台本概要
182 views
タイトル | 「せみしぐれ」 |
---|---|
作者名 | なぎ@泣き虫保護者 (@fuyu_number10) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 1人用台本(女1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
Twitter(現X)にて三題噺メーカーを使って出たお題に沿って書いたショートショートです。 読み手は女性を想定していますが、ご自由にお読みいただいて大丈夫です。 ぜひお芝居のウォームアップや活舌練習にお使いください。 ※台本をご利用になる際は、Twitterにてぜひお報せくださいませ。 お伺いできる限りお邪魔させていただければと存じます。 特に商用利用の場合において、著作権は放棄していません。無断での転載はお断りします。 182 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
私 | 女 | 28 | 読み手の皆様です。女性を想定していますが、ご自由にどうぞ。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
私:私には時間がない。タイムリミットがある。
私:お医者さんには、そうずっと言われてきた。
0:
私:どうしても、その時がやってくるまでに、伝えたい。
私:あの人に、私の気持ちを。それなのに。
0:
私:「はあ・・・」
0:
私:部屋のベッドの上、仰向け(あおむけ)に寝そべる私。
私:夏休みが、もうすぐ終わる。
0:
私:課題は、まだ終わってない。
私:もう少しで終わるのだけれど、手を付ける気に、ならない。
0:
私:どうせ、この課題を終えたところで・・・。
0:
私:悲観的になっているわけじゃない。
私:課題を終わらせなければ、先生に怒られるだろう。
私:それくらいのことは・・・わかってる。
0:
私:外はうっとうしいほどの轟音。
私:蝉(せみ)の合唱だ。
私:それに負けないほどの、私の咳(せき)。
0:
私:十数秒は止まらなかった。
私:えづいて吐きそうにもなった。
私:けれど、・・・まだ大丈夫そう。
0:
私:ふと、時計を見る。
私:地域の納涼祭りまで、あと少しだ。
0:
私:着信音が、鳴った。
0:
私:少し逡巡してから、通話ボタンをタップする。
私:あの人だった。
私:夕方の6時。鳥居の下で、待ってる。
私:たったそれだけの、確認。
0:
私:胸の高鳴りは、身体への警告のサインか、
私:それとも、純粋な気持ちが招く、ドキドキなのか。
私:もはやそれすら判別できなくなっている。
0:
私:気持ちを落ち着かせるように机に戻る。
私:鏡を取り出して、簡単にメイクして、
私:はた、と爪を見る。
私:伸びてるなぁ、けっこう・・・。
0:
私:ぱち、ぱちっ、と手際よく爪を切って、
私:簡単にやすりがけ。
0:
私:髪は簡単にブラッシングするだけで整ってくれた。
私:私はあまりがっつりとメイクをする方ではない。
私:なのでこういうのは、地味に助かっている。
0:
私:勝負服、なんていうものも、欲しいと思わなかったので、
私:クローゼットからローテーションの一つにしている服に着替える。
0:
私:外に出ると、昼間のうだるような暑さは、
私:夕方の風にかき回されて、なおいっそう、鬱陶しさ(うっとうしさ)を増していた。
0:
私:こつ、こつ、と私のミュールの音だけが聞こえる、祭りの会場への道。
私:地域の他の子は、みんな逸る(はやる)気持ちを抑えられなくて、
私:もう着いているのだろう。
0:
私:17時55分。
私:鳥居の前には、もうあの人がいた。
私:ああ、いつもの、でもいつまでも見ていたい、優しい笑顔。
私:今日は何だか照れ臭さも交じって。そんな可愛いところも大好きだ。
私:それも、伝えよう。
私:読み進めて重なった本のページのように、ゆっくりと積み重なった想いを。
0:
私:売り子さんの慌てた声。お祭りに来た人の悲鳴と、ざわめき。
私:大好きな彼の、・・・爪先(つまさき)。
私:「救急です!はい、はい・・・!」
0:
私:そっかぁ・・・間に合わなかったのか・・・。
0:
私:ああ、もうすぐで、伝えられたのにな・・・。
0:
私:諦めたく・・・なかったな・・・。
私:でも、・・・ずっと言えなかった、罰、なのかな・・・。
0:
私:ありがとう?さよなら?大好き?
0:
私:言いたかったことが・・・全部、伝わらないまま・・・。
0:
私:この世界からいなくなることを、許してね・・・。
0:
私:蝉(せみ)しぐれだけが。いつものように鳴いていた。
0:
0:-おしまい。-
0:
私:私には時間がない。タイムリミットがある。
私:お医者さんには、そうずっと言われてきた。
0:
私:どうしても、その時がやってくるまでに、伝えたい。
私:あの人に、私の気持ちを。それなのに。
0:
私:「はあ・・・」
0:
私:部屋のベッドの上、仰向け(あおむけ)に寝そべる私。
私:夏休みが、もうすぐ終わる。
0:
私:課題は、まだ終わってない。
私:もう少しで終わるのだけれど、手を付ける気に、ならない。
0:
私:どうせ、この課題を終えたところで・・・。
0:
私:悲観的になっているわけじゃない。
私:課題を終わらせなければ、先生に怒られるだろう。
私:それくらいのことは・・・わかってる。
0:
私:外はうっとうしいほどの轟音。
私:蝉(せみ)の合唱だ。
私:それに負けないほどの、私の咳(せき)。
0:
私:十数秒は止まらなかった。
私:えづいて吐きそうにもなった。
私:けれど、・・・まだ大丈夫そう。
0:
私:ふと、時計を見る。
私:地域の納涼祭りまで、あと少しだ。
0:
私:着信音が、鳴った。
0:
私:少し逡巡してから、通話ボタンをタップする。
私:あの人だった。
私:夕方の6時。鳥居の下で、待ってる。
私:たったそれだけの、確認。
0:
私:胸の高鳴りは、身体への警告のサインか、
私:それとも、純粋な気持ちが招く、ドキドキなのか。
私:もはやそれすら判別できなくなっている。
0:
私:気持ちを落ち着かせるように机に戻る。
私:鏡を取り出して、簡単にメイクして、
私:はた、と爪を見る。
私:伸びてるなぁ、けっこう・・・。
0:
私:ぱち、ぱちっ、と手際よく爪を切って、
私:簡単にやすりがけ。
0:
私:髪は簡単にブラッシングするだけで整ってくれた。
私:私はあまりがっつりとメイクをする方ではない。
私:なのでこういうのは、地味に助かっている。
0:
私:勝負服、なんていうものも、欲しいと思わなかったので、
私:クローゼットからローテーションの一つにしている服に着替える。
0:
私:外に出ると、昼間のうだるような暑さは、
私:夕方の風にかき回されて、なおいっそう、鬱陶しさ(うっとうしさ)を増していた。
0:
私:こつ、こつ、と私のミュールの音だけが聞こえる、祭りの会場への道。
私:地域の他の子は、みんな逸る(はやる)気持ちを抑えられなくて、
私:もう着いているのだろう。
0:
私:17時55分。
私:鳥居の前には、もうあの人がいた。
私:ああ、いつもの、でもいつまでも見ていたい、優しい笑顔。
私:今日は何だか照れ臭さも交じって。そんな可愛いところも大好きだ。
私:それも、伝えよう。
私:読み進めて重なった本のページのように、ゆっくりと積み重なった想いを。
0:
私:売り子さんの慌てた声。お祭りに来た人の悲鳴と、ざわめき。
私:大好きな彼の、・・・爪先(つまさき)。
私:「救急です!はい、はい・・・!」
0:
私:そっかぁ・・・間に合わなかったのか・・・。
0:
私:ああ、もうすぐで、伝えられたのにな・・・。
0:
私:諦めたく・・・なかったな・・・。
私:でも、・・・ずっと言えなかった、罰、なのかな・・・。
0:
私:ありがとう?さよなら?大好き?
0:
私:言いたかったことが・・・全部、伝わらないまま・・・。
0:
私:この世界からいなくなることを、許してね・・・。
0:
私:蝉(せみ)しぐれだけが。いつものように鳴いていた。
0:
0:-おしまい。-
0: