台本概要

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タイトル 【ジェアル】「魔神殺しの英雄譚」
作者名 アール/ドラゴス  (@Dragoss_R)
ジャンル ファンタジー
演者人数 1人用台本(不問1) ※兼役あり
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 さすらいの旅芸人は語る。
この地に伝わる英雄の話を。
封印されし邪神。悪逆非道の悪魔。月夜に輝く大剣。
八百年前からこの世界に伝わる英雄神話。

「さあさあご清聴あれ!これなるは名も知れぬ英雄の物語!」


『歴史の旅人とジェアルの神々』Episode:0

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
語り手 不問 83 三味線を持ち芸事百般をこなすさすらいの旅芸人。 語りものは十八番。 「魔神殺しの英雄譚」を語り聞かせる。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:とある旅芸人が街中で語り聞かせの準備をしている。 : 語り手:よいせっ…。ふぅ、こんなところでよいでありましょう。 : 0:準備を終え振り向くと、既に語りを聞きに来た観衆が集まってきていた。旅芸人はそれを見ると、三味線を持ち軽やかに語り始める。 : 語り手:遠からんものは音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! : 語り手:此度の語りはこの地に伝わりし英雄譚! : 語り手:久遠(くおん)に封印されし魔神、邪悪によって眠りより覚め、無辜(むこ)なる民は次々死にゆく! : 語り手:為(な)す術もなく天を仰いだその刹那(せつな)、暗雲裂かれ光の剣士が舞い降りる! : 語り手:さあさあ、ご静聴あれ!これなるは魔神殺しの物語。あっ、始まり始まりーっ! : 0:観衆から拍手が起こり、旅芸人は物語の出だしを軽快に語り始める。 : 語り手:今や八百年も昔のこと。この地には今と変わらず人間が住んでおりました。 : 語り手:その頃は無論科学などもありませぬゆえ、今ほど住みよい地ではありませんでしたが、 : 語り手:我らにはいにしえより伝わる力、「魔法」がありまする。 : 語り手:その頃の人々は、寒さに凍えてしまいそうな日は炎を出し暖まり、 : 語り手:陽の光に焼けてしまいそうな日は氷や水を湧かせ涼しんだり。 : 語り手:そうして魔の力を使い、手を取り合い平穏な暮らしを営んでいたのでありまする。 : 語り手:然(さ)れど、災厄(さいやく)はいつも突(とつ)として起こるもの。 : 語り手:とある月の輝く夜のこと、突如として大地が大きくうねるような地震が人々を襲う! : 語り手:その揺れは十分経っても収まらず、大陸の住人たちは恐怖に震えることとなるのでありました。 : 語り手:なれど、其(そ)れは未だ絶望の始まりに過ぎなかったのでありまする。 : 語り手:二十分程時が過ぎたころ、大地の揺れはようやく収まり人々は安堵の息。 : 語り手:然(しか)しそれも束(つか)の間、ふと足元に目を見やるとなんと先ほどまですくすくと育っていた草木や実がみるみるうちに枯れていく! : 語り手:空を見上げればこの大陸に向かって漆黒の雲がとてつもない速さで迫りくる! : 語り手:剰(あまつさ)え、清く静かな湖でさえ波を立て荒れ狂う始末! : 語り手:そして海を見やれば…波は不気味に思えるほどに静かでありました。 : 語り手:然(しか)しそれはやはり、嵐の前の静けさに過ぎず。 : 語り手:海を見る人々は遂に、天変地異(てんぺんちい)の原因。「正体」を知ることになるのでありました。 : 語り手:見てしまったのでありまする。町から望む大海原(おおうなばら)の底から、大きな黒い影が地上に浮かび行くさまを。 : 語り手:影が地上に向かうのに呼応するように、暗雲は雷を纏(まと)い勢いを増し、湖は渦(うず)を作り暴れ狂う! : 語り手:そして、浮かび来るその「怪物」の姿が段々と見えてくるのでありました。 : 語り手:それは狼の頭を持ち、象のような身体に大きな蝙蝠(こうもり)の羽根をつけ、尾はまるで獅子のよう! : 語り手:邪気(じゃき)を放つその姿はこれほどまでに禍々(まがまが)しいにもかかわらず、どこか神々しさを放つ! : 語り手:それもそのはず、これは自然の怒りの具現などにあらず。 : 語り手:そう、この巨躯(きょく)こそは太古の昔、神々により封印されし魔神が一柱(ひとはしら)、邪神「ラムナトス」! : 語り手:かの神が放つ咆哮(ほうこう)に籠(こ)められし念は、怒りか悲鳴かはたまた喜びか! : 語り手:災厄(さいやく)の化身が遂に地上に飛沫と共に現れると、天空は暗雲に覆われ、海は遂に高々と波を作り始めるのでありました。 : 語り手:然(さ)して、天地開闢(てんちかいびゃく)の時からまもなく、ラムナトスは世に害をなす存在として神々によって海の底に封印されたはず。 : 語り手:なにゆえ魔神は再び目覚めてしまったのか? : 語り手:それを語るには、もう一つ昔話をしなくてはなりませぬ。 : 語り手:今より千年と少し前。世界には人間と「悪魔」が存在しておりました。 : 語り手:人間が苦しむのを見て嘲笑(あざわら)い、人を陥(おとしい)れることで喜びを得る悪逆非道(あくぎゃくひどう)の化け物共。 : 語り手:人々は悪魔に苦しめられていましたが、悪魔は全てが強大な魔力を持ち、人間との力の差は圧倒的。 : 語り手:人は悪魔にしてやられることしかできなかったのでありまする。 : 語り手:そんな悪魔の行いと徒(いたずら)に死にゆく人々を見かねた神々は、悪魔たちを天の力により滅ぼし、民を助けてくださいました。 : 語り手:然(しか)し、滅ぼされたと思われた悪魔には生き残りが存在していたのでありまする。 : 語り手:それこそは、此度、災厄(さいやく)の魔神の封印を解きし邪悪、悪魔「アシュタレト」! : 語り手:その昔、炎と雷の魔法で人々を脅かし、数いる悪魔の中でもその内に秘めた狂気は群を抜いて醜悪(しゅうあく)! : 語り手:ああ、なにゆえ生き残ったのがよりにもよってアシュタレトであったのか! : 語り手:アシュタレトは魔神の傍(かたわ)らにその身を置くと、自身の魔力をラムナトスに与えていく! : 語り手:魔力を与えられた魔神が一度大きく叫ぶと、遂に破壊が始まった! : 語り手:叩きつけるように雨が降り注ぎ、怒鳴るような雷鳴(らいめい)が大地を焦がし、風は旋風(せんぷう)となり人々を襲い、大波(おおなみ)は無慈悲にも全てを飲み込んでいく! : 語り手:魔神の前に次々と死にゆく人々を守るため、大陸を護る地龍(ちりゅう)が迎え撃つが、この猛攻を防ぎきることはできず、 : 語り手:天より神々も地上に降(お)り立つが更なる邪悪な魔力を取り込んだ魔神の力の前には為(な)す術もなく、人々を守ることしかできない。 : 語り手:まさに危急存亡(ききゅうそんぼう)!策を考える余裕すらも嵐が飲み込んでゆく。 : 語り手:遂に世界は滅び、絶望を抱いたまま我らは死にゆくのか。 : 語り手:神々でさえも滅亡を覚悟した、その瞬間のことでありました! : 語り手:天を覆っていた黒洞洞(こくとうとう)とした暗雲が大きく裂けたのでありまする! : 語り手:その裂け目から、暖かい月明かりが差し込み、地上を照らしていく! : 語り手:人々は未だ阿鼻叫喚(あびきょうかん)。しかし、地龍(ちりゅう)と神々はその裂け目より出でし人影をその眼で捉えておりました。 : 語り手:その者は、背丈より少し大きいほどの大剣を携え、その眼は怒りの表情でまっすぐ魔神を見つめておりました。 : 語り手:月光(つきひかり)は剣士を祝福するかのように輝きを増し、八面玲瓏(はちめんれいろう)の空色の剣身は光を纏うかのように煌めく。 : 語り手:その光景の美しさは神々や地龍、そして悪魔アシュタレトが見惚れるほどでありました。 : 語り手:雲を裂いた剣士が月夜に降り立ち魔神と対峙したその時間は、時計の秒針が一つ動かないほどの刹那。 : 語り手:しかし、その瞬間はまるで時が止まったかのように神々の眼に鮮明に焼き付いているのでありました。 : 語り手:次の瞬間、剣士は光を纏(まと)い魔神に向かう!