台本概要
634 views
タイトル | 【A/B/C Side:CRESCENT】♠Invitation♥to♣Magician♦ |
---|---|
作者名 | アール/ドラゴス (@Dragoss_R) |
ジャンル | ミステリー |
演者人数 | 2人用台本(不問2) ※兼役あり |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
インヴィテーション・トゥ・マジシャン。 何の変哲もない昼下がり。アレイスター・クロウリーに招待状が届く。 謎が謎を呼ぶ手紙は、突然に。 【Absolute/Banquet/Collision Prologue:Aleister】 ※こちらの台本は、「【Full Version】Absolute/Banquet/Collision」のアレイスター・クロウリーの前日譚部分を切り抜き、一部をこの台本用に修正したものになります。 634 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
アレイスター | 不問 | 29 | アレイスター・クロウリー。 ミステリアスな人物。魔術/手品 師。 |
ジキル | 不問 | 29 | ヘンリー・ジキル。 アレイスターの助手。善と悪は表裏一体。 |
ハイド | 不問 | 1 | エドワード・ハイド。 「悪から生まれたモノ」。ジキル役が兼ねる。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:19世紀末、イギリス、ロンドン。街はずれの古い小家(しょうか)にて。
:
ジキル:『1898年、1月14日。14時39分。鉛を煮詰めたような空の色に、溜息を一つ。灰を被るのは「硝子靴の姫君」(サンドリヨン)だけであってほしいといくら願っても、神の気まぐれには抗えない。彼女の魔法が解ける午前0時になれば、燃ゆる星々も蔑むように顔を覗かせ、このロンドンの街を照らすのだろうか。』、と。…そういえば先生、遅いですね。…面倒ごとに巻き込まれていないといいのですが。
アレイスター:残念ながら。
ジキル:わっ…!?
アレイスター:きちんと厄介ごとに巻き込まれてきたよ。
ジキル:せ、先生…!?おかえりなさい、いつからそこに…。
アレイスター:つい今しがた。ただいま、ジキルくん。これ今月のストランド・マガジンと、新聞(タブロイド)。
ジキル:あ、ありがとうございます。でも厄介ごとって、いったい何があったんですか?
アレイスター:いやあ、実は帰り道で「苦手な奴」(イェイツ)に出くわしちゃって。
ジキル:その名前…、確か先生が【黄金の夜明け団】に居た頃に犬猿の仲だったっていう、あの?
アレイスター:そう。アイツ非道いんだよ?僕に気づいた瞬間大声で、『見ない間に随分悪行を重ねたそうだな、恥知らずのアレイスター・クロウリー!』って。通行人がみんな僕たちの方振り返って、小走りでそそくさ逃げていったよ。本当に勘弁してほしいよね。
ジキル:それは、災難でしたね…。しかし、道端で大勢に聞こえるように名前呼ばれて、大丈夫だったんですか?
アレイスター:大丈夫なわけないだろう。すぐ逃げようとしたけどアイツが逃がしてくれなくて、最終的には誰かしらの通報で、結局、警視庁(ヤード)のお世話になっちゃったよ。応対してくれたのがレストレードさんだったのは唯一の救いだったけど。
ジキル:きっと警部も先生のお気持ちを察してくれたんだと思いますよ。先生や私のことは“あの人”が口を利いてくださっているでしょうし。
アレイスター:ありがたい限りだね。でも、重い腰を上げてまで政府やメディアから僕たちを護ることはしてくれるのに、頑なに弟さんたちには会わせてくれないんだもんなあ。
ジキル:…それはきっと、先生がベイカー街に足を運んだら、余計面倒なことになりそうだからだと思います。
アレイスター:面倒っていうのはどうして?
ジキル:私たちが今現在、人目を憚(はばか)り、この廃墟のような家に住んでいることが最もわかりやすいかと。
アレイスター:ちぇ。つれないなあ、ジキルくんは。まあその通りだし、もちろん僕も理解(わか)ってるんだけど。でもさあ、せめて挿絵画家さんとは会わせてくれてもいいと思わない?
ジキル:挿絵画家…、シドニー・パジェット氏ですか?
アレイスター:僕は博士の綴る字に添えられる彼の絵もとっても好きでね。最悪サインだけでもいいから欲しいんだけどなあ。
ジキル:では、今度“あの人”に会ったときに伝えておきます。先生が熱望されていたのでどうにか、と。
アレイスター:ごめんね、お願い。
ジキル:はい。ところで先生。今日の探求はどうしますか?いつもならこれくらいの時間から準備を始めますが。
アレイスター:…やめておこうかな。まあ本当は「生贄の山羊」(スケープゴート)の羊皮紙(スクロール)を使って新しい魔術(てじな)でも開拓しようと思ってたんだけど、いろいろあったせいでやる気失せちゃった。だから今日はおとなしく、新作の事件簿を拝読することにするよ。
ジキル:わかりました。そういうことならば、私は新聞を読んでいてもいいですか?
