台本概要
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タイトル | 娘さんを僕にください① アルバイトの父 編 |
---|---|
作者名 | とーげ (@studioTOGE) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 4人用台本(男2、女2) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
コントの定番「娘さんをください」です。 娘の父親は、彼氏が店長を務めるファミリーレストランのアルバイトだった。 威厳が失われた父の思いが炸裂するホームコメディ愛憎劇! 【人数】…男2女2(計4) 【時間】…10〜15分 ※商用利用時は、ご連絡お願いします。 ※台本の無断改変・無断転載などはご遠慮ください。 578 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
父 | 男 | 62 | 渡辺(60代)…ファミレスのバイト。厳格 |
母 | 女 | 47 | 母(50代)...専業主婦。愛情深い |
娘 | 女 | 45 | 久美子(20代)…ファミレスの常連客。キレると怖い |
彼氏 | 男 | 56 | 田中(30代)...ファミレスの店長。協調的 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:『娘さんを僕にください① アルバイトの父 編』
0:実家のリビング。
0:娘とその彼氏が並んで座っている。そしてテーブルをはさんだ先に、娘の父と母が座る。
0:父は腕を組み、彼氏は大量の汗をかき、ものすごい緊張感である…
彼氏:お父さん。
彼氏:どうか、娘さんを僕にください!
父:君と私は、どこかで会ったことがあるよね?
彼氏:(気まずそうに)はい
娘:嘘でしょ。
娘:お父さん、気づいてなかったの?
父:お前は黙っていなさい
母:もしかして、初対面じゃないってこと?
父:週3で会ってる
母:そんなにー!?
父:私のことを覚えているか?
彼氏:そりゃ週に3日も会っていれば。
彼氏:シフトによっては4日の時もあるし
父:なんだその言い方は。
父:私の顔は見飽きたと言いたいのか!?
彼氏:そんなことは
娘:お父さん。
娘:田中さんにそんな偉そうな口聞いて良いわけ?
父:いいい、良いに決まってるだろ!?
父:おれはお前の父親だぞ
父:(彼氏に)そう、そうですよね?
彼氏:も、もちろんです!
父:ほれみろ
娘:うぜー
母:(父に)ちょっと。
母:田中さんと、どこでそんな会っているのよ?
父:駅前のファミリーレストラン。
父:だよな?
彼氏:はい
母:ファミリーレストラン!?
母:なんでまた
娘:推しがいるんだよ
母:推しって?
娘:お気に入りのアルバイトの子がいるみたい
母:えっ、アルバイト目当てに通いつめているの?
娘:しかも女子高生だよ
母:JK!? やだ、もうお父さんったら
父:ち、ちがう(むせる)
娘:全身から甘い良い匂いがして、癒されるんだって
母:リアルで気色悪いわね。
母:出禁にした方が良いんじゃない?
父:違う! 私は客じゃない!
母:じゃあ何?
彼氏:渡辺さんは…アルバイトです
母:アルバイト!? え、誰が?
父:私だ
母:ひえ〜
父:そして彼が、そこの店長だ。
父:(彼氏に)そう、そうですよね?
彼氏:(気まずそうに)はい
母:冗談でしょ。そんな夢みたいな話
彼氏:夢ならばどれほど良かったでしょう
娘:これは現実だよ
母:お父さんがアルバイトで、田中さんがそこの店長なの?
父:そう言っているだろ、何度も言わせるな
母:悲惨
父:なに?
母:悲惨すぎるわ。
母:会社をリストラされて働きはじめたバイト先の店長が、久美子の旦那さんだなんて
父:私はまだ結婚を認めていない!
母:バイトにそんな権限はありませーん
父:なんだと
娘:確かに。
娘:バイトはバイトでも、せめてバイトリーダーくらいのポジションになってもらわなきゃ、人の結婚に口出しできないよね
父:(彼氏に)おい。
父:今すぐ店長代理に昇格させろ!
彼氏:待ってください! 僕もびっくりで
父:何がだ
彼氏:これが夢じゃなくて現実だってことに…
娘:目を覚ませー!(彼氏に平手打ち)
彼氏:いたい、いたい、いたい、いたい
父:(引く)そ、そのへんにしておけ
彼氏:まさか久美子さんのお父さんが、渡辺さんだったなんて…
母:(娘に)言ってなかったの?
娘:言ったら、田中さん。
娘:お父さんに気をつかうと思って
母:そうね
彼氏:もし分かっていたら採用してないですよ
父:なぜだ!?
母:気まずいからでしょ
娘:そういえば、お父さんよく田中さんに店の裏に連れて行かれてた
母:店の裏? なんでまた
彼氏:できるだけ人の目にふれない所で、なんていうか、その
母:オヤジ狩り!?
彼氏:違いますよ!
母:残念だけど、この人500円玉しか持ってないわよ
父:おい
母:本当のことでしょ
父:それは…小遣いが少ないから
母:は?
父:うそ、うそ。冗談ですよ〜
父:(愛想笑い)あは、あははっ
母:何その気持ち悪い笑顔
娘:お父さん、こうやって仕事のミスを愛想笑いでごまかすの、窓越しに何度も見た
母:つまり人前で叱るのを遠慮して、店の裏に連れて行ってたのね
彼氏:(気まずそうに)はい…
娘:田中さん優しい
彼氏:いや、そんなこと
娘:田中さん、だいすき
彼氏:僕も…久美子さんのこと/
父:あー!!!!?
彼氏:あぁ、良いとこなのに
父:おい、久美子。
父:私がいる時間帯に、いつも店にいたよな?
娘:うん。それが何?
父:もしや!?
父:汗水たらして働く私の応援じゃなくて、コイツに会いに来ていたのか!?
母:コイツ?
父:んぐっ、て、店長に
彼氏:コイツで大丈夫です
娘:そうだよ。悪い?
娘:ちなみに私は週5で通う常連客だから
父:常連客ってお前な。
父:週5で、しかもピークの時間帯にドリンクバーだけでねばるんじゃないよ!
父:クレーマーよりタチ悪いぞ
娘:なにそれ、今までそんなこと一度も言わなかったのに
父:それは父である私を心配して見守っていると思ったからだ。
父:でもこの男に会いに来ていたなら話は別だ。勘当だ!
彼氏:渡辺さん、お、落ち着いて/
娘:(舌打ち)バイトのくせに偉そうに
父:なんだと?
娘:私はね、店長の嫁よ!
娘:たかがバイトの分際で誰に口聞いているのよ!?
父:すごいこと言うんだな
彼氏:久美子さんも、お、落ち着いて
娘:喜んで! 店長様がそう言うなら。
娘:だいすき
彼氏:僕も…久美子さんのこと/
父:茶番はやめろ!
彼氏:あぁ、もう! 良いとこなのに
父:文句あるか?
父:恋人の父親にクレームつける気か?
彼氏:申し訳ございません!
母:あなたバイトなのかクレーマーなのか分からないわね
娘:(彼氏に)時給下げちゃえば?
父:久美子!
父:そんなに私のことが気に入らないなら、今すぐこの家から出ていけ!
母:バイトにそんな権限はありませーん
父:(母に)お前も出ていけー!
母:はぁ?(怒り)
父:うそ、うそ。冗談ですよ〜
父:(愛想笑い)あは、あははっ
母:私が出て行ったら、あなた一人で生活していけると思っているの
父:そ、それは
母:今だに洗濯機ひとつ回せないでしょ。
母:そんなんだからバイトでも同じミス繰り返すんじゃないの!?
父:(母に)社会にでてないお前に何が分かるって言うんだ!?
母:かちーん
娘:あーあ、地雷踏んじゃった
彼氏:店のSNSを渡辺さんに任せると、すぐ炎上するんだよ
娘:なんで任せるの? だめじゃない?
彼氏:だって立候補するから。
彼氏:広報の経験があるから心配ないって言うし
娘:あぁ、言いそう
母:あなたね、私の500円貯金箱から何度もこっそりお金取っているの。
母:気がついてないと思っているの?
父:いや、え、あの、ちょっと借りただけじゃないか
娘:最っ低
彼氏:だからさっき500円玉しか持ってないって
父:うるさい。
父:そもそもファミレスの時給が低いのが問題だ!
彼氏:渡辺さん。今のは本音ですか?
