台本概要

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タイトル 「うぃざーず/うぃっちーず」第三話「Critical magic.」
作者名 なぎ@泣き虫保護者  (@fuyu_number10)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男2、女3) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 第二話を受けて、いよいよ橙花たちが動き出します。その結末は。
「うぃうぃ」一応の完結です。

Special thanks マヨネちゃん. @mayo_ne12

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お伺いできる限り聴かせていただければと存じます。

なお、特に商用利用の場合において、著作権は放棄していません。無断での転載はお断りします。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
48 天野 彗(あまの すい)。姉弟の姉。幼いころに弟の昴とキスをして魔法に目覚める。炎魔法の能力持ちだけどほぼ使えません。
56 天野 昴(あまの すばる)。姉弟の弟。幼いころに姉の彗にキスをされて魔法に目覚める。氷魔法の能力持ち。
橙花 41 宮泉 橙花(みやいずみ とうか)彗のクラスメイトで、昴とも面識アリ。反魔法集団に属している。
16 謎の男。反魔法集団に属している。その正体は本編で。
彗の母 7 天野 恵(あまの けい)。姉弟の母。橙花役の方が兼ねてもOKです。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:橙花の独白から、タイトルコール。 橙花:(N)「私の家は、武士の家系で、かつて「魔を統(す)べる者」を退治した家系なんだ、と教えられて育ってきた。 橙花:ウチが剣術の道場なのは、その名残(なごり)、なんだと。 橙花:私はずっと、それを「また冗談を言ってるわ」と話半分に聞きながら、 橙花:それでも普段の護身のために、剣術を学んでいた。 橙花:そもそも魔法だとかそんな、オカルトのような存在自体、信じてなどいなかった。 橙花:それが、こんなところで剣術の技を使うことになるなどと、思いもせずに・・・。」 彗or昴:「うぃざーず/うぃっちーず」第三話「Critical magic.」 0:とある日の早朝。宮泉家の道場にて。橙花、木刀を一心不乱に振る。 橙花:「んっ!・・・ふっ!!」 橙花:  橙花:(N)「ほんの少し前まで、・・・何でもない会話ができる、お友達だったのに。」 0:素振りを終えた橙花、庭の井戸の水で顔を洗い、手ぬぐいでぬぐう。 橙花:「(ため息)どうして、こんなことになったんだろう。」 橙花:彗ちゃん・・・昴君・・・。」 橙花:  橙花:(N)「私は何度この問いを繰り返しただろう。考えても考えても、 橙花:「ウチはそういう家だから」という結論に至ってしまう。 橙花:「そういう家だから」?あの与太話(よたばなし)、信じていなかったのに・・・?」 0:中庭に人影。橙花が気づく。 橙花:「・・・?」 男:「よう。」 橙花:「(不快そうに)・・・何?」 男:「殺気がダダ漏れだぞ・・・まぁ、それだけやる気なのかも知れんが。」 橙花:「・・・今ここで、あなたを殺してもいいのよ。」 男:「やめておけ、家名に泥を塗りたくないだろう?親殺し、としてな。」 橙花:「・・・(唇を噛む)。(小声で)友達を、・・・手にかけるくらいなら・・・家名なんて・・・。」 男:「・・・。」 0:男、いきなり橙花に平手打ちをする。 橙花:「っ?!」 男:「お前に宮泉(みやいずみ)の血が流れている限り、「魔を統べる者」を殺すのは使命だ。」 橙花:「あんな与太話・・・。」 男:「昨日のアレは、夢などではないぞ。あいつらを殺すのは、橙花、お前だ。」 橙花:「っ・・・!」 0:男、立ち去る。 橙花:「・・・私は・・・何も、できないの・・・?」 0:場面転換。学校のチャイムが鳴る。橙花、席に座ってぼんやりとしている。 彗:「おーい!とーぅかー!?」 橙花:「(驚いて)っ!?なに!?」 彗:「いやいや、何!?じゃないでしょーに。どしたん?ぼーっとしてさー。ってか珍しいね、油断してるねー(にしし、と笑う)」 橙花:「ん、・・・ごめん、なんでもないの。」 彗:「そっかー。ならいいけどさー?改めてぇ~、おっすー!」 橙花:「うん。おはよ、彗ちゃん。」 0:彗と橙花、ハイタッチする。 橙花:「彗ちゃん、体調、・・・本当に大丈夫?」 彗:「んー、まだちょっとだけダルさがあるけど・・・まぁダイジョブっしょ。」 橙花:「そう、それならいいんだけど・・・。」 彗:「ありがとね!昨日も連絡くれたし。心配かけちゃったね。」 橙花:「いいの。友達でしょ、私たち。」 彗:「当たり前じゃん!だからこそ、ありがとう、でしょ!」 橙花:「(N)そういってにっこり笑う彗ちゃんのことを、私は真っ直ぐに見ることが出来なかった。 橙花:どの口が、『友達』などと彗ちゃんに言えたのだろう・・・。」 彗:「・・・あれ?アタシ変なこと言った?」 橙花:「んーん、彗ちゃんってさ、・・・いい子だな、って。」 彗:「え~?何よそれー!あははっ!」 橙花:「ねぇ、彗ちゃん・・・?」 彗:「何?」 橙花:「その・・・今日は、昴君は?」 彗:「昴?うん、普通にガッコ来てるよ?」 橙花:「そう・・・。」 彗:「え、何?橙花もしかして昴のコト・・・(色めき立つ)。」 橙花:「えっ?・・・ああ、そういうことじゃないの。」 彗:「ふーん?・・・そうなんだー・・・?んっ!」 0:彗のスマホに電話がかかる。 彗:「知らない番号だ・・・。もしもし?」 彗:はい、そうです(だんだんトーンが落ちる)・・・え・・・嘘・・・? 彗:(涙声で)はい、はい!すぐに行きます!!」 0:彗、弾けるように席を立つ。 橙花:「彗ちゃん?」 彗:「橙花ごめん!今日アタシ学校休む!あとよろしく!!」 橙花:「えっ、彗ちゃ・・・?」 0:彗、早退してしまう。橙花、胸騒ぎがする。 橙花:「まさか・・・(青ざめ、息を呑む)っ・・・。」 0:学校の屋上、男が立っている。服や顔に返り血がついている。 男:「橙花、次はお前の番だぞ・・・どうする?」 0:廊下をダッシュする彗、昴の教室に向かう。その途中で昴と合流。 彗:「昴!」 昴:「彗!」 彗:「昴、パパとママが!」 昴:「聞いたよ、急ごう!」 彗:「パパとママ、・・・大丈夫だよねっ?」 昴:「二人とも頑丈なの知ってるでしょ?!」 0:彗と昴、病院に到着する。面会謝絶の札がかかった病室に飛び込む。 彗:「パパ!ママ!!」 0:二人の父母、重傷で意識がない。 昴:「二人とも、何で・・・?」 0:彗の母、意識を取り戻す。 彗の母:「すい・・・すば、る・・・。」 彗:「ママ!!」 昴:「母さん、何があったの?」 彗の母:「二人、とも、・・・天野のお爺ちゃんのところに・・・逃げ、なさい・・・。」 彗:「お爺ちゃん家?何で?どういうこと!?」 彗の母:「アンタたち、・・・キ、ス・・・した、でしょ・・・。」 彗:「っ!?」 彗の母:「(切れ切れの声で)そのせいで、彗のチカラを昴が受け取ってしまった・・・。」 昴:「ぼく、が・・・?」 彗の母:「彗が、魔法の力を譲渡してしまったの・・・あってはならない、こと・・・してはいけないこと。 彗の母:そして昴、アンタは・・・、「魔を統べる者」。」 昴:「(嚙み締めるように)「魔を統べる者」・・・?」 彗の母:「彗、アンタはその贄(にえ)に、・・・なる・・・。」 彗:「にえ・・・?」 彗の母:「アンタの命が・・・っぐ・・・。」 彗:「ママ?ママ!!」 昴:「母さん・・・。」 