台本概要

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タイトル 黒き山の戦い
作者名 Oroるん  (@Oro90644720)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男2、女2、不問1) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ファンタジー戦闘台本です

・軽微なアドリブ可

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
シエル 74 光の魔道士※一人称「僕」ですが、設定上は女性です。ただし、作中女性であることの言及が無い為、男性の方が演じて頂いても構いません。
カズマ 103 炎の魔道士
ティア 74 樹の魔道士
ギラ 125 闇の魔道士
鴉の君 74 創造主の守護者
語り 不問 20 ナレーション ※鴉の君との兼ね役推奨
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
語り:『世界が、異世界より現れし異形の怪物・・・魔獣の侵攻を受け始めてから、10年の歳月が流れていた。』 語り:『当初、圧倒的な力を誇る魔獣達に成す術がなかった人類も、神秘の秘術・・・魔法の力で、徐々に攻勢に転じていった。』 語り:『魔獣の勢力圏は、今や本拠地である「黒き山」のみ。』 語り:『魔獣研究の成果により、敵は「創造主」と呼ばれる存在が母体であることが分かっていた。』 語り:『「創造主」が生命活動を停止すれば、全ての魔獣は力を失い、やがて死に絶える。すなわち、長きに渡る戦いは終わりを迎えるのだ。』 語り:『かくして、「創造主」を打倒すべく、選ばれし12人の魔道士が、「黒き山」への侵攻を開始した。』 語り:『しかし、その道のりは平坦ではなかった。魔獣達の抵抗はすさまじく、犠牲を強いられる戦いとなった。』 語り:『激しい戦いの中、一人また一人と、命を落としていく。』 語り:『魔道士達は頂上目前にまで攻め進んだが、その時点で生き残っていたのはわずかに4人。』 語り:『光の魔導士語、シエル』 語り:『炎の魔導士、カズマ』 語り:『樹(き)の魔導士、ティア』 語り:『そして、闇の魔導士、ギラ』 語り:『彼らは傷付き、苦しみながらも、進み続けた。』 語り:『人々の「希望」を背負って・・・』 0:「黒き山の戦い」 0:「黒き山」山頂付近 0:魔獣の群れに囲まれている。 シエル:穿て(うがて)退魔(たいま)の閃光!「サウザー・ブラスト!」 0:無数の光線が魔獣を駆逐する。 ティア:道が拓けた!(ひらけた) ギラ:包囲をぬけるぞ!走れ! カズマ:(走りながら)ほらほらこっちだ魔獣共!着いてきな! ギラ:(走りながら)カズマ!余計な挑発をするな! カズマ:(走りながら)バカだな、作戦だよ作戦! ティア:(走りながら)作戦? カズマ:へへへ、俺たちを追いかけて密集してやがる。これなら! カズマ:猛(たけ)りし炎よ、大地を突き破れ!「キラウェア・ストライク!」 0:地面から炎の柱が幾重にも噴き出し、敵を飲み込む シエル:ヒュウ!(口笛でも可) カズマ:よっしゃあ! ティア:すご・・・敵を一掃しちゃった。 カズマ:どうだ、兄貴?俺の完璧な作戦はよ? ギラ:・・・馬鹿が。 カズマ:あ? ギラ:魔力の無駄遣いだ。こんな雑魚、無理して倒す必要はなかった。 ギラ:それに・・・ 0:魔獣:「シャアッ!」 ティア:っ! シエル:まだ生きてる奴が! ギラ:詰めも甘い!「シャドウ・ランス!」 0:黒い槍が敵を貫く カズマ:討ち漏らしがいやがったのか。 ギラ:油断しているからだ。 カズマ:ちぇ・・・ ティア:ちょっと待って! ギラ:? 0:魔獣:「グ・・・グガガ・・・」 ギラ:まだ生きている、だと? ティア:くっ!「コロ・ブレイド!」 0:無数の花弁が敵を斬り裂く 0:魔獣「グギャアアア!」 シエル:今度こそ、死んだみたいだね。 カズマ:何だよ兄貴、偉そうに言っといてさ。詰めが甘いのはどっちだよ。 ギラ:・・・「シャドウ・ランス!」 カズマ:へ? 0:魔獣の死体にシャドウランスが突き刺さる。 ギラ:「シャドウ・ランス!」「シャドウ・ランス!」「シャドウ・ランス!」 シエル:ちょっと! ティア:ギラ、何やってるの!?もう死んでるわ! ギラ:(荒い息遣い) カズマ:兄貴、どうしたんだよ? ギラ:・・・ シエル:ね、ねえ、ここらで一休みしようよ!かなり魔力も使っちゃったしさ、回復しないと。 カズマ:え?・・・あー、そうだな。兄貴も、それで良いだろ? ギラ:・・・ああ。 ティア:じゃあ、結界張るわね。 ティア:「リリーフ・ガーデン」 0:樹木が生え出し、4人を覆う カズマ:(あくびする)ちょっくら横になるか。 シエル:寝ちゃったらダメだよ。ここ、敵地なんだからね。 カズマ:大丈夫、大丈夫(あくびする) シエル:ホントに大丈夫かな? 0:ギラ、皆と離れた場所に座る。 ギラ:俺は、もう・・・ 0:ティアが近づいてくる ティア:ギラ、あなた変よ。すごくイラついてるみたい。 ギラ:魔獣との最終決戦なんだぞ?ナーバスになるのも当然だろう? ティア:でも、あなたらしく無いわ。さっきのは・・・ ギラ:この状況で、平静でいられる方がどうかと思うがな! ティア:ギラ・・・ ギラ:(大きく息をつき)少し、疲れているだけだ。ずっと戦い通しだからな。 ティア:なら良いけど・・・ ギラ:心配かけてすまない。 ティア:何かあるのなら、隠さずに言ってね?私たち、仲間じゃない。 ギラ:・・・分かってる。 0:「黒き山」の頂上 0:大きな黒い塊が蠢いていた 鴉の君:カアアッ!カッカッカァッ! 鴉の君:おのれおのれ!穢らわしい(けがらわしい)人間風情が、この神聖な地に足を踏み入れるとは! 0:鴉の君の背後で空間が歪む 鴉の君:おお、我らが「創造主」様! 0:歪みから数本の触手が伸びる 鴉の君:申し訳ございませぬ、下賤な(げせんな)人間を「創造主」様のお側に近づけてしまいました。 