台本概要
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タイトル | 妄言 |
---|---|
作者名 | しなせ (@sinase0) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 1人用台本(男1) ※兼役あり |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
ボイコネ時代に書いていた台本です。一人読み。精神が不安定な方は読むのをお控えください。
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
私 | 男 | 4 | 私は愚か者だ。自己なんて知らなかった。 |
看護師 | 不問 | 1 | 私を世話するもの。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:お前が私か。私がお前か。
0:
0:朝の空気は青く、涼しい呼吸を幾度かする。
0:私は、精神病棟に入院している。
0:そういう……『設定』だ。
0:私が病院に入院するわけがなかろう。別にどこも変じゃない。他者の方が変なのだ。あいつらはちっとも面白い話をしない。
0:
0:この、そう……、この社会では何かしらに目を向けると、目が刺される。
0:……いや?目に刺される。視線こそが他人を殺す最大の武器だ。見ようが見まいが、あいつらは見ている。そう…!見ているのだ!あいつらは私を監視し続けている。私もお前を見ている。
0:
0:口を開けると言葉で呼吸が詰まる。言葉で首が絞まるのだ。言いたいことも、まともに言えなくなってしまった……。
0:
0:耳を傾けても、泥に沈む音しか聞こえないのだ。コプリ、コプリと泥が耳に詰まってる。人の言葉などまともに聞けなくなってしまった。
0:
0:そういえば、匂いも味も分からなくなってしまった。いや?単純にこの病棟の飯が不味いだけか。
0:あぁ…、だが、薬はうまいな。うん、ここは薬がうまい。あれを飲むと気分が良くなるのだ。
0:
0:それからしばらく、ぼーっと壁の穴を覗いていると看護師から声がかかった。
0:
看護師:「朝ですから、顔を洗ってきてください。タオルは用意してありますから。ベッドメイキングもしないと……ささ、はやくはやく」
0:
0:うるさい看護師だな……。朝くらいぼーっとさせてくれ。
0:……いや、しかしながら、それがこの者たちの役目なのだろう。仕方ない。私の寛大な心に感謝するといい。
0:
0:
0:私は、病棟の一番端にある水道場へ、ヒタヒタと裸足で歩きながら向かう。朝の床は冷たいのだ。夜の冷たさの跡を足先で感じる。
0:
0:朝、顔を洗うと、私らしき、しかしながら私ではない誰かが映る。
0:
0:私は、そんなひねくれ者のような顔をしない。
0:私は、そんな浮浪者のような顔をしない。
0:私は、そんな末期の老人のような顔をしていない。
0:私は、お前ほど醜悪な存在ではないのだぞ。
0:お前はとても苦労してそうで、可哀想だ……。
0:
私:「おいおい、お前は私だぞ?」
私:「醜い悪感情を持つ、溝鼠のような存在じゃないか」
0:
0:なにを?バカ言え。私はこんなにも充実してるのだ。こないだは、病棟で薬を多量に飲んだ娘の看病をしてやった。
0:虚言癖の青年には鶴を折ってやったんだ。
0:看護師には似顔絵だって描いてやった。あれは上手いと褒められたものよ。
0:
私:「それだって、お前の押し付けがましい正義心ゆえだろう。」
私:「娘は吐いていたのに、お前は笑ってあやとりをしていたじゃないか。」
私:「嘘をついてるのはお前だろう?鶴すら折れぬほど不器用な癖に。青年はお前の話にあわせてやってただけだ。」
私:「看護師は仕事だから褒めてやったんだ」
私:「そんなことにすら気づかないほど、お前は馬鹿になってしまったのだな。愚かなことよ。」
0:私はキョトンとしながら、そいつを見た。
0:私はこんなにも饒舌だったか?
0:否。やはり、貴様は私などではない。理解の出来ない駄文ばかりを語るな。愚か者め。
0:
0:お前は誰だ。お前は私か。
0:己が貴様であるものか。
0:はたまた誰でもないのが正解なのだろうか。
0:
0:疑問に思った私はふと、破壊衝動に駆られた。
0:
私:「お、おい、やめろ……!?」
0:鏡の中の誰かが叫んだが、止められなかった。
0:
0:鏡を強く殴り割ってしまった。
0:パリン、パキン、パキパキと、既に聴こえなくなっていた耳に気持ちの良い音が流れてくる。
0:
0:血がポタリポタリと拳から垂れて流れ落ちるが、そのサラサラとした感触がとても心地の良いものだった。
0:
0:おい、見たか、あの鏡の焦り顔を。
0:私はやってやったぞと、クツクツと笑った。
0:ん?
