台本概要
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タイトル | 生きてるだけで儲けもの。 |
---|---|
作者名 | すばら (@kou0204hei) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 5人用台本(男3、不問2) ※兼役あり |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
このシナリオも廃棄処分のつもりでした。
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
飛彩 | 男 | 91 | 主人公。 |
マスター | 不問 | 38 | 迷える仔羊を導く存在。 |
テンプツァー | 男 | 10 | 諸悪の根源。 |
ニルヴァーナ | 男 | - | 前世の飛彩自身。飛彩と別でやってもおっけい。 |
町長 | 不問 | 21 | 天ぷらと兼ね役。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
飛彩:生きてるだけで儲けもの…こんな大言壮語を吐き出す奴を俺は偽善者と呪った。
飛彩:そんなクソみたいな偽善者に出遭ったのは…忘れもしない、大粒の雨に打たれ、心身共に弱り切っていた真冬の夜…いつもの様に街を徘徊していた俺は…十字架が描かれている一軒のBARに立ち寄る。
マスター:いらっしゃいませ!
飛彩:…
マスター:お兄さん、随分と窶(やつ)れているみたいだけど、何かあったのかい?
飛彩:…俺に変わると碌な事にはならない…。マスター、ジントニックをくれ。
マスター:……畏まりました!
飛彩:…
マスター:お待たせしました!
飛彩:ああ、有難う!…ゴクッゴクッ!!
マスター:…此処にはお兄さんみたいな闇を抱えた人間が数多く訪れる。
飛彩:ゴクッ!…は?せっかくの酒が不味くなる。勝手に口を開かないで貰えるか?
マスター:閉鎖的な性格…修羅場を潜り抜けて来たであろう、鋭い目付き。…お兄さん、自殺でも考えていたのかい?
飛彩:…っ!
マスター:図星だね。
飛彩:…しつこい男だな。…良いだろう。話してやろう。…但し、お前に不幸がこの先、降り掛かろうが俺は一切責任は負わない。良いな?
マスター:お兄さんの果てない闇を受け止めようじゃないか。
飛彩:ふん…物好きめ。
飛彩:木枯らし鳴く五年前の秋、何もかもを失った…家族、恋人、家、仕事。
マスター:ふむ、在り来たりな闇だね。
飛彩:信じられないと思うが、俺は死神に取り憑かれている。
マスター:死神?
飛彩:俺に関わる奴らは変死したり、繁盛してた店が突然潰れたりと呪いの如く、現れる事象だ。
マスター:ほう?不思議な能力だね。ある意味、゛選ばれた者゛なのかも知れないね。
飛彩:選ばれた者?決して良いものではない。…楽観視し過ぎだ。
マスター:…その呪縛から解放されたかい?
飛彩:解放だと?まるでお前は救いの神か何かの様に聞こえるが?
マスター:神か…ふふ。悪くない響きだ。
飛彩:…
マスター:お兄さん、名前は?
飛彩:ヒイロだ。
マスター:神とヒーローか。面白い組み合わせだね。
飛彩:巫山戯るなら、この話はここで終いだ。
マスター:失礼!…続きを頼むよ、ヒイロ君。
飛彩:……俺の前世は極悪非道な悪人なんだろうと己を戒めた。
マスター:前世?…またスケールの大きい話だね。何故そうだと?
飛彩:…これは俺の自論だが、前世に良い行いをした者は後世でも幸福な人生を歩める。だが…
マスター:前世に悪い行いばかり働いていた人間は後世でもバッドエンドに成り得る?
飛彩:そうだ。…非現実的(オカルト)なのは理解している。長年地獄の沼に浸かっていると不思議とそう思えてくる。
マスター:ふむ。可能性はゼロでは無いだろうけど、ヒイロ君の話は余りにも飛躍し過ぎているよ。…それで?前世に戻りたいとか思ってるのかい?
飛彩:ふん…全てはお見通しと言う訳か。…強ち、゛神゛と言う点は間違ってないかもな。
マスター:ははは、お褒めに預かり至極光栄だね。
飛彩:前世に戻る方法があるのか?
マスター:言っただろう?私は「神」だ。
飛彩:どうすれば戻れる?
マスター:そう焦らないで。目を瞑り、過去に戻りたいと願うんだ。
飛彩:なんだ?一種の催眠療法か何かか?俺は至って、正常だ。
マスター:念じれば、情景は自由自在に創り出せるのさ。
飛彩:……っ!…な、何だこの世界は…!?
マスター:ふむ。どうやら、前世が覗けた様だね。
飛彩:業火の炎に包まれた街…命乞いをする人々…酷いな…これが前世の俺なのか…
マスター:ヒイロくんが見た映像から察するに君は何処から雇われた殺し屋だったみたいだね。
飛彩:俺が…殺し屋……惨い……100人以上を火の海に落とした…
マスター:君は前世での選択を誤ったのさ。
飛彩:…選択だと?
マスター:そう。人には必ずしも、人生の分岐点があるのは知っているよね?
飛彩:ああ。
マスター:前世の君は「不正解」の道を歩んでしまった…そのせいで、君の人生は大きく捻じ曲がってしまったのさ。
飛彩:そんな事が…マスター、俺に「正せる」のか?
マスター:大丈夫だよ。今から君には選択肢を迫られる時に飛んで貰う。実際にその身体とその目で体験し後世に悪影響を受ける事なく「正解」の路をヒイロくん自身で切り拓いて欲しい。
飛彩:…俺に長年取り憑いたこの忌まわしき死神が消えるなら、どんな事でもしよう。
マスター:ふふ、その意気だよ!さぁ…君の手で希望に満ち溢れた未来を掴むんだ!ヒイロくん。
飛彩:ああ!
マスター:前世〜後世に繋がりし路の均衡を正す者に道標を!
飛彩:うおあ!?眩い光が俺を包み込んで…
マスター:ヒイロくん、自分を見失わないようにね。
飛彩:ま、マスター?!…ぐおあああ!!
飛彩:…いてててぇ。ん……此処は火の海に没した、あの例の街か?……元々はこんなにも豊かな街なのか。
飛彩:奥に出来た人集りは何だ?…何かの演説が始まるみたいだが。
町長:民草の皆、この街は今飢えに瀕している。…何者かが物資の供給を絶っているせいで、住民の過半数は骸と化した。
町長:このままでは、この街の人間は全滅し、灰に変わる事となろう。それを未然に防ぐ為に共に賊徒を討ち倒そう!
飛彩:賊徒…前世の俺って事か?…”俺”は何処にいるんだ。
飛彩(ニルヴァーナ):ふん、随分なご高説だな。…悪く思うなよ、俺は課せられた仕事を遂行するだけだ。
飛彩:あの強面の男が、前世の俺なのか?!
飛彩(ニルヴァーナ):……ボスから通信か。はい、俺です。…はい、はい…なるほど、今夜中にこの街を焼き払えと?町長の命だけを刈り取れば良かったのでは??…いえ、過ぎた真似を申し訳ありません。…はい、はい、かしこまり…
飛彩:せ、選択肢!?これでは同じ運命を辿ってしまう……待て!!
飛彩(ニルヴァーナ):あん?誰だ、てめぇ!可笑しな格好しやがって。
飛彩:俺はヒイロだ。お前に未来を狂わされた後世のお前だ!
飛彩(ニルヴァーナ):はぁ?!頭、イッちゃってんのか?
飛彩:理解出来ないのも無理は無い。だが、このままお前が「不正解」の路を選択するなら、それを全力で阻止する。
飛彩(ニルヴァーナ):ほう…仕事の邪魔をするって言うんなら、容赦しねぇぜ?
飛彩:仕方が無い…死なない程度にお灸を据えてやるか。
飛彩(ニルヴァーナ):ふん。後で吠え面掻くなよー!!…オラァー!!
飛彩:くっ…!不意打ちとは汚い奴だ。…だが、ストリートファイトで鍛えあげた俺はそんな柔わじゃないっ!
飛彩(ニルヴァーナ):ぎゃーぎゃー、女の根腐ったようにホザきやがって!…ウラァア!!
飛彩:逞しい腕だが、そんな大振りな攻撃は当たらないっ!…せやぁあ!!
飛彩(ニルヴァーナ):…な!?ば、馬鹿な!!……ぐほぉ!
