台本概要
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タイトル | 【ジェアル】団長は街に辿り着く |
---|---|
作者名 | アール/ドラゴス (@Dragoss_R) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 4人用台本(女1、不問3) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
さすらいの団長は辿り着く。 歴史と神話が残る、終着点の街へと。 響く三味線の音。名もなき英雄。独りぼっちの調査団。 これは、歴史に語られる英雄を巡る物語である。 「私の名はアライブ!世界を旅する、『不可思議の調査団』の団長です!」 『歴史の旅人とジェアルの神々』Episode:1 469 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
アライブ | 不問 | 46 | 自称「不可思議の調査団」団長。 ジェアルに辿り着いた旅人。 |
ヴェール | 不問 | 39 | 居酒屋「GOAL」(ゴール)の店長。 優しい性格の持ち主。 |
セプンス | 不問 | 30 | 放浪の旅芸人。 三味線を使い、芸事百般を語り聞かせる。 |
キーラ | 女 | 40 | カジノ「Clown」(クラウン)の支配人。 “女帝”というあだ名は不満らしい。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:時刻は太陽が燦々と輝く真昼。
0:少し大きな街「ジェアル」の入り口
0:その前で大きなリュックサックを背負った人物が目を輝かせて街を見渡している。
:
アライブ:遂にやってきたぞぉ、神々に愛されたと言われる街、ジェアル!ここから見るだけでも人多いなぁ…!おぉぉ…!見たことない花が売ってる!街を歩いてる騎士?の人かっこいい!はぁーっ…やっぱ大きな街は凄いなぁ…!…ん!なんかおいしそうな匂いと綺麗な音が聞こえてくる…?
:
0:アライブが匂いと音色につられて歩いていくと、客寄せをしている人物が。
:
ヴェール:いらっしゃいー!怪鳥の串焼きと一緒にエールはどうだいー!…ったく。皆語りを聴きたいからって店長の僕に客引きをさせやがってぇ…。
アライブ:怪鳥の串焼き…!…美味しそうっ!すみませーん!
ヴェール:おっ。いらっしゃい。ってぇ…君、お酒飲めるのかい?ここ、酒場だよ?
アライブ:あー…。えぇっと…お酒は飲めないんですけど、串焼きが食べたくて!
ヴェール:ふぅん…なるほど…。…断っておくけれど、本当にジュースしか出さないからね?
アライブ:はい!あと…この音色は?
ヴェール:ん?…あぁ、三味線の音かい?僕には知り合いの旅芸人が居てね。よくここで物語を演奏してくれるんだよ。
アライブ:へぇー!…あの、今からでも演奏聞けますかね?
ヴェール:うーん、それは入ってみないとわからないなぁ。
アライブ:私、その旅芸人さんの演奏、聴いてみたいです!だから早く入りましょう!というか入っていいですか!
ヴェール:はいはい、じゃあ僕ももう客引き終わりだから、一緒に入ろう。ようこそ、酒場「GOAL」(ゴール)へ。
:
0:アライブはヴェールに連れられ酒場「GOAL」に入る。
0:店内では、昼であるにもかかわらず大勢の人で賑わっているが、話す者は誰一人としていない。
0:皆、店内に響き渡る綺麗な三味線の音色を聞き入っているようだ。
0:そして、酒場のステージのような場所で、座布団に正座で三味線を弾き、語っている人物が一人。
:
セプンス:…と、相成りましたとさ。めでたし、めでたし。
:
0:セプンスが言い終えると、観衆から大きな拍手や歓声が巻き起こった。
:
ヴェール:あちゃぁ。少し遅かったみたいだね。ちょうど今終わったとこみたいだ。
アライブ:うぅ…そんなぁ…。
ヴェール:まぁ、この街に留まっていればまた聴けるさ。
アライブ:ふむ…それもそうですね!
ヴェール:ところで君、注文はオレンジジュースでいいかい?
アライブ:はい!あとあの…実は私、この街に来たばかりで何もわからないので…良ければ教えてくれませんか!
ヴェール:あぁ、そうだったのか。…確かに、よく見れば旅人の格好だ。もちろんいいとも。
アライブ:やったぁ!
:
0:演奏を終え、三味線を片付けているセプンスに近づく綺麗な女性。
:
キーラ:お疲れ様。今日もとても素晴らしい演奏だったわ。これ、受け取ってくれるかしら。
セプンス:おぉっ、いつもいつもかたじけない。謹んで頂戴いたしまするー。
キーラ:…あら、セプンス。店主が帰られたらしいわよ。
セプンス:おや、本当でありまするな。挨拶に行かなくては。
:
0:セプンスは御捻りをがま口財布にしまい終えると、ゆっくりとヴェールに歩み寄ってくる。
:
セプンス:ヴェール殿。本日もお店をお貸しいただき誠に感謝でありまするー。
ヴェール:お。やぁセプンス。今日の演奏も大好評だったようじゃないか。所々外まで聴こえていたけれど、やはり君、腕が良いね。
セプンス:お褒めに預かり恐悦至極。して、そちらの方は?
