台本概要

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タイトル 「せみしぐれ」
作者名 なぎ@泣き虫保護者  (@fuyu_number10)
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(女1)
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 Twitter(現X)にて三題噺メーカーを使って出たお題に沿って書いたショートショートです。

読み手は女性を想定していますが、ご自由にお読みいただいて大丈夫です。

ぜひお芝居のウォームアップや活舌練習にお使いください。

※台本をご利用になる際は、Twitterにてぜひお報せくださいませ。
お伺いできる限りお邪魔させていただければと存じます。

特に商用利用の場合において、著作権は放棄していません。無断での転載はお断りします。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
28 読み手の皆様です。女性を想定していますが、ご自由にどうぞ。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
私:私には時間がない。タイムリミットがある。 私:お医者さんには、そうずっと言われてきた。 0: 私:どうしても、その時がやってくるまでに、伝えたい。 私:あの人に、私の気持ちを。それなのに。 0: 私:「はあ・・・」 0: 私:部屋のベッドの上、仰向け(あおむけ)に寝そべる私。 私:夏休みが、もうすぐ終わる。 0: 私:課題は、まだ終わってない。 私:もう少しで終わるのだけれど、手を付ける気に、ならない。 0: 私:どうせ、この課題を終えたところで・・・。 0: 私:悲観的になっているわけじゃない。 私:課題を終わらせなければ、先生に怒られるだろう。 私:それくらいのことは・・・わかってる。 0: 私:外はうっとうしいほどの轟音。 私:蝉(せみ)の合唱だ。 私:それに負けないほどの、私の咳(せき)。 0: 私:十数秒は止まらなかった。 私:えづいて吐きそうにもなった。 私:けれど、・・・まだ大丈夫そう。 0: 私:ふと、時計を見る。 私:地域の納涼祭りまで、あと少しだ。 0: 私:着信音が、鳴った。 0: 私:少し逡巡してから、通話ボタンをタップする。 私:あの人だった。 私:夕方の6時。鳥居の下で、待ってる。 私:たったそれだけの、確認。 0: 私:胸の高鳴りは、身体への警告のサインか、 私:それとも、純粋な気持ちが招く、ドキドキなのか。 私:もはやそれすら判別できなくなっている。 0: 私:気持ちを落ち着かせるように机に戻る。 私:鏡を取り出して、簡単にメイクして、 私:はた、と爪を見る。 私:伸びてるなぁ、けっこう・・・。 0: 私:ぱち、ぱちっ、と手際よく爪を切って、 私:簡単にやすりがけ。 0: 私:髪は簡単にブラッシングするだけで整ってくれた。 私:私はあまりがっつりとメイクをする方ではない。 私:なのでこういうのは、地味に助かっている。 0: 私:勝負服、なんていうものも、欲しいと思わなかったので、 私:クローゼットからローテーションの一つにしている服に着替える。 0: 私:外に出ると、昼間のうだるような暑さは、 私:夕方の風にかき回されて、なおいっそう、鬱陶しさ(うっとうしさ)を増していた。 0: 私:こつ、こつ、と私のミュールの音だけが聞こえる、祭りの会場への道。 私:地域の他の子は、みんな逸る(はやる)気持ちを抑えられなくて、 私:もう着いているのだろう。 0: 私:17時55分。 私:鳥居の前には、もうあの人がいた。 私:ああ、いつもの、でもいつまでも見ていたい、優しい笑顔。 私:今日は何だか照れ臭さも交じって。そんな可愛いところも大好きだ。 私:それも、伝えよう。 私:読み進めて重なった本のページのように、ゆっくりと積み重なった想いを。 0: 私:売り子さんの慌てた声。お祭りに来た人の悲鳴と、ざわめき。 私:大好きな彼の、・・・爪先(つまさき)。 私:「救急です!はい、はい・・・!」 0: 私:そっかぁ・・・間に合わなかったのか・・・。 0: 私:ああ、もうすぐで、伝えられたのにな・・・。 0: 私:諦めたく・・・なかったな・・・。 私:でも、・・・ずっと言えなかった、罰、なのかな・・・。 0: 私:ありがとう?さよなら?大好き? 0: 私:言いたかったことが・・・全部、伝わらないまま・・・。 0: 私:この世界からいなくなることを、許してね・・・。 0: 私:蝉(せみ)しぐれだけが。いつものように鳴いていた。 0: 0:-おしまい。- 0:

