台本概要
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タイトル | 夜光蟲 第3章、欺瞞と怨嗟☆ |
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作者名 | すばら (@kou0204hei) |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 8人用台本(男4、女3、不問1) |
時間 | 50 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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流生 | 男 | 53 | |
真人(拓真) | 男 | 23 | |
紗凪 | 女 | 71 | |
皐月 | 女 | 118 | |
晴風 | 女 | 56 | |
金髪の青年 | 男 | 49 | |
絢斗 | 男 | 23 | |
店主 | 不問 | 4 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
夜光蟲(やこうちゅう)
人数比、5/2
登場人物
流生(りゅーせい)♂27歳。ブランディッシュのNo.1で社長。1000万prayer保持者。残忍で冷酷。(前嶋幸太郎と兼任推奨。)
拓真(たくま)♂17歳。真人の本名。因果関係が…真人の若かりし頃。(真人と兼任推奨。)
前嶋(まえじま)幸太郎(こうたろう)♂26歳。鮫竜会(こうりゅうかい)の若頭。CLUBエースのホスト。
紗凪(さなえ)♀38歳。キーパーソン。ひょんな事から、黄泉と出会った。何か訳有りの様だが。
皐月(さつき)♀37歳。流生のエース。高級風俗店、KIRARA(きらら)No.1。世間知らずで空気が読めない。昔はどこかの財閥のお嬢様だったが、倒産した為、風俗に身を染めた。(晴風と兼任推奨。)
晴風(はるか)♀38歳。紗凪の幼馴染。気の優しいお淑やかな女性。真人を刺した、容疑者?
絢斗(けんと)♂17歳。薬で頭のネジが飛んでる。
店主♂♀モブ。
————以下本編————
皐月:第三章、欺瞞(ぎまん)と怨嗟(えんさ)
0:風俗店(キララ)の前。
流生:もしもし、サツキか?終わったのか?
皐月:ええ、今日はお客様の中に禁止行為を働く方がいて、とても苦痛でしたわあ。
流生:禁止行為だと?
皐月:リューセイも知っての通り、わたくしの所属しているキララは「ヘルス」、本番は禁止ですの。
流生:サツキ、お前は物事を堅く考え過ぎる、嫌いがある。
皐月:はい?
流生:相手がむさ苦しいオッサンで気持ち悪い事を言い訳に、一線を置いていないか?…元々、「本番」を禁じてる店なら、店側に入れる金は「本番」以前の金のみを入れればいい。要するに、秘密裏にその5倍は取れた事だろう。……サツキ、賢く生きろ!
皐月:リューセイ!!わたくしが、獰猛(どうもう)な獣(けだもの)達に汚されても貴方は何とも思わないのですか?!
流生:汚れるだと?ふん…「風俗」にその身を投じた時点でお前は、既にどす黒く染まっている。
皐月:…っ!
流生:皮肉な話だが、そんなお前には感謝している。…これからも期待してるぞ。
皐月:ええ。リューセイは如何(いか)なる時でも素直な自分を曲げないから、わたくしも自分を思う存分、晒(さら)け出せますわー。
流生:ふ……合流するか?
皐月:迎えに来て下さいますの?…キララから右に逸れた、BAR「八咫烏」で待ち合わせましょう。
流生:ヤタガラス?あの、妙な銅像ばかり置かれている陰気臭い店か。…悪趣味にも程があるが、まぁ良いだろう。
皐月:ふふ、あれらはアンティークと呼ばれる物で、リューセイが思ってる程、歪(いびつ)な物ではありませんわ。
流生:ほう?ま、どちらにせよ、長居はしないからな。
皐月:分かっていますわ。お酒の飲み過ぎで後に響いては困りますものね。
流生:そう言う事だ。理解が早くて、助かる。
皐月:ふふ。それでは、「八咫烏」の前にて、お待ちしております。
流生:ああ。
0:到着。
皐月:リューセイ!
流生:サツキ、待たせたな。
皐月:とんでもないですわ。…中に入りましょう。
流生:ああ。
皐月:さぁ、リューセイ!行きますわよ!
流生:ああ。
皐月:リューセイ、何飲みます?
流生:…やはり、ここはどうにも落ち着かんな。
皐月:そうですか?わたくしはリラックスできていますよ?
流生:お前が変わってんだよ。…飲み物はビールをくれ。
皐月:はいな。それでは、ビールと梅酒を頼みますわね!…おつまみはどうします?
流生:ふむ…無難に枝豆とエイヒレだな。
皐月:分かりましたわ。
流生:サツキ、同伴時間は2時間だ。把握しておけ。
皐月:社長なのに、その辺りはキッチリと守るのですね?
流生:ああ、店の状況的に人員不足だからな。
皐月:現在、従業員の方々は何人ほど、お店にいらっしゃるのですか?
流生:んー、魅剣、蘭丸、黄泉、凍夜の4人だけだな。ちらほら、体入(たいにゅう)も来るんだが、本人する奴が居なくてな。
皐月:リューセイ合わせても5人…確かにその人数だと、厳しいかも知れませんわね。
流生:ああ。店売り的にはマイナスになってないのが救いだ。
皐月:経営状況が安定してるのは、リューセイのお陰では無くて?
流生:ふ…口が達者になったな、サツキ。
皐月:え?うふふ…そんな事ないですわ。わ
皐月:飲み物も来たところですし、乾杯しましょう。
流生:ああ!
皐月:それで、リューセイ…例の件は大丈夫ですの?
流生:ああ…明るみになってはいない。…ヨミが紗凪を連れて来た時は少々、焦ったがな。
皐月:わたくしのお父様の力で「真人社長を血祭りに上げて」差し上げたと言うのに…この件が世間にリークされては……
流生:…分かっている。…しかし、まさかマヒトさんの後輩の晴風を使うなんてな。
皐月:当然ですわ。———わたくしの絢斗を死に追いやった憎むべき相手ですもの。
流生:死に追いやっただと?穏やかな話じゃないな。
皐月:中学生からの幼馴染でわたくしの恋人だった、掛け替えのない人。
流生:ふむ、要するに今回の件は「私怨」と言う訳か。
皐月:そうなりますわね。
流生:それで、その幼馴染と今回の件はどう関係してるんだ?
