台本概要

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タイトル 嘘つきな神様
作者名 マメの助
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(女2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 これは一夏の大切な思い出

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
カレン 91 母親を恋しく思っている女の子
神様 84 女の子を見守っている神様?
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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カレンM:私はいつも嫌な事や悩み事があると良く母の墓参りに来ていた。母は既に、私が幼い頃に病気で亡くなっていて、私が覚えているのは、白い病室で私を優しく抱いてくれた母の朧げな姿だけ。どんな風に私に声を掛けてくれたのか、どんな顔で私を抱いてくれたのか、私は殆ど覚えていない。でも、此処に来ると何故か凄く落ち着いた。 カレン:「お母さん〜お参りにきたよ。今日はね、おばあちゃんから聞いたんだけど、お母さんの好きだったお花を持ってきたよ!ほらコレ、スイートピー。」 : カレン:「此処に置いとくね...うん可愛い。」 : カレン:「ねぇねぇ。お母さん。私ねもうすぐ高校生になるんだ。お母さんのお墓参りには小さい頃からよく来てたけどさ。もしかしたら、まだ決まった訳じゃないけど、これからはもうあんまり来れないかもしれない。前も話したけど、私お母さんと一緒の女優さん目指そうと思ってるの、まだ悩んでるだけどね」 神様:「あら!良いじゃない!」 カレン:「えっ・・・」 カレンM:声がする方へ視線を動かすと、そこにはお面で顔を隠した女性が立っていた。驚く私を他所に女性は話を続ける。 神様:「女優さんねぇ。でも凄く大変よ?本気で目指すならやる事いっぱいなんだから〜」 カレン:「・・・」 神様:「でもそっか〜ここら辺じゃ演劇部ある学校ないもんねぇ。だから此処にもこれなくなるって事よね...寂しくなるわ」 カレンM:何故だか直感的に、この女性は人じゃないと分かってしまった。けれど、目を逸らそうにも逸らす事は出来ず釘付けになる。 神様:「うん?えっ...どうしよう凄く目が合ってる気がする...気のせいよね。だって見える訳ないんだし」 カレン:「・・・その、見えてます」 神様:「・・・」 カレン:「・・・」 神様:「・・・え、見えてるの?」 カレン:「はい・・・」 神様:「・・・え?え、えぇええええ!?見えてるぅう!?」 カレン:「あ...はい」 神様:「え、なんで!どうして?カレンが私の事見えちゃってる!なんで!?」 カレン:「え、なんで私の名前知ってるの?」 神様:「えッ...あ、えっと!その。あっ!私はねこのお墓の神様だからよ!カレン、あっ、カレンちゃんの事は知ってるわ。此処にもよく来てくれるしね。あ、でもちょっと待って!殆ど初めましてなのに急にカレンちゃん呼びは嫌よね!?まさか見えるなんて思ってなかったらいつもの癖で呼んじゃって!嫌だったら嫌って言ってね!?他の呼び方考えるわ!それよりも、ほぼ初対面の人に名前知られてたら、そりゃ怖いわよね!でも怖がらないで!怪しい人じゃないから!いやでも待って、人じゃないからこの言い方は違うわよね。あ、こっちだわ!私は怪しい神様じゃありまへぶ(舌を噛む)ッうぅう!?舌噛んだ、、、」 カレン:「・・・ふふッアハハハっ!神様落ち着いてくださいッ。カレンで良いですから、ふふふ。大丈夫ですか?」 神様:「だ、大丈夫よ。ありがと。じゃ、カレンちゃんって呼ぶわね!」 カレン:「はい」 0:間 神様:「・・・」 カレン:「・・・」 神様:「あの〜なんだかごめんなさいね。私、1人で喋るのが癖になってて、いざ何か喋ろうと思ったら、何をどう話していいのかグルングルしちゃって、今ね頭真っ白なの!」 カレン:「ふふふッ。良いですよ無理しなくて、でも、神様ってもっと近寄り難い感じなのかなって思ってました。