺しだ バレット:カフェは殺しをする場じゃないっての! リッパー:知らねえな! 0:リッパーは隙を見て、すかさずバレットに近づく バレット:っ……早い! リッパー:こちとらくだらねえ負け金(がね)使っちまったばっかりなんだ リッパー:だから代わりにてめえの股で満たしてくれや、殺し狩りィ!! 0:リッパーはすかさずナイフを取り出す バレット:くっ! リッパー:おらよォッ!! バレット:乱射野郎かと思ったら、器用にナイフを回しやがる…… バレット:何人殺(と)ってきたんだか リッパー:少なくとも、女に飽きねぇくらいはな! 0:ジャックはカウンターに向かって拳銃を撃ちこむ ジャック:さてと。仕事仕事 トレイア:っ!…あ! 0:トレイアはふと、カウンターから顔を出してしまう ジャック:おっと、発見 バレット:マセガキ!顔を出すな! トレイア:うるさいっ!…っ。ひぃ! ジャック:外れたか ジャック:オーケーオーケー、気楽にいこう ジャック:次は君に、銃弾をちゃんとプレゼントしなくちゃ ダルケス:なら、代わりにあげるわ ダルケス:私からのプレゼント ジャック:君からは、より欲しいものがあるんだけどな ジャック:例えば、キスとか ジャック:その、体とか ダルケス:あらそう、プレゼントの中身、間違えたかしらね! 0:ダルケスはそう言って撃ち返す トレイア:ダルケス…ど、どうするのさ ダルケス:隙を見て、裏口から逃げるしかないわ ダルケス:…バレットちゃん! バレット:分かってる! ジャック:ふむ、なら先に殺し狩りを殺(と)るか 0:ジャックが標的をバレットに向けた リッパー:おい!ジャック!俺の女だぜ! ジャック:マトを潰すより、こっちのほうが厄介だ リッパー:…オイオイ。2対1なら、殺(と)ったようなもんだろ リッパー:あーあ、興(きょう)ざめだ バレット:2対1…か バレット:だったら、こっちも2つ 0:バレットはとっさにワンピースの中から拳銃を取り出す リッパー:…まさか リッパー:2匹狩るってか? バレット:あたしなら、あんたら二人まとめて、狩れる リッパー:はは……おもしれえ! せいぜいあがいてみろや! リッパー:鉛だらけにして、ハメまわしてやんよ!! ジャック:お疲れさま、ハンターさん トレイア:っ! ダルケス:こら、出ちゃだめよ トレイア:あれじゃ、殺されて… ダルケス:殺されないのがあの子なのよ トレイア:…っ! 0:リッパーとジャックは、バレットに銃口を構える バレット:…… ジャック:…? リッパー:なんだ…この感覚? バレット:…踊(おど)り狂(くる)え バレット:「マカブリットダンサー」 0:バレットは目の色を変え、二人にめがけて撃ち放った ジャック:っ! リッパー! リッパー:チィッ!! 0: トレイア:…すごい ダルケス:それは、私の弟子だもの ダルケス:ただ、……改装費どれだけかかることやら ダルケス:バレットちゃ~ん! そろそろずらかるわよ! バレット:ああ! ジャック:逃がすか…! ダルケス:残念ながら、最後にトラップを1つ、ぽちっとな リッパー:!? リッパー:派手にしびれるなァこいつは ジャック:電気が流れる……ピアノ線? 変わった芸当だ ダルケス:かかっちゃってもいいのよ? そういうのがお好みなら バレット:とっとと逃げるぞ! ジャック:……引こう リッパー:なんだよ、つまんね リッパー:こっからがメインディッシュなのによ ジャック:もう少しお腹を空かせておけ ジャック:どちらにしよ、仕留めるのだから 0: 0: バレット:…撒(ま)いたか? ダルケス:そりゃ、ビリビリ仕掛けたからね バレット:事前に言っておいてくれよ、あんな罠があるなんて バレット:あやまってかかっちまったら、どうするんだい? ダルケス:欺(あざむ)く時はまず味方からよ、うふふ ダルケス:それに、バレットちゃんなら私の罠くらい、ちょちょいのちょいでかわせるでしょ バレット:買い被りすぎだぜ トレイア:… バレット:とっとと逃げな バレット:用心棒じゃないんだ、あたしは トレイア:なら、金を払う バレット:あ? トレイア:僕を守れ トレイア:それで、あいつらを殺してくれよ トレイア:あんたら強そうだし バレット:ほう、いい態度してんじゃないのさ トレイア:いや、雇ったほうが偉(えら)いから ダルケス:あらぁー。