皐月:その疑問に答えると2時間をゆうに超えてしまう可能性がございますわ。
流生:その時はその時だ。
皐月:わたくしと、ハルカ、サナエは中学、高校と…切っても切れない腐れ縁なのです。
皐月:長い年月を過ごしてる内に、人の卑(いや)しい部分と言うものは必ずしも、浮き出てくるのです…
流生:…
0:過去、中学時代。
晴風:サナエー、サツキ!ご飯一緒に食べよ!
皐月:良いですわよ。
紗凪:ごめん、ハルカ!私、彼氏とこれからコンビニに行く約束があって…
皐月:あら。
晴風:え?あ、、そっか…うん。楽しんできてね!
紗凪:ごめんね…!じゃあ、またメールするね!
皐月:はいな。
晴風:サツキーー!彼氏って、どう作るの?
皐月:あらあら、ハルカ。サナエに嫉妬してますの?
晴風:え!?そ、そんな事ないって!
皐月:うふふ。
晴風《M》:嫉妬…?サナエに私が嫉妬…してるの?……確かに、羨ましいとは思うけど……この妙な胸のざわつきは一体どこから…?
0:高校時代、晴風は誰も居ない教室の隅で、啜り泣く。
晴風:何で、サナエだけが、あんなにチヤホヤされるの……
晴風:はぁ…サナエは顔が良いし、スタイルも良いし…対して、、私は…何で………こんなにも醜いの?……憎い…憎い…憎い……
晴風:……
皐月:ハルカ、吹奏楽の件なのですがーーー
晴風:…(涙)
皐月:は、ハルカ?!……何か、あったんですの?
晴風:…
皐月:うーん、眠ってしまわれましたわ…
皐月:また、改めますわね。
0:皐月が出ようとした瞬間。
真人(拓真):うあ!?
皐月:ごめんあそばせ!
真人(拓真):いてて……君は?
皐月:サツキですわ。
真人(拓真):サツキさん、僕はタクマだよ。
皐月:彼女に用がありまして?
真人(拓真):うん、でも眠ってるみたいだね?
皐月:ええ、実はわたしくも彼女にお話があったのですが…
真人(拓真):なるほど。お互い、ここに来る理由があった訳だね。
皐月:先程、タクマと名乗っていましたが…貴方、ケントと言う名前に覚えがありまして?
真人(拓真):ケント…!
皐月:その曇った表情を見るに、貴方は…
絢斗:あれぇーー!タクマぁ!こんなところに居たんだねぇー!まったく、ダメじゃないかぁ。…勝手に「巣」から出てきちゃ。
真人(拓真):…
皐月:ケント?奇遇ですわね!
絢斗:サツキぃ?今日は食堂じゃなかったんだね。
皐月:はいな。ハルカに、ご相談したい事がありまして。
絢斗:ハルカぁ?…あー、奥の方で寝てる子かぁー!…ふーん、なるほどねぇ。
0:舌舐めずる。
皐月:け、ケント!?
絢斗:そんな事よりぃー♪タクマぁー♪
真人(拓真):…っ!
絢斗:ほらぁ、おいでー!「ハウス」の時間だよぉ♪あっははははは♪
真人(拓真):…ぐっ!!
0:絢斗は拓真の首根っこを掴み、消える。
0:拓真と晴風の出逢い。
晴風:この櫻の木に来ると落ち着くなぁ。嫌な気持ちがスゥッーと身体の中から抜けていく感じがする。
晴風:段々…眠くなって…
真人(拓真):そこの君ー!
晴風:え?!
真人(拓真):隣、いいかな?
晴風:ご、ごめんなさい!!
0:晴風は慌てて、逃げ出す。
真人:あ……待って!
0:とある日の教室、窓から校庭を眺める。
晴風:皆楽しそうで良いなぁ…サナエはいつも彼氏とご飯食べてるし、サツキも最近忙しいみたいだし……はぁ…
真人(拓真):こんにちはー!
晴風:え!?あなたは…
真人(拓真):そんなに身構えないで欲しいな。君と話したくて…
晴風:そうまでして、私に拘(こだわ)る理由はなんですか?!何の魅力も無いし…
真人(拓真):そんな事ない。僕の瞳には十分、君が魅力的に映ってるよ。
晴風:…
真人(拓真):あ、自己紹介がまだだったね!僕は君より1つ上の3年、タクマだよ。
晴風:え、と…2年のハルカです!その……
真人(拓真):どうしたの?
晴風:あの時はごめんなさい…実は昔から、男の人が苦手で…
真人(拓真):いやいや、こちらこそごめんね。急に声を掛けて、驚かせてしまって。
晴風:いえいえ。
真人(拓真):ねぇ!今から、あの櫻の木の下でご飯でも食べない?
晴風:でも…
絢斗:タクマぁ、探したよ〜!
真人(拓真):ケント…!
絢斗:君さぁ〜本当に学習しないねぇー??ボクの「支配」から逃れられると思ってるの?随分と、甘く見られたものだねぇー!
真人(拓真):ケント、お願いだから…もうやめて!君に根こそぎ取られたせいで…お金が無いんだ…
絢斗:はぁ?!使えない玩具だなぁ…あー、、もういいや、君は用済み。……うーん……あー!ハルカちゃんだっけぇ?…君が代わりにボクの玩具になってよー♪
晴風:ひっ!!
真人(拓真):は、ハルカちゃんには手を出さないでっ!
絢斗:タクマぁ!なになにー?もしかして、ヒーロー気取りぃ?……この子に熱でもあるのかなぁ??…う〜ん、、顔は0点……でも、ボク好みの身体なんだよねぇーー♪あっははははは♪
0:舌を舐めずる。
晴風:…っ!
真人(拓真):ハルカちゃん、逃げてっ!!
晴風:…!(頷く)
絢斗:あはは、逃がさないよ〜♪
真人(拓真):ハルカちゃんっーーー!!
0:血涙を流す。
真人(拓真)《M》:僕は…最低で情けない男だ…助けなくちゃいけないのに…肝心な時に…足が震えて……
0:必死に逃げる晴風。
晴風:はぁ…はぁ…もうダメ…動けな…
絢斗:ハルカちゃん〜見ぃつけたぁー♪
晴風:っ…!