こうやって実際会ってみるとイメージと結構違いますね」 神様:「なぁに〜私が威厳のない神様だって言いたいの〜?」 カレン:「そこまでは、、、思ってます」 神様:「いや!思ってるんじゃないの!」 カレン:「ふふふ、ごめんなさい。初めましてなのに、なんだか凄く話しやすくてつい。」 神様:「許してあげる。私が寛大な神様でよかったわねぇ〜」 カレン:「はい。助かりました。」 : カレン:「・・・あの」 神様:「うん?どうしたの?」 カレン:「神様はずっと此処にいるんですか?」 神様:「そ、そうね。それは勿論!このお墓の神様ですからね」 カレン:「そっか。じゃ!神様は幽霊が見えたりするんですか?」 神様:「あぁ。ま、まぁ〜ね」 カレン:「ッーあの!!お母さんはお母さんは此処にいますか!?もしいるならなんて言ってますか?」 神様:「・・・カレンちゃんのお母さんは居ないわ。」 カレン:「・・・そう、ですか。」 神様:「そんなに落ち込まないで、此処に居ないっていう事はちゃんと成仏できて天国に行けてるって事なんだから」 カレン:「そっか、そうですよね・・・」 神様:「でも、カレンちゃんのお母さんは天国からいつも見てるわよ。ちゃんとカレンちゃんを見守ってるコレは絶対!だからそんな悲しい顔しないで」 カレン:「うん。そうだよね。神様が言うなら説得力あります。」 神様:「そうでしょ!」 カレン:「でも、どうして急に神様が見えるようになったんだろ?私、霊感なんてこれぽっちも無いと思ってたのに」 神様:「どうしてかしらね、私も急にカレンちゃんとお話しが出来るようになってビックリよ。ビックリしすぎて前半の記憶がないわ...」 カレン:「フフッ凄く焦ってましたもんね。私も神様見た時は驚きましたよ。多分、人じゃないなってなんとなく分かったから、結構焦ってて。でも神様の方が思った以上に焦ってたから逆に落ち着きました」 神様:「思い出してきた...恥ずかしい」 カレン:「あはは。そっかぁ、そう考えると私もなんだか恥ずかしくてなってきた」 神様:「え、なんでよ」 カレン:「いや、だって神様に小さい頃からの私の独り言聴かれてたと思うと...」 神様:「あ〜フフッあれね!好きな子が出来たとか、テストで100点取ったとか、お父さんと喧嘩しとか、ピーマン食べれるようになったとか、あとはあれ!おむら(しが治らないとか」 カレン:「(遮って)あ〜〜!!!!!!神様!?もういいです!もういいから!やめて!神様!」 神様:「あ、私あの話が1番好きよ!えーと」 カレン:「か・み・さ・ま??」 神様:「はい。ごめんなさい」 カレン:「はぁ〜それ、絶対誰にも言わないでくださいね!」 神様:「大丈夫よ〜こう見えても私口硬いから安心して!」 カレン:「本当かな〜」 神様:「本当よ!神様を疑うなんてバチ当たりね!」 カレン:「フフッ分かりました。信じます」 神様:「あら。だいぶ日が落ちてきたわね、カレンちゃん時間は大丈夫なの?」 カレン:「え?あっ!もうこんな時間!?私帰らなきゃ、」 神様:「そう、それじゃ気をつけて帰ってね」 カレン:「はい、、、あの。明日も会いに来ていいですか?」 神様:「それは構わないけどーー」 カレン:「(遮って)やった!また来ますね!」 神様:「あっ!ちょっと!もう...忙しい子なんだから」 : 神様:「...また、か。」 0:間 神様:「ふふ。そっか〜もう高校生なのね。見る度見る度に大きくなって、私の指をギュッと握ってくれたあのちっちゃな手も、今じゃ私と同じくらいになっちゃってさ。子供の成長って本当に早いな〜。」 : 神様:「神様。ありがとう。カレンとお話をする機会をくれて本当に嬉しい。でもね、でも!...私、神様が憎いわ。だってそうでしょ。またねなんて言われたら期待しちゃうじゃない...またお話できるかもって期待しちゃうじゃない。私1人に慣れてたのに」 0:次の日 カレン:「神様〜こんにちは」 カレン:「神様?神様ー」 カレン:「うーん」 0:(探し回る) カレン:「もしかして、ここかな!」 神様:「あ・・・」 カレン:「あ・・・」 : カレン:「あの〜」 神様:「ち、違うの!隠れてなんかいないわ!ちょっと出るタイミングを測ってだけなの!」 カレン:「そ、そうですか」 神様:「そう!ちょっと脅かしてあげようってね!」 カレン:「フフッ、そっか。でも良かった」 神様:「え?」 カレン:「また逢えた」 神様:「ッー。そう。