父:うそ、うそ。冗談ですよ〜、店長。
父:(愛想笑い)あは、あははっ
彼氏:その気持ち悪い笑顔は、すでに本部に報告済みです
父:やばくない?
娘:家でも店でも炎上かい。
娘:消防車 呼ぶ?
母:泥棒だから、110番。
母:警察呼んでちょうだい
父:やめてー!
彼氏:あの! 一度ちゃんと落ち着きましょう
父:それは指図か?
彼氏:指図?
父:店長としての威厳を、この家にまで持ち込むつもりか!?
彼氏:だから、そんなつもりありませんよ
娘:お父さん、もうちょっと田中さんに寄りそってさ/
父:久美子! お前は知っているのか?
娘:なに?
父:この男がアルバイトのJKに言い寄っているのを
娘:はぁ?(怒)
母:あら〜、形勢逆転かしら
彼氏:いやいや、ないよ。ないない
父:嘘をつくな。
父:おととい、みっちゃんを店の裏に連れて行くのを見たぞ
彼氏:あ、あれは
娘:え? わたし知らない。
娘:あ、ファンタメロン20杯目の時かな…
父:ファンタだけ減りが異常なのは、お前のせいか
彼氏:ぜひコーラとスプライトも飲んでほしい
母:待って。
母:でも店の裏ってことは、あなたと同じお説教なのでは?
父:いいや、店に戻ってきたコイツの全身から、ほら、あの、いちごオレと同じあまーいピンクの匂いが…。
父:なぁ。分かるだろ?
母:恋ね
娘:うりゃ、うりゃ、うりゃ、うりゃ(彼氏に拳)
彼氏:いたい、いたい、いたい、いたい。
彼氏:ぐ、グーパンチ!?
父:ラブラブだな
彼氏:どこがー?
娘:お母さん、110番して。
娘:新婚初日に殺人事件が発生したって
彼氏:殺すつもり!?
父:私はまだ結婚を認めていない!
母:『不倫』と『浮気』の狭間(はざま)にいる男、田中店長
彼氏:どちらも地獄。
彼氏:あれは本当にただ相談にのって
父:相談? なんだ相談って?
彼氏:言えません
娘:言えない相談ってなんだよ。
娘:詐欺師に金ふんだくられたか?
娘:唐揚げの正しいレモンのしぼり方を聞かれたか?
娘:それともオナラが止まらない相談でもされたのか!?
彼氏:オナラが止まらないなら、とりあえずファンタ飲むのやめたら
娘:は?
彼氏:オナラ100回でたら死んじゃうって説もあるし
娘:私の話じゃねー!
娘:そもそもそれは、オナラじゃなくてゲップだろ
母:しゃっくりでしょ
娘:そうだっけ?
父:なんでも良いがナイショの話は
父:恋愛相談だろ?
父:みっちゃんに『店長のこと好きになっちゃいました。どうしよう?』
父:って、言われたんだろ!?
彼氏:もうやめてください!
娘:じゃあ何だよ?
彼氏:それは…
母:秘密にするなら、結婚は認められないわね
父:当然
彼氏:そんな…
娘:ドリンクバー全部いちごオレになる呪いかけてやる
彼氏:えー
母:ファンタじゃなくて良いの?
娘:田中はいちごオレが飲めないから。
娘:嫌がらせ
母:ふーん、なるほど…
娘:果物アレルギーだし、そもそも甘ったるい飲み物が全然ダメ
母:え? じゃあなんで田中さんから、いちごオレの/
彼氏:あの!
彼氏:実は、渡辺さんのことで相談されて
父:私? な、なにかな?(期待)
彼氏:渡辺さんにあだ名で呼ばれるのが気持ち悪いって
父:うそ…みっちゃんが
娘:うわ。セクハラじゃん
彼氏:他にも渡辺さんに対するクレームが山のように
母:どんな?
彼氏:お会計を間違えておじいさんに怒鳴られたり、ドリンクバーの補充が遅いって常連客に睨まれたり
父:店長!?
父:それはコイツがファンタばかり飲むからですよ!
娘:知らんぷり
父:知らんぷりするな!
彼氏:フロアで働く同僚からも
彼氏:『コイツ、マトモニ リョウリ ハコベナイ ニャ。キュウリョウ ドロボウ』
彼氏:とか言われたりもして
母:猫型の配膳ロボットからもクレームきてるの?
