台本概要
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タイトル | 人狼ゲーム |
---|---|
作者名 | 気分屋 (@Kodokusensi) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 5人用台本(不問5) ※兼役あり |
時間 | 50 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
当シナリオは、いわゆるボードゲームの『人狼』を題材としたシナリオとなっております。ですが、人狼陣営が有利な状態だったり、毎朝処刑される人が居ないなど『人狼ゲーム』というより『人狼』に焦点を当てたシナリオになっているかと思います。 誰が人狼なのか推理しながら読むも良し、役を理解し演じるも良しなシナリオとなっておりますので、是非お楽しみ下さい。 ※男女不問 男性風女性風の言い回しの変更可とさせて頂いております。 名前がABCDEとなっておりますが、ご自身のお名前等を使っていただいても構いません 647 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
A | 不問 | 28 | 村長 兼役:ナレーション |
ナレーション | 不問 | 29 | Aの兼役 |
B | 不問 | 68 | 兄貴分のような存在で、副村長的ポジション |
C | 不問 | 60 | 知識豊富な村の相談役 |
D | 不問 | 54 | 村に後から来た明るい人物 |
E | 不問 | 53 | 村に後から来た人物。暗い |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ナレーション:「皆さんは、『人狼ゲーム』というのをご存知でしょうか?
ナレーション:村に、『人に化ける狼』が忍び込み
ナレーション:毎晩一人づつ、食べられてしまう。
ナレーション:ではいったい、人に化けているのは誰なのか?
ナレーション:というのを推理するゲームでございます。
ナレーション:ちょうど今、人狼ゲームが始まる村がありますので是非ご覧ください。
ナレーション:それでは皆さん
ナレーション:疑念渦巻く人狼ゲームを
ナレーション:どうぞお楽しみ下さいませ……」
0:人狼ゲーム
A:「えー、コホン
A:この度は、朝の定例会に参加して頂きありがとうございます」
ナレーション:Aさん。この村の村長。
ナレーション:村の管理及び統括をしている。
A:「まず、いつもの収穫報告からと言いたいところですが
A:先に新しくここで暮らすことになったお二方のご紹介からしましょう。
A:DさんとEさんです」
D:「初めまして、Dと申します。
D:これからよろしくお願いします」
ナレーション:Dさん。人当たりが良さそうであり、明るい方。
E:「……」
A:「Eさん?ご挨拶を……」
E:「ども」
ナレーション:Eさん。物静かで寡黙そうな方。
A:「……では収穫報告をしましょうか!」
B:「うちはいつも通り順調ですよ、村長。
B:あとは雨が適度に降ってくれることを祈るだけでさぁ」
ナレーション:Bさん。気前が良く、この村での兄貴分的な存在な方。
C:「申し訳ないのですが
C:こっちはちょっと微妙です。
C:あまり土の状態が良くありません。
C:なので例年よりは少し劣ってしまうかもしれないかと」
ナレーション:Cさん。博識でこの村での相談役的存在な方。
A:「わかりました
A:では、各自対策を練りつつ過ごしましょう。
A:では、解散!」
B:「DさんとEさん……でしたっけ?これからよろしくお願いしますね。」
D:「はい、よろしくお願いします」
E:「……ども」
C:「今日は俺が案内する予定だったんだけど……
C:ちょっと土壌改善しなきゃいけないから、Bさんお願いしても良いかな?」
B:「おう!任せておきな
B:それじゃおふたりさん、俺に着いてきてくれたまえ」
ナレーション:暫く村案内をし、日が暮れた頃
ナレーション:各自の自宅にて
ナレーション:B宅
B:「いやー、二人も増えるとはな……
B:これは忙しくなるぞー!」
ナレーション:C宅
C:「うーん……やはり枯葉の成分が良いのだろうか。
C:いや、先に微生物か?だが……」
ナレーション:D宅
D:「この村の人達は、みんないい人だなー……
D:これはやり甲斐がありそうだ!」
ナレーション:E宅
E:「今度こそ上手くやらなきゃ……
E:いや、やるんだ……」
ナレーション:翌朝
B:「あぁCさん、おはようございます」
C:「おはようございます、相変わらずお早いですねBさん」
B:「今日は珍しく村長より早いですよ」
C:「そういえば村長がこの時間に来てないなんて珍しいですね?」
D:「おはようございます……
D:って皆さんどうしたんです?」
C:「あぁDさん、おはようございます」
B:「いやね、村長……Aさんがこの時間に起きて来てないのが珍しいなと思いましてね」
D:「そういえば今日はまだ見かけていませんでしたね」
C:「Dさんも会ってないですか……」
D:「会っていないと言えば、Eさんもまだ見かけてないですね」
B:「まぁ、我々で起こしにでも行きましょうか」
C:「そうですね」
ナレーション:三人はまず、A宅へと向かいました。
C:「村長!Cです!もう朝ですよ!」
ナレーション:扉を叩きながらCが声をかける。
ナレーション:しかし扉の向こうからは返事は無く、人の気配さえしませんでした。
C:「あれ?おっかしいな……」
B:「どこかに行ってるんですかね?」
D:「Aさんは、いつもこの時間には起きてるんですか?」
C:「そうですね。この村一番の早起きですからね」
B:「定例会の時間になると、起こしに来てくれるくらいですよ」
ナレーション:三人が話をしていると、森の方から人影が。
E:「……皆さん、どうしたんですか?」
B:「うぉっ!」
C:「Eさんじゃないですか」
B:「驚かさないで下さいよ!」
E:「……すみません」
D:「どうして森の方に居たんです?」
E:「……早朝に目が覚めてしまいまして
E:……散歩ついでに周辺の地理を覚えておこうと思いまして」
B:「あぁそうだ、散歩していたなら
B:Aさんを見かけませんでしたか?」
E:「……Aさんですか?」
D:「まだ誰も会ってないみたいなんです」
E:「……すみません、俺も見かけてないです」
B:「そっかぁ……」
C:「どこに行っちゃったんですかね」
E:「……家には居なかったんですか?」
D:「僕ら三人で行きましたけど、返事が無かったんですよ」
ナレーション:その言葉を聞いた途端、Eの表情が険しくなり
ナレーション:今までの小さな声で話していたのが嘘のように、ハッキリとした声で三人に言いました。
E:「家から……家から変な匂いはしませんでしたか!?」
B:「どわっ!急に大きな声出さないで下さいよ!
