台本概要

 455 views 

タイトル 愛しき蝶と蜘蛛の糸
作者名 ヒロタカノ  (@hiro_takano)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 5人用台本(男2、女1、不問2) ※兼役あり
時間 20 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 どこかなにかで使っていただけたら幸いです。

「使ったよ」とでもコメントいただけたらありがたいです。

いつかどこかで誰かのお役に立ちますように。

 455 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
鳴美 77 とあるラジオ局のパーソナリティ。持ち前の明るさでリスナーをひきつけている。人気番組というほどではないが隠れファンが多い。
悠介 47 鳴美の恋人。鳴美の成功を願っている。会社員。
店員 14 とある喫茶店の店員
ディレクター 不問 31 鳴美の番組担当のディレクター。鳴美と悠介の関係を知っている。鳴美:のよき理解者。
ミキサー 不問 11 音響技術スタッフ (セリフ少ないので兼役できます。)
不問 3 客 (セリフ少ないので兼役できます。)
学芸員 不問 2 昆虫館の学芸員 (セリフ少ないので兼役できます。)
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
鳴美:…とあるラジオ局のパーソナリティ。持ち前の明るさでリスナーをひきつけている。人気番組というほどではないが隠れファンが多い。 悠介:…鳴美:の恋人。鳴美:の成功を願っている。会社員 店員:…とある喫茶店の店員:。 ディレクター:…鳴美:の番組担当のディレクター:。鳴美:と悠介:の関係を知っている。鳴美:のよき理解者。カミさんがいるが頭があがらない。 ミキサー:…外注スタッフ。ディレクター:の飲み友達。 喫茶店の客…とある喫茶店のお客さん 学芸員:…とある昆虫館の学芸員:  :〇昆虫館 学芸員:え?あ、はいなんでしょう?…あ、この蝶ですか?この蝶は『オオムラサキ』っていうんですよ。綺麗でしょう?……えっ?一匹お持ち帰りたい?…ええと、少々お待ちくださいませ。 店員M:僕はキミに恋焦がれる。キミは空を舞う、一匹の蝶。 店員M:その、美しい羽の模様に恋焦がれる。 店員M:その、優雅に舞う姿に恋焦がれる。 店員M:懸命に空を目指す…ひたむきなキミに恋焦がれる。 店員M:とどかないと決め付けて、ただ優しく見守る僕。 店員M:悠久とも感じる時間。 店員M:いつか僕のもとに舞い降りる。そんな日を密かに夢見て…。 店員M:愛しいキミに届けたい。蜘蛛がたらした、運命の紅い糸 -  :〇放送局 鳴美:はい、楽しくお送りしてきたこの放送も、さみしいけどお別れの時間となってしまいましたっ。一人部屋で聞いているあなた?仕事帰り、車の中で聞いているあなた?(ちょっと意味深に)…そして、仕事中にこっそり聞いてくれているそこのあなた?今日の放送はお楽しみ頂けましたか?ひとときの安らぎの時間となったかな?…なんてね。 鳴美:それでは今日最後のおたよりです…お手紙がとどいてます、ペンネームは…あっ!『ユウ』さんですね。いつもありがとう。 『鳴美さん、こんばんは。鳴美さんのラジオ、いつも楽しく聞かせてもらってます…。』 