台本概要

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タイトル 【重愛系】私はただ愛されたかった
作者名 ゆる男  (@yuruyurumanno11)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(女2)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 愛があれば乗り越えられる
二人が信じた言葉は運命を巡らせる
ただ…愛したかった。ただ…愛されたかった

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

女性サシ劇を書きました!
重たい話ではありますが嫌いでなければぜひ読んでみてください!

キャラの性別を変えなければ異性のキャラを演じても大丈夫です!
過度なアドリブなどは控えてくださいませ!

クレジット表記に【重愛台本】は書かなくて大丈夫です!

野良劇や約束劇で使用する時に
X(ツイッター)で呟いて頂けると今後のモチベーションに繋がります!!

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
エマ 197 女性であるアレンを知らずに好きになる。早とちりしてしまい失敗する事が多々あるが、人から受けた愛で乗り越えられる人になっている 21歳の設定です
アレン 192 女性だが男性に間違えられることがある。誰かに愛される事を強く望んでいる 31歳の設定です
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
エマ:(M)愛があれば、乗り越えられる アレン:(M)愛があれば…愛があれば…… 0:【間】 エマ:私ですか?私はお金があったらー。……何したらいいんですかね? アレン:考えた事ないの?大きな家を買うとか。高級車を買うとか エマ:考えた事ないですよ。私はお金に執着なんてしてませんからねー アレン:まあなんだかんだそれが利口だね エマ:それに…。私はアレンさんに執着してるんですから アレン:……… エマ:私、アレンさんと同じマンションで、こうやってアレンさんの家でご飯を食べる関係になるなんて思わなかったです アレン:……うん エマ:なので、もう一度聞いてもいいですか? アレン:うん エマ:アレンさんの事が…好きです。私とお付き合いして貰えますか? アレン:……あのさ、その事なんだけど エマ:なんですか? アレン:前にも伝えた通り、あなたとは付き合えない エマ:……そう、ですか アレン:前は傷付けないようにってやんわり伝えちゃったけど……やっぱここでハッキリ言うよ エマ:……はい アレン:私……女なの エマ:………え? アレン:……ああ、そう。そうなるよね。でも事実だよ。私は女なの エマ:………あ、あ、ああ アレン:固まっちゃった エマ:あ、あの……。どうして男性の格好を…… アレン:悪い?そういう趣味だからだよ。私が女じゃなきゃあなたの事を家になんて呼ばないよ エマ:………ど、どうしよ……恥ずかしい アレン:なんか、ごめんね。先に言えばよかったかな? エマ:い、いえ!私が勘違いしただけなんで……。ごめんなさい! アレン:ううん。いいよ、謝らなくても。男に間違えられるの慣れてるしね。声も低いし。でも…告白までされるとは思わなかった エマ:そうですよね。……ごめんなさい。自分の家に戻って頭冷やしてきます アレン:うん。あ、今日はありがとう。よかったらまた今度、お酒飲みながら話そうよ エマ:はい。私でよかったら アレン:じゃあ…また エマ:アレンさん アレン:……ん? エマ:もし…迷惑じゃなかったら……。このままアレンさんのこと、好きでいてもいいですか? アレン:……あはは。…どうだろ?わかんないや エマ:……ごめんなさい。では…お邪魔しました 0:【間】 0:場面転換。エマの家 エマ:……はあ。アレンさんは……女の人だったんだ… エマ:いくら間違えたにしても失礼だし…。それに エマ:なんで……好きになっちゃったんだろ? エマ:(M)アレンさんは半年前に同じマンションの向かいに引っ越してきたばかりで、ご丁寧に挨拶までしてきてくれたのを覚えてる エマ:(M)ずっと……男の人だと思ってた。 0:【間】 0:半年前の事 0:エマの家のインターホンが鳴る エマ:ん?誰だろ?こんな時間に。はいはーい アレン:あ、こんばんは エマ:……こんばんは アレン:あの、お向かいに引っ越してきました。アレン・ディアスです エマ:あぁ!どうもこんばんはー!エマ・コリンズです!わざわざありがとうございます! アレン:引っ越したばっかなんで、物音とかうるさかったら言ってくださいね エマ:全然、気にしないでいいですよ アレン:ありがとうございます 0:【間】 エマ:(M)当たり障りはないけど、相手を不快にさせないように気遣いの一言を添える。それは大人になればごく普通の事だけど、実際は難しいと思う。だから、しっかりとしたいい人だと思えた エマ:(M)……だからこそ、3ヶ月前にアレンさんが来た時、私はそれを受け入れたんだ 0:【間】 アレン:夜遅くにすみません エマ:あれ?どうしたんですか? アレン:……財布を落としてしまって エマ:えー!それは大変!警察には連絡しました? アレン:はい。でもまだわからないみたいで エマ:そうなんですね アレン:あと…その……鍵も財布の中に入れっぱなしで…それで落としてしまって…… エマ:じゃあ…家に入れないってことですか!? アレン:……はい エマ:本当に大変なことになってますね… アレン:……あの エマ:はい? アレン:無理だったら断ってもらっていいんですけど……一晩だけ、泊めてもらうことって出来ますか? エマ:……え!? アレン:私、引っ越したばかりで、友人と呼べる人も居ないんです。お金もないし…… エマ:そう…ですか アレン:ダメですかね? エマ:……んーーー。ちょっと部屋の掃除だけしますね! アレン:はい! 0:エマは玄関を閉める エマ:どど、どうしよう!男の人が家に泊まりに来るなんて……準備してないよー!