台本概要

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タイトル 【ジェアル】王龍はかく語りき
作者名 アール/ドラゴス  (@Dragoss_R)
ジャンル ファンタジー
演者人数 3人用台本(不問3)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 古の王龍は目を覚ます。
自らに捧げられた堂々たる語りによって。
守護龍讃頌。八百年前の大地。英雄の授ける奇跡。
数百年後の世界で、その龍は何を語る。

「幸せとは、案外すぐ近くに転がっているものよ。」


『歴史の旅人とジェアルの神々』Episode:3

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
アライブ 不問 64 自称「不可思議の調査団」団長。 ジェアルに辿り着いた旅人。
ゼルム 不問 49 遥か昔、大地を統べた龍。 思いのほか口調が軽い。
セプンス 不問 53 放浪の旅芸人。 三味線を使い、芸事百般を語り聞かせる。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:小鳥が静かにさえずる、空気の澄みきった朝。「ジェアル」の街を少し出て、丘を上る人物が二人。 0: セプンス:手前がこうしてアライブ殿と二人きりで歩くというのは、そういえば初めてでありまするな。 アライブ:そうですね!でもまさか、セプンスさんが「王龍神殿」(おうりゅうしんでん)に連れて行ってくれるとは思いませんでした! セプンス:いえいえー。手前もかの神殿は未だ訪れたことがなかったのでありまする。なのでこの機会に親睦を深めるためにも旅人同士、自由気ままに観光をしてみたかったのでありまするよ。 アライブ:私もセプンスさんとお話ししたかったので、神殿の観光、とっても楽しみです! アライブ:そういえば私あんまり知らないんですけど、王龍神殿の龍にはどんな伝説が残っているんですか? セプンス:ふむ…。手前、それについては神殿についてから話すのが良いと心得まする。 アライブ:…? あぁ、まぁ確かになんか直に伝説を感じてるーって感じになりますもんね! セプンス:(小声で)…まぁ、アライブ殿は本当に今より伝説を見ることとなるのでありまするが…。 アライブ:え?今なんて…? セプンス:なんでもないでありまするー。ささ、もうじき到着でありまするよー。 アライブ:…? は、はーい! : 0:場面転換。ジェアル北部、「王龍神殿」。少しコケやツタが生えた神殿の前で二人は足を止める。 : アライブ:わぁー!ここが王龍神殿!当たり前かもですが、なんだか神秘的ですー!! セプンス:この地を守り続ける地龍の住処とされている場所。やはり神々しさがあり申す。 アライブ:…伝説なら…ここに、「英雄譚」に出てくる「地龍」(ちりゅう)がいる…。 セプンス:おや、よくご存じで。然り。今ここに伝わる「王龍」とは、 セプンス:「魔神殺しの英雄譚」に描写されている「地龍」のことでありまする。…さて。 アライブ:…。…あっ、セプンスさん!なんか崩れてる柱の所にかっこいい紋章がー…ってぇ…。セプンスさん? : 0:いつのまにやらセプンスは背負っている荷物から三味線を取り出している。 : アライブ:セプンスさん?なぜ三味線をー? セプンス:はて、なにゆえでありましょうか…。今、神と肩を並べし龍の住処を前にしているからなのか、手前、なぜだかうずうずしてしまって、一つ語りを披露したくて仕方がありませぬ。 アライブ:えっ!今この場で語りを…!? セプンス:然り。この神殿と王龍に捧げたいのでありまする。アライブ殿、聴いていただいてもよろしいでありまするか? アライブ:あぇー、なんて唐突な…。でも、そういうことなら勿論!私、セプンスさんの語りを一回聴いてみたかったんですよー!だから、是非!拝聴させていただきます!! セプンス:感謝の極み。では…参りまする。 : 0:セプンスは一度強く三味線を鳴らすと語り始める。 : セプンス:遠からんものは音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! : セプンス:此度の語りは守護龍讃頌(しゅごりゅうさんしょう)! : セプンス:かつて神々と共に魔を滅ぼし、古(いにしえ)より人間を護りし大地の化身! : セプンス:勇猛(ゆうもう)なるその龍の名は、王龍「ゼルム・アーガンド」! : セプンス:さあさあ、ご静聴あれ!偉大なる物語の開幕でありまするー! : 0:場面転換。セプンスの壮大な語りをアライブが目を輝かせて聴いている。 : 0:そしてセプンスは語り終える。 : セプンス:大地の守護者、今は王龍神殿にて眠る!再びジェアルの大地に脅威が蔓延るとき、 : セプンス:かの龍は再び現れ、神々と共に世界を希望で照らすであろう! : セプンス:これにて大団円でありまするー。 アライブ:おぉぉーー…!! : 0:アライブは盛大な拍手を送る。 : アライブ:語ってるセプンスさんとってもカッコよかったし、言葉がなんかこう、響いている感じがして!感動しました! セプンス:ふふ。お褒め頂き光栄でありまするー。 ゼルム:今、我を…。 アライブ:えっ…?今の声、セプンスさんですか? セプンス:はて、なんのことでありまするー? アライブ:だ、(だって今変な声が! ゼルム:(被せる)今、我を讃えたか…? アライブ:こ、この声です! セプンス:おや…。確かに今、手前は王龍讃頌の語りを披露いたしたが。 ゼルム:はははは…。やたらと響く声と音色に目を覚ましてみれば…。我へ捧ぐ語りであったとは。それにしても…何やら懐かしい匂いのする客じゃのぅ。 アライブ:だ、誰なんですか!ずっと声だけ聞こえてきます! ゼルム:おや、我としたことが。まだ姿を見せておらんかったな。では、カッコよく登場するとしよう! : 0:謎の声がそう言うと、神殿の前にどこからか謎の光が集まっていく。 : アライブ:うぇぇ!?なんですかこの光!?な、なにが起こってるんですかー!? セプンス:……。 ゼルム:はっはっはー!人の子よ、大地の化身たる我が姿を見るがよい! : 0:光の塊は大きくなっていき、空に神々しく浮かぶ。そしてその光は弾け、光があった場所には、大きな白色の龍が佇んでいた。 : アライブ:えぇー!?もしかしなくても、あ、あなたは……! ゼルム:ようやく察したか。人の子よ。だがこうしてお主らの前に出てきたのだ、我から名乗らせてもらおう。我は「ゼルム・アーガンド」。このジェアルの大地を古くより護る守護者である。 アライブ:話す白色の大きな龍…。伝説に伝わる通りの王龍です…。神々しい…! セプンス:しかし、王龍は脅威が来るその日まで眠ると伝わっているはず。なにゆえあなた様は起きていらっしゃるのでありまするか? アライブ:え、なんかセプンスさん凄い冷静じゃないですか!? ゼルム:むぅ、そんなこと言われてものぅ。我、目覚めたのついさっきであるし…。もしかすれば、なにかこの地にまた、脅威が迫っているのやもしれぬな。 アライブ:脅威!?何が起こるんですか! ゼルム:それは我にもわからんよ。だって、我さっき起きたし。 アライブ:あっ、そうでした…。というかなんかノリ軽くありません!? ゼルム:そんなことはないぞ?いつも我こんな感じじゃぞ? アライブ:やっぱり軽いですよね!? セプンス:いったんそれはさておき、王龍殿。せっかく会えたのです、手前はあなた様ともう少しお話がしとうござまするが、いかに? ゼルム:全然構わぬぞー。我も暇つぶしがしたい。 アライブ:えぇぇ……。 ゼルム:しかしあれじゃの、この姿だともし他の人の子に見られれば驚くであろうし、心なしかそっちのツッコミ役も話しにくそうであるな。 アライブ:私のことツッコミ役って言うのやめてもらってもいいです!? ゼルム:どれ、しばし待っておれ。 : アライブ:(M)ゼルムさんの身体が再び神々しい光に包まれていきます。そして再び光が弾けたとき…、そこには白髪の人間が立っていました。…え、ニンゲン? : ゼルム:これなら話しやすかろう。よし! アライブ:なんで人の姿になれるんですかぁーっ!? ゼルム:我は大地によって生まれ人を愛するもの。ならば、我が人の形をとることくらい朝飯前じゃ! セプンス:おぉ、理論は謎でありまするが、さすがは王龍ゼルム殿でありまするー。 ゼルム:…我が言うのもなんだけどお主、本当に我を見ても驚かぬのぅ。 セプンス:ふふ。手前は旅芸人でありますゆえ、世界に蔓延るたくさんのものを見てまいりました。ですので、伝説の龍が目の前に現れたくらいでは驚きませぬ。 ゼルム:なんというか…。肝の据わったやつじゃのぅ。 アライブ:えっと、それで…。セプンスさん。王龍さんと何を話すんです? セプンス:手前だけではありませぬ。伝説の龍が目の前にいるのです。自分の知りたいことを存分に聞かれれば良いのでありまする。 アライブ:な、なるほど…。 ゼルム:別に我、全知全能というわけではあらぬからな? セプンス:勿論、心得ておりまする。…とは言ったはいいものの、ではまず何から話したものでありましょうか。 アライブ:じゃ、じゃあ!私から先にいいですか! セプンス:どうぞどうぞ。 ゼルム:なんじゃ。ツッコミ役。 アライブ:だからツッコミ役じゃなくて、「アライブ」ですーっ! ゼルム:ふむ、アライブか…。覚えたぞ、ツッコミ役。 アライブ:戻ってるじゃないですか!?もう…。えっとですね。今、ジェアルの街で連続殺人が起きているんです。 ゼルム:……ほぅ。連続殺人とな。 セプンス:あぁ、キーラ殿やヴェール殿と一緒に話してくれた話でありまするな。 アライブ:はい。ジェアルを守護する龍であるゼアルさんにはやっぱり話しておくべきかと思いまして…。 ゼルム:なんと…無垢なる人の子らが無慈悲に殺されているというのか…。許せぬ。アライブよ、詳しく聞かせろ。 アライブ:は、はい!えっと、まずそれが起こる時間帯は…。 : 0:アライブとセプンスは王龍に街で起こる事件のことを全て伝える。 : セプンス:…と、言う感じでありまするな。 ゼルム:死体にまったく外傷がない…か。……まさかな。 アライブ:何か心当たりがあるんですか? ゼルム:いや、ただの憶測に過ぎぬが…。八百年前に起こったこととよく似ているものでのぅ。 アライブ:は、八百年前って…!? セプンス:…「魔神殺しの英雄譚」と同じでありまするな。 ゼルム:そうじゃ。そして、八百年前は一か月で五百もの人の子が殺された。 アライブ:五百!? セプンス:…して、それの犯人は誰だったので? ゼルム:…悪魔、「アシュタレト」じゃとされておる。 アライブ:アシュタレトって、それもあの…!? セプンス:「魔神殺しの英雄譚」によれば、魔神「ラムナトス」を復活させた張本人。 ゼルム:うむ。奴は人の魂だけを抜き取り、人の機能の全てを停止させることができる。 セプンス:…今さらにはなり申すが、あの「魔神殺しの英雄譚」は実話なのでありまするな。 ゼルム:勿論。ゆえにこのように我は存在しておるし、神々も魔神殺しの英雄も実在する。 セプンス:……。 アライブ:……! ゼルム:しかし、まぁ。我もいうて数百年眠っておったから、奴らが今何をしているかとかは知らんのじゃがな。 アライブ:で、でも…。もし今回の殺人もアシュタレトが引き起こしているのだとしたら、目的は…。 ゼルム:それはわからぬ。しかし、その事件はあの魔神招来の少し前に起こった。 セプンス:つまるところ、古(いにしえ)の魔神と関係があるやもしれぬ、と。 ゼルム:そうじゃ。しかし、まだ決めつけるには早い。今の証拠もそろってない状態でこの話を続けても野暮じゃろ。 アライブ:それも、そう…ですね。 ゼルム:その件、把握したぞ。では、他に何かあるか? セプンス:では、これは手前から一つ。先ほど、「英雄譚」の人物がどこにいるかはわからない、と仰りましたが、「英雄」がどこにいるかの心当たりなどがあるかは、如何に? アライブ:え、英雄…。 ゼルム:…すまぬ、まったくないわ。お人好しのあいつのことじゃ、この世界のどこかに溶け込んでおるのではないかのぅ。 セプンス:ふむ。なるほど…。いや、答えていただき誠に感謝でありまする。 ゼルム:しかし、何故そんなことを聞くのじゃ?その英雄に会いたいのか? セプンス:然り。手前はしがない旅芸人でありますれば、「英雄譚」の人物が実在するとわかれば、一度お会いし話してみたいと思ってしまうのでありまするー。 ゼルム:ほぉう。やはりお主、変わり者であるな。 アライブ:でも、私もその英雄さんには会ってみたいと思います!何者なのか、とかも聞いてみたいですし!…って、そうじゃないですか!ゼルムさんに聞けばいいんです!ゼルムさん、あの英雄は何者なんですか! ゼルム:…あー、それについては我も知らんわ。 