ミキサー:あれっ? ディレクター:ん?どうした? ミキサー:このおたより。打ち合わせのと違いますよね? ディレクター:…ああ。いいんだ。好きなようにやらせときな。鳴美ちゃんはいつも真面目にやってもらってるしな。たまにゃーあの娘のわがままを叶えてやらなきゃあ、そりゃ野暮ってもんだ。 ミキサー:…野暮? ディレクター:いやいや。こっちの話だ。…ああ、青春だねぇ。 ミキサー:…はぁ?  :〇喫茶店 0:ラジオから聞こえる鳴美の音声 鳴美:…この間、昆虫が趣味っていいましたよね。じつは今、蝶にこっています。いつもはお店で買ってくるのですが、自分で捕まえるのも好きで、休みの日は山に採集に行ってます。この間珍しい蝶を見つけました。とても綺麗な蝶です。いつか鳴美さんにも見てもらえたらいいなぁと思いつつ、その日を密かに心待ちにしています…。 0:ジャー(水を流す音) 0:カチャカチャ(食器を洗う音) 0:カランカラン(カウベルの音) 店員:いらっしゃいませ。 0:キュッ(蛇口をしめる)  :〇放送局(放送後) ディレクター:やぁやぁ、鳴美:ちゃん、おつかれさま! 鳴美:あっ、ディレクター:さん。おつかれさまです。 ディレクター:どうだい?調子の方は? 鳴美:番組ですか?おかげさまで楽しくやらせてもらってますよ。 ディレクター:そうかそうか…。ああ、そうだ。はい、これ!ファンレター 鳴美:え?わたしに!? ディレクター:ひぃふぅみぃ…ほーう。ファンも増えてきたねえ。この調子でがんばれな。 鳴美:はい! ディレクター:…あ。そうそう…ファンといえば。…今日も君の虜になったファンが一人。表で待ってるよ。 鳴美:…え?…あ!…やだ!もう!そんなに冷やかさないでくださいよぉ。 ディレクター:あはは!あついあつい!結構結構!…ほら、今日はもういいから、さっさと行ってやんな。 鳴美:はい!じゃあお先に失礼します。 ディレクター:おー!おつかれさーん!あんまり急いでころぶなよー! 0:立ち去る鳴海。入れ替わりでミキサー。 ミキサー:ちぃーす、おつかれさまですー。機材チェック終わりましたー。 ディレクター:…おつかれさん♪、おつかれさんよぉー♪…ふう。 ミキサー:ん?…どうしたんすか?ため息ついて? ディレクター:…ん?ああ。あの娘、いつも活き活きしてるなぁって思ってさ。 ミキサー:そうですねぇ。 ディレクター:そりゃあ、もてるはずだよな。 ミキサー:そうですねぇ。 ディレクター:まぶしい…なんて若さがまぶしいんだ……。 ミキサー:…ディレクター:? ディレクター:なんだ? ミキサー:…また奥さん(旦那さん)ともめたんですか? ディレクター:なぁ!なぁ!聞いてくれよ!うちのカミさん(だんな)がよぉおおおおう!(以下アドリブあればどうぞ)  :〇放送局玄関前 鳴美:ゆうすけ! 悠介:おう、来たか。 鳴美:ごめん!少し待たせちゃったかな? 悠介:いや、こっちも今来た所。さて、じゃあ行こうか。  :〇とある喫茶店 0:カランカラン(カウベルの音) 店員:いらっしゃいませ。 店員:ご注文はお決まりですか? 悠介:ブレンドコーヒーをひとつ。…鳴美は? 鳴美:私もそれでいいよ。 悠介:じゃあ、ブレンド2つお願いします。 店員:…な…る。 悠介:……店員さん? 店員:えっ?ああ、なんでしょう? 悠介:ブレンド2つ、お願いします。 店員:ああ、はい!かしこまりました。     :〇喫茶店テーブル席 鳴美:仕事の方はどう?