ヴェール:この子、旅人でこの街に来たばかりみたいでね、僕が客引きしてるときに出会ったんだよ。
アライブ:こんにちは旅芸人さん!外からしか聞けませんでしたが、演奏素敵でした!
セプンス:おや、これはこれは。お褒めに預かり感謝の極みでありまするー。
ヴェール:それでさ、セプンス。この子がこの街の話を聞きたいって言うから今からいろいろ話してあげようと思ってるんだけど、よかったら君も混ざらないかい?
セプンス:ふむ、なるほどなるほど。手前は勿論問題ありませぬ。
アライブ:えっ!本当ですか!
セプンス:然り。しかし、手前には先約が一人おりまして。その御仁の了承をいただいてからにはなりまするが。
:
0:そんな話をしていると、後ろからセクシーな服装をした女性が歩いてくる。
:
キーラ:大丈夫、私も構わないわ。お酒の席は人が多いほうが楽しいもの。
セプンス:おや、キーラ殿。話を聞いていたのでありまするか。
キーラ:えぇ。逆にあなたは私が居ても問題ないかしら。旅人さん。
アライブ:勿論です!私もいろんな方とお喋りがしたいと思っていたので!
ヴェール:ふふっ。お客さん。君、運がいいね。今ここにそろった三人は、全員、このジェアルのなかなかの知識人であり、有名人だよ。
アライブ:えぇっ!?この大きな街の有名人…!?
キーラ:うふふ。それよりも旅人さん。早速だけれど、あなたの名前を教えてくれるかしら?
ヴェール:あぁ、そういえばまだ名前を聞いていなかったね。
アライブ:言われてみればそうでした!じゃあ、名乗らせてもらいます!
:
アライブ:私はアライブ!世界を旅してまわる、「不可思議の調査団」の団長です!!
:
0:場面転換。
0:大勢の人の声で賑わう店内。四人掛けのテーブルには、ジュースやおいしそうな料理が並んでいる。
0:そしてそれを囲み、談笑する四人。
:
ヴェール:えぇっ!?団員、君一人なの!?調査“団”なのに!?
キーラ:それじゃあ調査“員”じゃないの。
アライブ:違いますー!私が団といえば調査団なのです!!
ヴェール:えぇと…団員を増やす予定とかはあるのかい?
アライブ:ありませんよ?団員は私一人で十分です!!
ヴェール:えぇ……。
キーラ:ふふ…。なんだか不思議な子ね。
セプンス:然れど、“たった独りの調査団”という言の葉の響きはどこか浪漫を感じまする。
ヴェール:セプンスが言いまわすとなんでもかっこよくなるから本当不思議だよね…。
:
0:キーラはタバコを一本取り出すと、ライターで火をつける。
:
アライブ:あっ。キーラさんタバコ吸うんだ…!なんだかクールでカッコいい…!
ヴェール:ちょっと。この店で吸う分には全然構わないけど、未成年の子もいるんだからできるだけ控えなよ?
セプンス:本当、キーラ殿は葉巻の類がお好きでありまするなぁ。
キーラ:だってタバコがないと私、生きていけないもの。
ヴェール:まったく…。アライブくんはこんな大人になっちゃだめだぞぉ?
アライブ:おぉぉ……!
セプンス:…アライブ殿はどうやら、キーラ殿の姿に夢中で聞いていないようでありまする…。
キーラ:ふぅー……。それで…この街のことを聞きたいんだったわよね?
アライブ:あっ、はい!なんでもいいので、この街のことを教えてほしいです!
キーラ:そうねぇ…ジェアルで有名なものといえば…まず思い浮かぶのは“王龍神殿”かしら。
セプンス:この酒場も、昼から多くの客人で賑わう有名どころでありまする。
ヴェール:身近なところで言うとこの街には“騎士団”があって、それが街を襲う魔獣とか犯罪者を取り締まってくれていたりするね。
アライブ:おぉぉー!なんだか全部面白そうで過ごそうです!全部教えてください!!
ヴェール:全部か…。そうだね、じゃあまずは有名な場所から話そうかな。
セプンス:然り。何せ、今この場にはかの有名な“女帝”もおりますゆえな。
アライブ:じょ、女帝…?