娘:そういえばお父さん、よくロボットに体当たりしてる/
父:(食い気味に)よーし、分かった!
父:結婚を認めよう!
彼氏:あ、ありがとうございます!
娘:やったー!
母:良かったわね
父:ただし、条件がある
彼氏:条件…なんですか?
父:みっちゃんのLINEのID教えて
彼氏:あなた、クビです
0:(了)
:『娘さんを僕にください① アルバイトの父 編』
0:実家のリビング。
0:娘とその彼氏が並んで座っている。そしてテーブルをはさんだ先に、娘の父と母が座る。
0:父は腕を組み、彼氏は大量の汗をかき、ものすごい緊張感である…
彼氏:お父さん。
彼氏:どうか、娘さんを僕にください!
父:君と私は、どこかで会ったことがあるよね?
彼氏:(気まずそうに)はい
娘:嘘でしょ。
娘:お父さん、気づいてなかったの?
父:お前は黙っていなさい
母:もしかして、初対面じゃないってこと?
父:週3で会ってる
母:そんなにー!?
父:私のことを覚えているか?
彼氏:そりゃ週に3日も会っていれば。
彼氏:シフトによっては4日の時もあるし
父:なんだその言い方は。
父:私の顔は見飽きたと言いたいのか!?
彼氏:そんなことは
娘:お父さん。
娘:田中さんにそんな偉そうな口聞いて良いわけ?
父:いいい、良いに決まってるだろ!?
父:おれはお前の父親だぞ
父:(彼氏に)そう、そうですよね?
彼氏:も、もちろんです!
父:ほれみろ
娘:うぜー
母:(父に)ちょっと。
母:田中さんと、どこでそんな会っているのよ?
父:駅前のファミリーレストラン。
父:だよな?
彼氏:はい
母:ファミリーレストラン!?
母:なんでまた
娘:推しがいるんだよ
母:推しって?
娘:お気に入りのアルバイトの子がいるみたい
母:えっ、アルバイト目当てに通いつめているの?
娘:しかも女子高生だよ
母:JK!? やだ、もうお父さんったら
父:ち、ちがう(むせる)
娘:全身から甘い良い匂いがして、癒されるんだって
母:リアルで気色悪いわね。
母:出禁にした方が良いんじゃない?
父:違う! 私は客じゃない!
母:じゃあ何?
彼氏:渡辺さんは…アルバイトです
母:アルバイト!? え、誰が?
父:私だ
母:ひえ〜
父:そして彼が、そこの店長だ。
父:(彼氏に)そう、そうですよね?
彼氏:(気まずそうに)はい
母:冗談でしょ。そんな夢みたいな話
彼氏:夢ならばどれほど良かったでしょう
娘:これは現実だよ
母:お父さんがアルバイトで、田中さんがそこの店長なの?
父:そう言っているだろ、何度も言わせるな
母:悲惨
父:なに?
母:悲惨すぎるわ。
母:会社をリストラされて働きはじめたバイト先の店長が、久美子の旦那さんだなんて
父:私はまだ結婚を認めていない!
母:バイトにそんな権限はありませーん
父:なんだと
娘:確かに。
娘:バイトはバイトでも、せめてバイトリーダーくらいのポジションになってもらわなきゃ、人の結婚に口出しできないよね
父:(彼氏に)おい。
父:今すぐ店長代理に昇格させろ!
彼氏:待ってください! 僕もびっくりで
父:何がだ
彼氏:これが夢じゃなくて現実だってことに…
娘:目を覚ませー!(彼氏に平手打ち)
彼氏:いたい、いたい、いたい、いたい
父:(引く)そ、そのへんにしておけ
彼氏:まさか久美子さんのお父さんが、渡辺さんだったなんて…
母:(娘に)言ってなかったの?
娘:言ったら、田中さん。
娘:お父さんに気をつかうと思って
母:そうね
彼氏:もし分かっていたら採用してないですよ
父:なぜだ!?
母:気まずいからでしょ
娘:そういえば、お父さんよく田中さんに店の裏に連れて行かれてた
母:店の裏? なんでまた
彼氏:できるだけ人の目にふれない所で、なんていうか、その
母:オヤジ狩り!?