うまくいってる? 悠介:うん?まぁ、まぁまぁかな。出張とか多いけどそれなりにこなしてるよ。…そっちはどう? 鳴美:うん。楽しくやってるよ。スタッフの人も良い人ばかり。 悠介:そう、よかった。順調みたいだね。人気も出てきたようだし。そう、ときどき社内で君のラジオの話を耳にするんだ。 鳴美:へぇ~。 悠介:まったく、同僚にも君のファンが多くて、困っちゃうよ。 鳴美:…もしかして、やいてるの? 悠介:べっつにぃ。 鳴美:ふふ。 悠介:…。 鳴美:…。 悠介:…あれっ?へぇ…めずらしいな。 鳴美:どうしたの? 悠介:ほらっ見て。蝶がかざってあるよ。 鳴美:…あっ、ほんと。きれい… 悠介:オオムラサキか。 鳴美:オオムラサキ? 悠介:うん。…えっと、タテハチョウ科の一種でね。羽を開いた大きさは8センチから10センチぐらいになるんだって。 鳴美:…へぇ、詳しいね? 悠介:うん、最近ちょっと凝っててね。家でも飼いはじめたんだ。よかったら今度見せてあげるよ。 鳴美:ほんとに?…でもどうして蝶なんかに興味を持ったの? 悠介:この間、出張で昆虫館に行ってきたんだ。庭いっぱいにこいつがいて…綺麗だった。…じっと見てたらなんだか欲しくなっちゃって。 鳴美:へぇ。 悠介:…たしかに綺麗だから、っていうのもあるんだけど。なんというか、一生懸命生きてる姿に轢かれたんだ。こんな小さな体なのに一生懸命羽ばたいて生きているんだ!って思ったら。…愛しくなっちゃって。 鳴美:…愛しい? 悠介:あ、はは、『蝶が愛しい』だって。おかしいよね? 鳴美:ううん。悠介らしくていいと思うよ。 悠介:そうかな?…でも、自由にとびまわってる蝶達には、ちょっと迷惑な話かもしれないね? 鳴美:ふふ。 悠介:…。 鳴美:…。 悠介:…。 鳴美:ほんと…きれいだね…。 悠介:…。 鳴美:…。 悠介:…なぁ… 鳴美:なに? 悠介:…今年で、何年目だっけ? 鳴美:5年め…いや、来月で祝・6周年、かな。 悠介:…そう、か。 鳴美:…うん。 悠介:…。 鳴美:…。 悠介:…そろそろ…かなぁ? 鳴美:何が? 悠介:何がって…そろそろ…その… 鳴美:…その? 悠介:……いや…やっぱりいいや。 鳴美:…そう。 悠介:…。 鳴美:…ふぅ…。 悠介:…。 鳴美:…。 悠介:…。 鳴美:…そうだ。ねぇ、知ってる? 悠介:何? 鳴美:私の番組にね。よく差出人が書いてない名無しのお手紙がくるんだ。 悠介:ふ~ん 鳴美:その人ね。ずーっと自分の気持ちを打ち明けられないままでいるんだって。 悠介:へぇ…。 鳴美:…もっと、はっきりしないとだめだぞ。 悠介:…何が? 鳴美:…。 悠介:…。 鳴美:…もういい。ばーか。 悠介:…。 鳴美:意気地なし。意気地なし意気地なし意気地なし意気地なし意気地なし! 悠介:だから何が? 鳴美:べっつにぃ。なんでもないっ…つん。 0:コポコポコポコポ(コーヒーメーカー) 客:店員さん。 店員:…。 客:店員さん? 店員:えっ!?はい。 客:お勘定お願いします。 店員:えっ?あっ…はい、ただいま…  :〇放送局 ディレクター:鳴美ちゃんそろそろエンディングいくよ~。最後ちゃんと締めとくれよ? 鳴美:…。 ディレクター:鳴美ちゃん? 鳴美:は~い。わかってますぅ。 0:放送台本に八つ当たりする鳴美 鳴美:…ったく。わたしの仕事が軌道に乗るまで待っててくれてるのはわかるのよ?でももうちょっとこっちの気持ちを察してくれたっていいじゃない!6年よ6年目!!