鴉の君:奴らは目前にまで迫っております。 鴉の君:こうなれば、妾(わらわ)自ら出張る(でばる)所存! 鴉の君:小賢しい魔導士の首を、必ずや持ち帰ってご覧に入れましょう! ティア:(竹筒の水を飲んでいる) カズマ:ティア、俺にも水くれ。 ティア:うん(竹筒を渡す) カズマ:サンキュ(水を飲む) シエル:山頂まであとどれくらいかなあ。 ギラ:もうすぐのはずだ。 シエル:そっかあ。そこに「創造主」がいるんだよね? ティア:ええ。ここまで、長かったわね。 シエル:勝てるのかな、僕たちだけで。 カズマ:何言ってんだ!勝てるに決まってるだろ! ギラ:・・・ カズマ:俺たちは負けられねえ、絶対にな! ティア:・・・そうね!死んでいった仲間たちの為にも、私たちは勝たないと! シエル:・・・うん!僕たちなら、きっとできるよね! カズマ:ああ!勝って帰ろうぜ!4人揃ってさ! ギラ:俺は帰るつもりはない。 ティア:え? ギラ:俺は「創造主」を倒せるなら、刺し違えでも構わんと思っている。それくらいの覚悟がある。 ギラ:「生きて帰れるだろう」などと言う、甘い考えは一切持っていない。 カズマ:(舌打ち)「甘い」って何だよ!帰りたいって思って悪いか? ティア:ねえ、今は辞めようよ。 ギラ:俺たちが託されたものの「重み」が分かっていないようだな。 ギラ:俺たちが敗れれば、再び世界は魔獣に蹂躙(じゅうりん)されるだろう。 ギラ:そんな事も分からんのか? カズマ:分かってるに決まってんだろうが! ギラ:だったら、甘い考えは捨てることだ。 カズマ:いちいち癪(しゃく)な言い方してんじゃねえよ!ホント、ムカつく兄貴だぜ。 ギラ:不出来な弟に言われたくないな。 カズマ:テメェ! ティア:ちょっと二人とも、良い加減にしなさいよ! シエル:僕は・・・! ギラ:・・・ カズマ:・・・ シエル:僕は、もう誰にも死んで欲しくないよ。 ティア:シエル・・・ シエル:最初は12人だった僕たちも、もう4人しか残ってない。 シエル:ううん、僕たちだけじゃない。魔獣が現れてから今まで、多くの人たちが命を落としてきた。 シエル:もう・・・十分じゃないか。 シエル:「甘い」って言われても、僕はこの中の誰一人として死んで欲しく無い!みんなで帰りたい! ギラ:・・・ シエル:それじゃあ、ダメかな? ギラ:シエル、俺は・・・ ティア:っ! カズマ:どうした、ティア?・・・っ! シエル:何コレ?すごい魔力を感じる。 ギラ:この気配は・・・来るぞ! 0:突風が結界を吹き飛ばす ティア:キャッ! カズマ:ぐっ!何だ今の風は!?結界を吹き飛ばしやがった! 鴉の君:下賤(げせん)なる魔導士共よ。 シエル:この声・・・どこから? ギラ:っ!上だ! カズマ:うぉっ!何だありゃ!? ティア:黒い球体? シエル:違う・・・あれは、翼? 鴉の君:妾自ら相手をしてやる事、誉れ(ほまれ)に思うが良い。 ギラ:翼が、開く。 0:5枚の翼が開き、本体が姿を表す。 鴉の君:カァァァ・・・(息のみでも可) ティア:あれ、人間? ギラ:五枚の翼を除けば、人間に見えるな。おまけに言葉まで話すとは。 鴉の君:穢らわしき人間と一緒にするな!妾こそは「創造主」様の守護者なるぞ! カズマ:お前が守護者?という事は、お前を倒せば「創造主」に会えるって事だよな? 鴉の君:妾を倒す?カァーカッカッカッ!そのような事、万が一にも起ころうはずがないわ! カズマ:試してみるか? ギラ:よせ!うかつに仕掛けるな! カズマ:地獄の業火(ごうか)よ、全てを呑み込み焼き尽くせ! 0:カズマがかざした掌に巨大な火球が生成される 鴉の君:ほう・・・大きな火の球じゃのう。 カズマ:くたばりやがれ!「ガイア・インパクト!」 0:鴉の君に向けて火の球が発射される 鴉の君:ふっ!(翼で火球を受け止める) ティア:なっ!「ガイア・インパクト」を翼で受け止めた? 鴉の君:こんなもので妾を倒そうなど・・・片腹痛いわ! 0:火球がみるみる小さくなっていく。 シエル:ああ!炎が消されちゃう! ティア:違う・・・吸収してるのよ! 鴉の君:返すぞ・・・貴様の炎を!カァッ!(口から炎を吹き出す) ティア:シエル、結界を!「リリーフ・ガーデン!」 シエル:わ、わかった!「ホーリー・ウォール!」 0:木と光が壁になって炎を防ぐ ティア:(炎を防ぎながら)ぐっ!この炎・・・紛れもなく「ガイア・インパクト」だわ。 カズマ:俺の魔法を吸収して返すなんて・・・ ギラ:だから迂闊だと言ったんだ。 カズマ:こんな時に説教かよ! 鴉の君:カァーカッカッカッ!仲間割れしている場合か?今度は妾から行くぞえ。 カズマ:っ! 鴉の君:「呪詛(じゅそ)の息吹(いぶき)」 0:翼をはためかせると、黒い疾風が吹き荒ぶ ティア:キャアッ! シエル:うわっ! カズマ:黒い風が、二人の結界を吹き飛ばしやがった・・・ ギラ:大丈夫か!? ティア:うん、なんとか・・・ シエル:僕も・・・ 鴉の君:弱い!弱過ぎるぞニンゲン! カズマ:くそ!調子乗んじゃねえぞ! ギラ:やめろ、また同じ失敗を繰り返す気か? カズマ:じゃあどうするんだよ! ギラ:・・・ ティア:何か考えがあるの? ギラ:どうやら、あの翼が魔力の源のようだな。 シエル:じゃあ・・・ ギラ:・・・カズマ。 カズマ:・・・そういうことか! 鴉の君:? ギラ:深淵(しんえん)なる闇よ、鋭き刃(やいば)と化せ! カズマ:斬り裂くは炎の剣! ギラ:「ダーク・サイス!」 カズマ:「ヒート・セイヴァー!」 鴉の君:闇の鎌(かま)と炎の剣? シエル:光よ飛翔の力を!「シャイン・ブースト!」 ギラ:くぉぉぉぉぉ! カズマ:うぉぉぉぉぉ! 0:光が二人の背中から噴き出し、空へと舞い上げる 鴉の君:と、飛んだだと!? カズマ:行くぜ、カラス女!おらあっ!(炎の剣で翼を斬り落とす) 鴉の君:うがあっ!妾の翼があ!! ギラ:よそ見していて良いのか?はああっ!(反対側の翼を斬り落とす) 鴉の君:ぐうぅっ!