絢斗:大人しくしてればぁ、傷は付けないよぉー?すーぐーにぃ、済むからねえ〜♪あっははははははは♪
0:馬乗りになる。
晴風:や、やめて、来ないで!触らないで!!………い、いやぁああああ!!
絢斗:あは、あはは、あははははははー♪
晴風《M》:…身も心も…ボロボロ……私は…何の為に…この世に生を受けたの…?……渦巻くのは憎悪だけ……幸せを噛みしめてる人達が殺したいほど……憎い……憎い…サナエ………!
皐月:ハルカ…
0:サツキは偶然、体育館倉庫で横たわったハルカを目撃してしまう。
皐月:あの時見た、凄惨(せいさん)な光景。わたくしはハルカを気に掛ける事は無く、大好きな絢斗を奪われた悔しさと悲しさが…「殺意」を生んでしまいましたわ。
皐月:それ以来、ハルカは不登校を繰り返すようになりましたの。
流生:人の業とは計り知れないな…
皐月:サナエは突然の火事で、お家が全焼し、已む無く、高校を中退。わたくしとハルカは無事卒業しましたわ。その後も、わたくし達の関係は続いた。ケントに関しては「麻薬乱用」の容疑で捕まってしまわれたのですが。
流生:麻薬だと?
皐月:ええ。以前から、わたくしもケントの言動には不可解な点が見受けられましたが、まさか…ハルカの、「レイプ」の件にも薬が関係してるとは思いもよりませんでしたわ。
流生:薬と酒は度が過ぎたら、起爆剤に成り変わる。
皐月:…
皐月:ハルカがサナエへの憎悪を抱いてる事も存じておりましたわ。だから、わたくしは少々、「お手伝い」をしてあげたのです。
流生:お手伝い?
皐月:はいな。あれは、卒業して間も無い時の話です。
0:皐月の思惑。
絢斗:サツキぃー!久しぶりだねぇーー!君が
直々に、ボクの家に押し掛けてくるなんてぇー、大層な理由(わけ)があるんだろぅ??
皐月:察しが良いですわね。———今日は貴方に折り入って、ご相談がございますの。
絢斗:へぇぇー、相談ねぇ?賢い君なら、分かってると思うけどぉー!ボクは、「愉しくない
」遊びはしないからねぇー♪あっはははは♪
皐月:あらあら、それは杞憂ですわ。ケント、きっと貴方は満足し、「頂天」に達する事でしょう。うふふ♪
絢斗:ふぅん。すごい自信だねぇー?もし、退屈だったら…その綺麗な顔、歪ませちゃうからねぇー♪あはあは♪
皐月:ふふ、覚悟の上ですわ。…それで、本題なのですが、貴方には「通り魔」と言う程で…サナエと言う子を襲って頂きますわ!
0:サナエの写真を見せる。
絢斗:なるほど、なるほど。…顔、身体が随分と整ってるねぇ。まるで、アイドルみたいで可愛い子だねぇーー♪
皐月:ふふ、ご満悦そうですわね。
絢斗:うん!うん♪すごーく、「ヤリ甲斐」のある依頼だねぇーーどんな表情で悦んでくれるか、愉しみだよぉー♪
皐月:明日の深夜、この場所で「彼女」の人生を思う存分に狂わせてあげて下さいませ。
0:サナエのバイト帰りの場所を写真にて説明する。
絢斗:任せてよぉーー♪ボクが「薔薇色」の日々に変えてあげるからねぇーー♪あは、あははははーー♪
皐月:あ、ケント。…念の為、口調を変え、姿は変えておいて下さい。
絢斗:はぁ?なぜぇ?いつも通りじゃ、ダメなのぉー??
皐月:貴方はハルカを狂わせた件をお忘れですの?!
絢斗:あーー、顔0点の子の話ねぇー!それでぇ、どうしろと言うのぉ?
皐月:そうですわねぇ…ケントとは全くの別人を装って下さい。あからさまに悪人だと思われそうな姿と言動を心掛けて下さいませ。
絢斗:うーん、、こうかなぁ??…オラァ!金出しやがれ!このクソアマが!!
皐月:素晴らしいですわ!後は、全身を黒に染め、目出し帽なんかを被ったら、完璧ですわね。
絢斗:いつもと違う感じも中々、興奮するねぇーー♪あっはははははー♪
皐月:ふふ、それでは吉報をお待ちしております。
0:紗凪のバイト帰り。
通り魔:おい、そこの女止まれ!
紗凪:え?!
通り魔:…(ナイフを握る)
紗凪:ひっ!!!
通り魔:騒ぐなっ!妙な真似したら、このナイフがお前の喉元に突き刺さるぞ?
紗凪:…は…い…
紗凪:…
通り魔:肩に背負ってるバッグを寄越せ。
紗凪:…どう…ぞ…
通り魔:何だ?このハートのステッカーだらけの気味の悪い、財布は……
紗凪:…!か、返して下さい!!
通り魔:じゃかしいわ!オラァ!!(拳を振り上げる)
紗凪:うっ……
0:腹を殴られ、その場で蹲る。
通り魔:ほうほう、ひーふーみー……78000円か。中々、持ってんじゃねぇか!…他には……
金髪の青年:トカゲみたいな面構えの男、そこまでにしとけ。
通り魔:あん??
通り魔:…(サツキぃ…話が違うじゃないかぁ。)
0:全身、光沢の入った高級スーツの男が駆け寄ってくる。
紗凪:た、助け…!
金髪の青年:大丈夫かい?お嬢さん。
紗凪:…あ…有難うござい…
0:言い終わる前に気絶してしまう。
通り魔:…(この人ぉ、ホストかぁ?へへ、ホスト狩りといこぉー♪)
通り魔:お前……クラブエースのホストか!
金髪の青年:ほう?俺を知ってるのか?…なら話は早い。
通り魔:お前の、店のケツモチは確か………
金髪の青年:よく口の回る、トカゲ野郎だな。…それ以上、汚ねぇ息を吐き付けるなら。
通り魔:ま、待ってくれ!
金髪の青年:問答無用!!
