台本概要

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タイトル 【ジェアル】支配人は不敵に笑う
作者名 アール/ドラゴス  (@Dragoss_R)
ジャンル ファンタジー
演者人数 4人用台本(男1、女1、不問2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 凄腕の支配人は楽しむ。
自分と仲間に危機が迫る、その瞬間さえも。
街で起こる連続殺人。喪失の騎士。暴れ狂う魔獣。
そして、麗しき女帝は風を纏う。

「まったく…。いいところだったのに、ツイてないわ。」


『歴史の旅人とジェアルの神々』Episode:2

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
アライブ 不問 60 自称「不可思議の調査団」団長。 ジェアルに辿り着いた旅人。
キーラ 53 カジノ「Clown」(クラウン)の支配人。 “女帝”というあだ名は不満らしい。
ヴェール 不問 50 居酒屋「GOAL」(ゴール)の店長。 優しい性格の持ち主。
シーセン 40 「ジェアル守護騎士団」の騎士。 事故で妻と子供を失っている。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:陽はとうに沈み、星と月が空を照らす夜。「ジェアル」の街を二人の人物が歩いている。 : アライブ:ふふ~…! ヴェール:おや、上機嫌だね。そんなに楽しみなのかい? アライブ:はい!ずっと旅をしてきましたが、カジノに行くのは初めてなので! ヴェール:昼も言っていたね。あそこのカジノは大賑わいだから、きっと君の期待にも沿えるだろうさ。 アライブ:それは楽しみです!そういえば、セプンスさんは今日来ないんですか? ヴェール:あぁ、セプンスはあんまりカジノゲームが好きじゃないみたいでね。だからあんまり顔を出さないんだ。 アライブ:そうなんですか…。ちょっと残念です。一緒にゲームしたかったなぁ…。 ヴェール:さぁ、そうこうしているうちに着いたよ。ここがこの街の夜、一番賑わう場所さ。 : 0:二人はネオン灯の大きな建物の前で足を止めた。そこは外から見ても賑わっており、今も多くの人がその建物に入っていく。 : アライブ:おぉぉー…!このおっきい建物が…! ヴェール:相変わらず凄い賑わいだな…。まぁ、この街の人たちが大体ギャンブル好きってのもあるけど。 アライブ:あっ、ヴェールさん、キーラさん発見しました!あそこにいますよ!おーい! ヴェール:お。本当だね。…でも…あれ? : 0:カジノの前でキーラと誰かが話している。 : キーラ:…なるほど。そんなことが。 シーセン:はい。ですので、貴女も十分注意なさってください。 キーラ:ありがとうございます。でも私、街の人にそれを公開しないのは反対です。街の人たちのことを考えていなさすぎでは? シーセン:それに関しては俺も同感ですが、上の命令でして…。街の評判を下げない為なのです。それに、貴女の(実力なら街の人を守ること… アライブ:(被せる)おーい!キーラさーん! ヴェール:こらこら、話してるところに割り込まないの。 アライブ:あ、ごめんなさい……。 ヴェール:まったく、仕事にかかわる話かもしれないだろう?いやぁ、すみませんお取込み中に。 キーラ:あら。二人とも。ごめんなさいね、今ちょっと大事な話をしていたのよ。 シーセン:ん…?あぁ、ヴェール店長じゃないですか! ヴェール:あれ。誰かと思えばシーセン…!?久しぶりだね、大丈夫だったかい…? キーラ:ヴェールはこの人と知り合いだったのね。 アライブ:んー…?えっと…どなたなんです? ヴェール:彼はこの街を護る騎士団の一員さ。 シーセン:はい。「ジェアル守護騎士団」の騎士、シーセンです。それで…ヴェール店長。今少しお時間よろしいでしょうか。 ヴェール:ん?僕に何か用事でもあったのかい? シーセン:はい。今キーラさんに話していたことと同じ件なんですが…。 アライブ:私も聞きたいです!何かあったんですか…? シーセン:あぁ…申し訳ないが、ちょっとこの件は他の人には聞かせられない。 キーラ:でもそれって上からの命令でしょう?バレなければ私はいいと思うけど。 シーセン:し、しかし…。 キーラ:それに、この二人は私の大切な友人なの。そのことを知らずに危険な目に遭ってほしくないわ。 ヴェール:なんだかよくわからないけど、僕も公開したほうがいいと思うな。その表情から察するに、多分非常事態なんだろ。 シーセン:う…。…わかりました。では、そちらのご友人にもお話します。では、まず…。 キーラ:あぁ、ちょっと待って。長く立ち話をするのは嫌だから、とりあえずここに入らない?今日は確か貸し切りのVIP室が何部屋か開いていたから、そこを貸すわ。 アライブ:えぇっ!VIP室ー!? キーラ:そんな驚かなくてもういいじゃない。私、ここの支配人よ? シーセン:しかし、短い話にそんな場所をお借りしてしまって本当にいいんでしょうか…? キーラ:構わないわ。どうせ客は使わないんだし。 