台本概要
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タイトル | sideB-法外宙域ローヴァーゲイル-#1ファースト・スクランブル |
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作者名 | 冷凍みかん-光柑- (@mikanchilled) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 5人用台本(男3、女1、不問1) ※兼役あり |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
宇宙の安全を守る宙運私警団、通称『アブサード』。これに対抗した国連宇宙軍は、宇宙での覇権を握るべく暗躍する!! ろくしょうるり様原作『ローヴァーゲイル#1ファースト・スクランブル』を宇宙軍視点で再現。 運命を仕組まれた第665飛行隊の、哀しくもひたむきな活躍劇…! テストプレイ及び添削に助力してくれた演者の皆様、本当にありがとうございました。 また今回の台本を書くにあたって、設定や編集を手伝って下さったろくしょうるり様に感謝の気持ちを込めて贈ります。この台本によってローヴァ―ゲイル界隈が益々盛り上がっていくことを切に願います。それではお楽しみください。 251 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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ブラット | 男 | 95 | ブラット・ボール1等宙尉。宇宙軍第665飛行隊のリーダーであり特命により企業所属の第001飛行隊、1番機パイロットとなる。 |
ヨハン | 男 | 74 | ヨハン・シュトライヒ2等宙尉。飛行隊の副リーダー。2番機パイロット。 |
ミシエラ | 女 | 66 | ミシエラ・バラッカ3等宙尉。元気いっぱいで少しおばか。3番機パイロット。 |
3等宙佐 | 男 | 20 | ルーク3等宙佐。第665飛行隊の司令官。世渡り上手な、狸のような男。 |
ローガン | 男 | 56 | 【3等宙佐と兼ね役】ローガン・ルーク。企業サタンセキュリティ所属の爽やかなルーキー。3等宙佐の弟。4番機パイロット。 |
ウヴェルテュール | 不問 | 71 | 感情のないAI。性能はフウガよりも数段劣る。名前の由来は仏語ouverture(序曲)。キーエントリーして5番機を操縦する。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
この物語ではローヴァ―ゲイル#1ファーストスクランブルが宇宙軍視点で書かれています。
内容は、宇宙軍のアサルトパイロット(4人と無人機1機)が機雷を積んだ貨物船を攻撃して
リリのホーミングアローに焼かれるというモノです。
3:1:1(11692字)30分台本です。
キャラクター紹介
ブラット。男。ブラット・ボール1等宙尉。宇宙軍第665飛行隊のリーダーであり特命により企業第001飛行隊1番機パイロットとなる。
ヨハン。男。ヨハン・シュトライヒ2等宙尉。飛行隊の副リーダー。2番機パイロット。
ミシエラ。女。ミシエラ・バラッカ3等宙尉。3番機パイロット。
ウヴェルテュール。企業提供のAI。5番機を操縦する。
3等宙佐。男。ルーク3等宙佐。665飛行隊の司令官。黒幕。
ローガン。男。ローガン・ルーク。001飛行隊のルーキー。3等宙佐の弟。
以下、本文です。
0:待機中の第665飛行隊に1通のメッセージが届く。
ブラット:…3等宙佐からお呼び出しだ。行ってくる。
ヨハン:あちゃあ、やっぱ宙運連とドンパチやった件だろうなあ。
ミシエラ:なんでよ。悪いのは向こうなのに!
ブラット:関係ねえ。俺たちの独断でやったのが悪い。しばらくは軍の決定に身を任せろ。
ブラット:俺たちは軍人だ。余計なことは考えずに、ただ上に従っとけばいいんだ。
ヨハン:わかるぜブラット。職務上、自由に動くのはダメだよな?
ヨハン:でも思考放棄はもっとダメだ。
ミシエラ:そうだよ。気づかないフリをしている内に、きっと大変なことに巻き込まれちゃうんだからね。
ブラット:まったくお前らは…そうだな。
ブラット:それじゃあお前らは”身の振り方”でも考えといてくれ。
ブラット:
ブラット:俺の分までな。
0:
0:タイトルコール
ウヴェルテュール:『法外宙域ローヴァ―ゲイル ファーストスクランブル
ローガン:sideB』
ブラット:俺がビオバイアス付きのパイロットに、ですか?
3等宙佐:その通りだ。知っての通り、われわれ国連宇宙軍は有事が起こってからでないと出動できない。
3等宙佐:それどころか有事が起こった時でさえも、問題の早期解決は不可能だ。
ブラット:国連に所属する国家間の政治や外交が影響するせいですね。
3等宙佐:そうとも。それ故に、現在の宇宙の治安維持は広域宙運業 事業者連合の私警団によって守られている。
ブラット:宙運私警団『アブサード』ですね。
3等宙佐:そう。宙運私警団は総括ブロッシュ・メイヤードの指揮の下、
3等宙佐:宇宙空間における船の管制、航路の巡視、宇宙海賊の対処を行っている。
3等宙佐:君はあの組織をどう思う?
ブラット:そうですね。俺は戦闘機乗りとして、ファースト・フロンティアのあらゆる軍事演習に参加しています。
ブラット:その時の話なのですが。
3等宙佐:いいぞ。続けたまえ。
ブラット:ある時エデンでの補給を済ませた宇宙母艦から、スクランブル発進の訓練をしていました。
ブラット:その際に『アブサード』の巡視船だか何だかが、俺の小隊に進路誘導を出して来たんです。
ブラット:結局、訓練告知の伝達ミスが原因だったらしく、誤解が解けた後は無事に訓練を修了しました。
ブラット:しかしアレには正直…
3等宙佐:何だ?
ブラット:正直ムカつきましたよ。民間が出しゃばって軍に警告するなど、地球ならばあり得ない。
3等宙佐:ふっふっふっふ…
ブラット:すみません、つい感情的になってしまいました。
3等宙佐:いいや?君の感情は至極当然だよ、ボール1等宙尉。だから君をビオバイアスへ送りたいんだ。
ブラット:いったいどんな関係があるんですか?
ウヴェルテュール:私が説明しましょう。
ブラット:なんですかこのヒト型は。
3等宙佐:紹介しよう。こいつはビオバイアス提供のAI、ウヴェルテュール。その擬人体(アンスロノイド)だ。
ウヴェルテュール:ご紹介ありがとうございます。3等宙佐。
ウヴェルテュール:私は宇宙母艦における包括的な運営システムを任されるべく開発されました。
ウヴェルテュール:以後お見知りおきを。
3等宙佐:こいつはすごいぞ。経理から機体の整備、各種補給の手配、医療ユニットの制御までしてくれる。
3等宙佐:将来的には非戦闘員を母艦に常駐させなくて済むようにな。
3等宙佐:今はその学習期間だ。
ブラット:ほえー。
ウヴェルテュール:3等宙佐、説明を続けてもよろしいですか。
3等宙佐:ああすまない。続けてくれ。
ウヴェルテュール:了解。結論から言うと、宇宙での権威が相対的に弱まることを国際連合は危惧しているのです。
ウヴェルテュール:宇宙フロンティアの開拓が進むにつれて
ウヴェルテュール:国家間を越えた、惑星間での外交が重視されるようになりました。
ウヴェルテュール:そしてその惑星の多くは企業や財団による、独占支配のもとで運用されているのが現状です。
3等宙佐:地球の国際連合が束になっても
3等宙佐:一惑星として宇宙(そら)に頭(こうべ)を垂れる日は、近づきつつあるのだ。
ブラット:なるほど。けしからんですね。
3等宙佐:ウヴェルテュール、例の艦(ふね)の見取り図を。
ウヴェルテュール:了解。
ブラット:これは、新型の宇宙母艦ですか?…ビオバイアス製にしては思い切ったデザインですね。
3等宙佐:ロードナイト…連中はそう呼んでいた。
ブラット:連中…?まさかこれは!!
ウヴェルテュール:察しの通り、こちらは宙運私警団が独自開発をした大型宇宙母艦です。
ウヴェルテュール:最新鋭の総合管理システムに加え、哨戒レーダー、各種武装を備えています。
ブラット:これほどの戦力…連中は戦争でも始める気なのか…?
ウヴェルテュール:現在ロードナイトは宇宙軍が押収済みであり、実戦配備に向けて調整中です。
3等宙佐:ウヴェルテュールはこのロードナイトの中枢部に換装する予定だ。
ブラット:俺は断りますよ。連中の作った船なんぞ御免です。
3等宙佐:駄々をこねている場合ではない。
ブラット:3等宙佐…
3等宙佐:ふっふっふ。しかし安心したまえ。君ら665飛行隊には別の任務を与えよう。
3等宙佐:ビオバイアス付きのアサルト部隊となって、宇宙の平和を守ってくれないか。
ブラット:俺たちは…ヒーローって柄じゃないです。
3等宙佐:まあそうかもしれんが、これは命令だ。これより君を特等宙尉に任命し
3等宙佐:君には企業付きの飛行隊を指揮してもらう。
ブラット:命令とあらば。了解です。
3等宙佐:しっかり頼んだよ。ボール特等宙尉。
0:
ミシエラ:お帰り!リーダー!