0:鉄拳が顎を直撃。
通り魔:がはっ!
通り魔:…(つ、強すぎるよぉ……)
金髪の青年:「竜次」さんに報告するまでも無い。…末端のチンピラ風情が。
通り魔:…(気絶)
0:紗凪に近付く、ホスト。
金髪の青年:おーい、生きてるかい?
紗凪:んん…私は?!
0:気絶から目覚める紗凪。
金髪の青年:お嬢さん、夜道は気をつけなよ。さっきみたいな柄の悪い連中が街を徘徊(はいかい)してるからな。
紗凪:心に留めておきます!
金髪の青年:…盗られたのは金だけ?身体とかは大丈夫かい?
紗凪:はい、身体には一切、触れられていません。
金髪の青年:そうか。……盗られた金ってこれかな?……ほらっ!!
0:金髪の青年は通り魔から金を抜き取る。
紗凪:あ、有難うございます!
金髪の青年:気にするな。…それと、さっきから腹が鳴ってるみたいだが、飯はまだ済ませて無かったのかい?
紗凪:お恥ずかしい話、家が焼けてしまって…
金髪の青年:なるほどな……それ以上は言わなくて良い。…察した。…取り敢えず、飯行くかい?
紗凪:いえ、さすがに悪いですし…
金髪の青年:遠慮するな、俺自身も出勤前で腹に何か入れないと悪酔いしてしまうからな。
紗凪:出勤前?あー!!
金髪の青年:うお!?な、何だ急に!?
紗凪:お兄さんってホストさんですか??
金髪の青年:ああ、ホストに興味があるのかい?
紗凪:その逆です…
金髪の青年:俯き(うつむき)がちな様子を見るに、怖がってるのか?確かに世間からは煙(けむ)たがられる職業の一つだからな。
紗凪:でも、お兄さんは不思議と信じられます!
金髪の青年:そうかい?これでも、巷(ちまた)では恐れられているぞ?客を容赦なく殴るような、暴力ホストだぞ?さっきのトカゲ野郎は俺の事を知っているようだったが。
紗凪:それでも、私を助けてくれました。
金髪の青年:あーーーそれについては、ただの憂(う)さ晴らしだ。
紗凪:憂さ晴らし?
金髪の青年:ああ、客に飛ばれてムシャクシャしててな…まぁ、なんだ!合法で人を殴れるなら、最高だろ?
紗凪:はぁ…
金髪の青年:はは、ま!積もる話は近くの海鮮屋に着いてからにしようぜ。
金髪の青年:先に聞いておくが、魚介アレルギーとかは無いよな?
紗凪:大丈夫です!
金髪の青年:それは良かった。…そこの角を曲がった先に、海鮮屋「海の道楽者」がある。
紗凪:あ!あの海老がピースしてる看板ですか?
金髪の青年:そうそう、めちゃくちゃ美味(うま)いんだぜ!
紗凪:ほへぇー、とても楽しみです♪
金髪の青年:さあ、着いたぞ!
0:ゆるいイラストの海老が描かれた看板に目をやる。
紗凪:すごいー!!竜宮城みたいな外装ですね!
金髪の青年:はは、アニメの見過ぎだ。
紗凪:あ、すみません…つい、興奮してしまって…
金髪の青年:いやいや、さぁて、入るぞ!
紗凪:はい!
店主:いらっしゃいま…若(わか)?!
金髪の青年:ああ、ちょっと訳ありでな。
店主:なるほど、少々混んでいまして……カウンター席で大丈夫です?
紗凪:若??
金髪の青年:んあ?ああ、構わないぜ。んじゃ、ちょっくら邪魔するぞ!
店主:そちらのお嬢さんもどうぞこちらに。ご案内致します!
紗凪:え?あ、有難うございます!
金髪の青年:ははは!緊張してんのか?
紗凪:え!?だって、さっき…
店主:こちらです!ご注文の際は隣にある、備え付けのボタンを長押し、して下さいね。
紗凪:はい!
金髪の青年:俺の身分が気になるかい?
紗凪:や、ヤクザさん?
金髪の青年:ははは、さっきまで真っ直ぐに俺の事を見てたのにな!「海の道楽者」に入ってから挙動が変だぜ?
紗凪:ごめんなさい…
金髪の青年:ま、驚くのも無理もないか。…俺は鮫竜会(こうりゅうかい)の若頭、前嶋(まえじま)幸太郎(こうたろう)
紗凪:噂でしか聞いた事なかったけど、本当にヤクザとホストって近しい存在にあったんですね。
金髪の青年:まぁ、ホストの殆どのケツモチがヤクザと繋がりある店ばかりだからな。
紗凪:ケツモチ?
金髪の青年:ああ、「ホストクラブ」を建てるには莫大(ばくだい)な資金が必要になる。軽く、800万は超えるらしい。
紗凪:なるほど。
金髪の青年:そこで、俺みたいなヤクザ屋さんの出番って訳だ。ホスト側の毎月の売り上げの30%…みかじめ金さえ、支払ってくれれば店の手配の援助はしてやれるって事。
紗凪:大人の世界って感じですね。
金髪の青年:確かにお嬢さん、若そうだもんな。まぁ、要するに、金さえ払ってくれるなら、いくらでも店は貸せるって事よ!
紗凪:なるほど…はい、現在17歳です。
金髪の青年:こ、高校生!?
紗凪:正確には、高校の代ですが…中退してバイトしてます。
金髪の青年:そうか、そうか!偉いなあ!
紗凪:元々、家が貧しかった為、働かないと生活が苦しかったので。
金髪の青年:すまん…嫌な事を思い出させてしまったな…
紗凪:い、いえ!平気です。でも…
金髪の青年:住む場所が無い、か?
紗凪:え?
金髪の青年:家事で家が焼けちまったんだろ?
紗凪:はい…
金髪の青年:所持金、78000円。通帳の中に100000円…バイトでコツコツ貯めてた金、と言った所か。
紗凪:いつの間に通帳の中を…
金髪の青年:あー、すまんな!トカゲ野郎から、金とバッグを取り返そうとした時、その通帳がたまたま、落ちてきてな…
紗凪:そうだったんですね。
金髪の青年:中身まで、見るつもりは無かったんだが、ページが風で捲(めく)れててな。
紗凪:あ…
金髪の青年:まぁ、見てしまったお詫びと言っては何だが、舎弟(しゃてい)が使ってた安アパートで良かったら、貸してやる。
紗凪:ほ、本当ですか?!