ずいぶん腰の据わった坊やね バレット:ざけんなマセガキ バレット:あたしを昔のナイトとでも勘違いしてんのかい? バレット:そんなヒーローみたいな連中、幻想だよ ダルケス:バレットちゃんの子供嫌い、相変わらずね バレット:うるさい トレイア:ぶっ…。あんたみたいな野蛮な人が、昔のナイト? それ、ウケ狙ってる? 笑えないんだけど バレット:んだと……! ダルケス:毒舌は一人前ねぇ坊や。嫌いじゃないわ ダルケス:…狩りの依頼じゃないけど、とりあえずこの子の用心棒として受けたら? バレットちゃん ダルケス:さっきの二人の殺し屋も、放っておいたら大きくなりそうだし バレット:…で バレット:なんで追われてたんだよ? トレイア:さぁ? 知らないよ、そんなこと トレイア:この街じゃ、誰だって狙われる危険性はある トレイア:それに選ばれただけじゃない? バレット:お前、カタギ? トレイア:ごく一般人だよ バレット:全然信用できねえんだけど、それ トレイア:……ま、それもそうか トレイア:流石に何も言わないのもあれだし トレイア:せっかくだから、その男勝りなところに敬意を評して言ってあげるよ バレット:このマセガキ……! トレイア:……母が殺された バレット:…… トレイア:おそらく、あの二人組 トレイア:母さんは、ヤクの取引にかかわってたから トレイア:依頼主は、母さんが横流ししてたのを知って、マトに選ばれ、あいつらに殺された トレイア:でも、息子の僕も、ヤクの情報知ってると思って、狙ってきてるんだと思う ダルケス:…トレイアちゃんは、関わってないと? トレイア:母さんがヤクに関わってたなんて話、最近聞いたばかりだから バレット:それで トレイア:? バレット:あたしは、何をすればいいのさ ダルケス:やる気ねぇ バレット:ただ。こっちにもキッチリした対価がないとな トレイア:対価? 体とか? 死んでもごめんだね、あんたとは バレット:……口を開けばイラつくことばっかり…… バレット:ほら、とっととだせ、マセガキ トレイア:はい バレット:…… トレイア:どうしたの? バレット:……舐めてんの、あんた? トレイア:コイン一枚に価値がないと? バレット:ああ……こいつ本気で撃っていい?!  ダルケス:落ち着きなさいって バレット:ダルケス!いくら何でも冷静すぎたっての! ダルケス:でもほら、バレットちゃんはキルのほうじゃなくて ダルケス:キルズ達をハントするほうだからさ バレット:だからなんだよ!!! バレット:「殺し屋」じゃなくて「殺し狩り」はタダでやれってか!? ダルケス:まぁまぁ。それに、さっきも言ったけど。あの二人をここで仕留めれば、後々ラクになるかも。私は受けてもいいと思うけどねぇ バレット:…… トレイア:…だめ? バレット:……っ。はぁ バレット:分かった。やるよ。やればいいんだろ トレイア:よし バレット:ガキ、お前ちょっと笑ったろ トレイア:被害妄想じゃない? バレット:殺す!! ダルケス:うふふ、にぎやかねぇホント バレット:悪い意味でな! 0: 0: 0:カフェ「サンクス」 0:カウンターの木材に無数の穴があき、窓も割れ、粉々にグラスがあちこちへと飛散している ジャック:損ねてしまったね リッパー:これからが山場だってのに ジャック:勝手に君が撃つからだろう ジャック:どっちだったか分からない リッパー:嘘つけ。心の中でヨダレたらすなよ、ジャック リッパー:…お。 リッパー:表だぜ 0:リッパーは落ちていたコインを拾った ジャック:景品は逃げてしまったがね リッパー:どこ行きやがったんだか ジャック:心当たりはある リッパー:なんだよ。