台本概要

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タイトル Watching You —視聴中です—
作者名 山根利広  (@sousakutc)
ジャンル ホラー
演者人数 2人用台本(女2)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 アカネは夜遅く、「誰かに見られている」気配を感知する。見かねた親友のナナは「気にすることはない」とアカネを諭すが、アカネの疑念は消えない。そんな中、2人はYouTubeでアカネの部屋を映しているライブ配信を発見してしまう。その映像は、どうやらアカネの背後のクローゼットから撮られたもののようだったが…。

★朗読時の留意事項
・最後の「???」の部分を読み上げられる際は、どちらか1名がお読みください。
・台本の改変OKです。お好きなようにアレンジしていただいて構いません。

■その他
・使用に関して有償・無償は問いません。また発表する場も限定しません。いろいろな場でお使いいただければ幸いです。
・ご使用時にご一報いただけると嬉しいです。強制ではありませんが、できたら聴きに参ります。Twitter(X)で作品名と「@sousakutc」をポストしていただけたら喜んで聴きに行きます。リアルタイムで行けない場合はアーカイブを聴かせていただきます。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
アカネ 28 19歳、女子大生。怖がりだが、いざという時には勇気を出して行動に移す。
ナナ 26 19歳、女子大生。同級生のアカネとは仲が良く、よく彼女のアパートに遊びに行っている。快活な性格。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
アカネ:……ナナ、ちょっと待って。電話、もうちょっと切らないでほしい。 ナナ:どーしたのよ、アカネ。今日のアカネ、なんだかお化けにびびってる子どもみたいだよ? アカネ:わたし、なにかに見られてるような気がするの。ずっと後ろから見られてる……そんな気が。 ナナ:アカネ、落ち着いて。きみの家のなかには人間が身を隠せる場所なんてないでしょ? アカネ:そういう意味じゃなくて、なんていうか、……家のなかにカメラがあって、それがわたしを撮影してるような気がして。 ナナ:あはは、あるわけないでしょ。第一、そんなもの仕掛けるなんて、よっぽど手の込んだ犯行だとしか思えない。 アカネ:でも、もしほんとに見られてたらどうしよう? ナナ:まあ、電話には付き合ってあげるから、早いとこ寝て……って、あれ? ねえねえ、アカネってライブ配信とかしてる? アカネ:え……どういう、こと? ナナ:「上郷地アカネ」って、これ、アカネのアカウントってこと? アカネ:待って、それってなんの話? ナナ:YouTubeのライブ配信に、アカネのアカウントからの動画が……。 アカネ:そ、そんな。それ、なにが映ってるの? ナナ:よく分からない。でも、画面は真っ黒で、音声も聞こえない。 アカネ:わたし、わたし……、やっぱり監視されてるのかな。 ナナ:監視もへったくれもないって。だいたい画面真っ黒なんだし、アカネが不安がることはないよ。きっとなんかの間違いでしょ。アカネのチャンネルを乗っ取って勝手にライブ配信してるどっかの誰かさんだよ明日刑事告発すれば一件落着、だよ! アカネ:ねえナナ、その配信のURL送ってほしい。 ナナ:えぇ? アカネは関係ないんでしょ? アカネ:でも、わたしのチャンネルが乗っ取られてるんだとしたら、明日まで待てない。 ナナ:うーん。じゃあ送るけど。 アカネ:ありがと、ナナ。 ナナ:うん。これね。真っ黒でしょ? 音声も聞こえないし。なんかのバグじゃない? アカネ:これって……。 ナナ:誰かの悪ふざけっていうよりは、YouTube側の不具合かもしれないね。 アカネ:ま、待って! これ、真ん中が光ってる! 光の筋が見える。 ナナ:あ、なんで気づかなかったんだろ? さっきはこの光の線はなかったはずなのに。 アカネ:はっ、え? ナナ:どうしたの? アカネ:わ、わたしの後ろで、なにか音がした! 物が倒れるような……。 ナナ:落ち着いて。アカネの部屋、机の後ろにはなにもないじゃない。 アカネ:でも、あるよ。クローゼット……。ねえ、中に何かあったらどうしよう。 ナナ:深追いは……、あれ? なんだか配信の画面、真っ白になったんだけ……って、これ、アカネの顔? アカネ:あっ、……確かに、これはわたしの顔。なんで、なんで。 ナナ:音声は流れてないけど、なにかを叫んでるように聞こえる。——あっ、床に倒れた? 今度は画面の外に出てった。 アカネ:なにこれ、どういうこと? このままここにいたらやばい、かな? ナナ:分からない、分からないけど……、どうやら、バグの類ではないらしいね。あたし、いまからアカネのとこ行く。そのまま部屋で待っていられる? アカネ:うん……。ありがと、ナナ。早く来てほしい。 ナナ:すぐ行くね。ぜったいアカネを安心させるからね。 アカネ:待ってる。  :  アカネ:ナナとの電話が切れた。動画は、わたしの机を中央に据えた視点で固定されている。配信時間が下の方に小さく表示されており、その横には「LIVE」の文字。それにしても、わたしに降り掛かっている事態の正体はなんだろう。 アカネ:「クローゼット……」 アカネ:わたしは背後の閉じられたクローゼットに歩み寄った。そこから、恐る恐るパソコンの方を向く。その光景は、パソコンの画面に映されているライブ配信のものと瓜二つだった。わたしは震える手を、クローゼットの引き手に当てた。冷や汗がこめかみを滑り落ちる。これを開けたら中に隠れた者に殺されてしまうかもしれない。でも、もしここで立ち止まっている間に怪異が進行しているとなると、じっとしていられない。——わたしは引き手を持つ手に力を入れて、それを引いた。 アカネ:「……これは」 アカネ:そこにあったのは、一台のカメラだった。録画を示す赤いランプが点滅していた。その時、わたしは最初に感じた異変の意味を悟った。 アカネ:逃げなくては、ならなかった。でも、どこに? アパートがわたしを追うストーカーで包囲されていたら? この部屋から出ると殺される罠を仕掛けられているとしたら? どうしよう、どうしよう。その時、だしぬけにピンポーンとインターホンが鳴った。わたしは思わずその場にへたり込んだ。もぞもぞ、とノイズが部屋に流れる。 ナナ:「アカネちゃーん。ごめんね、遅くなっちゃったかな」 アカネ:「ナナ? ナナなの?」 ナナ:「ナナだよーん。あたしが来たからもう安心だよ!」 アカネ:「よ、よかったあ……。待ってね、いま鍵開けるから」 アカネ:わたしはゆっくりと立ち上がってドアのロックを解き、なんの疑いもなく扉を開けた。でも恐れることはもうないようだった。そこにはナナが立っていた。 ナナ:「アカネ、もう大丈夫だよ。これ、お夜食も買ってきたよ! 明日になったら一緒に警察行こうね?」 アカネ:「ありがとう、ナナ……ありがとう」 ナナ:「なーに泣いてんのさ。ほら、おいで」 アカネ:ナナの広げた両手に、わたしは飛び込んだ。しっかりと両手をナナの背中に回す。わたしも、ナナのあたたかな体温に包まれる。 ナナ:「ほーら、もう安心して。大丈夫だから」 アカネ:わたしはナナの服を強く握りしめる。 ナナ:「大丈夫。全ては計画通りに行ったからね」 アカネ:「え?」 アカネ:ナナはわたしを優しい手つきで離すと、満面の笑みを浮かべてこう言った。 ナナ:「あの画面を見てごらん?」 アカネ:わたしはゆっくりと振り返った。画面の中に大写しにされているのは、わたしの顔。だがその両目から、放射線状に赤い筋が飛び散っている。 アカネ:もう一度、ナナの方を振り向く。そこにいたのはしかし、ナナではなかった。その女は、両目から血の涙を流していた。 ???:全てはシナリオ通りに運んだ。気づいていなかったのだな。画面に写っていたのは、きみでも、ナナでもない。……未来のきみの姿だったのだよ。 0: 了

アカネ:……ナナ、ちょっと待って。電話、もうちょっと切らないでほしい。 ナナ:どーしたのよ、アカネ。今日のアカネ、なんだかお化けにびびってる子どもみたいだよ? アカネ:わたし、なにかに見られてるような気がするの。ずっと後ろから見られてる……そんな気が。 ナナ:アカネ、落ち着いて。きみの家のなかには人間が身を隠せる場所なんてないでしょ? アカネ:そういう意味じゃなくて、なんていうか、……家のなかにカメラがあって、それがわたしを撮影してるような気がして。 ナナ:あはは、あるわけないでしょ。第一、そんなもの仕掛けるなんて、よっぽど手の込んだ犯行だとしか思えない。 アカネ:でも、もしほんとに見られてたらどうしよう? ナナ:まあ、電話には付き合ってあげるから、早いとこ寝て……って、あれ? ねえねえ、アカネってライブ配信とかしてる? アカネ:え……どういう、こと? ナナ:「上郷地アカネ」って、これ、アカネのアカウントってこと? アカネ:待って、それってなんの話? ナナ:YouTubeのライブ配信に、アカネのアカウントからの動画が……。 アカネ:そ、そんな。それ、なにが映ってるの? ナナ:よく分からない。でも、画面は真っ黒で、音声も聞こえない。 アカネ:わたし、わたし……、やっぱり監視されてるのかな。 ナナ:監視もへったくれもないって。だいたい画面真っ黒なんだし、アカネが不安がることはないよ。