金髪の青年:ああ、まぁ、あくまで「貸す」だけだがな。
紗凪:有難うございます!!とても助かります!
金髪の青年:家賃は安く負けといてやろう。…35000円でどうだ?
紗凪:はい!充分です!
金髪の青年:よし……ほれっ!!部屋の鍵な。
0:鍵を渡す。
紗凪:有難うございます!
金髪の青年:良いって事よ!…あ、そういや、お嬢さん、名前は?
紗凪:サナエです!
0:海鮮屋に皐月の姿が。
皐月《M》:ケント、しくじりましたか。…サナエは悪運が強いですわね。
皐月:その後も、サナエのお宅に髪の毛をポストに袋いっぱいに入れたり、腐った食べ物を配達したりしましたが…サナエは少しも動揺する事はありませんでしたわ。
流生:…サツキ、お前の執念が悍(おぞ)ましい。
皐月:うふふ。そこからはターゲットをハルカに変えましたの。
流生:ふむ。
皐月:これは…とある日の夕方、ハルカのお宅にお邪魔した時の出来事なのですが…
流生:…
0:ゲシュタルト崩壊。
皐月:ハルカー!いらっしゃいますか?
晴風:誰…
皐月:わたくし、サツキですわ。
晴風:帰って…
皐月:ハルカ?どこか具合いでも悪いのです?
晴風:いいから、帰れって言ってんだよ!!
0:玄関を開いた瞬間、血塗れた人形が投げる。
皐月:…この人形は……
0:3人の絆。
紗凪:ねぇねぇ、私達って、中学、高校と長年付き合って来たでしょ?だから、そのサンコイチの証にお揃いの物を購入しない?
晴風:うん、私は賛成!
皐月:ふふ、わたくしも異論はありませんわ。
0:雑貨屋を見て回る、3人。
紗凪:ねね!この人形なんてどうかな?
晴風:へぇ、サナエにしてはセンス良いじゃん。
皐月:ええ、一つはハルカそっくりで目が細くて、ちょっとぷっくらしてて。
晴風:え?やだ、一緒にしないでよ。…あ、この人形!サツキに似てる!容姿端麗で、身長高くて。
紗凪:あはは…ここまで、似てると恐怖を覚えるね。
晴風:サナエが持ってる人形も目鼻整ってて、とっても可愛い!でも、少し美化し過ぎてないかな?
皐月:ふふ。さて、買いましょうか。
紗凪:え、ちょっと待って!この人形高い…
晴風:え?嘘ぉ?!
皐月:大丈夫ですわ。わたくしに任せて下さいな。
晴風:さっすが!財閥の娘さん!
紗凪:3万円が財布の中から当たり前のように出てくる、高校生ってサツキくらいしかいないわね。
皐月:あら?おっほほ♪
0:サツキはナイフで歪んだ人形を拾い上げる。
皐月:この血、ハルカの?!……これは…?…「サナエ死ね」
皐月:彼女は既に「壊れて」しまっていた。
皐月:次の日もハルカを監視しましたわ。
流生:ここまで来たら、もはや病気だな。
皐月:うふふ。
0:人格破綻。
晴風:ぅああああ!!…殺す、殺す、殺す、殺す!!!
晴風:サナエをこの手で殺すぅう!!きゃは!きゃははははは!!
皐月:変わり果てた、ハルカを目の当たりにし、わたくしはある計画を思い付きました。
流生:ふむ。それが、今回の計画か?
皐月:はいな。ですが、思わぬ邪魔が入ったり、タイミングが合わず、頓挫(とんざ)を余儀なくされたのですが…
流生:…
皐月:どこからか流れてきた噂で、真人…いえ、「拓真」がホストをやってると聞き、わたくしは再び、行動しましたの。
0:紗凪が客になった日。
皐月:サナエ、風の噂で聞いたのですが…真人って言うホストに援助してるって本当ですの?
紗凪:え?!サツキ、どうしてそれを?!
皐月:あら、既に知ってるものかと思いましたわ。掲示板に書き込まれてますわよ?
紗凪:嘘でしょ?!
0:カタカタッとPCで検索する。
紗凪:……あ!
紗凪:…「ブランディッシュに通う、この女の実態はアバズレ、真人と言うホストに金も心も身体を捧げている。」
0:絶句する紗凪。
皐月:酷いですわね…誰がこんな書き込みを…
流生:その内容を投稿したのは?
皐月:IPアドレスから辿ったところ、「ハルカ」のPCから打ち込まれた事実が判明しましたわ。
流生:やはりか。
皐月:そこからはご存知の通り、ブランディッシュにお客としてハルカが現れ、真人に愛想を振り撒くフリをして…
流生:「サナエ」が店に現れるのを待った。
皐月:そして、わたくしはそのハルカの負の感情を利用しました。
0:皐月の策略。
皐月:ハルカー!何度も申し訳ありません。
晴風:サツキ?何…
皐月:はいな。貴女に有益な情報がございまして。
晴風:有益?は、何それ?……取り敢えず、上がって。
0:前回とは違い、部屋に通される皐月。
皐月:単刀直入に申し上げますわ。
晴風:?
皐月:貴女はサナエが憎くてたまらない。そうじゃ、ありませんこと?
晴風:…っ!
皐月:失礼ながら、ハルカの行動を数十年に辺り、観察させていただきましたわ。
晴風:勝手な事を…!
皐月:ええ、不謹慎なのは分かっています。…この人形…覚えてます?
0:血塗れの人形を見せる。
晴風:あたしが数十年前、怒りの余りあんたに投げた、サンコイチ人形…
皐月:そうですわ。この人形を見た時、ハルカがサナエに対して、どういった感情を抱いてるか知ってしまったのです。
晴風:…
皐月:そんな闇に堕ちてしまった貴女に、相応しい「舞台」を用意しましたの。
晴風:舞台?
皐月:ええ、サナエを殺害出来る機会を差し上げますわ!