彼氏:違いますよ!
母:残念だけど、この人500円玉しか持ってないわよ
父:おい
母:本当のことでしょ
父:それは…小遣いが少ないから
母:は?
父:うそ、うそ。冗談ですよ〜
父:(愛想笑い)あは、あははっ
母:何その気持ち悪い笑顔
娘:お父さん、こうやって仕事のミスを愛想笑いでごまかすの、窓越しに何度も見た
母:つまり人前で叱るのを遠慮して、店の裏に連れて行ってたのね
彼氏:(気まずそうに)はい…
娘:田中さん優しい
彼氏:いや、そんなこと
娘:田中さん、だいすき
彼氏:僕も…久美子さんのこと/
父:あー!!!!?
彼氏:あぁ、良いとこなのに
父:おい、久美子。
父:私がいる時間帯に、いつも店にいたよな?
娘:うん。それが何?
父:もしや!?
父:汗水たらして働く私の応援じゃなくて、コイツに会いに来ていたのか!?
母:コイツ?
父:んぐっ、て、店長に
彼氏:コイツで大丈夫です
娘:そうだよ。悪い?
娘:ちなみに私は週5で通う常連客だから
父:常連客ってお前な。
父:週5で、しかもピークの時間帯にドリンクバーだけでねばるんじゃないよ!
父:クレーマーよりタチ悪いぞ
娘:なにそれ、今までそんなこと一度も言わなかったのに
父:それは父である私を心配して見守っていると思ったからだ。
父:でもこの男に会いに来ていたなら話は別だ。勘当だ!
彼氏:渡辺さん、お、落ち着いて/
娘:(舌打ち)バイトのくせに偉そうに
父:なんだと?
娘:私はね、店長の嫁よ!
娘:たかがバイトの分際で誰に口聞いているのよ!?
父:すごいこと言うんだな
彼氏:久美子さんも、お、落ち着いて
娘:喜んで! 店長様がそう言うなら。
娘:だいすき
彼氏:僕も…久美子さんのこと/
父:茶番はやめろ!
彼氏:あぁ、もう! 良いとこなのに
父:文句あるか?
父:恋人の父親にクレームつける気か?
彼氏:申し訳ございません!
母:あなたバイトなのかクレーマーなのか分からないわね
娘:(彼氏に)時給下げちゃえば?
父:久美子!
父:そんなに私のことが気に入らないなら、今すぐこの家から出ていけ!
母:バイトにそんな権限はありませーん
父:(母に)お前も出ていけー!
母:はぁ?(怒り)
父:うそ、うそ。冗談ですよ〜
父:(愛想笑い)あは、あははっ
母:私が出て行ったら、あなた一人で生活していけると思っているの
父:そ、それは
母:今だに洗濯機ひとつ回せないでしょ。
母:そんなんだからバイトでも同じミス繰り返すんじゃないの!?
父:(母に)社会にでてないお前に何が分かるって言うんだ!?
母:かちーん
娘:あーあ、地雷踏んじゃった
彼氏:店のSNSを渡辺さんに任せると、すぐ炎上するんだよ
娘:なんで任せるの? だめじゃない?
彼氏:だって立候補するから。
彼氏:広報の経験があるから心配ないって言うし
娘:あぁ、言いそう
母:あなたね、私の500円貯金箱から何度もこっそりお金取っているの。
母:気がついてないと思っているの?
父:いや、え、あの、ちょっと借りただけじゃないか
娘:最っ低
彼氏:だからさっき500円玉しか持ってないって
父:うるさい。
父:そもそもファミレスの時給が低いのが問題だ!
彼氏:渡辺さん。今のは本音ですか?
父:うそ、うそ。冗談ですよ〜、店長。
父:(愛想笑い)あは、あははっ
彼氏:その気持ち悪い笑顔は、すでに本部に報告済みです
父:やばくない?
娘:家でも店でも炎上かい。
娘:消防車 呼ぶ?
母:泥棒だから、110番。
母:警察呼んでちょうだい
父:やめてー!
彼氏:あの! 一度ちゃんと落ち着きましょう
父:それは指図か?
彼氏:指図?
父:店長としての威厳を、この家にまで持ち込むつもりか!?