B:……でも言われてみれば、変な匂いがしたような……」
D:「少し生臭い匂いがしたような気がしますね?」
C:「……まさか!?」
ナレーション:ハッとした表情を見せ、CはAの家へと走って行きました。
B:「ど、どういうことだ!?
B:Eさん!あんた何か知ってるのか!?」
E:「いえ、まだ分かりません……
E:ただ恐らく、Aさんはもう……」
B:「なんだ、どういうことなんだ!?」
D:「Bさん!落ち着いて下さい!
D:とりあえず僕らもAさんの家に行きましょう」
B:「……そうですね」
ナレーション:少し揉めたあと、三人はCを追うようにAの家へと向かいました。
ナレーション:三人がAの家へと着くと、先に到着していたCが、強く扉をノックし
ナレーション:声をかけていました。
C:「Aさん!俺です!Cです!ドアを開けてください!」
B:「Cさん!」
C:「ダメです!やっぱり返事がありません!」
E:「どいてください!Aさん!Eです!
E:もし扉の近くに居るなら離れてください!」
ナレーション:そうEは声をかけると、助走をつけ
ナレーション:扉を蹴破りました。
ナレーション:激しい音を立てて破られた扉の先には
ナレーション:無惨な姿で死んでいるAの姿がありました。
B:「Aさん!」
C:「嘘だろ!どうなってるんだ!」
D:「うっ!(嘔吐)」
B:「なんでAさんが死んでるんだよ!」
E:「……人狼です」
B:「…え?」
D:「人狼?」
C:「冗談……だろ……」
E:「……いいえ、間違いありません」
C:「森の狼にやられた可能性は?」
E:「残念ですが、それは有り得ません。
E:野生の狼が襲ったのであれば、もっと散らかっているはずです。
E:何より、この家は鍵が掛かっていました。
E:鍵の掛かった家を襲うなんて芸当、人狼にしかできません」
B:「そんな……」
E:「極めつけは、この綺麗に抜き取られた心臓部です」
D:「心臓がなんなんですか?」
E:「人狼は人体において、心臓を最も好みますから」
C:「以前文献で読んだことがあります……
C:人狼は人に化け、夜な夜な人を喰らうのだと」
D:「じゃあ……この中に……」
E:「その通りです」
B:「おい……嘘だろ?」
E:「恐らくこの中に……
E:人狼がいます」
C:「そんな……」
B:「この中に、Aさんを殺したやつが居るのか!?」
D:「そんなのどうやって見つければ……」
E:「それでも見つけなければ、こっちが殺られてしまいます。
E:ここから先は、お互いを信じない方が良いかも知れません」
B:「信じない方がいいって……」
D:「じゃあ改めて聞きますが、Eさん
D:貴方は今朝、本当は何をしていたんですか?」
E:「言ったはずです。
E:俺は周辺のことを知るために散歩をしていただけです」
D:「それだって信用ならないじゃないですか!」
E:「それを言うなら、私以外の一番最初に起きていた方も疑わしいはずです」
D:「一番……最初……」
C:「最初に起きていたのは、たしかBさんでしたよね……?」
B:「……は?俺を疑うのかよ?
B:俺が村長を殺すわけがないじゃないか!
B:アンタたちが来る前から、ずっと一緒に過ごしてたんだぞ!?」
E:「それでも今は、疑わざるを得ない状況なんです」
B:「なんでだよ……
B:Cさん……Cさんは俺の事信じてくれるよな!?」
C:「すみません……今はもう
C:誰を信じることも……」
B:「嘘…だろ……」
E:「……とりあえず各自の家に戻りましょう」
ナレーション:暗い面持ちで、全員が各自の家へと向かいました。
ナレーション:その間、会話などは一切なく
ナレーション:ただ俯(うつむ)くことしかできないのでした。
ナレーション:Aの死は、それほどの衝撃を与えると同時に
ナレーション:疑惑の念を村人達へ植え付けました。
ナレーション:──翌朝
B:「……おはようございます」
C:「……」
D:「おはようございます」
E:「……全員居るみたいですね」
B:「誰も喰われなかったのか……」
D:「みたいですね」
B:「……アンタ随分と平気そうだな」
D:「はい?」
B:「皆寝れずにゲッソリしてるってのに
B:アンタだけは、よく寝れたって顔してる……
B:怖くなかったのか?」
D:「……昨日の夜
D:俺なりに、よく考えました
D:誰が人狼なのか、なにか疑わしいことは無かったか、生き残るにはどうすれば良いのか……
D:だけど俺には何も分かりませんでした。
D:だから諦めたんです」
B:「諦めた?」
D:「はい、どうせ相手が人狼である以上
D:襲われたら、どう足掻いても人間の俺たちには勝ち目がありません。
D:なら、しっかり寝て次の日に備えた方がいいじゃないですか。
D:だから寝たんです」
C:「村の仲間が喰われて、そんな冷静な判断ができるなんて凄いですね
C:私はAさんのことを思うだけで……眠れませんでしたよ」
E:「言い争いはそのへんにしておいて下さい。
E:余計なエネルギーを使うだけです」
B:「……わかってるよ」
E:「ともかく今は、人狼が襲ってくるであろう夜を警戒するために
E:体力を温存しておくべきです」
C:「それは無茶な話です。
C:昼間は農作物の管理をしなくてはいけません。
C:一日でも怠ってしまえば、大きな損害に繋がることもありますから」
D:「日が出てるうちは畑仕事、日が沈めば人狼を警戒……
D:確かに、体がもたないですね」
C:「人狼に喰われる前に餓死だなんて
C:本末転倒もいい所です」
E:「それはそうですが……」
B:「結局は、Dさんの言う通り
B:夜は諦めて寝るしかないのかもしれませんね」
E:「……」
C:「とりあえず今は、今日の分の作業を済ませましょう」
B:「そう……ですね」
ナレーション:Bが力なく解散を告げると、その日の作業をする為に
ナレーション:各々行動し始めました。
ナレーション:そうするうちに日が暮れ、疲れきったという表情で
ナレーション:皆、自宅へと戻って行きました。
ナレーション:村に今までの活気は無く、物静かな様子は
ナレーション:村人達の不安と恐怖をよりいっそう強くさせました。
ナレーション:──翌朝
B:「今日も皆…生きてる……」
C:「ハハ……一体どうなってるんですかね?」
E:「無事で何よりです」
D:「……あの、本当にこの中に人狼って居るんですかね?」
B:「どういうことだ?」
D:「いやだって、二日間も誰も喰われてないんですよ?
