台本概要
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タイトル | 魔王と宰相、時々勇者 |
---|---|
作者名 | 橘りょう (@tachibana390) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 3人用台本(不問3) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
前回投稿した「魔王と宰相」に勇者が追加された作品です。 「魔王と宰相」https://taltal3014.lsv.jp/app/public/script/detail/2696 勇者が追加されたらただのラブコメになりました。 ノリと勢いって怖いですね。 30分としていますが多分20分ちょいオーバーくらいです 読み手も登場人物も性別不問。 NLでもBLでもGLでも好きな組み合わせで遊んで下さい。 特にお知らせはいりませんが、メンションつけて教えて下さると作者が小躍りしながら喜びます。 作品名と作者名は書いて下さると助かります。 655 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
魔王 | 不問 | 120 | 魔族の王。 |
宰相 | 不問 | 98 | それなりに忠義心がある |
勇者 | 不問 | 55 | 最初は叫んでます |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
:荒れた平地で向き合う勇者パーティと魔王軍
:二組の間を強い風が吹き抜ける
:
勇者:魔王!覚悟っ!
宰相:…魔王様、あやつめが我ら魔族の敵であります
魔王:貴様が勇者か。よくぞここまで辿り着いた…褒めてやろう。我らがこの地で待ち構えているのは分かっていたであろうに…なんと愚かな
宰相:魔王様。王国への見せしめとして、八つ裂きにしてやりましょう。そしてその亡骸を間抜けな王へ届けてやるのも…一興かと
魔王:ふふふふふふ…ははははは!確かに!それは実に良い考えだ!魔王城へ辿り着けもせず、この荒地で命を燃やし尽くすが良い!
宰相:行け!勇者共へ、我らが王に逆らう愚かさを思い知らせてやるがいい!!
勇者:行くぞ、みんな!出来るものなら…やってみろぉぉ!!
:
:間
:
勇者:うおぉぉっ!
魔王:…ほう、なかなかやりおるな
宰相:むっ!こちらへ向かって来るのは…勇者か!単身向かって来るとは無謀な!
勇者:魔王!尋常に…勝負っ!
魔王:ふん…ならば私が直々に相手にしてやろう!!来るがいい!!
勇者:ゴッド!インパレスぅぅ!
宰相:なっ…!なんという光の力…!これは雷か!
魔王:ふぅんっ!!神のいかずちなど取るに足らぬわ!
勇者:ちぃっ…やるな…!
宰相:さすがは魔王様!あの攻撃を片手で薙ぎ払うとは…!!
魔王:むっ…!
勇者:はっ…!貴様…
宰相:魔王様、どうなさいましたか?!なぜ攻撃の手を止めたのですか!一思いに…
魔王:勇者よ!…貴様にはふさわしい舞台を用意してやろう…。このような荒地ではなく…もっとふさわしい我が城という名の舞台をな!
宰相:なんと…!
魔王:魔王城にて、貴様を待つ。我らが軍をもって最高のもてなしをしてやろう!!覚悟しておくが良い。…宰相、城へ戻るぞ
宰相:ははっ!
勇者:逃げるのか!待て!
魔王:…くっくっくっ、待っているぞ勇者よ。ゲート
宰相:我らの偉大な王の寛大なお心、噛み締めるが良い
勇者:待て!…いや、待って!
:
:ゲートに消える二人
:
:魔王城にて
:
宰相:魔王様、城に戻って来たわけですが…奴らをどのように迎えるつもりで?
魔王:ふふふ。それはもちろん…最上級のもてなしをせねばな
宰相:城門には高レベルの特殊ゴーレム、通路にはガーゴイル達を配備致しましょう。ワイバーン共は常に城の外を飛ばし逃げ道を塞ぐという手も…
魔王:ふむ……いや、うーん
宰相:魔王様?
魔王:宰相
宰相:はっ!
魔王:お前の、忖度のない意見を聞かせろ
宰相:わ、私でよろしいのですか?
魔王:常に私の一番傍に控えているお前だからこそ、だ。無礼を許す。正直な意見を
宰相:ありがたきお言葉!何なりと…!