しかもイケメンだしー!ちょっとちらかってるし下着とか干しっぱなしだしー! エマ:大丈夫。一晩だけ…。何かあっても警察呼べばいいだけだし… 0:しばらくすると エマ:はあ。はあ。ど、どうぞ アレン:あ、ありがとうございます エマ:はあ。はあ。散らかってますが気にしないでください アレン:大丈夫ですよ エマ:座ってください アレン:はい エマ:………あ!お茶!お茶出します! アレン:いいですよ?気を使わなくて エマ:いや!いい紅茶がありましてぇー。どのくらいいいかと言いますとぉー。……あ、淹れてきますねー! アレン:ああ…。ありがとうございます 0:しばらくして エマ:お待たせしましたー! アレン:わざわざありがとうございます! エマ:いいんですよー。飲んで下さい アレン:はい。いただきます エマ:美味しいですか? アレン:はい。美味しいです! エマ:へぇー!私飲んだことなかったんでよかったです アレン:の、飲んだことなかったんですね…? エマ:あ、ああー!そうです。いや、飲んだことはあるんですけどこの紅茶は飲んだことないというかー。あははっ アレン:あっはは。コリンズさん面白いですね エマ:よく言われます。良いのか悪いのかわかんないですけど アレン:良い事だと思います エマ:そ、そうですか?ありがとうございます アレン:コリンズさん何歳ですか? エマ:21歳ですよ アレン:へぇー。お若いのに一人暮らしなんて偉いですね エマ:ディアスさんは何歳ですか? アレン:31歳です。意外と若く見えるでしょ? エマ:へぇー!確かに。ちょっと上くらいかなーって思ってたんですけど10個も離れてたんですね アレン:そうですよ。もう私も若くないです エマ:若いですよ アレン:そう?ありがとう エマ:あ!お風呂とかはどうしますか? アレン:……借りてもいいんですか? エマ:大丈夫ですよ アレン:じゃあ、お言葉に甘えて。あ、その前にさベランダでタバコ吸ってもいい? エマ:はい大丈夫ですよ 0:しばらくすると アレン:ふぅー。エマ。ありがとう。寝るとこはどこでもいいよ エマ:そ、そうですね。私もどこでもいいです アレン:あなたは自分の家なんだからいつもの場所で寝なよ エマ:じ、じゃあお言葉に甘えて アレン:私はソファ借りてもいい? エマ:はい! アレン:ありがとう エマ:そろそろ寝ますか? アレン:うん。今日は疲れちゃった エマ:お仕事ですか? アレン:そう。最近は現場に出るよりも取引先との打ち合わせとかで気疲れしちゃってさ エマ:お仕事は何されてるんですか? アレン:デザイナーだよ エマ:かっこいい……。あ、ごめんなさい!なんでもないです。男性の服をデザインしてるんですか? アレン:おー。どうしてわかったの? エマ:いえ、アレンさんの着てる服が、私の父が着てた服と似てるなーと思って。すごく素敵です アレン:ありがとう。エマは仕事は? エマ:私は父の仕事を継いでます。覚えること沢山あって大変ですけどね アレン:そうなんだ。お父さんとは暮らしてないの? エマ:………父は…10年前に亡くなりました アレン:………10年…前? エマ:はい アレン:……そっか、それで一人暮らしなんだ エマ:そういう事です アレン:エマは…寂しいって思ったことないの? エマ:……え? アレン:一人は寂しくない? エマ:……寂しいですよ。……父が亡くなってからずっと……寂しいです アレン:……そっか エマ:………っ 0:アレンはエマの頭を撫でる アレン:ずっと寂しい思いしてるのに…頑張って来たんだから…エマは偉いよ エマ:……アレンさん…。……あれ?この匂い… アレン:辛かったね。エマ エマ:……ありがとうございます。…でも辛くはないです アレン:どうして? エマ:まだ父が生きていた時……お父さんが…私に言ってくれたんですよ エマ:「愛があれば、乗り越えられる」と アレン:……良いお父さんだね エマ:はい。そのおかげで私は人を愛する事が好きになりました アレン:良い事だよ エマ:だから……アレンさんの事も…愛してもいいですか? アレン:……え? エマ:ああ!いや!そういうわけじゃなく!単純に人として好きだなとか!そう思っただけです! アレン:ああ、ありがとう エマ:でも…人としても好きですけど……。男性として…好きです アレン:……え!? エマ:無理なら大丈夫です!……私と…付き合って貰えますか? アレン:……あ、ああ。…えーっと……? エマ:お金ならいっぱいあります! アレン:貢がなくてもいいよ! エマ:ダメ…ですか? アレン:ああ…。うん、ごめんね エマ:……そっか…。わかりました アレン:……でも!今日はお世話になったし、また今度お礼させてよ エマ:……はい!もちろんです! アレン:うん。ありがとう エマ:私、寝室で寝ますね アレン:うん。おやすみ エマ:おやすみなさい 0:エマは寝室に入る アレン:………愛するって……何? 0:【間】 0:そして現在では エマ:もし…迷惑じゃなかったら……。このままアレンさんのこと、好きでいてもいいですか? アレン:……あはは。…どうだろ?わかんないや エマ:……ごめんなさい。では…お邪魔しました アレン:……うん エマ:ほんとに…一緒にお酒飲んでくれますか? アレン:うん。それはいいよ エマ:……じゃあ、来月の13日に、ちょっとだけ付き合ってください アレン:……来月の…13日? エマ:私にとって…大事な日なんです アレン:………… エマ:またお誘いしますから アレン:…………わかった 0:エマはアレンの家を出る アレン:…すぅーー………ふぅーー(タバコを吸う) アレン:……10年経ってるのに…不味いな アレン:……来月の…13日……。…すぅーー……ふぅーー アレン:何度も男に間違えられてる。だからもう慣れてる。けど……そうだよ。私はあの時から…男ではなくて女なの。 アレン:……貴方を愛したあの日から 0:【間】 0:場面転換 エマ:あ、どうもー アレン:どうも 0:エマとアレンはバーのカウンターに座る アレン:向かいに住んでるのに、わざわざ現地集合にしたのはどうして? エマ:はい。現地集合にした理由はアレンさんが来たくなかったら来なくてもいいですって意味なんで、気にしないで下さいね?