ヨハン:昇進おめでとサン♪特等宙尉殿っ!
ブラット:お前ら、盗聴してやがったなッ!!
ヨハン:だって気になるじゃねえか。今回はさすがに停職処分じゃねえかって俺ァ心配で心配で…
ミシエラ:スリル満点で楽しかったねー!ヨハン!
ブラット:これ以上、3等宙佐の信用を裏切るような行動をすんじゃねえ!ばれたらどーすんだコラ!
ウヴェルテュール:騒々しい。なんですかここは。幼稚園ですか。
ヨハン:げえ!なんだコイツ!?
ミシエラ:私知ってる!擬人体(アンスロノイド)だよヨハン!
ヨハン:んなこた俺も知ってんだよッ!!
ブラット:紹介するぜウヴェルテュールだ。てかオメーら盗聴してたんじゃねえのかよ?
ウヴェルテュール:実は私が盗聴器から発する電波を書き換えて、さも私の存在がないかのように演出しました。
ミシエラ:すごー!そんなこともできるの!?ウヴェルテュール!
ヨハン:高性能だぜ…
ブラット:黙れお前ら。だがウヴェルテュール、流石は母艦用に設計されたAIだ。
ウヴェルテュール:理解して頂き光栄です。
ブラット:さあウヴェルテュール、説明してやれ。
ウヴェルテュール:了解。これからの作戦はビオバイアス系列企業、サタンセキュリティの指示の下
ウヴェルテュール:宇宙海賊を取り締まります。
ミシエラ:まるで宙運私警団みたいなことするのね。
ヨハン:連中の真似事なんて嫌だぜ。
ブラット:続けろ。ウヴェルテュール。
ウヴェルテュール:ビオバイアスから支給されたアサルト機は5機。
ウヴェルテュール:私を含めた全員で部隊を編成し、要請がかかり次第スクランブル発進して対処に当たります。
ミシエラ:あれれー?5機?パイロットが一人足りないよー?
ヨハン:簡単な引き算だぜ。さてはポンコツだなテメー。
ウヴェルテュール:私を”評価”しますか。シュトライヒ2等宙尉。なるほど…
0:ウヴェルテュールの瞳がチカチカと光る。
ウヴェルテュール:ところで。先日押収したモービルの乗り心地はいかがですか。
ヨハン:な、なんのことだ…?
ウヴェルテュール:単独で巡回した際に、宇宙海賊から押収したモービルのことですよ。
ウヴェルテュール:今は無断で営内のガレージに置いてますよね?
ヨハン:なぜそれを…
ブラット:ヨハン?
ヨハン:あ、はは。賊が随分いいのを所持してやがったからよ、俺のと交換しただけだぜ。
ウヴェルテュール:押収品の私的留置(りゅうち)は軍の規律違反です。
ミシエラ:わーいヨハンの犯罪者ー!
ヨハン:おいおい勘弁してくれよ!
ウヴェルテュール:私は管理システムAIです。どこに・いつ・何が・どういった経緯で置かれているかを知ることができます。
ウヴェルテュール:もちろん例外はありますが、2等宙尉を降格させるだけの情報なら簡単に集められますよ。
ヨハン:わかった!俺が悪かったから!
ミシエラ:ウヴェルテュールすごすぎっ!
ブラット:その辺にしてやれウヴェルテュール。時間もない。
ウヴェルテュール:失礼しました。話を戻しますと、実はパイロットはもう一人います。
ウヴェルテュール:サタンセキュリティ1st.(ファースト)LT、ローガン・ルークです。
0:LT(エルティー)と読みます。
ミシエラ:ルークってまさか…?
ブラット:そ。3等宙佐の弟だ。
ミシエラ:うっそー!世間せま~い!
ヨハン:宙佐の弟か。たっぷり可愛がってやろうぜ。
ウヴェルテュール:すでにLTルークはサタンセキュリティの格納庫で我々の到着を待っています。
ブラット:ああ。それじゃ、俺たちもサタンセキュリティの基地へ向かうぞ。
ブラット:引っ越しだ。
ヨハン:おう!
ミシエラ:おー!
0:サタンセキュリティ、基地衛星『アスタロト』
ローガン:こちらサタンセキュリティ、基地衛星『アスタロト』。
ローガン:着艦コードを送れ。
ブラット:こちら連絡船マスピアル・ストーク。着艦コードを送る。
0:ミシエラがマスピアルストークの着艦コードを可視光通信で送る。
ローガン:コードを確認した。誘導灯を展開する。
ブラット:正面 点火。
ヨハン:正面ブースターを点火。減速する。
ミシエラ:船体を誘導灯に一致。誤差0.00。
ウヴェルテュール:ブースター燃焼 終了。
ヨハン:燃焼 終了 了解。微速(びそく)を維持する。
ローガン:格納コンテナ準備完了。いつでもどうぞ。
ブラット:マスピアル・ストーク、着艦する。
0:着艦時のわずかな衝撃が格納庫に響く。
ローガン:着艦を確認。固定具を連絡船に装着。降機ブリッジ接続。
ミシエラ:降機用ハッチの気圧をブリッジに順応。
ブラット:ハッチ開け。
ミシエラ:ハッチ開きます。
0:ブラットらは降機ブリッジを通り、衛星側のゲートに並ぶ。
ウヴェルテュール:特別隊員3名とアンスロノイド1基の入場許可を申請します。
ローガン:内蔵コードを確認。入場を許可する。
ローガン:ようこそ。宇宙軍 第665飛行隊の皆さん。
ブラット:歓迎に感謝する、LTルーク。
ローガン:これからよろしくお願いします特等宙尉。それではメインデッキでお待ちしています。
ヨハン:アレが宙佐の弟かあ。なーんか気に入らねんだよなあ。
ミシエラ:なんで?爽やかでいい感じじゃん。
ヨハン:なんつーかよお…こう、キラキラルーキーって感じで。
ブラット:なんだそりゃ。
ミシエラ:最初の頃はヨハンもあんな感じだったよ?
ヨハン:んなわけねえな!
ブラット:最初なんて全員そうだろ。小さいことを気にするな。
ヨハン:なんだ?俺の器が小さいって言いてえのか?あァ?
ブラット:そうは言ってねえ。
ミシエラ:〈手首を抑えながら〉いてて、手首の傷跡がしみるよ~…
ウヴェルテュール:気をつけてくださいね、バラッカ3等宙尉。
ウヴェルテュール:手首に内蔵されたチップには、あなたたちのライセンスIDが記録されています。
ウヴェルテュール:機密保持のために宇宙軍のデータベースにはアクセスできませんので
ウヴェルテュール:作戦期間はそのチップだけがあなたたちの身分証明です。
ミシエラ:私のチップの位置合ってる?振ると指がしびれるんだけど…
ブラット:確かに、若干の異物感があるな。
ヨハン:よかったなミシエラ。クソエイムの言い訳に丁度いいじゃん。
ミシエラ:違いますー!てか最近めっちゃ調子いいもんね!
ブラット:まあなんにせよ。出動までには各自克服しておけよ。
ヨハン:了解。
ミシエラ:ま、その内慣れるか。
ヨハン:にしても機密保持ねえ…マジで辺鄙(へんぴ)な所だな。俺たち以外誰もいないぜ。
ブラット:まあな。サタンセキュリティの警備活動は国連でも賛否が分かれている。
ブラット:だから実績を作ることで事実上の支配権を獲得するのさ。
ヨハン:勝手に縄張りをつくろうってワケか。『アブサード』の猿真似じゃねえかよ。
ウヴェルテュール:いいえシュトライヒ2等宙尉。宇宙における支配権が確立した暁には、
ウヴェルテュール:すべて宇宙軍に帰属することが決定しています。
ブラット:企業として引き際を弁(わきま)えてる分、宙運連よりずっとお利口ってワケだ。
ミシエラ:宇宙の支配か、それまでは帰れそうにないね…
ヨハン:しょげんなよ。帰った頃には俺たちは英雄だぜ。
ミシエラ:そうだね!頑張ろう!
0:
ローガン:初めまして皆さん。サタンセキュリティの1st.LT、ローガン・ルークです。
0:LT(エルティー)と読みます。
ローガン:よろしくお願いします。
ウヴェルテュール:よろしくお願いします。LTルーク。
ブラット:よろしくな。
ミシエラ:よろしくぅー!ミシェーラでいいよ!
ローガン:はい。僕のこともローガンと呼んでください。
ヨハン:おいローガン。
ローガン:なんでしょうか。
ヨハン:1尉相当だか、3等宙佐の弟だか知らねえけどよ、部隊じゃ俺が先輩だ。
ヨハン:そこんところ弁(わきま)えろよ?
ローガン:はい。もちろんですよシュトライヒ2等宙尉。
ヨハン:ハン。
ミシエラ:ホントは後輩が出来て嬉しいクセに。
ヨハン:うるせえ。オメーだって俺より下だろが。
ミシエラ:ほとんど一緒でしょ~!