魔王:……
宰相:魔王様?
魔王:……ったかな…
宰相:ん?よく聞こえませんでした。もう一度お願いします
魔王:…私、太ったかな?
宰相:は?
魔王:私の戦闘スタイルは主に魔法だから特に気にしていなかったが…最近、ちょっと太ったと思わないか?
宰相:魔王様?
魔王:なんかお腹の辺りが…顎のラインも…
宰相:魔王様?魔王様?
魔王:どう思う?!
宰相:どう、と言われましても…
魔王:忖度のない意見を聞かせろと申したであろう!
宰相:は、はいっ!そうですね…確かに最近少々…甘いものを召し上がる回数が増えておりますし…
魔王:ふむ…勇者は多少だが、魔法の心得があるとみた
宰相:しかし魔王様が持つのは膨大な魔力量。いくら勇者と言えど所詮は人間…
魔王:作るか、ジム
宰相:ジム?
魔王:ジム
宰相:…えっと…
魔王:よし。勇者が到着するまでに私も体を鍛え、奴の前に出ても恥ずかしくない肉体を手に入れるぞ!
宰相:え?え?…あ、あー!魔力だけではなく、純粋な力でも勇者を凌駕する為でございますね!なるほど!
魔王:ラ〇ザップから腕の良いトレーナーを連れてまいれ
宰相:ラ…あ、かしこまりました
魔王:ついでに効率の良いマシンも手に入れろ
宰相:あ、はい
魔王:……地味、かな
宰相:は?
魔王:いや、だから…地味なんじゃないかと思って。服装とか…室内とか
宰相:……
魔王:こう、もっと…ばーんと
宰相:ばーんと?
魔王:派手な方が良いのでは無いかと
宰相:……あ、あーー!財力!人間ごときでは手に入れられることが出来ない財力を示す為でございますね!それは良いお考えです!!
魔王:広い…舞踏会が出来るような広いフロアが欲しい…
宰相:ん?…あ、あぁーー、広い方が魔力での戦いは有利ですからね!!
魔王:…作り直すか、城
宰相:は?
魔王:より高い、二つ向こうの山の頂上に建て直すか
宰相:へ?…あっ、あー確かに!この城をフェイクに出来ますし、あちらの山でしたら頂上に到着するまでの道のりは非常に険しいですからね!奴の体力と気力を削ぐには素晴らしいご意見かと!
魔王:あそこなら…景色が良いからな
宰相:景色?
魔王:夜景とか
宰相:夜景?
魔王:折角ならインテリアにもこだわりたい
宰相:ん?
魔王:お前は頭は良いが…センスがイマイチだからなぁ
宰相:いきなりディスられた
魔王:街で評判の建築士とインテリアコーディネーターと相談するか
宰相:…インテリアコーディネーター
魔王:連れてまいれ
宰相:あっ、はい
魔王:うむうむ(満足気)
宰相:……え?
魔王:ん?
宰相:…えっと……はい?
魔王:どうした
宰相:こっちのセリフだよ
魔王:何が
宰相:いや、だから
魔王:早くせねば勇者が到着してしまうではないか!
宰相:いやいやいや!いきなりジムとか城の建て直しとかよく分からないんですが?!
魔王:あぁ、確かに
宰相:えぇ
魔王:先に食事面を気にした方が良かったか
宰相:はい?
魔王:我ら魔族と違い、食事で力を回復する生き物だったな。三ツ星レストランのシェフを数人連れて来るか
宰相:三ツ星…
魔王:好き嫌いがあるのだろうか…あっ、よく眠れるように寝所の用意もいるな。エ〇ウェーブのマットレスを…
宰相:なに全力でもてなそうとしてるんですか!
魔王:勇者にそう言っただろうが!
宰相:そのまんまの意味かよ!比喩かと思ったわ!!
魔王:私が嘘をつくと思っているのか!
宰相:正直者ぉお!
魔王:私は嘘は好かん
宰相:言葉通りに勇者もてなすんですか!なんで?!どうして?!