こっちだって待ってるんだっての!!あーもう!…人の気も知らないで。ばか。ばーか、ばーかばーかばーか! 0:パサッ(紙の音) 鳴美:あれっ?…この手紙…。  :〇とある喫茶店 鳴美:…はい、楽しくお送りしてきたこの放送もそろそろお別れの時間となってしまいました。今日の放送はお楽しみ頂けましたか?それでは、今日最後のおたよりです。 …いつもありがとう、ペンネーム『ユウ』から。…さて。実は『ユウ』さん、とうとう一大決心をしたようです。聞いてあげてくださいね。 鳴美:『正直、この関係がいつまでも続けばいいと思っていました。キミがそこにいて、僕がキミを暖かく見守る。それだけで幸せな時間でした。…でも、この間のあなたの一言で目が覚めました。あなたの気持ちもしらないで…僕は意気地なしだと思います。だから意気地なしなりに一生懸命考えました。そして、決意しました。この気持ちが手遅れになってしまう前に、自分の正直な気持ちを伝えたいと思います。この番組終了後、お待ちしています。』 鳴美:…そう。いつまでも見守っているだけじゃいけないんです。思い続けてるだけでは気持ちは伝わらず、待ちつづけるだけではチャンスを逃してしまいます。素直に自分の気持ちをぶつければ相手もきっと応えてくれる。私はいつも、そう信じています。 0:カランカラン(カウベル)  :〇放送局 ディレクター:おうおう、鳴美ちゃん。 鳴美:あっ、ディレクター:さん。お疲れ様です。 ディレクター:お疲れさん。いやぁ今日の放送は良かったよ。今までで一番気持ちが入ってた! 鳴美:そうですか?そう言ってくださるとうれしいです。 ディレクター:次回も今日くらいリキ入れてくれるとうれしいねぇ! 鳴美:あら心外。わたし今まで手を抜いたことなんてありませんよ? ディレクター:あ、あっはっは!けっこうけっこう!……ああ、あれ? 鳴美:?…なにか? ディレクター:ん?いやね。いつも終わった頃を見計らって来るはずの彼が、今日はまだ来てないからおかしいなぁと思ってな。 鳴美:ええ。おかげさまで、やっとその気になってくれたみたいなので。 ディレクター:はぁっ?いったい何の話だい? 鳴美:野暮なディレクターさんにはあえて教えてあげません。 ディレクター:いたたー!!…なんちゃってー。 鳴美:あはは。…じゃあお先に失礼します。 ディレクター:おう、気ぃ付けて帰れよ。  :〇待ち合わせ場所 鳴美:あいつは…まだ来てない、か。 鳴美:6年…か。長かったなぁ…。 鳴美M:長い間、羽ばたいていた。 鳴美M:いとしいあの人を待ちつづけ、ただ一生懸命羽ばたいていた。 鳴美M:いつか私を捕まえてくれる、ただそれだけを信じて…。 鳴美M:いつまでも続くかと思われた時間も、ようやく終わり告げようとしている。 鳴美M:いとしいあの人が見つけてくれた、 鳴美M:『決意』という名のものとに…。 鳴美M:そう、私達の時間はからな…。 0:着信音 鳴美:あれっ? 0:着信音 鳴美:もしもし? 悠介:あっ、鳴美:?ごめん!急な出張が入っちゃって。今行くからちょっと待ってて! 鳴美:もう…自分から呼び出しておいて普通遅刻する? 悠介:…え?なんのこと? 鳴美:今日読んだでしょ、おたより。ここで待ってろって。ご丁寧に地図まで書いて。 悠介:ああっ!ごめん。だから今日放送聴けなかったんだ。っで、今どこにいるの? 鳴美:…どこって…本当に悠介じゃないの? 悠介:…ああ。 鳴美:じゃあ、このメッセージは…?  店員:鳴美さん。 鳴美:え?はい? 0:ドスッ(当て身される鳴美) 鳴美:っ! 0:ドサッ(倒れる) 店員:お待たせしました、鳴美さん。 鳴美:…。 悠介:もしもし…もしもし鳴美:!?もしも(着信切) 店員M:愛しいキミを見守る僕。とどかないと決め付けて、ただ優しく見守る僕がいた。 店員M:やがて、悠久とも思えた時間も終わりを告げた。想いを解き放ち、空に向かって手を伸ばす 店員M:そう。愛しいキミがくれた、勇気という名の糧を胸に。   店員:しまった…。 鳴美:…。 店員:…防腐剤、買い置きのやつで足りる、かな? 店員M:- 想いを紡ぐ蜘蛛の糸。愛しいキミにようやく届いた ― 0:ハッピーエンド

鳴美:…とあるラジオ局のパーソナリティ。持ち前の明るさでリスナーをひきつけている。人気番組というほどではないが隠れファンが多い。 悠介:…鳴美:の恋人。鳴美:の成功を願っている。会社員 店員:…とある喫茶店の店員:。 ディレクター:…鳴美:の番組担当のディレクター:。鳴美:と悠介:の関係を知っている。鳴美:のよき理解者。カミさんがいるが頭があがらない。 ミキサー:…外注スタッフ。ディレクター:の飲み友達。 喫茶店の客…とある喫茶店のお客さん 学芸員:…とある昆虫館の学芸員:  :〇昆虫館 学芸員:え?あ、はいなんでしょう?…あ、この蝶ですか?この蝶は『オオムラサキ』っていうんですよ。綺麗でしょう?……えっ?一匹お持ち帰りたい?…ええと、少々お待ちくださいませ。 店員M:僕はキミに恋焦がれる。キミは空を舞う、一匹の蝶。 店員M:その、美しい羽の模様に恋焦がれる。 店員M:その、優雅に舞う姿に恋焦がれる。 店員M:懸命に空を目指す…ひたむきなキミに恋焦がれる。 店員M:とどかないと決め付けて、ただ優しく見守る僕。 店員M:悠久とも感じる時間。 店員M:いつか僕のもとに舞い降りる。そんな日を密かに夢見て…。 店員M:愛しいキミに届けたい。蜘蛛がたらした、運命の紅い糸 -  :〇放送局 鳴美:はい、楽しくお送りしてきたこの放送も、さみしいけどお別れの時間となってしまいましたっ。一人部屋で聞いているあなた?仕事帰り、車の中で聞いているあなた?(ちょっと意味深に)…そして、仕事中にこっそり聞いてくれているそこのあなた?今日の放送はお楽しみ頂けましたか?ひとときの安らぎの時間となったかな?…なんてね。 鳴美:それでは今日最後のおたよりです…お手紙がとどいてます、ペンネームは…あっ!『ユウ』さんですね。いつもありがとう。 『鳴美さん、こんばんは。鳴美さんのラジオ、いつも楽しく聞かせてもらってます…。』 ミキサー:あれっ? ディレクター:ん?どうした? ミキサー:このおたより。打ち合わせのと違いますよね? ディレクター:…ああ。いいんだ。好きなようにやらせときな。鳴美ちゃんはいつも真面目にやってもらってるしな。たまにゃーあの娘のわがままを叶えてやらなきゃあ、そりゃ野暮ってもんだ。 ミキサー:…野暮? ディレクター:いやいや。こっちの話だ。…ああ、青春だねぇ。 ミキサー:…はぁ?  :〇喫茶店 0:ラジオから聞こえる鳴美の音声 鳴美:…この間、昆虫が趣味っていいましたよね。じつは今、蝶にこっています。いつもはお店で買ってくるのですが、自分で捕まえるのも好きで、休みの日は山に採集に行ってます。この間珍しい蝶を見つけました。とても綺麗な蝶です。いつか鳴美さんにも見てもらえたらいいなぁと思いつつ、その日を密かに心待ちにしています…。 0:ジャー(水を流す音) 0:カチャカチャ(食器を洗う音) 0:カランカラン(カウベルの音) 店員:いらっしゃいませ。 0:キュッ(蛇口をしめる)  :〇放送局(放送後) ディレクター:やぁやぁ、鳴美:ちゃん、おつかれさま! 鳴美:あっ、ディレクター:さん。おつかれさまです。 ディレクター:どうだい?調子の方は? 鳴美:番組ですか?おかげさまで楽しくやらせてもらってますよ。 ディレクター:そうかそうか…。ああ、そうだ。はい、これ!ファンレター 鳴美:え?わたしに!? ディレクター:ひぃふぅみぃ…ほーう。ファンも増えてきたねえ。この調子でがんばれな。 鳴美:はい! ディレクター:…あ。そうそう…ファンといえば。…今日も君の虜になったファンが一人。表で待ってるよ。 鳴美:…え?…あ!…やだ!もう!そんなに冷やかさないでくださいよぉ。 ディレクター:あはは!あついあつい!結構結構!…ほら、今日はもういいから、さっさと行ってやんな。 鳴美:はい!じゃあお先に失礼します。 ディレクター:おー!おつかれさーん!あんまり急いでころぶなよー! 0:立ち去る鳴海。入れ替わりでミキサー。 ミキサー:ちぃーす、おつかれさまですー。機材チェック終わりましたー。 ディレクター:…おつかれさん♪、おつかれさんよぉー♪…ふう。 ミキサー:ん?…どうしたんすか?ため息ついて? ディレクター:…ん?ああ。あの娘、いつも活き活きしてるなぁって思ってさ。 ミキサー:そうですねぇ。 ディレクター:そりゃあ、もてるはずだよな。 ミキサー:そうですねぇ。 ディレクター:まぶしい…なんて若さがまぶしいんだ……。 ミキサー:…ディレクター:? ディレクター:なんだ? ミキサー:…また奥さん(旦那さん)ともめたんですか? ディレクター:なぁ!なぁ!聞いてくれよ!うちのカミさん(だんな)がよぉおおおおう!(以下アドリブあればどうぞ)  :〇放送局玄関前 鳴美:ゆうすけ! 悠介:おう、来たか。 鳴美:ごめん!少し待たせちゃったかな? 悠介:いや、こっちも今来た所。さて、じゃあ行こうか。  :〇とある喫茶店 0:カランカラン(カウベルの音) 店員:いらっしゃいませ。 店員:ご注文はお決まりですか? 悠介:ブレンドコーヒーをひとつ。…鳴美は? 鳴美:私もそれでいいよ。 悠介:じゃあ、ブレンド2つお願いします。 店員:…な…る。 悠介:……店員さん? 店員:えっ?ああ、なんでしょう? 悠介:ブレンド2つ、お願いします。 店員:ああ、はい!かしこまりました。     :〇喫茶店テーブル席 鳴美:仕事の方はどう?うまくいってる? 悠介:うん?まぁ、まぁまぁかな。出張とか多いけどそれなりにこなしてるよ。…そっちはどう? 鳴美:うん。楽しくやってるよ。スタッフの人も良い人ばかり。 悠介:そう、よかった。順調みたいだね。人気も出てきたようだし。そう、ときどき社内で君のラジオの話を耳にするんだ。 鳴美:へぇ~。 悠介:まったく、同僚にも君のファンが多くて、困っちゃうよ。 鳴美:…もしかして、やいてるの? 悠介:べっつにぃ。 鳴美:ふふ。 悠介:…。 鳴美:…。 悠介:…あれっ?へぇ…めずらしいな。 鳴美:どうしたの? 悠介:ほらっ見て。蝶がかざってあるよ。 鳴美:…あっ、ほんと。きれい… 悠介:オオムラサキか。 鳴美:オオムラサキ? 悠介:うん。…えっと、タテハチョウ科の一種でね。羽を開いた大きさは8センチから10センチぐらいになるんだって。 鳴美:…へぇ、詳しいね? 悠介:うん、最近ちょっと凝っててね。家でも飼いはじめたんだ。よかったら今度見せてあげるよ。 鳴美:ほんとに?…でもどうして蝶なんかに興味を持ったの? 悠介:この間、出張で昆虫館に行ってきたんだ。庭いっぱいにこいつがいて…綺麗だった。…じっと見てたらなんだか欲しくなっちゃって。 鳴美:へぇ。 悠介:…たしかに綺麗だから、っていうのもあるんだけど。なんというか、一生懸命生きてる姿に轢かれたんだ。こんな小さな体なのに一生懸命羽ばたいて生きているんだ!って思ったら。…愛しくなっちゃって。 鳴美:…愛しい? 悠介:あ、はは、『蝶が愛しい』だって。おかしいよね? 鳴美:ううん。悠介らしくていいと思うよ。 悠介:そうかな?…でも、自由にとびまわってる蝶達には、ちょっと迷惑な話かもしれないね? 鳴美:ふふ。 悠介:…。 鳴美:…。 悠介:…。 鳴美:ほんと…きれいだね…。 悠介:…。 鳴美:…。 悠介:…なぁ… 鳴美:なに? 悠介:…今年で、何年目だっけ? 鳴美:5年め…いや、来月で祝・6周年、かな。 悠介:…そう、か。 鳴美:…うん。 悠介:…。 鳴美:…。 悠介:…そろそろ…かなぁ? 鳴美:何が? 悠介:何がって…そろそろ…その… 鳴美:…その? 悠介:……いや…やっぱりいいや。 鳴美:…そう。 悠介:…。 鳴美:…ふぅ…。 悠介:…。 鳴美:…。 悠介:…。 鳴美:…そうだ。ねぇ、知ってる? 悠介:何? 鳴美:私の番組にね。よく差出人が書いてない名無しのお手紙がくるんだ。 悠介:ふ~ん 鳴美:その人ね。ずーっと自分の気持ちを打ち明けられないままでいるんだって。 悠介:へぇ…。 鳴美:…もっと、はっきりしないとだめだぞ。 悠介:…何が? 鳴美:…。 悠介:…。 鳴美:…もういい。ばーか。 悠介:…。 鳴美:意気地なし。意気地なし意気地なし意気地なし意気地なし意気地なし! 悠介:だから何が? 鳴美:べっつにぃ。なんでもないっ…つん。 0:コポコポコポコポ(コーヒーメーカー) 客:店員さん。 店員:…。 客:店員さん? 店員:えっ!?はい。 客:お勘定お願いします。 店員:えっ?あっ…はい、ただいま…  :〇放送局 ディレクター:鳴美ちゃんそろそろエンディングいくよ~。最後ちゃんと締めとくれよ? 鳴美:…。 ディレクター:鳴美ちゃん? 鳴美:は~い。わかってますぅ。 0:放送台本に八つ当たりする鳴美 鳴美:…ったく。わたしの仕事が軌道に乗るまで待っててくれてるのはわかるのよ?でももうちょっとこっちの気持ちを察してくれたっていいじゃない!6年よ6年目!!こっちだって待ってるんだっての!!あーもう!…人の気も知らないで。ばか。ばーか、ばーかばーかばーか! 0:パサッ(紙の音) 鳴美:あれっ?…この手紙…。  :〇とある喫茶店 鳴美:…はい、楽しくお送りしてきたこの放送もそろそろお別れの時間となってしまいました。今日の放送はお楽しみ頂けましたか?それでは、今日最後のおたよりです。 …いつもありがとう、ペンネーム『ユウ』から。…さて。実は『ユウ』さん、とうとう一大決心をしたようです。聞いてあげてくださいね。 鳴美:『正直、この関係がいつまでも続けばいいと思っていました。キミがそこにいて、僕がキミを暖かく見守る。それだけで幸せな時間でした。…でも、この間のあなたの一言で目が覚めました。