飛彩:…殺られる前に殺る!そう教え込まれて来たんでな。
飛彩(ニルヴァーナ):…
飛彩:気絶したか…どうやら、物語の絵を描いてるのは”ボス”とやらみたいだが。…そいつの居場所を突き止めて、叩けば状況は変わるか。
飛彩:こいつを起こしボスと電話させて、吐かせても良いが…その後、暴れ回れても困るからな。…仕方ない、町長に話を聞くか。
町長:…賊徒め、お前の居場所は既に把握してい…
飛彩:ふむ、詳しく、その話聞かせて貰えないだろうか?町長。
町長:だ、誰だ!?…私は今忙しい。他を当たってくれ。
飛彩:悪い、俺の人生に花が咲くか否かの瀬戸際なんだ。…このチャンスを逃したら、お先真っ暗なんでな。
町長:む?!何を訳の分からない事を…貴様は賊徒の仲間では無いのか?
飛彩:賊徒?あー……安心しな、俺はヒイロ!この街の救世主だ。
町長:きゅ、救世主だと?!
飛彩:ああ、街の危機なんだろ?俺が救ってやるよ。
町長:とか言って…隙を窺っているんじゃないだろうな?
飛彩:はは、疑心暗鬼になる気持ちは分かるが、そんな事しても俺へのメリットは1ミリもないからな。…安心しな、賊徒を倒して街を救ってやる。
町長:むぐぐ…良かろう。話してやろう。
飛彩:ああ、有難う。
町長:あいつは三年前、突然やってきた。可笑しな連中を引き連れてな。
飛彩:可笑しな連中?
町長:うむ、全身をローブの様な物で覆い、異国の言葉を唱えていた。
飛彩:異国の言葉?まさか、奴も俺同様、タイムリープして…
町長:たいむりーぷ??
飛彩:ああ、いや、何でも無い。
町長:ふむ。…あの言葉は゛呪文゛だ。あの奇妙な言葉を聞いた、数日後から物資がこの街に届かず、滞ってしまった。
飛彩:なるほどな、仕舞いに…火の海か…
町長:は?
飛彩:あ、いや、放って置いたらその可能性もあるんじゃないかってな。
町長:ふむ…ヒイロ!本当にこの街の安寧は保たれるのだろうか?
飛彩:ああ、任せとけ。
町長:ヤツの寝ぐらは此処から南東に進んだ洞穴だ。
飛彩:よし、早速ぶっ倒してくるか。
町長:ヒイロ、気を付けるんだぞ?
飛彩:大丈夫だ、何たって俺は救世主様だからな。
町長:…
飛彩:町長、これからも豊かな街作りを心掛けてくれよ。
町長:?…無論だ。
飛彩:ふっ…じゃあな!
町長:…
テンプツァー:遅い……あのゴミめ、しくじったか。…おい、お前らちょっと見てこい!
飛彩:その必要はないぜ?
テンプツァー:あ?
飛彩:見知らぬ人が現れると決まって口が悪くなるよな。…俺の人生にこれ以上、泥を塗るのはやめて貰おうか。
テンプツァー:貴様…この時代の人間じゃないな?どうやってこの時代へやってきた?
飛彩:やっぱりか。お前も俺と同じ迷える子羊って訳だ。
テンプツァー:は?…訳の分からない事を。
飛彩:おいおい、そのセリフ3回は聞いたぞ?…いい加減聞き飽きたぜ。
テンプツァー:うるせぇー!!死ねぇえ!!
飛彩:…ふぅ、間一髪だぜ。クソ重そうな鉄球なんざ振り回しやがって、当たったらどう責任取るつもりだよ。
テンプツァー:くっ…ちょこまかと逃げやがって!…うぉりゃああ!!
飛彩:ひょい…っと!…せやぁああ!!地面と接吻(キス)しとけ。
テンプツァー:…ぐあ!!…ぜぇ…ぜぇ…何者だ?
飛彩:ほう、まだ立ち上がるか?流石に”ボス”はしぶといな。
テンプツァー:俺はテンプツァー!…時を操りし者だ!
飛彩:テンプ…天ぷら野郎!時を操るなら、もっとマシな事しやがれっ!!…ふんっ!!
テンプツァー:ぐあはぁ!!あ、顎があ、わ、べる…!!
飛彩:何言ってるか、分からねえよ!…そぃやぁ!!
テンプツァー:…
飛彩:ふぅ…骨が折れたぜ。
飛彩:よし、これでこの街は大丈夫だろう。さぁ…戻るか…ん?!…どうやって戻るんだよ!!
マスター:ふっふっ!…よくやったね、ヒイロ。
飛彩:うわ!?ま、マスター?お前、まさか!ずっと監視していやがったのか?
マスター:さて、何の事だろうね?…それより、その洞穴から出たらクレーター(穴)がある、そこに思いっ切り飛び込んで。
飛彩:その穴に入ったら、現世に戻れるのか?
マスター:それではね。ご武運を…ふっふっ!!
飛彩:ま、マスター!おい、待ちやが…ちっ…行っちまった。
飛彩:取り敢えず、このジメジメした土竜の巣窟を出るか。
町長:おお!!物資が届くようになった!…救世主…ヒイロ、感謝するぞ!
町長:皆の者よ、一丸となり、この街をより良い街に変えて行こう!
飛彩(ニルヴァーナ):……!?俺は気を失って!?…ボスに連絡を…ん?!…ボス?…
飛彩:起きたか?…お前のボスはもう存在しない。お前は晴れて自由だ。
飛彩(ニルヴァーナ):は?何言ってやがる…ボスに何をしやがっ…
飛彩:一度しか言わないから、よく聞けよ。…お前はボスに街を焼き払えと言われた時、躊躇ったな?
飛彩(ニルヴァーナ):…
飛彩:本当は真っ当な生活を望んでいるんじゃないのか?
飛彩(ニルヴァーナ):…っ!
飛彩:図星だな。…これからは町長の手助けをしてやれ。…それがお前の新たな”仕事”だ。
飛彩(ニルヴァーナ):…俺は普通の生活を夢見ていた。だが、多額の金に目が眩んで…。
飛彩:普通が一番だ。
飛彩(ニルヴァーナ):…ああ。
飛彩:よし、しっかりやれよ。前世の俺。
飛彩(ニルヴァーナ):は?…おい、おい!?
飛彩:ふっ…良い行いとはこんなにも清々しい気持ちになるなんてな。
飛彩:…この穴か…地獄への入り口じゃないだろうな?
飛彩:いつまでも此処に居ても仕方ないしな。…っ!
飛彩:うぉおああああ!?
マスター:お疲れ様。ヒイロくん、生きてるだけで儲けものだね。
飛彩:おい、クソマスター!俺を殺す気かっ!?
マスター:大丈夫、これからの君の未来は幸ある世界さ!
飛彩:うるせぇ!!どかっ!!
マスター:ぐぐるしぃい!?し、死ぬうう!!
0:fin。
飛彩:生きてるだけで儲けもの…こんな大言壮語を吐き出す奴を俺は偽善者と呪った。
飛彩:そんなクソみたいな偽善者に出遭ったのは…忘れもしない、大粒の雨に打たれ、心身共に弱り切っていた真冬の夜…いつもの様に街を徘徊していた俺は…十字架が描かれている一軒のBARに立ち寄る。
マスター:いらっしゃいませ!
飛彩:…
マスター:お兄さん、随分と窶(やつ)れているみたいだけど、何かあったのかい?
飛彩:…俺に変わると碌な事にはならない…。マスター、ジントニックをくれ。
マスター:……畏まりました!
飛彩:…
マスター:お待たせしました!
飛彩:ああ、有難う!…ゴクッゴクッ!!
マスター:…此処にはお兄さんみたいな闇を抱えた人間が数多く訪れる。
飛彩:ゴクッ!…は?せっかくの酒が不味くなる。勝手に口を開かないで貰えるか?
マスター:閉鎖的な性格…修羅場を潜り抜けて来たであろう、鋭い目付き。…お兄さん、自殺でも考えていたのかい?
飛彩:…っ!
マスター:図星だね。
飛彩:…しつこい男だな。…良いだろう。話してやろう。…但し、お前に不幸がこの先、降り掛かろうが俺は一切責任は負わない。良いな?
マスター:お兄さんの果てない闇を受け止めようじゃないか。
飛彩:ふん…物好きめ。
飛彩:木枯らし鳴く五年前の秋、何もかもを失った…家族、恋人、家、仕事。
マスター:ふむ、在り来たりな闇だね。
飛彩:信じられないと思うが、俺は死神に取り憑かれている。
マスター:死神?
飛彩:俺に関わる奴らは変死したり、繁盛してた店が突然潰れたりと呪いの如く、現れる事象だ。
マスター:ほう?不思議な能力だね。ある意味、゛選ばれた者゛なのかも知れないね。
飛彩:選ばれた者?決して良いものではない。…楽観視し過ぎだ。
マスター:…その呪縛から解放されたかい?
飛彩:解放だと?まるでお前は救いの神か何かの様に聞こえるが?
マスター:神か…ふふ。悪くない響きだ。
飛彩:…
マスター:お兄さん、名前は?
飛彩:ヒイロだ。
マスター:神とヒーローか。面白い組み合わせだね。
飛彩:巫山戯るなら、この話はここで終いだ。
マスター:失礼!…続きを頼むよ、ヒイロ君。
飛彩:……俺の前世は極悪非道な悪人なんだろうと己を戒めた。
マスター:前世?…またスケールの大きい話だね。何故そうだと?
飛彩:…これは俺の自論だが、前世に良い行いをした者は後世でも幸福な人生を歩める。だが…
マスター:前世に悪い行いばかり働いていた人間は後世でもバッドエンドに成り得る?
飛彩:そうだ。…非現実的(オカルト)なのは理解している。長年地獄の沼に浸かっていると不思議とそう思えてくる。
マスター:ふむ。可能性はゼロでは無いだろうけど、ヒイロ君の話は余りにも飛躍し過ぎているよ。…それで?前世に戻りたいとか思ってるのかい?
飛彩:ふん…全てはお見通しと言う訳か。…強ち、゛神゛と言う点は間違ってないかもな。
マスター:ははは、お褒めに預かり至極光栄だね。
飛彩:前世に戻る方法があるのか?
マスター:言っただろう?私は「神」だ。
飛彩:どうすれば戻れる?
マスター:そう焦らないで。目を瞑り、過去に戻りたいと願うんだ。
飛彩:なんだ?一種の催眠療法か何かか?俺は至って、正常だ。
マスター:念じれば、情景は自由自在に創り出せるのさ。
飛彩:……っ!…な、何だこの世界は…!?
マスター:ふむ。どうやら、前世が覗けた様だね。
飛彩:業火の炎に包まれた街…命乞いをする人々…酷いな…これが前世の俺なのか…
マスター:ヒイロくんが見た映像から察するに君は何処から雇われた殺し屋だったみたいだね。
飛彩:俺が…殺し屋……惨い……100人以上を火の海に落とした…
マスター:君は前世での選択を誤ったのさ。
飛彩:…選択だと?
マスター:そう。人には必ずしも、人生の分岐点があるのは知っているよね?
飛彩:ああ。
マスター:前世の君は「不正解」の道を歩んでしまった…そのせいで、君の人生は大きく捻じ曲がってしまったのさ。
飛彩:そんな事が…マスター、俺に「正せる」のか?
マスター:大丈夫だよ。今から君には選択肢を迫られる時に飛んで貰う。実際にその身体とその目で体験し後世に悪影響を受ける事なく「正解」の路をヒイロくん自身で切り拓いて欲しい。
飛彩:…俺に長年取り憑いたこの忌まわしき死神が消えるなら、どんな事でもしよう。
マスター:ふふ、その意気だよ!さぁ…君の手で希望に満ち溢れた未来を掴むんだ!ヒイロくん。
飛彩:ああ!
マスター:前世〜後世に繋がりし路の均衡を正す者に道標を!
飛彩:うおあ!?眩い光が俺を包み込んで…
マスター:ヒイロくん、自分を見失わないようにね。
飛彩:ま、マスター?!…ぐおあああ!!
飛彩:…いてててぇ。ん……此処は火の海に没した、あの例の街か?……元々はこんなにも豊かな街なのか。
飛彩:奥に出来た人集りは何だ?…何かの演説が始まるみたいだが。
町長:民草の皆、この街は今飢えに瀕している。…何者かが物資の供給を絶っているせいで、住民の過半数は骸と化した。
町長:このままでは、この街の人間は全滅し、灰に変わる事となろう。それを未然に防ぐ為に共に賊徒を討ち倒そう!
飛彩:賊徒…前世の俺って事か?…”俺”は何処にいるんだ。
飛彩(ニルヴァーナ):ふん、随分なご高説だな。…悪く思うなよ、俺は課せられた仕事を遂行するだけだ。
飛彩:あの強面の男が、前世の俺なのか?!