魔王:……れしたから
宰相:は?もう少し大きな声で
魔王:…一目惚れ…
宰相:なんですって?
魔王:一目惚れしたからだ!!
宰相:勇者に?!
魔王:勇者に!!
宰相:なんでよりによって勇者ァ?!
魔王:仕方ないだろう!あの肉薄した瞬間…まさに雷が落ちたのかと思った…!
宰相:雷だったからね!神のいかずちの攻撃だったからね!
魔王:黒々とした艶やかな髪、私を見つめる真っ直ぐな瞳…そして鍛え上げられた肉体…!!あぁ、力強く抱きしめられたい!!
宰相:魔王様ぁ?!
魔王:それにあの声!!猛々しくもそれでいて耳に触れるあの声ぇ…たまらない…囁かれたい…!
宰相:声フェチだったんですか…
魔王:好きだァァ!!
宰相:ご乱心ー!魔王様がご乱心ー!!
魔王:私は正常だ!
宰相:んなわけあるかぁ!……ん?なんだ?!……な、なんだと…?!もっと詳しく聞いてまいれ!魔王様ぁっ!!
魔王:どうした
宰相:ゆ、勇者がここへ…
魔王:なんだと?!もう着いたのか?!
宰相:すでに城門を突破しこちらへ向かっているとの報告です
魔王:しまった、まだ何も準備が出来ておらぬ!せめて風呂を…
宰相:魔王様!!
魔王:な、なんだ…?
宰相:勇者は…単身で乗り込んできたそうです…!
魔王:なに?!
宰相:責任を取れ、と叫んでいるそうで…
魔王:どういうことだ
宰相:パーティを追放された責任を取れと叫んでいるそうで
魔王:追放?何故だ?
宰相:今詳しく…あっ。……ふむ、ふぅむ……なんということだ…
魔王:宰相、報告せよ
宰相:はぁーーー(長い溜息)
魔王:宰相、報告をせよ!
宰相:魔王様……いえ、もう今日からあなたは魔王では無い
魔王:どういうことだ、宰相!
宰相:勇者があんたに一目惚れしたせいでパーティから追放されたってよ!
魔王:な…!?
宰相:だから……勇者の元へ、行ってください
魔王:しかし…
宰相:もうあなたは魔王様では無い!勇者に一目惚れした…ただの魔族ですよ…
魔王:宰相……
宰相:全く…こんな間抜けに必死に忠誠誓ってたのが馬鹿馬鹿しいですね…
魔王:間抜けだと?!
宰相:間抜けですよ!!……行ってください、情けなく涙が出そうですから
魔王:宰相…
宰相:…貴方様は我らを長年導いてくださった…そこは本当に…ありがとうございました
魔王:っ…
宰相:さぁ!行きなさい!
魔王:…分かった…!
:
:
宰相:…はぁ。まさかこのような形で此度の戦いが終わろうとは…思ってもみなかった
宰相:魔王様、いや、元魔王様。今度はきっと勇者と共にこの世界を導いてくださるのでしょう。…期待、しておりますよ…
:
宰相:(長い溜息)
魔王:宰相ぉおっ!!
宰相:どぉうわ?!ちょ、なんでいい感じに終わりかけてたのに戻ってたんですか!
魔王:なんのことかは分からないが…知恵をかせ!
勇者:すみません!お願いします!!
宰相:潔いな?!
勇者:あなたは知恵者だと聞きましたので!
宰相:誰から?!
勇者:ロノウェから
魔王:ちょ、いきなり呼び捨てなんて…
勇者:あっ、ごめん。つい…
魔王:呼ばれ慣れてないから…ちょっと恥ずかしい…
勇者:いや、でもだってせっかくだし…
宰相:やめいっ!目の前でいちゃつくんじゃない!まずは説明をして頂けませんかねぇ?!
魔王:す、すまぬ…
勇者:どこから説明すればわかりやすいでしょうか…やはりここは城内で再会した時からの話を…
:
:間
:
勇者:魔王っ!どこだ!
魔王:勇者よ、よくぞ我が城まで来たな…
勇者:っ!そこに居たか…!