0:母が意識を失う。その後の病院内、自販機から飲み物が出てくる。重たい雰囲気の彗と昴。 彗:「ママ・・・。」 昴:「・・・(難しい顔でうなる)。」 彗:「昴・・・?」 昴:「・・・父さんと母さんが襲われたのって。」 彗:「え?」 昴:「魔法のコトが原因なんじゃ・・・。」 彗:「へ・・・?」 昴:「それでさ・・・もしかしたら母さんが言ってた「魔を統べる者」、っていうか、・・・僕が・・・。 昴:誰かに狙われてるんじゃないか、って。」 彗:「昴が・・・?」 昴:「そういうこと、だよね・・・。それと」 彗:「それ、と・・・?」 昴:「彗、彗が倒れたのって。」 彗:「ん?」 昴:「魔法の力を僕に渡したから、だよね・・・?」 彗:「・・・。」 昴:「何であんなことしたの?」 彗:「それは!アタシはあの力に憧れてたし、昴とその・・・しちゃったら、 彗:(少しずつトーンが落ちていく)またあのときみたいなステキなことが起きるんじゃないか、って・・・だから・・・。」 昴:「そっか・・・うん。わかった。(優しく諭すように)彗、僕は怒ってるわけじゃないから、安心して。」 彗:「うん・・・。」 昴:「でも母さん、「贄」って言ってた・・・どういうことだろう・・・。」 彗:「にえ・・・「生贄」とかの「贄」?」 昴:「聞き間違いじゃなければ、たぶんそう。でも・・・。」 0:しばしの沈黙。口を開いたのは彗。 彗:「昴、ママの言う通りに逃げよ?」 昴:「天野のお爺ちゃんのところ?」 彗:「うん、・・・でも・・・おじいちゃんたちに迷惑かけるかな・・・?」 昴:「でも母さんの言うとおりにしなきゃだし・・・だったら・・・あえて寄り道しながら逃げる 昴:・・・それなら意外に撒(ま)けるかも・・・。」 彗:「うん、・・・その分どうなるか分からないけど・・・。」 昴:「やるしかない、よね。」 彗:「うん・・・。」 0:彗と昴、看護師にくれぐれもと父母を託し、病院を抜け、郊外の山の方に移動する。 彗:「(息を切らしている)はぁ、はっ、・・・まだ誰も追ってこないよね?」 昴:「(同じく息を切らしている)とりあえず、だけど・・・。でもどうしてウチだけが・・・?」 彗:「分からない・・・全然心当たりないもの・・・昴は?」 昴:「僕も全然・・・。」 0:二人の後ろ、音もなく橙花が近づく。 橙花:「二人とも。」 彗:「(昴と同時)っ!」 昴:「(彗と同時)っ!」 0:橙花、ノーモーションで背後から彗を刺し貫く。 彗:「とう・・・か・・・?か、・・・っは・・・っ・・・!」 橙花:「ごめんね。」 昴:「彗?彗っ!!?」 橙花:「昴君・・・。」 0:彗の胸元から血が流れだす。切っ先が鋭すぎるためか、その流れはゆっくりとしている。 昴:「彗!彗!!(突然苦しみだす)う・・・ぁ・・・!?」 0:昴の足元から、放射状に冷気と強風が広がる。 橙花:「これが、・・・昴君の・・・チカラ・・・。」 昴:「・・・うぅぁああああああああああああ!!!」 0:昴が両手をかざすと、巨大なつららが現れ、橙花の真上から落下する。 橙花:「っ!」 0:橙花、間一髪で後ろに跳び、つららを避ける。なおもつららは橙花を襲う。 昴:「・・・カラメトレ(搦め取れ)っ!」 0:飛び退いた橙花の足に、氷の鎖が絡まる。動けなくなる橙花。歩み寄る昴。 橙花:「くっ!」 昴:「トウカ・・・さん・・・!」 0:昴の眼は、血走っていながら潤みを帯びている。 橙花:「昴君・・・あなた・・・覚醒が・・・?!」 昴:「どうしテ・・・こンナ・・・コト・・・!!」 橙花:「あなたたちが・・・魔法に目覚めたから・・・。 橙花:私たちは・・・「魔を消し去る者」よ。 橙花:そして昴君・・・あなたは、・・・「魔を統べる者」。 橙花:あなたの力が解放されると、この世のあらゆる「悪魔」と言われる奴らがこの世界に解き放たれる。 橙花:昴君、・・・あなたを中心として。」 昴:「ぼくタちヲ・・・こロすノ・・・?」 