おのれ、よくも妾の翼を斬り落としおったな! 鴉の君:撃ち落としてくれる!「咎(とが)の運び手!」(羽根を弾丸の様に撃ち出す) シエル:羽根を飛ばしてきた?避(よ)けて! カズマ:当たるかよ!(回避する) ギラ:どこを狙っている?(回避する) 鴉の君:くっ!早い! ティア:貴方は動いちゃダメよ?「ラディ・バインド!」 0:大地を突き破り巨大な根が伸びる 鴉の君:何だこれは?根が伸びてくる。 ティア:捕まえる!はっ! 鴉の君:(根に捕縛され)ぐっ!動けぬ! カズマ:もらった! ギラ:斬る! 0:翼が二枚斬り落とされる 鴉の君:カァァァァァ!! シエル:あと一枚! ティア:いけるわ! 鴉の君:このウジ虫共が!許さぬ・・・許さんぞお!! カズマ:っ!すげえ魔力だ! ギラ:(この魔力は・・・) 鴉の君:全て無に帰してくれる!「虚無の飽食(きょむのほうしょく)」 0:鴉の君から黒い霧が四方に吹き出す カズマ:何だ?黒い霧? ティア:っ!?「ラディ・バインド」が切れた? 鴉の君:カァーカッカッカッ! ギラ:切れたんじゃない、溶けたんだ!カズマ、その霧に触れるな! カズマ:うあっ!マジかよ! シエル:ダメだ、逃げ切れない! ギラ:くっ!「ナイトメア・サージ!」 0:ギラの両手から黒いエネルギーが放たれる 鴉の君:ほう、黒い波動が・・・ ティア:霧を押し戻してる! ギラ:カズマ!今のうちに! カズマ:兄貴、助かった。(地上に降りる) 鴉の君:果たして、いつまで押しとどめられるかな?時間が経つほどにそちらが不利ぞ? ギラ:なに?・・・っ! シエル:翼が、再生してる! ティア:そんな! ギラ:くっ! 鴉の君:とりあえずは2枚だが、ウジ虫をすり潰すのには十分よ! カズマ:兄貴、逃げろ! ギラ:間に合わない・・・(霧に飲み込まれ)ぐああああ!! カズマ:兄貴! 鴉の君:カァーカッカッカッ! ギラ:あ・・・あ・・・(地上に落下する) ティア:ギラ! カズマ:(ギラに駆け寄り)シエル、早く回復魔法を! シエル:(同じく駆け寄り)癒しの精霊よ・・・ ギラ:やめ、ろ・・・ シエル:え? ギラ:(苦しそうに立ち上がる) カズマ:兄貴!回復しないと! ギラ:・・・必要、ない。 鴉の君:そうじゃ、無駄じゃ!傷を治したとて、すぐに死ぬゆえなあ! ギラ:・・・ティア、皆を捕まえていてくれ。 ティア:え? カズマ:まさか・・・ 鴉の君:何じゃ死に損ない?まだ何かしようと言うのか? ギラ:開け、冥界の門!「アビス・ゲート!」 0:ギラの前方の空間に裂け目が出現する。 鴉の君:く、空間に亀裂が? ギラ:ぬおおおおお!!(裂け目が広がる) 鴉の君:くっ!吸い込まれる! 0:裂け目はギラ以外の物体を吸収しようとする。 ティア:「ラディ・バインド!」みんな、根に捕まって! 0:根がシエル、ティア、カズマを捕らえる。 シエル:ありがと、ティア。 カズマ:兄貴・・・ ギラ:終わりだああああ!! 鴉の君:おのれえええええ!! 0:鴉の君、裂け目に吸い込まれる シエル:やった! ギラ:閉じろ・・・ゲート(裂け目が閉じる) ギラ:ガハッ(吐血し倒れる) カズマ:兄貴! シエル:っ!今度こそ回復するよ? ギラ:必要無いと・・・言っただろ・・・ ティア:何でよ!? ギラ:再生した翼は2枚・・・どっちも俺が斬ったやつだ・・・ カズマ:兄貴?何の話だ? ギラ:俺の魔力は・・・魔獣と・・・ 鴉の君:カァーカッカッカッ! シエル:えっ?アイツの声が!? ティア:嘘・・・ カズマ:っ!みんな見ろ!空間の裂け目が広がっている! 0:空間の切れ目から鴉の君が姿を現す シエル:アイツが出てくるよ! ギラ:「アビス・ゲート」もダメか・・・ 鴉の君:カァーカッカッカッ!一瞬ヒヤリとさせられたが、無駄じゃったなあ! ティア:そんな!どうして? シエル:もしかして、闇の、魔力? カズマ:? ギラ:俺は、闇の魔導士。禍々しき(まがまがしき)闇の魔力を操る者。 ギラ:そしてどうやらそれは、ここに満ちている力、つまり、魔獣共と同種の力のようだ。 ティア:っ! ギラ:頂上に近づく程、闇の力が濃くなっていくのを感じていた。同時に、俺の中にドス黒い何かが入ってくる様な感覚があった。 シエル:ギラの様子がおかしかったのは、そのせい? カズマ:何だよそれ・・・ ギラ:俺の魔法は、魔獣には効果が薄い。雑魚相手ならまだ何とかなったが、アイツは無理だ。ましてや、「創造主」にはとても・・・ ギラ:ここまで生き残った俺が、とんだ「足手まとい」だ。 ティア:そんな言い方しないでよ! シエル:そうだよ!僕たちにはギラが必要なんだ! 鴉の君:取り込み中申し訳ないが、妾はお前らの下らぬ友情ごっこに付き合う義理は無いぞ? カズマ:おい!来るぞ! 鴉の君:さあ、今度こそ終演にしてくれようぞ!「虚無の飽食!」 0:黒い霧が放出される カズマ:また霧かよ! 鴉の君:それだけでは無いぞ?「呪詛の息吹!」 ティア:風で霧を飛ばしてきた!? シエル:「ホーリー・ウォール!」 鴉の君:そんな貧弱な結界、もはや通用せんわ!カアアアッ!! 0:結界が一瞬で吹き飛ばされる。 シエル:僕の結界が! カズマ:ダメだ、逃げられねえ!(霧に晒される)ぐううううう! ティア:(同時に)ああああああ! シエル:(同時に)ううううう! 鴉の君:カァーカッカッカッ!そのまま溶けて消え去るが良い! カズマ:くそっ、このままじゃ。 シエル:こんな所で・・・終われないのに。 ギラ:・・・ダメだ。 ティア:? ギラ:そんなのダメだ。 カズマ:兄貴、どうするつもりだ? ギラ:俺たちは、人類最後の希望なんだ。 シエル:ギラ! ギラ:こんな所で倒れるわけにはいかないんだ! 鴉の君:悪あがきはよせ、人間! ギラ:(立ち上がりながら)俺たちは・・・世界を救うんだ! カズマ:兄貴! ギラ:うおおおおお! 鴉の君:何じゃ?一体何をしておる? ティア:っ?霧が、和(やわ)らいでる? シエル:見て!ギラが・・・ ギラ:はあああ!(ギラの口に霧が吸い込まれていく) カズマ:霧を、吸収してる? 鴉の君:馬鹿な! ギラ:お前の芸当を・・・真似させてもらった。 鴉の君:そんな真似、人間如きにできるはずがない。 ギラ:(咳込む)どうやら、俺はお前らの魔力と相性が良いようだ。 鴉の君:調子に乗るな!「咎の運び手!」(羽根を発射する) ギラ:ぐっ!(羽根が突き刺さる) 鴉の君:どうじゃ! ギラ:ぐ・・・く・・・?(羽根が体に吸収されていく) ティア:ギラの体が、羽根を取り込んだ? カズマ:すげえ。 鴉の君:この化け物め!カァー!!(ギラに向かって滑空する) ティア:突っ込んでくる! カズマ:逃げろ!兄貴! ギラ:カズ・・・ 鴉の君:はあっ!(手刀をギラの胸に突き刺す) ギラ:がはっ!(吐血) シエル:ギラァァァァ!! 鴉の君:・・・カァーカッカッカッ!分かるかえ?妾の腕が、お前の体を貫いたぞ! ギラ:・・・ ティア:そんな・・・ 鴉の君:人間風情が、妾の力を喰らおうとするからじゃ。 カズマ:テメェ・・・許さねえ!! 鴉の君:カァーカッカッカッ!カァーカッカッカッ!カァー・・・カ? シエル:待って!様子がおかしいよ? 鴉の君:何じゃ?何故腕が抜けぬ!? ギラ:・・・終わりだ。 鴉の君:なに? ギラ:おおおおおおおお! 鴉の君:何じゃ、何をしておる?・・・うっ! ティア:まさか、あいつごと取り込むつもり? 鴉の君:ふざけるな!そんな事をすれば・・・ 鴉の君:お前も魔獣になってしまうぞ! シエル:っ! ギラ:覚悟の上だ・・・ 0:ギラの肌が黒く変色し始める カズマ:兄貴!やめろ!! 鴉の君:離せ!離せえ!! ギラ:ぬううあああ・・・ 鴉の君:やめ・・・ヤメ・・・ ギラ:ガアアアアアア!!! 鴉の君:そ、創造主・・・様(完全に取り込まれる) ギラ:(荒い息遣い) シエル:ギラ?大丈夫? ギラ:・・・グアッ! カズマ:兄貴!・・・っ! ギラ:グヌウウアア・・・(肉体が変化し始める) ティア:ギラ・・・その姿は・・・ 語り:その姿は、もはや「魔導士ギラ」では無かった。 語り:肌は漆黒に染まり、牙と角と、黒い翼が生えていた。 カズマ:兄貴?兄貴なんだろ? ギラ:グウウウ・・・ カズマ:兄貴、大丈夫だよな?元に戻れるよな?(ギラに近づく) ティア:カズマ、駄目! ギラ:ガアッ!(カズマを翼で払い飛ばす) カズマ:ぐあっ! ティア:カズマ! ギラ:グウウウ(肩から頭が生えてくる) シエル:肩から、何か生えてくる! ティア:あれは・・・ 鴉の君:グウウウ! カズマ:カラス女の、首? ギラ:コロス、コロスコロスコロスコロス・・・ 鴉の君:コロスコロスコロスコロスコロス・・・ シエル:ギラ・・・本当に、魔獣になっちゃったの? 鴉の君:ガアッ!(シエルに飛びかかる) シエル:ぐっ!ギラ・・・ ティア:シエル!「ラディ・バインド!」 0:根がギラを拘束する ギラ:グルルルルル・・・ ティア:ギラ!お願い、目を覚まして! ギラ:ガアッ!(根を引きちぎる) ティア:っ!・・・ダメ、抑え込めない! カズマ:・・・(ギラに近づく) シエル:カズマ、近づいちゃ駄目だ! 鴉の君:ガアッ! カズマ:ぐあっ!(吹き飛ばされる) ギラ:グウウウ・・・ カズマ:・・・(再び立ち上がり近づく) ティア:カズマ! カズマ:大丈夫だって。 ギラ:ガアッ! カズマ:ガハッ!・・・(吹き飛ばされるが、踏み留まる)大丈夫、大丈夫。 シエル:カズマ・・・ カズマ:兄貴が負けるはずねえだろ。だって兄貴は・・・ ギラ:グウアアアアア! 鴉の君:グウアアアアア! カズマ:俺の、兄貴なんだからよ。 ギラ:ッ! 鴉の君:コロスゥ!コロスコロスゥ! ギラ:・・・ ティア:止まった? 鴉の君:コロスコロスコロ・・・コ・・・ シエル:あの女の方も、動かなくなったよ! ギラ:カ、ズ、マ、 カズマ:兄貴!良かった、やっぱり兄貴だ! ギラ:俺ハ・・・ カズマ:どうした兄貴?何が言いたいんだ? ギラ:俺ハ・・・モウ駄目だ。 カズマ:っ! ギラ:コノママダト・・・完全ニ・・・魔獣ニなってシマウ・・・ ギラ:ダカラ・・・俺の意識ガ残ってイル内ニ・・・ ティア:まさか・・・ ギラ:シエルノ・・・光魔法デ・・・俺ヲ! カズマ:何言ってんだよ兄貴! シエル:馬鹿言わないでよ・・・そんな事、できるわけないだろ! ティア:・・・ ギラ:早ク、シテクレ・・・俺ハ魔獣ナンカニ、なりたくナイ・・・ カズマ:兄貴・・・ ギラ:シエル・・・俺ヲ助テクレ・・・ シエル:僕は・・・もう誰にも死んで欲しく無いって言ったじゃないか!! ギラ:・・・勝テ ティア:・・・え? ギラ:勝ッテ・・・世界ヲ救エ・・・ カズマ:ああ、当然さ!兄貴も一緒にな! ギラ:ソシテ・・・イ・・・イ・・・生きろ・・・ シエル:っ! ギラ:俺の分まで、生きろ・・・生きてくれ ティア:こんなの・・・こんなのって! ギラ:頼む・・・ シエル:・・・ カズマ:シエル、お前まさか・・・ シエル:・・・混沌を打ち払う、聖なる光芒(こうぼう) カズマ:馬鹿野郎!そんな事、俺が許さねえぞ! シエル:もう楽にしてあげようよ!ギラ、とっても苦しそうだよ! カズマ:っ! ギラ:グウウウウウ・・・ カズマ:くそ、くそ、くそぉ! ティア:カズマ・・・(カズマを抱きしめる) カズマ:(ティアの胸ね中で)ちきしょう・・・ ティア:シエル・・・お願い。ギラを助けてあげて。 シエル:うん・・・混沌を打ち払う聖なる光芒! ギラ:カズマ・・・ カズマ:兄貴っ! ギラ:お前が弟で良かった・・・誇りに思っているぞ。 カズマ:兄貴ィィィィィ!!! シエル:「エンド・オブ・ライト!」 語り:『シエルが放った眩い光の帯が、ギラを飲み込んでいく』 語り:『その幻想的で美しい光に包まれながら・・・彼はとても穏やかな表情を浮かべていた』 0:ギラが消失した場所に膝をつくカズマ カズマ:兄貴・・・ シエル:カズマ・・・ゴメン。 カズマ:っ!(シエルを殴り飛ばす) シエル:っ!(吹っ飛ぶ) ティア:シエル! シエル:うぅ・・・大丈夫。 カズマ:ぐうああっ!(自分を殴る) シエル:カズマ・・・ カズマ:・・,シエル悪い。きっと本当は、俺がやらなくちゃいけなかったんだよな。 シエル:そんなことないよ。 カズマ:ありがとな、兄貴を救ってくれて。 シエル:ううん。 ティア:・・・行きましょう。まだ終わってないわ。 カズマ:ああ。悲しむのは、後でいくらでもできる。今の俺たちには、やるべき事があるよな。 ティア:「創造主」を倒し、世界を救う! シエル:うん! カズマ:これで終わらせる! ティア:ギラや、倒れた仲間たちの想いを背負って! シエル:行こう!最後の戦いに! 語り:そして・・・「創造主」との最後の戦いが、幕を開ける。 0:完