魔王:ふふふふふ…はぁっはっはっは……あ、ははは…
勇者:……
魔王:そ、その…は、早かった、な…
勇者:えっ、あっと…その、急いで…
魔王:そ、そうか……
勇者:あ、あぁ…
魔王:……
勇者:……
魔王:………
勇者:…えっと…その…
魔王:ぱ…
勇者:な、なんだ
魔王:パーティを、追放された、とか…なんとか…
勇者:…あぁ
魔王:ほ、本当なのか…
勇者:本当だ
魔王:……な、なぜ
勇者:…仕方、なかった…
魔王:仕方ない…?
勇者:だって…!私は、勇者という身でありながら…っ!!
魔王:…あり、ながら…?
勇者:おっ…お前を…!!
魔王:私を…?
勇者:くそっ…!!
魔王:……
勇者:お前の白銀の髪が好きだ!ルビーのような赤い瞳も、透き通るような白い肌も好きだ!
勇者:私の渾身の一撃を片手で払ったお前の姿に…私は射抜かれてしまったんだ!ここまで多くの困難を共にして来た仲間より、仕えるべき王国より、私はっ…!
魔王:ゆ、勇者…
勇者:私はとんだ…裏切り者だ…だが、それでもいいと…!お前に倒される未来ならばそれでも構わないと!そう思ったんだァっ!
魔王:勇者…トゥンク…!
勇者:さぁ…無様な私を、一思いにやるがいい!
魔王:……!
勇者:さぁ!やれ!
魔王:……出来ない
勇者:何故だ!今の私は反撃など…
魔王:貴様の深い青の瞳が好きだ
勇者:っ?!
魔王:艶やかな黒髪も、たくましいその肉体も…その、声も…
勇者:ま、まさか…
魔王:そのまさか、だ…私も、一目惚れだった…
勇者:ほ、本当に…?
魔王:私はもう魔王では無い。勇者に一目惚れした、ただの間抜けな魔族でしかない…
勇者:……
魔王:笑いたくば、笑うがいい…
勇者:…えは
魔王:ん?
勇者:名前は、なんて言うんだ。もう魔王でないなら、なんと呼べばいい
魔王:…ロノウェ
勇者:ロノウェ…いい名前だ
魔王:トゥンク…!しゅき…
勇者:私はイオフィエル。どうか、イオと
魔王:イ、イオ
勇者:…ありがとう
:
:
魔王:という感じで
宰相:イチャついてるだけじゃねぇか
勇者:真剣です!
宰相:そ、そうか…で、一体私に何の知恵を?
魔王:そうだった
宰相:勇者は人間達からすれば裏切り者…
勇者:「元」勇者です
宰相:あ、元勇者。…人間達の世界での生活は立場上無理でしょうな。だが魔族とは生態系も違いすぎる…寿命も
勇者:やはり…
宰相:我ら魔族の寿命は人間のそれと違い、何倍もありますからな……ふーむ
魔王:なにか良い手がないか?
宰相:では…魔王様の秘術を…
魔王:「元」魔王だ
宰相:めんどくさいな(咳払い)元魔王様の秘術で、元勇者を魔族化してはどうでしょう
魔王:魔族化…?!しかしイオは…!
勇者:構わない
宰相:ほう、すでに覚悟が出来てるとは
勇者:ロノウェ、あなたに一目惚れした時点でもうこの命は捨てるものだと思っていた…だから私は構わない
魔王:イオ…
勇者:あなたは…可愛い人だ
魔王:しゅきぃい!!!
宰相:よそでやって下さいよ
勇者:ロノウェ…
魔王:イオ…
宰相:聞いてる?ねぇ、聞いてる?
勇者:あ、すみません聞いてませんでした
宰相:聞けよ!だから!元勇者が魔族化すれば寿命を含む生態系の違いの問題はクリアでしょうが!
勇者:確かに
宰相:魔族化したとしても元人間。小競り合いに参加するのは気が進まないでしょうから…あとは二人でひっそりとお過ごしになれば良いのでは?それこそ…二つ向こうの山の頂上とかに新居でも構えて
魔王:さすがだ宰相!ナイスアイデア!