橙花:「「魔を消し去る者」のつとめを、果たすわ・・・。ごめんなさい、昴君。」 昴:「僕たちハ・・・ぐっ・・・死ぬわけには、いかない!」 0:昴、脳内に自然に流れてくる言葉をそのまま声に出す。 昴:「氷の奔流(ほんりゅう)より創り出す凛冽(せいれつ)な刃よ、 昴:我が前に立ち塞がる者を断ち切り、紅蓮(ぐれん)の血潮を舞い散らせん。氷の刀、その名をとどろかせ!」 昴:  昴:「氷刃・六華(ひょうじん・りっか)!」 0:昴の右手に氷でできた豪華な装飾の剣が現れる。 0:橙花、座った状態から刀を弓矢を引くように引き、「突き」の姿勢。昴、六華を構える。 橙花:「『絶華、壱式(ぜっか・いちしき)』!!!」 昴:「ぐっ!!!」 0:昴、剣撃を六華で受け止めようとするが、六華を折られてしまう。 橙花:「昴君・・・。」 昴:「六華!!」 0:昴、再び六華を召喚、攻勢に出る。めったやたらの攻撃だが・・・。 橙花:「っ!く!」 0:昴の気迫に押される橙花。 橙花:「ぅあ・・・っ!」 0:橙花、受け止めきれず肩口を斬られる。昴、畳みかける。 昴:「ぅあああ!!」 橙花:「っ!」 0:昴の一突きが橙花の胸元を貫く。 橙花:「すば・・・ん・・・すぃ・・・ちゃ・・・。」 0:橙花、倒れる。 昴:「はー、はー・・・っ。彗・・・。」 0:昴、彗のもとに。 昴:「彗、彗!」 彗:「・・・すば、・・・る・・・(呼吸はするものの、声はかすれる)。」 男:「おい。」 昴:「っ!」 0:昴、弾けるように振り向く。 男:「ったく・・・面倒ごと増やしやがって。少年、悪いがおとなしくやられてくれねぇか・・・?」 昴:「あなた、は・・・?」 男:「そこで氷漬けになってる娘の、親・・・だが・・・まぁそれはいい。」 昴:「橙花さんの・・・?」 男:「あー、そういうのは今どうでもいいんだ。お前さんが魔法を使えるばっかりに、 男:こういう状況になってるわけだが・・・。それももうどうでもいい。」 男:お前さんたちを始末することが、宮泉の宿命なんだ。悪いな。」 0:男、視認できないほどの速度で刀を振るう。 昴:「!!」 0:自分をかばおうとした昴の両腕から氷の盾が発生し、刀が盾に食い込む。 男:「(少し感心したように)へえ。」 昴:「・・・。」 0:昴、後ろに跳び、距離を取る。 昴:「『六華』!!」 0:昴の腕に絡まるように、氷の刃が発生する。 男:「剣で俺に勝てると思うか?」 昴:「(震える声で)やってみなくちゃ、分からない・・・。」 男:「ふぅ・・・命のやり取りは一発勝負だ。来いよ。」 0:昴、剣道の中段の構え。 男:「いくぞ。」 昴:「(小声で)しもばしらよ、こおりの・・・あらし・・・ぜつ・・・いてつき・・・」 男:「はあああああっ!!!」 昴:「『天牢雪獄(てんろうせつごく)』!!!」 0:男、動き出した姿勢のまま、氷漬けになる。魔力を大きく使った昴、膝をつく。 昴:「・・・っぐ・・・ふぅ・・・。はぁ、はぁ・・・。」 0:昴、再び彗のもとへ。 彗:「すばる・・・。」 昴:「彗、・・・しゃべらなくっていいよ・・・。」 彗:「すばる、アタシ、しぬの・・・?」 昴:「そんなこと、させないよ。今は、少し休んでてね。」 昴:「魂の渦に踊るような寒気を纏(まと)い、氷の精霊たちよ、冷たい鎖を紡ぎ出せ。 昴:永遠(とわ)の眠りに堕ちるように、相手を凍りつかせ、時間の流れを停めよう。 昴:寒冷なる氷漣(ひょうれん)に包まれし者よ、その存在を氷像と化し、永劫(えいごう)の眠りに閉ざされよ。 昴:凍結の呼び声、凍魂(とうこん)の謳歌!『氷結封縛(ひょうけつふうばく)』!」 0:彗の身体が、足元から凍り付いていく。 彗:「昴・・・?」 昴:「必ず、また一緒に暮らせるから・・・待っててね。」 彗:「うん・・・アンタ・・・強かったんだね、最初から。」 昴:「もう・・・今それ言う?」 0:二人、そっと笑う。彗の全身が氷に包まれようとする。 彗:「昴、アタシ、待ってるからね。」 