台本概要

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タイトル この木ってなんの木?
作者名 らびと  (@yukaina_rabito)
ジャンル ファンタジー
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 これはとある不思議な木のお話──…。

◾︎1人読み台本
◾︎読み手の性別は問いません
◾︎過度でなければアドリブOK
◾︎ボイコネで投稿していたものを再投稿、当時読んでくださった方々ありがとうございましたー!!!(五体投地)
◾︎使用に際して、連絡等は必要ありませんが、もしあの…媒体が残るのであれば…あの…聞きたいので、良かったら教えてくださ((←



※この物語はフィクションであり、自殺を推奨するもの・安楽死を推奨するものではございません。また、全編を通して『生と死』というテーマが含まれておりますので、苦手な方はご使用をお控えください。

皆様のお暇潰しになれば、幸いですᕱᕱ゛

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
あなた 不問 - 不思議な木のお世話をする人物
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:おや、君は…初めて見る顔だね。 0:初めまして。 0:僕?僕はこの木のお世話をしている…えーっと、ごめんね。 0:僕には名前がないんだ。 0:だから、僕のことは好きに呼んで。『貴方』でもいいし、『木の精』でもいいよ。 0: 0:さて、ここに来たっていうことは、この木に用があるんだよね? 0:君はどっちのタイプなのかなー。 0:…ん?どっちのタイプって何の事か、って? 0:ここに来る人間には二種類あってね。 0:一つは『消えかけている命を助けたい人』。 0:もう一つは、『死にたい人』。 0:…ふふっ、そんな困惑した顔をしないでよ。 0:そうだな、じゃあ少しだけ。この木について少し説明するね。 0:まず、この木になっている実について。ほら、そこかしこに見えるでしょ? 0:この実が一番重要なの。 0:ここに来る人が求めているのはこの実なんだ。 0:あそこに、ピンク色の実があるでしょ? 0:あの実とても凄いんだよ。 0:どんな難病に侵されていたとしても、これを食べるとたちまち良くなる。 0:例えもう息の根が止まりそうでも、食べることさえ出来れば生き長らえることが出来るんだ。 0:まさに命の実。 0:そして何より、すっごく美味しい。 0:見た目はまぁるくて、桃みたいな薄ピンク色。 0:柔らかな果肉を一口齧ると、じゅわわ〜って果汁が溢れて、ほわ〜っとするような甘い香りがするの。 0:とーっても甘くて、ほんのちょびっとだけ、ほんの一瞬だけしょっぱい。 0:あまじょっぱいって訳じゃないよ。でも、ほんの一瞬だけ、甘さの中にしょっぱさを感じるんだ。 0:ねっ、すごいでしょ? 0:…こんなすごい実があるなら、医者はいらなくなる、って? 0:ははっ、それがそう上手くいかないものさ。 0:次に、この実がどうやってできるのかを教えてあげるね。 0:さっきも言ったけど、ここに来る人間は二種類。 