勇者:ありがとうございます!
魔王:じゃあ早速…行こうか
勇者:そうだね
宰相:だからもうそれはよそでやれ!!
:
:
勇者:(M)それから長い時間、元魔王と元勇者は大変仲睦まじく暮らしました。その間は人間と魔族の小競り合いは不思議と起こらず、暇を持て余した宰相が頻繁に通ったとか通わなかったとか。
勇者:(M)おしまい
:
:荒れた平地で向き合う勇者パーティと魔王軍
:二組の間を強い風が吹き抜ける
:
勇者:魔王!覚悟っ!
宰相:…魔王様、あやつめが我ら魔族の敵であります
魔王:貴様が勇者か。よくぞここまで辿り着いた…褒めてやろう。我らがこの地で待ち構えているのは分かっていたであろうに…なんと愚かな
宰相:魔王様。王国への見せしめとして、八つ裂きにしてやりましょう。そしてその亡骸を間抜けな王へ届けてやるのも…一興かと
魔王:ふふふふふふ…ははははは!確かに!それは実に良い考えだ!魔王城へ辿り着けもせず、この荒地で命を燃やし尽くすが良い!
宰相:行け!勇者共へ、我らが王に逆らう愚かさを思い知らせてやるがいい!!
勇者:行くぞ、みんな!出来るものなら…やってみろぉぉ!!
:
:間
:
勇者:うおぉぉっ!
魔王:…ほう、なかなかやりおるな
宰相:むっ!こちらへ向かって来るのは…勇者か!単身向かって来るとは無謀な!
勇者:魔王!尋常に…勝負っ!
魔王:ふん…ならば私が直々に相手にしてやろう!!来るがいい!!
勇者:ゴッド!インパレスぅぅ!
宰相:なっ…!なんという光の力…!これは雷か!
魔王:ふぅんっ!!神のいかずちなど取るに足らぬわ!
勇者:ちぃっ…やるな…!
宰相:さすがは魔王様!あの攻撃を片手で薙ぎ払うとは…!!
魔王:むっ…!
勇者:はっ…!貴様…
宰相:魔王様、どうなさいましたか?!なぜ攻撃の手を止めたのですか!一思いに…
魔王:勇者よ!…貴様にはふさわしい舞台を用意してやろう…。このような荒地ではなく…もっとふさわしい我が城という名の舞台をな!
宰相:なんと…!
魔王:魔王城にて、貴様を待つ。我らが軍をもって最高のもてなしをしてやろう!!覚悟しておくが良い。…宰相、城へ戻るぞ
宰相:ははっ!
勇者:逃げるのか!待て!
魔王:…くっくっくっ、待っているぞ勇者よ。ゲート
宰相:我らの偉大な王の寛大なお心、噛み締めるが良い
勇者:待て!…いや、待って!
:
:ゲートに消える二人
:
:魔王城にて
:
宰相:魔王様、城に戻って来たわけですが…奴らをどのように迎えるつもりで?
魔王:ふふふ。それはもちろん…最上級のもてなしをせねばな
宰相:城門には高レベルの特殊ゴーレム、通路にはガーゴイル達を配備致しましょう。ワイバーン共は常に城の外を飛ばし逃げ道を塞ぐという手も…
魔王:ふむ……いや、うーん
宰相:魔王様?
魔王:宰相
宰相:はっ!
魔王:お前の、忖度のない意見を聞かせろ
宰相:わ、私でよろしいのですか?
魔王:常に私の一番傍に控えているお前だからこそ、だ。無礼を許す。正直な意見を
宰相:ありがたきお言葉!何なりと…!
魔王:……
宰相:魔王様?
魔王:……ったかな…
宰相:ん?よく聞こえませんでした。もう一度お願いします
魔王:…私、太ったかな?
宰相:は?
魔王:私の戦闘スタイルは主に魔法だから特に気にしていなかったが…最近、ちょっと太ったと思わないか?
宰相:魔王様?
魔王:なんかお腹の辺りが…顎のラインも…
宰相:魔王様?魔王様?
魔王:どう思う?!
宰相:どう、と言われましても…
魔王:忖度のない意見を聞かせろと申したであろう!
宰相:は、はいっ!そうですね…確かに最近少々…甘いものを召し上がる回数が増えておりますし…
魔王:ふむ…勇者は多少だが、魔法の心得があるとみた
宰相:しかし魔王様が持つのは膨大な魔力量。いくら勇者と言えど所詮は人間…
魔王:作るか、ジム
宰相:ジム?
魔王:ジム
宰相:…えっと…
魔王:よし。勇者が到着するまでに私も体を鍛え、奴の前に出ても恥ずかしくない肉体を手に入れるぞ!
宰相:え?え?…あ、あー!魔力だけではなく、純粋な力でも勇者を凌駕する為でございますね!なるほど!
魔王:ラ〇ザップから腕の良いトレーナーを連れてまいれ
宰相:ラ…あ、かしこまりました
魔王:ついでに効率の良いマシンも手に入れろ
宰相:あ、はい
魔王:……地味、かな
宰相:は?
魔王:いや、だから…地味なんじゃないかと思って。服装とか…室内とか
宰相:……
魔王:こう、もっと…ばーんと
宰相:ばーんと?
魔王:派手な方が良いのでは無いかと
宰相:……あ、あーー!財力!人間ごときでは手に入れられることが出来ない財力を示す為でございますね!それは良いお考えです!!
魔王:広い…舞踏会が出来るような広いフロアが欲しい…
宰相:ん?…あ、あぁーー、広い方が魔力での戦いは有利ですからね!!
魔王:…作り直すか、城
宰相:は?
魔王:より高い、二つ向こうの山の頂上に建て直すか
宰相:へ?…あっ、あー確かに!この城をフェイクに出来ますし、あちらの山でしたら頂上に到着するまでの道のりは非常に険しいですからね!奴の体力と気力を削ぐには素晴らしいご意見かと!
魔王:あそこなら…景色が良いからな
宰相:景色?
魔王:夜景とか
宰相:夜景?
魔王:折角ならインテリアにもこだわりたい
宰相:ん?
魔王:お前は頭は良いが…センスがイマイチだからなぁ
宰相:いきなりディスられた
魔王:街で評判の建築士とインテリアコーディネーターと相談するか
宰相:…インテリアコーディネーター
魔王:連れてまいれ
宰相:あっ、はい
魔王:うむうむ(満足気)
宰相:……え?
魔王:ん?
宰相:…えっと……はい?
魔王:どうした
宰相:こっちのセリフだよ
魔王:何が
宰相:いや、だから
魔王:早くせねば勇者が到着してしまうではないか!
宰相:いやいやいや!いきなりジムとか城の建て直しとかよく分からないんですが?!
魔王:あぁ、確かに
宰相:えぇ
魔王:先に食事面を気にした方が良かったか
宰相:はい?
魔王:我ら魔族と違い、食事で力を回復する生き物だったな。三ツ星レストランのシェフを数人連れて来るか
宰相:三ツ星…
魔王:好き嫌いがあるのだろうか…あっ、よく眠れるように寝所の用意もいるな。エ〇ウェーブのマットレスを…
宰相:なに全力でもてなそうとしてるんですか!
魔王:勇者にそう言っただろうが!
宰相:そのまんまの意味かよ!比喩かと思ったわ!!
魔王:私が嘘をつくと思っているのか!
宰相:正直者ぉお!
魔王:私は嘘は好かん
宰相:言葉通りに勇者もてなすんですか!なんで?!どうして?!
魔王:……れしたから
宰相:は?もう少し大きな声で
魔王:…一目惚れ…
宰相:なんですって?
魔王:一目惚れしたからだ!!
宰相:勇者に?!
魔王:勇者に!!
宰相:なんでよりによって勇者ァ?!
魔王:仕方ないだろう!あの肉薄した瞬間…まさに雷が落ちたのかと思った…!
宰相:雷だったからね!神のいかずちの攻撃だったからね!