晴風:…!!
皐月:わたくしの指定した日に行動して下さいませ。
晴風:いつ…?いつ殺れるの?ねぇー!!
皐月:そう焦らないで下さい。え?!…この匂い、貴女、薬やってますの?!
0:晴風は管状な物で、薬を吸い上げる。
晴風:すぅぅーー。
皐月:ハルカ、貴女…ケントに毒されて…?
晴風:何の事ぉー?きゃは、きゃははは♪
皐月:…それで、日時なのですが。
晴風:んんー?
皐月:わたくしの調べたところ、紗凪と真人がアフターに行く日がありますの。
晴風:すぅぅうー。
皐月:この日が貴女を「最高潮」に高まらせてくれる、絶好の日になりますわ!
皐月:そこからは、わたくしの指示通りにハルカを操り、サナエを殺させた。
流生:だが、予想外な邪魔が入った。
皐月:ええ。当時、あの弱蟲で情けなかった彼が身を挺(てい)して、サナエを守るとは思いもしませんでしたわ。
流生:…
0:事件当日。
真人:サナエ…事前に予約した、ホテルがあるんだけど。
紗凪:え?なぁに、そのサプライズ!
真人:はは、今まで僕も忙しくて、サナエの相手をしてあげられなかったからね。
紗凪:マヒト…!ありがと…(涙)
真人:ああ、さぁ行こ……君は?!
紗凪:どうしたの?マヒト??
0:突然、黒ずくめの女が現れる。
晴風:サナエーー!!…あんたばっかりずるいのよ!いつもあんたばっかり良い思いしてぇ……!!
紗凪:その声は…ハルカ?!
真人:…君はハルカちゃんかい。何故、ここに?
晴風:すぅぅうー!
紗凪:薬…?
真人:この子の目…虚(うつろ)だ…まるで死んだ魚のようだ。…病院へ連れていこう。サナエ。
紗凪:…そうね。
晴風:きゃは♪死ねぇえーー!!サナエーー!!きゃはは、きゃはははははー♪
0:ナイフを振りかざす。
真人:さ、サナエ!!危ないっ!!……ぐっ!!
紗凪:ま、マヒト?!マヒト、しっかりして!!マヒト!!
晴風:きゃは♪お前の大事なモノ奪ってやったー!!いい気味だ♪きゃは、ぎゃはは
はははー♪
紗凪:ハルカ…どうして?!何でこんな事を……!
皐月:当然、この瞬間もわたくしは見ていましたわ。
流生:お前は傍観者か。
皐月:うふふ。わたくしの目的はケントを奪った、ハルカの排除。そして、マヒト(拓真)も消そうと思ってたので二人が「消えて」好都合でしたわ。
流生:ふん…果たして、サナエは全てが仕組まれた構図だと「点と点で繋がっている」と気付いているのか。
皐月:さぁ、どうでしょう。不安ならば、あの子も消して差し上げましょうか?
流生:…いや、その必要はない。
皐月:…
流生:それで、晴風は檻の中に居るのか?
皐月:ええ、終身刑(しゅうしんけい)待ちですわ。
流生:…胸糞悪いな。
皐月:お酒が不味くなってしまいますわね。
流生:事故とは言え、マヒトさんがこの世からいなくなったお陰で今のブランディッシュがある。
皐月:うふふ、本当に皮肉な話ですわね。
流生:ふん…
皐月:さてと、そろそろ参りましょう。
流生:ああ。
0:最終章に続く。
夜光蟲(やこうちゅう)
人数比、5/2
登場人物
流生(りゅーせい)♂27歳。ブランディッシュのNo.1で社長。1000万prayer保持者。残忍で冷酷。(前嶋幸太郎と兼任推奨。)
拓真(たくま)♂17歳。真人の本名。因果関係が…真人の若かりし頃。(真人と兼任推奨。)
前嶋(まえじま)幸太郎(こうたろう)♂26歳。鮫竜会(こうりゅうかい)の若頭。CLUBエースのホスト。
紗凪(さなえ)♀38歳。キーパーソン。ひょんな事から、黄泉と出会った。何か訳有りの様だが。
皐月(さつき)♀37歳。流生のエース。高級風俗店、KIRARA(きらら)No.1。世間知らずで空気が読めない。昔はどこかの財閥のお嬢様だったが、倒産した為、風俗に身を染めた。(晴風と兼任推奨。)
晴風(はるか)♀38歳。紗凪の幼馴染。気の優しいお淑やかな女性。真人を刺した、容疑者?
絢斗(けんと)♂17歳。薬で頭のネジが飛んでる。
店主♂♀モブ。
————以下本編————
皐月:第三章、欺瞞(ぎまん)と怨嗟(えんさ)
0:風俗店(キララ)の前。
流生:もしもし、サツキか?終わったのか?
皐月:ええ、今日はお客様の中に禁止行為を働く方がいて、とても苦痛でしたわあ。
流生:禁止行為だと?
皐月:リューセイも知っての通り、わたくしの所属しているキララは「ヘルス」、本番は禁止ですの。
流生:サツキ、お前は物事を堅く考え過ぎる、嫌いがある。
皐月:はい?
流生:相手がむさ苦しいオッサンで気持ち悪い事を言い訳に、一線を置いていないか?…元々、「本番」を禁じてる店なら、店側に入れる金は「本番」以前の金のみを入れればいい。要するに、秘密裏にその5倍は取れた事だろう。……サツキ、賢く生きろ!
皐月:リューセイ!!わたくしが、獰猛(どうもう)な獣(けだもの)達に汚されても貴方は何とも思わないのですか?!
流生:汚れるだと?ふん…「風俗」にその身を投じた時点でお前は、既にどす黒く染まっている。
皐月:…っ!
流生:皮肉な話だが、そんなお前には感謝している。…これからも期待してるぞ。
皐月:ええ。リューセイは如何(いか)なる時でも素直な自分を曲げないから、わたくしも自分を思う存分、晒(さら)け出せますわー。
流生:ふ……合流するか?
