台本概要

 330 views 

タイトル 記憶
作者名 しなせ  (@sinase0)
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 幼い日の記憶。僕はどんな風に過ごしていただろう。

 330 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
不問 - 幼い頃の僕
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:ガタンゴトン 0:一定のリズムを刻み、車内は揺れる 0:電車に乗っていると 0:ふと、子供の頃を思い返す 0: 0:今は大きくなった手のひらを見つめると 0:自分はきっと大人になってしまったのだと自覚する 0:目を閉じて…記憶を探ると 0:昔の夏の色は淡く赤い 0:オレンジ色の光が瞼の裏に映る 0:夕方の思い出が強い 0: 0:大人になってから 0:夏のイメージは快晴になったが 0:コバルトブルーを溶かしたような空や 0:炭酸水のようなパチパチとした爽快さ 0:そんな爽やかさは昔の夏に無かった気がする 0:きっと世の中の青春のイメージが 0:そうさせるんだろう 0: 0:なんだか不思議な浮遊感と非現実性 0:蝉の声がうるさくて 0:夜が暮れるのが遅くて 0:なんだか…怖かったんだ 0:その時間に取り残されるようで 0: 0:汗をかいてぴったりと肌に張りついた 0:服が嫌いだった 0:小銭を握りしめて駄菓子屋へ 0:ガラクタしか出ないガチャガチャは特別で 0:宝物のように感じていた 0:キラキラした100円玉をはめて 0:錆びてうまく回らないハンドルを 0:力を込めてゆっくり回した 0: 0:外で食べるアイスクリームは 0:ひんやりと冷たくて 0:夏の暑さで溶けていく 0:ポタリと足元に垂れて 0:アイスキャンディだと 0:手を伝って垂れるから 0:焦りながら食べたっけ 0: 0:花火をするのも好きだった 0:カラフルな紙が巻かれた手持ち花火に 0:火をつけてチリチリと紙が燃える様子を見る 0:シュッという音と共に煙が上がり 0:キラキラとまばゆい光が弾けて散っていく 0:火花で火傷をしないかと心配してたなぁ 0: 0:線香花火も綺麗だったが 0:ゆっくり待たねばならなかったので 0:子供の自分は少々、退屈に感じていた 0:あれは大人になってから魅力が分かるものだろう 0: 0:夜は怖く感じた 0:少しだけ涼しくなって 0:昼間よりもすごしやすくなったが 0:夜は『出る』と言うだろう 0:夏の夜なんて墓場やら幽霊やら 0:ダークなイメージが強かったんだ 0: 0:寝ているときに足首を掴まれると想像して 0:暑いのに体を丸めて布団に隠した 0:心霊番組を見た夜なんて 0:とても怖くて 0:誰かに見られてるんじゃないかと 0:ゾッとしていた 0: 0:懐かしい 0:本当に懐かしい記憶 0:きっとあと何十年も生きるのだろうが 0:あの夏は二度と体験出来ないのだろうな 0:きっと凄く特別な思い出 0: 0:電車から降りて 0:はぁ~っと冷たい白い息をする 0:マスクの隙間から息が漏れて 0:眼鏡がうっすら曇る 0:すり足で歩くから 0:スニーカーとアスファルトが擦れて 0:ザッザッと本来なるはずの無い音が 0:真っ暗な住宅街に鳴り響く 0:電信柱と街灯の灯り 0:自販機の機械的な灯り 0:ときどきカーブミラーに自分が映る 0: 0:寒い寒い田舎町 0:冬になるとあの夏の暑さが恋しくなる 0:冷たい空気が頬を撫でる 0:昔、通ってた駄菓子屋はもう潰れてしまった 0:今はガチャガチャだけが名残のように残ってる 0: 0:きっとあの夏の残滓は町中に… 0:探せばいくらでもあるのだろう 0: 0:さぁ……そろそろ家だ 0:今日は誰と話そうか 0:私はワクワクとしながら玄関を開けた 0: 0:おわり

0:ガタンゴトン 0:一定のリズムを刻み、車内は揺れる 0:電車に乗っていると 0:ふと、子供の頃を思い返す 0: 0:今は大きくなった手のひらを見つめると 0:自分はきっと大人になってしまったのだと自覚する 0:目を閉じて…記憶を探ると 0:昔の夏の色は淡く赤い 0:オレンジ色の光が瞼の裏に映る 0:夕方の思い出が強い 0: 0:大人になってから 0:夏のイメージは快晴になったが 0:コバルトブルーを溶かしたような空や 0:炭酸水のようなパチパチとした爽快さ 0:そんな爽やかさは昔の夏に無かった気がする 0:きっと世の中の青春のイメージが 0:そうさせるんだろう 0: 0:なんだか不思議な浮遊感と非現実性 0:蝉の声がうるさくて 0:夜が暮れるのが遅くて 0:なんだか…怖かったんだ 0:その時間に取り残されるようで 0: 0:汗をかいてぴったりと肌に張りついた 0:服が嫌いだった 0:小銭を握りしめて駄菓子屋へ 0:ガラクタしか出ないガチャガチャは特別で 0:宝物のように感じていた 0:キラキラした100円玉をはめて 0:錆びてうまく回らないハンドルを 0:力を込めてゆっくり回した 0: 0:外で食べるアイスクリームは 0:ひんやりと冷たくて 0:夏の暑さで溶けていく 0:ポタリと足元に垂れて 0:アイスキャンディだと 0:手を伝って垂れるから 0:焦りながら食べたっけ 0: 0:花火をするのも好きだった 0:カラフルな紙が巻かれた手持ち花火に 0:火をつけてチリチリと紙が燃える様子を見る 0:シュッという音と共に煙が上がり 0:キラキラとまばゆい光が弾けて散っていく 0:火花で火傷をしないかと心配してたなぁ 0: 0:線香花火も綺麗だったが 0:ゆっくり待たねばならなかったので 0:子供の自分は少々、退屈に感じていた 0:あれは大人になってから魅力が分かるものだろう 0: 0:夜は怖く感じた 0:少しだけ涼しくなって 0:昼間よりもすごしやすくなったが 0:夜は『出る』と言うだろう 0:夏の夜なんて墓場やら幽霊やら 0:ダークなイメージが強かったんだ 0: 0:寝ているときに足首を掴まれると想像して 0:暑いのに体を丸めて布団に隠した 0:心霊番組を見た夜なんて 0:とても怖くて 0:誰かに見られてるんじゃないかと 0:ゾッとしていた 0: 0:懐かしい 0:本当に懐かしい記憶 0:きっとあと何十年も生きるのだろうが 0:あの夏は二度と体験出来ないのだろうな 0:きっと凄く特別な思い出 0: 0:電車から降りて 0:はぁ~っと冷たい白い息をする 0:マスクの隙間から息が漏れて 0:眼鏡がうっすら曇る 0:すり足で歩くから 0:スニーカーとアスファルトが擦れて 0:ザッザッと本来なるはずの無い音が 0:真っ暗な住宅街に鳴り響く 0:電信柱と街灯の灯り 0:自販機の機械的な灯り 0:ときどきカーブミラーに自分が映る 0: 0:寒い寒い田舎町 0:冬になるとあの夏の暑さが恋しくなる 0:冷たい空気が頬を撫でる 0:昔、通ってた駄菓子屋はもう潰れてしまった 0:今はガチャガチャだけが名残のように残ってる 0: 0:きっとあの夏の残滓は町中に… 0:探せばいくらでもあるのだろう 0: 0:さぁ……そろそろ家だ 0:今日は誰と話そうか 0:私はワクワクとしながら玄関を開けた 0: 0:おわり