きっとなんかの間違いでしょ。アカネのチャンネルを乗っ取って勝手にライブ配信してるどっかの誰かさんだよ明日刑事告発すれば一件落着、だよ! アカネ:ねえナナ、その配信のURL送ってほしい。 ナナ:えぇ? アカネは関係ないんでしょ? アカネ:でも、わたしのチャンネルが乗っ取られてるんだとしたら、明日まで待てない。 ナナ:うーん。じゃあ送るけど。 アカネ:ありがと、ナナ。 ナナ:うん。これね。真っ黒でしょ? 音声も聞こえないし。なんかのバグじゃない? アカネ:これって……。 ナナ:誰かの悪ふざけっていうよりは、YouTube側の不具合かもしれないね。 アカネ:ま、待って! これ、真ん中が光ってる! 光の筋が見える。 ナナ:あ、なんで気づかなかったんだろ? さっきはこの光の線はなかったはずなのに。 アカネ:はっ、え? ナナ:どうしたの? アカネ:わ、わたしの後ろで、なにか音がした! 物が倒れるような……。 ナナ:落ち着いて。アカネの部屋、机の後ろにはなにもないじゃない。 アカネ:でも、あるよ。クローゼット……。ねえ、中に何かあったらどうしよう。 ナナ:深追いは……、あれ? なんだか配信の画面、真っ白になったんだけ……って、これ、アカネの顔? アカネ:あっ、……確かに、これはわたしの顔。なんで、なんで。 ナナ:音声は流れてないけど、なにかを叫んでるように聞こえる。——あっ、床に倒れた? 今度は画面の外に出てった。 アカネ:なにこれ、どういうこと? このままここにいたらやばい、かな? ナナ:分からない、分からないけど……、どうやら、バグの類ではないらしいね。あたし、いまからアカネのとこ行く。そのまま部屋で待っていられる? アカネ:うん……。ありがと、ナナ。早く来てほしい。 ナナ:すぐ行くね。ぜったいアカネを安心させるからね。 アカネ:待ってる。  :  アカネ:ナナとの電話が切れた。動画は、わたしの机を中央に据えた視点で固定されている。配信時間が下の方に小さく表示されており、その横には「LIVE」の文字。それにしても、わたしに降り掛かっている事態の正体はなんだろう。 アカネ:「クローゼット……」 アカネ:わたしは背後の閉じられたクローゼットに歩み寄った。そこから、恐る恐るパソコンの方を向く。その光景は、パソコンの画面に映されているライブ配信のものと瓜二つだった。わたしは震える手を、クローゼットの引き手に当てた。冷や汗がこめかみを滑り落ちる。これを開けたら中に隠れた者に殺されてしまうかもしれない。でも、もしここで立ち止まっている間に怪異が進行しているとなると、じっとしていられない。——わたしは引き手を持つ手に力を入れて、それを引いた。 アカネ:「……これは」 アカネ:そこにあったのは、一台のカメラだった。録画を示す赤いランプが点滅していた。その時、わたしは最初に感じた異変の意味を悟った。 アカネ:逃げなくては、ならなかった。でも、どこに? アパートがわたしを追うストーカーで包囲されていたら? この部屋から出ると殺される罠を仕掛けられているとしたら? どうしよう、どうしよう。その時、だしぬけにピンポーンとインターホンが鳴った。わたしは思わずその場にへたり込んだ。もぞもぞ、とノイズが部屋に流れる。 ナナ:「アカネちゃーん。ごめんね、遅くなっちゃったかな」 アカネ:「ナナ? ナナなの?」 ナナ:「ナナだよーん。あたしが来たからもう安心だよ!」 アカネ:「よ、よかったあ……。待ってね、いま鍵開けるから」 アカネ:わたしはゆっくりと立ち上がってドアのロックを解き、なんの疑いもなく扉を開けた。でも恐れることはもうないようだった。そこにはナナが立っていた。 ナナ:「アカネ、もう大丈夫だよ。これ、お夜食も買ってきたよ! 明日になったら一緒に警察行こうね?」 アカネ:「ありがとう、ナナ……ありがとう」 ナナ:「なーに泣いてんのさ。ほら、おいで」 アカネ:ナナの広げた両手に、わたしは飛び込んだ。しっかりと両手をナナの背中に回す。わたしも、ナナのあたたかな体温に包まれる。 ナナ:「ほーら、もう安心して。大丈夫だから」 アカネ:わたしはナナの服を強く握りしめる。 ナナ:「大丈夫。全ては計画通りに行ったからね」 アカネ:「え?」 アカネ:ナナはわたしを優しい手つきで離すと、満面の笑みを浮かべてこう言った。 ナナ:「あの画面を見てごらん?」 アカネ:わたしはゆっくりと振り返った。画面の中に大写しにされているのは、わたしの顔。だがその両目から、放射線状に赤い筋が飛び散っている。 アカネ:もう一度、ナナの方を振り向く。そこにいたのはしかし、ナナではなかった。その女は、両目から血の涙を流していた。 ???:全てはシナリオ通りに運んだ。気づいていなかったのだな。画面に写っていたのは、きみでも、ナナでもない。……未来のきみの姿だったのだよ。 0: 了