語り:『世界が、異世界より現れし異形の怪物・・・魔獣の侵攻を受け始めてから、10年の歳月が流れていた。』 語り:『当初、圧倒的な力を誇る魔獣達に成す術がなかった人類も、神秘の秘術・・・魔法の力で、徐々に攻勢に転じていった。』 語り:『魔獣の勢力圏は、今や本拠地である「黒き山」のみ。』 語り:『魔獣研究の成果により、敵は「創造主」と呼ばれる存在が母体であることが分かっていた。』 語り:『「創造主」が生命活動を停止すれば、全ての魔獣は力を失い、やがて死に絶える。すなわち、長きに渡る戦いは終わりを迎えるのだ。』 語り:『かくして、「創造主」を打倒すべく、選ばれし12人の魔道士が、「黒き山」への侵攻を開始した。』 語り:『しかし、その道のりは平坦ではなかった。魔獣達の抵抗はすさまじく、犠牲を強いられる戦いとなった。』 語り:『激しい戦いの中、一人また一人と、命を落としていく。』 語り:『魔道士達は頂上目前にまで攻め進んだが、その時点で生き残っていたのはわずかに4人。』 語り:『光の魔導士語、シエル』 語り:『炎の魔導士、カズマ』 語り:『樹(き)の魔導士、ティア』 語り:『そして、闇の魔導士、ギラ』 語り:『彼らは傷付き、苦しみながらも、進み続けた。』 語り:『人々の「希望」を背負って・・・』 0:「黒き山の戦い」 0:「黒き山」山頂付近 0:魔獣の群れに囲まれている。 シエル:穿て(うがて)退魔(たいま)の閃光!「サウザー・ブラスト!」 0:無数の光線が魔獣を駆逐する。 ティア:道が拓けた!(ひらけた) ギラ:包囲をぬけるぞ!走れ! カズマ:(走りながら)ほらほらこっちだ魔獣共!着いてきな! ギラ:(走りながら)カズマ!余計な挑発をするな! カズマ:(走りながら)バカだな、作戦だよ作戦! ティア:(走りながら)作戦? カズマ:へへへ、俺たちを追いかけて密集してやがる。これなら! カズマ:猛(たけ)りし炎よ、大地を突き破れ!「キラウェア・ストライク!」 0:地面から炎の柱が幾重にも噴き出し、敵を飲み込む シエル:ヒュウ!(口笛でも可) カズマ:よっしゃあ! ティア:すご・・・敵を一掃しちゃった。 カズマ:どうだ、兄貴?俺の完璧な作戦はよ? ギラ:・・・馬鹿が。 カズマ:あ? ギラ:魔力の無駄遣いだ。こんな雑魚、無理して倒す必要はなかった。 ギラ:それに・・・ 0:魔獣:「シャアッ!」 ティア:っ! シエル:まだ生きてる奴が! ギラ:詰めも甘い!「シャドウ・ランス!」 0:黒い槍が敵を貫く カズマ:討ち漏らしがいやがったのか。 ギラ:油断しているからだ。 カズマ:ちぇ・・・ ティア:ちょっと待って! ギラ:? 0:魔獣:「グ・・・グガガ・・・」 ギラ:まだ生きている、だと? ティア:くっ!「コロ・ブレイド!」 0:無数の花弁が敵を斬り裂く 0:魔獣「グギャアアア!」 シエル:今度こそ、死んだみたいだね。 カズマ:何だよ兄貴、偉そうに言っといてさ。詰めが甘いのはどっちだよ。 ギラ:・・・「シャドウ・ランス!」 カズマ:へ? 0:魔獣の死体にシャドウランスが突き刺さる。 ギラ:「シャドウ・ランス!」「シャドウ・ランス!」「シャドウ・ランス!」 シエル:ちょっと! ティア:ギラ、何やってるの!?もう死んでるわ! ギラ:(荒い息遣い) カズマ:兄貴、どうしたんだよ? ギラ:・・・ シエル:ね、ねえ、ここらで一休みしようよ!かなり魔力も使っちゃったしさ、回復しないと。 カズマ:え?・・・あー、そうだな。兄貴も、それで良いだろ? ギラ:・・・ああ。 ティア:じゃあ、結界張るわね。 ティア:「リリーフ・ガーデン」 0:樹木が生え出し、4人を覆う カズマ:(あくびする)ちょっくら横になるか。 シエル:寝ちゃったらダメだよ。ここ、敵地なんだからね。 カズマ:大丈夫、大丈夫(あくびする) シエル:ホントに大丈夫かな? 0:ギラ、皆と離れた場所に座る。 ギラ:俺は、もう・・・ 0:ティアが近づいてくる ティア:ギラ、あなた変よ。すごくイラついてるみたい。 ギラ:魔獣との最終決戦なんだぞ?ナーバスになるのも当然だろう? ティア:でも、あなたらしく無いわ。さっきのは・・・ ギラ:この状況で、平静でいられる方がどうかと思うがな! ティア:ギラ・・・ ギラ:(大きく息をつき)少し、疲れているだけだ。ずっと戦い通しだからな。 ティア:なら良いけど・・・ ギラ:心配かけてすまない。 ティア:何かあるのなら、隠さずに言ってね?私たち、仲間じゃない。 ギラ:・・・分かってる。 0:「黒き山」の頂上 0:大きな黒い塊が蠢いていた 鴉の君:カアアッ!カッカッカァッ! 鴉の君:おのれおのれ!穢らわしい(けがらわしい)人間風情が、この神聖な地に足を踏み入れるとは! 0:鴉の君の背後で空間が歪む 鴉の君:おお、我らが「創造主」様! 0:歪みから数本の触手が伸びる 鴉の君:申し訳ございませぬ、下賤な(げせんな)人間を「創造主」様のお側に近づけてしまいました。 鴉の君:奴らは目前にまで迫っております。 鴉の君:こうなれば、妾(わらわ)自ら出張る(でばる)所存! 鴉の君:小賢しい魔導士の首を、必ずや持ち帰ってご覧に入れましょう! ティア:(竹筒の水を飲んでいる) カズマ:ティア、俺にも水くれ。 ティア:うん(竹筒を渡す) カズマ:サンキュ(水を飲む) シエル:山頂まであとどれくらいかなあ。 ギラ:もうすぐのはずだ。 シエル:そっかあ。そこに「創造主」がいるんだよね? ティア:ええ。