皐月:迎えに来て下さいますの?…キララから右に逸れた、BAR「八咫烏」で待ち合わせましょう。
流生:ヤタガラス?あの、妙な銅像ばかり置かれている陰気臭い店か。…悪趣味にも程があるが、まぁ良いだろう。
皐月:ふふ、あれらはアンティークと呼ばれる物で、リューセイが思ってる程、歪(いびつ)な物ではありませんわ。
流生:ほう?ま、どちらにせよ、長居はしないからな。
皐月:分かっていますわ。お酒の飲み過ぎで後に響いては困りますものね。
流生:そう言う事だ。理解が早くて、助かる。
皐月:ふふ。それでは、「八咫烏」の前にて、お待ちしております。
流生:ああ。
0:到着。
皐月:リューセイ!
流生:サツキ、待たせたな。
皐月:とんでもないですわ。…中に入りましょう。
流生:ああ。
皐月:さぁ、リューセイ!行きますわよ!
流生:ああ。
皐月:リューセイ、何飲みます?
流生:…やはり、ここはどうにも落ち着かんな。
皐月:そうですか?わたくしはリラックスできていますよ?
流生:お前が変わってんだよ。…飲み物はビールをくれ。
皐月:はいな。それでは、ビールと梅酒を頼みますわね!…おつまみはどうします?
流生:ふむ…無難に枝豆とエイヒレだな。
皐月:分かりましたわ。
流生:サツキ、同伴時間は2時間だ。把握しておけ。
皐月:社長なのに、その辺りはキッチリと守るのですね?
流生:ああ、店の状況的に人員不足だからな。
皐月:現在、従業員の方々は何人ほど、お店にいらっしゃるのですか?
流生:んー、魅剣、蘭丸、黄泉、凍夜の4人だけだな。ちらほら、体入(たいにゅう)も来るんだが、本人する奴が居なくてな。
皐月:リューセイ合わせても5人…確かにその人数だと、厳しいかも知れませんわね。
流生:ああ。店売り的にはマイナスになってないのが救いだ。
皐月:経営状況が安定してるのは、リューセイのお陰では無くて?
流生:ふ…口が達者になったな、サツキ。
皐月:え?うふふ…そんな事ないですわ。わ
皐月:飲み物も来たところですし、乾杯しましょう。
流生:ああ!
皐月:それで、リューセイ…例の件は大丈夫ですの?
流生:ああ…明るみになってはいない。…ヨミが紗凪を連れて来た時は少々、焦ったがな。
皐月:わたくしのお父様の力で「真人社長を血祭りに上げて」差し上げたと言うのに…この件が世間にリークされては……
流生:…分かっている。…しかし、まさかマヒトさんの後輩の晴風を使うなんてな。
皐月:当然ですわ。———わたくしの絢斗を死に追いやった憎むべき相手ですもの。
流生:死に追いやっただと?穏やかな話じゃないな。
皐月:中学生からの幼馴染でわたくしの恋人だった、掛け替えのない人。
流生:ふむ、要するに今回の件は「私怨」と言う訳か。
皐月:そうなりますわね。
流生:それで、その幼馴染と今回の件はどう関係してるんだ?
皐月:その疑問に答えると2時間をゆうに超えてしまう可能性がございますわ。
流生:その時はその時だ。
皐月:わたくしと、ハルカ、サナエは中学、高校と…切っても切れない腐れ縁なのです。
皐月:長い年月を過ごしてる内に、人の卑(いや)しい部分と言うものは必ずしも、浮き出てくるのです…
流生:…
0:過去、中学時代。
晴風:サナエー、サツキ!ご飯一緒に食べよ!
皐月:良いですわよ。
紗凪:ごめん、ハルカ!私、彼氏とこれからコンビニに行く約束があって…
皐月:あら。
晴風:え?あ、、そっか…うん。楽しんできてね!
紗凪:ごめんね…!じゃあ、またメールするね!
皐月:はいな。
晴風:サツキーー!彼氏って、どう作るの?
皐月:あらあら、ハルカ。サナエに嫉妬してますの?
晴風:え!?そ、そんな事ないって!
皐月:うふふ。
晴風《M》:嫉妬…?サナエに私が嫉妬…してるの?……確かに、羨ましいとは思うけど……この妙な胸のざわつきは一体どこから…?
0:高校時代、晴風は誰も居ない教室の隅で、啜り泣く。
晴風:何で、サナエだけが、あんなにチヤホヤされるの……
晴風:はぁ…サナエは顔が良いし、スタイルも良いし…対して、、私は…何で………こんなにも醜いの?……憎い…憎い…憎い……
晴風:……
皐月:ハルカ、吹奏楽の件なのですがーーー
晴風:…(涙)
皐月:は、ハルカ?!……何か、あったんですの?
晴風:…
皐月:うーん、眠ってしまわれましたわ…
皐月:また、改めますわね。
0:皐月が出ようとした瞬間。
真人(拓真):うあ!?
皐月:ごめんあそばせ!
真人(拓真):いてて……君は?
皐月:サツキですわ。
真人(拓真):サツキさん、僕はタクマだよ。
皐月:彼女に用がありまして?
真人(拓真):うん、でも眠ってるみたいだね?
皐月:ええ、実はわたしくも彼女にお話があったのですが…
真人(拓真):なるほど。お互い、ここに来る理由があった訳だね。
皐月:先程、タクマと名乗っていましたが…貴方、ケントと言う名前に覚えがありまして?
真人(拓真):ケント…!
皐月:その曇った表情を見るに、貴方は…
絢斗:あれぇーー!タクマぁ!こんなところに居たんだねぇー!まったく、ダメじゃないかぁ。…勝手に「巣」から出てきちゃ。
真人(拓真):…
皐月:ケント?奇遇ですわね!
絢斗:サツキぃ?今日は食堂じゃなかったんだね。
皐月:はいな。ハルカに、ご相談したい事がありまして。
絢斗:ハルカぁ?…あー、奥の方で寝てる子かぁー!…ふーん、なるほどねぇ。
0:舌舐めずる。
皐月:け、ケント!?
絢斗:そんな事よりぃー♪タクマぁー♪
真人(拓真):…っ!
絢斗:ほらぁ、おいでー!「ハウス」の時間だよぉ♪あっははははは♪
真人(拓真):…ぐっ!!