あなたの気持ちもしらないで…僕は意気地なしだと思います。だから意気地なしなりに一生懸命考えました。そして、決意しました。この気持ちが手遅れになってしまう前に、自分の正直な気持ちを伝えたいと思います。この番組終了後、お待ちしています。』 鳴美:…そう。いつまでも見守っているだけじゃいけないんです。思い続けてるだけでは気持ちは伝わらず、待ちつづけるだけではチャンスを逃してしまいます。素直に自分の気持ちをぶつければ相手もきっと応えてくれる。私はいつも、そう信じています。 0:カランカラン(カウベル)  :〇放送局 ディレクター:おうおう、鳴美ちゃん。 鳴美:あっ、ディレクター:さん。お疲れ様です。 ディレクター:お疲れさん。いやぁ今日の放送は良かったよ。今までで一番気持ちが入ってた! 鳴美:そうですか?そう言ってくださるとうれしいです。 ディレクター:次回も今日くらいリキ入れてくれるとうれしいねぇ! 鳴美:あら心外。わたし今まで手を抜いたことなんてありませんよ? ディレクター:あ、あっはっは!けっこうけっこう!……ああ、あれ? 鳴美:?…なにか? ディレクター:ん?いやね。いつも終わった頃を見計らって来るはずの彼が、今日はまだ来てないからおかしいなぁと思ってな。 鳴美:ええ。おかげさまで、やっとその気になってくれたみたいなので。 ディレクター:はぁっ?いったい何の話だい? 鳴美:野暮なディレクターさんにはあえて教えてあげません。 ディレクター:いたたー!!…なんちゃってー。 鳴美:あはは。…じゃあお先に失礼します。 ディレクター:おう、気ぃ付けて帰れよ。  :〇待ち合わせ場所 鳴美:あいつは…まだ来てない、か。 鳴美:6年…か。長かったなぁ…。 鳴美M:長い間、羽ばたいていた。 鳴美M:いとしいあの人を待ちつづけ、ただ一生懸命羽ばたいていた。 鳴美M:いつか私を捕まえてくれる、ただそれだけを信じて…。 鳴美M:いつまでも続くかと思われた時間も、ようやく終わり告げようとしている。 鳴美M:いとしいあの人が見つけてくれた、 鳴美M:『決意』という名のものとに…。 鳴美M:そう、私達の時間はからな…。 0:着信音 鳴美:あれっ? 0:着信音 鳴美:もしもし? 悠介:あっ、鳴美:?ごめん!急な出張が入っちゃって。今行くからちょっと待ってて! 鳴美:もう…自分から呼び出しておいて普通遅刻する? 悠介:…え?なんのこと? 鳴美:今日読んだでしょ、おたより。ここで待ってろって。ご丁寧に地図まで書いて。 悠介:ああっ!ごめん。だから今日放送聴けなかったんだ。っで、今どこにいるの? 鳴美:…どこって…本当に悠介じゃないの? 悠介:…ああ。 鳴美:じゃあ、このメッセージは…?  店員:鳴美さん。 鳴美:え?はい? 0:ドスッ(当て身される鳴美) 鳴美:っ! 0:ドサッ(倒れる) 店員:お待たせしました、鳴美さん。 鳴美:…。 悠介:もしもし…もしもし鳴美:!?もしも(着信切) 店員M:愛しいキミを見守る僕。とどかないと決め付けて、ただ優しく見守る僕がいた。 店員M:やがて、悠久とも思えた時間も終わりを告げた。想いを解き放ち、空に向かって手を伸ばす 店員M:そう。愛しいキミがくれた、勇気という名の糧を胸に。   店員:しまった…。 鳴美:…。 店員:…防腐剤、買い置きのやつで足りる、かな? 店員M:- 想いを紡ぐ蜘蛛の糸。愛しいキミにようやく届いた ― 0:ハッピーエンド