ここまで、長かったわね。 シエル:勝てるのかな、僕たちだけで。 カズマ:何言ってんだ!勝てるに決まってるだろ! ギラ:・・・ カズマ:俺たちは負けられねえ、絶対にな! ティア:・・・そうね!死んでいった仲間たちの為にも、私たちは勝たないと! シエル:・・・うん!僕たちなら、きっとできるよね! カズマ:ああ!勝って帰ろうぜ!4人揃ってさ! ギラ:俺は帰るつもりはない。 ティア:え? ギラ:俺は「創造主」を倒せるなら、刺し違えでも構わんと思っている。それくらいの覚悟がある。 ギラ:「生きて帰れるだろう」などと言う、甘い考えは一切持っていない。 カズマ:(舌打ち)「甘い」って何だよ!帰りたいって思って悪いか? ティア:ねえ、今は辞めようよ。 ギラ:俺たちが託されたものの「重み」が分かっていないようだな。 ギラ:俺たちが敗れれば、再び世界は魔獣に蹂躙(じゅうりん)されるだろう。 ギラ:そんな事も分からんのか? カズマ:分かってるに決まってんだろうが! ギラ:だったら、甘い考えは捨てることだ。 カズマ:いちいち癪(しゃく)な言い方してんじゃねえよ!ホント、ムカつく兄貴だぜ。 ギラ:不出来な弟に言われたくないな。 カズマ:テメェ! ティア:ちょっと二人とも、良い加減にしなさいよ! シエル:僕は・・・! ギラ:・・・ カズマ:・・・ シエル:僕は、もう誰にも死んで欲しくないよ。 ティア:シエル・・・ シエル:最初は12人だった僕たちも、もう4人しか残ってない。 シエル:ううん、僕たちだけじゃない。魔獣が現れてから今まで、多くの人たちが命を落としてきた。 シエル:もう・・・十分じゃないか。 シエル:「甘い」って言われても、僕はこの中の誰一人として死んで欲しく無い!みんなで帰りたい! ギラ:・・・ シエル:それじゃあ、ダメかな? ギラ:シエル、俺は・・・ ティア:っ! カズマ:どうした、ティア?・・・っ! シエル:何コレ?すごい魔力を感じる。 ギラ:この気配は・・・来るぞ! 0:突風が結界を吹き飛ばす ティア:キャッ! カズマ:ぐっ!何だ今の風は!?結界を吹き飛ばしやがった! 鴉の君:下賤(げせん)なる魔導士共よ。 シエル:この声・・・どこから? ギラ:っ!上だ! カズマ:うぉっ!何だありゃ!? ティア:黒い球体? シエル:違う・・・あれは、翼? 鴉の君:妾自ら相手をしてやる事、誉れ(ほまれ)に思うが良い。 ギラ:翼が、開く。 0:5枚の翼が開き、本体が姿を表す。 鴉の君:カァァァ・・・(息のみでも可) ティア:あれ、人間? ギラ:五枚の翼を除けば、人間に見えるな。おまけに言葉まで話すとは。 鴉の君:穢らわしき人間と一緒にするな!妾こそは「創造主」様の守護者なるぞ! カズマ:お前が守護者?という事は、お前を倒せば「創造主」に会えるって事だよな? 鴉の君:妾を倒す?カァーカッカッカッ!そのような事、万が一にも起ころうはずがないわ! カズマ:試してみるか? ギラ:よせ!うかつに仕掛けるな! カズマ:地獄の業火(ごうか)よ、全てを呑み込み焼き尽くせ! 0:カズマがかざした掌に巨大な火球が生成される 鴉の君:ほう・・・大きな火の球じゃのう。 カズマ:くたばりやがれ!「ガイア・インパクト!」 0:鴉の君に向けて火の球が発射される 鴉の君:ふっ!(翼で火球を受け止める) ティア:なっ!「ガイア・インパクト」を翼で受け止めた? 鴉の君:こんなもので妾を倒そうなど・・・片腹痛いわ! 0:火球がみるみる小さくなっていく。 シエル:ああ!炎が消されちゃう! ティア:違う・・・吸収してるのよ! 鴉の君:返すぞ・・・貴様の炎を!カァッ!(口から炎を吹き出す) ティア:シエル、結界を!「リリーフ・ガーデン!」 シエル:わ、わかった!「ホーリー・ウォール!」 0:木と光が壁になって炎を防ぐ ティア:(炎を防ぎながら)ぐっ!この炎・・・紛れもなく「ガイア・インパクト」だわ。 カズマ:俺の魔法を吸収して返すなんて・・・ ギラ:だから迂闊だと言ったんだ。 カズマ:こんな時に説教かよ! 鴉の君:カァーカッカッカッ!仲間割れしている場合か?今度は妾から行くぞえ。 カズマ:っ! 鴉の君:「呪詛(じゅそ)の息吹(いぶき)」 0:翼をはためかせると、黒い疾風が吹き荒ぶ ティア:キャアッ! シエル:うわっ! カズマ:黒い風が、二人の結界を吹き飛ばしやがった・・・ ギラ:大丈夫か!? ティア:うん、なんとか・・・ シエル:僕も・・・ 鴉の君:弱い!弱過ぎるぞニンゲン! カズマ:くそ!調子乗んじゃねえぞ! ギラ:やめろ、また同じ失敗を繰り返す気か? カズマ:じゃあどうするんだよ! ギラ:・・・ ティア:何か考えがあるの? ギラ:どうやら、あの翼が魔力の源のようだな。 シエル:じゃあ・・・ ギラ:・・・カズマ。 カズマ:・・・そういうことか! 鴉の君:? ギラ:深淵(しんえん)なる闇よ、鋭き刃(やいば)と化せ! カズマ:斬り裂くは炎の剣! ギラ:「ダーク・サイス!」 カズマ:「ヒート・セイヴァー!」 鴉の君:闇の鎌(かま)と炎の剣? シエル:光よ飛翔の力を!「シャイン・ブースト!」 ギラ:くぉぉぉぉぉ! カズマ:うぉぉぉぉぉ! 0:光が二人の背中から噴き出し、空へと舞い上げる 鴉の君:と、飛んだだと!? カズマ:行くぜ、カラス女!おらあっ!(炎の剣で翼を斬り落とす) 鴉の君:うがあっ!妾の翼があ!! ギラ:よそ見していて良いのか?はああっ!(反対側の翼を斬り落とす) 鴉の君:ぐうぅっ!おのれ、よくも妾の翼を斬り落としおったな! 鴉の君:撃ち落としてくれる!「咎(とが)の運び手!」(羽根を弾丸の様に撃ち出す) シエル:羽根を飛ばしてきた?避(よ)けて! カズマ:当たるかよ!(回避する) ギラ:どこを狙っている?(回避する) 鴉の君:くっ!早い! ティア:貴方は動いちゃダメよ?「ラディ・バインド!」 0:大地を突き破り巨大な根が伸びる 鴉の君:何だこれは?根が伸びてくる。 ティア:捕まえる!はっ! 鴉の君:(根に捕縛され)ぐっ!動けぬ! カズマ:もらった! ギラ:斬る! 0:翼が二枚斬り落とされる 鴉の君:カァァァァァ!! シエル:あと一枚! ティア:いけるわ! 鴉の君:このウジ虫共が!許さぬ・・・許さんぞお!! カズマ:っ!すげえ魔力だ! ギラ:(この魔力は・・・) 鴉の君:全て無に帰してくれる!「虚無の飽食(きょむのほうしょく)」 0:鴉の君から黒い霧が四方に吹き出す カズマ:何だ?黒い霧? ティア:っ!?「ラディ・バインド」が切れた? 鴉の君:カァーカッカッカッ! ギラ:切れたんじゃない、溶けたんだ!カズマ、その霧に触れるな! カズマ:うあっ!マジかよ! シエル:ダメだ、逃げ切れない! ギラ:くっ!「ナイトメア・サージ!」 0:ギラの両手から黒いエネルギーが放たれる 鴉の君:ほう、黒い波動が・・・ ティア:霧を押し戻してる! ギラ:カズマ!今のうちに! カズマ:兄貴、助かった。(地上に降りる) 鴉の君:果たして、いつまで押しとどめられるかな?時間が経つほどにそちらが不利ぞ? ギラ:なに?・・・っ! シエル:翼が、再生してる! ティア:そんな! ギラ:くっ! 鴉の君:とりあえずは2枚だが、ウジ虫をすり潰すのには十分よ! カズマ:兄貴、逃げろ! ギラ:間に合わない・・・(霧に飲み込まれ)ぐああああ!! カズマ:兄貴! 鴉の君:カァーカッカッカッ! ギラ:あ・・・あ・・・(地上に落下する) ティア:ギラ! カズマ:(ギラに駆け寄り)シエル、早く回復魔法を! シエル:(同じく駆け寄り)癒しの精霊よ・・・ ギラ:やめ、ろ・・・ シエル:え? ギラ:(苦しそうに立ち上がる) カズマ:兄貴!回復しないと! ギラ:・・・必要、ない。 鴉の君:そうじゃ、無駄じゃ!傷を治したとて、すぐに死ぬゆえなあ! ギラ:・・・ティア、皆を捕まえていてくれ。 ティア:え? カズマ:まさか・・・ 鴉の君:何じゃ死に損ない?まだ何かしようと言うのか? ギラ:開け、冥界の門!「アビス・ゲート!」 0:ギラの前方の空間に裂け目が出現する。 鴉の君:く、空間に亀裂が? ギラ:ぬおおおおお!!(裂け目が広がる) 鴉の君:くっ!吸い込まれる! 0:裂け目はギラ以外の物体を吸収しようとする。 ティア:「ラディ・バインド!」みんな、根に捕まって! 0:根がシエル、ティア、カズマを捕らえる。 シエル:ありがと、ティア。 カズマ:兄貴・・・ ギラ:終わりだああああ!! 鴉の君:おのれえええええ!! 0:鴉の君、裂け目に吸い込まれる シエル:やった! ギラ:閉じろ・・・ゲート(裂け目が閉じる) ギラ:ガハッ(吐血し倒れる) カズマ:兄貴! シエル:っ!今度こそ回復するよ? ギラ:必要無いと・・・言っただろ・・・ ティア:何でよ!? ギラ:再生した翼は2枚・・・どっちも俺が斬ったやつだ・・・ カズマ:兄貴?何の話だ? ギラ:俺の魔力は・・・魔獣と・・・ 鴉の君:カァーカッカッカッ! シエル:えっ?アイツの声が!? ティア:嘘・・・ カズマ:っ!みんな見ろ!空間の裂け目が広がっている! 0:空間の切れ目から鴉の君が姿を現す シエル:アイツが出てくるよ! ギラ:「アビス・ゲート」もダメか・・・ 鴉の君:カァーカッカッカッ!一瞬ヒヤリとさせられたが、無駄じゃったなあ! ティア:そんな!どうして? シエル:もしかして、闇の、魔力? カズマ:? ギラ:俺は、闇の魔導士。禍々しき(まがまがしき)闇の魔力を操る者。 ギラ:そしてどうやらそれは、ここに満ちている力、つまり、魔獣共と同種の力のようだ。 ティア:っ! ギラ:頂上に近づく程、闇の力が濃くなっていくのを感じていた。同時に、俺の中にドス黒い何かが入ってくる様な感覚があった。 シエル:ギラの様子がおかしかったのは、そのせい? カズマ:何だよそれ・・・ ギラ:俺の魔法は、魔獣には効果が薄い。雑魚相手ならまだ何とかなったが、アイツは無理だ。ましてや、「創造主」にはとても・・・ ギラ:ここまで生き残った俺が、とんだ「足手まとい」だ。 ティア:そんな言い方しないでよ! シエル:そうだよ!僕たちにはギラが必要なんだ! 鴉の君:取り込み中申し訳ないが、妾はお前らの下らぬ友情ごっこに付き合う義理は無いぞ? カズマ:おい!来るぞ! 鴉の君:さあ、今度こそ終演にしてくれようぞ!「虚無の飽食!」 0:黒い霧が放出される カズマ:また霧かよ! 鴉の君:それだけでは無いぞ?「呪詛の息吹!」 ティア:風で霧を飛ばしてきた!? シエル:「ホーリー・ウォール!」 鴉の君:そんな貧弱な結界、もはや通用せんわ!カアアアッ!! 0:結界が一瞬で吹き飛ばされる。 シエル:僕の結界が! カズマ:ダメだ、逃げられねえ!(霧に晒される)ぐううううう! ティア:(同時に)ああああああ! シエル:(同時に)ううううう! 鴉の君:カァーカッカッカッ!そのまま溶けて消え去るが良い! カズマ:くそっ、このままじゃ。 シエル:こんな所で・・・終われないのに。 ギラ:・・・ダメだ。 ティア:? ギラ:そんなのダメだ。 カズマ:兄貴、どうするつもりだ? ギラ:俺たちは、人類最後の希望なんだ。 シエル:ギラ! ギラ:こんな所で倒れるわけにはいかないんだ! 鴉の君:悪あがきはよせ、人間! ギラ:(立ち上がりながら)俺たちは・・・世界を救うんだ! カズマ:兄貴! ギラ:うおおおおお! 鴉の君:何じゃ?一体何をしておる? ティア:っ?霧が、和(やわ)らいでる? シエル:見て!ギラが・・・ ギラ:はあああ!(ギラの口に霧が吸い込まれていく) カズマ:霧を、吸収してる? 鴉の君:馬鹿な! ギラ:お前の芸当を・・・真似させてもらった。 鴉の君:そんな真似、人間如きにできるはずがない。 ギラ:(咳込む)どうやら、俺はお前らの魔力と相性が良いようだ。 鴉の君:調子に乗るな!「咎の運び手!」(羽根を発射する) ギラ:ぐっ!(羽根が突き刺さる) 鴉の君:どうじゃ! ギラ:ぐ・・・く・・・?(羽根が体に吸収されていく) ティア:ギラの体が、羽根を取り込んだ? カズマ:すげえ。 鴉の君:この化け物め!カァー!!(ギラに向かって滑空する) ティア:突っ込んでくる! カズマ:逃げろ!