アライブ:…えぇ? ゼルム:あれには語られておらぬが、我あの戦いのあと受けた傷のせいで気絶しておったからのぅ。起きたら英雄はもういなくなっておったし。 アライブ:あぁ…そうだったんですね…。 セプンス:手前もそのことは聞いてみとうございましたゆえ、少し残念でありまするー…。 ゼルム:ははは、すまんのぅ。まあでも、神の類であることは間違いないじゃろうな。あの神秘的な光の大剣と、神でも届かぬ邪悪を得た魔神を一撃で葬る力。もしやしたら、神以上の存在なのかもしれぬ。 アライブ:やっぱり、あの英雄はそれほどまでに凄いんですね…。 セプンス:…アライブ殿。これは興味本位でありまするが、かの英雄は“奇跡を授ける”権能を持つと言われておりまする。 アライブ:っ……。 セプンス:もし奇跡を授かれるなら、アライブ殿はいったい、何を望むのでありましょう? アライブ:…そうですね…。うーん…。…急に言われても分からないですかね。そういうセプンスさんは? セプンス:手前はただの旅芸人。芸事百般(げいじひゃっぱん)が少しでも上手くなり、お客人方の笑顔が見れるだけで十分でありまするー。 ゼルム:ははは!そっちの芸人は随分と客を楽しませるのが好きみたいじゃな! セプンス:然り。なにせ、客人方の笑みこそ手前の生きる糧でありますゆえ―。 アライブ:そこまで言える職業につけていて、語りも一流だなんて…。旅芸人は天職ですね! セプンス:ふふふ。感謝の極み。 ゼルム:でもまぁ、その英雄の奇跡に懸ける望みがなんであろうと、大抵は自力で何とかできるもの。ゆえに我は、気づいていないだけで幸せやその者の求めるものは案外すぐ近くに転がっていたりもするものじゃと思う。 セプンス:なるほど。良い言葉でありまするな。 アライブ:…。 : 0:「ぐぅぅ…。」 : アライブ:…あぅ。 セプンス:おや、今の腹の音はアライブ殿でありましたか。 アライブ:…そういえば、今日起きるの遅くて…。朝ごはん抜かして来たんでした…。 ゼルム:おいおい、まだ育ちざかりなんじゃから、ちゃあんと食わなきゃいかんぞ? セプンス:ふむ…。では、名残惜しいですが一度街に戻って食事をすると致しましょう。 アライブ:ほんと、申し訳ないです…。 ゼルム:おっ、行ってしまうのか、人の子らよ。 アライブ:はい…。あっ、でも!食べ終わったら戻ってきます!まだ私、ゼルムさんと話したいですし! ゼルム:それなら、その必要はないぞ。 アライブ:えっ? セプンス:それはなにゆえでありまするか? ゼルム:そりゃあ勿論、我も久々にジェアルの街に行ってみようと思うからじゃよ! アライブ:えぇっ!?ゼルムさんが!?いいんですか、だってあなたはこの神殿の…! ゼルム:大丈夫じゃよ。だって言うなればここは我の家。我専用の家に家主が居ようが居なかろうが関係あるまい?それに我だって、久々に人の子らの営みを見たいのじゃよ。 アライブ:まぁ、それでゼルムさんがいいならいいですけど…。 ゼルム:じゃが、お主ら。くれぐれも我が王龍であることをバラすなよ?驚かれてしまうからの。 セプンス:勿論でありまする。 ゼルム:よろしい。久々に見る人の子たち…楽しみじゃのぅー…! アライブ:じゃあ、一緒にジェアルの街に戻りましょうー! : 0:場面転換。ジェアルの喫茶店で三人が話している。 : ゼルム:いやぁ、人の子らの作る食べ物は美味いのぅ!これには我も舌鼓じゃ! アライブ:ジェアルの料理は冗談抜きで旅をしてきたどの町の料理よりもおいしいです…! セプンス:同意見でありまする。この街の物は何を食べても絶品であり申す。 ゼルム:本当じゃのぅ!我、もっと食いたくなって…んぅ? : 0:喫茶店の店員が近づいてくる。 : アライブ:あれ、店員さん?どうしました? : アライブ:(M)『お客さんからあなたにこれを渡すようにと頼まれて。』。そう言って店員さんは、私に綺麗な紙を渡してくれました。 : ゼルム:あん?なんじゃぁ、そりゃ。 セプンス:見たところ伝言のメモのようなものとお見受けしまするが…。 アライブ:あっ、本当だ。何か書いてある…。 : アライブ:『明後日の午後三時、「ホルス探偵事務所」で二人と共にお待ちしています。』……? : 0:To be continued.

0:小鳥が静かにさえずる、空気の澄みきった朝。「ジェアル」の街を少し出て、丘を上る人物が二人。 0: セプンス:手前がこうしてアライブ殿と二人きりで歩くというのは、そういえば初めてでありまするな。 アライブ:そうですね!でもまさか、セプンスさんが「王龍神殿」(おうりゅうしんでん)に連れて行ってくれるとは思いませんでした! セプンス:いえいえー。手前もかの神殿は未だ訪れたことがなかったのでありまする。なのでこの機会に親睦を深めるためにも旅人同士、自由気ままに観光をしてみたかったのでありまするよ。 アライブ:私もセプンスさんとお話ししたかったので、神殿の観光、とっても楽しみです! アライブ:そういえば私あんまり知らないんですけど、王龍神殿の龍にはどんな伝説が残っているんですか? セプンス:ふむ…。手前、それについては神殿についてから話すのが良いと心得まする。 アライブ:…? あぁ、まぁ確かになんか直に伝説を感じてるーって感じになりますもんね! セプンス:(小声で)…まぁ、アライブ殿は本当に今より伝説を見ることとなるのでありまするが…。 アライブ:え?今なんて…? セプンス:なんでもないでありまするー。ささ、もうじき到着でありまするよー。 アライブ:…? は、はーい! : 0:場面転換。ジェアル北部、「王龍神殿」。少しコケやツタが生えた神殿の前で二人は足を止める。 : アライブ:わぁー!ここが王龍神殿!当たり前かもですが、なんだか神秘的ですー!! セプンス:この地を守り続ける地龍の住処とされている場所。やはり神々しさがあり申す。 アライブ:…伝説なら…ここに、「英雄譚」に出てくる「地龍」(ちりゅう)がいる…。 セプンス:おや、よくご存じで。然り。今ここに伝わる「王龍」とは、 セプンス:「魔神殺しの英雄譚」に描写されている「地龍」のことでありまする。…さて。 アライブ:…。…あっ、セプンスさん!なんか崩れてる柱の所にかっこいい紋章がー…ってぇ…。セプンスさん? : 0:いつのまにやらセプンスは背負っている荷物から三味線を取り出している。 : アライブ:セプンスさん?なぜ三味線をー? セプンス:はて、なにゆえでありましょうか…。今、神と肩を並べし龍の住処を前にしているからなのか、手前、なぜだかうずうずしてしまって、一つ語りを披露したくて仕方がありませぬ。 アライブ:えっ!今この場で語りを…!? セプンス:然り。この神殿と王龍に捧げたいのでありまする。アライブ殿、聴いていただいてもよろしいでありまするか? アライブ:あぇー、なんて唐突な…。でも、そういうことなら勿論!私、セプンスさんの語りを一回聴いてみたかったんですよー!だから、是非!拝聴させていただきます!! セプンス:感謝の極み。では…参りまする。 : 0:セプンスは一度強く三味線を鳴らすと語り始める。 : セプンス:遠からんものは音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! : セプンス:此度の語りは守護龍讃頌(しゅごりゅうさんしょう)! : セプンス:かつて神々と共に魔を滅ぼし、古(いにしえ)より人間を護りし大地の化身! : セプンス:勇猛(ゆうもう)なるその龍の名は、王龍「ゼルム・アーガンド」! : セプンス:さあさあ、ご静聴あれ!偉大なる物語の開幕でありまするー! : 0:場面転換。セプンスの壮大な語りをアライブが目を輝かせて聴いている。 : 0:そしてセプンスは語り終える。 : セプンス:大地の守護者、今は王龍神殿にて眠る!再びジェアルの大地に脅威が蔓延るとき、 : セプンス:かの龍は再び現れ、神々と共に世界を希望で照らすであろう! : セプンス:これにて大団円でありまするー。 アライブ:おぉぉーー…!! : 0:アライブは盛大な拍手を送る。 : アライブ:語ってるセプンスさんとってもカッコよかったし、言葉がなんかこう、響いている感じがして!感動しました! セプンス:ふふ。お褒め頂き光栄でありまするー。 ゼルム:今、我を…。 アライブ:えっ…?今の声、セプンスさんですか? セプンス:はて、なんのことでありまするー? アライブ:だ、(だって今変な声が! ゼルム:(被せる)今、我を讃えたか…? アライブ:こ、この声です! セプンス:おや…。確かに今、手前は王龍讃頌の語りを披露いたしたが。 ゼルム:はははは…。やたらと響く声と音色に目を覚ましてみれば…。我へ捧ぐ語りであったとは。それにしても…何やら懐かしい匂いのする客じゃのぅ。 アライブ:だ、誰なんですか!ずっと声だけ聞こえてきます! ゼルム:おや、我としたことが。まだ姿を見せておらんかったな。では、カッコよく登場するとしよう! : 0:謎の声がそう言うと、神殿の前にどこからか謎の光が集まっていく。 : アライブ:うぇぇ!?なんですかこの光!?な、なにが起こってるんですかー!? セプンス:……。 ゼルム:はっはっはー!人の子よ、大地の化身たる我が姿を見るがよい! : 0:光の塊は大きくなっていき、空に神々しく浮かぶ。そしてその光は弾け、光があった場所には、大きな白色の龍が佇んでいた。 : アライブ:えぇー!?もしかしなくても、あ、あなたは……! ゼルム:ようやく察したか。人の子よ。だがこうしてお主らの前に出てきたのだ、我から名乗らせてもらおう。我は「ゼルム・アーガンド」。このジェアルの大地を古くより護る守護者である。 アライブ:話す白色の大きな龍…。伝説に伝わる通りの王龍です…。神々しい…! セプンス:しかし、王龍は脅威が来るその日まで眠ると伝わっているはず。なにゆえあなた様は起きていらっしゃるのでありまするか? アライブ:え、なんかセプンスさん凄い冷静じゃないですか!? ゼルム:むぅ、そんなこと言われてものぅ。我、目覚めたのついさっきであるし…。もしかすれば、なにかこの地にまた、脅威が迫っているのやもしれぬな。 アライブ:脅威!?何が起こるんですか! ゼルム:それは我にもわからんよ。だって、我さっき起きたし。 アライブ:あっ、そうでした…。というかなんかノリ軽くありません!? ゼルム:そんなことはないぞ?いつも我こんな感じじゃぞ? アライブ:やっぱり軽いですよね!? セプンス:いったんそれはさておき、王龍殿。せっかく会えたのです、手前はあなた様ともう少しお話がしとうござまするが、いかに? ゼルム:全然構わぬぞー。我も暇つぶしがしたい。 アライブ:えぇぇ……。 ゼルム:しかしあれじゃの、この姿だともし他の人の子に見られれば驚くであろうし、心なしかそっちのツッコミ役も話しにくそうであるな。 アライブ:私のことツッコミ役って言うのやめてもらってもいいです!? ゼルム:どれ、しばし待っておれ。 : アライブ:(M)ゼルムさんの身体が再び神々しい光に包まれていきます。そして再び光が弾けたとき…、そこには白髪の人間が立っていました。…え、ニンゲン? : ゼルム:これなら話しやすかろう。よし! アライブ:なんで人の姿になれるんですかぁーっ!? ゼルム:我は大地によって生まれ人を愛するもの。ならば、我が人の形をとることくらい朝飯前じゃ! セプンス:おぉ、理論は謎でありまするが、さすがは王龍ゼルム殿でありまするー。 ゼルム:…我が言うのもなんだけどお主、本当に我を見ても驚かぬのぅ。 セプンス:ふふ。手前は旅芸人でありますゆえ、世界に蔓延るたくさんのものを見てまいりました。ですので、伝説の龍が目の前に現れたくらいでは驚きませぬ。 ゼルム:なんというか…。肝の据わったやつじゃのぅ。 アライブ:えっと、それで…。セプンスさん。王龍さんと何を話すんです? セプンス:手前だけではありませぬ。伝説の龍が目の前にいるのです。自分の知りたいことを存分に聞かれれば良いのでありまする。 アライブ:な、なるほど…。 ゼルム:別に我、全知全能というわけではあらぬからな? セプンス:勿論、心得ておりまする。…とは言ったはいいものの、ではまず何から話したものでありましょうか。 