むしろ来てくれて嬉しいです アレン:来るよ。私をなんだと思ってる? エマ:素敵な人だと思ってますよ アレン:それはありがとう エマ:おすすめとかあります?私ここのバーは初めてなんでよく分からないんですよ アレン:おすすめか……。……それならアクアリーナスがおすすめだよ エマ:じゃあそれで アレン:はいよ。マスター。アクアリーナス2つ 0:二人の席にお酒が置かれる アレン:じゃあ、乾杯 エマ:乾杯 0:そう言ってお酒を一口飲む アレン:……… エマ:美味しい! アレン:……美味しいね エマ:私このお酒好きかもしれないです! アレン:他国のお酒だからなかなか飲めないよ?ここのバーにしかないみたいだからさ エマ:ならまた、アレンさんとここに行きたいですね アレン:まだ飲みは始まったばっかでしょ? エマ:そうでした。ごめんなさい!また私の早とちりです アレン:いいよ、謝らなくて エマ:えと…また謝っちゃうんですけど……。あの時のことは本当にごめんなさい アレン:それもいいって エマ:なんか、段階すっ飛ばしちゃいましたし、迷惑かなって アレン:迷惑とも思ってない エマ:その……友達なら大丈夫ですか? アレン:……友達? エマ:はい!だってせっかく女同士でここまで仲良くなれたんですし、友達の方がいいかなって アレン:……そうだね エマ:アレンは彼氏さんは居たんですか? アレン:………いや、居たことないよ エマ:え!そうだったんですね アレン:うん。だから初めてされた告白が女の子なんて思わなかったよ エマ:そうですか…私でごめんなさい! アレン:いいってば エマ:ありがとうございます アレン:でもね、少し嬉しかったんだ。私の事、好きとか愛してるって言ってくれる人が居るんだなーって。 エマ:そ、そうだったんですか!?私は…アレンさんの事、愛を持って接するつもりです アレン:ありがとう。あなたも変わり者だね。 エマ:変わり者ですかね? アレン:うん。とっても。あなたの方こそ、彼氏さんはいた事あるの? エマ:私もないですよ。いつも早とちりしちゃって逃げられたり、利用されたり、そんなことばっかです アレン:……そう。大変だったね エマ:はい。でも私はちゃんと愛されて育ったから寂しくも悲しくもないんです アレン:………そう エマ:お父さんだけは…私を愛してくれた アレン:………エマ、今日は大事な日って言ってたけど…何の日なの? エマ:今日は私のお父さんの命日なんです アレン:………っ! エマ:どうかしました? アレン:……いや、何でもないよ エマ:……酔っちゃいました? アレン:……うん。そうかもね。ちょっと外でタバコ吸ってくる エマ:はい 0:アレンは外に出る アレン:(M)………いいや。きっと偶然だ アレン:(M)そう思い込まないと私は何かに押し潰されてしまう。 アレン:……今だけ…思い出しても…いい…ですか? アレン:(M)私は……最後に貴方に会った時と…歳が一緒になりました アレン:(M)それでも……貴方が好きだったタバコと、貴方が好きだったお酒は、貴方と同じ歳になっても…好きになれません アレン:(M)貴方が好きだったものを……私は……好きになれません 0:【間】 エマ:アレンさん? アレン:……エマ エマ:あんまり気分良くなかったですよね…。私お支払いしといたんで、もう帰りましょう アレン:そんな…半分出すよ エマ:大丈夫ですよ。今日は私が誘ったので アレン:だめだよ。私が来たくて来たんだから私も払うよ エマ:いいですって! アレン:だめだって! アレン:うわあ! エマ:きゃあ! 0:二人はつまずいて地面に倒れる アレン:ご、ごめん! エマ:あ、だ、大丈夫です! アレン:立てる? エマ:はい 0:エマはアレンの手を掴んで立ち上がる エマ:……あはは。ダメですね。アレンさんが女性ってわかってても…ドキドキしちゃいます アレン:……そんなこと、言わないで エマ:……あれ?…またこの匂い…… アレン:……なに? エマ:お父さんが吸ってた…タバコの匂いがする アレン:……え? エマ:アレンさん…。お父さんと同じタバコ…吸ってるんですか? アレン:………わからないよ エマ:いや、偶然だと思いますけどね!なんか懐かしいなーって思って。その匂い、私は好きですよ アレン:……そうだよ。偶然だよ エマ:はい。恐らくね アレン:……エマ。あなた、出身はこの国なの? エマ:出身ですか?私の出身は…ルグレ・スワイスです アレン:……ルグレ…スワイス……? エマ:知ってるんですか? アレン:………知らない エマ:そうですか アレン:……知らない!……そんな国…知らない……! エマ:………アレンさん? アレン:……はあ。……はあ。……はあ! エマ:…アレンさん!?大丈夫…ですか? アレン:だ……大丈夫…。……うっ!ううぅ…! エマ:アレンさん!!大丈夫ですか!? 0:【間】 エマ:(M)顔色が悪くなったアレンさんを私は家まで運んだ。そんなに酔ってたかな?体調悪かったのかな? エマ:(M)色んな理由を探してもアレンさんの辛そうな顔からは…どれにも当てはまらなかった エマ:(M)きっとアレンさんは色んな経験をしているんだから、辛い日だってあるはず エマ:(M)だから私は愛があればその辛さを忘れさせることが出来るんだと思っていた。アレンさんの辛いことも私の愛で包み込めるんだと。そう育ってきたんだから エマ:(M)愛があれば。そうやって私を愛してくれた、お父さんのように 0:【間】 エマ:(M)数日が経ってもアレンさんの姿は見かけなかった。それどころか、インターホンを鳴らしても出てくれない エマ:ねえ、アレンさん。私でよければお話聞きますよ。何があったか話してください エマ:私は…私だけは……アレンさんの味方です。だから……顔だけでも…見せてください エマ:私はただ…あなたを愛したいだけですから 0:【間】 アレン:(M)初めて人にナイフを突き付けたのは10年前の事。私は貴方を愛していた アレン:愛があれば。愛があれば。愛があれば。10年前、何度も聞いた言葉を私は思い返す アレン:(M)愛があれば、乗り越えられる エマ:何があったか話してください アレン:(M)玄関の向こうからエマの声が聞こえる。