ブラット:まあこんな感じでうるさいだろうが、よろしく頼む。
ローガン:もちろん!
ローガン:そうだ皆さん。長旅でお腹が空いたでしょう。
ローガン:ご飯にしませんか。
ミシエラ:きゃっほーう!メシだー!
ヨハン:オイオイ、基地内業務はいいのかよ?
ウヴェルテュール:心配ありませんシュトライヒ2等宙尉。すでにこの基地内は私の制御下にあります。
ヨハン:いつの間に!?
ウヴェルテュール:自己紹介をしている間にです。
ミシエラ:メシだー!
ローガン:じつはウヴェルテュールの起用は、宇宙母艦制御に向けての練習も兼ねているんです。
ブラット:なるほど。基地衛星の管理くらい造作もねえってことか。
ヨハン:そんなAI、聞いたこともねえ。
ローガン:まあ多少のマンパワーは必要ですけどね。あとでアサルト機を紹介します。なのでまずは
ミシエラ:メシだー!
ローガン:ええ、メシですね。
0:
ローガン:さあ、いただきましょう!
ブラット:これは…
ヨハン:なんというか…
ローガン:いかがですか?皆さん。
ローガン:ビオバイアス系列企業、ベルゼフードのお味は?
ヨハン:ハエなら好きかもな…
ブラット:ハエも魅力を感じないだろ…
ミシエラ:チガウ…コレ食べ物チガウ…
ローガン:そうですとも!完全栄養と長期保存を両立させた上に、食事が生み出す脳波形を的確に再現!
ローガン:まさに食べ物を超越した革新的な製品です!
ヨハン:開発者を殴りてえ。
ミシエラ:特等宙尉…ヤバいよ。わたし駄目かも…
ブラット:静かにしろ。いまマシな喰い方を考えてる…
ローガン:味も食感も未だかつて体験したことがないでしょう?これらを例えるならば…
ヨハン:溶けた長靴。
ブラット:パンドラの箱の臭いもれ。
ミシエラ:ナンプラーを拭いて干さずに放置した雑巾。
ローガン:…の三週間後の味。
ミシエラ:ッ!
ヨハン:気づいていたのか…!
ローガン:〈悲しみ〉その内慣れます。決して美味しいと感じることはありませんが、
ローガン:はじめは鼻をつまんで…次第に自然と飲み込めるようになります。
0:ローガンは顔を上げて三人の方を向く。泣いてるような笑っているような顔で。
ローガン:〈震えた声で〉まずさだって…単なる客観的な性質として…捉えるように…なりますから!
ミシエラ:〈泣き出す〉ううう…!うううう!
ブラット:〈狂ったように〉フフフ、はっはっは…
ヨハン:〈笑い声二重奏〉くくく、ふふふ…!
ローガン:〈笑い声三重奏〉あはははは!!!
ミシエラ:〈泣き声のような笑い声四重奏〉ふえええん!えへえへえへへ!
ウヴェルテュール:〈M〉これが人間に備わる共感能力…
ウヴェルテュール:〈M〉一緒に食事をするだけで、共に泣き、共に笑うことが出来る…
ウヴェルテュール:〈M〉私の開発者はそれを”こころ”と定義した。
ウヴェルテュール:〈M〉”こころ”の作用…
ウヴェルテュール:〈M〉…。
ウヴェルテュール:〈M〉…時間の無駄だな。
0:
ローガン:さあ、皆さん。元気を出して!
ローガン:これが僕らに支給されたアサルト機です!!
ミシエラ:おお~!カックイイー!
ヨハン:まさか…パンサースライドか!?
ブラット:フルモデルチェンジの構想が実用段階に達していたとは…
ローガン:ホールスラスタ・イオンエンジン搭載。出力換算値はなんと4800馬力です!
ヨハン:こっちは真面目に用意してくれてるみたいだな。
ミシエラ:武装はどんな感じ?
ウヴェルテュール:50mmNI(エヌ・アイ)マシンガン2丁、熱系フレア2回分。
ウヴェルテュール:突撃用電磁アーマーは、貫通性能に特化したΔ(デルタ)型です。
ヨハン:強襲用戦闘機の性格を順当に受けついでやがる…
ローガン:まだ試作段階ですけどねえ…
ブラット:試作か。どうやらこの部隊はあくまで実験運用ってことらしいな。
ローガン:ええ。そのように聞いてます。
ローガン:カラーリングも正規仕様とは異なるようにとの注文が入っていますからね。
ブラット:カラーリングも?妙な注文だな。
ヨハン:ミシエラ、どう思う?
ミシエラ:すっっごい気に入った!カラーリングも私達で替えちゃおうよ!
ヨハン:お!いいなそれ!
ウヴェルテュール:やれやれ、図画工作の時間ですか、広範囲は私に任せて下さい。
ローガン:塗料はこっちです!
ヨハン:早速やるか!うひょー!
ミシエラ:うひょー!
ブラット:〈M〉新しい仲間、新しい職場、新しい設備
ブラット:〈M〉…楽しいが、不確定要素が多すぎるな。
0:
ブラット:むうう…
ウヴェルテュール:特等宙尉、何をしていますか。
ブラット:地球へと向かう航路を監視している。
ウヴェルテュール:必要ありません。私がレーダーで監視しています。
ブラット:やらせてくれ。どうも胸騒ぎがして落ち着かないんだ。
ウヴェルテュール:非合理的ですね。
ブラット:すまないな。これが人間だ。
ウヴェルテュール:なるほど。コンテナより通信です。
ローガン:特等宙尉、いまお時間いいですか?
ミシエラ:みてみてー!ウヴェルテュールに頼んで、機体を真っ黒にしてもらったのー!
ヨハン:宇宙空間なら完全に姿をくらませられるぜ!
ブラット:馬鹿が。それじゃ有視界飛行の時に連携が取りづらくなるだろうが!
ヨハン:あ、それもそうだな!
ミシエラ:これからラインを引くんですー!
ミシエラ:何色がいいかなー?
ローガン:ショッキングピンクなんてどうでしょうか。
ヨハン:ああ、いんじゃねえの。
ミシエラ:採用ーぅ!
ブラット:おいやめろッ!!
ヨハン:そんじゃな~特等宙尉殿!
ウヴェルテュール:通信終了。
ブラット:ったく、いつも以上に はしゃいでやがる。
ウヴェルテュール:宙尉らは入隊以来の付き合いですよね。
ブラット:また調べたのか?
ウヴェルテュール:いけませんか。
ブラット:ふ、別にいいけどな。ああそうさ。俺たちはずっと一緒だ。
ブラット:ヨハンが汚職で減給された時も
ブラット:ミシエラが飲酒運転で検挙された時も俺たちは一緒だった。
ウヴェルテュール:あなたが宙運私警団と小競り合いをした時も、ですね。
ブラット:…そうだよ。所詮俺たちは厄介者。
ブラット:俺たちの居場所は、俺たちだけだ。
ウヴェルテュール:うらやましい。
ブラット:うらやましい事ァねえだろ。
ウヴェルテュール:そうですね。うらやましいという感情を私は正しく理解を…
ブラット:そうじゃなくて。
ブラット:お前ももう、”俺たち”だからさ。
ウヴェルテュール:特等宙尉…
ブラット:ん?あれは何だ?ウヴェルテュール!
ウヴェルテュール:解析します。
ウヴェルテュール:所属コードはビオバイアスの貨物船ですが、こちらの信号に反応しません。
ウヴェルテュール:航路もデブリの中を…明らかに不自然です。
ブラット:おいおい、なりすましゲンガーさんが地球に何の用だ?
ウヴェルテュール:どうしますか特等宙尉。
ブラット:当然追うさ。
ブラット:衛星内全域に通告。現在何者かがビオバイアスの貨物船でデブリ内を進行中。
ブラット:目的は不明。総員戦闘配備。
0:サイレンが基地内に鳴り響く。
ヨハン:総員戦闘配備!急げ!
ウヴェルテュール:第一から第五デッキを解放。
ウヴェルテュール:カタパルト、射出準備 完了。
ウヴェルテュール:射出タイミングを各パイロットに譲渡します。
ヨハン:2番機、準備完了!
ミシエラ:3番機、準備完了!
ローガン:4番機、準備完了!
ローガン:いよいよ本番ですね…!特等宙尉!
ミシエラ:ファースト・スクランブルだね!リーダー!
ヨハン:俺たちの初仕事だ。サクッと終わらせよう。
ブラット:ああ。
ブラット:…パイロット各位、連携を乱すなよ。
ウヴェルテュール:5番機、準備完了。
ブラット:よし。サタンセキュリティ第001飛行隊、スクランブル発進ッ!!
0:漆黒の機体にショッキングピンクのラインが縦横無尽に迸る5機のアサルト機が基地から出撃し
0:Ⅴ字隊形で貨物船へと急行する。
ウヴェルテュール:特等宙尉。外部通信可能距離に入りました。
ミシエラ:そこの貨物船、とまりなさーい!