そうね...また逢えたわね」 カレン:「昨日、神様と逢ったのはもしかしたら私の夢とか勘違いだったかもしれないって思ってた。だからなんだか嬉しいです。やっぱり神様は居たんですね!」 神様:「えぇ。それは勿論、私はこのお墓の神様ですからね!」 : 神様:「・・・ちゃんと居るわよ」 カレン:「あっそうだ!今日お母さんの好きだったみたらし団子持って来たんです。神様用にもう一個買ってきたので良かったらどうぞ」 神様:「え!ありがと〜!じゃー私のは一緒に食べましょう。私も大好きなの〜」 カレン:「いいんですか?」 神様:「フフッ遠慮しないでいいわよ。カレンちゃんが持ってきた物だし、お供えされた私が言ってるんだから良いの〜」 カレン:「うん!分かりました」 0:間 神様:「すぅ〜。んんんっ!美味しい!やっぱりみたらし団子は最強ねッ!」 カレン:「ほへぇ〜やっぱり匂いを吸って食べるんですね。なんか不思議!それってお腹に溜まるんですか?」 神様:「全然ッ!溜まらない。まぁでもお腹が空くって感覚もないんだけどね〜。ほら〜なんか言うじゃない、趣味じゃなくて、あれ!あれよ..」 カレン:「あれ?」 神様:「そう!あれ、なんだっけ〜今すごい喉まできてるの!あともうちょいで出てきそうなんだけど!」 カレン:「もしかして嗜好?」 神様:「ぁぁああ!そう!嗜好!嗜好よ凄くスッキリ〜嗜好ね!それが言いたかったの〜」 カレン:「ッフフ。合ってて良かった」 : カレン:「でもなんだか、神様って私のお母さんに凄く似てる」 神様:「え...そ、そうなの?」 カレン:「はい!私よくおばあちゃんに生前のお母さんの写った動画とか見せて貰ってたんです。その時のお母さんも神様みたいな反応でみたらし団子食べてて、ふふふ。」 神様:「そ、そうだったのね!カレンちゃんのお母さんとは中々馬が合いそうね!みたらし団子好きに悪い人は居ないわ!」 カレン:「ッふふふ。そうですね。(みたらし団子を食べる)うん、美味しい。」 0:間 神様:「そういえば、昨日最後まで聞けてなかったけど。カレンちゃん遠くの高校に行くの?」 カレン:「あ〜よく覚えてましたね。まだ、悩んでるんです」 神様:「そう。もしよければ、カレンちゃんの悩み事傾聴歴10年以上の私が!お話だけでも聞くわよ」 カレン:「そんなに聴いてたんですか!?恥ずかしいな。でも、確かにそう言われると安心感があります。神様がよければ聴いて欲しいです」 神様:「うん。是非聴かせて」 カレン:「私その...女優さんになりたくて」 神様:「うん」 カレン:「だから高校では演技学びたいなって思ってて、だけどこの辺りの高校じゃ演劇部がなくて、もし行くなら遠くの高校に通わなきゃいけないんです。」 神様:「そうね。」 カレン:「唯、凄く仲の良い友達と昔から同じ高校に行こうねって約束してて、流石にその子に遠い高校まで一緒に来てなんて言えないし、でも、高校では演劇部に入りたいし、どっちを優先したらいいのか、どうしたら良いか考えが纏まんなくて」 神様:「友達か夢かってことね」 カレン:「...うん」 神様:「そっか〜じゃ友達のその子にはカレンちゃんの気持ちは伝えたの?」 カレン:「いや、まだ伝えてないです。嫌な空気なるのが怖くて」 神様:「カレンちゃんそこからよ!!」 カレン:「えっ」 神様:「あのねカレンちゃん。確かに、その事を友達に話すのは不安だし勇気がいる。でもね、何も言わずに近くの高校に友達と一緒に行ったとしても、何も言わずに遠くの高校に行ったとしても、モヤモヤが溜まって後悔しちゃうと思うの」 : 神様:「そして!友達に全部話して嫌な空気になったとしても後悔しちゃうと思うわ」 カレン:「全部後悔しちゃいますね」 神様:「そう。全部ぜーんぶ後悔するの。でも人生ってそんなものじゃない?あの時、もっとこうしてあげれば良かった。もっとお話しすればよかった。もっともっとって何か選択する度に過去に後悔する」 : 神様:「だったら!今1番自分のやりたい事やって、それから後悔すればいい。どんな選択をしたって後悔するならカレンちゃんのやりたいことやればいいと思うよ」 カレン:「・・・」 神様:「あっ!ごめんね!つい熱くなっちゃって... いや。そのね!私はカレンちゃんの味方だから、そのーカレンちゃんのやりたいことを応援するよ!みたいな事が言いたくて...」 カレン:「・・・ふふふっあはは!