昴:「うん。待っててね。・・・おやすみなさい。」 0:彗、氷に包まれる。疲労で大の字に倒れ込む昴。しばらくの間。 昴:「・・・(ため息)これから・・・彗をもとに戻さなきゃ・・・。」 昴:  昴:「(N)僕の力は全て彗からもらったもの。だから、彗に返さなくちゃ。 昴:何より魔法に憧れていたのは、他でもない、彗なんだから。 昴:彗が僕の贄(にえ)になって死ぬなんて、絶対に嫌だ。 昴:だけど今は、彗を冷凍保存して、彗を元に戻す方法を探さなくちゃいけない。 昴:彗が僕の贄じゃなく、死ぬこともなく、普通に暮らせるようになる方法を。 昴:でも、・・・魔法を使いこなす彗も、ちょっと、見てみたいかも。」 昴:  昴:「僕と彗が、逆だったらよかったのにな・・・。」 0:昴、山の奥深くに姿を消す。後ろから蝙蝠(こうもり)やゴブリンらしき影が、そっと昴の後を付いて行く。 0:  0:おしまい。

0:橙花の独白から、タイトルコール。 橙花:(N)「私の家は、武士の家系で、かつて「魔を統(す)べる者」を退治した家系なんだ、と教えられて育ってきた。 橙花:ウチが剣術の道場なのは、その名残(なごり)、なんだと。 橙花:私はずっと、それを「また冗談を言ってるわ」と話半分に聞きながら、 橙花:それでも普段の護身のために、剣術を学んでいた。 橙花:そもそも魔法だとかそんな、オカルトのような存在自体、信じてなどいなかった。 橙花:それが、こんなところで剣術の技を使うことになるなどと、思いもせずに・・・。」 彗or昴:「うぃざーず/うぃっちーず」第三話「Critical magic.」 0:とある日の早朝。宮泉家の道場にて。橙花、木刀を一心不乱に振る。 橙花:「んっ!・・・ふっ!!」 橙花:  橙花:(N)「ほんの少し前まで、・・・何でもない会話ができる、お友達だったのに。」 0:素振りを終えた橙花、庭の井戸の水で顔を洗い、手ぬぐいでぬぐう。 橙花:「(ため息)どうして、こんなことになったんだろう。」 橙花:彗ちゃん・・・昴君・・・。」 橙花:  橙花:(N)「私は何度この問いを繰り返しただろう。考えても考えても、 橙花:「ウチはそういう家だから」という結論に至ってしまう。 橙花:「そういう家だから」?あの与太話(よたばなし)、信じていなかったのに・・・?」 0:中庭に人影。橙花が気づく。 橙花:「・・・?」 男:「よう。」 橙花:「(不快そうに)・・・何?」 男:「殺気がダダ漏れだぞ・・・まぁ、それだけやる気なのかも知れんが。」 橙花:「・・・今ここで、あなたを殺してもいいのよ。」 男:「やめておけ、家名に泥を塗りたくないだろう?親殺し、としてな。」 橙花:「・・・(唇を噛む)。(小声で)友達を、・・・手にかけるくらいなら・・・家名なんて・・・。」 男:「・・・。」 0:男、いきなり橙花に平手打ちをする。 橙花:「っ?!」 男:「お前に宮泉(みやいずみ)の血が流れている限り、「魔を統べる者」を殺すのは使命だ。」 橙花:「あんな与太話・・・。」 男:「昨日のアレは、夢などではないぞ。あいつらを殺すのは、橙花、お前だ。」 橙花:「っ・・・!」 0:男、立ち去る。 橙花:「・・・私は・・・何も、できないの・・・?」 0:場面転換。学校のチャイムが鳴る。橙花、席に座ってぼんやりとしている。 彗:「おーい!とーぅかー!?」 橙花:「(驚いて)っ!?なに!?」 彗:「いやいや、何!?じゃないでしょーに。どしたん?ぼーっとしてさー。ってか珍しいね、油断してるねー(にしし、と笑う)」 橙花:「ん、・・・ごめん、なんでもないの。」 彗:「そっかー。ならいいけどさー?改めてぇ~、おっすー!」 橙花:「うん。おはよ、彗ちゃん。」 0:彗と橙花、ハイタッチする。 橙花:「彗ちゃん、体調、・・・本当に大丈夫?」 彗:「んー、まだちょっとだけダルさがあるけど・・・まぁダイジョブっしょ。」 橙花:「そう、それならいいんだけど・・・。」 