アライブ:VIP室…!どんななんだろう…! キーラ:別にそこでなにかをするわけではないけれどね。じゃあ、改めて。 : キーラ:私のカジノ「Clown」(クラウン)へようこそ。歓迎するわよ、不思議な団長さん。 : 0:カジノ「Clown」エントランス。煌びやかなエントランスと、賭け事を楽しむ人々の喧騒が響く。 : アライブ:おぉぉー!凄い、全部キラキラしてる…!凄い…! ヴェール:君はなんにでも目を輝かせるね…。 アライブ:はい!なにせ、「不可思議の調査団」の団長ですから! シーセン:え、調査団の団長…!? キーラ:たった独りの、ね。 ヴェール:この子、旅人さんで今日の昼にこの街に来たらしいんだけど、少し変わった子なんだよ~。 アライブ:『世界に蔓延る不可思議を見つけて楽しむ』、っていう団体です!団員は私だけです! シーセン:…それはもう団はおろか、調査ですらないのでは? キーラ:さ、それについては後で突っ込むとして…。VIP室はこっちよ。ついてきてくれるかしら。 : アライブ:うわぁ…。本当にたくさんの人がいますね…! ヴェール:この街の人はみんな、お金をかけるスリルが大好きなんだよ。 シーセン:それに、ここはカジノゲームならほぼすべて揃ってると言っても過言じゃない。 キーラ:お金がかからないゲームもあるから、あとで沢山遊ぶといいわ。 アライブ:はい!私、皆さんとも一緒にゲームがしたいです! キーラ:勿論いいわよ。ディーラーの仕事もないせっかくのオフだし。たまにはプレイヤーで楽しもうかしら。 : 0:そう話しているうちにVIP室に辿り着き、キーラは鍵を開ける。 : キーラ:さ、どうぞ。お客さま。ここが当カジノのVIP室になります。 ヴェール:ふふっ…。おお、前にも何回か来たことあるけど、やっぱり圧巻だね。 アライブ:わぁー!凄い凄い!!柔らかそうなソファに大きい水槽に、たくさんのジュースにお酒!それといろんなものがいっぱいだー! シーセン:ダーツにビリヤード、ルーレット台にスロットまで…。これは凄い。 キーラ:話が終わったら、あとでいくらでも遊んでいいわよ。 アライブ:あっ、そうでした!まずはお話でしたね! キーラ:重要な話だから、二人ともちゃんと聞きなさいよ? : アライブ:(M)そう言って、ソファに腰掛けるキーラさん。そうして、キーラさんがシーセンさんに目配せをすると、シーセンさんは少しこわばった表情で話し始めます。 : シーセン:では…お話させていただきます。まず結論から言いますと…。今、この街で連続殺人が起きています。 アライブ:へぇっ!?連続殺人!? シーセン:ああ。今、大体三日に一回くらいのペースでこの街の住人が殺されているんです。 ヴェール:…それって、もしかして君の…。 シーセン:あぁ…。その件とは関係ありません、大丈夫ですよ。…さて、ではもう少し詳しくお伝えします。殺人が行われるのはいつも夜の0時から5時あたり。標的となる人に共通点はない。既にわかっているだけでも二十人を超える犠牲が出ています。 ヴェール:二十人だって!?何でそんな大事になっているのに騎士団は大々的に知らせないんだ…? シーセン:それが…。「ジェアルの評判を下げない為」、「ここに訪れる旅人やこの街の人が怖がってしまう」といって、騎士団の上層部から最低限、街で賑わう場所の経営者たちだけに伝えろ、と…。 ヴェール:なるほど…。だからキーラや僕だけに話が来たんだね。 キーラ:でも何も知らない街の人たちはその殺人鬼にとって格好の餌食。このままじゃ被害が拡大するだけだと私もさっき言ったわ。 アライブ:そ、そんなことがここで起こってたなんて…。深夜は宿でじっとしてなきゃ……。 シーセン:それに調べたところ、この街の近郊でも同じような事件が起きていているようなんです。さらに不可解なことに、それもまったく同じ時間帯の犯行なんだそうで…。 ヴェール:…ジェアルだけの問題でもないってことか。本当に不気味な話だね。 キーラ:さらに恐ろしいのは…。最近は「Clown」から帰る途中の人を狙うことが多いそうよ。 アライブ:ひぇぇ…。怖いですよ……。 キーラ:大丈夫よ、日が変わる前に宿に戻ればいいだけだもの。今のところ室内の犯行はないんでしょう? シーセン:はい。…そして、ここからが重要なのですが…。被害者の遺体には何の損傷もないんです。 アライブ:損傷が、ない…?何かの魔法ってことですか…? シーセン:いいや。騎士団でいろいろと調べているんだが、物理的に致死に繋がる損傷はないし、魔法で凍らせたとか、焼かれたなんて言う傷はおろか、魔力の痕跡もない。つまり、死因が不明ってことだ。 ヴェール:……。 キーラ:それでいて、手がかりも何もないんだそうよ。 アライブ:じゃあどうしようもないじゃないですか! シーセン:そうだ…。だから三人とも、気を付けてください。騎士団も今精一杯調査を続けているので。 キーラ:本当、物騒ね…。だから二人とも、深夜はいつでも自分の身を魔法で守れるくらいの気を張っていた方がいいわ。 アライブ:うぅ…。この街に来るタイミング、悪かったですかね…? シーセン:ジェアルに来たばかりなのにこんな話を聞かせてしまって申し訳ないな、旅人。 アライブ:いえ、大丈夫です!この話を聞いていなかったら何も知らずに殺されていたかもしれませんし…。 ヴェール:…シーセン、規則違反だが、やっぱり騎士団に内緒でこのことは君の友人に伝えたほうがいい。…もう君も、大切な人を失いたくないだろう。 シーセン:……そう、ですね。ありがとうございます、店長。そうします。では、話は以上ですので、私はここで失礼します。 キーラ:ちょっと待って、騎士の人。せっかく「Clown」に足を運んだのだから、少し遊んでいかない? ヴェール:そうだよ、シーセン。今日はこの三人で遊ぼうと思ってたんだ。君も一緒にどうだい? アライブ:キーラさんもお昼に言ってましたが、遊ぶ人は多いほうが楽しいです! シーセン:で、でも…。いいんですか?ヴェールさん。 ヴェール:勿論。キーラも構わないだろう? キーラ:えぇ。さて、何をしようかしらね。 アライブ:あっ!じゃあ私、「ビンゴ」ってやつがやりたいです!今日「Clown」の入り口の看板に大きく出されていましたから! キーラ:あぁ、そういえば今日はビンゴの日だったわね。 ヴェール:でも、それって確かこの部屋ではできないんだろう? キーラ:そうね。ビンゴブースに行って、登録しないとできないわ。このカジノのビンゴは規模が大きいから。 アライブ:そうなんですか!じゃあ、皆で行きませんか! ヴェール:うぇー、僕、ビンゴは完全に運頼みのゲームだしあんまり好きじゃないんだけど…。 キーラ:私もポーカーとかの方が好きなのよねぇ…。 アライブ:むぅぅー…。 シーセン:なら、俺が旅人と一緒にビンゴやってきますよ。二人はこの部屋で何かやっていてください。俺もビンゴやりたいですし、終わったら戻ってきますから。 キーラ:そうねぇ…。じゃあ、いったん二手に分かれましょうか。 ヴェール:ごめんね、アライブ君。お兄さん、ビンゴすぐ飽きちゃうんだよ~。 アライブ:むむむ…。まぁ、それなら仕方ないですね…。じゃあ、二人で行ってきます! : 0:そうして、アライブとシーセンは部屋から出てビンゴ会場へ向かった。 : ヴェール:行っちゃったね。さて、僕らは何をしようか。 キーラ:そうねぇ…。ここは一つ運要素を取っ払って、ダーツなんかどうかしら。 ヴェール:良いねぇ。で、何を賭ける? キーラ:じゃあここは古典的に、「敗者は勝者の命令を一つ聞かなくてはならない」というのは? ヴェール:乗った。絶対勝つ。 キーラ:うふふ。まあ、談笑しながら気軽にやりましょう。 : 0:キーラとヴェールのダーツ勝負が始まる。最初は黙々とプレイしていた二人だが、何回目かのキーラの手番にヴェールが口を開く。 : ヴェール:あのさ、キーラ。シーセンのことなんだけど。 キーラ:あぁ、あの騎士の人のこと? ヴェール:そう。…実はさ、彼、奥さんと子供を亡くしてるんだ。 キーラ:えっ、家族を…? ヴェール:うん…。不慮の事故だったらしいんだけどね。 キーラ:へぇ…。 ヴェール:彼は愛妻家だった。だから…それがとってもショックだったみたいでね。それ以来「GOAL」(ゴール)にも全然来てくれなくなったし、騎士団にも顔を出していなかったみたいなんだ。 キーラ:そりゃあ、大切な家族を急に失えば…人は生きる気力を失うでしょうね。 ヴェール:だから今日本当に久しぶりに会ったんだけど、元気そうでとても安心したんだ。 キーラ:ええ。何か生きる希望を見つけたような、そんなまなざしをしていたように私は感じたわ。 ヴェール:ふふ。本当、良かったよ。彼、面倒見もいいし。今頃アライブ君とも打ち解けている頃だろうさ。 キーラ:そう…ねっ! ヴェール:…わーお、見事なスリーインザブラック。 : 0:次の瞬間、いきなり何かの怒鳴るような咆哮がカジノに響く。 : キーラ:っ! 何っ…? ヴェール:今のは…まるで獣の遠吠えみたいな…。 : 0:そしてVIP室の扉を開け焦った様子のアライブが現れる。 : アライブ:キーラさんっ!! キーラ:アライブちゃん!何があったの…? アライブ:急に、大きな魔獣がカジノの扉を突き破ってきたんですっ…!! ヴェール:なんだって!?この街は森からも離れてるしそんなことあるはずないんだけど!? アライブ:でも大きい魔獣が急に襲ってきたんですっ!今シーセンさんが避難誘導と騎士団へ連絡をしてて、私はお二人を呼んできてほしいと言われてっ! キーラ:…はぁ。せっかくのオフだというのに…。ツイてないわ。 ヴェール:落ち着いてる場合か君!? キーラ:…わかったわ。私もすぐ向かうから、二人は騎士さんを手伝ってあげて。魔獣は危険だから、くれぐれも気を付けてね…! : 0:キーラはそういうと駆け足で部屋を出ていく。 : アライブ:キ、キーラさん!? ヴェール:大丈夫だよアライブ君、彼女には秘策がある。だから僕たちはシーセンの所に! アライブ:わ、わかりましたっ!! : 0:場面転換。カジノ「Clown」エントランス。 : アライブ:(M)突然現れたのは、大きな狼のような魔獣でした。魔獣が暴れ狂って、逃げ惑うカジノのお客さん…。なんとか全員を逃がすために、私は魔法使って、必死で魔獣の気を引く、けど…っ。 : シーセン:皆さん、早く逃げてください!怖いでしょうが、大きい声を出さないでください!魔獣を刺激してしまいます! ヴェール:皆、出口はこっちだ!急いで!今騎士団の応援が来るからね! アライブ:シーセンさん!私の魔法じゃ全然動き止められませんっ…! シーセン:構わない、できる限りその“水”で気を引いて被害を抑えてくれ! アライブ:む、無茶ですよ…!もう、限界です……。 : アライブ:(M)とうとう魔力に限界が来て、魔獣の気を引いていた水の球が壊れてしまう。そして次の瞬間、魔獣の狂った目線が…、私を捉える。 : アライブ:うっ…。はぁ、はぁ…。 ヴェール:まずいっ!…くっ! シーセン:アライブ!逃げろ! アライブ:ひぃっ……。 : アライブ:(M)一度大きく魔獣が吠え、私を睨む。足がすくみ、腰が抜ける。瞬間、魔獣がその鋭利なかぎ爪を大きく振りかぶり、私に向かって振り下ろされる…。 : アライブ:(M)その瞬間でした。 : 0: : キーラ:そこまでよ。 : 0: : アライブ:(M)バンッ!とカジノに銃声が響いたのです。魔獣を見やると、魔獣はかぎ爪のある腕を貫かれ苦悶に身体をのけぞらせていました。そこを見計らって、ヴェールさんが私を抱えてその場を離れます。 : シーセン:これは…!? ヴェール:ふぅ…。間に合ったみたいだね、“女帝”サマ!! キーラ:ちょっと。だからその呼び方はやめてって言ってるはずだけど? : アライブ:(M)そう言って現れたのは、マスケット銃を持ったキーラさん…! : ヴェール:うるさいなぁ。というか遅いよ!?あと少し遅かったらアライブ君ただじゃ済んでなかったからね!? アライブ:キ、キーラさん…! キーラ:悪かったわね。こんなもの久々に使うからどこに保管してたか忘れてたのよ。…さて。よくも私の大切なカジノを…友人を怖がらせてくれたわね。 : アライブ:(M)キーラさんの眼はまっすぐ魔獣を捉えて…、あれ、キーラさん、笑ってる? : キーラ:まぁ…。たまにはこういうのも悪くないけれど、ね。 : アライブ:(M)再びマスケット銃を構え、魔獣に放つキーラさん。弾は命中、痛みに魔獣は後ずさりますが、魔獣は再び大きく咆哮を放つと、キーラさんにそのかぎ爪を振りかぶる…っ! : アライブ:キーラさんっ! キーラ:ふふっ…。『風よ吹け』!! : アライブ:(M)もう一発、銃弾が放たれる。でも、それはただの銃弾ではありませんでした。「魔力で編んだ風を纏う」その弾丸は途轍もない勢いで魔獣の首元を貫き、魔獣は低いうなり声をあげながらゆっくりと床に倒れ伏す…! : キーラ:ふぅ…。まったく、本当にツイてないわ。 アライブ:す、すごい…。 シーセン:噂には聞き及んでいましたが…。これが“女帝”…。 ヴェール:あぁ。凄いだろ?っと…。ようやく騎士団が到着したみたいだね。 : 0:場面転換。少し崩れた「Clown」のエントランス。騎士団の調査風景を横目に話し合う四人。 : キーラ:はぁ…。本当よくもここまで荒してくれたわね。修理費用が馬鹿にならないわ。 アライブ:いやぁ…。どうなることかと思いましたよほんと!! ヴェール:というか、あの魔獣は本当になんだったんだ? シーセン:それについてなんですが。どうやら何者かに“洗脳魔法”を受けていた可能性が高いとその場の解析で。 キーラ:洗脳魔法?つまり、誰かがあの大きな魔獣を洗脳して暴れさせたってこと? シーセン:そういうことになります。 アライブ:も、もしかしてその魔獣を暴れさせた犯人って…。 シーセン:…例の連続殺人鬼である可能性があるな。 キーラ:でも、もしそうならようやく足掛かりを掴めそうじゃない? ヴェール:ポジティブに考えれば、ね。でももしそうだった場合、そいつはかなり危険だ。こんな大型の魔獣を暴れさせるなんて発想と技術、どう考えてもおかしいからね。 シーセン:それについてはこちらで引き続き調査を進めます。何かわかったらすぐに知らせますので。 アライブ:あっ!あと30分で日が変わっちゃいます…。 キーラ:あら、本当。悔しいけど、もう帰ったほうがいいわね…。 ヴェール:はぁー。ダーツ勝負はまたの機会にお預けかぁー。 キーラ:そうね。楽しみにしてるわ。 シーセン:では、魔獣との対峙の時に起こったことは全部俺が伝えておくので、皆さんはお気をつけておかえりください。 アライブ:えっと、帰る前に一つだけいいですか? シーセン:ん、なんだ? アライブ:私、ジェアルに来たばかりなのでまだこの街のこと分からなくて。なので良ければ、シーセンさんのお勧め観光スポットを教えてください! ヴェール:おぉ、いいねぇ。ほらシーセン。聞かれてるぞぉー? シーセン:ふむ…。そうだな…。隠れた名所ってことのない本当に有名な観光スポットだが、それでいいのなら一つお勧めはあるぞ。 アライブ:おぉ!ぜひ聞かせてください! シーセン:そこは、かの有名な「魔神殺しの英雄譚」にも登場する地龍の住処。 アライブ:っ…! シーセン:この街を古くから守る守護龍を讃える場所。 : シーセン:「王龍神殿」(おうりゅうしんでん)、なんてどうだ? : 0:To be continued.

0:陽はとうに沈み、星と月が空を照らす夜。「ジェアル」の街を二人の人物が歩いている。 : アライブ:ふふ~…! ヴェール:おや、上機嫌だね。そんなに楽しみなのかい? アライブ:はい!ずっと旅をしてきましたが、カジノに行くのは初めてなので! ヴェール:昼も言っていたね。あそこのカジノは大賑わいだから、きっと君の期待にも沿えるだろうさ。 アライブ:それは楽しみです!そういえば、セプンスさんは今日来ないんですか? ヴェール:あぁ、セプンスはあんまりカジノゲームが好きじゃないみたいでね。だからあんまり顔を出さないんだ。 アライブ:そうなんですか…。ちょっと残念です。一緒にゲームしたかったなぁ…。 ヴェール:さぁ、そうこうしているうちに着いたよ。ここがこの街の夜、一番賑わう場所さ。 : 0:二人はネオン灯の大きな建物の前で足を止めた。そこは外から見ても賑わっており、今も多くの人がその建物に入っていく。 : アライブ:おぉぉー…!このおっきい建物が…! ヴェール:相変わらず凄い賑わいだな…。まぁ、この街の人たちが大体ギャンブル好きってのもあるけど。 アライブ:あっ、ヴェールさん、キーラさん発見しました!あそこにいますよ!おーい! ヴェール:お。本当だね。…でも…あれ? : 0:カジノの前でキーラと誰かが話している。 : キーラ:…なるほど。そんなことが。 シーセン:はい。ですので、貴女も十分注意なさってください。 キーラ:ありがとうございます。でも私、街の人にそれを公開しないのは反対です。街の人たちのことを考えていなさすぎでは? シーセン:それに関しては俺も同感ですが、上の命令でして…。街の評判を下げない為なのです。それに、貴女の(実力なら街の人を守ること… アライブ:(被せる)おーい!キーラさーん! ヴェール:こらこら、話してるところに割り込まないの。 アライブ:あ、ごめんなさい……。 ヴェール:まったく、仕事にかかわる話かもしれないだろう?いやぁ、すみませんお取込み中に。 キーラ:あら。二人とも。ごめんなさいね、今ちょっと大事な話をしていたのよ。 シーセン:ん…?あぁ、ヴェール店長じゃないですか! ヴェール:あれ。誰かと思えばシーセン…!?久しぶりだね、大丈夫だったかい…? キーラ:ヴェールはこの人と知り合いだったのね。 アライブ:んー…?えっと…どなたなんです? ヴェール:彼はこの街を護る騎士団の一員さ。 シーセン:はい。「ジェアル守護騎士団」の騎士、シーセンです。それで…ヴェール店長。今少しお時間よろしいでしょうか。 ヴェール:ん?僕に何か用事でもあったのかい? シーセン:はい。今キーラさんに話していたことと同じ件なんですが…。 アライブ:私も聞きたいです!何かあったんですか…? シーセン:あぁ…申し訳ないが、ちょっとこの件は他の人には聞かせられない。 キーラ:でもそれって上からの命令でしょう?バレなければ私はいいと思うけど。 シーセン:し、しかし…。 キーラ:それに、この二人は私の大切な友人なの。そのことを知らずに危険な目に遭ってほしくないわ。 ヴェール:なんだかよくわからないけど、僕も公開したほうがいいと思うな。その表情から察するに、多分非常事態なんだろ。 シーセン:う…。…わかりました。では、そちらのご友人にもお話します。では、まず…。 キーラ:あぁ、ちょっと待って。長く立ち話をするのは嫌だから、とりあえずここに入らない?今日は確か貸し切りのVIP室が何部屋か開いていたから、そこを貸すわ。 アライブ:えぇっ!VIP室ー!? キーラ:そんな驚かなくてもういいじゃない。私、ここの支配人よ? シーセン:しかし、短い話にそんな場所をお借りしてしまって本当にいいんでしょうか…? キーラ:構わないわ。どうせ客は使わないんだし。 アライブ:VIP室…!どんななんだろう…! キーラ:別にそこでなにかをするわけではないけれどね。じゃあ、改めて。 : キーラ:私のカジノ「Clown」(クラウン)へようこそ。歓迎するわよ、不思議な団長さん。 : 0:カジノ「Clown」エントランス。煌びやかなエントランスと、賭け事を楽しむ人々の喧騒が響く。 : アライブ:おぉぉー!凄い、全部キラキラしてる…!凄い…! ヴェール:君はなんにでも目を輝かせるね…。 アライブ:はい!なにせ、「不可思議の調査団」の団長ですから! シーセン:え、調査団の団長…!? キーラ:たった独りの、ね。 ヴェール:この子、旅人さんで今日の昼にこの街に来たらしいんだけど、少し変わった子なんだよ~。 アライブ:『世界に蔓延る不可思議を見つけて楽しむ』、っていう団体です!団員は私だけです! シーセン:…それはもう団はおろか、調査ですらないのでは? キーラ:さ、それについては後で突っ込むとして…。VIP室はこっちよ。ついてきてくれるかしら。 : アライブ:うわぁ…。本当にたくさんの人がいますね…! ヴェール:この街の人はみんな、お金をかけるスリルが大好きなんだよ。 シーセン:それに、ここはカジノゲームならほぼすべて揃ってると言っても過言じゃない。 キーラ:お金がかからないゲームもあるから、あとで沢山遊ぶといいわ。 アライブ:はい!私、皆さんとも一緒にゲームがしたいです! キーラ:勿論いいわよ。ディーラーの仕事もないせっかくのオフだし。たまにはプレイヤーで楽しもうかしら。 : 0:そう話しているうちにVIP室に辿り着き、キーラは鍵を開ける。 : キーラ:さ、どうぞ。お客さま。ここが当カジノのVIP室になります。 ヴェール:ふふっ…。おお、前にも何回か来たことあるけど、やっぱり圧巻だね。 アライブ:わぁー!凄い凄い!!柔らかそうなソファに大きい水槽に、たくさんのジュースにお酒!それといろんなものがいっぱいだー! シーセン:ダーツにビリヤード、ルーレット台にスロットまで…。これは凄い。 キーラ:話が終わったら、あとでいくらでも遊んでいいわよ。 アライブ:あっ、そうでした!まずはお話でしたね! キーラ:重要な話だから、二人ともちゃんと聞きなさいよ? : アライブ:(M)そう言って、ソファに腰掛けるキーラさん。そうして、キーラさんがシーセンさんに目配せをすると、シーセンさんは少しこわばった表情で話し始めます。 : シーセン:では…お話させていただきます。まず結論から言いますと…。今、この街で連続殺人が起きています。 アライブ:へぇっ!?連続殺人!? シーセン:ああ。今、大体三日に一回くらいのペースでこの街の住人が殺されているんです。 ヴェール:…それって、もしかして君の…。 シーセン:あぁ…。その件とは関係ありません、大丈夫ですよ。…さて、ではもう少し詳しくお伝えします。殺人が行われるのはいつも夜の0時から5時あたり。標的となる人に共通点はない。既にわかっているだけでも二十人を超える犠牲が出ています。 ヴェール:二十人だって!?何でそんな大事になっているのに騎士団は大々的に知らせないんだ…? シーセン:それが…。「ジェアルの評判を下げない為」、「ここに訪れる旅人やこの街の人が怖がってしまう」といって、騎士団の上層部から最低限、街で賑わう場所の経営者たちだけに伝えろ、と…。 ヴェール:なるほど…。だからキーラや僕だけに話が来たんだね。 キーラ:でも何も知らない街の人たちはその殺人鬼にとって格好の餌食。このままじゃ被害が拡大するだけだと私もさっき言ったわ。 アライブ:そ、そんなことがここで起こってたなんて…。深夜は宿でじっとしてなきゃ……。 シーセン:それに調べたところ、この街の近郊でも同じような事件が起きていているようなんです。さらに不可解なことに、それもまったく同じ時間帯の犯行なんだそうで…。 ヴェール:…ジェアルだけの問題でもないってことか。本当に不気味な話だね。 キーラ:さらに恐ろしいのは…。最近は「Clown」から帰る途中の人を狙うことが多いそうよ。 アライブ:ひぇぇ…。怖いですよ……。 キーラ:大丈夫よ、日が変わる前に宿に戻ればいいだけだもの。今のところ室内の犯行はないんでしょう? シーセン:はい。…そして、ここからが重要なのですが…。被害者の遺体には何の損傷もないんです。 アライブ:損傷が、ない…?何かの魔法ってことですか…? シーセン:いいや。騎士団でいろいろと調べているんだが、物理的に致死に繋がる損傷はないし、魔法で凍らせたとか、焼かれたなんて言う傷はおろか、魔力の痕跡もない。つまり、死因が不明ってことだ。 ヴェール:……。 キーラ:それでいて、手がかりも何もないんだそうよ。 アライブ:じゃあどうしようもないじゃないですか! シーセン:そうだ…。だから三人とも、気を付けてください。騎士団も今精一杯調査を続けているので。 キーラ:本当、物騒ね…。だから二人とも、深夜はいつでも自分の身を魔法で守れるくらいの気を張っていた方がいいわ。 アライブ:うぅ…。この街に来るタイミング、悪かったですかね…? シーセン:ジェアルに来たばかりなのにこんな話を聞かせてしまって申し訳ないな、旅人。 アライブ:いえ、大丈夫です!この話を聞いていなかったら何も知らずに殺されていたかもしれませんし…。 ヴェール:…シーセン、規則違反だが、やっぱり騎士団に内緒でこのことは君の友人に伝えたほうがいい。…もう君も、大切な人を失いたくないだろう。 シーセン:……そう、ですね。ありがとうございます、店長。そうします。では、話は以上ですので、私はここで失礼します。 キーラ:ちょっと待って、騎士の人。せっかく「Clown」に足を運んだのだから、少し遊んでいかない? ヴェール:そうだよ、シーセン。今日はこの三人で遊ぼうと思ってたんだ。君も一緒にどうだい? アライブ:キーラさんもお昼に言ってましたが、遊ぶ人は多いほうが楽しいです! シーセン:で、でも…。いいんですか?ヴェールさん。 ヴェール:勿論。キーラも構わないだろう? キーラ:えぇ。さて、何をしようかしらね。 アライブ:あっ!じゃあ私、「ビンゴ」ってやつがやりたいです!今日「Clown」の入り口の看板に大きく出されていましたから! キーラ:あぁ、そういえば今日はビンゴの日だったわね。 ヴェール:でも、それって確かこの部屋ではできないんだろう? キーラ:そうね。ビンゴブースに行って、登録しないとできないわ。このカジノのビンゴは規模が大きいから。 アライブ:そうなんですか!じゃあ、皆で行きませんか! ヴェール:うぇー、僕、ビンゴは完全に運頼みのゲームだしあんまり好きじゃないんだけど…。 キーラ:私もポーカーとかの方が好きなのよねぇ…。 アライブ:むぅぅー…。 シーセン:なら、俺が旅人と一緒にビンゴやってきますよ。二人はこの部屋で何かやっていてください。俺もビンゴやりたいですし、終わったら戻ってきますから。 キーラ:そうねぇ…。じゃあ、いったん二手に分かれましょうか。 ヴェール:ごめんね、アライブ君。お兄さん、ビンゴすぐ飽きちゃうんだよ~。 アライブ:むむむ…。まぁ、それなら仕方ないですね…。じゃあ、二人で行ってきます! : 0:そうして、アライブとシーセンは部屋から出てビンゴ会場へ向かった。 : ヴェール:行っちゃったね。さて、僕らは何をしようか。 キーラ:そうねぇ…。ここは一つ運要素を取っ払って、ダーツなんかどうかしら。 ヴェール:良いねぇ。で、何を賭ける? キーラ:じゃあここは古典的に、「敗者は勝者の命令を一つ聞かなくてはならない」というのは? ヴェール:乗った。絶対勝つ。 キーラ:うふふ。まあ、談笑しながら気軽にやりましょう。 : 0:キーラとヴェールのダーツ勝負が始まる。最初は黙々とプレイしていた二人だが、何回目かのキーラの手番にヴェールが口を開く。 : ヴェール:あのさ、キーラ。シーセンのことなんだけど。 キーラ:あぁ、あの騎士の人のこと? ヴェール:そう。…実はさ、彼、奥さんと子供を亡くしてるんだ。 キーラ:えっ、家族を…? ヴェール:うん…。不慮の事故だったらしいんだけどね。 キーラ:へぇ…。 ヴェール:彼は愛妻家だった。だから…それがとってもショックだったみたいでね。それ以来「GOAL」(ゴール)にも全然来てくれなくなったし、騎士団にも顔を出していなかったみたいなんだ。 キーラ:そりゃあ、大切な家族を急に失えば…人は生きる気力を失うでしょうね。 ヴェール:だから今日本当に久しぶりに会ったんだけど、元気そうでとても安心したんだ。 キーラ:ええ。何か生きる希望を見つけたような、そんなまなざしをしていたように私は感じたわ。 ヴェール:ふふ。本当、良かったよ。彼、面倒見もいいし。今頃アライブ君とも打ち解けている頃だろうさ。 キーラ:そう…ねっ! ヴェール:…わーお、見事なスリーインザブラック。 : 0:次の瞬間、いきなり何かの怒鳴るような咆哮がカジノに響く。 : キーラ:っ! 何っ…? ヴェール:今のは…まるで獣の遠吠えみたいな…。 : 0:そしてVIP室の扉を開け焦った様子のアライブが現れる。 : アライブ:キーラさんっ!! キーラ:アライブちゃん!何があったの…? アライブ:急に、大きな魔獣がカジノの扉を突き破ってきたんですっ…!! ヴェール:なんだって!?この街は森からも離れてるしそんなことあるはずないんだけど!? アライブ:でも大きい魔獣が急に襲ってきたんですっ!今シーセンさんが避難誘導と騎士団へ連絡をしてて、私はお二人を呼んできてほしいと言われてっ! キーラ:…はぁ。せっかくのオフだというのに…。ツイてないわ。 ヴェール:落ち着いてる場合か君!? キーラ:…わかったわ。私もすぐ向かうから、二人は騎士さんを手伝ってあげて。魔獣は危険だから、くれぐれも気を付けてね…! : 0:キーラはそういうと駆け足で部屋を出ていく。 : アライブ:キ、キーラさん!? ヴェール:大丈夫だよアライブ君、彼女には秘策がある。だから僕たちはシーセンの所に! アライブ:わ、わかりましたっ!! : 0:場面転換。カジノ「Clown」エントランス。 : アライブ:(M)突然現れたのは、大きな狼のような魔獣でした。魔獣が暴れ狂って、逃げ惑うカジノのお客さん…。なんとか全員を逃がすために、私は魔法使って、必死で魔獣の気を引く、けど…っ。 : シーセン:皆さん、早く逃げてください!怖いでしょうが、大きい声を出さないでください!魔獣を刺激してしまいます! ヴェール:皆、出口はこっちだ!急いで!今騎士団の応援が来るからね! アライブ:シーセンさん!私の魔法じゃ全然動き止められませんっ…! シーセン:構わない、できる限りその“水”で気を引いて被害を抑えてくれ! アライブ:む、無茶ですよ…!