その速さ、まさに疾風迅雷(しっぷうじんらい)の如く! : 語り手:剣士が飛んでいくと間もなく、暗雲はどんどんと霧消(むしょう)していき、波も風も少しずつ穏やかになっていく! : 語り手:完全に満ちた月が地上を覗くようになると、剣士の持つ大剣はどんどんと輝きを増していく! : 語り手:やがてその剣は色を金色(こんじき)に変え、一層眩(まばゆ)い光を放つ! : 語り手:剣士の飛ぶ軌道に残る金色(こんじき)の痕(あと)は、空に流れる一筋の星屑(ほしくず)のよう! : 語り手:悪魔もようやく我に返り、迫り来る輝きを打ち落とすべく自身に残った魔力で雷と炎を放つ! : 語り手:然(しか)し剣士は変わらぬ勢いのまま、炎を避け雷を斬り、稲妻(いなづま)を躱(かわ)し焔(ほむら)を断っていく! : 語り手:そしてあっという間にその金色(こんじき)の剣先は魔神ラムナトスを捉え、その身体を大きく斬り抜ける! : 語り手:剣士の斬撃を受け魔神は苦悶(くもん)の咆哮(ほうこう)を放つと、大海原(おおうなばら)に水飛沫(みずしぶき)をあげながら倒れ込む! : 語り手:その頃には、黒染めの雲も霧消(むしょう)し、つむじ風は姿を消し。無数の星々と満月が剣士を祝福するように静かに輝いておりました。 : 語り手:倒れた魔神を逃(のが)すものかと神々も剣士に続き、魔神に聖なる楔(くさび)を勢いよく撃ちこむ。 : 語り手:そうすると、ラムナトスは低い唸(うな)り声をあげながら、黒い塵(ちり)を身体から発して消えていく。 : 語り手:逃げようとした悪魔アシュタレトには守護龍が止めを刺し、この地は守られたのでありました。 : 語り手:その後、神々は力を振り絞り生き残った人々の傷を癒し、人に寄り添って復興の手伝いをしたそう。 : 語り手:月明かりと共に現れた剣士は「月光の英雄」として人々から讃えられ、天から不死の権能(けんのう)と奇跡を授ける力を賜(たまわ)り、 : 語り手:その力を使い今もこの世界のどこかに存在し、不幸なる民に奇跡を授けると伝えられているのだとさ。 : 語り手:めでたし、めでたし。 : 0:観衆から大きな拍手が起こり、一部の人たちから御捻りを渡される。 : 語り手:おお、かたじけない。御捻り、謹(つつし)んで頂戴いたしまするー。 : 語り手:はてさて、この英雄は一体何者だったのか。悪魔は如何(いか)にして魔神の封印を解いたのか。 : 語り手:謎は多いお話でありましたが、楽しんで聞いていただけたなら幸いでございまする。 : 0:旅芸人が御捻りをがま口財布にしまい終えると、最後に言う。 : 語り手:お客人方、本日はご清聴いただき誠に恐悦至極(きょうえつしごく)。 : 語り手:次にこの街で語るのはこの地に住まう守護龍(しゅごりゅう)の伝説。もし、その時も機会がございましたら…。 : 語り手:鷹揚(おうよう)のご見物を。 : 0:To be continued…?

0:とある旅芸人が街中で語り聞かせの準備をしている。 : 語り手:よいせっ…。ふぅ、こんなところでよいでありましょう。 : 0:準備を終え振り向くと、既に語りを聞きに来た観衆が集まってきていた。旅芸人はそれを見ると、三味線を持ち軽やかに語り始める。 : 語り手:遠からんものは音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! : 語り手:此度の語りはこの地に伝わりし英雄譚! : 語り手:久遠(くおん)に封印されし魔神、邪悪によって眠りより覚め、無辜(むこ)なる民は次々死にゆく! : 語り手:為(な)す術もなく天を仰いだその刹那(せつな)、暗雲裂かれ光の剣士が舞い降りる! : 語り手:さあさあ、ご静聴あれ!これなるは魔神殺しの物語。あっ、始まり始まりーっ! : 0:観衆から拍手が起こり、旅芸人は物語の出だしを軽快に語り始める。 : 語り手:今や八百年も昔のこと。この地には今と変わらず人間が住んでおりました。 : 語り手:その頃は無論科学などもありませぬゆえ、今ほど住みよい地ではありませんでしたが、 : 語り手:我らにはいにしえより伝わる力、「魔法」がありまする。 : 語り手:その頃の人々は、寒さに凍えてしまいそうな日は炎を出し暖まり、 : 語り手:陽の光に焼けてしまいそうな日は氷や水を湧かせ涼しんだり。 : 語り手:そうして魔の力を使い、手を取り合い平穏な暮らしを営んでいたのでありまする。 : 語り手:然(さ)れど、災厄(さいやく)はいつも突(とつ)として起こるもの。 : 語り手:とある月の輝く夜のこと、突如として大地が大きくうねるような地震が人々を襲う! : 語り手:その揺れは十分経っても収まらず、大陸の住人たちは恐怖に震えることとなるのでありました。 : 語り手:なれど、其(そ)れは未だ絶望の始まりに過ぎなかったのでありまする。 : 語り手:二十分程時が過ぎたころ、大地の揺れはようやく収まり人々は安堵の息。 : 語り手:然(しか)しそれも束(つか)の間、ふと足元に目を見やるとなんと先ほどまですくすくと育っていた草木や実がみるみるうちに枯れていく! : 語り手:空を見上げればこの大陸に向かって漆黒の雲がとてつもない速さで迫りくる! : 語り手:剰(あまつさ)え、清く静かな湖でさえ波を立て荒れ狂う始末! : 語り手:そして海を見やれば…波は不気味に思えるほどに静かでありました。 : 語り手:然(しか)しそれはやはり、嵐の前の静けさに過ぎず。 : 語り手:海を見る人々は遂に、天変地異(てんぺんちい)の原因。「正体」を知ることになるのでありました。 : 語り手:見てしまったのでありまする。町から望む大海原(おおうなばら)の底から、大きな黒い影が地上に浮かび行くさまを。 : 語り手:影が地上に向かうのに呼応するように、暗雲は雷を纏(まと)い勢いを増し、湖は渦(うず)を作り暴れ狂う! : 語り手:そして、浮かび来るその「怪物」の姿が段々と見えてくるのでありました。 : 語り手:それは狼の頭を持ち、象のような身体に大きな蝙蝠(こうもり)の羽根をつけ、尾はまるで獅子のよう! : 語り手:邪気(じゃき)を放つその姿はこれほどまでに禍々(まがまが)しいにもかかわらず、どこか神々しさを放つ! : 語り手:それもそのはず、これは自然の怒りの具現などにあらず。 : 語り手:そう、この巨躯(きょく)こそは太古の昔、神々により封印されし魔神が一柱(ひとはしら)、邪神「ラムナトス」! : 語り手:かの神が放つ咆哮(ほうこう)に籠(こ)められし念は、怒りか悲鳴かはたまた喜びか! : 語り手:災厄(さいやく)の化身が遂に地上に飛沫と共に現れると、天空は暗雲に覆われ、海は遂に高々と波を作り始めるのでありました。 : 語り手:然(さ)して、天地開闢(てんちかいびゃく)の時からまもなく、ラムナトスは世に害をなす存在として神々によって海の底に封印されたはず。 : 語り手:なにゆえ魔神は再び目覚めてしまったのか? : 語り手:それを語るには、もう一つ昔話をしなくてはなりませぬ。 : 語り手:今より千年と少し前。世界には人間と「悪魔」が存在しておりました。 : 語り手:人間が苦しむのを見て嘲笑(あざわら)い、人を陥(おとしい)れることで喜びを得る悪逆非道(あくぎゃくひどう)の化け物共。 : 語り手:人々は悪魔に苦しめられていましたが、悪魔は全てが強大な魔力を持ち、人間との力の差は圧倒的。 : 語り手:人は悪魔にしてやられることしかできなかったのでありまする。 : 語り手:そんな悪魔の行いと徒(いたずら)に死にゆく人々を見かねた神々は、悪魔たちを天の力により滅ぼし、民を助けてくださいました。 : 語り手:然(しか)し、滅ぼされたと思われた悪魔には生き残りが存在していたのでありまする。 : 語り手:それこそは、此度、災厄(さいやく)の魔神の封印を解きし邪悪、悪魔「アシュタレト」! : 語り手:その昔、炎と雷の魔法で人々を脅かし、数いる悪魔の中でもその内に秘めた狂気は群を抜いて醜悪(しゅうあく)! : 語り手:ああ、なにゆえ生き残ったのがよりにもよってアシュタレトであったのか! : 語り手:アシュタレトは魔神の傍(かたわ)らにその身を置くと、自身の魔力をラムナトスに与えていく! : 語り手:魔力を与えられた魔神が一度大きく叫ぶと、遂に破壊が始まった! : 語り手:叩きつけるように雨が降り注ぎ、怒鳴るような雷鳴(らいめい)が大地を焦がし、風は旋風(せんぷう)となり人々を襲い、大波(おおなみ)は無慈悲にも全てを飲み込んでいく! : 語り手:魔神の前に次々と死にゆく人々を守るため、大陸を護る地龍(ちりゅう)が迎え撃つが、この猛攻を防ぎきることはできず、 : 語り手:天より神々も地上に降(お)り立つが更なる邪悪な魔力を取り込んだ魔神の力の前には為(な)す術もなく、人々を守ることしかできない。 : 語り手:まさに危急存亡(ききゅうそんぼう)!策を考える余裕すらも嵐が飲み込んでゆく。 : 語り手:遂に世界は滅び、絶望を抱いたまま我らは死にゆくのか。 : 語り手:神々でさえも滅亡を覚悟した、その瞬間のことでありました! : 語り手:天を覆っていた黒洞洞(こくとうとう)とした暗雲が大きく裂けたのでありまする! : 語り手:その裂け目から、暖かい月明かりが差し込み、地上を照らしていく! : 語り手:人々は未だ阿鼻叫喚(あびきょうかん)。しかし、地龍(ちりゅう)と神々はその裂け目より出でし人影をその眼で捉えておりました。 : 語り手:その者は、背丈より少し大きいほどの大剣を携え、その眼は怒りの表情でまっすぐ魔神を見つめておりました。 : 語り手:月光(つきひかり)は剣士を祝福するかのように輝きを増し、八面玲瓏(はちめんれいろう)の空色の剣身は光を纏うかのように煌めく。 : 語り手:その光景の美しさは神々や地龍、そして悪魔アシュタレトが見惚れるほどでありました。 : 語り手:雲を裂いた剣士が月夜に降り立ち魔神と対峙したその時間は、時計の秒針が一つ動かないほどの刹那。 : 語り手:しかし、その瞬間はまるで時が止まったかのように神々の眼に鮮明に焼き付いているのでありました。 : 語り手:次の瞬間、剣士は光を纏(まと)い魔神に向かう!その速さ、まさに疾風迅雷(しっぷうじんらい)の如く! : 語り手:剣士が飛んでいくと間もなく、暗雲はどんどんと霧消(むしょう)していき、波も風も少しずつ穏やかになっていく! : 語り手:完全に満ちた月が地上を覗くようになると、剣士の持つ大剣はどんどんと輝きを増していく! : 語り手:やがてその剣は色を金色(こんじき)に変え、一層眩(まばゆ)い光を放つ! : 語り手:剣士の飛ぶ軌道に残る金色(こんじき)の痕(あと)は、空に流れる一筋の星屑(ほしくず)のよう! : 語り手:悪魔もようやく我に返り、迫り来る輝きを打ち落とすべく自身に残った魔力で雷と炎を放つ! : 語り手:然(しか)し剣士は変わらぬ勢いのまま、炎を避け雷を斬り、稲妻(いなづま)を躱(かわ)し焔(ほむら)を断っていく! : 語り手:そしてあっという間にその金色(こんじき)の剣先は魔神ラムナトスを捉え、その身体を大きく斬り抜ける! : 語り手:剣士の斬撃を受け魔神は苦悶(くもん)の咆哮(ほうこう)を放つと、大海原(おおうなばら)に水飛沫(みずしぶき)をあげながら倒れ込む! : 語り手:その頃には、黒染めの雲も霧消(むしょう)し、つむじ風は姿を消し。無数の星々と満月が剣士を祝福するように静かに輝いておりました。 : 語り手:倒れた魔神を逃(のが)すものかと神々も剣士に続き、魔神に聖なる楔(くさび)を勢いよく撃ちこむ。 : 語り手:そうすると、ラムナトスは低い唸(うな)り声をあげながら、黒い塵(ちり)を身体から発して消えていく。 : 語り手:逃げようとした悪魔アシュタレトには守護龍が止めを刺し、この地は守られたのでありました。 : 語り手:その後、神々は力を振り絞り生き残った人々の傷を癒し、人に寄り添って復興の手伝いをしたそう。 : 語り手:月明かりと共に現れた剣士は「月光の英雄」として人々から讃えられ、天から不死の権能(けんのう)と奇跡を授ける力を賜(たまわ)り、 : 語り手:その力を使い今もこの世界のどこかに存在し、不幸なる民に奇跡を授けると伝えられているのだとさ。 : 語り手:めでたし、めでたし。 : 0:観衆から大きな拍手が起こり、一部の人たちから御捻りを渡される。 : 語り手:おお、かたじけない。御捻り、謹(つつし)んで頂戴いたしまするー。 : 語り手:はてさて、この英雄は一体何者だったのか。悪魔は如何(いか)にして魔神の封印を解いたのか。 : 語り手:謎は多いお話でありましたが、楽しんで聞いていただけたなら幸いでございまする。 : 0:旅芸人が御捻りをがま口財布にしまい終えると、最後に言う。 : 語り手:お客人方、本日はご清聴いただき誠に恐悦至極(きょうえつしごく)。 : 語り手:次にこの街で語るのはこの地に住まう守護龍(しゅごりゅう)の伝説。もし、その時も機会がございましたら…。 : 語り手:鷹揚(おうよう)のご見物を。 : 0:To be continued…?