そっか、そうですね!全部後悔するならか、うん。ありがとう神様」 神様:「え?いえいえ、こちらこそでしゃばった事言っちゃてごめんなさいね」 カレン:「ううん。神様のおかげちょっと前に進めそう」 神様:「そっか。なら良かった」 カレン:「よし!私行ってくる!」 神様:「え?どこに?」 カレン:「友達の所!善は急げっていうし!神様またね〜行ってきます!」 神様:「あ、ちょ!」 : 神様:「あ〜行っちゃった。ふふふ。本当凄い行動力ね。でも良かった〜少しでも晴れた顔になってくれて」 : 神様:「あんなアドバイスしときながら、当の本人はウジウジしちゃって、頑張らないと...」 0:間 カレンM:私は、友達に悩んでいた事を話した。その結果は、「なに?それ先に言ってよ!すごい深刻な顔してるからもっと重大発表かと思った。まじ応援してる!」との事だった。思っていた反応とは違って拍子抜けではあったが、本当に良かった。それからは私は神様の所へよく足を運ぶ様になっていた。色々な談笑をしたり、これからの事を話したりと神様との時間は私の中の日常になりつつあった。そして夏の終わり頃、私はいつもの様に神様に逢いに来ていた。 カレン:「神様〜あれ?神様ー」 : カレン:「あ、前みたい脅かそうと隠れてるんでしょ〜」 : カレン:「ふーんーよしじゃ!探しちゃおう!」 : カレン:「ここ!うーん。ここかな?」 : カレン:「ここでしょ!あれいない」 : カレン:「神様?」 カレンM:夏の終わり。神様は突然居なくなった。 0:長めの間 カレンM:あれから月日が流れ、もう10年も経つ。私は今。東京で夢だった女優をやっている。まだまだ未熟者だがそれなりに充実した日々を送っていると思う。そんな私は今、久しぶりの里帰りをしている。地元を出てから母のお墓には行っていなかった。行くと悲しくなったから。でも、今日だけは行こうと思う。今まであった色んな事をまとめて話そうと思っているから。それに行かないことで後悔したくないから。 カレン:「と言っても、10年は遅すぎだよね。ごめん」 : カレン:「それにしても懐かしいなぁ!全然変わってない」 : カレン:「お母さんのお墓みっけ。久しぶりお母さん」 0:(カレンには神様の声は聞こえていません) 神様:「本当に久しぶりカレン。あらメイクなんてして本当に大人の仲間入りしてるのね〜綺麗ね」 カレン:「お母さんの大好きなみたらし団子とスイートピーのお花持ってきたんだよ〜嬉しい?」 神様:「嬉しいに決まってるじゃない!なんなら嬉しすぎてうるうるしてるわよ!バカ!」 カレン:「何年も来れなくて本当にごめん」 神様:「謝るのは私よ。本当にごめんね」 カレン:「今私ね。東京で女優やってるの。まだまだ駆け出しみたいな物だけどね。でも、舞台の方なんだけど、主演が決まったんだよ」 神様:「本当!?凄いじゃない!凄く頑張ったんだね!カレンは行動力が凄いからそれも絶対生かされてるわ」 カレン:「稽古とか仕事とか大変だけど、凄く楽しし凄く充実してる。あ、後お母さんの舞台の動画とか結構参考にしてるんだよ。演技になると人が変わるから本当に凄い」 神様:「ちょっと!やだ!凄く恥ずかしいだけど...でも、ありがと褒められるのは嫌いじゃないわ」 0:間 カレン:「お母さん、本当にありがとね」 神様:「何もしてないわよ」 カレン:「ちゃんと気づいてるんだから。神様の事も分かってる」 神様:「・・・」 カレン:「私お母さんの娘なんだから...お母さんの事一杯見てきた...全部映像の中だけどさ、それでも私お母さんの事ちゃんと知ってるんだから!どんな風に笑うのか...どんな風に喋るのか...どんな人なのか...私知ってるだから」 神様:「カレン...」 カレン:「お母さんが急にいなくなっちゃったのって多分、私が視えなくなったからだよね。お母さん絶対に何も言わずに消えるなんてしないと思うから」 神様:「ごめんね。変な嘘ついちゃって。本当はすぐにでも言わなきゃって思ってたんだけど中々言い出せなくて、よし言おうと思った時にはもうお話しが出来なくなっちゃってた。カレンあんなアドバイスしておいて、可笑しな話よね。」 カレン:「そんなお母さんの事だから凄く悔やんでる思ってさ。だからこれだけ言っとく!あんなアドバイスしておいて、お母さんの方がダメダメだね!ってね!」 神様:「...ふふふ、そこ慰めるとこじゃないの?」 カレン:「慰めてなんてあげないから!すぐに本当の事言わなかった罰だよ!」 神様:「手厳しいね」 0:間 カレン:「よし!言いたい事言えた!またお墓参りくるからね。前みたいにいっぱいは来れないけど、また来るからね」 神様:「私は良いからやりたい事優先でね。また来てくれるの楽しみに待ってる」 カレン:「お母さん大好きだよ。またね。」 神様:「カレン、私も貴方を愛してる。行ってらっしゃい」