彗:「ありがとね!昨日も連絡くれたし。心配かけちゃったね。」 橙花:「いいの。友達でしょ、私たち。」 彗:「当たり前じゃん!だからこそ、ありがとう、でしょ!」 橙花:「(N)そういってにっこり笑う彗ちゃんのことを、私は真っ直ぐに見ることが出来なかった。 橙花:どの口が、『友達』などと彗ちゃんに言えたのだろう・・・。」 彗:「・・・あれ?アタシ変なこと言った?」 橙花:「んーん、彗ちゃんってさ、・・・いい子だな、って。」 彗:「え~?何よそれー!あははっ!」 橙花:「ねぇ、彗ちゃん・・・?」 彗:「何?」 橙花:「その・・・今日は、昴君は?」 彗:「昴?うん、普通にガッコ来てるよ?」 橙花:「そう・・・。」 彗:「え、何?橙花もしかして昴のコト・・・(色めき立つ)。」 橙花:「えっ?・・・ああ、そういうことじゃないの。」 彗:「ふーん?・・・そうなんだー・・・?んっ!」 0:彗のスマホに電話がかかる。 彗:「知らない番号だ・・・。もしもし?」 彗:はい、そうです(だんだんトーンが落ちる)・・・え・・・嘘・・・? 彗:(涙声で)はい、はい!すぐに行きます!!」 0:彗、弾けるように席を立つ。 橙花:「彗ちゃん?」 彗:「橙花ごめん!今日アタシ学校休む!あとよろしく!!」 橙花:「えっ、彗ちゃ・・・?」 0:彗、早退してしまう。橙花、胸騒ぎがする。 橙花:「まさか・・・(青ざめ、息を呑む)っ・・・。」 0:学校の屋上、男が立っている。服や顔に返り血がついている。 男:「橙花、次はお前の番だぞ・・・どうする?」 0:廊下をダッシュする彗、昴の教室に向かう。その途中で昴と合流。 彗:「昴!」 昴:「彗!」 彗:「昴、パパとママが!」 昴:「聞いたよ、急ごう!」 彗:「パパとママ、・・・大丈夫だよねっ?」 昴:「二人とも頑丈なの知ってるでしょ?!」 0:彗と昴、病院に到着する。面会謝絶の札がかかった病室に飛び込む。 彗:「パパ!ママ!!」 0:二人の父母、重傷で意識がない。 昴:「二人とも、何で・・・?」 0:彗の母、意識を取り戻す。 彗の母:「すい・・・すば、る・・・。」 彗:「ママ!!」 昴:「母さん、何があったの?」 彗の母:「二人、とも、・・・天野のお爺ちゃんのところに・・・逃げ、なさい・・・。」 彗:「お爺ちゃん家?何で?どういうこと!?」 彗の母:「アンタたち、・・・キ、ス・・・した、でしょ・・・。」 彗:「っ!?」 彗の母:「(切れ切れの声で)そのせいで、彗のチカラを昴が受け取ってしまった・・・。」 昴:「ぼく、が・・・?」 彗の母:「彗が、魔法の力を譲渡してしまったの・・・あってはならない、こと・・・してはいけないこと。 彗の母:そして昴、アンタは・・・、「魔を統べる者」。」 昴:「(嚙み締めるように)「魔を統べる者」・・・?」 彗の母:「彗、アンタはその贄(にえ)に、・・・なる・・・。」 彗:「にえ・・・?」 彗の母:「アンタの命が・・・っぐ・・・。」 彗:「ママ?ママ!!」 昴:「母さん・・・。」 0:母が意識を失う。その後の病院内、自販機から飲み物が出てくる。重たい雰囲気の彗と昴。 彗:「ママ・・・。」 昴:「・・・(難しい顔でうなる)。」 彗:「昴・・・?」 昴:「・・・父さんと母さんが襲われたのって。」 彗:「え?」 昴:「魔法のコトが原因なんじゃ・・・。」 彗:「へ・・・?」 昴:「それでさ・・・もしかしたら母さんが言ってた「魔を統べる者」、っていうか、・・・僕が・・・。 昴:誰かに狙われてるんじゃないか、って。」 彗:「昴が・・・?」 昴:「そういうこと、だよね・・・。それと」 彗:「それ、と・・・?」 昴:「彗、彗が倒れたのって。」 彗:「ん?」 昴:「魔法の力を僕に渡したから、だよね・・・?」 彗:「・・・。」 昴:「何であんなことしたの?」 彗:「それは!アタシはあの力に憧れてたし、昴とその・・・しちゃったら、 彗:(少しずつトーンが落ちていく)またあのときみたいなステキなことが起きるんじゃないか、って・・・だから・・・。」 