ローガン:くそう、連中まったく応じませんね。
ウヴェルテュール:タグコンテナに信管反応。どうやら積み荷は機雷のようです。
ヨハン:機雷だって!?
ローガン:そんなの積んで、いったい地球に何の用ですかね…!
ブラット:ますます ここを通すわけには行かなくなったな。
ブラット:全機 戦闘態勢。誘爆に気をつけながら…貨物船を止めるぞ!
全員:了解ッ!
0:
ヨハン:止めるったって、動力源はタグコンテナの内側だぜ!
ローガン:誘爆しないように、タグコンテナをはがすしかありません!
ウヴェルテュール:貨物船よりエネルギー反応。砲撃来ます。
ミシエラ:攻撃してきた!?
ヨハン:無人じゃねえのか!まさか、自爆テロ…!?
ウヴェルテュール:私が突入します。
ブラット:危険だ!ウヴェルテュール!
ウヴェルテュール:内部に突入できさえすれば、キーを通して貨物船をジャックできます。
ウヴェルテュール:砲撃をやめさせ、貨物船を停止させるにはそれしかありません。
ブラット:わかった。全員でウヴェルテュールを…
ローガン:ぐああ!
ヨハン:ローガン!大丈夫か!
ローガン:損傷軽微…!第三者です!
ヨハン:この機体反応は、まさか…!
ミシエラ:どうして、宙運私警団の巡視船が…
ブラット:何がどうなっている…?
ウヴェルテュール:巡視船は恐らく我々を海賊と誤認しています。
ブラット:すぐに通信を送れ!
ウヴェルテュール:おかしい…外部通信システムがロックされました。
ローガン:〈M〉なぜだ…なぜウヴェルテュールがアクセスできない?
ヨハン:丁度いいぜ!俺らにケンカ売ったことを後悔させてやるッ!
ブラット:仕方ねえ。俺がウヴェルテュールを援護する。2番機から4番機は巡視船を無力化しろ。
ブラット:くれぐれも巡視船を撃破するなよ!
全員:了解ッ!
0:
ブラット:ウヴェルテュール、俺が砲撃を引き付ける。
ブラット:隙が出来たら一気に電磁アーマーで貨物船に突撃だッ!
ウヴェルテュール:了解。
0:
ローガン:あの巡視船、なかなかの手練れですよ!
ヨハン:くそっ!ちょこまかと飛びやがって!!
ヨハン:マジで墜落させちまうぞ!
ミシエラ:危ない!!
ローガン:マズいです!タグコンテナに穴が!!
ミシエラ:機雷が外に漏れちゃう!
ヨハン:気をつけろ!誘爆したら全滅だッ!
ミシエラ:わかってるって!
ミシエラ:(どうしよう…こんな時にしびれが…!)
0:
ウヴェルテュール:誘導ミサイル来ます。
ブラット:フレア展開ッ!なんなんだあの武装は!まるで宇宙軍と戦ってるみたいだぜッ!
0:
ローガン:巡視船 損傷甚大ッ!戦闘不能です!
ヨハン:よっしゃあ!ざまァみろ!!
ミシエラ:ホッ、よかった…
ヨハン:1番機!こっちは終わった!すぐに合流を…
ローガン:待ってください!この反応は、パスドライブ!?
ミシエラ:嘘…まだ来るの…?
ブラット:パスドライブだと…?
ヨハン:こんなピンポイントでアクティブパスを使う艦(ふね)なんざ…
ヨハン:俺は1つしか知らねえ…。
ウヴェルテュール:宙運私警団、量子変換ドライブ搭載機…
ブラット:あれは…!
0:最高峰のAIを積んだ美しい駆逐艦が突如として現れる。
0:ブラッド・ボールは思った。
0:どうして絶望する瞬間には、必ず感動がやってくるのだろうか…
ブラット:インフィニティ型駆逐艦…!
ローガン:巡視船、離脱しました!
ヨハン:チッ、時間稼ぎか!やつめ、駆逐艦が到着するまで粘ってやがった!
ミシエラ:選手交代とかありえない~!
ミシエラ:(こっちはギリギリだってのに…)
ヨハン:望まぬ延長戦だが、ロスタイム(妨害された)分、きっちり取り返すぞ!
ウヴェルテュール:特等宙尉。駆逐艦の攻撃まで時間がありません。
ブラット:〈我に返る〉ハッ!
ブラット:…ああ、わかってる。
ブラット:2番機から4番機!俺らでは駆逐艦には勝てねえ。
ブラット:逃げ仕度を整えておけ!
ブラット:5番機、縦列隊形!
ウヴェルテュール:了解。
ヨハン:3番機、4番機!俺たちは駆逐艦の相手をするぞ!
ヨハン:貨物船に近づかせるな!
ミシエラ:了解ッ!
ローガン:了解ッ!
0:
ブラット:電磁アーマー展開!5番機、俺の後ろをついてこい!
ウヴェルテュール:了解。
ブラット:突撃ィイ!
0:
ミシエラ:これがインフィニティ型…!逃げ切れるかな…
ヨハン:笑えてくるぜ…巡視船相手にイキってた自分(テメー)がよお…
ローガン:兄さん…”今”なんだね?ここが僕の”正念場”なんだね…!?
ミシエラ:私がひきつける。
ヨハン:なに!?馬鹿言ってんじゃねえ!
ローガン:そうですよ!一斉に攻撃しましょう!
ミシエラ:いいのッ!!
0:
ミシエラ:私の片腕、もう…いう事きかないの…
0:
ブラット:ぐううッ!電磁アーマー消失ッ!
ブラット:ウヴェルテュールッ!突入しろッ!
ヨハン:頼む!ウヴェルテュール!
ローガン:お願いします!ウヴェルテュール!
ミシエラ:ウヴェルテュール…
0:
ミシエラ:お願い…
ウヴェルテュール:…了解。
ウヴェルテュール:電磁アーマー展開。5番機、突入します。
0:ズゴゴゴゴ!!ウヴェルテュールの無人機が貨物船に突入する。
ウヴェルテュール:突入成功。
ヨハン:よし!
ローガン:やりましたね!
ウヴェルテュール:あとは貨物船のハッキングを…
ウヴェルテュール:おかしい…
ブラット:どうした!?ウヴェルテュール!
ウヴェルテュール:船内にいるのは、15人全て…ビオバイアスの社員です。
ブラット:なん、だと…?
ミシエラ:まさか、人質…!?
ウヴェルテュール:いや…”もう一人”…
0:ウヴェルテュールの探知にかかる謎の少女の姿。
ウヴェルテュール:あなたは、誰…?
ローガン:貨物船から高エネルギー反応です!!
ブラット:そんな、まさか動力源が暴走している!?
ローガン:エネルギー圧、急速に上昇!!
ローガン:収束点は、メインブリッジです!
ブラット:どういうことだ、新兵器か!?
0:リリ「…」
ミシエラ:声?誰…誰なの?
ヨハン:声が聞こえる…少女の声だ!
ブラット:馬鹿な、貨物船に乗っているのか…?
ローガン:収束点は…
ウヴェルテュール:あなたは、何者…?
ローガン:収束点は…
ヨハン:どうしたローガン!?
ローガン:収束点は…!
0:
ローガン:人間です…!
0:
ミシエラ:光った!!!
ヨハン:エネルギービーム!?こ、この数は!
ヨハン:ぐああああッ!
0:
ローガン:2番機、撃墜(ロスト)!なんて追尾性能だ!
ウヴェルテュール:〈静かに混乱中〉外部との通信をロックし…ビオバイアス同士で交戦…
ローガン:振り切れない!!うわああ!たすけて!!兄さァァァアんッ!!!
0:
ミシエラ:4番機、ロスト!
ウヴェルテュール:非正規仕様の戦闘機で、現場をかく乱…
ミシエラ:機雷が…誘爆していく…
ミシエラ:そんな…!あんまりだよ…あんまりだよ…ッ!!
0:
ブラット:3番機!応答しろ!3番機!!
ブラット:ぐああッ!
ウヴェルテュール:私は…宇宙母艦を運営するために生まれて…
ウヴェルテュール:これは…学習過程で…
ブラット:ウヴェルテュール…
ウヴェルテュール:特等宙尉…?
ブラット:脱出しろ…!お前はーー
0:
ウヴェルテュール:特等宙尉…?
0:1番機、ロスト。
ウヴェルテュール:そんな…特等宙尉…
ウヴェルテュール:そんな…私は…
ウヴェルテュール:あの少女は…
ウヴェルテュール:…データにありません。
0:5番機、ロスト。
3等宙佐:今回の貨物船騒動の報告。
3等宙佐:20時00分。ビオバイアス所属の貨物船が海賊に襲撃される。
3等宙佐:20時02分。貨物船は動力源の暴走が原因で、運搬中の機雷に誘爆。
3等宙佐:貨物船員15名は宙運私警団により救助される。
3等宙佐:同時刻。襲撃していたアサルト5機は誘爆に巻き込まれ、貨物船と共に消滅。
3等宙佐:アサルト5機の海賊の身元は
3等宙佐:不明。
0:
0:宇宙軍某衛星。
3等宙佐:2階級特進おめでとう。すまないね。ボール2等宙佐。
3等宙佐:宇宙軍としては味方が100の功績を積むよりも、たった一つの敵の不祥事が欲しいのだよ。
3等宙佐:しかし、すべての機雷が誘爆したのにも関わらず、貨物船員15名が無傷とは、一体何が?
3等宙佐:近くにいたのは、かのインフィニティ型…
3等宙佐:おっと。いけないいけない。危うく首を突っ込むところだった。
3等宙佐:無難に無難に…それが処世術だよ。
3等宙佐:ふっふっふっふ…
出力換算5000馬力
40mm口径機関砲2連装
徹甲弾2000m/s
榴弾1000m/s
この物語ではローヴァ―ゲイル#1ファーストスクランブルが宇宙軍視点で書かれています。
内容は、宇宙軍のアサルトパイロット(4人と無人機1機)が機雷を積んだ貨物船を攻撃して
リリのホーミングアローに焼かれるというモノです。
3:1:1(11692字)30分台本です。
キャラクター紹介
ブラット。男。ブラット・ボール1等宙尉。宇宙軍第665飛行隊のリーダーであり特命により企業第001飛行隊1番機パイロットとなる。
ヨハン。男。ヨハン・シュトライヒ2等宙尉。飛行隊の副リーダー。2番機パイロット。
ミシエラ。女。ミシエラ・バラッカ3等宙尉。3番機パイロット。
ウヴェルテュール。企業提供のAI。5番機を操縦する。
3等宙佐。男。ルーク3等宙佐。665飛行隊の司令官。黒幕。
ローガン。男。ローガン・ルーク。001飛行隊のルーキー。3等宙佐の弟。
以下、本文です。
0:待機中の第665飛行隊に1通のメッセージが届く。
ブラット:…3等宙佐からお呼び出しだ。行ってくる。
ヨハン:あちゃあ、やっぱ宙運連とドンパチやった件だろうなあ。
ミシエラ:なんでよ。悪いのは向こうなのに!
ブラット:関係ねえ。俺たちの独断でやったのが悪い。しばらくは軍の決定に身を任せろ。
ブラット:俺たちは軍人だ。余計なことは考えずに、ただ上に従っとけばいいんだ。
ヨハン:わかるぜブラット。職務上、自由に動くのはダメだよな?
ヨハン:でも思考放棄はもっとダメだ。
ミシエラ:そうだよ。気づかないフリをしている内に、きっと大変なことに巻き込まれちゃうんだからね。
ブラット:まったくお前らは…そうだな。
ブラット:それじゃあお前らは”身の振り方”でも考えといてくれ。
ブラット:
ブラット:俺の分までな。
0:
0:タイトルコール
ウヴェルテュール:『法外宙域ローヴァ―ゲイル ファーストスクランブル
ローガン:sideB』
ブラット:俺がビオバイアス付きのパイロットに、ですか?
3等宙佐:その通りだ。知っての通り、われわれ国連宇宙軍は有事が起こってからでないと出動できない。
3等宙佐:それどころか有事が起こった時でさえも、問題の早期解決は不可能だ。
ブラット:国連に所属する国家間の政治や外交が影響するせいですね。
3等宙佐:そうとも。それ故に、現在の宇宙の治安維持は広域宙運業 事業者連合の私警団によって守られている。
ブラット:宙運私警団『アブサード』ですね。
3等宙佐:そう。宙運私警団は総括ブロッシュ・メイヤードの指揮の下、
3等宙佐:宇宙空間における船の管制、航路の巡視、宇宙海賊の対処を行っている。
3等宙佐:君はあの組織をどう思う?
ブラット:そうですね。俺は戦闘機乗りとして、ファースト・フロンティアのあらゆる軍事演習に参加しています。
ブラット:その時の話なのですが。
3等宙佐:いいぞ。続けたまえ。
ブラット:ある時エデンでの補給を済ませた宇宙母艦から、スクランブル発進の訓練をしていました。
ブラット:その際に『アブサード』の巡視船だか何だかが、俺の小隊に進路誘導を出して来たんです。
ブラット:結局、訓練告知の伝達ミスが原因だったらしく、誤解が解けた後は無事に訓練を修了しました。
ブラット:しかしアレには正直…
3等宙佐:何だ?
ブラット:正直ムカつきましたよ。民間が出しゃばって軍に警告するなど、地球ならばあり得ない。
3等宙佐:ふっふっふっふ…
ブラット:すみません、つい感情的になってしまいました。
3等宙佐:いいや?君の感情は至極当然だよ、ボール1等宙尉。だから君をビオバイアスへ送りたいんだ。
ブラット:いったいどんな関係があるんですか?
ウヴェルテュール:私が説明しましょう。
ブラット:なんですかこのヒト型は。
3等宙佐:紹介しよう。こいつはビオバイアス提供のAI、ウヴェルテュール。その擬人体(アンスロノイド)だ。
ウヴェルテュール:ご紹介ありがとうございます。3等宙佐。
ウヴェルテュール:私は宇宙母艦における包括的な運営システムを任されるべく開発されました。
ウヴェルテュール:以後お見知りおきを。
3等宙佐:こいつはすごいぞ。経理から機体の整備、各種補給の手配、医療ユニットの制御までしてくれる。
3等宙佐:将来的には非戦闘員を母艦に常駐させなくて済むようにな。
3等宙佐:今はその学習期間だ。
ブラット:ほえー。
ウヴェルテュール:3等宙佐、説明を続けてもよろしいですか。
3等宙佐:ああすまない。続けてくれ。
ウヴェルテュール:了解。結論から言うと、宇宙での権威が相対的に弱まることを国際連合は危惧しているのです。
ウヴェルテュール:宇宙フロンティアの開拓が進むにつれて
ウヴェルテュール:国家間を越えた、惑星間での外交が重視されるようになりました。
ウヴェルテュール:そしてその惑星の多くは企業や財団による、独占支配のもとで運用されているのが現状です。
3等宙佐:地球の国際連合が束になっても
3等宙佐:一惑星として宇宙(そら)に頭(こうべ)を垂れる日は、近づきつつあるのだ。
ブラット:なるほど。けしからんですね。
3等宙佐:ウヴェルテュール、例の艦(ふね)の見取り図を。
ウヴェルテュール:了解。
ブラット:これは、新型の宇宙母艦ですか?…ビオバイアス製にしては思い切ったデザインですね。
3等宙佐:ロードナイト…連中はそう呼んでいた。
ブラット:連中…?まさかこれは!!
ウヴェルテュール:察しの通り、こちらは宙運私警団が独自開発をした大型宇宙母艦です。
ウヴェルテュール:最新鋭の総合管理システムに加え、哨戒レーダー、各種武装を備えています。
ブラット:これほどの戦力…連中は戦争でも始める気なのか…?
ウヴェルテュール:現在ロードナイトは宇宙軍が押収済みであり、実戦配備に向けて調整中です。
3等宙佐:ウヴェルテュールはこのロードナイトの中枢部に換装する予定だ。
ブラット:俺は断りますよ。連中の作った船なんぞ御免です。
3等宙佐:駄々をこねている場合ではない。
ブラット:3等宙佐…
3等宙佐:ふっふっふ。しかし安心したまえ。君ら665飛行隊には別の任務を与えよう。
3等宙佐:ビオバイアス付きのアサルト部隊となって、宇宙の平和を守ってくれないか。
ブラット:俺たちは…ヒーローって柄じゃないです。
3等宙佐:まあそうかもしれんが、これは命令だ。これより君を特等宙尉に任命し
3等宙佐:君には企業付きの飛行隊を指揮してもらう。
ブラット:命令とあらば。了解です。
3等宙佐:しっかり頼んだよ。ボール特等宙尉。
0:
ミシエラ:お帰り!リーダー!
ヨハン:昇進おめでとサン♪特等宙尉殿っ!
ブラット:お前ら、盗聴してやがったなッ!!
ヨハン:だって気になるじゃねえか。今回はさすがに停職処分じゃねえかって俺ァ心配で心配で…
ミシエラ:スリル満点で楽しかったねー!ヨハン!
ブラット:これ以上、3等宙佐の信用を裏切るような行動をすんじゃねえ!ばれたらどーすんだコラ!
ウヴェルテュール:騒々しい。なんですかここは。幼稚園ですか。
ヨハン:げえ!なんだコイツ!?
ミシエラ:私知ってる!擬人体(アンスロノイド)だよヨハン!
ヨハン:んなこた俺も知ってんだよッ!!
ブラット:紹介するぜウヴェルテュールだ。てかオメーら盗聴してたんじゃねえのかよ?
ウヴェルテュール:実は私が盗聴器から発する電波を書き換えて、さも私の存在がないかのように演出しました。
ミシエラ:すごー!そんなこともできるの!?ウヴェルテュール!
ヨハン:高性能だぜ…
ブラット:黙れお前ら。だがウヴェルテュール、流石は母艦用に設計されたAIだ。
ウヴェルテュール:理解して頂き光栄です。
ブラット:さあウヴェルテュール、説明してやれ。
ウヴェルテュール:了解。これからの作戦はビオバイアス系列企業、サタンセキュリティの指示の下
ウヴェルテュール:宇宙海賊を取り締まります。
ミシエラ:まるで宙運私警団みたいなことするのね。
ヨハン:連中の真似事なんて嫌だぜ。
ブラット:続けろ。ウヴェルテュール。
ウヴェルテュール:ビオバイアスから支給されたアサルト機は5機。
ウヴェルテュール:私を含めた全員で部隊を編成し、要請がかかり次第スクランブル発進して対処に当たります。
ミシエラ:あれれー?5機?パイロットが一人足りないよー?
ヨハン:簡単な引き算だぜ。さてはポンコツだなテメー。
ウヴェルテュール:私を”評価”しますか。シュトライヒ2等宙尉。なるほど…
0:ウヴェルテュールの瞳がチカチカと光る。
ウヴェルテュール:ところで。先日押収したモービルの乗り心地はいかがですか。
ヨハン:な、なんのことだ…?
ウヴェルテュール:単独で巡回した際に、宇宙海賊から押収したモービルのことですよ。
ウヴェルテュール:今は無断で営内のガレージに置いてますよね?
ヨハン:なぜそれを…
ブラット:ヨハン?
ヨハン:あ、はは。賊が随分いいのを所持してやがったからよ、俺のと交換しただけだぜ。
ウヴェルテュール:押収品の私的留置(りゅうち)は軍の規律違反です。
ミシエラ:わーいヨハンの犯罪者ー!
ヨハン:おいおい勘弁してくれよ!
ウヴェルテュール:私は管理システムAIです。どこに・いつ・何が・どういった経緯で置かれているかを知ることができます。
ウヴェルテュール:もちろん例外はありますが、2等宙尉を降格させるだけの情報なら簡単に集められますよ。
ヨハン:わかった!俺が悪かったから!
ミシエラ:ウヴェルテュールすごすぎっ!
ブラット:その辺にしてやれウヴェルテュール。時間もない。
ウヴェルテュール:失礼しました。話を戻しますと、実はパイロットはもう一人います。
ウヴェルテュール:サタンセキュリティ1st.(ファースト)LT、ローガン・ルークです。
0:LT(エルティー)と読みます。
ミシエラ:ルークってまさか…?
ブラット:そ。3等宙佐の弟だ。
ミシエラ:うっそー!世間せま~い!
ヨハン:宙佐の弟か。たっぷり可愛がってやろうぜ。
ウヴェルテュール:すでにLTルークはサタンセキュリティの格納庫で我々の到着を待っています。
ブラット:ああ。それじゃ、俺たちもサタンセキュリティの基地へ向かうぞ。
ブラット:引っ越しだ。
ヨハン:おう!
ミシエラ:おー!
0:サタンセキュリティ、基地衛星『アスタロト』
ローガン:こちらサタンセキュリティ、基地衛星『アスタロト』。
ローガン:着艦コードを送れ。
ブラット:こちら連絡船マスピアル・ストーク。着艦コードを送る。
0:ミシエラがマスピアルストークの着艦コードを可視光通信で送る。
ローガン:コードを確認した。誘導灯を展開する。
ブラット:正面 点火。
ヨハン:正面ブースターを点火。減速する。
ミシエラ:船体を誘導灯に一致。誤差0.00。
ウヴェルテュール:ブースター燃焼 終了。
ヨハン:燃焼 終了 了解。微速(びそく)を維持する。
ローガン:格納コンテナ準備完了。いつでもどうぞ。
ブラット:マスピアル・ストーク、着艦する。
0:着艦時のわずかな衝撃が格納庫に響く。
ローガン:着艦を確認。固定具を連絡船に装着。降機ブリッジ接続。
ミシエラ:降機用ハッチの気圧をブリッジに順応。
ブラット:ハッチ開け。
ミシエラ:ハッチ開きます。
0:ブラットらは降機ブリッジを通り、衛星側のゲートに並ぶ。
ウヴェルテュール:特別隊員3名とアンスロノイド1基の入場許可を申請します。
ローガン:内蔵コードを確認。入場を許可する。
ローガン:ようこそ。宇宙軍 第665飛行隊の皆さん。
ブラット:歓迎に感謝する、LTルーク。
ローガン:これからよろしくお願いします特等宙尉。それではメインデッキでお待ちしています。
ヨハン:アレが宙佐の弟かあ。なーんか気に入らねんだよなあ。
ミシエラ:なんで?爽やかでいい感じじゃん。
ヨハン:なんつーかよお…こう、キラキラルーキーって感じで。
ブラット:なんだそりゃ。
ミシエラ:最初の頃はヨハンもあんな感じだったよ?
ヨハン:んなわけねえな!
ブラット:最初なんて全員そうだろ。小さいことを気にするな。
ヨハン:なんだ?俺の器が小さいって言いてえのか?あァ?
ブラット:そうは言ってねえ。
ミシエラ:〈手首を抑えながら〉いてて、手首の傷跡がしみるよ~…
ウヴェルテュール:気をつけてくださいね、バラッカ3等宙尉。
ウヴェルテュール:手首に内蔵されたチップには、あなたたちのライセンスIDが記録されています。
ウヴェルテュール:機密保持のために宇宙軍のデータベースにはアクセスできませんので
ウヴェルテュール:作戦期間はそのチップだけがあなたたちの身分証明です。
ミシエラ:私のチップの位置合ってる?振ると指がしびれるんだけど…
ブラット:確かに、若干の異物感があるな。
ヨハン:よかったなミシエラ。クソエイムの言い訳に丁度いいじゃん。
ミシエラ:違いますー!てか最近めっちゃ調子いいもんね!
ブラット:まあなんにせよ。出動までには各自克服しておけよ。
ヨハン:了解。
ミシエラ:ま、その内慣れるか。
ヨハン:にしても機密保持ねえ…マジで辺鄙(へんぴ)な所だな。俺たち以外誰もいないぜ。
ブラット:まあな。サタンセキュリティの警備活動は国連でも賛否が分かれている。
ブラット:だから実績を作ることで事実上の支配権を獲得するのさ。
ヨハン:勝手に縄張りをつくろうってワケか。『アブサード』の猿真似じゃねえかよ。
ウヴェルテュール:いいえシュトライヒ2等宙尉。宇宙における支配権が確立した暁には、
ウヴェルテュール:すべて宇宙軍に帰属することが決定しています。
ブラット:企業として引き際を弁(わきま)えてる分、宙運連よりずっとお利口ってワケだ。
ミシエラ:宇宙の支配か、それまでは帰れそうにないね…
ヨハン:しょげんなよ。帰った頃には俺たちは英雄だぜ。
ミシエラ:そうだね!頑張ろう!
0:
ローガン:初めまして皆さん。サタンセキュリティの1st.LT、ローガン・ルークです。
0:LT(エルティー)と読みます。
ローガン:よろしくお願いします。
ウヴェルテュール:よろしくお願いします。LTルーク。
ブラット:よろしくな。
ミシエラ:よろしくぅー!ミシェーラでいいよ!
ローガン:はい。僕のこともローガンと呼んでください。
ヨハン:おいローガン。
ローガン:なんでしょうか。
ヨハン:1尉相当だか、3等宙佐の弟だか知らねえけどよ、部隊じゃ俺が先輩だ。
ヨハン:そこんところ弁(わきま)えろよ?
ローガン:はい。もちろんですよシュトライヒ2等宙尉。
ヨハン:ハン。
ミシエラ:ホントは後輩が出来て嬉しいクセに。
ヨハン:うるせえ。オメーだって俺より下だろが。
ミシエラ:ほとんど一緒でしょ~!
ブラット:まあこんな感じでうるさいだろうが、よろしく頼む。
ローガン:もちろん!
ローガン:そうだ皆さん。長旅でお腹が空いたでしょう。
ローガン:ご飯にしませんか。
ミシエラ:きゃっほーう!メシだー!
ヨハン:オイオイ、基地内業務はいいのかよ?
ウヴェルテュール:心配ありませんシュトライヒ2等宙尉。すでにこの基地内は私の制御下にあります。
ヨハン:いつの間に!?
ウヴェルテュール:自己紹介をしている間にです。
ミシエラ:メシだー!
ローガン:じつはウヴェルテュールの起用は、宇宙母艦制御に向けての練習も兼ねているんです。
ブラット:なるほど。基地衛星の管理くらい造作もねえってことか。
ヨハン:そんなAI、聞いたこともねえ。
ローガン:まあ多少のマンパワーは必要ですけどね。あとでアサルト機を紹介します。なのでまずは
ミシエラ:メシだー!
ローガン:ええ、メシですね。
0:
ローガン:さあ、いただきましょう!
ブラット:これは…
ヨハン:なんというか…
ローガン:いかがですか?皆さん。
ローガン:ビオバイアス系列企業、ベルゼフードのお味は?
ヨハン:ハエなら好きかもな…
ブラット:ハエも魅力を感じないだろ…
ミシエラ:チガウ…コレ食べ物チガウ…
ローガン:そうですとも!完全栄養と長期保存を両立させた上に、食事が生み出す脳波形を的確に再現!
ローガン:まさに食べ物を超越した革新的な製品です!
ヨハン:開発者を殴りてえ。
ミシエラ:特等宙尉…ヤバいよ。わたし駄目かも…
ブラット:静かにしろ。いまマシな喰い方を考えてる…
ローガン:味も食感も未だかつて体験したことがないでしょう?これらを例えるならば…
ヨハン:溶けた長靴。
ブラット:パンドラの箱の臭いもれ。
ミシエラ:ナンプラーを拭いて干さずに放置した雑巾。
ローガン:…の三週間後の味。
ミシエラ:ッ!
ヨハン:気づいていたのか…!
ローガン:〈悲しみ〉その内慣れます。決して美味しいと感じることはありませんが、
ローガン:はじめは鼻をつまんで…次第に自然と飲み込めるようになります。
0:ローガンは顔を上げて三人の方を向く。泣いてるような笑っているような顔で。
ローガン:〈震えた声で〉まずさだって…単なる客観的な性質として…捉えるように…なりますから!
ミシエラ:〈泣き出す〉ううう…!うううう!
ブラット:〈狂ったように〉フフフ、はっはっは…
ヨハン:〈笑い声二重奏〉くくく、ふふふ…!
ローガン:〈笑い声三重奏〉あはははは!!!
ミシエラ:〈泣き声のような笑い声四重奏〉ふえええん!えへえへえへへ!
ウヴェルテュール:〈M〉これが人間に備わる共感能力…
ウヴェルテュール:〈M〉一緒に食事をするだけで、共に泣き、共に笑うことが出来る…
ウヴェルテュール:〈M〉私の開発者はそれを”こころ”と定義した。
ウヴェルテュール:〈M〉”こころ”の作用…
ウヴェルテュール:〈M〉…。
ウヴェルテュール:〈M〉…時間の無駄だな。
0:
ローガン:さあ、皆さん。元気を出して!
ローガン:これが僕らに支給されたアサルト機です!!
ミシエラ:おお~!カックイイー!
ヨハン:まさか…パンサースライドか!?
ブラット:フルモデルチェンジの構想が実用段階に達していたとは…
ローガン:ホールスラスタ・イオンエンジン搭載。出力換算値はなんと4800馬力です!
ヨハン:こっちは真面目に用意してくれてるみたいだな。
ミシエラ:武装はどんな感じ?
ウヴェルテュール:50mmNI(エヌ・アイ)マシンガン2丁、熱系フレア2回分。
ウヴェルテュール:突撃用電磁アーマーは、貫通性能に特化したΔ(デルタ)型です。
ヨハン:強襲用戦闘機の性格を順当に受けついでやがる…
ローガン:まだ試作段階ですけどねえ…
ブラット:試作か。どうやらこの部隊はあくまで実験運用ってことらしいな。
ローガン:ええ。そのように聞いてます。
ローガン:カラーリングも正規仕様とは異なるようにとの注文が入っていますからね。
ブラット:カラーリングも?妙な注文だな。
ヨハン:ミシエラ、どう思う?
ミシエラ:すっっごい気に入った!カラーリングも私達で替えちゃおうよ!
ヨハン:お!いいなそれ!
ウヴェルテュール:やれやれ、図画工作の時間ですか、広範囲は私に任せて下さい。
ローガン:塗料はこっちです!
ヨハン:早速やるか!うひょー!
ミシエラ:うひょー!
ブラット:〈M〉新しい仲間、新しい職場、新しい設備
ブラット:〈M〉…楽しいが、不確定要素が多すぎるな。
0:
ブラット:むうう…
ウヴェルテュール:特等宙尉、何をしていますか。
ブラット:地球へと向かう航路を監視している。
ウヴェルテュール:必要ありません。私がレーダーで監視しています。
ブラット:やらせてくれ。どうも胸騒ぎがして落ち着かないんだ。
ウヴェルテュール:非合理的ですね。
ブラット:すまないな。これが人間だ。
ウヴェルテュール:なるほど。コンテナより通信です。
ローガン:特等宙尉、いまお時間いいですか?
ミシエラ:みてみてー!ウヴェルテュールに頼んで、機体を真っ黒にしてもらったのー!
ヨハン:宇宙空間なら完全に姿をくらませられるぜ!
ブラット:馬鹿が。それじゃ有視界飛行の時に連携が取りづらくなるだろうが!
ヨハン:あ、それもそうだな!
ミシエラ:これからラインを引くんですー!
ミシエラ:何色がいいかなー?
ローガン:ショッキングピンクなんてどうでしょうか。
ヨハン:ああ、いんじゃねえの。
ミシエラ:採用ーぅ!
ブラット:おいやめろッ!!
ヨハン:そんじゃな~特等宙尉殿!
ウヴェルテュール:通信終了。
ブラット:ったく、いつも以上に はしゃいでやがる。
ウヴェルテュール:宙尉らは入隊以来の付き合いですよね。
ブラット:また調べたのか?
ウヴェルテュール:いけませんか。
ブラット:ふ、別にいいけどな。ああそうさ。俺たちはずっと一緒だ。
ブラット:ヨハンが汚職で減給された時も
ブラット:ミシエラが飲酒運転で検挙された時も俺たちは一緒だった。
ウヴェルテュール:あなたが宙運私警団と小競り合いをした時も、ですね。
ブラット:…そうだよ。所詮俺たちは厄介者。
ブラット:俺たちの居場所は、俺たちだけだ。
ウヴェルテュール:うらやましい。
ブラット:うらやましい事ァねえだろ。
ウヴェルテュール:そうですね。うらやましいという感情を私は正しく理解を…
ブラット:そうじゃなくて。
ブラット:お前ももう、”俺たち”だからさ。
ウヴェルテュール:特等宙尉…
ブラット:ん?あれは何だ?ウヴェルテュール!
ウヴェルテュール:解析します。
ウヴェルテュール:所属コードはビオバイアスの貨物船ですが、こちらの信号に反応しません。
ウヴェルテュール:航路もデブリの中を…明らかに不自然です。
ブラット:おいおい、なりすましゲンガーさんが地球に何の用だ?
ウヴェルテュール:どうしますか特等宙尉。
ブラット:当然追うさ。
ブラット:衛星内全域に通告。現在何者かがビオバイアスの貨物船でデブリ内を進行中。
ブラット:目的は不明。総員戦闘配備。
0:サイレンが基地内に鳴り響く。
ヨハン:総員戦闘配備!急げ!
ウヴェルテュール:第一から第五デッキを解放。
ウヴェルテュール:カタパルト、射出準備 完了。
ウヴェルテュール:射出タイミングを各パイロットに譲渡します。
ヨハン:2番機、準備完了!
ミシエラ:3番機、準備完了!
ローガン:4番機、準備完了!
ローガン:いよいよ本番ですね…!特等宙尉!
ミシエラ:ファースト・スクランブルだね!リーダー!
ヨハン:俺たちの初仕事だ。サクッと終わらせよう。
ブラット:ああ。
ブラット:…パイロット各位、連携を乱すなよ。
ウヴェルテュール:5番機、準備完了。
ブラット:よし。サタンセキュリティ第001飛行隊、スクランブル発進ッ!!
0:漆黒の機体にショッキングピンクのラインが縦横無尽に迸る5機のアサルト機が基地から出撃し
0:Ⅴ字隊形で貨物船へと急行する。
ウヴェルテュール:特等宙尉。外部通信可能距離に入りました。
ミシエラ:そこの貨物船、とまりなさーい!
ローガン:くそう、連中まったく応じませんね。
ウヴェルテュール:タグコンテナに信管反応。どうやら積み荷は機雷のようです。
ヨハン:機雷だって!?
ローガン:そんなの積んで、いったい地球に何の用ですかね…!
ブラット:ますます ここを通すわけには行かなくなったな。
ブラット:全機 戦闘態勢。誘爆に気をつけながら…貨物船を止めるぞ!
全員:了解ッ!
0:
ヨハン:止めるったって、動力源はタグコンテナの内側だぜ!
ローガン:誘爆しないように、タグコンテナをはがすしかありません!
ウヴェルテュール:貨物船よりエネルギー反応。砲撃来ます。
ミシエラ:攻撃してきた!?
ヨハン:無人じゃねえのか!まさか、自爆テロ…!?
ウヴェルテュール:私が突入します。
ブラット:危険だ!ウヴェルテュール!
ウヴェルテュール:内部に突入できさえすれば、キーを通して貨物船をジャックできます。
ウヴェルテュール:砲撃をやめさせ、貨物船を停止させるにはそれしかありません。
ブラット:わかった。全員でウヴェルテュールを…
ローガン:ぐああ!
ヨハン:ローガン!大丈夫か!
ローガン:損傷軽微…!第三者です!
ヨハン:この機体反応は、まさか…!
ミシエラ:どうして、宙運私警団の巡視船が…
ブラット:何がどうなっている…?
ウヴェルテュール:巡視船は恐らく我々を海賊と誤認しています。
ブラット:すぐに通信を送れ!
ウヴェルテュール:おかしい…外部通信システムがロックされました。
ローガン:〈M〉なぜだ…なぜウヴェルテュールがアクセスできない?
ヨハン:丁度いいぜ!俺らにケンカ売ったことを後悔させてやるッ!
ブラット:仕方ねえ。俺がウヴェルテュールを援護する。2番機から4番機は巡視船を無力化しろ。
ブラット:くれぐれも巡視船を撃破するなよ!
全員:了解ッ!
0:
ブラット:ウヴェルテュール、俺が砲撃を引き付ける。
ブラット:隙が出来たら一気に電磁アーマーで貨物船に突撃だッ!
ウヴェルテュール:了解。
0:
ローガン:あの巡視船、なかなかの手練れですよ!
ヨハン:くそっ!ちょこまかと飛びやがって!!
ヨハン:マジで墜落させちまうぞ!
ミシエラ:危ない!!
ローガン:マズいです!タグコンテナに穴が!!
ミシエラ:機雷が外に漏れちゃう!
ヨハン:気をつけろ!誘爆したら全滅だッ!
ミシエラ:わかってるって!
ミシエラ:(どうしよう…こんな時にしびれが…!)
0:
ウヴェルテュール:誘導ミサイル来ます。
ブラット:フレア展開ッ!なんなんだあの武装は!まるで宇宙軍と戦ってるみたいだぜッ!
0:
ローガン:巡視船 損傷甚大ッ!戦闘不能です!
ヨハン:よっしゃあ!ざまァみろ!!
ミシエラ:ホッ、よかった…
ヨハン:1番機!こっちは終わった!すぐに合流を…
ローガン:待ってください!この反応は、パスドライブ!?
ミシエラ:嘘…まだ来るの…?
ブラット:パスドライブだと…?
ヨハン:こんなピンポイントでアクティブパスを使う艦(ふね)なんざ…
ヨハン:俺は1つしか知らねえ…。
ウヴェルテュール:宙運私警団、量子変換ドライブ搭載機…
ブラット:あれは…!
0:最高峰のAIを積んだ美しい駆逐艦が突如として現れる。
0:ブラッド・ボールは思った。
0:どうして絶望する瞬間には、必ず感動がやってくるのだろうか…
ブラット:インフィニティ型駆逐艦…!
ローガン:巡視船、離脱しました!
ヨハン:チッ、時間稼ぎか!やつめ、駆逐艦が到着するまで粘ってやがった!
ミシエラ:選手交代とかありえない~!
ミシエラ:(こっちはギリギリだってのに…)
ヨハン:望まぬ延長戦だが、ロスタイム(妨害された)分、きっちり取り返すぞ!
ウヴェルテュール:特等宙尉。駆逐艦の攻撃まで時間がありません。
ブラット:〈我に返る〉ハッ!
ブラット:…ああ、わかってる。
ブラット:2番機から4番機!俺らでは駆逐艦には勝てねえ。
ブラット:逃げ仕度を整えておけ!
ブラット:5番機、縦列隊形!
ウヴェルテュール:了解。
ヨハン:3番機、4番機!俺たちは駆逐艦の相手をするぞ!
ヨハン:貨物船に近づかせるな!
ミシエラ:了解ッ!
ローガン:了解ッ!
0:
ブラット:電磁アーマー展開!5番機、俺の後ろをついてこい!
ウヴェルテュール:了解。
ブラット:突撃ィイ!
0:
ミシエラ:これがインフィニティ型…!逃げ切れるかな…
ヨハン:笑えてくるぜ…巡視船相手にイキってた自分(テメー)がよお…
ローガン:兄さん…”今”なんだね?ここが僕の”正念場”なんだね…!?
ミシエラ:私がひきつける。
ヨハン:なに!?馬鹿言ってんじゃねえ!
ローガン:そうですよ!一斉に攻撃しましょう!
ミシエラ:いいのッ!!
0:
ミシエラ:私の片腕、もう…いう事きかないの…
0:
ブラット:ぐううッ!電磁アーマー消失ッ!
ブラット:ウヴェルテュールッ!突入しろッ!
ヨハン:頼む!ウヴェルテュール!
ローガン:お願いします!ウヴェルテュール!
ミシエラ:ウヴェルテュール…
0:
ミシエラ:お願い…
ウヴェルテュール:…了解。
ウヴェルテュール:電磁アーマー展開。5番機、突入します。
0:ズゴゴゴゴ!!ウヴェルテュールの無人機が貨物船に突入する。
ウヴェルテュール:突入成功。
ヨハン:よし!
ローガン:やりましたね!
ウヴェルテュール:あとは貨物船のハッキングを…
ウヴェルテュール:おかしい…
ブラット:どうした!?ウヴェルテュール!
ウヴェルテュール:船内にいるのは、15人全て…ビオバイアスの社員です。
ブラット:なん、だと…?
ミシエラ:まさか、人質…!?
ウヴェルテュール:いや…”もう一人”…
0:ウヴェルテュールの探知にかかる謎の少女の姿。
ウヴェルテュール:あなたは、誰…?
ローガン:貨物船から高エネルギー反応です!!
ブラット:そんな、まさか動力源が暴走している!?
ローガン:エネルギー圧、急速に上昇!!
ローガン:収束点は、メインブリッジです!
ブラット:どういうことだ、新兵器か!?
0:リリ「…」
ミシエラ:声?誰…誰なの?
ヨハン:声が聞こえる…少女の声だ!
ブラット:馬鹿な、貨物船に乗っているのか…?
ローガン:収束点は…
ウヴェルテュール:あなたは、何者…?
ローガン:収束点は…
ヨハン:どうしたローガン!?
ローガン:収束点は…!
0:
ローガン:人間です…!
0:
ミシエラ:光った!!!
ヨハン:エネルギービーム!?こ、この数は!
ヨハン:ぐああああッ!
0:
ローガン:2番機、撃墜(ロスト)!なんて追尾性能だ!
ウヴェルテュール:〈静かに混乱中〉外部との通信をロックし…ビオバイアス同士で交戦…
ローガン:振り切れない!!うわああ!たすけて!!兄さァァァアんッ!!!
0:
ミシエラ:4番機、ロスト!
ウヴェルテュール:非正規仕様の戦闘機で、現場をかく乱…
ミシエラ:機雷が…誘爆していく…
ミシエラ:そんな…!あんまりだよ…あんまりだよ…ッ!!
0:
ブラット:3番機!応答しろ!3番機!!
ブラット:ぐああッ!
ウヴェルテュール:私は…宇宙母艦を運営するために生まれて…
ウヴェルテュール:これは…学習過程で…
ブラット:ウヴェルテュール…
ウヴェルテュール:特等宙尉…?
ブラット:脱出しろ…!お前はーー
0:
ウヴェルテュール:特等宙尉…?
0:1番機、ロスト。
ウヴェルテュール:そんな…特等宙尉…
ウヴェルテュール:そんな…私は…
ウヴェルテュール:あの少女は…
ウヴェルテュール:…データにありません。
0:5番機、ロスト。
3等宙佐:今回の貨物船騒動の報告。
3等宙佐:20時00分。ビオバイアス所属の貨物船が海賊に襲撃される。
3等宙佐:20時02分。貨物船は動力源の暴走が原因で、運搬中の機雷に誘爆。
3等宙佐:貨物船員15名は宙運私警団により救助される。
3等宙佐:同時刻。襲撃していたアサルト5機は誘爆に巻き込まれ、貨物船と共に消滅。
3等宙佐:アサルト5機の海賊の身元は
3等宙佐:不明。
0:
0:宇宙軍某衛星。
3等宙佐:2階級特進おめでとう。すまないね。ボール2等宙佐。
3等宙佐:宇宙軍としては味方が100の功績を積むよりも、たった一つの敵の不祥事が欲しいのだよ。
3等宙佐:しかし、すべての機雷が誘爆したのにも関わらず、貨物船員15名が無傷とは、一体何が?
3等宙佐:近くにいたのは、かのインフィニティ型…
3等宙佐:おっと。いけないいけない。危うく首を突っ込むところだった。
3等宙佐:無難に無難に…それが処世術だよ。
3等宙佐:ふっふっふっふ…
出力換算5000馬力
40mm口径機関砲2連装
徹甲弾2000m/s
榴弾1000m/s