キーラ:ちょっと…。会ったばかりの子に人の恥ずかしい通り名を晒すのやめてくれるかしらー…?
セプンス:おっと、それは失礼つかまつった。しかし、アライブ殿がこの街に何日も留まるなら、いずれ知られていたことでありまするー。
キーラ:もう…。
ヴェール:あはは。説明すると、このキーラはジェアルにあるとても有名なカジノの支配人でね。その客へのパフォーマンスと、ギャンブルの実力。そしてその容姿から大人気になって…。
キーラ:気づけば街の人たちが“ジェアルの女帝”なんていう通り名を広めていたのよ…。
アライブ:夜の女帝…!私はカッコよくてとっても良いと思います!そうなんだぁー…!
キーラ:はぁ…。まったく。
:
0:キーラは吸っていたタバコの火を灰皿に押し付け消し、少し不機嫌そうな顔を見せた。
:
ヴェール:二人とも、目に焼き付けておくといいよ。ポーカーフェイスの稀にみる不機嫌顔だ。
キーラ:うるさいわねぇ。普通に小っ恥ずかしいのよ。
セプンス:そして、昼に賑わうのがヴェール殿が経営するここ、「GOAL」でありまする。
ヴェール:まぁね。その人気ぶりはこの騒がしい店内を見てもらえたら一目瞭然だと思うよ!
アライブ:へぇーー!二人とも凄いんですね!
セプンス:いやはや、手前もこの街を訪れた時はあまりの繁盛ぶりに驚いたでありまするよ。
アライブ:あれ、セプンスさんはこの街の住人じゃないんですか?
セプンス:然り。手前はしがない旅芸人。今はこの街に身を置いておりまするが、もうしばらくしたら去る予定でありまする。
キーラ:とは言っても、まだ当分は離れないんでしょう?
セプンス:然り。実はこの街でとある御仁を探しておりまして。その方にこの三味線の音を聞かせるまでは旅立てないのでありまするー。
アライブ:どんな人を探してるんですか?私もこの街に留まりますし、あれだったら一緒に探しますよ!
セプンス:お心遣い痛み入りまする。然れど、これは手前の抱える“問題”。他の方に迷惑をかけるわけにはいきませぬ。
ヴェール:そうそう、前にもこの話を聞いて僕達も手伝おうとしたんだけど、言うこと聞かなくてね。
アライブ:そ、そうなんですか…。で、でも!気が変わったらいつでも話を聞きますからね!
セプンス:感謝の極み。
キーラ:さて…話がそれたけど、この街の名所に関してはこんなところよ。他には何かあるかしら?
アライブ:えっと…。…じゃあ、この街に伝わる伝説みたいなものってありますか?私、神話とかを聞くのが好きなのでー。
キーラ:あぁ、それならとっておきの話が二つもあるわよ。この街を守る龍の話と、八百年前から語り継がれる神話が。
アライブ:…もしかして、その八百年前の神話って…「魔神殺しの英雄譚」、ですか?
キーラ:あら、よく知ってるじゃない。そうよ。
セプンス:憎き悪魔によって海に封印されし魔神「ラムナトス」が蘇り、地上は阿鼻叫喚に満ちた。人々が絶望に天を仰いだ時、雲を裂き光の英雄が現れ、神すら止められなかった魔神を光の大剣によって打ち倒し、世界は英雄の手によって救われたという話でありまするな。アライブ殿はどこでその話を存じられたので?
アライブ:あー…えっと…。昔、どこかでそのお話を聞いたんです。それで、最後の部分が印象に残ってて。
ヴェール:最後の?
アライブ:はい。「魔神を倒し天から不老不死と奇跡を授ける力を授かった英雄は、今もこの地のどこかで不幸な人に奇跡を与えている。」…。その英雄の正体が何かは明らかになっていませんが、もしただの人であったなら、ずっと生き続けるのは辛いんだろうなって思って…。
ヴェール:…なるほど。確かにそうだろうね。周りは老い、朽ちていくのに自分だけは一緒に年を取れないわけだから、その英雄は孤独を余儀なくされるだろう。そのこと、二人はどう思う?
キーラ:そうねぇ…。私は辛くないと思うわ。勿論周りの友人が死んでいくのは絶対に嫌だけれど、この世界に今後何が生まれてどうなるのかをこの目で見てみたいのよ。だから私は楽しみが勝つと思うわ。まぁ私はその英雄じゃないから、いざその立場になってみたら考えが変わる気がするけれど。
セプンス:手前は放浪の身ゆえ、いつも孤独でありますれば。時代が移ろい行こうとこの身朽ち果てるまで三味線の音を奏で続けるだけでありまする。
アライブ:…なるほど。皆さんはそう考えているんですね。
:
0:一瞬の沈黙。
:
ヴェール:…えーっと、なんだか急に哲学みたいな暗い話になっちゃったね。話を戻そうか。
キーラ:そうね。他にこの街で有名なものといえば…何かあるかしら?
セプンス:特産物や場所ではありませんが、一つ思いついたのは街でも評判の良い“名探偵”殿。
ヴェール:あぁー!あの熱心じゃないけど仕事はどんなに困難でも完璧にこなすっていうやつか…!
キーラ:でもあの人、あんまり人づきあいが得意じゃなくて滅多にこういう場所に顔をださないから、名前はうわさで聞いたことがあっても顔までは知らないって人が多いんじゃないかしら。
ヴェール:うん、だって現に僕がそうなんだからね…。
アライブ:えっ、ヴェールさんでも知らないんですか!
キーラ:私は以前、ストーカー被害に遭ったことがあってね。それでその探偵さんに依頼を出したのよ。
アライブ:ス、ストーカー…。
キーラ:そしてその日の夜カジノで働いていると探偵さんが来てね。『もうストーカーは騎士団に突き出したからもう大丈夫だ』って伝えると、その証拠に騎士団がそのストーカーを捕まえたっていう紙を渡してすぐ去っていったわ。
アライブ:えぇー!その日のうちに!?
セプンス:然しその速さだとキーラ殿は依頼した当時、ストーカーが誰なのかを分かっていらしたのでありましょう?
キーラ:いいえ、まったく見当もついていなかったわ。探偵さんには、昨日どこにいたとか、何時ごろなにをしたとかを軽く話しただけなの。
ヴェール:それだけでそんな早く捕まえたのか…。噂以上の実力だなぁ、その人。
アライブ:すごい…一回でいいから話してみたいです!
セプンス:であればこの後、その探偵がいるという探偵事務所を訪ねられてはいかがでありましょう。
キーラ:駄目よ。何の依頼もなく事務所に行っても門前返しをくらうだけよ。
アライブ:あぁ…まぁそうですよね…。
キーラ:一応その時にもらった名刺だけでも見る?まだ持っているけど。
アライブ:名刺!!見たいです~!
キーラ:うふふ。わかったわ。少し待ってて頂戴。今取り出すから。
:
0:そういうとキーラは持っていたバッグから二枚の紙きれを取り出した。
:
キーラ:これよ。こっちが探偵さんので、こっちは秘書兼助手の人の。
アライブ:えっと…「ホルス探偵事務所」、探偵ジャック・ガウディ…。
ヴェール:こっちは「ホルス探偵事務所」、助手ロイワット・ブルネレスキって書いてあるね。
キーラ:ジャック先生の方は気だるげでいつも眠そうな感じ。その分助手のロイワットちゃんのほうが対応を頑張っていたわね。
アライブ:へぇー!話に聞いてるだけでもすごく気になる…!この街にいる間に一回でいいから会ってみたいなぁ!
セプンス:手前もこの二人の御仁には一度お会いし、お話を聞いてみとうございまするー…!
ヴェール:おや、セプンスがそんなことを言うなんて珍しいね。
セプンス:手前、これまで何十もの物語を語り聞かせて参りましたが、探偵の話はまだ一度も語ったことがないのでありまする。もしよろしければその凄腕の二人の話を語り物にしてみたいと思い立ったのでありまするよ。
キーラ:なるほどね。まぁ、あの二人が街中に顔を出すことはほとんどないだろうけど。
:
0:そんな話をしていると、酒場に使用人らしき人が現れ、キーラに近づく。
キーラ:あら、あなたは「Clown」(クラウン)の…。
0:使用人は、キーラに耳打ちで何かをつたえる。
:
キーラ:…はぁ。まったく。ごめんなさいね、カジノの準備中にちょっと不手際があったらしいから、私はここらへんでお暇するわ。
セプンス:おや、それはそれはー。
ヴェール:流石、“ジェアルの女帝”は大変だねぇー。
キーラ:蹴りを入れるわよ。
アライブ:行っちゃうんですか…。私、もっとキーラさんとお話ししたかったです…。
キーラ:うふふ。なら、今夜私のカジノに来てみる?
アライブ:えっ!?いいんですか!?
ヴェール:だけど君、カジノディーラーも兼任しているんだろう?本当に大丈夫なのかい?
キーラ:えぇ。今日はちょうどディーラーの仕事がお休みでね。だから今夜なら相手ができるわ。
アライブ:それなら、私キーラさんとカジノゲームがしてみたいです!カジノゲーム、一回もやったことなかったのでー!