夜遊び相手の行き先は、手に取るようにわかるってか? ジャック:直接交わさなくても、ある程度、人の考えは分かってしまうもの ジャック:その人のクセ、思考、殺し方 リッパー:だりぃ リッパー:とっとと見つけて殺しちまったほうが早い リッパー:つまらなすぎで同業者に殺(と)られちまいそうだ ジャック:マイペースも悪くないものだよ、リッパー リッパー:虫唾が走るぜ リッパー:口より手を出す リッパー:ピロートークより先にハメる リッパー:価値観の違いは尊重しようぜ、アニキ ジャック:昔からそうだ、お前は ジャック:俺が玩具の人形を綺麗に切り取っている隣で、お前はすぐに壊してしまう ジャック:獲物を追い詰めるほうが最もラクで、最も快楽を得られるというのに リッパー:前座はいらねえ リッパー:早めに裂いちまったほうが美味いだろ ジャック:匂いから楽しむのも一興(いっきょう)ではあると思うけどね リッパー:ケッ。…それにしても、あの殺し狩り リッパー:…強いなぁ、はは リッパー:一回だけじゃ物足りねぇ快感だ、ありゃ リッパー:あいつの股、しっぽりハメた後に裂いてみてぇな ジャック:強者は常に犯し、弱者は犯される ジャック:欲にまみれた強者が、ここでは生き残る ジャック:カサドラの殺し屋は、魔物のようなものさ リッパー:金と、暴力と、女と、あー、なんだ ジャック:音楽 リッパー:アンドロイドは? ジャック:この街にはまだ「無い」 ジャック:…無いといえば、連絡も リッパー:詰め込みすぎて死んだか? ジャック:誰かに殺(と)られていてもおかしくない…か ジャック:一旦、戻るとしよう 0: 0: リッパー:はっ。言った傍から リッパー:見てみろよ リッパー:いい顔して死んでるじゃねえか ジャック:…今日は冴えているかもしれない ジャック:リッパー。今日はお前と賭け事をしても、勝てそうだ リッパー:それは賭博場(とばくじょう)で言うんだな リッパー:一度も俺に勝ったことねぇくせによ リッパー:にしても、…依頼主もご愁傷様だぜ、こいつは ジャック:酷い顔をしている ジャック:生前は優しさにあふれた顔をしていたのに ジャック:恨みつらみも、ここまで来ると圧巻だ リッパー:俺たちが変なものでも、ひきつれちまったか? ジャック:面白いね、リッパー ジャック:ナイトの幽霊に刺されたと ジャック:まるでおとぎ話ようで、ロマンがある、それは リッパー:ただ残念ながら、やったのは生きてる人間だし、刃物じゃねえ リッパー:足跡がかすかに残ってる。リアルって怖いよなァ ジャック:…この様子だと今日の出来事、かな。俺たちと入れ違いか、はたまた狙っていたか リッパー:アンドロイドが来ちまったか? リッパー:それとも噂のサイボーグか ジャック:前者だと良かったのに ジャック:完璧なほうが好きだ ジャック:会って、その四肢を…… リッパー:穴に挿(い)れたほうが、楽しそうだけどな リッパー:人間と違って、100%鉄のカタマリ女ってのはどんな感触やら、はは リッパー:…んで、カマしたあとは……外に出て ジャック:…この方角へ、と ジャック:…はは ジャック:なるほど、なるほど ジャック:命を運ぶと書いて運命 ジャック:基本的に人間は、人間をうらみ続ける、ということか リッパー:…だから、まとめて殺しちまったほうが早いってのに リッパー:ゴタゴタした絡みは好きじゃねえんだよ リッパー:ギャンブルだってそうだ リッパー:一発ハジいて、儲けたほうが快感 リッパー:ちまちま頭使うより、ガッポリ得(え)ちまったほうが好きだ リッパー:それが金にしろ、女の穴にしてもな ジャック:お前とは一緒に、女をモノには出来なさそうだ ジャック:…依頼人は死んだが、殺し狩りは後々脅威となる。