彼女は私を愛してくれると言うの?……わからない。私が本当に愛した人は…貴方だけだから エマ:私はただ…あなたを愛したいだけですから アレン:(M)あなたは…私を愛してくれるの? アレン:………エマ 0:アレンは玄関の扉を開ける エマ:……アレンさん!お、お元気でした!? アレン:……中に入って エマ:……お邪魔します 0:エマはアレンの家に入る エマ:心配しましたよ。アレンさん アレン:……ごめんね エマ:いいえ、よかったです エマ:あの、どうかしたんですか?アレンさん アレン:……エマ…私の質問に答えて欲しい エマ:……何ですか? アレン:……あなたのお父さんは…どうして亡くなったの? エマ:……私のお父さんは…自殺だったみたいです アレン:……… エマ:崖から飛び降りて…自殺をしたんですよ。お父さんは アレン:…………そう エマ:でも、私はそれは無いと思ってます。あんなにも笑顔だったし、最後まで元気でした。そして…最後の日まで言ってくれたんです エマ:「エマを愛してる」って アレン:………っ エマ:だから私を置いて亡くなるなんて…そんなこと アレン:エマのお父さんが自殺じゃなくて…他殺だったら……あなたはどうする? エマ:……え? アレン:……あなたのお父さんが…殺されたとしたら……? エマ:……私は… アレン:……… エマ:私は……犯人を見つけたら……その人を殺してしまうかも…… アレン:………そう……だよね エマ:………アレンさん? アレン:じゃあさ。あなたのお父さんを殺したのは……私だったら? エマ:……え? アレン:殺したのは…私だったら……どうするの? エマ:………嘘でしょ? アレン:……どうするのか聞いてるの!! エマ:………アレンさん…?冗談はやめてください アレン:冗談なんかじゃない。私は10年前に…あなたのお父さんを殺したの エマ:嘘だ!アレンさんが……そんなことするわけない! アレン:嘘じゃない!ルグレ・スワイス出身でアクアリーナスが好きで、吸ってるタバコもウエスト・シルバー。そして……義理の娘が居る。コリンズもあなたの苗字であなたのお父さんの苗字ではない アレン:オリバー・ヒューズ。あなたのお父さんの名前でしょ? エマ:……本当…なんですか?本当に…アレンさんが……? アレン:……それでも…あなたは私を愛してくれるって言うの? エマ:………… アレン:……答えて! エマ:……私は…あなたを愛せます アレン:……嘘だ……無理に決まってるでしょ。私の事…殺すって言ってたじゃない! エマ:無理じゃないです!アレンさんなら……私は許せます。愛する事だって出来ます! アレン:無理だって言ってるでしょ…。私は女なの!女として私は愛されたい!……どうしてあなたが…私を愛そうとするの…… エマ:それは…そうですけど……!私だって人を愛せる人になりたいだけなの! アレン:あんたのお父さんは!私の事を愛してくれなかった!私がこんなにも愛しているのに!あんたのお父さんは私に何もくれなかった!!その娘が私を愛してくれるはずなんかない!! エマ:……どういう事ですか……? 0:アレンがエマの髪の毛を引っ張る エマ:いった! アレン:これ以上私のことバカにしないで……。女のあんたが女の私を愛せるはずがない。あんたに愛なんてどこにも無いでしょ!! エマ:……ありますよ…。私にも。お父さんにも アレン:………何を今更! エマ:……あなただったんですね アレン:……え? エマ:お父さんは…唯一心の支えになってくれてる人が居るって…言ってました。……それがアレンさんだったのかも知れません アレン:……… エマ:だから私は…お父さんの分まであなたの事を愛します!お父さんがあなたを思っていたように私がアレンさんを! アレン:じゃあ!何度も私の愛を断り続けた…あんたのお父さんは……誰を愛していたと言うの? エマ:………それは… アレン:……… エマ:それは……私ですよ アレン:…………っ!!!(ビンタ) エマ:っ! アレン:ふざけんな!!ふざけんなふざけんなふざけんな!!! アレン:私がどれだけ愛していたか……どれだけ思っていたか……どれだけ苦しかったか……。あんたにはわからないでしょ!!こんなにも私は…!私は……!! 0:アレンはエマを動かなくなるまで何度も殴りつけた エマ:………… アレン:………はあ……はあ………。 エマ:………アレンさん アレン:………っ エマ:それでも………私はただ……愛したかった アレン:………私はもう……貴方からの愛しか受け入れられない……私はただ……愛されたかった 0:【間】 エマ:愛があれば、乗り越えられる。それはお父さんの言葉でした。愛があれば。愛があればと、そうやって皆に愛をばらまいて、みんなに幸せを与える。お父さんはそんな素敵な人です エマ:アレンさんが愛されたかったと言った日…私が気が付いた時にはもう…アレンさんは血だらけになっていた エマ:あなたが愛した人は…それは素敵な人で、狂おしい程に愛おしかったんでしょうか?それなら私はあなたの言葉を否定します。あなたはお父さんを殺してなんかいないと エマ:私のお父さんならそう思ってます。だって、愛があれば乗り越えられるって言っていたのですから、愛があるあなたにお父さんを殺せるはずが無い。お父さんはあなたに愛されて幸せなはずですよ エマ:それでも……私のお父さんが愛したのは私です。それだけは…譲れないです。……ですが、お父さんはもう居ないです…。その事実だけが…今の私の姿です エマ:辛かったねって、あなたは私に言ってくれました。私はその言葉をあなたにお返しします。素敵なあなただけど、本当に辛かったのは、愛されなかったあなたの方ですから。あなたが愛されなかった分、私はあなたの事を愛したかった エマ:私はただ…あなたを愛したかった アレン:(M)初めて人にナイフを突き付けたのは10年前の事。そして、初めて人の皮膚を切り裂いたのは10年後の自分の手首 アレン:(M)貴方が私の前から姿を消したあの日に比べたら、痛くはなかった。震えた手から滴る血が、貴方と初めて交わしたキスと同じ味がした。何だかそれだけで、繋がれてる気がした アレン:(M)私は……最後に貴方に会った時と…歳が一緒になりました アレン:(M)それでも……貴方が好きだったタバコと、貴方が好きだったお酒は、貴方と同じ歳になっても…好きになれません アレン:(M)貴方が愛した人さえも…愛せませんでした アレン:(M)憎かったわけじゃない。貴方が私を女として見てくれれば満たされたはず。彼女ではなく、貴方が…私を女として。愛があればなんだって言うの?そんな嘘で惑わされた私も大嫌い。私は貴方を殺してしまったけど…貴方も私の心を殺したんです アレン:(M)何のために生きているのか…何のために愛していくのか。……貴方が居ても居なくてもその答えは出てきません。…だって、貴方は私を愛していないのだから……。嘘でもいいから……どんな形でもいいから……私は貴方に愛されたかった アレン:私はただ…貴方に愛されたかった 0:私はただ愛されたかった 0:End