D:もしかしたら、人狼がAさんだけを襲ってどっかに行ったんじゃないですか?」
C:「第三者が居たってことですか?」
D:「そういうことです」
E:「それは有り得ません。
E:人狼は一度標的を決めたら、その村に執着するはずです。
E:たった一人を襲うどころか、村人が全滅する前に移動するなんて、考えられません」
D:「それですよ、Eさん」
E:「はい?」
D:「Aさんが喰われてしまった時から気になってたんです。
D:あなた、人狼に詳しすぎやしませんか?」
E:「……」
D:「人狼の好物や習性まで、まるで自分のことのように知っていますよね?
D:どうしてですか?」
E:「……それは……申し訳ないですが
E:今は言えません」
D:「言えないって……それはいったいどういうことなん──」
B:「Dさん(遮るように)
B:もういいでしょう」
D:「でも……!」
B:「誰だって秘密の一つや二つ……あるものでしょう?
B:Eさん、あなたがこの事について話したくないのなら
B:深くは言及しません。
B:ですが今は、お互いを信じ合える状態にしなくてはいけません。
B:あまり不安を煽るようなことはしないで頂きたい」
E:「……申し訳ない」
B:「じゃあ……今日の作業に──」
C:「なぁ、Bさん(遮るように)」
B:「……どうした、Cさん?」
C:「皆も聞いて欲しい。
C:俺……この村を出ようと思います」
B:「……は?」
D:「出るって……」
E:「この状況で何言ってるんですか!?」
B:「なぁCさん、考え直せよ。
B:この村は、俺たち三人で頑張って作ってきた場所じゃないか!
B:それを、Aさんの無念を晴らせないまま
B:立ち去るって言うのかよ!」
C:「仕方ないだろ!
C:俺はもう……皆のことを疑いたくないんだよ
C:かと言って、人狼にだって喰われたくない
C:じゃあ!……もうこの村を出て行くしかないじゃないか!」
B:「……本当に行くのか?」
C:「もう…決めたことです」
B:「悔しくないのかよ!」
C:「……すみません」
B:「……クソッ!」
ナレーション:そう言い残すと、Bさんはどこかへ行ってしまいました。
D:「俺……今日の作業してきます」
ナレーション:Dさんも追うように、その場から立ち去っていきました。
E:「……いつ頃出るんですか?」
C:「今日の作業を済ませてからだから……日が暮れる頃かな」
E:「見送りますよ、森は危険ですから」
C:「……ありがとう」
ナレーション:少し言葉を交わした後
ナレーション:二人も作業をするために、移動をしました。
ナレーション:そして、日が暮れる頃。
C:「……それじゃあ皆、どうか達者で」
D:「Cさんも、どうかお元気で」
B:「……」
E:「それじゃあ行きましょうか」
0:
D:「良いんですか?行かなくて」
B:「……俺はいいんだよ」
D:「……そうですか」
B:「俺、家に戻るわ
B:少し……一人にさせてくれ」
D:「分かりました。
D:色々あってお疲れだと思います。
D:ゆっくり休んで下さい」
ナレーション:Bは少し手を上げ、お礼を伝えた後
ナレーション:自宅へと戻って行きました。
ナレーション:──翌朝
B:「……本当だったら、この時間には
B:五人で朝の定例会をしてたんだよな。
B:きっとAさんに起こされて、俺が『また負けた』って悔しがって
B:それをCさんが横で、静かに笑っていて……
B:そんな日常が続くはずだったのにな……
B:なのに、なんでアンタしか来ないんだろうな。
B:Dさん」
D:「Aさんは人狼に喰われ死亡、Cさんは村を出ていって居ない、Eさんは森で行方不明……
D:二人だけになってしまいましたね
D:Bさん」
B:「行方不明?……『君が喰った』の間違いだろう?」
D:「フフッ…フハハハハハ
D:そうかもしれませんねw」
B:「……否定しないんだな」
D:「まぁもう隠す必要も無いですから」
B:「アンタだったんだな……人狼は。
B:……俺のことも喰うんだろ?」
D:「勿論です」
B:「じゃあさっさと終わらせてくれ」
D:「おや?足掻かないんですか?」
B:「どうせ無駄だろ?もういいんだ」
D:「そうですか
D:では、お望み通りに……」
ナレーション:カチャリ
ナレーション:Dさんが言いかけた瞬間、頭に銃口が突きつけられました。
E:「……俺の仲間は、美味しかったか?」
B:「どう……して……」
D:「これは驚いた!アナタはあの時始末したはずでしたが?」
E:「俺はこれでも狩人でね。
E:お前らのような獣を騙す手段くらい、いくらでもある」
D:「ほぉ……これは一本取られましたねぇ
D:私の負けだ
D:さぁ、あとはその引き金を引けば終わりです。
D:どうぞ?私はもう抵抗なんてしませんから」
E:「その前に一つ、聞きたいことがある。
E:ここからそう遠くない場所にも、村があったはずだ。
E:そこを襲ったのはお前か?」
D:「……はて、なんの事やら」
E:「しらばっくれるな!