ここからはボランティアだ リッパー:ボランティア精神で殺すってな、はは! ジャック:…さて、ぼちぼち行こうか ジャック:神(かみ)の帝(みかど)は、俺達の命を運んでくれるやら リッパー:ジャックも変わってるよな リッパー:カサドラじゃその神(かみ)の帝(みかど)は、汚物(おぶつ)のシンボルなのによ ジャック:なに ジャック:言葉の響きが好きなだけさ 0: 0: トレイア:ねぇ、まだ行くの? バレット:追われてる奴が言うセリフじゃねえんだけど、それ トレイア:どうせあんたら、強いし トレイア:勝てるでしょ バレット:今見捨てちまってもいいんだぜ、マセガキ? ダルケス:トレイアちゃん、勿体ないわね ダルケス:バレットちゃんに対して…。怖いもの知らずというか ダルケス:控えめに言って殺し、向いてるわよ トレイア:……向いてないよ トレイア:母だって、そう思ってただろうし トレイア:トレイアに殺し屋は向かないって トレイア:そんな扱いだよ、僕なんて バレット:あー辛気臭い バレット:そういう話がしたいならよそでやれ トレイア:… ダルケス:バレットちゃん ダルケス:殺し屋の息子でも、一般人なのよ バレット:はぁ。…つか、ここからどうする? バレット:このままじゃ確実に狙われるぜ、あたしたち ダルケス:やれやれ ダルケス:いい場所があるわ バレット:なんだよ? ダルケス:とっておきの隠れ家 ダルケス:ただ、すこーし道がそれるけど 0: トレイア:く、くらい…… ダルケス:それもそうよ。使われてない地下通路だったわけだし バレット:こんな抜け道があるとはね ダルケス:秘密基地ってわくわくするじゃない? ダルケス:私も小さいころは茂みにわざと秘密基地つくったりで バレット:んなことしてたらやられるぞ ダルケス:その頃から、罠のセンスあったみたい、私 バレット:…あー。返り討ちってか トレイア:小さいころから、住んでるの? ダルケス:生まれ故郷だし トレイア:殺しの街が故郷って、外の人たちから見たらどう思うんだろうね バレット:それなら出ていけばいいじゃねえか バレット:狙われなくて済む トレイア:…東の都市まで、すごい距離あるし トレイア:途中の集落や村だって、僕を受け入れてくれるか分からない トレイア:あとは廃墟とか砂漠とか、そんなのばっかだし トレイア:それに、殺し屋の母を、置いていきたくなかった バレット:… ダルケス:政府が中心になってる東の都市、噂には聞くけど、ここより随分と発達しているみたいね バレット:アンドロイド、サイボーグ……耳にするくらいで、実際どんなのか見たことない ダルケス:政府が介入すれば、カサドラは変わっちゃうでしょうね トレイア:サイボーグ…か トレイア:…機械になれば トレイア:痛みなんて、持たなくてすむのかな バレット:バーン 0:バレットが指でトレイアを撃つフリをした トレイア:……っ? バレット:……はぁ バレット:ったく バレット:イチイチ振り返ってんじゃねえよ、バーカ トレイア:っ バレット:今を見ろよ、今を バレット:あんたは今、生きてるだろ トレイア:…何の話? バレット:あたしも、殺されたのさ バレット:…母親 トレイア:…え? バレット:強くなれって、言われてた バレット:この街で生まれたからには バレット:強くなれって バレット:そんだけ トレイア:…… トレイア:……そう、なんだ ダルケス:カサドラにとどまるのよね、バレットちゃんは バレット:別に、嫌いじゃないし バレット:意外と、景色良かったり、街並みも嫌いじゃない バレット:それに、あんたみたいなくだらねえマセガキもいる トレイア:…ぶっ。慰めてるつもり、それ? バレット:なっ…! せっかくあたしの言葉を! ダルケス:バレットちゃん、そういうところ可愛いわよねえ ダルケス:今度りんごジュース、タダにしてあげるわ トレイア:りんごジュース? ダルケス:好きなのよ、甘いもの バレット:ダルケス!