魔王:黒々とした艶やかな髪、私を見つめる真っ直ぐな瞳…そして鍛え上げられた肉体…!!あぁ、力強く抱きしめられたい!!
宰相:魔王様ぁ?!
魔王:それにあの声!!猛々しくもそれでいて耳に触れるあの声ぇ…たまらない…囁かれたい…!
宰相:声フェチだったんですか…
魔王:好きだァァ!!
宰相:ご乱心ー!魔王様がご乱心ー!!
魔王:私は正常だ!
宰相:んなわけあるかぁ!……ん?なんだ?!……な、なんだと…?!もっと詳しく聞いてまいれ!魔王様ぁっ!!
魔王:どうした
宰相:ゆ、勇者がここへ…
魔王:なんだと?!もう着いたのか?!
宰相:すでに城門を突破しこちらへ向かっているとの報告です
魔王:しまった、まだ何も準備が出来ておらぬ!せめて風呂を…
宰相:魔王様!!
魔王:な、なんだ…?
宰相:勇者は…単身で乗り込んできたそうです…!
魔王:なに?!
宰相:責任を取れ、と叫んでいるそうで…
魔王:どういうことだ
宰相:パーティを追放された責任を取れと叫んでいるそうで
魔王:追放?何故だ?
宰相:今詳しく…あっ。……ふむ、ふぅむ……なんということだ…
魔王:宰相、報告せよ
宰相:はぁーーー(長い溜息)
魔王:宰相、報告をせよ!
宰相:魔王様……いえ、もう今日からあなたは魔王では無い
魔王:どういうことだ、宰相!
宰相:勇者があんたに一目惚れしたせいでパーティから追放されたってよ!
魔王:な…!?
宰相:だから……勇者の元へ、行ってください
魔王:しかし…
宰相:もうあなたは魔王様では無い!勇者に一目惚れした…ただの魔族ですよ…
魔王:宰相……
宰相:全く…こんな間抜けに必死に忠誠誓ってたのが馬鹿馬鹿しいですね…
魔王:間抜けだと?!
宰相:間抜けですよ!!……行ってください、情けなく涙が出そうですから
魔王:宰相…
宰相:…貴方様は我らを長年導いてくださった…そこは本当に…ありがとうございました
魔王:っ…
宰相:さぁ!行きなさい!
魔王:…分かった…!
:
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宰相:…はぁ。まさかこのような形で此度の戦いが終わろうとは…思ってもみなかった
宰相:魔王様、いや、元魔王様。今度はきっと勇者と共にこの世界を導いてくださるのでしょう。…期待、しておりますよ…
:
宰相:(長い溜息)
魔王:宰相ぉおっ!!
宰相:どぉうわ?!ちょ、なんでいい感じに終わりかけてたのに戻ってたんですか!
魔王:なんのことかは分からないが…知恵をかせ!
勇者:すみません!お願いします!!
宰相:潔いな?!
勇者:あなたは知恵者だと聞きましたので!
宰相:誰から?!
勇者:ロノウェから
魔王:ちょ、いきなり呼び捨てなんて…
勇者:あっ、ごめん。つい…
魔王:呼ばれ慣れてないから…ちょっと恥ずかしい…
勇者:いや、でもだってせっかくだし…
宰相:やめいっ!目の前でいちゃつくんじゃない!まずは説明をして頂けませんかねぇ?!
魔王:す、すまぬ…
勇者:どこから説明すればわかりやすいでしょうか…やはりここは城内で再会した時からの話を…
:
:間
:
勇者:魔王っ!どこだ!
魔王:勇者よ、よくぞ我が城まで来たな…
勇者:っ!そこに居たか…!
魔王:ふふふふふ…はぁっはっはっは……あ、ははは…
勇者:……
魔王:そ、その…は、早かった、な…
勇者:えっ、あっと…その、急いで…
魔王:そ、そうか……
勇者:あ、あぁ…
魔王:……
勇者:……
魔王:………
勇者:…えっと…その…
魔王:ぱ…
勇者:な、なんだ
魔王:パーティを、追放された、とか…なんとか…
勇者:…あぁ
魔王:ほ、本当なのか…
勇者:本当だ
魔王:……な、なぜ
勇者:…仕方、なかった…
魔王:仕方ない…?