E:丁度一年前のことだ。
E:俺の居たその村は、人狼に襲われ全滅した!」
D:「……あぁ、あの村のことか
D:ガキも老人も、美味しかったなぁ……」
E:「……ッ!死ね!ゲス野郎が!」
ナレーション:Eさんが引き金を引くと、辺りに銃声が響き渡り
ナレーション:文字通り、Dさんの脳天を吹き飛ばしました。
E:「ハァ……ハァ……終わった……」
B:「Eさん……アンタ狩人だったのか」
E:「黙っててすみませんでした。
E:でも話す訳にはいかなかったんです。
E:人狼にバレるのは、どうしても避けたかったので」
B:「そっか……」
ナレーション:暫くの沈黙。人狼の恐怖から開放された二人は
ナレーション:安堵こそ感じたものの、喜びは一切感じていませんでした。
B:「……なぁEさん、俺に協力してくれないか?」
E:「協力ですか?」
B:「この村を復興させたいんだ。
B:俺はこの村を、どうしても捨てたくない」
E:「……分かりました」
B:「良いのか?」
E:「俺……本当は、人狼を殺したあと
E:すぐにこの村を出ていくつもりでした。
E:だからなるべく、皆さんと関わらないようにしてたんです。
E:でも気がついたら、ここが俺の居場所になっていました。
E:だから……守りたいんです、俺も。
E:ようやく得られた、この居場所を」
B:「……ありがとう」
ナレーション:こうして二人はより固い絆で結ばれ、村の復興を誓うのでした。
ナレーション:───そして、日が暮れた夜
ナレーション:二人を見る影が一つ。
ナレーション:村を見ることができる、少し離れた崖の上で
ナレーション:一人の男が拍手をしていました。
C:「……いやぁ、見事だねぇ
C:ちゃんとDを殺したか。
C:うん……本当に見事だったよ…D。
C:君は『狂人』としての役割を完璧に果たした。
C:あとは俺が、二人を喰らうだけだ……
C:あぁ……楽しみだなぁ
C:Bさんは、本当は人狼が俺だと知ったら、どんな顔をするかなぁ……
C:Eさんは、本当は村を襲ったのが俺だと知ったら、どんな顔をするかなぁ……
C:あぁ…楽しみだ、楽しみだ
C:楽しみでたまらねぇ……
C:やっぱり絶望は、最高のトッピングだなぁ……」
ナレーション:美しい月を前に、今夜も人狼の牙が
ナレーション:ギラリと輝く。
0:外伝
0:DとEが越してきた夜のこと
A:Dさんに、Eさん……っと。
A:いやはや、この村もだいぶ充実してきましたねぇ。
0:扉がノックされる
A:おや?どうぞ。
C:今晩はAさん。
A:あぁ、Cさんでしたか。
A:どうされました?
C:いえ、今朝の畑の件で少々ご相談をと思いまして。
A:そうでしたか。
A:しかしまぁ……なんと言うか
C:……ん?なんです?
A:獣臭さと言うのは、どうも隠せないものですね。
C:はい?
A:ようやく私を食べに来たんですか?
C:……何言ってるんですかAさん?
C:食べに来た?いったいなんのことだか──
A:(遮るように)
A:動揺するとすぐ爪をたてる
A:貴方の悪い癖ですよ?
A:幸いと言うべきか、私しか気づいていませんが
C:アンタ、一体なんなんだ?
A:何を今更……貴方もよく知っているでしょう?
A:私はこの村の村長ですよ。
C:そんなことを聞いてるんじゃない!
A:狼の姿だと性格が荒くなる。
A:それに伴い口調も荒い。
A:そしてそれを誤魔化すために、人型の時は丁寧な口調を使う。
A:貴方はまるでお手本のような人狼ですね?
A:まるで昔の私を見ているようだ。
C:俺を人狼だとわかっていながら、どうして殺さない?
C:情けだとか甘いこと言うんじゃ無いだろうな?
A:何故殺さないか……
A:それは違いますね。
A:殺さないのではなく、殺せないのです。
C:殺せない?
A:私は貴方に殺されなくてはならない。
A:いや、殺された事にならなくてはいけない
A:と言った方が正しいですかね。
C:いったい何を言ってやがる。
A:貴方は、人狼という力を手に入れ
A:人智を超越したかのようだと
A:有頂天になっているでしょう?
C:事実そうだろう?
C:人狼の力をもってすれば、人間なんぞ虫けら同然だ。
C:誰にも止めることなんざできない。
C:俺は『選ばれし者』なんだ!
A:『選ばれし者』……言い得て妙ですね。
A:貴方は確かに選ばれたのでしょう。
A:ですが貴方は、人狼に選ばれた時点で
A:必ず人の手によって死ぬという
A:呪いに縛られている。
C:人の手によって死ぬ?何を言ってやがる!
C:人狼が、人に殺されるわけねぇだろ!
C:現に俺は、既にいくつもの村を滅ぼして来たが
C:まだこうしてピンピンしてる。
C:俺を殺せるやつなんか居やしねぇ!
A:では証明して見せて下さい。
C:証明?
A:……実は私も、貴方と同じ呪いを受けていましてねぇ。
A:ですが、私を殺すのは人じゃない。
0:Aが自分の胸部に手を突き刺す
C:お前、何やってるんだ!
A:ゴハッ!……私はこの呪いから逃れる方法をずっと考えていた!
A:神の玩具になるのなんて、御免ですからね!
0:Aが自分の心臓を取り出す
A:人狼が2人と言うイレギュラーな事態が起きたので、もしかしてと思いましたが……やはり
C:アンタ……イカれてるぜ
A:さぁどうぞ、貴方の好物の心臓です
C:……
A:あぁ、やはり獣臭い
A:私も……貴方も……
0:ドサリっとAが倒れる
C:……あぁ、証明してやるさ。
C:人狼が絶対の存在であることを。
0:そう言いCは心臓を喰らった
0:『おまけ』
A:以上で『人狼ゲーム』終了となります。
B:如何だったでしょうか
C:当シナリオは、いわゆるボードゲームの『人狼』を題材としたシナリオとなっております。
D:役職が『村人』『狩人』『狂人』『人狼』と、人狼陣営が有利な状態だったり、毎朝処刑される人が居ないなど『人狼ゲーム』というより『人狼』に焦点を当てたシナリオになってしまいました。
E:5人なので、役職を増やそうにも、かなり難しかったので諦めましたw
A:ではここで、改めてまして役職紹介と行きましょう!
A:『村長』兼『人狼』、そして『ナレーション』をしました。Aです。
A:外伝で人狼だった事が明かされましたね。
B:最後まで生き残った『村人』役をしました、Bです。
B:村では副村長的ポジション、といった感じですね。
C:美味しい所を頂きました。『人狼』役のCです。
C:村では知識豊富な相談役と、信頼を勝ち取った存在でした。
D:『狂人』役をやらせて頂きました。Dです。
D:村には後から来たり、少し疑わしい発言をするなど、狂人としてしっかり場を乱していたかと思います。
E:『狩人』役のEです。
E:人狼に以前居た村を滅ぼされ、復讐の為に村を転々としており、あまり深い関係になるまいとしていたなど、実は結構濃いキャラ設定となっております。
A:以上の5名でやらせて頂いた人狼ゲームなのですが……処刑要素を入れるかかなり迷いましたw
B:でも処刑要素を入れると人数的に、登場人物の減り方がえげつないんですよねw
C:因みにAの密室殺人に関してのトリックですが、最初に朝Aを起こしに行った時、Cがノックをし起こそうとしていますが、この時はまだ鍵がかかっていませんでした。
D:つまり、「……まさか!?」と言い走り去った後、いち早く到着していたCが鍵をかけノックをしていた。ということですね。
A:まさかのAは殺されたのではなく、自害していた訳なのですが。
B:前編では、主にDとEが疑われ易いように書いてみました。
C:皆様の予想は当たったでしょうか?