あんたなぁ! トレイア:ぶっ、はは! バレット:ほら、予想通りの反応 トレイア:…っ…! トレイア:いや、別に トレイア:面白いとか、思ってないし ダルケス:顔が笑ってるわよ、トレイアちゃん トレイア:笑ってない トレイア:笑って、ないから ダルケス:… ダルケス:さ、そろそろつくわよ 0:地下通路を出ると、ひっそりとした館へたどり着いた バレット:へぇ バレット:使われいてない館、か バレット:家主(やぬし)は? ダルケス:そりゃ私よ バレット:買い取ってんのかここ?! ダルケス:報酬という名の、貯まった退職金でね ダルケス:本当はカフェ経営のお金で買いたかったんだけどねぇ バレット:どっちでもいいだろ ダルケス:後者の方がオーナーっぽいじゃない ダルケス:私の夢だったんだけどねぇ、そういう金で買い取るって ダルケス:現実は厳しいわ トレイア:ここに隠れるの? ダルケス:今は、カフェに戻るよりはマシよ トレイア:でもここ、誰にも入られてない? トレイア:一回もここに住み込んだことない、なんてわけじゃないでしょ? ダルケス:知ってても入れないわけがあるのよ、ここは ダルケス:さ、行きましょ 0: 0: バレット:うわ、きったな。掃除しろよ ダルケス:文句いわないでよぉ、しばらくほったらかしだったんだから トレイア:誰かに「使われた」可能性は? ダルケス:答えはノー ダルケス:傷跡がないもの トレイア:傷跡? ダルケス:あ、そこ危ないわよ トレイア:えっ ダルケス:踏んだらビリっと一発。ゲームオーバー トレイア:っ! バレット:そういうことかい ダルケス:私にあとについてきて ダルケス:少しでも乱れたら、死後の世界で冥王様とご対面よ、うふふ バレット:敵じゃなくて良かったぜ… ダルケス:誉め言葉、ありがとう 0: ダルケス:この部屋なら、罠はないわ バレット:綱渡りってこんな気分なんかね ダルケス:修羅場を潜り抜けてきたレディが何を言うんだか バレット:厳しい師匠は健在と バレット:…まぁここなら、遠くから狙われることはないし トレイア:殺し屋って、罠とか張ったりするんだね トレイア:てっきり、撃ち合いの達人くらいに思ってた ダルケス:撃ち合いだけが殺しじゃないわよ ダルケス:物事って、一部だけ取り上げられやすいけど、もっと複雑 ダルケス:この館だって、人間だって、そう ダルケス:コーヒーアートだって、複雑さが必要なんだから バレット:ここじゃ出来ないけどな ダルケス:それが残念ねぇ バレット:トラップだらけのカフェなんて潰れちまうぜ ダルケス:スリルあるカフェタイムをご提供するって宣伝したら、意外といけそうだったり? バレット:しない ダルケス:もう、辛辣(しんらつ)ねぇ! トレイア:っ…足音! バレット:…来たな バレット:トレイア、隠れてろ トレイア:……うん ダルケス:さぁ、喋ってたらもう客人が バレット:何の客だよ ダルケス:トラップの体験客 ジャック:…いい匂いだ リッパー:ああ、変な匂いだ ジャック:気配がする リッパー:居るってか? ジャック:なに ジャック:進めばわかるさ ダルケス:進む前に落ちちゃうかもねぇ ジャック:…ダルケス リッパー:大当たり リッパー:居場所まで分かっちまうのかよ、アニキ ジャック:さぁ、どうだろうね ジャック:運ばれただけさ ダルケス:あら、恐ろしい ダルケス:その洞察力、大したものよねぇ ダルケス:心も裸にされているようで、あの夜は大変だったわ リッパー:おい リッパー:殺し狩りはどこだよ? ダルケス:もちろんいるわよ リッパー:とっとと会わせろ リッパー:退屈してきた ダルケス:なら、こちらへ来て見なさいな リッパー:クソアマが!! 0:リッパーはライフルを構えて、ダルケスの方向へ撃つ ダルケス:おっと ダルケス:そんなに撃ってちゃ作動しちゃうわよ ジャック:…? ジャック:辺りに光…? いや、なんだ? ダルケス:さてさて、電気の花火といこうかしら ダルケス:「ライトニング・マイト」。なんちゃって ジャック:っ! ダルケス:……ってまぁ、名前つけても雰囲気だけなんだけどねぇ ダルケス:きっと大昔はこんな魔法だったんでしょうって リッパー:オイオイ… ジャック:この広間一帯に、電気を放出するような仕掛け。それも大量に リッパー:はっ! 電気攻め大好きってか! ダルケス:他にもあるわよ? ダルケス:ポチっとな リッパー:!? リッパー:なんだ、あれ? ダルケス:壁が開いて、ジャジャジャジャーン♪ ダルケス:必殺。名付けて「マシンスター」 ダルケス:派手にガンガン、イっちゃうわよぉ! 0:壁から出た設置型ガトリング砲から弾が発射される リッパー:馬鹿でけぇトラップだぜ、まったく ジャック:リッパー リッパー:なんだよ ジャック:俺が「罠」を壊す ジャック:彼女の事は、よく「わかる」 0: ダルケス:!? 0:ジャックはダルケスをけん制射撃しながら、罠の位置を予測して銃弾を当てる 0:すると、当たった箇所に機械のようなものが次々と飛び出て、ガラクタのように崩れ落ちる ダルケス:怖いわねぇ、男って ジャック:楽しいオモチャが満載だね、ダルケス リッパー:だが、しゃらくせえ攻撃も終いだ ダルケス:っ! バレットちゃん! バレット:分かってるつーのっ!!! 0:バレットが奥のほうから飛び出て、リッパーに対して足で攻撃する リッパー:はは…なんだ… リッパー:居るじゃねえかよ…殺し狩りィ!!! 0:リッパーもすかさず腕で防ぎ、蹴りを放つ バレット:っと! バレット:いちいちうるさいのよ、あんたは! リッパー:(舌なめずり)…たまらねぇぜ リッパー:こういう展開だよ、俺が欲しかったのは ジャック:同感 ジャック:俺も、魅惑の過去に再会できた ダルケス:まったく、嬉しくないわね バレット:このまま仕留める……! バレット:踊り狂え……! マカブリット……! リッパー:二度もやらせねえよ バレット:なっ?! リッパー:黒(くろ)に裂かれろや リッパー:黒魔 死錬突(こくま しれんとつ)! バレット:がっ……あ リッパー:…かすったか バレット:…なんだよさっきの バレット:ファンタジーじゃないっての本当に リッパー:ハハハ! てめえも同類だろうよ、殺し狩り ダルケス:バレットちゃん! バレット:問題ねえ! 絶対に仕留めるさ バレット:殺し狩りのバレットを舐めすぎだぜ、師匠 ダルケス:…… ジャック:よそ見なんて傷つくじゃないか、ダルケス ジャック:淋しくなるだろ ダルケス:だいじょうぶよ ジャック:! 後ろ!? 0:後ろの壁から刃物をしばりつけたトラップが回転し、ジャックに迫る ジャック:抱擁(ほうよう)にしては、少し厳しいかな ダルケス:残念、貴方の首がちょんぎれてたのに ジャック:君だけ責めるなんて不公平だ ダルケス:…? 構え方が変わった? ジャック:冥(みょう)へと朽(く)ちよ ジャック:「冥禍 楼苑葬(めいか ろうえんそう)」 ダルケス:っ! …っ…あ…! ダルケス:み、見えなかった……? ダルケス:というか、さっきの……ほんとに銃撃、なの? ジャック:いかがだったかい、殺しのマジックは? ダルケス:…最悪ね…… ジャック:足は撃った……これで動けない ジャック:……はは ジャック:いいね、いい ジャック:動けない物に対しての、この高揚感 ジャック:これだから殺しはやめられない ダルケス:……でも、残念 ジャック:…?  ダルケス:足元、踏んでるわよ ダルケス:最後は甘いのね ジャック:っ! ダルケス:「ショットゼロ」 ダルケス:床から散弾ばらまくってね ジャック:……あ……っ リッパー:アニキ!! リッパー:くそ、くそっ…クソッタレ! バレット:乱れたね リッパー:っ! バレット:命取りだよ、それ 0:バレットはリッパーの隙をつき、銃弾を放つ リッパー:がっ……あ リッパー:…っ バレット:ここまでだよ ジャック:っ…は…はは ダルケス:まだ生きてるのね…しつこい人 ジャック:……しつこいのは、果たして、俺だけ…かな? ダルケス:……? 何の話? ジャック:まぁ…いいさ ジャック:しかし…残念だ。