エマ:(M)愛があれば、乗り越えられる アレン:(M)愛があれば…愛があれば…… 0:【間】 エマ:私ですか?私はお金があったらー。……何したらいいんですかね? アレン:考えた事ないの?大きな家を買うとか。高級車を買うとか エマ:考えた事ないですよ。私はお金に執着なんてしてませんからねー アレン:まあなんだかんだそれが利口だね エマ:それに…。私はアレンさんに執着してるんですから アレン:……… エマ:私、アレンさんと同じマンションで、こうやってアレンさんの家でご飯を食べる関係になるなんて思わなかったです アレン:……うん エマ:なので、もう一度聞いてもいいですか? アレン:うん エマ:アレンさんの事が…好きです。私とお付き合いして貰えますか? アレン:……あのさ、その事なんだけど エマ:なんですか? アレン:前にも伝えた通り、あなたとは付き合えない エマ:……そう、ですか アレン:前は傷付けないようにってやんわり伝えちゃったけど……やっぱここでハッキリ言うよ エマ:……はい アレン:私……女なの エマ:………え? アレン:……ああ、そう。そうなるよね。でも事実だよ。私は女なの エマ:………あ、あ、ああ アレン:固まっちゃった エマ:あ、あの……。どうして男性の格好を…… アレン:悪い?そういう趣味だからだよ。私が女じゃなきゃあなたの事を家になんて呼ばないよ エマ:………ど、どうしよ……恥ずかしい アレン:なんか、ごめんね。先に言えばよかったかな? エマ:い、いえ!私が勘違いしただけなんで……。ごめんなさい! アレン:ううん。いいよ、謝らなくても。男に間違えられるの慣れてるしね。声も低いし。でも…告白までされるとは思わなかった エマ:そうですよね。……ごめんなさい。自分の家に戻って頭冷やしてきます アレン:うん。あ、今日はありがとう。よかったらまた今度、お酒飲みながら話そうよ エマ:はい。私でよかったら アレン:じゃあ…また エマ:アレンさん アレン:……ん? エマ:もし…迷惑じゃなかったら……。このままアレンさんのこと、好きでいてもいいですか? アレン:……あはは。…どうだろ?わかんないや エマ:……ごめんなさい。では…お邪魔しました 0:【間】 0:場面転換。エマの家 エマ:……はあ。アレンさんは……女の人だったんだ… エマ:いくら間違えたにしても失礼だし…。それに エマ:なんで……好きになっちゃったんだろ? エマ:(M)アレンさんは半年前に同じマンションの向かいに引っ越してきたばかりで、ご丁寧に挨拶までしてきてくれたのを覚えてる エマ:(M)ずっと……男の人だと思ってた。 0:【間】 0:半年前の事 0:エマの家のインターホンが鳴る エマ:ん?誰だろ?こんな時間に。はいはーい アレン:あ、こんばんは エマ:……こんばんは アレン:あの、お向かいに引っ越してきました。アレン・ディアスです エマ:あぁ!どうもこんばんはー!エマ・コリンズです!わざわざありがとうございます! アレン:引っ越したばっかなんで、物音とかうるさかったら言ってくださいね エマ:全然、気にしないでいいですよ アレン:ありがとうございます 0:【間】 エマ:(M)当たり障りはないけど、相手を不快にさせないように気遣いの一言を添える。それは大人になればごく普通の事だけど、実際は難しいと思う。だから、しっかりとしたいい人だと思えた エマ:(M)……だからこそ、3ヶ月前にアレンさんが来た時、私はそれを受け入れたんだ 0:【間】 アレン:夜遅くにすみません エマ:あれ?どうしたんですか? アレン:……財布を落としてしまって エマ:えー!それは大変!警察には連絡しました? アレン:はい。でもまだわからないみたいで エマ:そうなんですね アレン:あと…その……鍵も財布の中に入れっぱなしで…それで落としてしまって…… エマ:じゃあ…家に入れないってことですか!? アレン:……はい エマ:本当に大変なことになってますね… アレン:……あの エマ:はい? アレン:無理だったら断ってもらっていいんですけど……一晩だけ、泊めてもらうことって出来ますか? エマ:……え!? アレン:私、引っ越したばかりで、友人と呼べる人も居ないんです。お金もないし…… エマ:そう…ですか アレン:ダメですかね? エマ:……んーーー。ちょっと部屋の掃除だけしますね! アレン:はい! 0:エマは玄関を閉める エマ:どど、どうしよう!男の人が家に泊まりに来るなんて……準備してないよー!しかもイケメンだしー!ちょっとちらかってるし下着とか干しっぱなしだしー! エマ:大丈夫。一晩だけ…。何かあっても警察呼べばいいだけだし… 0:しばらくすると エマ:はあ。はあ。ど、どうぞ アレン:あ、ありがとうございます エマ:はあ。はあ。散らかってますが気にしないでください アレン:大丈夫ですよ エマ:座ってください アレン:はい エマ:………あ!お茶!お茶出します! アレン:いいですよ?気を使わなくて エマ:いや!いい紅茶がありましてぇー。どのくらいいいかと言いますとぉー。……あ、淹れてきますねー! アレン:ああ…。ありがとうございます 0:しばらくして エマ:お待たせしましたー! アレン:わざわざありがとうございます! エマ:いいんですよー。飲んで下さい アレン:はい。いただきます エマ:美味しいですか? アレン:はい。