カレンM:私はいつも嫌な事や悩み事があると良く母の墓参りに来ていた。母は既に、私が幼い頃に病気で亡くなっていて、私が覚えているのは、白い病室で私を優しく抱いてくれた母の朧げな姿だけ。どんな風に私に声を掛けてくれたのか、どんな顔で私を抱いてくれたのか、私は殆ど覚えていない。でも、此処に来ると何故か凄く落ち着いた。 カレン:「お母さん〜お参りにきたよ。今日はね、おばあちゃんから聞いたんだけど、お母さんの好きだったお花を持ってきたよ!ほらコレ、スイートピー。」 : カレン:「此処に置いとくね...うん可愛い。」 : カレン:「ねぇねぇ。お母さん。私ねもうすぐ高校生になるんだ。お母さんのお墓参りには小さい頃からよく来てたけどさ。もしかしたら、まだ決まった訳じゃないけど、これからはもうあんまり来れないかもしれない。前も話したけど、私お母さんと一緒の女優さん目指そうと思ってるの、まだ悩んでるだけどね」 神様:「あら!良いじゃない!」 カレン:「えっ・・・」 カレンM:声がする方へ視線を動かすと、そこにはお面で顔を隠した女性が立っていた。驚く私を他所に女性は話を続ける。 神様:「女優さんねぇ。でも凄く大変よ?本気で目指すならやる事いっぱいなんだから〜」 カレン:「・・・」 神様:「でもそっか〜ここら辺じゃ演劇部ある学校ないもんねぇ。だから此処にもこれなくなるって事よね...寂しくなるわ」 カレンM:何故だか直感的に、この女性は人じゃないと分かってしまった。けれど、目を逸らそうにも逸らす事は出来ず釘付けになる。 神様:「うん?えっ...どうしよう凄く目が合ってる気がする...気のせいよね。だって見える訳ないんだし」 カレン:「・・・その、見えてます」 神様:「・・・」 カレン:「・・・」 神様:「・・・え、見えてるの?」 カレン:「はい・・・」 神様:「・・・え?え、えぇええええ!?見えてるぅう!?」 カレン:「あ...はい」 神様:「え、なんで!どうして?カレンが私の事見えちゃってる!なんで!?」 カレン:「え、なんで私の名前知ってるの?」 神様:「えッ...あ、えっと!その。あっ!私はねこのお墓の神様だからよ!カレン、あっ、カレンちゃんの事は知ってるわ。此処にもよく来てくれるしね。あ、でもちょっと待って!殆ど初めましてなのに急にカレンちゃん呼びは嫌よね!?まさか見えるなんて思ってなかったらいつもの癖で呼んじゃって!嫌だったら嫌って言ってね!?他の呼び方考えるわ!それよりも、ほぼ初対面の人に名前知られてたら、そりゃ怖いわよね!でも怖がらないで!怪しい人じゃないから!いやでも待って、人じゃないからこの言い方は違うわよね。あ、こっちだわ!私は怪しい神様じゃありまへぶ(舌を噛む)ッうぅう!?舌噛んだ、、、」 カレン:「・・・ふふッアハハハっ!神様落ち着いてくださいッ。カレンで良いですから、ふふふ。大丈夫ですか?」 神様:「だ、大丈夫よ。ありがと。じゃ、カレンちゃんって呼ぶわね!」 カレン:「はい」 0:間 神様:「・・・」 カレン:「・・・」 神様:「あの〜なんだかごめんなさいね。私、1人で喋るのが癖になってて、いざ何か喋ろうと思ったら、何をどう話していいのかグルングルしちゃって、今ね頭真っ白なの!」 カレン:「ふふふッ。良いですよ無理しなくて、でも、神様ってもっと近寄り難い感じなのかなって思ってました。こうやって実際会ってみるとイメージと結構違いますね」 神様:「なぁに〜私が威厳のない神様だって言いたいの〜?」 カレン:「そこまでは、、、思ってます」 神様:「いや!思ってるんじゃないの!」 カレン:「ふふふ、ごめんなさい。初めましてなのに、なんだか凄く話しやすくてつい。」 神様:「許してあげる。私が寛大な神様でよかったわねぇ〜」 カレン:「はい。助かりました。」 : カレン:「・・・あの」 神様:「うん?どうしたの?」 カレン:「神様はずっと此処にいるんですか?」 