0:さっきのが『消えかけている命を救いたい人』だから、次は『死にたい人』がどうしてここに来るのか。 0:『死にたい人』…、世の中に絶望し、生きていくのが嫌になった人。 0:逃げることも出来ず、どうしようも出来なかった人。 0:理由は様々だ。 0:その人にはその人の悩みがあって、事情があって、悩んで悩んで悩んだ末に、『死』という道を選ぶ。 0:あそこに、青い実があるだろう? 0:『死にたい人』にはね、あれをあげるんだ。 0:…不味そうだ、って? 0:ところがどっこい。あれもすごく美味しい。 0:ピンクの実より少しだけ固いけど、とても甘い。すごく甘い。 0:そう、甘いだけ。 0:しょっぱさはないよ。 0:甘いといっても砂糖のような甘さじゃなくて、なんて言うのかな…心に沁み渡るような甘さ。 0:香りも、ホッとして癒されるような優しい香りがするんだ。 0:食べた人に、『今までよく頑張ったね。お疲れ様、ゆっくり休んでいいんだよ。』って語りかけるような優しい味と香りがするんだ。 0:…こっちの実も少し気になってきた? 0:でも残念。 0:これは『死にたい人』が食べなければ、ただ発泡スチロールを齧っているような、サランラップをかじっているような…とにかく美味しいとは感じないんだ。 0:話を続けるね。 0:『死にたい人』がこの実を食べると、だんだん眠くなってくる。 0:心地良い眠気。陽だまりの中に、ぬるすぎず冷たすぎずの丁度いい温度の風が吹いている時を想像してみて? 0:お昼寝したくなるでしょ。 0:そんな感じさ。 0:どんどん眠くなって…自然と瞼を閉じて… 0:ゆーっくり…ゆっくりと…生命活動が停止する。 0:するとこの木にピンクの実がなるんだ。 0:そう、このピンクの実は『死にたい人』の命そのものなんだ。 0:人間はよく言うだろう? 0:「あなたの死にたかった一日は、誰かが生きたくても生きられなかった日だ。」って。 0:ここは、そんなどうしようも出来ないことを叶えてくれる場所なんだ。 0:この実の一つ一つが尊い命で出来ている。量産なんて無理。 0:君もしたいとは思わないだろう? 0: 0:さて、君は『消えかけている命を救いたい人』だよね。 0:誰を助けたいの?自分? 0:…お母さん、か。病気なのかい? 0:…そう、それは心配だね。 0:ちなみに歳は? 0:…ふぅん、そう。じゃあこのピンクの実をあげようかな。 0:これはね、丁度君のお母さんと同い歳で、同じ病気にかかった人から生まれた実なんだ。 0:…ははっ、そうだよね。君にとっては不思議かもね。 0:その人はどうしてここまで来たのに、ピンクの実ではなく青い実を選んだのか。 0:彼女には身寄りがなかった。 0:孤独だったんだ。 0:だから生き長らえても仕方がない、辛い治療にももう耐えられないと思い、青い実を選んだ。 0:そして、その命を誰かの命に繋ぐことを決めたんだ。 0:彼女、最期とても幸せそうだった。 0:「私の命の実を食べた人が、大切な人たちと幸せに暮らせますように。」って言ってたよ。 0:ほら、この実を持って早くお母さんの元に帰るといい。 0:そして彼女の願い通り、幸せに暮らすといいよ。 0:それが君が彼女に出来る、何よりの弔いになる。 0:帰り道は分かるね? 0:…ん、それじゃあ、バイバイ。 0:お気をつけて。