アレイスター:もちろん。はい、どうぞ。
ジキル:ありがとうございます。……あれ、先生。何か封筒のようなものが挟まっていますが。
アレイスター:えぇ嘘?…本当だ。こんな手紙貰った覚えないんだけど。もしかして僕、新聞買った拍子に誰かの手紙を盗ってきちゃったのかな。
ジキル:宛先に『アレイスター・クロウリー様』とありますけど…。
アレイスター:不思議なこともあったものだなあ。そしてそこはかとなく嫌な予感がする。
ジキル:…同じくです、先生。
アレイスター:…とりあえず、中身見てみよっか。まだ面倒ごとと決まったわけじゃないしね。
ジキル:そう、ですね。(手紙を開く)わ…。とても達筆な字…。
アレイスター:読み上げてもらっていいかな。
ジキル:は、はい。えぇ、と…。
ジキル:『招待状。銀狼(ぎんろう)が孤高に嘶(いなな)き、夜に咲く宝石が妖艶(ようえん)に満ちる日。五人の娼婦が切り裂かれた街にて開かれる晩餐会に、皆様をご招待いたします。開宴は午前0時を予定しておりますので、23時30分頃お宅にお迎えに上がります。それまでどうか、ご歓談の程を。』…、以上です。差出人はどこにも書いていませんでした。
アレイスター:なるほど。…月が満ちる夜に迎えに来る、か。ジキルくん、次の満月は?
ジキル:確か一昨日(いっさくじつ)が新月だったので、25日と26日の間かと。
アレイスター:…エックスデーまでは二週間弱ってことだね。なるほど。
ジキル:どうしますか?
アレイスター:あっちから迎えに来るというのなら、丁重にお帰りいただくまで。…と、言いたかったんだけど。今回ばかりは参加せざるを得なさそうだ。
ジキル:それは…?
アレイスター:手紙の裏を見てごらん。
ジキル:裏…?…っ、これは!?
アレイスター:『P.S. 当日は是非「悪から生まれたキミ」とも話がしてみたいので、どうぞ検討をよろしく。数日後を楽しみにしているよ。「御三方」。』…、どうやら僕たちは、どこの誰かも知らない人に弱みを握られてしまっている、というわけだ。
ジキル:そんな…、あの実験に関する資料(メモ)と研究所(ラボ)はすべて私と先生で燃やしたはず…、なのになぜ…!?
アレイスター:それを解明するためにも、このパーティーに出席せざるを得ないだろうね。いやあ、困ったことになったなあ。
ジキル:…申し訳ありません、先生。また私のせいで、あなたにご迷惑を。
アレイスター:謝らないで大丈夫だよ。迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないからさ。というか、僕としてはむしろ嬉しいくらいだからね。
ジキル:うれしい…?
アレイスター:うん。だって、こんな楽しそうなお誘いが僕たちの元へやってきたのは、きっと君の黒歴史(けんきゅう)と「彼」の影響が大きいだろう?君たちのおかげで僕はこんなに面白そうな宴会に参加できるんだ。逆に僕から君に感謝を送りたいくらいだよ。というか送っていいよね?ありがとう。
ジキル:……ふっ、あははは…!やっぱり先生は変わってます…っ!
アレイスター:それはお互い様。
ジキル:今の私は先生ほど変わってませんよ。たぶん。ふふ。
アレイスター:…うん。やっぱり君には笑った表情(カオ)の方が似合うね。さて、時計の針ももうすぐ午後三時を指す頃合いだ。どうかな、たまには気晴らしにティータイムなんて。この手紙のことについて考えるのはその後にしてさ。
ジキル:もちろんです。では、準備しますね。確か茶葉(ハーブ)はラベンダーとカモミールがありましたが、どちらに?