もう少しで、手が届きそうだったのに ダルケス:出会いから間違ってたわね、ごめんなさいな リッパー:あ……アニ、キ…… ジャック:……そう、だな ジャック:まだ…ここで終わりたくはない ジャック:じゃあ、僕からのプレゼントを ジャック:親愛なるダルケスへ 0:ジャックはスーツ中から丸い玉のような「物」を目の前へ投げる ダルケス:!? 爆弾…!? ジャック:マジックさ トレイア:っ! 0:辺り一帯は、大きな炎に包まれる バレット:くそっ! ジャック:ジャック&リッパーは、そう易々と死なないさ ジャック:そうだろ? 弟? リッパー:…ハハ、流石アニキ リッパー:…殺し狩り リッパー:また、ヤろうぜ バレット:っ! 0:ジャックたちは噴煙の中に消えていく ダルケス:地下通路へ逃げるわよ! 0: 0:地下道 ダルケス:はぁ、燃えちゃったじゃないの バレット:改装には、一苦労だな ダルケス:そうね ダルケス:…ただジャックの言い残した言葉が気になるけど ダルケス:っ、痛っ ダルケス:情けないわね、私も トレイア:…機械だったら、良かったのに ダルケス:言われてみれば。痛みも感じずにすむかしら バレット:改造はごめんだよ トレイア:でも トレイア:痛みを感じない方が、楽なのかもね トレイア:そのほうが、やりやすい バレット:…? っ!! 0:バレットは後ろを振り向く 0:トレイアがダルケスの首に刃物をつきたて、もう片方の手で銃を持ち、バレットに向けていた 0:バレットもすかさず銃を抜く バレット:ダルケス! ダルケス:ぐ……っ ダルケス:油断……したわ トレイア:動いたらその首、斬るよ バレット:…あんた トレイア:…ここで死んでくれよ、殺し狩り バレット:…殺しの目、してるね バレット:…全く殺気を感じなかった バレット:一体、どういうことだい? トレイア:…母さんは トレイア:お前に狩られたってことだよ バレット:っ。まさか…2週間前の…あの女の殺し屋…? バレット:…そういうことかい バレット:…そんな話、あるんだね、実際 トレイア:お前は殺し屋を狩って、依頼主は邪魔者が潰せて、お互いに得をしてる トレイア:でも、それで終わらせるわけにはいかない トレイア:だから僕はまず、依頼主を殺した トレイア:ただ、依頼主は僕を消すつもりでジャック達を差し向けていたから、彼らも排除する必要があった トレイア:…事前に、「サンクス」のことも調べていたさ ダルケス:用意…周到ね トレイア:だから店に入って、ジャック達を狩ってもらい、最後に僕がお前を殺す、そういう算段だった…少しくるったけど トレイア:目的が果たせればどうでもいい バレット:…どうすんだよ? トレイア:カサドラなんて、腐った街だ トレイア:全員、クソッタレだ トレイア:機械のほうが、よっぽどましだよ トレイア:こんな……醜い気持ち、覚えなくていいんだからさ トレイア:…だから トレイア:…引く…引いてやるっ! トレイア:母さんの……仇を! バレット:…引けよ バレット:…殺されるぜ? トレイア:…っ…あ… 0:トレイアの手が、震える トレイア:……なんで。……なんでだ、ちくしょう トレイア:…指に、力が…入らない トレイア:なんで、お前なんかに トレイア:お前なんかに……重ねているんだ、僕は トレイア:…母さんは、僕を見下してた トレイア:…ぶっきらぼうなその目で、僕を見て。殺しの出来ないガキだって トレイア:でも、そんな母さんも、僕は好きだった トレイア:だから、殺した奴は、必ず僕が殺すって決めてた トレイア:…なのに…なのに! トレイア:何で、お前さ… トレイア:こんなに、母さんに似てるんだよ バレット:… ダルケス:…トレイア…ちゃん トレイア:…僕も、サイボーグだったら良かった トレイア:簡単に……引き金を引けるから トレイア:そしたら、こんな心の痛みも、苦しみも トレイア:何も感じなくて、すんだのかもしれない バレット:…サイボーグがどういう存在かなんて、知らないけど バレット:人間らしくて、魅力的だよ、あんた トレイア:…っ! トレイア:…ぁぁぁああああっ! 