0:私が……?私が笑った…?感情がないとすら思ってた私が……
0:笑ったのだ!やった!やったぞ!久方ぶりの歓喜の感情だ!ははははは!はははは……………
0:
0:
私:「……は?」
0:
0:目が覚めた。目が覚めると日はもう沈んでしまっていた。どうやら、鏡を割った騒ぎを聞き付けた医者に鎮静剤を打たれたらしい。
0:だが、この薬のまわる気だるげな感覚も私は楽しんでいた。
0:
0:私は私だ。お前もお前だよ。
0:お前が私か。私がお前か。
0:
0:朝の空気は青く、涼しい呼吸を幾度かする。
0:私は、精神病棟に入院している。
0:そういう……『設定』だ。
0:私が病院に入院するわけがなかろう。別にどこも変じゃない。他者の方が変なのだ。あいつらはちっとも面白い話をしない。
0:
0:この、そう……、この社会では何かしらに目を向けると、目が刺される。
0:……いや?目に刺される。視線こそが他人を殺す最大の武器だ。見ようが見まいが、あいつらは見ている。そう…!見ているのだ!あいつらは私を監視し続けている。私もお前を見ている。
0:
0:口を開けると言葉で呼吸が詰まる。言葉で首が絞まるのだ。言いたいことも、まともに言えなくなってしまった……。
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0:耳を傾けても、泥に沈む音しか聞こえないのだ。コプリ、コプリと泥が耳に詰まってる。人の言葉などまともに聞けなくなってしまった。
0:
0:そういえば、匂いも味も分からなくなってしまった。いや?単純にこの病棟の飯が不味いだけか。
0:あぁ…、だが、薬はうまいな。うん、ここは薬がうまい。あれを飲むと気分が良くなるのだ。
0:
0:それからしばらく、ぼーっと壁の穴を覗いていると看護師から声がかかった。
0:
看護師:「朝ですから、顔を洗ってきてください。タオルは用意してありますから。ベッドメイキングもしないと……ささ、はやくはやく」
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0:うるさい看護師だな……。朝くらいぼーっとさせてくれ。
0:……いや、しかしながら、それがこの者たちの役目なのだろう。仕方ない。私の寛大な心に感謝するといい。
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0:
0:私は、病棟の一番端にある水道場へ、ヒタヒタと裸足で歩きながら向かう。朝の床は冷たいのだ。夜の冷たさの跡を足先で感じる。
0:
0:朝、顔を洗うと、私らしき、しかしながら私ではない誰かが映る。
0:
0:私は、そんなひねくれ者のような顔をしない。
0:私は、そんな浮浪者のような顔をしない。
0:私は、そんな末期の老人のような顔をしていない。
0:私は、お前ほど醜悪な存在ではないのだぞ。
0:お前はとても苦労してそうで、可哀想だ……。
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私:「おいおい、お前は私だぞ?」
私:「醜い悪感情を持つ、溝鼠のような存在じゃないか」
0:
0:なにを?バカ言え。私はこんなにも充実してるのだ。こないだは、病棟で薬を多量に飲んだ娘の看病をしてやった。
0:虚言癖の青年には鶴を折ってやったんだ。
0:看護師には似顔絵だって描いてやった。あれは上手いと褒められたものよ。
0:
私:「それだって、お前の押し付けがましい正義心ゆえだろう。」
私:「娘は吐いていたのに、お前は笑ってあやとりをしていたじゃないか。」
私:「嘘をついてるのはお前だろう?鶴すら折れぬほど不器用な癖に。青年はお前の話にあわせてやってただけだ。」
私:「看護師は仕事だから褒めてやったんだ」
私:「そんなことにすら気づかないほど、お前は馬鹿になってしまったのだな。愚かなことよ。」
0:私はキョトンとしながら、そいつを見た。
0:私はこんなにも饒舌だったか?
0:否。やはり、貴様は私などではない。理解の出来ない駄文ばかりを語るな。愚か者め。
0:
0:お前は誰だ。お前は私か。
0:己が貴様であるものか。
0:はたまた誰でもないのが正解なのだろうか。
0:
0:疑問に思った私はふと、破壊衝動に駆られた。
0:
私:「お、おい、やめろ……!?」
0:鏡の中の誰かが叫んだが、止められなかった。
0:
0:鏡を強く殴り割ってしまった。
0:パリン、パキン、パキパキと、既に聴こえなくなっていた耳に気持ちの良い音が流れてくる。
0:
0:血がポタリポタリと拳から垂れて流れ落ちるが、そのサラサラとした感触がとても心地の良いものだった。
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0:おい、見たか、あの鏡の焦り顔を。
0:私はやってやったぞと、クツクツと笑った。
0:ん?
0:私が……?私が笑った…?感情がないとすら思ってた私が……
0:笑ったのだ!やった!やったぞ!久方ぶりの歓喜の感情だ!ははははは!はははは……………
0:
0:
私:「……は?」
0:
0:目が覚めた。目が覚めると日はもう沈んでしまっていた。どうやら、鏡を割った騒ぎを聞き付けた医者に鎮静剤を打たれたらしい。
0:だが、この薬のまわる気だるげな感覚も私は楽しんでいた。
0:
0:私は私だ。お前もお前だよ。