アレイスター:今日の気分はラベンダーかな。
ジキル:わかりました。では、お湯を沸かしてきます。
アレイスター:ありがとう。「質素」(ビター)で「優雅」(スウィート)な時間にしようね。
:
0:
:
ハイド:(M)ああ。面白かった。今のは面白かったな。ジキル。お前は気づかなかったかもしれないが、アレイスターが手紙の裏の文字を見つけたとき、一瞬だけやつの瞳孔(どうこう)が大きく開いたぞ。あの大魔術師が驚きを隠せないだなんて、こんなに面白いことはない。だがまあ、仕方のないことか。実際わたしも驚いた。わたしが知る限り、わたしのことを知っている人間はこの世で三人だけだ。そいつは完全なイレギュラー。果たしてどうやってわたしのことを知ったのか。捜索(たど)ったのか、復元(もど)したのか、はたまた最初から所持(にぎ)っていたのか。月光が囁く夜、意識を取り戻すのを楽しみにしているぞ。清く正しく美しく、心優しい、ヘンリー・ジキル。
:
0:To be continued.
0:19世紀末、イギリス、ロンドン。街はずれの古い小家(しょうか)にて。
:
ジキル:『1898年、1月14日。14時39分。鉛を煮詰めたような空の色に、溜息を一つ。灰を被るのは「硝子靴の姫君」(サンドリヨン)だけであってほしいといくら願っても、神の気まぐれには抗えない。彼女の魔法が解ける午前0時になれば、燃ゆる星々も蔑むように顔を覗かせ、このロンドンの街を照らすのだろうか。』、と。…そういえば先生、遅いですね。…面倒ごとに巻き込まれていないといいのですが。
アレイスター:残念ながら。
ジキル:わっ…!?
アレイスター:きちんと厄介ごとに巻き込まれてきたよ。
ジキル:せ、先生…!?おかえりなさい、いつからそこに…。
アレイスター:つい今しがた。ただいま、ジキルくん。これ今月のストランド・マガジンと、新聞(タブロイド)。
ジキル:あ、ありがとうございます。でも厄介ごとって、いったい何があったんですか?
アレイスター:いやあ、実は帰り道で「苦手な奴」(イェイツ)に出くわしちゃって。
ジキル:その名前…、確か先生が【黄金の夜明け団】に居た頃に犬猿の仲だったっていう、あの?
アレイスター:そう。アイツ非道いんだよ?僕に気づいた瞬間大声で、『見ない間に随分悪行を重ねたそうだな、恥知らずのアレイスター・クロウリー!』って。通行人がみんな僕たちの方振り返って、小走りでそそくさ逃げていったよ。本当に勘弁してほしいよね。
ジキル:それは、災難でしたね…。しかし、道端で大勢に聞こえるように名前呼ばれて、大丈夫だったんですか?
アレイスター:大丈夫なわけないだろう。すぐ逃げようとしたけどアイツが逃がしてくれなくて、最終的には誰かしらの通報で、結局、警視庁(ヤード)のお世話になっちゃったよ。応対してくれたのがレストレードさんだったのは唯一の救いだったけど。
ジキル:きっと警部も先生のお気持ちを察してくれたんだと思いますよ。先生や私のことは“あの人”が口を利いてくださっているでしょうし。
アレイスター:ありがたい限りだね。でも、重い腰を上げてまで政府やメディアから僕たちを護ることはしてくれるのに、頑なに弟さんたちには会わせてくれないんだもんなあ。
ジキル:…それはきっと、先生がベイカー街に足を運んだら、余計面倒なことになりそうだからだと思います。
アレイスター:面倒っていうのはどうして?
ジキル:私たちが今現在、人目を憚(はばか)り、この廃墟のような家に住んでいることが最もわかりやすいかと。
アレイスター:ちぇ。つれないなあ、ジキルくんは。まあその通りだし、もちろん僕も理解(わか)ってるんだけど。でもさあ、せめて挿絵画家さんとは会わせてくれてもいいと思わない?
ジキル:挿絵画家…、シドニー・パジェット氏ですか?
アレイスター:僕は博士の綴る字に添えられる彼の絵もとっても好きでね。最悪サインだけでもいいから欲しいんだけどなあ。
ジキル:では、今度“あの人”に会ったときに伝えておきます。先生が熱望されていたのでどうにか、と。
アレイスター:ごめんね、お願い。
ジキル:はい。ところで先生。今日の探求はどうしますか?いつもならこれくらいの時間から準備を始めますが。
アレイスター:…やめておこうかな。まあ本当は「生贄の山羊」(スケープゴート)の羊皮紙(スクロール)を使って新しい魔術(てじな)でも開拓しようと思ってたんだけど、いろいろあったせいでやる気失せちゃった。だから今日はおとなしく、新作の事件簿を拝読することにするよ。
ジキル:わかりました。そういうことならば、私は新聞を読んでいてもいいですか?