0:両者は銃を引いた トレイア:…が……あ ダルケス:…っ 0:トレイアはゆっくりと倒れる バレット:…でも バレット:銃の扱いは、半人前だね トレイア:…くそ…ちく…しょう トレイア:…お前に トレイア:会わなきゃ……良かった バレット:あたしも、嫌いだったよ バレット:その生意気なところ トレイア:…僕も、お前なんか…嫌いだ 0:トレイアはそう言って、息を引き取った バレット:あばよ、マセガキ 0:数日後、カフェ「サンクス」にて バレット:… ダルケス:今日は、何にするかしら? バレット:…コーヒーで ダルケス:…本気? バレット:いいから ダルケス:……オチは見えてそうだけど ダルケス:はぁ、にしても、またこの店も整理しなきゃ 0: ダルケス:とりあえず、はい バレット:…にっが ダルケス:背伸びしなくてもいいのに ダルケス:それとも、発育のいいからだが欲しくなったかしら? こんな胸とか? 0:そういってダルケスが服を開いて、胸を見せる バレット:胸をさらすな、胸を ダルケス:バレットちゃんも、まぁ、平らではないし、伸びしろはあるわよ バレット:うるせえ、撃つぞ バレット:…… バレット:こういうのは、引きずったら負けだろ バレット:殺し屋を狩ってるんだ バレット:苦いもの飲み込んで流さなきゃ、やられちまうよ ダルケス:敵を欺(あざむ)く時はまず味方から ダルケス:あの子も素質はあったわね バレット:甘いさ、全然 バレット:甘かったよ ダルケス:… ダルケス:はぁ、隠れ家もしばらく入れずかぁ バレット:あの後、どうなったんだよ ダルケス:治安部隊に、隠れ家も通路も入られた ダルケス:ただ、知り合いがいるもので ダルケス:私の店までは立ち入らないようにしてもらったわ バレット:顔が広いやつ バレット:間違えてトラップかけちまうなよ? 罠師のダルケスさん ダルケス:ふふ。私、味方には罠じゃなくて、蜜をあげちゃうほうなのよ ダルケス:特にクールなイケメンとかねぇ…ふふ バレット:蜜以上に違うものが混ざってる気がするけどな… バレット:サイボーグなら、そういうイケメン、いるんじゃないの? ダルケス:でもそれは、顔を見ないと ダルケス:性格だけで人は判断できないわ バレット:顔だけの間違いじゃないのかよ ダルケス:見た目が9割っていうからねぇ バレット:サイボーグの見た目は、ほぼ9割機械だろ ダルケス:どうなのかしらねぇ バレット:まぁ、確かに。どうなんだろうなぁ。見たことないしな。サイボーグにしろ、アンドロイドにしろ… ダルケス:まぁ、どっちでもいいわ バレット:じゃあ、いつぞやの殺し屋は? ダルケス:あれはイカれてたもの ダルケス:ベッドの上でも、キルオーラむんむんだったから バレット:分かったのかよ? ダルケス:香水というか、匂いというか ダルケス:まぁそこは、彼も同じだと思うけど バレット:でも、取り逃がしたのはミスったな… ダルケス:もう少しだったのにね バレット:変な技は使うし、うるさいし… バレット:次会った時は、更に狂暴になってそう ダルケス:あぁ、弟のほう バレット:どうにも変な奴にモテるのかね、あたしは ダルケス:バレットちゃんには、それこそクールなサイボーグキャラが彼氏さんだとお似合いよね バレット:何の話してんだよ ダルケス:殺し狩りにも、色恋沙汰はあったほうがいいと思って バレット:いらねーから、そのクールキャラはお前の好みだろ ダルケス:真面目でいい子が好きだけなのよ。バレットちゃんとかね バレット:あっそ バレット:……なんかしらけちまった バレット:やっぱ、りんごジュースで ダルケス:はいはい ダルケス:今日も甘い朝のようで 0: 0: 0: バレット:狩りの銃弾は放たれる ダルケス:罠は密かに、愛を誘う ジャック:冥(みょう)は魅惑を追い詰めて リッパー:黒(くろ)は快楽を抉(えぐ)りとる トレイア:やがて心の隠者(いんじゃ)は、命を奪われた 0: バレット:朝日は清らかに顔を見せ バレット:キルズハントは、今日もどこかで狩っている