私:私には時間がない。タイムリミットがある。 私:お医者さんには、そうずっと言われてきた。 0: 私:どうしても、その時がやってくるまでに、伝えたい。 私:あの人に、私の気持ちを。それなのに。 0: 私:「はあ・・・」 0: 私:部屋のベッドの上、仰向け(あおむけ)に寝そべる私。 私:夏休みが、もうすぐ終わる。 0: 私:課題は、まだ終わってない。 私:もう少しで終わるのだけれど、手を付ける気に、ならない。 0: 私:どうせ、この課題を終えたところで・・・。 0: 私:悲観的になっているわけじゃない。 私:課題を終わらせなければ、先生に怒られるだろう。 私:それくらいのことは・・・わかってる。 0: 私:外はうっとうしいほどの轟音。 私:蝉(せみ)の合唱だ。 私:それに負けないほどの、私の咳(せき)。 0: 私:十数秒は止まらなかった。 私:えづいて吐きそうにもなった。 私:けれど、・・・まだ大丈夫そう。 0: 私:ふと、時計を見る。 私:地域の納涼祭りまで、あと少しだ。 0: 私:着信音が、鳴った。 0: 私:少し逡巡してから、通話ボタンをタップする。 私:あの人だった。 私:夕方の6時。鳥居の下で、待ってる。 私:たったそれだけの、確認。 0: 私:胸の高鳴りは、身体への警告のサインか、 私:それとも、純粋な気持ちが招く、ドキドキなのか。 私:もはやそれすら判別できなくなっている。 0: 私:気持ちを落ち着かせるように机に戻る。 私:鏡を取り出して、簡単にメイクして、 私:はた、と爪を見る。 私:伸びてるなぁ、けっこう・・・。 0: 私:ぱち、ぱちっ、と手際よく爪を切って、 私:簡単にやすりがけ。 0: 私:髪は簡単にブラッシングするだけで整ってくれた。 私:私はあまりがっつりとメイクをする方ではない。 私:なのでこういうのは、地味に助かっている。 0: 私:勝負服、なんていうものも、欲しいと思わなかったので、 私:クローゼットからローテーションの一つにしている服に着替える。 0: 私:外に出ると、昼間のうだるような暑さは、 私:夕方の風にかき回されて、なおいっそう、鬱陶しさ(うっとうしさ)を増していた。 0: 私:こつ、こつ、と私のミュールの音だけが聞こえる、祭りの会場への道。 私:地域の他の子は、みんな逸る(はやる)気持ちを抑えられなくて、 私:もう着いているのだろう。 0: 私:17時55分。 私:鳥居の前には、もうあの人がいた。 私:ああ、いつもの、でもいつまでも見ていたい、優しい笑顔。 私:今日は何だか照れ臭さも交じって。そんな可愛いところも大好きだ。 私:それも、伝えよう。 私:読み進めて重なった本のページのように、ゆっくりと積み重なった想いを。 0: 私:売り子さんの慌てた声。お祭りに来た人の悲鳴と、ざわめき。 私:大好きな彼の、・・・爪先(つまさき)。 私:「救急です!はい、はい・・・!」 0: 私:そっかぁ・・・間に合わなかったのか・・・。 0: 私:ああ、もうすぐで、伝えられたのにな・・・。 0: 私:諦めたく・・・なかったな・・・。 私:でも、・・・ずっと言えなかった、罰、なのかな・・・。 0: 私:ありがとう?さよなら?大好き? 0: 私:言いたかったことが・・・全部、伝わらないまま・・・。 0: 私:この世界からいなくなることを、許してね・・・。 0: 私:蝉(せみ)しぐれだけが。いつものように鳴いていた。 0: 0:-おしまい。- 0: