台本概要

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タイトル 【A/B/C Side:NEW】PROFESSOR⇒PROFESSOR
作者名 アール/ドラゴス  (@Dragoss_R)
ジャンル ミステリー
演者人数 2人用台本(不問2)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 プロフェッサー・プロフェッサー。

新月の夜。ルイス・キャロルは月を見上げる。
これは、虚ろな夜の出来事。

【Absolute/Banquet/Collision Prologue:Lewis】


※こちらの台本は、「【Full Version】Absolute/Banquet/Collision」のルイス・キャロルの前日譚部分を切り抜き、一部をこの台本用に修正したものになります。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ルイス 不問 29 ルイス・キャロル。 数学教授。童話作家もやっている。
ヴィクター 不問 25 ヴィクター・フランケンシュタイン。 大学生。若き天才科学者。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:19世紀末、イギリス、オックスフォード。星明かりの差し込む豪華な邸宅にて。 : ルイス:雲のない冬の夜空。燦然(さんぜん)と輝く「三つ星」(トライスター)を携えて静かに佇むオリオンは、筆舌に尽くしがたい勇猛さと美しさを兼ね備える。しかし、夜という(宵闇の番人にふさわしいのは、やはり…。 ヴィクター:[被せて]さっきからなにを一人でぶつぶつ言っているんだ、ルイス。まさか次に書く童話にそんな語りを入れる気か? ルイス:ただ物思いにふけっていただけだとも。何か用かなヴィクター。 ヴィクター:実験が終わったから様子を見に来ただけだよ。そうしたらお前が葡萄酒(ワイン)を片手に空を見上げて独りごちていた。 ルイス:実験はどうだった? ヴィクター:今回のは上手くいかなかった。だがあの失敗作を以て、成功する場合と失敗する場合の規則性がより詳細に判明した。もっと詳しく分析すれば、より素晴らしい探求ができるはずだ。 ルイス:それは僥倖(ぎょうこう)。素材ならいくらでも用意するから、君は思うがまま己(おの)が好奇心を解消するといい。 ヴィクター:言われなくてもそうさせてもらうさ。“実験品”(こどもたち)と離れ、ロンドンに赴くまでのタイムリミットも迫ってきていることだしな。今のうちにたくさん遊んでおかなくては。 ルイス:そんなに身構えることはない、たかが二週間この館を空けるだけなんだから。 ヴィクター:何を言っているんだルイス!二週間も我が子たちと会えなくなるんだぞ…!?俺からしたら由々しき事態だ! ルイス:…ああ、そうだ。オックスフォード大学の方に、一か月ほど休みをいただくと連絡するのを忘れていた。 ヴィクター:話を逸らすな! ルイス:悪かったよヴィクター。しかし許してほしい、私にはまだ子供がいないのでね。君の思いが理解できないんだ。 ヴィクター:ならばお前にも気づかせてやろう。いいか?二週間ロンドンに滞在するということはそれ即ち、二週間“リデル嬢”に会えなくなるということだ。 ルイス:……。 ヴィクター:ことの重大さが分かったか? ルイス:…うん。しかし、仕方ないさ。私がロンドンに向かうのも、“プロフェッサー”の意志を継いだのも…、すべてはあの子のためなのだから。彼女の笑顔を見るためなら、私はいかなる辛抱をも厭(いと)わない。だからこそ、君も我慢してほしい。二週間と少しの辛抱だ。 ヴィクター:…お前の覚悟には尊敬しかないな。 ルイス:君が過保護すぎるだけだと思うが。 ヴィクター:お褒めにあずかり光栄だ。ところでルイス。今さっき“あの英国紳士”のことをプロフェッサーと呼んだが、今後別称を使うならば別の言い方で呼んでくれないか。お前もプロフェッサーだからややこしいことこの上ない。 ルイス:会話は成り立つし別に良くないかね。まあいいや、そうだな…、ならば、「“プロフェミナル”」とでも呼称しよう。 ヴィクター:…お得意の「混合語」(ポートマントー)か。 ルイス:伝わったのならこれでいいかな。 ヴィクター:待て。区別はできるようになったが余計ややこしくなったぞ。 ルイス:そこは君が頑張ってくれればいいだけの話さ。なにせ、君以外にはほとほと口に出すことのないネームなのでね。というか文句を言ってきたのは君なんだ、それすら億劫だというのは高望みが過ぎる話だな。 ヴィクター:チッ、たかが人物の呼び方だろうに。…まあいい。それで妥協してやる。光栄に思え。 ルイス:はいはい。さて、今夜は夜空の星々がよく見える。こんな夜は、頭脳明晰なプレイヤーとチェスの対局をしたくなる気分だなあ~。 ヴィクター:…はぁ。一局だけだからな。 ルイス:君が素直に付き合ってくれる優しい学生で嬉しい限り。 ヴィクター:俺が白を貰っても? ルイス:どうぞ。あぁワインも飲むかね?これは白ではなく赤だけれど。 ヴィクター:酔っぱらった状態でお前と指すなんて御免だ。俺は先手で素面(しらふ)、お前は後手で酩酊(めいてい)。やるのなら実力差はきちんと埋めさせて貰おう。 ルイス:人の道を外れても優等生は優等生ということらしい。 ヴィクター:お前や“プロフェミナル”が腐っても教授であることと同じだ。さあ、御託はもういい。始めるぞ。 ルイス:ふふっ…。ああ。せっかくの紳士の嗜みだからね。「軽快」(ライト)で「重厚」(ダーク)な対戦にしよう。 : 0:対局終了。 : ルイス:…では、これでメイトだ。 ヴィクター:チッ…、対戦感謝する。 ルイス:悪態をつきつつも礼儀をきちんとできるのは君のいいところだな。伸ばしていこう。 ヴィクター:うるさい。…はぁ、疲れた。まったく、チェスは真夜中にやるものじゃないだろうが…。 ルイス:わかっていないね、星々が見守る中で指す一手一手が愛おしいんじゃないか。 ヴィクター:お前の感性はよくわからないな…。 ルイス:君ももう少しすればわかるようになるさ。 ヴィクター:俺の感受性がまだ年端もいかない子供だと? ルイス:ああ。なにせ君は、まだ「哀」(あい)を知らない。 ヴィクター:「愛」なら“実験品”(こどもたち)からたくさんもらっている。独身貴族のお前と同じにするな。喧嘩を売っているということならば買うぞ。 ルイス:…ふふ。そうだね、それはすまなかった。…さてと。気が付けば時刻は午前0時を廻っていたようだ。最近は実験続きで寝不足だったろう、付き合わせて悪かったね。床に就くと良い。 ヴィクター:言われなくてもそうさせてもらうつもりだ。…ふぁ…あ。 ルイス:そうだ、ヴィクター。 ヴィクター:なんだ…。今の俺は握手すら拒むぞ。 ルイス:ふ…。そうか。ならばなんでもない。ゆっくり休むんだよ。 ヴィクター:ああ。…おやすみなさい、ルイス。良い夜を。 ルイス:うん。おやすみ。 : 0:ヴィクターが眠たそうに部屋を出ていく。 : ルイス:…あぁ。新月の空というのは、なぜこんなにも虚ろなのだろうね。まるで、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」から、イエス・キリストだけが切り取られたような。ロミオとジュリエットが無事に添い遂げてしまったかのような。…この感情は、果たして私だけなのだろうか。ヴィクターにそう問うてみたかったが…、我儘に付き合わせてしまったしな。次の新月の日にでも聞くとしよう。…さて。私もこの一杯を飲み干したらベッドに入らなくては。明日も講義と執筆。そしてなにより…、 : ルイス:“リデル”ちゃんが待っている。 : 0:To be continued.

0:19世紀末、イギリス、オックスフォード。星明かりの差し込む豪華な邸宅にて。 : ルイス:雲のない冬の夜空。燦然(さんぜん)と輝く「三つ星」(トライスター)を携えて静かに佇むオリオンは、筆舌に尽くしがたい勇猛さと美しさを兼ね備える。しかし、夜という(宵闇の番人にふさわしいのは、やはり…。 ヴィクター:[被せて]さっきからなにを一人でぶつぶつ言っているんだ、ルイス。まさか次に書く童話にそんな語りを入れる気か? ルイス:ただ物思いにふけっていただけだとも。何か用かなヴィクター。 ヴィクター:実験が終わったから様子を見に来ただけだよ。そうしたらお前が葡萄酒(ワイン)を片手に空を見上げて独りごちていた。 ルイス:実験はどうだった? ヴィクター:今回のは上手くいかなかった。だがあの失敗作を以て、成功する場合と失敗する場合の規則性がより詳細に判明した。もっと詳しく分析すれば、より素晴らしい探求ができるはずだ。 ルイス:それは僥倖(ぎょうこう)。素材ならいくらでも用意するから、君は思うがまま己(おの)が好奇心を解消するといい。 ヴィクター:言われなくてもそうさせてもらうさ。“実験品”(こどもたち)と離れ、ロンドンに赴くまでのタイムリミットも迫ってきていることだしな。今のうちにたくさん遊んでおかなくては。 ルイス:そんなに身構えることはない、たかが二週間この館を空けるだけなんだから。 ヴィクター:何を言っているんだルイス!二週間も我が子たちと会えなくなるんだぞ…!?俺からしたら由々しき事態だ! ルイス:…ああ、そうだ。オックスフォード大学の方に、一か月ほど休みをいただくと連絡するのを忘れていた。 ヴィクター:話を逸らすな! ルイス:悪かったよヴィクター。しかし許してほしい、私にはまだ子供がいないのでね。君の思いが理解できないんだ。 ヴィクター:ならばお前にも気づかせてやろう。いいか?二週間ロンドンに滞在するということはそれ即ち、二週間“リデル嬢”に会えなくなるということだ。 ルイス:……。 ヴィクター:ことの重大さが分かったか? ルイス:…うん。しかし、仕方ないさ。私がロンドンに向かうのも、“プロフェッサー”の意志を継いだのも…、すべてはあの子のためなのだから。彼女の笑顔を見るためなら、私はいかなる辛抱をも厭(いと)わない。だからこそ、君も我慢してほしい。二週間と少しの辛抱だ。 ヴィクター:…お前の覚悟には尊敬しかないな。 ルイス:君が過保護すぎるだけだと思うが。 ヴィクター:お褒めにあずかり光栄だ。ところでルイス。今さっき“あの英国紳士”のことをプロフェッサーと呼んだが、今後別称を使うならば別の言い方で呼んでくれないか。お前もプロフェッサーだからややこしいことこの上ない。 ルイス:会話は成り立つし別に良くないかね。まあいいや、そうだな…、ならば、「“プロフェミナル”」とでも呼称しよう。 ヴィクター:…お得意の「混合語」(ポートマントー)か。 ルイス:伝わったのならこれでいいかな。 ヴィクター:待て。区別はできるようになったが余計ややこしくなったぞ。 ルイス:そこは君が頑張ってくれればいいだけの話さ。なにせ、君以外にはほとほと口に出すことのないネームなのでね。というか文句を言ってきたのは君なんだ、それすら億劫だというのは高望みが過ぎる話だな。 ヴィクター:チッ、たかが人物の呼び方だろうに。…まあいい。それで妥協してやる。光栄に思え。 ルイス:はいはい。さて、今夜は夜空の星々がよく見える。こんな夜は、頭脳明晰なプレイヤーとチェスの対局をしたくなる気分だなあ~。 ヴィクター:…はぁ。一局だけだからな。 ルイス:君が素直に付き合ってくれる優しい学生で嬉しい限り。 ヴィクター:俺が白を貰っても? ルイス:どうぞ。あぁワインも飲むかね?これは白ではなく赤だけれど。 ヴィクター:酔っぱらった状態でお前と指すなんて御免だ。俺は先手で素面(しらふ)、お前は後手で酩酊(めいてい)。やるのなら実力差はきちんと埋めさせて貰おう。 ルイス:人の道を外れても優等生は優等生ということらしい。 ヴィクター:お前や“プロフェミナル”が腐っても教授であることと同じだ。さあ、御託はもういい。始めるぞ。 ルイス:ふふっ…。ああ。せっかくの紳士の嗜みだからね。「軽快」(ライト)で「重厚」(ダーク)な対戦にしよう。 : 0:対局終了。 : ルイス:…では、これでメイトだ。 ヴィクター:チッ…、対戦感謝する。 ルイス:悪態をつきつつも礼儀をきちんとできるのは君のいいところだな。伸ばしていこう。 ヴィクター:うるさい。…はぁ、疲れた。まったく、チェスは真夜中にやるものじゃないだろうが…。 ルイス:わかっていないね、星々が見守る中で指す一手一手が愛おしいんじゃないか。 ヴィクター:お前の感性はよくわからないな…。 ルイス:君ももう少しすればわかるようになるさ。 ヴィクター:俺の感受性がまだ年端もいかない子供だと? ルイス:ああ。なにせ君は、まだ「哀」(あい)を知らない。 ヴィクター:「愛」なら“実験品”(こどもたち)からたくさんもらっている。独身貴族のお前と同じにするな。喧嘩を売っているということならば買うぞ。 ルイス:…ふふ。そうだね、それはすまなかった。…さてと。気が付けば時刻は午前0時を廻っていたようだ。最近は実験続きで寝不足だったろう、付き合わせて悪かったね。床に就くと良い。 ヴィクター:言われなくてもそうさせてもらうつもりだ。…ふぁ…あ。 ルイス:そうだ、ヴィクター。 ヴィクター:なんだ…。今の俺は握手すら拒むぞ。 ルイス:ふ…。そうか。ならばなんでもない。ゆっくり休むんだよ。 ヴィクター:ああ。…おやすみなさい、ルイス。良い夜を。 ルイス:うん。おやすみ。 : 0:ヴィクターが眠たそうに部屋を出ていく。 : ルイス:…あぁ。新月の空というのは、なぜこんなにも虚ろなのだろうね。まるで、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」から、イエス・キリストだけが切り取られたような。ロミオとジュリエットが無事に添い遂げてしまったかのような。…この感情は、果たして私だけなのだろうか。ヴィクターにそう問うてみたかったが…、我儘に付き合わせてしまったしな。次の新月の日にでも聞くとしよう。…さて。私もこの一杯を飲み干したらベッドに入らなくては。明日も講義と執筆。そしてなにより…、 : ルイス:“リデル”ちゃんが待っている。 : 0:To be continued.