神様:「そ、そうね。それは勿論!このお墓の神様ですからね」 カレン:「そっか。じゃ!神様は幽霊が見えたりするんですか?」 神様:「あぁ。ま、まぁ〜ね」 カレン:「ッーあの!!お母さんはお母さんは此処にいますか!?もしいるならなんて言ってますか?」 神様:「・・・カレンちゃんのお母さんは居ないわ。」 カレン:「・・・そう、ですか。」 神様:「そんなに落ち込まないで、此処に居ないっていう事はちゃんと成仏できて天国に行けてるって事なんだから」 カレン:「そっか、そうですよね・・・」 神様:「でも、カレンちゃんのお母さんは天国からいつも見てるわよ。ちゃんとカレンちゃんを見守ってるコレは絶対!だからそんな悲しい顔しないで」 カレン:「うん。そうだよね。神様が言うなら説得力あります。」 神様:「そうでしょ!」 カレン:「でも、どうして急に神様が見えるようになったんだろ?私、霊感なんてこれぽっちも無いと思ってたのに」 神様:「どうしてかしらね、私も急にカレンちゃんとお話しが出来るようになってビックリよ。ビックリしすぎて前半の記憶がないわ...」 カレン:「フフッ凄く焦ってましたもんね。私も神様見た時は驚きましたよ。多分、人じゃないなってなんとなく分かったから、結構焦ってて。でも神様の方が思った以上に焦ってたから逆に落ち着きました」 神様:「思い出してきた...恥ずかしい」 カレン:「あはは。そっかぁ、そう考えると私もなんだか恥ずかしくてなってきた」 神様:「え、なんでよ」 カレン:「いや、だって神様に小さい頃からの私の独り言聴かれてたと思うと...」 神様:「あ〜フフッあれね!好きな子が出来たとか、テストで100点取ったとか、お父さんと喧嘩しとか、ピーマン食べれるようになったとか、あとはあれ!おむら(しが治らないとか」 カレン:「(遮って)あ〜〜!!!!!!神様!?もういいです!もういいから!やめて!神様!」 神様:「あ、私あの話が1番好きよ!えーと」 カレン:「か・み・さ・ま??」 神様:「はい。ごめんなさい」 カレン:「はぁ〜それ、絶対誰にも言わないでくださいね!」 神様:「大丈夫よ〜こう見えても私口硬いから安心して!」 カレン:「本当かな〜」 神様:「本当よ!神様を疑うなんてバチ当たりね!」 カレン:「フフッ分かりました。信じます」 神様:「あら。だいぶ日が落ちてきたわね、カレンちゃん時間は大丈夫なの?」 カレン:「え?あっ!もうこんな時間!?私帰らなきゃ、」 神様:「そう、それじゃ気をつけて帰ってね」 カレン:「はい、、、あの。明日も会いに来ていいですか?」 神様:「それは構わないけどーー」 カレン:「(遮って)やった!また来ますね!」 神様:「あっ!ちょっと!もう...忙しい子なんだから」 : 神様:「...また、か。」 0:間 神様:「ふふ。そっか〜もう高校生なのね。見る度見る度に大きくなって、私の指をギュッと握ってくれたあのちっちゃな手も、今じゃ私と同じくらいになっちゃってさ。子供の成長って本当に早いな〜。」 : 神様:「神様。ありがとう。カレンとお話をする機会をくれて本当に嬉しい。でもね、でも!...私、神様が憎いわ。だってそうでしょ。またねなんて言われたら期待しちゃうじゃない...またお話できるかもって期待しちゃうじゃない。私1人に慣れてたのに」 0:次の日 カレン:「神様〜こんにちは」 カレン:「神様?神様ー」 カレン:「うーん」 0:(探し回る) カレン:「もしかして、ここかな!」 神様:「あ・・・」 カレン:「あ・・・」 : カレン:「あの〜」 神様:「ち、違うの!隠れてなんかいないわ!ちょっと出るタイミングを測ってだけなの!」 カレン:「そ、そうですか」 神様:「そう!ちょっと脅かしてあげようってね!」 カレン:「フフッ、そっか。でも良かった」 神様:「え?」 カレン:「また逢えた」 神様:「ッー。そう。そうね...また逢えたわね」 カレン:「昨日、神様と逢ったのはもしかしたら私の夢とか勘違いだったかもしれないって思ってた。だからなんだか嬉しいです。やっぱり神様は居たんですね!」 神様:「えぇ。それは勿論、私はこのお墓の神様ですからね!」 : 神様:「・・・ちゃんと居るわよ」 カレン:「あっそうだ!今日お母さんの好きだったみたらし団子持って来たんです。神様用にもう一個買ってきたので良かったらどうぞ」 神様:「え!