D:以上で、この『おまけコーナー』も終了でございます。
E:ここまで読んで頂きありがとうございました!
ナレーション:「皆さんは、『人狼ゲーム』というのをご存知でしょうか?
ナレーション:村に、『人に化ける狼』が忍び込み
ナレーション:毎晩一人づつ、食べられてしまう。
ナレーション:ではいったい、人に化けているのは誰なのか?
ナレーション:というのを推理するゲームでございます。
ナレーション:ちょうど今、人狼ゲームが始まる村がありますので是非ご覧ください。
ナレーション:それでは皆さん
ナレーション:疑念渦巻く人狼ゲームを
ナレーション:どうぞお楽しみ下さいませ……」
0:人狼ゲーム
A:「えー、コホン
A:この度は、朝の定例会に参加して頂きありがとうございます」
ナレーション:Aさん。この村の村長。
ナレーション:村の管理及び統括をしている。
A:「まず、いつもの収穫報告からと言いたいところですが
A:先に新しくここで暮らすことになったお二方のご紹介からしましょう。
A:DさんとEさんです」
D:「初めまして、Dと申します。
D:これからよろしくお願いします」
ナレーション:Dさん。人当たりが良さそうであり、明るい方。
E:「……」
A:「Eさん?ご挨拶を……」
E:「ども」
ナレーション:Eさん。物静かで寡黙そうな方。
A:「……では収穫報告をしましょうか!」
B:「うちはいつも通り順調ですよ、村長。
B:あとは雨が適度に降ってくれることを祈るだけでさぁ」
ナレーション:Bさん。気前が良く、この村での兄貴分的な存在な方。
C:「申し訳ないのですが
C:こっちはちょっと微妙です。
C:あまり土の状態が良くありません。
C:なので例年よりは少し劣ってしまうかもしれないかと」
ナレーション:Cさん。博識でこの村での相談役的存在な方。
A:「わかりました
A:では、各自対策を練りつつ過ごしましょう。
A:では、解散!」
B:「DさんとEさん……でしたっけ?これからよろしくお願いしますね。」
D:「はい、よろしくお願いします」
E:「……ども」
C:「今日は俺が案内する予定だったんだけど……
C:ちょっと土壌改善しなきゃいけないから、Bさんお願いしても良いかな?」
B:「おう!任せておきな
B:それじゃおふたりさん、俺に着いてきてくれたまえ」
ナレーション:暫く村案内をし、日が暮れた頃
ナレーション:各自の自宅にて
ナレーション:B宅
B:「いやー、二人も増えるとはな……
B:これは忙しくなるぞー!」
ナレーション:C宅
C:「うーん……やはり枯葉の成分が良いのだろうか。
C:いや、先に微生物か?だが……」
ナレーション:D宅
D:「この村の人達は、みんないい人だなー……
D:これはやり甲斐がありそうだ!」
ナレーション:E宅
E:「今度こそ上手くやらなきゃ……
E:いや、やるんだ……」
ナレーション:翌朝
B:「あぁCさん、おはようございます」
C:「おはようございます、相変わらずお早いですねBさん」
B:「今日は珍しく村長より早いですよ」
C:「そういえば村長がこの時間に来てないなんて珍しいですね?」
D:「おはようございます……
D:って皆さんどうしたんです?」
C:「あぁDさん、おはようございます」
B:「いやね、村長……Aさんがこの時間に起きて来てないのが珍しいなと思いましてね」
D:「そういえば今日はまだ見かけていませんでしたね」
C:「Dさんも会ってないですか……」
D:「会っていないと言えば、Eさんもまだ見かけてないですね」
B:「まぁ、我々で起こしにでも行きましょうか」
C:「そうですね」
ナレーション:三人はまず、A宅へと向かいました。
C:「村長!Cです!もう朝ですよ!」
ナレーション:扉を叩きながらCが声をかける。
ナレーション:しかし扉の向こうからは返事は無く、人の気配さえしませんでした。
C:「あれ?おっかしいな……」
B:「どこかに行ってるんですかね?」
D:「Aさんは、いつもこの時間には起きてるんですか?」
C:「そうですね。この村一番の早起きですからね」
B:「定例会の時間になると、起こしに来てくれるくらいですよ」
ナレーション:三人が話をしていると、森の方から人影が。
E:「……皆さん、どうしたんですか?」
B:「うぉっ!」
C:「Eさんじゃないですか」
B:「驚かさないで下さいよ!」
E:「……すみません」
D:「どうして森の方に居たんです?」
E:「……早朝に目が覚めてしまいまして
E:……散歩ついでに周辺の地理を覚えておこうと思いまして」
B:「あぁそうだ、散歩していたなら
B:Aさんを見かけませんでしたか?」
E:「……Aさんですか?」
D:「まだ誰も会ってないみたいなんです」
E:「……すみません、俺も見かけてないです」
B:「そっかぁ……」
C:「どこに行っちゃったんですかね」
E:「……家には居なかったんですか?」
D:「僕ら三人で行きましたけど、返事が無かったんですよ」
ナレーション:その言葉を聞いた途端、Eの表情が険しくなり
ナレーション:今までの小さな声で話していたのが嘘のように、ハッキリとした声で三人に言いました。
E:「家から……家から変な匂いはしませんでしたか!?」
B:「どわっ!急に大きな声出さないで下さいよ!
B:……でも言われてみれば、変な匂いがしたような……」
D:「少し生臭い匂いがしたような気がしますね?」
C:「……まさか!?」
ナレーション:ハッとした表情を見せ、CはAの家へと走って行きました。
B:「ど、どういうことだ!?
B:Eさん!あんた何か知ってるのか!?」
E:「いえ、まだ分かりません……
E:ただ恐らく、Aさんはもう……」
B:「なんだ、どういうことなんだ!?」
D:「Bさん!落ち着いて下さい!