飛彩(ニルヴァーナ):……ボスから通信か。はい、俺です。…はい、はい…なるほど、今夜中にこの街を焼き払えと?町長の命だけを刈り取れば良かったのでは??…いえ、過ぎた真似を申し訳ありません。…はい、はい、かしこまり…
飛彩:せ、選択肢!?これでは同じ運命を辿ってしまう……待て!!
飛彩(ニルヴァーナ):あん?誰だ、てめぇ!可笑しな格好しやがって。
飛彩:俺はヒイロだ。お前に未来を狂わされた後世のお前だ!
飛彩(ニルヴァーナ):はぁ?!頭、イッちゃってんのか?
飛彩:理解出来ないのも無理は無い。だが、このままお前が「不正解」の路を選択するなら、それを全力で阻止する。
飛彩(ニルヴァーナ):ほう…仕事の邪魔をするって言うんなら、容赦しねぇぜ?
飛彩:仕方が無い…死なない程度にお灸を据えてやるか。
飛彩(ニルヴァーナ):ふん。後で吠え面掻くなよー!!…オラァー!!
飛彩:くっ…!不意打ちとは汚い奴だ。…だが、ストリートファイトで鍛えあげた俺はそんな柔わじゃないっ!
飛彩(ニルヴァーナ):ぎゃーぎゃー、女の根腐ったようにホザきやがって!…ウラァア!!
飛彩:逞しい腕だが、そんな大振りな攻撃は当たらないっ!…せやぁあ!!
飛彩(ニルヴァーナ):…な!?ば、馬鹿な!!……ぐほぉ!
飛彩:…殺られる前に殺る!そう教え込まれて来たんでな。
飛彩(ニルヴァーナ):…
飛彩:気絶したか…どうやら、物語の絵を描いてるのは”ボス”とやらみたいだが。…そいつの居場所を突き止めて、叩けば状況は変わるか。
飛彩:こいつを起こしボスと電話させて、吐かせても良いが…その後、暴れ回れても困るからな。…仕方ない、町長に話を聞くか。
町長:…賊徒め、お前の居場所は既に把握してい…
飛彩:ふむ、詳しく、その話聞かせて貰えないだろうか?町長。
町長:だ、誰だ!?…私は今忙しい。他を当たってくれ。
飛彩:悪い、俺の人生に花が咲くか否かの瀬戸際なんだ。…このチャンスを逃したら、お先真っ暗なんでな。
町長:む?!何を訳の分からない事を…貴様は賊徒の仲間では無いのか?
飛彩:賊徒?あー……安心しな、俺はヒイロ!この街の救世主だ。
町長:きゅ、救世主だと?!
飛彩:ああ、街の危機なんだろ?俺が救ってやるよ。
町長:とか言って…隙を窺っているんじゃないだろうな?
飛彩:はは、疑心暗鬼になる気持ちは分かるが、そんな事しても俺へのメリットは1ミリもないからな。…安心しな、賊徒を倒して街を救ってやる。
町長:むぐぐ…良かろう。話してやろう。
飛彩:ああ、有難う。
町長:あいつは三年前、突然やってきた。可笑しな連中を引き連れてな。
飛彩:可笑しな連中?
町長:うむ、全身をローブの様な物で覆い、異国の言葉を唱えていた。
飛彩:異国の言葉?まさか、奴も俺同様、タイムリープして…
町長:たいむりーぷ??
飛彩:ああ、いや、何でも無い。
町長:ふむ。…あの言葉は゛呪文゛だ。あの奇妙な言葉を聞いた、数日後から物資がこの街に届かず、滞ってしまった。
飛彩:なるほどな、仕舞いに…火の海か…
町長:は?
飛彩:あ、いや、放って置いたらその可能性もあるんじゃないかってな。
町長:ふむ…ヒイロ!本当にこの街の安寧は保たれるのだろうか?
飛彩:ああ、任せとけ。
町長:ヤツの寝ぐらは此処から南東に進んだ洞穴だ。
飛彩:よし、早速ぶっ倒してくるか。
町長:ヒイロ、気を付けるんだぞ?
飛彩:大丈夫だ、何たって俺は救世主様だからな。
町長:…
飛彩:町長、これからも豊かな街作りを心掛けてくれよ。
町長:?…無論だ。
飛彩:ふっ…じゃあな!