美味しいです! エマ:へぇー!私飲んだことなかったんでよかったです アレン:の、飲んだことなかったんですね…? エマ:あ、ああー!そうです。いや、飲んだことはあるんですけどこの紅茶は飲んだことないというかー。あははっ アレン:あっはは。コリンズさん面白いですね エマ:よく言われます。良いのか悪いのかわかんないですけど アレン:良い事だと思います エマ:そ、そうですか?ありがとうございます アレン:コリンズさん何歳ですか? エマ:21歳ですよ アレン:へぇー。お若いのに一人暮らしなんて偉いですね エマ:ディアスさんは何歳ですか? アレン:31歳です。意外と若く見えるでしょ? エマ:へぇー!確かに。ちょっと上くらいかなーって思ってたんですけど10個も離れてたんですね アレン:そうですよ。もう私も若くないです エマ:若いですよ アレン:そう?ありがとう エマ:あ!お風呂とかはどうしますか? アレン:……借りてもいいんですか? エマ:大丈夫ですよ アレン:じゃあ、お言葉に甘えて。あ、その前にさベランダでタバコ吸ってもいい? エマ:はい大丈夫ですよ 0:しばらくすると アレン:ふぅー。エマ。ありがとう。寝るとこはどこでもいいよ エマ:そ、そうですね。私もどこでもいいです アレン:あなたは自分の家なんだからいつもの場所で寝なよ エマ:じ、じゃあお言葉に甘えて アレン:私はソファ借りてもいい? エマ:はい! アレン:ありがとう エマ:そろそろ寝ますか? アレン:うん。今日は疲れちゃった エマ:お仕事ですか? アレン:そう。最近は現場に出るよりも取引先との打ち合わせとかで気疲れしちゃってさ エマ:お仕事は何されてるんですか? アレン:デザイナーだよ エマ:かっこいい……。あ、ごめんなさい!なんでもないです。男性の服をデザインしてるんですか? アレン:おー。どうしてわかったの? エマ:いえ、アレンさんの着てる服が、私の父が着てた服と似てるなーと思って。すごく素敵です アレン:ありがとう。エマは仕事は? エマ:私は父の仕事を継いでます。覚えること沢山あって大変ですけどね アレン:そうなんだ。お父さんとは暮らしてないの? エマ:………父は…10年前に亡くなりました アレン:………10年…前? エマ:はい アレン:……そっか、それで一人暮らしなんだ エマ:そういう事です アレン:エマは…寂しいって思ったことないの? エマ:……え? アレン:一人は寂しくない? エマ:……寂しいですよ。……父が亡くなってからずっと……寂しいです アレン:……そっか エマ:………っ 0:アレンはエマの頭を撫でる アレン:ずっと寂しい思いしてるのに…頑張って来たんだから…エマは偉いよ エマ:……アレンさん…。……あれ?この匂い… アレン:辛かったね。エマ エマ:……ありがとうございます。…でも辛くはないです アレン:どうして? エマ:まだ父が生きていた時……お父さんが…私に言ってくれたんですよ エマ:「愛があれば、乗り越えられる」と アレン:……良いお父さんだね エマ:はい。そのおかげで私は人を愛する事が好きになりました アレン:良い事だよ エマ:だから……アレンさんの事も…愛してもいいですか? アレン:……え? エマ:ああ!いや!そういうわけじゃなく!単純に人として好きだなとか!そう思っただけです! アレン:ああ、ありがとう エマ:でも…人としても好きですけど……。男性として…好きです アレン:……え!? エマ:無理なら大丈夫です!……私と…付き合って貰えますか? アレン:……あ、ああ。…えーっと……? エマ:お金ならいっぱいあります! アレン:貢がなくてもいいよ! エマ:ダメ…ですか? アレン:ああ…。うん、ごめんね エマ:……そっか…。わかりました アレン:……でも!今日はお世話になったし、また今度お礼させてよ エマ:……はい!もちろんです! アレン:うん。ありがとう エマ:私、寝室で寝ますね アレン:うん。おやすみ エマ:おやすみなさい 0:エマは寝室に入る アレン:………愛するって……何? 0:【間】 0:そして現在では エマ:もし…迷惑じゃなかったら……。このままアレンさんのこと、好きでいてもいいですか? アレン:……あはは。…どうだろ?わかんないや エマ:……ごめんなさい。では…お邪魔しました アレン:……うん エマ:ほんとに…一緒にお酒飲んでくれますか? アレン:うん。それはいいよ エマ:……じゃあ、来月の13日に、ちょっとだけ付き合ってください アレン:……来月の…13日? エマ:私にとって…大事な日なんです アレン:………… エマ:またお誘いしますから アレン:…………わかった 0:エマはアレンの家を出る アレン:…すぅーー………ふぅーー(タバコを吸う) アレン:……10年経ってるのに…不味いな アレン:……来月の…13日……。…すぅーー……ふぅーー アレン:何度も男に間違えられてる。だからもう慣れてる。けど……そうだよ。私はあの時から…男ではなくて女なの。 アレン:……貴方を愛したあの日から 0:【間】 0:場面転換 エマ:あ、どうもー アレン:どうも 0:エマとアレンはバーのカウンターに座る アレン:向かいに住んでるのに、わざわざ現地集合にしたのはどうして? エマ:はい。現地集合にした理由はアレンさんが来たくなかったら来なくてもいいですって意味なんで、気にしないで下さいね?むしろ来てくれて嬉しいです アレン:来るよ。私をなんだと思ってる? エマ:素敵な人だと思ってますよ アレン:それはありがとう エマ:おすすめとかあります?私ここのバーは初めてなんでよく分からないんですよ アレン:おすすめか……。……それならアクアリーナスがおすすめだよ エマ:じゃあそれで アレン:はいよ。マスター。アクアリーナス2つ 0:二人の席にお酒が置かれる アレン:じゃあ、乾杯 エマ:乾杯 0:そう言ってお酒を一口飲む アレン:……… エマ:美味しい! アレン:……美味しいね エマ:私このお酒好きかもしれないです! アレン:他国のお酒だからなかなか飲めないよ?ここのバーにしかないみたいだからさ エマ:ならまた、アレンさんとここに行きたいですね アレン:まだ飲みは始まったばっかでしょ? エマ:そうでした。