D:とりあえず僕らもAさんの家に行きましょう」
B:「……そうですね」
ナレーション:少し揉めたあと、三人はCを追うようにAの家へと向かいました。
ナレーション:三人がAの家へと着くと、先に到着していたCが、強く扉をノックし
ナレーション:声をかけていました。
C:「Aさん!俺です!Cです!ドアを開けてください!」
B:「Cさん!」
C:「ダメです!やっぱり返事がありません!」
E:「どいてください!Aさん!Eです!
E:もし扉の近くに居るなら離れてください!」
ナレーション:そうEは声をかけると、助走をつけ
ナレーション:扉を蹴破りました。
ナレーション:激しい音を立てて破られた扉の先には
ナレーション:無惨な姿で死んでいるAの姿がありました。
B:「Aさん!」
C:「嘘だろ!どうなってるんだ!」
D:「うっ!(嘔吐)」
B:「なんでAさんが死んでるんだよ!」
E:「……人狼です」
B:「…え?」
D:「人狼?」
C:「冗談……だろ……」
E:「……いいえ、間違いありません」
C:「森の狼にやられた可能性は?」
E:「残念ですが、それは有り得ません。
E:野生の狼が襲ったのであれば、もっと散らかっているはずです。
E:何より、この家は鍵が掛かっていました。
E:鍵の掛かった家を襲うなんて芸当、人狼にしかできません」
B:「そんな……」
E:「極めつけは、この綺麗に抜き取られた心臓部です」
D:「心臓がなんなんですか?」
E:「人狼は人体において、心臓を最も好みますから」
C:「以前文献で読んだことがあります……
C:人狼は人に化け、夜な夜な人を喰らうのだと」
D:「じゃあ……この中に……」
E:「その通りです」
B:「おい……嘘だろ?」
E:「恐らくこの中に……
E:人狼がいます」
C:「そんな……」
B:「この中に、Aさんを殺したやつが居るのか!?」
D:「そんなのどうやって見つければ……」
E:「それでも見つけなければ、こっちが殺られてしまいます。
E:ここから先は、お互いを信じない方が良いかも知れません」
B:「信じない方がいいって……」
D:「じゃあ改めて聞きますが、Eさん
D:貴方は今朝、本当は何をしていたんですか?」
E:「言ったはずです。
E:俺は周辺のことを知るために散歩をしていただけです」
D:「それだって信用ならないじゃないですか!」
E:「それを言うなら、私以外の一番最初に起きていた方も疑わしいはずです」
D:「一番……最初……」
C:「最初に起きていたのは、たしかBさんでしたよね……?」
B:「……は?俺を疑うのかよ?
B:俺が村長を殺すわけがないじゃないか!
B:アンタたちが来る前から、ずっと一緒に過ごしてたんだぞ!?」
E:「それでも今は、疑わざるを得ない状況なんです」
B:「なんでだよ……
B:Cさん……Cさんは俺の事信じてくれるよな!?」
C:「すみません……今はもう
C:誰を信じることも……」
B:「嘘…だろ……」
E:「……とりあえず各自の家に戻りましょう」
ナレーション:暗い面持ちで、全員が各自の家へと向かいました。
ナレーション:その間、会話などは一切なく
ナレーション:ただ俯(うつむ)くことしかできないのでした。
ナレーション:Aの死は、それほどの衝撃を与えると同時に
ナレーション:疑惑の念を村人達へ植え付けました。
ナレーション:──翌朝
B:「……おはようございます」
C:「……」
D:「おはようございます」
E:「……全員居るみたいですね」
B:「誰も喰われなかったのか……」
D:「みたいですね」
B:「……アンタ随分と平気そうだな」
D:「はい?」
B:「皆寝れずにゲッソリしてるってのに
B:アンタだけは、よく寝れたって顔してる……
B:怖くなかったのか?」
D:「……昨日の夜
D:俺なりに、よく考えました
D:誰が人狼なのか、なにか疑わしいことは無かったか、生き残るにはどうすれば良いのか……
D:だけど俺には何も分かりませんでした。
D:だから諦めたんです」
B:「諦めた?」
D:「はい、どうせ相手が人狼である以上
D:襲われたら、どう足掻いても人間の俺たちには勝ち目がありません。
D:なら、しっかり寝て次の日に備えた方がいいじゃないですか。
D:だから寝たんです」
C:「村の仲間が喰われて、そんな冷静な判断ができるなんて凄いですね
C:私はAさんのことを思うだけで……眠れませんでしたよ」
E:「言い争いはそのへんにしておいて下さい。
E:余計なエネルギーを使うだけです」
B:「……わかってるよ」
E:「ともかく今は、人狼が襲ってくるであろう夜を警戒するために
E:体力を温存しておくべきです」
C:「それは無茶な話です。
C:昼間は農作物の管理をしなくてはいけません。
C:一日でも怠ってしまえば、大きな損害に繋がることもありますから」
D:「日が出てるうちは畑仕事、日が沈めば人狼を警戒……
D:確かに、体がもたないですね」
C:「人狼に喰われる前に餓死だなんて
C:本末転倒もいい所です」
E:「それはそうですが……」
B:「結局は、Dさんの言う通り
B:夜は諦めて寝るしかないのかもしれませんね」
E:「……」
C:「とりあえず今は、今日の分の作業を済ませましょう」
B:「そう……ですね」
ナレーション:Bが力なく解散を告げると、その日の作業をする為に
ナレーション:各々行動し始めました。
ナレーション:そうするうちに日が暮れ、疲れきったという表情で
ナレーション:皆、自宅へと戻って行きました。
ナレーション:村に今までの活気は無く、物静かな様子は
ナレーション:村人達の不安と恐怖をよりいっそう強くさせました。
ナレーション:──翌朝
B:「今日も皆…生きてる……」
C:「ハハ……一体どうなってるんですかね?」
E:「無事で何よりです」
D:「……あの、本当にこの中に人狼って居るんですかね?」
B:「どういうことだ?」
D:「いやだって、二日間も誰も喰われてないんですよ?
D:もしかしたら、人狼がAさんだけを襲ってどっかに行ったんじゃないですか?」
C:「第三者が居たってことですか?」
D:「そういうことです」
E:「それは有り得ません。
E:人狼は一度標的を決めたら、その村に執着するはずです。
E:たった一人を襲うどころか、村人が全滅する前に移動するなんて、考えられません」
D:「それですよ、Eさん」
E:「はい?」
D:「Aさんが喰われてしまった時から気になってたんです。
D:あなた、人狼に詳しすぎやしませんか?」
E:「……」
D:「人狼の好物や習性まで、まるで自分のことのように知っていますよね?