アレイスター:もちろん。はい、どうぞ。
ジキル:ありがとうございます。……あれ、先生。何か封筒のようなものが挟まっていますが。
アレイスター:えぇ嘘?…本当だ。こんな手紙貰った覚えないんだけど。もしかして僕、新聞買った拍子に誰かの手紙を盗ってきちゃったのかな。
ジキル:宛先に『アレイスター・クロウリー様』とありますけど…。
アレイスター:不思議なこともあったものだなあ。そしてそこはかとなく嫌な予感がする。
ジキル:…同じくです、先生。
アレイスター:…とりあえず、中身見てみよっか。まだ面倒ごとと決まったわけじゃないしね。
ジキル:そう、ですね。(手紙を開く)わ…。とても達筆な字…。
アレイスター:読み上げてもらっていいかな。
ジキル:は、はい。えぇ、と…。
ジキル:『招待状。銀狼(ぎんろう)が孤高に嘶(いなな)き、夜に咲く宝石が妖艶(ようえん)に満ちる日。五人の娼婦が切り裂かれた街にて開かれる晩餐会に、皆様をご招待いたします。開宴は午前0時を予定しておりますので、23時30分頃お宅にお迎えに上がります。それまでどうか、ご歓談の程を。』…、以上です。差出人はどこにも書いていませんでした。
アレイスター:なるほど。…月が満ちる夜に迎えに来る、か。ジキルくん、次の満月は?
ジキル:確か一昨日(いっさくじつ)が新月だったので、25日と26日の間かと。
アレイスター:…エックスデーまでは二週間弱ってことだね。なるほど。
ジキル:どうしますか?
アレイスター:あっちから迎えに来るというのなら、丁重にお帰りいただくまで。…と、言いたかったんだけど。今回ばかりは参加せざるを得なさそうだ。
ジキル:それは…?
アレイスター:手紙の裏を見てごらん。
ジキル:裏…?…っ、これは!?
アレイスター:『P.S. 当日は是非「悪から生まれたキミ」とも話がしてみたいので、どうぞ検討をよろしく。数日後を楽しみにしているよ。「御三方」。』…、どうやら僕たちは、どこの誰かも知らない人に弱みを握られてしまっている、というわけだ。
ジキル:そんな…、あの実験に関する資料(メモ)と研究所(ラボ)はすべて私と先生で燃やしたはず…、なのになぜ…!?
アレイスター:それを解明するためにも、このパーティーに出席せざるを得ないだろうね。いやあ、困ったことになったなあ。
ジキル:…申し訳ありません、先生。また私のせいで、あなたにご迷惑を。
アレイスター:謝らないで大丈夫だよ。迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないからさ。というか、僕としてはむしろ嬉しいくらいだからね。
ジキル:うれしい…?
アレイスター:うん。だって、こんな楽しそうなお誘いが僕たちの元へやってきたのは、きっと君の黒歴史(けんきゅう)と「彼」の影響が大きいだろう?君たちのおかげで僕はこんなに面白そうな宴会に参加できるんだ。逆に僕から君に感謝を送りたいくらいだよ。というか送っていいよね?ありがとう。
ジキル:……ふっ、あははは…!やっぱり先生は変わってます…っ!
アレイスター:それはお互い様。
ジキル:今の私は先生ほど変わってませんよ。たぶん。ふふ。
アレイスター:…うん。やっぱり君には笑った表情(カオ)の方が似合うね。さて、時計の針ももうすぐ午後三時を指す頃合いだ。どうかな、たまには気晴らしにティータイムなんて。この手紙のことについて考えるのはその後にしてさ。
ジキル:もちろんです。では、準備しますね。確か茶葉(ハーブ)はラベンダーとカモミールがありましたが、どちらに?
アレイスター:今日の気分はラベンダーかな。
ジキル:わかりました。では、お湯を沸かしてきます。
アレイスター:ありがとう。「質素」(ビター)で「優雅」(スウィート)な時間にしようね。
:
0:
:
ハイド:(M)ああ。面白かった。今のは面白かったな。ジキル。お前は気づかなかったかもしれないが、アレイスターが手紙の裏の文字を見つけたとき、一瞬だけやつの瞳孔(どうこう)が大きく開いたぞ。あの大魔術師が驚きを隠せないだなんて、こんなに面白いことはない。だがまあ、仕方のないことか。実際わたしも驚いた。わたしが知る限り、わたしのことを知っている人間はこの世で三人だけだ。そいつは完全なイレギュラー。果たしてどうやってわたしのことを知ったのか。捜索(たど)ったのか、復元(もど)したのか、はたまた最初から所持(にぎ)っていたのか。月光が囁く夜、意識を取り戻すのを楽しみにしているぞ。清く正しく美しく、心優しい、ヘンリー・ジキル。
:
0:To be continued.