兄貴! ギラ:カズ・・・ 鴉の君:はあっ!(手刀をギラの胸に突き刺す) ギラ:がはっ!(吐血) シエル:ギラァァァァ!! 鴉の君:・・・カァーカッカッカッ!分かるかえ?妾の腕が、お前の体を貫いたぞ! ギラ:・・・ ティア:そんな・・・ 鴉の君:人間風情が、妾の力を喰らおうとするからじゃ。 カズマ:テメェ・・・許さねえ!! 鴉の君:カァーカッカッカッ!カァーカッカッカッ!カァー・・・カ? シエル:待って!様子がおかしいよ? 鴉の君:何じゃ?何故腕が抜けぬ!? ギラ:・・・終わりだ。 鴉の君:なに? ギラ:おおおおおおおお! 鴉の君:何じゃ、何をしておる?・・・うっ! ティア:まさか、あいつごと取り込むつもり? 鴉の君:ふざけるな!そんな事をすれば・・・ 鴉の君:お前も魔獣になってしまうぞ! シエル:っ! ギラ:覚悟の上だ・・・ 0:ギラの肌が黒く変色し始める カズマ:兄貴!やめろ!! 鴉の君:離せ!離せえ!! ギラ:ぬううあああ・・・ 鴉の君:やめ・・・ヤメ・・・ ギラ:ガアアアアアア!!! 鴉の君:そ、創造主・・・様(完全に取り込まれる) ギラ:(荒い息遣い) シエル:ギラ?大丈夫? ギラ:・・・グアッ! カズマ:兄貴!・・・っ! ギラ:グヌウウアア・・・(肉体が変化し始める) ティア:ギラ・・・その姿は・・・ 語り:その姿は、もはや「魔導士ギラ」では無かった。 語り:肌は漆黒に染まり、牙と角と、黒い翼が生えていた。 カズマ:兄貴?兄貴なんだろ? ギラ:グウウウ・・・ カズマ:兄貴、大丈夫だよな?元に戻れるよな?(ギラに近づく) ティア:カズマ、駄目! ギラ:ガアッ!(カズマを翼で払い飛ばす) カズマ:ぐあっ! ティア:カズマ! ギラ:グウウウ(肩から頭が生えてくる) シエル:肩から、何か生えてくる! ティア:あれは・・・ 鴉の君:グウウウ! カズマ:カラス女の、首? ギラ:コロス、コロスコロスコロスコロス・・・ 鴉の君:コロスコロスコロスコロスコロス・・・ シエル:ギラ・・・本当に、魔獣になっちゃったの? 鴉の君:ガアッ!(シエルに飛びかかる) シエル:ぐっ!ギラ・・・ ティア:シエル!「ラディ・バインド!」 0:根がギラを拘束する ギラ:グルルルルル・・・ ティア:ギラ!お願い、目を覚まして! ギラ:ガアッ!(根を引きちぎる) ティア:っ!・・・ダメ、抑え込めない! カズマ:・・・(ギラに近づく) シエル:カズマ、近づいちゃ駄目だ! 鴉の君:ガアッ! カズマ:ぐあっ!(吹き飛ばされる) ギラ:グウウウ・・・ カズマ:・・・(再び立ち上がり近づく) ティア:カズマ! カズマ:大丈夫だって。 ギラ:ガアッ! カズマ:ガハッ!・・・(吹き飛ばされるが、踏み留まる)大丈夫、大丈夫。 シエル:カズマ・・・ カズマ:兄貴が負けるはずねえだろ。だって兄貴は・・・ ギラ:グウアアアアア! 鴉の君:グウアアアアア! カズマ:俺の、兄貴なんだからよ。 ギラ:ッ! 鴉の君:コロスゥ!コロスコロスゥ! ギラ:・・・ ティア:止まった? 鴉の君:コロスコロスコロ・・・コ・・・ シエル:あの女の方も、動かなくなったよ! ギラ:カ、ズ、マ、 カズマ:兄貴!良かった、やっぱり兄貴だ! ギラ:俺ハ・・・ カズマ:どうした兄貴?何が言いたいんだ? ギラ:俺ハ・・・モウ駄目だ。 カズマ:っ! ギラ:コノママダト・・・完全ニ・・・魔獣ニなってシマウ・・・ ギラ:ダカラ・・・俺の意識ガ残ってイル内ニ・・・ ティア:まさか・・・ ギラ:シエルノ・・・光魔法デ・・・俺ヲ! カズマ:何言ってんだよ兄貴! シエル:馬鹿言わないでよ・・・そんな事、できるわけないだろ! ティア:・・・ ギラ:早ク、シテクレ・・・俺ハ魔獣ナンカニ、なりたくナイ・・・ カズマ:兄貴・・・ ギラ:シエル・・・俺ヲ助テクレ・・・ シエル:僕は・・・もう誰にも死んで欲しく無いって言ったじゃないか!! ギラ:・・・勝テ ティア:・・・え? ギラ:勝ッテ・・・世界ヲ救エ・・・ カズマ:ああ、当然さ!兄貴も一緒にな! ギラ:ソシテ・・・イ・・・イ・・・生きろ・・・ シエル:っ! ギラ:俺の分まで、生きろ・・・生きてくれ ティア:こんなの・・・こんなのって! ギラ:頼む・・・ シエル:・・・ カズマ:シエル、お前まさか・・・ シエル:・・・混沌を打ち払う、聖なる光芒(こうぼう) カズマ:馬鹿野郎!そんな事、俺が許さねえぞ! シエル:もう楽にしてあげようよ!ギラ、とっても苦しそうだよ! カズマ:っ! ギラ:グウウウウウ・・・ カズマ:くそ、くそ、くそぉ! ティア:カズマ・・・(カズマを抱きしめる) カズマ:(ティアの胸ね中で)ちきしょう・・・ ティア:シエル・・・お願い。ギラを助けてあげて。 シエル:うん・・・混沌を打ち払う聖なる光芒! ギラ:カズマ・・・ カズマ:兄貴っ! ギラ:お前が弟で良かった・・・誇りに思っているぞ。 カズマ:兄貴ィィィィィ!!! シエル:「エンド・オブ・ライト!」 語り:『シエルが放った眩い光の帯が、ギラを飲み込んでいく』 語り:『その幻想的で美しい光に包まれながら・・・彼はとても穏やかな表情を浮かべていた』 0:ギラが消失した場所に膝をつくカズマ カズマ:兄貴・・・ シエル:カズマ・・・ゴメン。 カズマ:っ!(シエルを殴り飛ばす) シエル:っ!(吹っ飛ぶ) ティア:シエル! シエル:うぅ・・・大丈夫。 カズマ:ぐうああっ!(自分を殴る) シエル:カズマ・・・ カズマ:・・,シエル悪い。きっと本当は、俺がやらなくちゃいけなかったんだよな。 シエル:そんなことないよ。 カズマ:ありがとな、兄貴を救ってくれて。 シエル:ううん。 ティア:・・・行きましょう。まだ終わってないわ。 カズマ:ああ。悲しむのは、後でいくらでもできる。今の俺たちには、やるべき事があるよな。 ティア:「創造主」を倒し、世界を救う! シエル:うん! カズマ:これで終わらせる! ティア:ギラや、倒れた仲間たちの想いを背負って! シエル:行こう!最後の戦いに! 語り:そして・・・「創造主」との最後の戦いが、幕を開ける。 0:完