勇者:だって…!私は、勇者という身でありながら…っ!!
魔王:…あり、ながら…?
勇者:おっ…お前を…!!
魔王:私を…?
勇者:くそっ…!!
魔王:……
勇者:お前の白銀の髪が好きだ!ルビーのような赤い瞳も、透き通るような白い肌も好きだ!
勇者:私の渾身の一撃を片手で払ったお前の姿に…私は射抜かれてしまったんだ!ここまで多くの困難を共にして来た仲間より、仕えるべき王国より、私はっ…!
魔王:ゆ、勇者…
勇者:私はとんだ…裏切り者だ…だが、それでもいいと…!お前に倒される未来ならばそれでも構わないと!そう思ったんだァっ!
魔王:勇者…トゥンク…!
勇者:さぁ…無様な私を、一思いにやるがいい!
魔王:……!
勇者:さぁ!やれ!
魔王:……出来ない
勇者:何故だ!今の私は反撃など…
魔王:貴様の深い青の瞳が好きだ
勇者:っ?!
魔王:艶やかな黒髪も、たくましいその肉体も…その、声も…
勇者:ま、まさか…
魔王:そのまさか、だ…私も、一目惚れだった…
勇者:ほ、本当に…?
魔王:私はもう魔王では無い。勇者に一目惚れした、ただの間抜けな魔族でしかない…
勇者:……
魔王:笑いたくば、笑うがいい…
勇者:…えは
魔王:ん?
勇者:名前は、なんて言うんだ。もう魔王でないなら、なんと呼べばいい
魔王:…ロノウェ
勇者:ロノウェ…いい名前だ
魔王:トゥンク…!しゅき…
勇者:私はイオフィエル。どうか、イオと
魔王:イ、イオ
勇者:…ありがとう
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魔王:という感じで
宰相:イチャついてるだけじゃねぇか
勇者:真剣です!
宰相:そ、そうか…で、一体私に何の知恵を?
魔王:そうだった
宰相:勇者は人間達からすれば裏切り者…
勇者:「元」勇者です
宰相:あ、元勇者。…人間達の世界での生活は立場上無理でしょうな。だが魔族とは生態系も違いすぎる…寿命も
勇者:やはり…
宰相:我ら魔族の寿命は人間のそれと違い、何倍もありますからな……ふーむ
魔王:なにか良い手がないか?
宰相:では…魔王様の秘術を…
魔王:「元」魔王だ
宰相:めんどくさいな(咳払い)元魔王様の秘術で、元勇者を魔族化してはどうでしょう
魔王:魔族化…?!しかしイオは…!
勇者:構わない
宰相:ほう、すでに覚悟が出来てるとは
勇者:ロノウェ、あなたに一目惚れした時点でもうこの命は捨てるものだと思っていた…だから私は構わない
魔王:イオ…
勇者:あなたは…可愛い人だ
魔王:しゅきぃい!!!
宰相:よそでやって下さいよ
勇者:ロノウェ…
魔王:イオ…
宰相:聞いてる?ねぇ、聞いてる?
勇者:あ、すみません聞いてませんでした
宰相:聞けよ!だから!元勇者が魔族化すれば寿命を含む生態系の違いの問題はクリアでしょうが!
勇者:確かに
宰相:魔族化したとしても元人間。小競り合いに参加するのは気が進まないでしょうから…あとは二人でひっそりとお過ごしになれば良いのでは?それこそ…二つ向こうの山の頂上とかに新居でも構えて
魔王:さすがだ宰相!ナイスアイデア!
勇者:ありがとうございます!
魔王:じゃあ早速…行こうか
勇者:そうだね
宰相:だからもうそれはよそでやれ!!
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勇者:(M)それから長い時間、元魔王と元勇者は大変仲睦まじく暮らしました。その間は人間と魔族の小競り合いは不思議と起こらず、暇を持て余した宰相が頻繁に通ったとか通わなかったとか。
勇者:(M)おしまい