D:どうしてですか?」
E:「……それは……申し訳ないですが
E:今は言えません」
D:「言えないって……それはいったいどういうことなん──」
B:「Dさん(遮るように)
B:もういいでしょう」
D:「でも……!」
B:「誰だって秘密の一つや二つ……あるものでしょう?
B:Eさん、あなたがこの事について話したくないのなら
B:深くは言及しません。
B:ですが今は、お互いを信じ合える状態にしなくてはいけません。
B:あまり不安を煽るようなことはしないで頂きたい」
E:「……申し訳ない」
B:「じゃあ……今日の作業に──」
C:「なぁ、Bさん(遮るように)」
B:「……どうした、Cさん?」
C:「皆も聞いて欲しい。
C:俺……この村を出ようと思います」
B:「……は?」
D:「出るって……」
E:「この状況で何言ってるんですか!?」
B:「なぁCさん、考え直せよ。
B:この村は、俺たち三人で頑張って作ってきた場所じゃないか!
B:それを、Aさんの無念を晴らせないまま
B:立ち去るって言うのかよ!」
C:「仕方ないだろ!
C:俺はもう……皆のことを疑いたくないんだよ
C:かと言って、人狼にだって喰われたくない
C:じゃあ!……もうこの村を出て行くしかないじゃないか!」
B:「……本当に行くのか?」
C:「もう…決めたことです」
B:「悔しくないのかよ!」
C:「……すみません」
B:「……クソッ!」
ナレーション:そう言い残すと、Bさんはどこかへ行ってしまいました。
D:「俺……今日の作業してきます」
ナレーション:Dさんも追うように、その場から立ち去っていきました。
E:「……いつ頃出るんですか?」
C:「今日の作業を済ませてからだから……日が暮れる頃かな」
E:「見送りますよ、森は危険ですから」
C:「……ありがとう」
ナレーション:少し言葉を交わした後
ナレーション:二人も作業をするために、移動をしました。
ナレーション:そして、日が暮れる頃。
C:「……それじゃあ皆、どうか達者で」
D:「Cさんも、どうかお元気で」
B:「……」
E:「それじゃあ行きましょうか」
0:
D:「良いんですか?行かなくて」
B:「……俺はいいんだよ」
D:「……そうですか」
B:「俺、家に戻るわ
B:少し……一人にさせてくれ」
D:「分かりました。
D:色々あってお疲れだと思います。
D:ゆっくり休んで下さい」
ナレーション:Bは少し手を上げ、お礼を伝えた後
ナレーション:自宅へと戻って行きました。
ナレーション:──翌朝
B:「……本当だったら、この時間には
B:五人で朝の定例会をしてたんだよな。
B:きっとAさんに起こされて、俺が『また負けた』って悔しがって
B:それをCさんが横で、静かに笑っていて……
B:そんな日常が続くはずだったのにな……
B:なのに、なんでアンタしか来ないんだろうな。
B:Dさん」
D:「Aさんは人狼に喰われ死亡、Cさんは村を出ていって居ない、Eさんは森で行方不明……
D:二人だけになってしまいましたね
D:Bさん」
B:「行方不明?……『君が喰った』の間違いだろう?」
D:「フフッ…フハハハハハ
D:そうかもしれませんねw」
B:「……否定しないんだな」
D:「まぁもう隠す必要も無いですから」
B:「アンタだったんだな……人狼は。
B:……俺のことも喰うんだろ?」
D:「勿論です」
B:「じゃあさっさと終わらせてくれ」
D:「おや?足掻かないんですか?」
B:「どうせ無駄だろ?もういいんだ」
D:「そうですか
D:では、お望み通りに……」
ナレーション:カチャリ
ナレーション:Dさんが言いかけた瞬間、頭に銃口が突きつけられました。
E:「……俺の仲間は、美味しかったか?」
B:「どう……して……」
D:「これは驚いた!アナタはあの時始末したはずでしたが?」
E:「俺はこれでも狩人でね。
E:お前らのような獣を騙す手段くらい、いくらでもある」
D:「ほぉ……これは一本取られましたねぇ
D:私の負けだ
D:さぁ、あとはその引き金を引けば終わりです。
D:どうぞ?私はもう抵抗なんてしませんから」
E:「その前に一つ、聞きたいことがある。
E:ここからそう遠くない場所にも、村があったはずだ。
E:そこを襲ったのはお前か?」
D:「……はて、なんの事やら」
E:「しらばっくれるな!
E:丁度一年前のことだ。
E:俺の居たその村は、人狼に襲われ全滅した!」
D:「……あぁ、あの村のことか
D:ガキも老人も、美味しかったなぁ……」
E:「……ッ!死ね!ゲス野郎が!」
ナレーション:Eさんが引き金を引くと、辺りに銃声が響き渡り
ナレーション:文字通り、Dさんの脳天を吹き飛ばしました。
E:「ハァ……ハァ……終わった……」
B:「Eさん……アンタ狩人だったのか」
E:「黙っててすみませんでした。
E:でも話す訳にはいかなかったんです。
E:人狼にバレるのは、どうしても避けたかったので」
B:「そっか……」
ナレーション:暫くの沈黙。人狼の恐怖から開放された二人は
ナレーション:安堵こそ感じたものの、喜びは一切感じていませんでした。
B:「……なぁEさん、俺に協力してくれないか?」
E:「協力ですか?」
B:「この村を復興させたいんだ。
B:俺はこの村を、どうしても捨てたくない」
E:「……分かりました」
B:「良いのか?」
E:「俺……本当は、人狼を殺したあと
E:すぐにこの村を出ていくつもりでした。
E:だからなるべく、皆さんと関わらないようにしてたんです。
E:でも気がついたら、ここが俺の居場所になっていました。
E:だから……守りたいんです、俺も。
E:ようやく得られた、この居場所を」
B:「……ありがとう」
ナレーション:こうして二人はより固い絆で結ばれ、村の復興を誓うのでした。
ナレーション:───そして、日が暮れた夜
ナレーション:二人を見る影が一つ。
ナレーション:村を見ることができる、少し離れた崖の上で
ナレーション:一人の男が拍手をしていました。
C:「……いやぁ、見事だねぇ
C:ちゃんとDを殺したか。
C:うん……本当に見事だったよ…D。
C:君は『狂人』としての役割を完璧に果たした。
C:あとは俺が、二人を喰らうだけだ……
C:あぁ……楽しみだなぁ
C:Bさんは、本当は人狼が俺だと知ったら、どんな顔をするかなぁ……
C:Eさんは、本当は村を襲ったのが俺だと知ったら、どんな顔をするかなぁ……
C:あぁ…楽しみだ、楽しみだ
C:楽しみでたまらねぇ……
C:やっぱり絶望は、最高のトッピングだなぁ……」
ナレーション:美しい月を前に、今夜も人狼の牙が
ナレーション:ギラリと輝く。
0:外伝
0:DとEが越してきた夜のこと
A:Dさんに、Eさん……っと。
A:いやはや、この村もだいぶ充実してきましたねぇ。
0:扉がノックされる
A:おや?どうぞ。
C:今晩はAさん。
A:あぁ、Cさんでしたか。
A:どうされました?