ヴェール:それなら僕も混ざっていいかな?今日の夜は特にやることもなく暇でね。
キーラ:いいわよ。談笑しながらするゲームも人が多いほうが楽しいもの。
アライブ:わぁ…!とっても楽しみですっ!!
キーラ:じゃあ、ごちそうさま、ヴェール。串焼き美味しかったわ。
ヴェール:毎度ありがとうございまーす。
セプンス:お仕事、頑張ってくだされ―。
アライブ:カジノゲーム、楽しみにしてますっ!!
キーラ:はーい。じゃあ…。
:
キーラ:また今夜、「Clown」で会いましょう。
:
0:To be continued.
0:時刻は太陽が燦々と輝く真昼。
0:少し大きな街「ジェアル」の入り口
0:その前で大きなリュックサックを背負った人物が目を輝かせて街を見渡している。
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アライブ:遂にやってきたぞぉ、神々に愛されたと言われる街、ジェアル!ここから見るだけでも人多いなぁ…!おぉぉ…!見たことない花が売ってる!街を歩いてる騎士?の人かっこいい!はぁーっ…やっぱ大きな街は凄いなぁ…!…ん!なんかおいしそうな匂いと綺麗な音が聞こえてくる…?
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0:アライブが匂いと音色につられて歩いていくと、客寄せをしている人物が。
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ヴェール:いらっしゃいー!怪鳥の串焼きと一緒にエールはどうだいー!…ったく。皆語りを聴きたいからって店長の僕に客引きをさせやがってぇ…。
アライブ:怪鳥の串焼き…!…美味しそうっ!すみませーん!
ヴェール:おっ。いらっしゃい。ってぇ…君、お酒飲めるのかい?ここ、酒場だよ?
アライブ:あー…。えぇっと…お酒は飲めないんですけど、串焼きが食べたくて!
ヴェール:ふぅん…なるほど…。…断っておくけれど、本当にジュースしか出さないからね?
アライブ:はい!あと…この音色は?
ヴェール:ん?…あぁ、三味線の音かい?僕には知り合いの旅芸人が居てね。よくここで物語を演奏してくれるんだよ。
アライブ:へぇー!…あの、今からでも演奏聞けますかね?
ヴェール:うーん、それは入ってみないとわからないなぁ。
アライブ:私、その旅芸人さんの演奏、聴いてみたいです!だから早く入りましょう!というか入っていいですか!
ヴェール:はいはい、じゃあ僕ももう客引き終わりだから、一緒に入ろう。ようこそ、酒場「GOAL」(ゴール)へ。
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0:アライブはヴェールに連れられ酒場「GOAL」に入る。
0:店内では、昼であるにもかかわらず大勢の人で賑わっているが、話す者は誰一人としていない。
0:皆、店内に響き渡る綺麗な三味線の音色を聞き入っているようだ。
0:そして、酒場のステージのような場所で、座布団に正座で三味線を弾き、語っている人物が一人。
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セプンス:…と、相成りましたとさ。めでたし、めでたし。
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0:セプンスが言い終えると、観衆から大きな拍手や歓声が巻き起こった。
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ヴェール:あちゃぁ。少し遅かったみたいだね。ちょうど今終わったとこみたいだ。
アライブ:うぅ…そんなぁ…。
ヴェール:まぁ、この街に留まっていればまた聴けるさ。
アライブ:ふむ…それもそうですね!
ヴェール:ところで君、注文はオレンジジュースでいいかい?
アライブ:はい!あとあの…実は私、この街に来たばかりで何もわからないので…良ければ教えてくれませんか!
ヴェール:あぁ、そうだったのか。…確かに、よく見れば旅人の格好だ。もちろんいいとも。
アライブ:やったぁ!
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0:演奏を終え、三味線を片付けているセプンスに近づく綺麗な女性。
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キーラ:お疲れ様。今日もとても素晴らしい演奏だったわ。これ、受け取ってくれるかしら。
セプンス:おぉっ、いつもいつもかたじけない。謹んで頂戴いたしまするー。
キーラ:…あら、セプンス。店主が帰られたらしいわよ。
セプンス:おや、本当でありまするな。挨拶に行かなくては。
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0:セプンスは御捻りをがま口財布にしまい終えると、ゆっくりとヴェールに歩み寄ってくる。
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セプンス:ヴェール殿。本日もお店をお貸しいただき誠に感謝でありまするー。
ヴェール:お。やぁセプンス。今日の演奏も大好評だったようじゃないか。所々外まで聴こえていたけれど、やはり君、腕が良いね。
セプンス:お褒めに預かり恐悦至極。して、そちらの方は?
ヴェール:この子、旅人でこの街に来たばかりみたいでね、僕が客引きしてるときに出会ったんだよ。
アライブ:こんにちは旅芸人さん!外からしか聞けませんでしたが、演奏素敵でした!