ありがと〜!じゃー私のは一緒に食べましょう。私も大好きなの〜」 カレン:「いいんですか?」 神様:「フフッ遠慮しないでいいわよ。カレンちゃんが持ってきた物だし、お供えされた私が言ってるんだから良いの〜」 カレン:「うん!分かりました」 0:間 神様:「すぅ〜。んんんっ!美味しい!やっぱりみたらし団子は最強ねッ!」 カレン:「ほへぇ〜やっぱり匂いを吸って食べるんですね。なんか不思議!それってお腹に溜まるんですか?」 神様:「全然ッ!溜まらない。まぁでもお腹が空くって感覚もないんだけどね〜。ほら〜なんか言うじゃない、趣味じゃなくて、あれ!あれよ..」 カレン:「あれ?」 神様:「そう!あれ、なんだっけ〜今すごい喉まできてるの!あともうちょいで出てきそうなんだけど!」 カレン:「もしかして嗜好?」 神様:「ぁぁああ!そう!嗜好!嗜好よ凄くスッキリ〜嗜好ね!それが言いたかったの〜」 カレン:「ッフフ。合ってて良かった」 : カレン:「でもなんだか、神様って私のお母さんに凄く似てる」 神様:「え...そ、そうなの?」 カレン:「はい!私よくおばあちゃんに生前のお母さんの写った動画とか見せて貰ってたんです。その時のお母さんも神様みたいな反応でみたらし団子食べてて、ふふふ。」 神様:「そ、そうだったのね!カレンちゃんのお母さんとは中々馬が合いそうね!みたらし団子好きに悪い人は居ないわ!」 カレン:「ッふふふ。そうですね。(みたらし団子を食べる)うん、美味しい。」 0:間 神様:「そういえば、昨日最後まで聞けてなかったけど。カレンちゃん遠くの高校に行くの?」 カレン:「あ〜よく覚えてましたね。まだ、悩んでるんです」 神様:「そう。もしよければ、カレンちゃんの悩み事傾聴歴10年以上の私が!お話だけでも聞くわよ」 カレン:「そんなに聴いてたんですか!?恥ずかしいな。でも、確かにそう言われると安心感があります。神様がよければ聴いて欲しいです」 神様:「うん。是非聴かせて」 カレン:「私その...女優さんになりたくて」 神様:「うん」 カレン:「だから高校では演技学びたいなって思ってて、だけどこの辺りの高校じゃ演劇部がなくて、もし行くなら遠くの高校に通わなきゃいけないんです。」 神様:「そうね。」 カレン:「唯、凄く仲の良い友達と昔から同じ高校に行こうねって約束してて、流石にその子に遠い高校まで一緒に来てなんて言えないし、でも、高校では演劇部に入りたいし、どっちを優先したらいいのか、どうしたら良いか考えが纏まんなくて」 神様:「友達か夢かってことね」 カレン:「...うん」 神様:「そっか〜じゃ友達のその子にはカレンちゃんの気持ちは伝えたの?」 カレン:「いや、まだ伝えてないです。嫌な空気なるのが怖くて」 神様:「カレンちゃんそこからよ!!」 カレン:「えっ」 神様:「あのねカレンちゃん。確かに、その事を友達に話すのは不安だし勇気がいる。でもね、何も言わずに近くの高校に友達と一緒に行ったとしても、何も言わずに遠くの高校に行ったとしても、モヤモヤが溜まって後悔しちゃうと思うの」 : 神様:「そして!友達に全部話して嫌な空気になったとしても後悔しちゃうと思うわ」 カレン:「全部後悔しちゃいますね」 神様:「そう。全部ぜーんぶ後悔するの。でも人生ってそんなものじゃない?あの時、もっとこうしてあげれば良かった。もっとお話しすればよかった。もっともっとって何か選択する度に過去に後悔する」 : 神様:「だったら!今1番自分のやりたい事やって、それから後悔すればいい。どんな選択をしたって後悔するならカレンちゃんのやりたいことやればいいと思うよ」 カレン:「・・・」 神様:「あっ!ごめんね!つい熱くなっちゃって... いや。そのね!私はカレンちゃんの味方だから、そのーカレンちゃんのやりたいことを応援するよ!みたいな事が言いたくて...」 カレン:「・・・ふふふっあはは!そっか、そうですね!全部後悔するならか、うん。ありがとう神様」 神様:「え?いえいえ、こちらこそでしゃばった事言っちゃてごめんなさいね」 カレン:「ううん。神様のおかげちょっと前に進めそう」 神様:「そっか。なら良かった」 カレン:「よし!私行ってくる!」 神様:「え?どこに?」 カレン:「友達の所!善は急げっていうし!神様またね〜行ってきます!」 神様:「あ、ちょ!」 : 神様:「あ〜行っちゃった。