C:いえ、今朝の畑の件で少々ご相談をと思いまして。
A:そうでしたか。
A:しかしまぁ……なんと言うか
C:……ん?なんです?
A:獣臭さと言うのは、どうも隠せないものですね。
C:はい?
A:ようやく私を食べに来たんですか?
C:……何言ってるんですかAさん?
C:食べに来た?いったいなんのことだか──
A:(遮るように)
A:動揺するとすぐ爪をたてる
A:貴方の悪い癖ですよ?
A:幸いと言うべきか、私しか気づいていませんが
C:アンタ、一体なんなんだ?
A:何を今更……貴方もよく知っているでしょう?
A:私はこの村の村長ですよ。
C:そんなことを聞いてるんじゃない!
A:狼の姿だと性格が荒くなる。
A:それに伴い口調も荒い。
A:そしてそれを誤魔化すために、人型の時は丁寧な口調を使う。
A:貴方はまるでお手本のような人狼ですね?
A:まるで昔の私を見ているようだ。
C:俺を人狼だとわかっていながら、どうして殺さない?
C:情けだとか甘いこと言うんじゃ無いだろうな?
A:何故殺さないか……
A:それは違いますね。
A:殺さないのではなく、殺せないのです。
C:殺せない?
A:私は貴方に殺されなくてはならない。
A:いや、殺された事にならなくてはいけない
A:と言った方が正しいですかね。
C:いったい何を言ってやがる。
A:貴方は、人狼という力を手に入れ
A:人智を超越したかのようだと
A:有頂天になっているでしょう?
C:事実そうだろう?
C:人狼の力をもってすれば、人間なんぞ虫けら同然だ。
C:誰にも止めることなんざできない。
C:俺は『選ばれし者』なんだ!
A:『選ばれし者』……言い得て妙ですね。
A:貴方は確かに選ばれたのでしょう。
A:ですが貴方は、人狼に選ばれた時点で
A:必ず人の手によって死ぬという
A:呪いに縛られている。
C:人の手によって死ぬ?何を言ってやがる!
C:人狼が、人に殺されるわけねぇだろ!
C:現に俺は、既にいくつもの村を滅ぼして来たが
C:まだこうしてピンピンしてる。
C:俺を殺せるやつなんか居やしねぇ!
A:では証明して見せて下さい。
C:証明?
A:……実は私も、貴方と同じ呪いを受けていましてねぇ。
A:ですが、私を殺すのは人じゃない。
0:Aが自分の胸部に手を突き刺す
C:お前、何やってるんだ!
A:ゴハッ!……私はこの呪いから逃れる方法をずっと考えていた!
A:神の玩具になるのなんて、御免ですからね!
0:Aが自分の心臓を取り出す
A:人狼が2人と言うイレギュラーな事態が起きたので、もしかしてと思いましたが……やはり
C:アンタ……イカれてるぜ
A:さぁどうぞ、貴方の好物の心臓です
C:……
A:あぁ、やはり獣臭い
A:私も……貴方も……
0:ドサリっとAが倒れる
C:……あぁ、証明してやるさ。
C:人狼が絶対の存在であることを。
0:そう言いCは心臓を喰らった
0:『おまけ』
A:以上で『人狼ゲーム』終了となります。
B:如何だったでしょうか
C:当シナリオは、いわゆるボードゲームの『人狼』を題材としたシナリオとなっております。
D:役職が『村人』『狩人』『狂人』『人狼』と、人狼陣営が有利な状態だったり、毎朝処刑される人が居ないなど『人狼ゲーム』というより『人狼』に焦点を当てたシナリオになってしまいました。
E:5人なので、役職を増やそうにも、かなり難しかったので諦めましたw
A:ではここで、改めてまして役職紹介と行きましょう!
A:『村長』兼『人狼』、そして『ナレーション』をしました。Aです。
A:外伝で人狼だった事が明かされましたね。
B:最後まで生き残った『村人』役をしました、Bです。
B:村では副村長的ポジション、といった感じですね。
C:美味しい所を頂きました。『人狼』役のCです。
C:村では知識豊富な相談役と、信頼を勝ち取った存在でした。
D:『狂人』役をやらせて頂きました。Dです。
D:村には後から来たり、少し疑わしい発言をするなど、狂人としてしっかり場を乱していたかと思います。
E:『狩人』役のEです。
E:人狼に以前居た村を滅ぼされ、復讐の為に村を転々としており、あまり深い関係になるまいとしていたなど、実は結構濃いキャラ設定となっております。
A:以上の5名でやらせて頂いた人狼ゲームなのですが……処刑要素を入れるかかなり迷いましたw
B:でも処刑要素を入れると人数的に、登場人物の減り方がえげつないんですよねw
C:因みにAの密室殺人に関してのトリックですが、最初に朝Aを起こしに行った時、Cがノックをし起こそうとしていますが、この時はまだ鍵がかかっていませんでした。
D:つまり、「……まさか!?」と言い走り去った後、いち早く到着していたCが鍵をかけノックをしていた。ということですね。
A:まさかのAは殺されたのではなく、自害していた訳なのですが。
B:前編では、主にDとEが疑われ易いように書いてみました。
C:皆様の予想は当たったでしょうか?
D:以上で、この『おまけコーナー』も終了でございます。
E:ここまで読んで頂きありがとうございました!