彼氏:だから、そんなつもりありませんよ
娘:お父さん、もうちょっと田中さんに寄りそってさ/
父:久美子! お前は知っているのか?
娘:なに?
父:この男がアルバイトのJKに言い寄っているのを
娘:はぁ?(怒)
母:あら〜、形勢逆転かしら
彼氏:いやいや、ないよ。ないない
父:嘘をつくな。
父:おととい、みっちゃんを店の裏に連れて行くのを見たぞ
彼氏:あ、あれは
娘:え? わたし知らない。
娘:あ、ファンタメロン20杯目の時かな…
父:ファンタだけ減りが異常なのは、お前のせいか
彼氏:ぜひコーラとスプライトも飲んでほしい
母:待って。
母:でも店の裏ってことは、あなたと同じお説教なのでは?
父:いいや、店に戻ってきたコイツの全身から、ほら、あの、いちごオレと同じあまーいピンクの匂いが…。
父:なぁ。分かるだろ?
母:恋ね
娘:うりゃ、うりゃ、うりゃ、うりゃ(彼氏に拳)
彼氏:いたい、いたい、いたい、いたい。
彼氏:ぐ、グーパンチ!?
父:ラブラブだな
彼氏:どこがー?
娘:お母さん、110番して。
娘:新婚初日に殺人事件が発生したって
彼氏:殺すつもり!?
父:私はまだ結婚を認めていない!
母:『不倫』と『浮気』の狭間(はざま)にいる男、田中店長
彼氏:どちらも地獄。
彼氏:あれは本当にただ相談にのって
父:相談? なんだ相談って?
彼氏:言えません
娘:言えない相談ってなんだよ。
娘:詐欺師に金ふんだくられたか?
娘:唐揚げの正しいレモンのしぼり方を聞かれたか?
娘:それともオナラが止まらない相談でもされたのか!?
彼氏:オナラが止まらないなら、とりあえずファンタ飲むのやめたら
娘:は?
彼氏:オナラ100回でたら死んじゃうって説もあるし
娘:私の話じゃねー!
娘:そもそもそれは、オナラじゃなくてゲップだろ
母:しゃっくりでしょ
娘:そうだっけ?
父:なんでも良いがナイショの話は
父:恋愛相談だろ?
父:みっちゃんに『店長のこと好きになっちゃいました。どうしよう?』
父:って、言われたんだろ!?
彼氏:もうやめてください!
娘:じゃあ何だよ?
彼氏:それは…
母:秘密にするなら、結婚は認められないわね
父:当然
彼氏:そんな…
娘:ドリンクバー全部いちごオレになる呪いかけてやる
彼氏:えー
母:ファンタじゃなくて良いの?
娘:田中はいちごオレが飲めないから。
娘:嫌がらせ
母:ふーん、なるほど…
娘:果物アレルギーだし、そもそも甘ったるい飲み物が全然ダメ
母:え? じゃあなんで田中さんから、いちごオレの/
彼氏:あの!
彼氏:実は、渡辺さんのことで相談されて
父:私? な、なにかな?(期待)
彼氏:渡辺さんにあだ名で呼ばれるのが気持ち悪いって
父:うそ…みっちゃんが
娘:うわ。セクハラじゃん
彼氏:他にも渡辺さんに対するクレームが山のように
母:どんな?
彼氏:お会計を間違えておじいさんに怒鳴られたり、ドリンクバーの補充が遅いって常連客に睨まれたり
父:店長!?
父:それはコイツがファンタばかり飲むからですよ!
娘:知らんぷり
父:知らんぷりするな!
彼氏:フロアで働く同僚からも
彼氏:『コイツ、マトモニ リョウリ ハコベナイ ニャ。キュウリョウ ドロボウ』
彼氏:とか言われたりもして
母:猫型の配膳ロボットからもクレームきてるの?
娘:そういえばお父さん、よくロボットに体当たりしてる/
父:(食い気味に)よーし、分かった!
父:結婚を認めよう!
彼氏:あ、ありがとうございます!
娘:やったー!
母:良かったわね
父:ただし、条件がある
彼氏:条件…なんですか?
父:みっちゃんのLINEのID教えて
彼氏:あなた、クビです
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