アライブ:じゃ、じゃあ!私から先にいいですか! セプンス:どうぞどうぞ。 ゼルム:なんじゃ。ツッコミ役。 アライブ:だからツッコミ役じゃなくて、「アライブ」ですーっ! ゼルム:ふむ、アライブか…。覚えたぞ、ツッコミ役。 アライブ:戻ってるじゃないですか!?もう…。えっとですね。今、ジェアルの街で連続殺人が起きているんです。 ゼルム:……ほぅ。連続殺人とな。 セプンス:あぁ、キーラ殿やヴェール殿と一緒に話してくれた話でありまするな。 アライブ:はい。ジェアルを守護する龍であるゼアルさんにはやっぱり話しておくべきかと思いまして…。 ゼルム:なんと…無垢なる人の子らが無慈悲に殺されているというのか…。許せぬ。アライブよ、詳しく聞かせろ。 アライブ:は、はい!えっと、まずそれが起こる時間帯は…。 : 0:アライブとセプンスは王龍に街で起こる事件のことを全て伝える。 : セプンス:…と、言う感じでありまするな。 ゼルム:死体にまったく外傷がない…か。……まさかな。 アライブ:何か心当たりがあるんですか? ゼルム:いや、ただの憶測に過ぎぬが…。八百年前に起こったこととよく似ているものでのぅ。 アライブ:は、八百年前って…!? セプンス:…「魔神殺しの英雄譚」と同じでありまするな。 ゼルム:そうじゃ。そして、八百年前は一か月で五百もの人の子が殺された。 アライブ:五百!? セプンス:…して、それの犯人は誰だったので? ゼルム:…悪魔、「アシュタレト」じゃとされておる。 アライブ:アシュタレトって、それもあの…!? セプンス:「魔神殺しの英雄譚」によれば、魔神「ラムナトス」を復活させた張本人。 ゼルム:うむ。奴は人の魂だけを抜き取り、人の機能の全てを停止させることができる。 セプンス:…今さらにはなり申すが、あの「魔神殺しの英雄譚」は実話なのでありまするな。 ゼルム:勿論。ゆえにこのように我は存在しておるし、神々も魔神殺しの英雄も実在する。 セプンス:……。 アライブ:……! ゼルム:しかし、まぁ。我もいうて数百年眠っておったから、奴らが今何をしているかとかは知らんのじゃがな。 アライブ:で、でも…。もし今回の殺人もアシュタレトが引き起こしているのだとしたら、目的は…。 ゼルム:それはわからぬ。しかし、その事件はあの魔神招来の少し前に起こった。 セプンス:つまるところ、古(いにしえ)の魔神と関係があるやもしれぬ、と。 ゼルム:そうじゃ。しかし、まだ決めつけるには早い。今の証拠もそろってない状態でこの話を続けても野暮じゃろ。 アライブ:それも、そう…ですね。 ゼルム:その件、把握したぞ。では、他に何かあるか? セプンス:では、これは手前から一つ。先ほど、「英雄譚」の人物がどこにいるかはわからない、と仰りましたが、「英雄」がどこにいるかの心当たりなどがあるかは、如何に? アライブ:え、英雄…。 ゼルム:…すまぬ、まったくないわ。お人好しのあいつのことじゃ、この世界のどこかに溶け込んでおるのではないかのぅ。 セプンス:ふむ。なるほど…。いや、答えていただき誠に感謝でありまする。 ゼルム:しかし、何故そんなことを聞くのじゃ?その英雄に会いたいのか? セプンス:然り。手前はしがない旅芸人でありますれば、「英雄譚」の人物が実在するとわかれば、一度お会いし話してみたいと思ってしまうのでありまするー。 ゼルム:ほぉう。やはりお主、変わり者であるな。 アライブ:でも、私もその英雄さんには会ってみたいと思います!何者なのか、とかも聞いてみたいですし!…って、そうじゃないですか!ゼルムさんに聞けばいいんです!ゼルムさん、あの英雄は何者なんですか! ゼルム:…あー、それについては我も知らんわ。 アライブ:…えぇ? ゼルム:あれには語られておらぬが、我あの戦いのあと受けた傷のせいで気絶しておったからのぅ。起きたら英雄はもういなくなっておったし。 アライブ:あぁ…そうだったんですね…。 