ふふふ。本当凄い行動力ね。でも良かった〜少しでも晴れた顔になってくれて」 : 神様:「あんなアドバイスしときながら、当の本人はウジウジしちゃって、頑張らないと...」 0:間 カレンM:私は、友達に悩んでいた事を話した。その結果は、「なに?それ先に言ってよ!すごい深刻な顔してるからもっと重大発表かと思った。まじ応援してる!」との事だった。思っていた反応とは違って拍子抜けではあったが、本当に良かった。それからは私は神様の所へよく足を運ぶ様になっていた。色々な談笑をしたり、これからの事を話したりと神様との時間は私の中の日常になりつつあった。そして夏の終わり頃、私はいつもの様に神様に逢いに来ていた。 カレン:「神様〜あれ?神様ー」 : カレン:「あ、前みたい脅かそうと隠れてるんでしょ〜」 : カレン:「ふーんーよしじゃ!探しちゃおう!」 : カレン:「ここ!うーん。ここかな?」 : カレン:「ここでしょ!あれいない」 : カレン:「神様?」 カレンM:夏の終わり。神様は突然居なくなった。 0:長めの間 カレンM:あれから月日が流れ、もう10年も経つ。私は今。東京で夢だった女優をやっている。まだまだ未熟者だがそれなりに充実した日々を送っていると思う。そんな私は今、久しぶりの里帰りをしている。地元を出てから母のお墓には行っていなかった。行くと悲しくなったから。でも、今日だけは行こうと思う。今まであった色んな事をまとめて話そうと思っているから。それに行かないことで後悔したくないから。 カレン:「と言っても、10年は遅すぎだよね。ごめん」 : カレン:「それにしても懐かしいなぁ!全然変わってない」 : カレン:「お母さんのお墓みっけ。久しぶりお母さん」 0:(カレンには神様の声は聞こえていません) 神様:「本当に久しぶりカレン。あらメイクなんてして本当に大人の仲間入りしてるのね〜綺麗ね」 カレン:「お母さんの大好きなみたらし団子とスイートピーのお花持ってきたんだよ〜嬉しい?」 神様:「嬉しいに決まってるじゃない!なんなら嬉しすぎてうるうるしてるわよ!バカ!」 カレン:「何年も来れなくて本当にごめん」 神様:「謝るのは私よ。本当にごめんね」 カレン:「今私ね。東京で女優やってるの。まだまだ駆け出しみたいな物だけどね。でも、舞台の方なんだけど、主演が決まったんだよ」 神様:「本当!?凄いじゃない!凄く頑張ったんだね!カレンは行動力が凄いからそれも絶対生かされてるわ」 カレン:「稽古とか仕事とか大変だけど、凄く楽しし凄く充実してる。あ、後お母さんの舞台の動画とか結構参考にしてるんだよ。演技になると人が変わるから本当に凄い」 神様:「ちょっと!やだ!凄く恥ずかしいだけど...でも、ありがと褒められるのは嫌いじゃないわ」 0:間 カレン:「お母さん、本当にありがとね」 神様:「何もしてないわよ」 カレン:「ちゃんと気づいてるんだから。神様の事も分かってる」 神様:「・・・」 カレン:「私お母さんの娘なんだから...お母さんの事一杯見てきた...全部映像の中だけどさ、それでも私お母さんの事ちゃんと知ってるんだから!どんな風に笑うのか...どんな風に喋るのか...どんな人なのか...私知ってるだから」 神様:「カレン...」 カレン:「お母さんが急にいなくなっちゃったのって多分、私が視えなくなったからだよね。お母さん絶対に何も言わずに消えるなんてしないと思うから」 神様:「ごめんね。変な嘘ついちゃって。本当はすぐにでも言わなきゃって思ってたんだけど中々言い出せなくて、よし言おうと思った時にはもうお話しが出来なくなっちゃってた。カレンあんなアドバイスしておいて、可笑しな話よね。」 カレン:「そんなお母さんの事だから凄く悔やんでる思ってさ。だからこれだけ言っとく!あんなアドバイスしておいて、お母さんの方がダメダメだね!ってね!」 神様:「...ふふふ、そこ慰めるとこじゃないの?」 カレン:「慰めてなんてあげないから!すぐに本当の事言わなかった罰だよ!」 神様:「手厳しいね」 0:間 カレン:「よし!言いたい事言えた!またお墓参りくるからね。前みたいにいっぱいは来れないけど、また来るからね」 神様:「私は良いからやりたい事優先でね。また来てくれるの楽しみに待ってる」 カレン:「お母さん大好きだよ。またね。」 神様:「カレン、私も貴方を愛してる。行ってらっしゃい」