昴:「そっか・・・うん。わかった。(優しく諭すように)彗、僕は怒ってるわけじゃないから、安心して。」 彗:「うん・・・。」 昴:「でも母さん、「贄」って言ってた・・・どういうことだろう・・・。」 彗:「にえ・・・「生贄」とかの「贄」?」 昴:「聞き間違いじゃなければ、たぶんそう。でも・・・。」 0:しばしの沈黙。口を開いたのは彗。 彗:「昴、ママの言う通りに逃げよ?」 昴:「天野のお爺ちゃんのところ?」 彗:「うん、・・・でも・・・おじいちゃんたちに迷惑かけるかな・・・?」 昴:「でも母さんの言うとおりにしなきゃだし・・・だったら・・・あえて寄り道しながら逃げる 昴:・・・それなら意外に撒(ま)けるかも・・・。」 彗:「うん、・・・その分どうなるか分からないけど・・・。」 昴:「やるしかない、よね。」 彗:「うん・・・。」 0:彗と昴、看護師にくれぐれもと父母を託し、病院を抜け、郊外の山の方に移動する。 彗:「(息を切らしている)はぁ、はっ、・・・まだ誰も追ってこないよね?」 昴:「(同じく息を切らしている)とりあえず、だけど・・・。でもどうしてウチだけが・・・?」 彗:「分からない・・・全然心当たりないもの・・・昴は?」 昴:「僕も全然・・・。」 0:二人の後ろ、音もなく橙花が近づく。 橙花:「二人とも。」 彗:「(昴と同時)っ!」 昴:「(彗と同時)っ!」 0:橙花、ノーモーションで背後から彗を刺し貫く。 彗:「とう・・・か・・・?か、・・・っは・・・っ・・・!」 橙花:「ごめんね。」 昴:「彗?彗っ!!?」 橙花:「昴君・・・。」 0:彗の胸元から血が流れだす。切っ先が鋭すぎるためか、その流れはゆっくりとしている。 昴:「彗!彗!!(突然苦しみだす)う・・・ぁ・・・!?」 0:昴の足元から、放射状に冷気と強風が広がる。 橙花:「これが、・・・昴君の・・・チカラ・・・。」 昴:「・・・うぅぁああああああああああああ!!!」 0:昴が両手をかざすと、巨大なつららが現れ、橙花の真上から落下する。 橙花:「っ!」 0:橙花、間一髪で後ろに跳び、つららを避ける。なおもつららは橙花を襲う。 昴:「・・・カラメトレ(搦め取れ)っ!」 0:飛び退いた橙花の足に、氷の鎖が絡まる。動けなくなる橙花。歩み寄る昴。 橙花:「くっ!」 昴:「トウカ・・・さん・・・!」 0:昴の眼は、血走っていながら潤みを帯びている。 橙花:「昴君・・・あなた・・・覚醒が・・・?!」 昴:「どうしテ・・・こンナ・・・コト・・・!!」 橙花:「あなたたちが・・・魔法に目覚めたから・・・。 橙花:私たちは・・・「魔を消し去る者」よ。 橙花:そして昴君・・・あなたは、・・・「魔を統べる者」。 橙花:あなたの力が解放されると、この世のあらゆる「悪魔」と言われる奴らがこの世界に解き放たれる。 橙花:昴君、・・・あなたを中心として。」 昴:「ぼくタちヲ・・・こロすノ・・・?」 橙花:「「魔を消し去る者」のつとめを、果たすわ・・・。ごめんなさい、昴君。」 昴:「僕たちハ・・・ぐっ・・・死ぬわけには、いかない!」 0:昴、脳内に自然に流れてくる言葉をそのまま声に出す。 昴:「氷の奔流(ほんりゅう)より創り出す凛冽(せいれつ)な刃よ、 昴:我が前に立ち塞がる者を断ち切り、紅蓮(ぐれん)の血潮を舞い散らせん。氷の刀、その名をとどろかせ!」 昴:  昴:「氷刃・六華(ひょうじん・りっか)!」 0:昴の右手に氷でできた豪華な装飾の剣が現れる。 0:橙花、座った状態から刀を弓矢を引くように引き、「突き」の姿勢。昴、六華を構える。 橙花:「『絶華、壱式(ぜっか・いちしき)』!!!」 昴:「ぐっ!!!」 0:昴、剣撃を六華で受け止めようとするが、六華を折られてしまう。 橙花:「昴君・・・。」 昴:「六華!!」 0:昴、再び六華を召喚、攻勢に出る。めったやたらの攻撃だが・・・。 