町長:…
テンプツァー:遅い……あのゴミめ、しくじったか。…おい、お前らちょっと見てこい!
飛彩:その必要はないぜ?
テンプツァー:あ?
飛彩:見知らぬ人が現れると決まって口が悪くなるよな。…俺の人生にこれ以上、泥を塗るのはやめて貰おうか。
テンプツァー:貴様…この時代の人間じゃないな?どうやってこの時代へやってきた?
飛彩:やっぱりか。お前も俺と同じ迷える子羊って訳だ。
テンプツァー:は?…訳の分からない事を。
飛彩:おいおい、そのセリフ3回は聞いたぞ?…いい加減聞き飽きたぜ。
テンプツァー:うるせぇー!!死ねぇえ!!
飛彩:…ふぅ、間一髪だぜ。クソ重そうな鉄球なんざ振り回しやがって、当たったらどう責任取るつもりだよ。
テンプツァー:くっ…ちょこまかと逃げやがって!…うぉりゃああ!!
飛彩:ひょい…っと!…せやぁああ!!地面と接吻(キス)しとけ。
テンプツァー:…ぐあ!!…ぜぇ…ぜぇ…何者だ?
飛彩:ほう、まだ立ち上がるか?流石に”ボス”はしぶといな。
テンプツァー:俺はテンプツァー!…時を操りし者だ!
飛彩:テンプ…天ぷら野郎!時を操るなら、もっとマシな事しやがれっ!!…ふんっ!!
テンプツァー:ぐあはぁ!!あ、顎があ、わ、べる…!!
飛彩:何言ってるか、分からねえよ!…そぃやぁ!!
テンプツァー:…
飛彩:ふぅ…骨が折れたぜ。
飛彩:よし、これでこの街は大丈夫だろう。さぁ…戻るか…ん?!…どうやって戻るんだよ!!
マスター:ふっふっ!…よくやったね、ヒイロ。
飛彩:うわ!?ま、マスター?お前、まさか!ずっと監視していやがったのか?
マスター:さて、何の事だろうね?…それより、その洞穴から出たらクレーター(穴)がある、そこに思いっ切り飛び込んで。
飛彩:その穴に入ったら、現世に戻れるのか?
マスター:それではね。ご武運を…ふっふっ!!
飛彩:ま、マスター!おい、待ちやが…ちっ…行っちまった。
飛彩:取り敢えず、このジメジメした土竜の巣窟を出るか。
町長:おお!!物資が届くようになった!…救世主…ヒイロ、感謝するぞ!
町長:皆の者よ、一丸となり、この街をより良い街に変えて行こう!
飛彩(ニルヴァーナ):……!?俺は気を失って!?…ボスに連絡を…ん?!…ボス?…
飛彩:起きたか?…お前のボスはもう存在しない。お前は晴れて自由だ。
飛彩(ニルヴァーナ):は?何言ってやがる…ボスに何をしやがっ…
飛彩:一度しか言わないから、よく聞けよ。…お前はボスに街を焼き払えと言われた時、躊躇ったな?
飛彩(ニルヴァーナ):…
飛彩:本当は真っ当な生活を望んでいるんじゃないのか?
飛彩(ニルヴァーナ):…っ!
飛彩:図星だな。…これからは町長の手助けをしてやれ。…それがお前の新たな”仕事”だ。
飛彩(ニルヴァーナ):…俺は普通の生活を夢見ていた。だが、多額の金に目が眩んで…。
飛彩:普通が一番だ。
飛彩(ニルヴァーナ):…ああ。
飛彩:よし、しっかりやれよ。前世の俺。
飛彩(ニルヴァーナ):は?…おい、おい!?
飛彩:ふっ…良い行いとはこんなにも清々しい気持ちになるなんてな。
飛彩:…この穴か…地獄への入り口じゃないだろうな?
飛彩:いつまでも此処に居ても仕方ないしな。…っ!
飛彩:うぉおああああ!?
マスター:お疲れ様。ヒイロくん、生きてるだけで儲けものだね。
飛彩:おい、クソマスター!俺を殺す気かっ!?
マスター:大丈夫、これからの君の未来は幸ある世界さ!
飛彩:うるせぇ!!どかっ!!
マスター:ぐぐるしぃい!?し、死ぬうう!!
0:fin。