もう、限界です……。 : アライブ:(M)とうとう魔力に限界が来て、魔獣の気を引いていた水の球が壊れてしまう。そして次の瞬間、魔獣の狂った目線が…、私を捉える。 : アライブ:うっ…。はぁ、はぁ…。 ヴェール:まずいっ!…くっ! シーセン:アライブ!逃げろ! アライブ:ひぃっ……。 : アライブ:(M)一度大きく魔獣が吠え、私を睨む。足がすくみ、腰が抜ける。瞬間、魔獣がその鋭利なかぎ爪を大きく振りかぶり、私に向かって振り下ろされる…。 : アライブ:(M)その瞬間でした。 : 0: : キーラ:そこまでよ。 : 0: : アライブ:(M)バンッ!とカジノに銃声が響いたのです。魔獣を見やると、魔獣はかぎ爪のある腕を貫かれ苦悶に身体をのけぞらせていました。そこを見計らって、ヴェールさんが私を抱えてその場を離れます。 : シーセン:これは…!? ヴェール:ふぅ…。間に合ったみたいだね、“女帝”サマ!! キーラ:ちょっと。だからその呼び方はやめてって言ってるはずだけど? : アライブ:(M)そう言って現れたのは、マスケット銃を持ったキーラさん…! : ヴェール:うるさいなぁ。というか遅いよ!?あと少し遅かったらアライブ君ただじゃ済んでなかったからね!? アライブ:キ、キーラさん…! キーラ:悪かったわね。こんなもの久々に使うからどこに保管してたか忘れてたのよ。…さて。よくも私の大切なカジノを…友人を怖がらせてくれたわね。 : アライブ:(M)キーラさんの眼はまっすぐ魔獣を捉えて…、あれ、キーラさん、笑ってる? : キーラ:まぁ…。たまにはこういうのも悪くないけれど、ね。 : アライブ:(M)再びマスケット銃を構え、魔獣に放つキーラさん。弾は命中、痛みに魔獣は後ずさりますが、魔獣は再び大きく咆哮を放つと、キーラさんにそのかぎ爪を振りかぶる…っ! : アライブ:キーラさんっ! キーラ:ふふっ…。『風よ吹け』!! : アライブ:(M)もう一発、銃弾が放たれる。でも、それはただの銃弾ではありませんでした。「魔力で編んだ風を纏う」その弾丸は途轍もない勢いで魔獣の首元を貫き、魔獣は低いうなり声をあげながらゆっくりと床に倒れ伏す…! : キーラ:ふぅ…。まったく、本当にツイてないわ。 アライブ:す、すごい…。 シーセン:噂には聞き及んでいましたが…。これが“女帝”…。 ヴェール:あぁ。凄いだろ?っと…。ようやく騎士団が到着したみたいだね。 : 0:場面転換。少し崩れた「Clown」のエントランス。騎士団の調査風景を横目に話し合う四人。 : キーラ:はぁ…。本当よくもここまで荒してくれたわね。修理費用が馬鹿にならないわ。 アライブ:いやぁ…。どうなることかと思いましたよほんと!! ヴェール:というか、あの魔獣は本当になんだったんだ? シーセン:それについてなんですが。どうやら何者かに“洗脳魔法”を受けていた可能性が高いとその場の解析で。 キーラ:洗脳魔法?つまり、誰かがあの大きな魔獣を洗脳して暴れさせたってこと? シーセン:そういうことになります。 アライブ:も、もしかしてその魔獣を暴れさせた犯人って…。 シーセン:…例の連続殺人鬼である可能性があるな。 キーラ:でも、もしそうならようやく足掛かりを掴めそうじゃない? ヴェール:ポジティブに考えれば、ね。でももしそうだった場合、そいつはかなり危険だ。こんな大型の魔獣を暴れさせるなんて発想と技術、どう考えてもおかしいからね。 シーセン:それについてはこちらで引き続き調査を進めます。何かわかったらすぐに知らせますので。 アライブ:あっ!あと30分で日が変わっちゃいます…。 キーラ:あら、本当。悔しいけど、もう帰ったほうがいいわね…。 ヴェール:はぁー。ダーツ勝負はまたの機会にお預けかぁー。 キーラ:そうね。楽しみにしてるわ。 シーセン:では、魔獣との対峙の時に起こったことは全部俺が伝えておくので、皆さんはお気をつけておかえりください。 アライブ:えっと、帰る前に一つだけいいですか? シーセン:ん、なんだ? アライブ:私、ジェアルに来たばかりなのでまだこの街のこと分からなくて。なので良ければ、シーセンさんのお勧め観光スポットを教えてください! ヴェール:おぉ、いいねぇ。ほらシーセン。聞かれてるぞぉー? シーセン:ふむ…。そうだな…。隠れた名所ってことのない本当に有名な観光スポットだが、それでいいのなら一つお勧めはあるぞ。 アライブ:おぉ!ぜひ聞かせてください! シーセン:そこは、かの有名な「魔神殺しの英雄譚」にも登場する地龍の住処。 アライブ:っ…! シーセン:この街を古くから守る守護龍を讃える場所。 : シーセン:「王龍神殿」(おうりゅうしんでん)、なんてどうだ? : 0:To be continued.