セプンス:おや、これはこれは。お褒めに預かり感謝の極みでありまするー。
ヴェール:それでさ、セプンス。この子がこの街の話を聞きたいって言うから今からいろいろ話してあげようと思ってるんだけど、よかったら君も混ざらないかい?
セプンス:ふむ、なるほどなるほど。手前は勿論問題ありませぬ。
アライブ:えっ!本当ですか!
セプンス:然り。しかし、手前には先約が一人おりまして。その御仁の了承をいただいてからにはなりまするが。
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0:そんな話をしていると、後ろからセクシーな服装をした女性が歩いてくる。
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キーラ:大丈夫、私も構わないわ。お酒の席は人が多いほうが楽しいもの。
セプンス:おや、キーラ殿。話を聞いていたのでありまするか。
キーラ:えぇ。逆にあなたは私が居ても問題ないかしら。旅人さん。
アライブ:勿論です!私もいろんな方とお喋りがしたいと思っていたので!
ヴェール:ふふっ。お客さん。君、運がいいね。今ここにそろった三人は、全員、このジェアルのなかなかの知識人であり、有名人だよ。
アライブ:えぇっ!?この大きな街の有名人…!?
キーラ:うふふ。それよりも旅人さん。早速だけれど、あなたの名前を教えてくれるかしら?
ヴェール:あぁ、そういえばまだ名前を聞いていなかったね。
アライブ:言われてみればそうでした!じゃあ、名乗らせてもらいます!
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アライブ:私はアライブ!世界を旅してまわる、「不可思議の調査団」の団長です!!
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0:場面転換。
0:大勢の人の声で賑わう店内。四人掛けのテーブルには、ジュースやおいしそうな料理が並んでいる。
0:そしてそれを囲み、談笑する四人。
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ヴェール:えぇっ!?団員、君一人なの!?調査“団”なのに!?
キーラ:それじゃあ調査“員”じゃないの。
アライブ:違いますー!私が団といえば調査団なのです!!
ヴェール:えぇと…団員を増やす予定とかはあるのかい?
アライブ:ありませんよ?団員は私一人で十分です!!
ヴェール:えぇ……。
キーラ:ふふ…。なんだか不思議な子ね。
セプンス:然れど、“たった独りの調査団”という言の葉の響きはどこか浪漫を感じまする。
ヴェール:セプンスが言いまわすとなんでもかっこよくなるから本当不思議だよね…。
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0:キーラはタバコを一本取り出すと、ライターで火をつける。
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アライブ:あっ。キーラさんタバコ吸うんだ…!なんだかクールでカッコいい…!
ヴェール:ちょっと。この店で吸う分には全然構わないけど、未成年の子もいるんだからできるだけ控えなよ?
セプンス:本当、キーラ殿は葉巻の類がお好きでありまするなぁ。
キーラ:だってタバコがないと私、生きていけないもの。
ヴェール:まったく…。アライブくんはこんな大人になっちゃだめだぞぉ?
アライブ:おぉぉ……!
セプンス:…アライブ殿はどうやら、キーラ殿の姿に夢中で聞いていないようでありまする…。
キーラ:ふぅー……。それで…この街のことを聞きたいんだったわよね?
アライブ:あっ、はい!なんでもいいので、この街のことを教えてほしいです!
キーラ:そうねぇ…ジェアルで有名なものといえば…まず思い浮かぶのは“王龍神殿”かしら。
セプンス:この酒場も、昼から多くの客人で賑わう有名どころでありまする。
ヴェール:身近なところで言うとこの街には“騎士団”があって、それが街を襲う魔獣とか犯罪者を取り締まってくれていたりするね。
アライブ:おぉぉー!なんだか全部面白そうで過ごそうです!全部教えてください!!
ヴェール:全部か…。そうだね、じゃあまずは有名な場所から話そうかな。
セプンス:然り。何せ、今この場にはかの有名な“女帝”もおりますゆえな。
アライブ:じょ、女帝…?
キーラ:ちょっと…。会ったばかりの子に人の恥ずかしい通り名を晒すのやめてくれるかしらー…?
セプンス:おっと、それは失礼つかまつった。しかし、アライブ殿がこの街に何日も留まるなら、いずれ知られていたことでありまするー。
キーラ:もう…。
ヴェール:あはは。説明すると、このキーラはジェアルにあるとても有名なカジノの支配人でね。その客へのパフォーマンスと、ギャンブルの実力。そしてその容姿から大人気になって…。
キーラ:気づけば街の人たちが“ジェアルの女帝”なんていう通り名を広めていたのよ…。
アライブ:夜の女帝…!私はカッコよくてとっても良いと思います!そうなんだぁー…!
キーラ:はぁ…。まったく。
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0:キーラは吸っていたタバコの火を灰皿に押し付け消し、少し不機嫌そうな顔を見せた。
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ヴェール:二人とも、目に焼き付けておくといいよ。ポーカーフェイスの稀にみる不機嫌顔だ。
キーラ:うるさいわねぇ。普通に小っ恥ずかしいのよ。
セプンス:そして、昼に賑わうのがヴェール殿が経営するここ、「GOAL」でありまする。
ヴェール:まぁね。その人気ぶりはこの騒がしい店内を見てもらえたら一目瞭然だと思うよ!
アライブ:へぇーー!二人とも凄いんですね!
セプンス:いやはや、手前もこの街を訪れた時はあまりの繁盛ぶりに驚いたでありまするよ。
アライブ:あれ、セプンスさんはこの街の住人じゃないんですか?
セプンス:然り。手前はしがない旅芸人。今はこの街に身を置いておりまするが、もうしばらくしたら去る予定でありまする。
キーラ:とは言っても、まだ当分は離れないんでしょう?
セプンス:然り。実はこの街でとある御仁を探しておりまして。その方にこの三味線の音を聞かせるまでは旅立てないのでありまするー。
アライブ:どんな人を探してるんですか?私もこの街に留まりますし、あれだったら一緒に探しますよ!
セプンス:お心遣い痛み入りまする。然れど、これは手前の抱える“問題”。他の方に迷惑をかけるわけにはいきませぬ。
ヴェール:そうそう、前にもこの話を聞いて僕達も手伝おうとしたんだけど、言うこと聞かなくてね。
アライブ:そ、そうなんですか…。で、でも!気が変わったらいつでも話を聞きますからね!
セプンス:感謝の極み。
キーラ:さて…話がそれたけど、この街の名所に関してはこんなところよ。他には何かあるかしら?
アライブ:えっと…。…じゃあ、この街に伝わる伝説みたいなものってありますか?私、神話とかを聞くのが好きなのでー。
キーラ:あぁ、それならとっておきの話が二つもあるわよ。この街を守る龍の話と、八百年前から語り継がれる神話が。
アライブ:…もしかして、その八百年前の神話って…「魔神殺しの英雄譚」、ですか?
キーラ:あら、よく知ってるじゃない。そうよ。
セプンス:憎き悪魔によって海に封印されし魔神「ラムナトス」が蘇り、地上は阿鼻叫喚に満ちた。人々が絶望に天を仰いだ時、雲を裂き光の英雄が現れ、神すら止められなかった魔神を光の大剣によって打ち倒し、世界は英雄の手によって救われたという話でありまするな。アライブ殿はどこでその話を存じられたので?
アライブ:あー…えっと…。昔、どこかでそのお話を聞いたんです。それで、最後の部分が印象に残ってて。
ヴェール:最後の?
アライブ:はい。「魔神を倒し天から不老不死と奇跡を授ける力を授かった英雄は、今もこの地のどこかで不幸な人に奇跡を与えている。」…。その英雄の正体が何かは明らかになっていませんが、もしただの人であったなら、ずっと生き続けるのは辛いんだろうなって思って…。
ヴェール:…なるほど。確かにそうだろうね。周りは老い、朽ちていくのに自分だけは一緒に年を取れないわけだから、その英雄は孤独を余儀なくされるだろう。そのこと、二人はどう思う?
キーラ:そうねぇ…。私は辛くないと思うわ。勿論周りの友人が死んでいくのは絶対に嫌だけれど、この世界に今後何が生まれてどうなるのかをこの目で見てみたいのよ。だから私は楽しみが勝つと思うわ。まぁ私はその英雄じゃないから、いざその立場になってみたら考えが変わる気がするけれど。
セプンス:手前は放浪の身ゆえ、いつも孤独でありますれば。時代が移ろい行こうとこの身朽ち果てるまで三味線の音を奏で続けるだけでありまする。
アライブ:…なるほど。皆さんはそう考えているんですね。
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0:一瞬の沈黙。
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ヴェール:…えーっと、なんだか急に哲学みたいな暗い話になっちゃったね。話を戻そうか。
キーラ:そうね。他にこの街で有名なものといえば…何かあるかしら?
セプンス:特産物や場所ではありませんが、一つ思いついたのは街でも評判の良い“名探偵”殿。
ヴェール:あぁー!あの熱心じゃないけど仕事はどんなに困難でも完璧にこなすっていうやつか…!
キーラ:でもあの人、あんまり人づきあいが得意じゃなくて滅多にこういう場所に顔をださないから、名前はうわさで聞いたことがあっても顔までは知らないって人が多いんじゃないかしら。
ヴェール:うん、だって現に僕がそうなんだからね…。
アライブ:えっ、ヴェールさんでも知らないんですか!
キーラ:私は以前、ストーカー被害に遭ったことがあってね。それでその探偵さんに依頼を出したのよ。
アライブ:ス、ストーカー…。
キーラ:そしてその日の夜カジノで働いていると探偵さんが来てね。『もうストーカーは騎士団に突き出したからもう大丈夫だ』って伝えると、その証拠に騎士団がそのストーカーを捕まえたっていう紙を渡してすぐ去っていったわ。
アライブ:えぇー!その日のうちに!?
セプンス:然しその速さだとキーラ殿は依頼した当時、ストーカーが誰なのかを分かっていらしたのでありましょう?
キーラ:いいえ、まったく見当もついていなかったわ。探偵さんには、昨日どこにいたとか、何時ごろなにをしたとかを軽く話しただけなの。
ヴェール:それだけでそんな早く捕まえたのか…。噂以上の実力だなぁ、その人。
アライブ:すごい…一回でいいから話してみたいです!
セプンス:であればこの後、その探偵がいるという探偵事務所を訪ねられてはいかがでありましょう。
キーラ:駄目よ。何の依頼もなく事務所に行っても門前返しをくらうだけよ。
アライブ:あぁ…まぁそうですよね…。
キーラ:一応その時にもらった名刺だけでも見る?まだ持っているけど。
アライブ:名刺!!見たいです~!
キーラ:うふふ。わかったわ。少し待ってて頂戴。今取り出すから。
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0:そういうとキーラは持っていたバッグから二枚の紙きれを取り出した。
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キーラ:これよ。こっちが探偵さんので、こっちは秘書兼助手の人の。
アライブ:えっと…「ホルス探偵事務所」、探偵ジャック・ガウディ…。
ヴェール:こっちは「ホルス探偵事務所」、助手ロイワット・ブルネレスキって書いてあるね。
キーラ:ジャック先生の方は気だるげでいつも眠そうな感じ。その分助手のロイワットちゃんのほうが対応を頑張っていたわね。
アライブ:へぇー!話に聞いてるだけでもすごく気になる…!この街にいる間に一回でいいから会ってみたいなぁ!
セプンス:手前もこの二人の御仁には一度お会いし、お話を聞いてみとうございまするー…!
ヴェール:おや、セプンスがそんなことを言うなんて珍しいね。
セプンス:手前、これまで何十もの物語を語り聞かせて参りましたが、探偵の話はまだ一度も語ったことがないのでありまする。もしよろしければその凄腕の二人の話を語り物にしてみたいと思い立ったのでありまするよ。
キーラ:なるほどね。まぁ、あの二人が街中に顔を出すことはほとんどないだろうけど。
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0:そんな話をしていると、酒場に使用人らしき人が現れ、キーラに近づく。
キーラ:あら、あなたは「Clown」(クラウン)の…。
0:使用人は、キーラに耳打ちで何かをつたえる。
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キーラ:…はぁ。まったく。ごめんなさいね、カジノの準備中にちょっと不手際があったらしいから、私はここらへんでお暇するわ。
セプンス:おや、それはそれはー。
ヴェール:流石、“ジェアルの女帝”は大変だねぇー。
キーラ:蹴りを入れるわよ。
アライブ:行っちゃうんですか…。私、もっとキーラさんとお話ししたかったです…。
キーラ:うふふ。なら、今夜私のカジノに来てみる?
アライブ:えっ!?いいんですか!?
ヴェール:だけど君、カジノディーラーも兼任しているんだろう?本当に大丈夫なのかい?
キーラ:えぇ。今日はちょうどディーラーの仕事がお休みでね。だから今夜なら相手ができるわ。
アライブ:それなら、私キーラさんとカジノゲームがしてみたいです!カジノゲーム、一回もやったことなかったのでー!
ヴェール:それなら僕も混ざっていいかな?今日の夜は特にやることもなく暇でね。
キーラ:いいわよ。談笑しながらするゲームも人が多いほうが楽しいもの。
アライブ:わぁ…!とっても楽しみですっ!!
キーラ:じゃあ、ごちそうさま、ヴェール。串焼き美味しかったわ。
ヴェール:毎度ありがとうございまーす。
セプンス:お仕事、頑張ってくだされ―。
アライブ:カジノゲーム、楽しみにしてますっ!!
キーラ:はーい。じゃあ…。
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キーラ:また今夜、「Clown」で会いましょう。
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0:To be continued.