セプンス:手前もそのことは聞いてみとうございましたゆえ、少し残念でありまするー…。 ゼルム:ははは、すまんのぅ。まあでも、神の類であることは間違いないじゃろうな。あの神秘的な光の大剣と、神でも届かぬ邪悪を得た魔神を一撃で葬る力。もしやしたら、神以上の存在なのかもしれぬ。 アライブ:やっぱり、あの英雄はそれほどまでに凄いんですね…。 セプンス:…アライブ殿。これは興味本位でありまするが、かの英雄は“奇跡を授ける”権能を持つと言われておりまする。 アライブ:っ……。 セプンス:もし奇跡を授かれるなら、アライブ殿はいったい、何を望むのでありましょう? アライブ:…そうですね…。うーん…。…急に言われても分からないですかね。そういうセプンスさんは? セプンス:手前はただの旅芸人。芸事百般(げいじひゃっぱん)が少しでも上手くなり、お客人方の笑顔が見れるだけで十分でありまするー。 ゼルム:ははは!そっちの芸人は随分と客を楽しませるのが好きみたいじゃな! セプンス:然り。なにせ、客人方の笑みこそ手前の生きる糧でありますゆえ―。 アライブ:そこまで言える職業につけていて、語りも一流だなんて…。旅芸人は天職ですね! セプンス:ふふふ。感謝の極み。 ゼルム:でもまぁ、その英雄の奇跡に懸ける望みがなんであろうと、大抵は自力で何とかできるもの。ゆえに我は、気づいていないだけで幸せやその者の求めるものは案外すぐ近くに転がっていたりもするものじゃと思う。 セプンス:なるほど。良い言葉でありまするな。 アライブ:…。 : 0:「ぐぅぅ…。」 : アライブ:…あぅ。 セプンス:おや、今の腹の音はアライブ殿でありましたか。 アライブ:…そういえば、今日起きるの遅くて…。朝ごはん抜かして来たんでした…。 ゼルム:おいおい、まだ育ちざかりなんじゃから、ちゃあんと食わなきゃいかんぞ? セプンス:ふむ…。では、名残惜しいですが一度街に戻って食事をすると致しましょう。 アライブ:ほんと、申し訳ないです…。 ゼルム:おっ、行ってしまうのか、人の子らよ。 アライブ:はい…。あっ、でも!食べ終わったら戻ってきます!まだ私、ゼルムさんと話したいですし! ゼルム:それなら、その必要はないぞ。 アライブ:えっ? セプンス:それはなにゆえでありまするか? ゼルム:そりゃあ勿論、我も久々にジェアルの街に行ってみようと思うからじゃよ! アライブ:えぇっ!?ゼルムさんが!?いいんですか、だってあなたはこの神殿の…! ゼルム:大丈夫じゃよ。だって言うなればここは我の家。我専用の家に家主が居ようが居なかろうが関係あるまい?それに我だって、久々に人の子らの営みを見たいのじゃよ。 アライブ:まぁ、それでゼルムさんがいいならいいですけど…。 ゼルム:じゃが、お主ら。くれぐれも我が王龍であることをバラすなよ?驚かれてしまうからの。 セプンス:勿論でありまする。 ゼルム:よろしい。久々に見る人の子たち…楽しみじゃのぅー…! アライブ:じゃあ、一緒にジェアルの街に戻りましょうー! : 0:場面転換。ジェアルの喫茶店で三人が話している。 : ゼルム:いやぁ、人の子らの作る食べ物は美味いのぅ!これには我も舌鼓じゃ! アライブ:ジェアルの料理は冗談抜きで旅をしてきたどの町の料理よりもおいしいです…! セプンス:同意見でありまする。この街の物は何を食べても絶品であり申す。 ゼルム:本当じゃのぅ!我、もっと食いたくなって…んぅ? : 0:喫茶店の店員が近づいてくる。 : アライブ:あれ、店員さん?どうしました? : アライブ:(M)『お客さんからあなたにこれを渡すようにと頼まれて。』。そう言って店員さんは、私に綺麗な紙を渡してくれました。 : ゼルム:あん?なんじゃぁ、そりゃ。 セプンス:見たところ伝言のメモのようなものとお見受けしまするが…。 アライブ:あっ、本当だ。何か書いてある…。 : アライブ:『明後日の午後三時、「ホルス探偵事務所」で二人と共にお待ちしています。』……? : 0:To be continued.