橙花:「っ!く!」 0:昴の気迫に押される橙花。 橙花:「ぅあ・・・っ!」 0:橙花、受け止めきれず肩口を斬られる。昴、畳みかける。 昴:「ぅあああ!!」 橙花:「っ!」 0:昴の一突きが橙花の胸元を貫く。 橙花:「すば・・・ん・・・すぃ・・・ちゃ・・・。」 0:橙花、倒れる。 昴:「はー、はー・・・っ。彗・・・。」 0:昴、彗のもとに。 昴:「彗、彗!」 彗:「・・・すば、・・・る・・・(呼吸はするものの、声はかすれる)。」 男:「おい。」 昴:「っ!」 0:昴、弾けるように振り向く。 男:「ったく・・・面倒ごと増やしやがって。少年、悪いがおとなしくやられてくれねぇか・・・?」 昴:「あなた、は・・・?」 男:「そこで氷漬けになってる娘の、親・・・だが・・・まぁそれはいい。」 昴:「橙花さんの・・・?」 男:「あー、そういうのは今どうでもいいんだ。お前さんが魔法を使えるばっかりに、 男:こういう状況になってるわけだが・・・。それももうどうでもいい。」 男:お前さんたちを始末することが、宮泉の宿命なんだ。悪いな。」 0:男、視認できないほどの速度で刀を振るう。 昴:「!!」 0:自分をかばおうとした昴の両腕から氷の盾が発生し、刀が盾に食い込む。 男:「(少し感心したように)へえ。」 昴:「・・・。」 0:昴、後ろに跳び、距離を取る。 昴:「『六華』!!」 0:昴の腕に絡まるように、氷の刃が発生する。 男:「剣で俺に勝てると思うか?」 昴:「(震える声で)やってみなくちゃ、分からない・・・。」 男:「ふぅ・・・命のやり取りは一発勝負だ。来いよ。」 0:昴、剣道の中段の構え。 男:「いくぞ。」 昴:「(小声で)しもばしらよ、こおりの・・・あらし・・・ぜつ・・・いてつき・・・」 男:「はあああああっ!!!」 昴:「『天牢雪獄(てんろうせつごく)』!!!」 0:男、動き出した姿勢のまま、氷漬けになる。魔力を大きく使った昴、膝をつく。 昴:「・・・っぐ・・・ふぅ・・・。はぁ、はぁ・・・。」 0:昴、再び彗のもとへ。 彗:「すばる・・・。」 昴:「彗、・・・しゃべらなくっていいよ・・・。」 彗:「すばる、アタシ、しぬの・・・?」 昴:「そんなこと、させないよ。今は、少し休んでてね。」 昴:「魂の渦に踊るような寒気を纏(まと)い、氷の精霊たちよ、冷たい鎖を紡ぎ出せ。 昴:永遠(とわ)の眠りに堕ちるように、相手を凍りつかせ、時間の流れを停めよう。 昴:寒冷なる氷漣(ひょうれん)に包まれし者よ、その存在を氷像と化し、永劫(えいごう)の眠りに閉ざされよ。 昴:凍結の呼び声、凍魂(とうこん)の謳歌!『氷結封縛(ひょうけつふうばく)』!」 0:彗の身体が、足元から凍り付いていく。 彗:「昴・・・?」 昴:「必ず、また一緒に暮らせるから・・・待っててね。」 彗:「うん・・・アンタ・・・強かったんだね、最初から。」 昴:「もう・・・今それ言う?」 0:二人、そっと笑う。彗の全身が氷に包まれようとする。 彗:「昴、アタシ、待ってるからね。」 昴:「うん。待っててね。・・・おやすみなさい。」 0:彗、氷に包まれる。疲労で大の字に倒れ込む昴。しばらくの間。 昴:「・・・(ため息)これから・・・彗をもとに戻さなきゃ・・・。」 昴:  昴:「(N)僕の力は全て彗からもらったもの。だから、彗に返さなくちゃ。 昴:何より魔法に憧れていたのは、他でもない、彗なんだから。 昴:彗が僕の贄(にえ)になって死ぬなんて、絶対に嫌だ。 昴:だけど今は、彗を冷凍保存して、彗を元に戻す方法を探さなくちゃいけない。 昴:彗が僕の贄じゃなく、死ぬこともなく、普通に暮らせるようになる方法を。 昴:でも、・・・魔法を使いこなす彗も、ちょっと、見てみたいかも。」 昴:  昴:「僕と彗が、逆だったらよかったのにな・・・。」 0:昴、山の奥深くに姿を消す。後ろから蝙蝠(こうもり)やゴブリンらしき影が、そっと昴の後を付いて行く。 0:  0:おしまい。