ごめんなさい!また私の早とちりです アレン:いいよ、謝らなくて エマ:えと…また謝っちゃうんですけど……。あの時のことは本当にごめんなさい アレン:それもいいって エマ:なんか、段階すっ飛ばしちゃいましたし、迷惑かなって アレン:迷惑とも思ってない エマ:その……友達なら大丈夫ですか? アレン:……友達? エマ:はい!だってせっかく女同士でここまで仲良くなれたんですし、友達の方がいいかなって アレン:……そうだね エマ:アレンは彼氏さんは居たんですか? アレン:………いや、居たことないよ エマ:え!そうだったんですね アレン:うん。だから初めてされた告白が女の子なんて思わなかったよ エマ:そうですか…私でごめんなさい! アレン:いいってば エマ:ありがとうございます アレン:でもね、少し嬉しかったんだ。私の事、好きとか愛してるって言ってくれる人が居るんだなーって。 エマ:そ、そうだったんですか!?私は…アレンさんの事、愛を持って接するつもりです アレン:ありがとう。あなたも変わり者だね。 エマ:変わり者ですかね? アレン:うん。とっても。あなたの方こそ、彼氏さんはいた事あるの? エマ:私もないですよ。いつも早とちりしちゃって逃げられたり、利用されたり、そんなことばっかです アレン:……そう。大変だったね エマ:はい。でも私はちゃんと愛されて育ったから寂しくも悲しくもないんです アレン:………そう エマ:お父さんだけは…私を愛してくれた アレン:………エマ、今日は大事な日って言ってたけど…何の日なの? エマ:今日は私のお父さんの命日なんです アレン:………っ! エマ:どうかしました? アレン:……いや、何でもないよ エマ:……酔っちゃいました? アレン:……うん。そうかもね。ちょっと外でタバコ吸ってくる エマ:はい 0:アレンは外に出る アレン:(M)………いいや。きっと偶然だ アレン:(M)そう思い込まないと私は何かに押し潰されてしまう。 アレン:……今だけ…思い出しても…いい…ですか? アレン:(M)私は……最後に貴方に会った時と…歳が一緒になりました アレン:(M)それでも……貴方が好きだったタバコと、貴方が好きだったお酒は、貴方と同じ歳になっても…好きになれません アレン:(M)貴方が好きだったものを……私は……好きになれません 0:【間】 エマ:アレンさん? アレン:……エマ エマ:あんまり気分良くなかったですよね…。私お支払いしといたんで、もう帰りましょう アレン:そんな…半分出すよ エマ:大丈夫ですよ。今日は私が誘ったので アレン:だめだよ。私が来たくて来たんだから私も払うよ エマ:いいですって! アレン:だめだって! アレン:うわあ! エマ:きゃあ! 0:二人はつまずいて地面に倒れる アレン:ご、ごめん! エマ:あ、だ、大丈夫です! アレン:立てる? エマ:はい 0:エマはアレンの手を掴んで立ち上がる エマ:……あはは。ダメですね。アレンさんが女性ってわかってても…ドキドキしちゃいます アレン:……そんなこと、言わないで エマ:……あれ?…またこの匂い…… アレン:……なに? エマ:お父さんが吸ってた…タバコの匂いがする アレン:……え? エマ:アレンさん…。お父さんと同じタバコ…吸ってるんですか? アレン:………わからないよ エマ:いや、偶然だと思いますけどね!なんか懐かしいなーって思って。その匂い、私は好きですよ アレン:……そうだよ。偶然だよ エマ:はい。恐らくね アレン:……エマ。あなた、出身はこの国なの? エマ:出身ですか?私の出身は…ルグレ・スワイスです アレン:……ルグレ…スワイス……? エマ:知ってるんですか? アレン:………知らない エマ:そうですか アレン:……知らない!……そんな国…知らない……! エマ:………アレンさん? アレン:……はあ。……はあ。……はあ! エマ:…アレンさん!?大丈夫…ですか? アレン:だ……大丈夫…。……うっ!ううぅ…! エマ:アレンさん!!大丈夫ですか!? 0:【間】 エマ:(M)顔色が悪くなったアレンさんを私は家まで運んだ。そんなに酔ってたかな?体調悪かったのかな? エマ:(M)色んな理由を探してもアレンさんの辛そうな顔からは…どれにも当てはまらなかった エマ:(M)きっとアレンさんは色んな経験をしているんだから、辛い日だってあるはず エマ:(M)だから私は愛があればその辛さを忘れさせることが出来るんだと思っていた。アレンさんの辛いことも私の愛で包み込めるんだと。そう育ってきたんだから エマ:(M)愛があれば。そうやって私を愛してくれた、お父さんのように 0:【間】 エマ:(M)数日が経ってもアレンさんの姿は見かけなかった。それどころか、インターホンを鳴らしても出てくれない エマ:ねえ、アレンさん。私でよければお話聞きますよ。何があったか話してください エマ:私は…私だけは……アレンさんの味方です。だから……顔だけでも…見せてください エマ:私はただ…あなたを愛したいだけですから 0:【間】 アレン:(M)初めて人にナイフを突き付けたのは10年前の事。私は貴方を愛していた アレン:愛があれば。愛があれば。愛があれば。10年前、何度も聞いた言葉を私は思い返す アレン:(M)愛があれば、乗り越えられる エマ:何があったか話してください アレン:(M)玄関の向こうからエマの声が聞こえる。彼女は私を愛してくれると言うの?……わからない。私が本当に愛した人は…貴方だけだから エマ:私はただ…あなたを愛したいだけですから アレン:(M)あなたは…私を愛してくれるの? アレン:………エマ 0:アレンは玄関の扉を開ける エマ:……アレンさん!お、お元気でした!? アレン:……中に入って エマ:……お邪魔します 0:エマはアレンの家に入る エマ:心配しましたよ。アレンさん アレン:……ごめんね エマ:いいえ、よかったです エマ:あの、どうかしたんですか?アレンさん アレン:……エマ…私の質問に答えて欲しい エマ:……何ですか? アレン:……あなたのお父さんは…どうして亡くなったの? エマ:……私のお父さんは…自殺だったみたいです アレン:……… エマ:崖から飛び降りて…自殺をしたんですよ。