0:おや、君は…初めて見る顔だね。 0:初めまして。 0:僕?僕はこの木のお世話をしている…えーっと、ごめんね。 0:僕には名前がないんだ。 0:だから、僕のことは好きに呼んで。『貴方』でもいいし、『木の精』でもいいよ。 0: 0:さて、ここに来たっていうことは、この木に用があるんだよね? 0:君はどっちのタイプなのかなー。 0:…ん?どっちのタイプって何の事か、って? 0:ここに来る人間には二種類あってね。 0:一つは『消えかけている命を助けたい人』。 0:もう一つは、『死にたい人』。 0:…ふふっ、そんな困惑した顔をしないでよ。 0:そうだな、じゃあ少しだけ。この木について少し説明するね。 0:まず、この木になっている実について。ほら、そこかしこに見えるでしょ? 0:この実が一番重要なの。 0:ここに来る人が求めているのはこの実なんだ。 0:あそこに、ピンク色の実があるでしょ? 0:あの実とても凄いんだよ。 0:どんな難病に侵されていたとしても、これを食べるとたちまち良くなる。 0:例えもう息の根が止まりそうでも、食べることさえ出来れば生き長らえることが出来るんだ。 0:まさに命の実。 0:そして何より、すっごく美味しい。 0:見た目はまぁるくて、桃みたいな薄ピンク色。 0:柔らかな果肉を一口齧ると、じゅわわ〜って果汁が溢れて、ほわ〜っとするような甘い香りがするの。 0:とーっても甘くて、ほんのちょびっとだけ、ほんの一瞬だけしょっぱい。 0:あまじょっぱいって訳じゃないよ。でも、ほんの一瞬だけ、甘さの中にしょっぱさを感じるんだ。 0:ねっ、すごいでしょ? 0:…こんなすごい実があるなら、医者はいらなくなる、って? 0:ははっ、それがそう上手くいかないものさ。 0:次に、この実がどうやってできるのかを教えてあげるね。 0:さっきも言ったけど、ここに来る人間は二種類。 0:さっきのが『消えかけている命を救いたい人』だから、次は『死にたい人』がどうしてここに来るのか。 0:『死にたい人』…、世の中に絶望し、生きていくのが嫌になった人。 0:逃げることも出来ず、どうしようも出来なかった人。 0:理由は様々だ。 0:その人にはその人の悩みがあって、事情があって、悩んで悩んで悩んだ末に、『死』という道を選ぶ。 0:あそこに、青い実があるだろう? 0:『死にたい人』にはね、あれをあげるんだ。 0:…不味そうだ、って? 0:ところがどっこい。あれもすごく美味しい。 0:ピンクの実より少しだけ固いけど、とても甘い。すごく甘い。 0:そう、甘いだけ。 0:しょっぱさはないよ。 0:甘いといっても砂糖のような甘さじゃなくて、なんて言うのかな…心に沁み渡るような甘さ。 0:香りも、ホッとして癒されるような優しい香りがするんだ。 0:食べた人に、『今までよく頑張ったね。お疲れ様、ゆっくり休んでいいんだよ。』って語りかけるような優しい味と香りがするんだ。 0:…こっちの実も少し気になってきた? 0:でも残念。 0:これは『死にたい人』が食べなければ、ただ発泡スチロールを齧っているような、サランラップをかじっているような…とにかく美味しいとは感じないんだ。 0:話を続けるね。 0:『死にたい人』がこの実を食べると、だんだん眠くなってくる。 0:心地良い眠気。陽だまりの中に、ぬるすぎず冷たすぎずの丁度いい温度の風が吹いている時を想像してみて? 0:お昼寝したくなるでしょ。 0:そんな感じさ。 0:どんどん眠くなって…自然と瞼を閉じて… 0:ゆーっくり…ゆっくりと…生命活動が停止する。 0:するとこの木にピンクの実がなるんだ。 0:そう、このピンクの実は『死にたい人』の命そのものなんだ。 0:人間はよく言うだろう? 0:「あなたの死にたかった一日は、誰かが生きたくても生きられなかった日だ。」って。 0:ここは、そんなどうしようも出来ないことを叶えてくれる場所なんだ。 0:この実の一つ一つが尊い命で出来ている。量産なんて無理。 0:君もしたいとは思わないだろう? 0: 0:さて、君は『消えかけている命を救いたい人』だよね。 0:誰を助けたいの?自分? 0:…お母さん、か。病気なのかい? 0:…そう、それは心配だね。 0:ちなみに歳は? 0:…ふぅん、そう。じゃあこのピンクの実をあげようかな。 0:これはね、丁度君のお母さんと同い歳で、同じ病気にかかった人から生まれた実なんだ。 0:…ははっ、そうだよね。君にとっては不思議かもね。 0:その人はどうしてここまで来たのに、ピンクの実ではなく青い実を選んだのか。 0:彼女には身寄りがなかった。 0:孤独だったんだ。 0:だから生き長らえても仕方がない、辛い治療にももう耐えられないと思い、青い実を選んだ。 0:そして、その命を誰かの命に繋ぐことを決めたんだ。 0:彼女、最期とても幸せそうだった。 0:「私の命の実を食べた人が、大切な人たちと幸せに暮らせますように。」って言ってたよ。 0:ほら、この実を持って早くお母さんの元に帰るといい。 0:そして彼女の願い通り、幸せに暮らすといいよ。 0:それが君が彼女に出来る、何よりの弔いになる。 0:帰り道は分かるね? 0:…ん、それじゃあ、バイバイ。 0:お気をつけて。