お父さんは アレン:…………そう エマ:でも、私はそれは無いと思ってます。あんなにも笑顔だったし、最後まで元気でした。そして…最後の日まで言ってくれたんです エマ:「エマを愛してる」って アレン:………っ エマ:だから私を置いて亡くなるなんて…そんなこと アレン:エマのお父さんが自殺じゃなくて…他殺だったら……あなたはどうする? エマ:……え? アレン:……あなたのお父さんが…殺されたとしたら……? エマ:……私は… アレン:……… エマ:私は……犯人を見つけたら……その人を殺してしまうかも…… アレン:………そう……だよね エマ:………アレンさん? アレン:じゃあさ。あなたのお父さんを殺したのは……私だったら? エマ:……え? アレン:殺したのは…私だったら……どうするの? エマ:………嘘でしょ? アレン:……どうするのか聞いてるの!! エマ:………アレンさん…?冗談はやめてください アレン:冗談なんかじゃない。私は10年前に…あなたのお父さんを殺したの エマ:嘘だ!アレンさんが……そんなことするわけない! アレン:嘘じゃない!ルグレ・スワイス出身でアクアリーナスが好きで、吸ってるタバコもウエスト・シルバー。そして……義理の娘が居る。コリンズもあなたの苗字であなたのお父さんの苗字ではない アレン:オリバー・ヒューズ。あなたのお父さんの名前でしょ? エマ:……本当…なんですか?本当に…アレンさんが……? アレン:……それでも…あなたは私を愛してくれるって言うの? エマ:………… アレン:……答えて! エマ:……私は…あなたを愛せます アレン:……嘘だ……無理に決まってるでしょ。私の事…殺すって言ってたじゃない! エマ:無理じゃないです!アレンさんなら……私は許せます。愛する事だって出来ます! アレン:無理だって言ってるでしょ…。私は女なの!女として私は愛されたい!……どうしてあなたが…私を愛そうとするの…… エマ:それは…そうですけど……!私だって人を愛せる人になりたいだけなの! アレン:あんたのお父さんは!私の事を愛してくれなかった!私がこんなにも愛しているのに!あんたのお父さんは私に何もくれなかった!!その娘が私を愛してくれるはずなんかない!! エマ:……どういう事ですか……? 0:アレンがエマの髪の毛を引っ張る エマ:いった! アレン:これ以上私のことバカにしないで……。女のあんたが女の私を愛せるはずがない。あんたに愛なんてどこにも無いでしょ!! エマ:……ありますよ…。私にも。お父さんにも アレン:………何を今更! エマ:……あなただったんですね アレン:……え? エマ:お父さんは…唯一心の支えになってくれてる人が居るって…言ってました。……それがアレンさんだったのかも知れません アレン:……… エマ:だから私は…お父さんの分まであなたの事を愛します!お父さんがあなたを思っていたように私がアレンさんを! アレン:じゃあ!何度も私の愛を断り続けた…あんたのお父さんは……誰を愛していたと言うの? エマ:………それは… アレン:……… エマ:それは……私ですよ アレン:…………っ!!!(ビンタ) エマ:っ! アレン:ふざけんな!!ふざけんなふざけんなふざけんな!!! アレン:私がどれだけ愛していたか……どれだけ思っていたか……どれだけ苦しかったか……。あんたにはわからないでしょ!!こんなにも私は…!私は……!! 0:アレンはエマを動かなくなるまで何度も殴りつけた エマ:………… アレン:………はあ……はあ………。 エマ:………アレンさん アレン:………っ エマ:それでも………私はただ……愛したかった アレン:………私はもう……貴方からの愛しか受け入れられない……私はただ……愛されたかった 0:【間】 エマ:愛があれば、乗り越えられる。それはお父さんの言葉でした。愛があれば。愛があればと、そうやって皆に愛をばらまいて、みんなに幸せを与える。お父さんはそんな素敵な人です エマ:アレンさんが愛されたかったと言った日…私が気が付いた時にはもう…アレンさんは血だらけになっていた エマ:あなたが愛した人は…それは素敵な人で、狂おしい程に愛おしかったんでしょうか?それなら私はあなたの言葉を否定します。あなたはお父さんを殺してなんかいないと エマ:私のお父さんならそう思ってます。だって、愛があれば乗り越えられるって言っていたのですから、愛があるあなたにお父さんを殺せるはずが無い。お父さんはあなたに愛されて幸せなはずですよ エマ:それでも……私のお父さんが愛したのは私です。それだけは…譲れないです。……ですが、お父さんはもう居ないです…。その事実だけが…今の私の姿です エマ:辛かったねって、あなたは私に言ってくれました。私はその言葉をあなたにお返しします。素敵なあなただけど、本当に辛かったのは、愛されなかったあなたの方ですから。あなたが愛されなかった分、私はあなたの事を愛したかった エマ:私はただ…あなたを愛したかった アレン:(M)初めて人にナイフを突き付けたのは10年前の事。そして、初めて人の皮膚を切り裂いたのは10年後の自分の手首 アレン:(M)貴方が私の前から姿を消したあの日に比べたら、痛くはなかった。震えた手から滴る血が、貴方と初めて交わしたキスと同じ味がした。何だかそれだけで、繋がれてる気がした アレン:(M)私は……最後に貴方に会った時と…歳が一緒になりました アレン:(M)それでも……貴方が好きだったタバコと、貴方が好きだったお酒は、貴方と同じ歳になっても…好きになれません アレン:(M)貴方が愛した人さえも…愛せませんでした アレン:(M)憎かったわけじゃない。貴方が私を女として見てくれれば満たされたはず。彼女ではなく、貴方が…私を女として。愛があればなんだって言うの?そんな嘘で惑わされた私も大嫌い。私は貴方を殺してしまったけど…貴方も私の心を殺したんです アレン:(M)何のために生きているのか…何のために愛していくのか。……貴方が居ても居なくてもその答えは出てきません。…だって、貴方は私を愛していないのだから……。嘘でもいいから……どんな形でもいいから……私は貴方に愛されたかった アレン:私はただ…貴方に愛されたかった 0:私はただ愛されたかった 0:End