0:絢斗は拓真の首根っこを掴み、消える。
0:拓真と晴風の出逢い。
晴風:この櫻の木に来ると落ち着くなぁ。嫌な気持ちがスゥッーと身体の中から抜けていく感じがする。
晴風:段々…眠くなって…
真人(拓真):そこの君ー!
晴風:え?!
真人(拓真):隣、いいかな?
晴風:ご、ごめんなさい!!
0:晴風は慌てて、逃げ出す。
真人:あ……待って!
0:とある日の教室、窓から校庭を眺める。
晴風:皆楽しそうで良いなぁ…サナエはいつも彼氏とご飯食べてるし、サツキも最近忙しいみたいだし……はぁ…
真人(拓真):こんにちはー!
晴風:え!?あなたは…
真人(拓真):そんなに身構えないで欲しいな。君と話したくて…
晴風:そうまでして、私に拘(こだわ)る理由はなんですか?!何の魅力も無いし…
真人(拓真):そんな事ない。僕の瞳には十分、君が魅力的に映ってるよ。
晴風:…
真人(拓真):あ、自己紹介がまだだったね!僕は君より1つ上の3年、タクマだよ。
晴風:え、と…2年のハルカです!その……
真人(拓真):どうしたの?
晴風:あの時はごめんなさい…実は昔から、男の人が苦手で…
真人(拓真):いやいや、こちらこそごめんね。急に声を掛けて、驚かせてしまって。
晴風:いえいえ。
真人(拓真):ねぇ!今から、あの櫻の木の下でご飯でも食べない?
晴風:でも…
絢斗:タクマぁ、探したよ〜!
真人(拓真):ケント…!
絢斗:君さぁ〜本当に学習しないねぇー??ボクの「支配」から逃れられると思ってるの?随分と、甘く見られたものだねぇー!
真人(拓真):ケント、お願いだから…もうやめて!君に根こそぎ取られたせいで…お金が無いんだ…
絢斗:はぁ?!使えない玩具だなぁ…あー、、もういいや、君は用済み。……うーん……あー!ハルカちゃんだっけぇ?…君が代わりにボクの玩具になってよー♪
晴風:ひっ!!
真人(拓真):は、ハルカちゃんには手を出さないでっ!
絢斗:タクマぁ!なになにー?もしかして、ヒーロー気取りぃ?……この子に熱でもあるのかなぁ??…う〜ん、、顔は0点……でも、ボク好みの身体なんだよねぇーー♪あっははははは♪
0:舌を舐めずる。
晴風:…っ!
真人(拓真):ハルカちゃん、逃げてっ!!
晴風:…!(頷く)
絢斗:あはは、逃がさないよ〜♪
真人(拓真):ハルカちゃんっーーー!!
0:血涙を流す。
真人(拓真)《M》:僕は…最低で情けない男だ…助けなくちゃいけないのに…肝心な時に…足が震えて……
0:必死に逃げる晴風。
晴風:はぁ…はぁ…もうダメ…動けな…
絢斗:ハルカちゃん〜見ぃつけたぁー♪
晴風:っ…!
絢斗:大人しくしてればぁ、傷は付けないよぉー?すーぐーにぃ、済むからねえ〜♪あっははははははは♪
0:馬乗りになる。
晴風:や、やめて、来ないで!触らないで!!………い、いやぁああああ!!
絢斗:あは、あはは、あははははははー♪
晴風《M》:…身も心も…ボロボロ……私は…何の為に…この世に生を受けたの…?……渦巻くのは憎悪だけ……幸せを噛みしめてる人達が殺したいほど……憎い……憎い…サナエ………!
皐月:ハルカ…
0:サツキは偶然、体育館倉庫で横たわったハルカを目撃してしまう。
皐月:あの時見た、凄惨(せいさん)な光景。わたくしはハルカを気に掛ける事は無く、大好きな絢斗を奪われた悔しさと悲しさが…「殺意」を生んでしまいましたわ。
皐月:それ以来、ハルカは不登校を繰り返すようになりましたの。
流生:人の業とは計り知れないな…
皐月:サナエは突然の火事で、お家が全焼し、已む無く、高校を中退。わたくしとハルカは無事卒業しましたわ。その後も、わたくし達の関係は続いた。ケントに関しては「麻薬乱用」の容疑で捕まってしまわれたのですが。
流生:麻薬だと?
皐月:ええ。以前から、わたくしもケントの言動には不可解な点が見受けられましたが、まさか…ハルカの、「レイプ」の件にも薬が関係してるとは思いもよりませんでしたわ。
流生:薬と酒は度が過ぎたら、起爆剤に成り変わる。
皐月:…
皐月:ハルカがサナエへの憎悪を抱いてる事も存じておりましたわ。だから、わたくしは少々、「お手伝い」をしてあげたのです。
流生:お手伝い?
皐月:はいな。あれは、卒業して間も無い時の話です。
0:皐月の思惑。
絢斗:サツキぃー!久しぶりだねぇーー!君が
直々に、ボクの家に押し掛けてくるなんてぇー、大層な理由(わけ)があるんだろぅ??
皐月:察しが良いですわね。———今日は貴方に折り入って、ご相談がございますの。
絢斗:へぇぇー、相談ねぇ?賢い君なら、分かってると思うけどぉー!ボクは、「愉しくない
」遊びはしないからねぇー♪あっはははは♪
皐月:あらあら、それは杞憂ですわ。ケント、きっと貴方は満足し、「頂天」に達する事でしょう。うふふ♪
絢斗:ふぅん。すごい自信だねぇー?もし、退屈だったら…その綺麗な顔、歪ませちゃうからねぇー♪あはあは♪
皐月:ふふ、覚悟の上ですわ。…それで、本題なのですが、貴方には「通り魔」と言う程で…サナエと言う子を襲って頂きますわ!
0:サナエの写真を見せる。
絢斗:なるほど、なるほど。…顔、身体が随分と整ってるねぇ。まるで、アイドルみたいで可愛い子だねぇーー♪
皐月:ふふ、ご満悦そうですわね。
絢斗:うん!うん♪すごーく、「ヤリ甲斐」のある依頼だねぇーーどんな表情で悦んでくれるか、愉しみだよぉー♪
皐月:明日の深夜、この場所で「彼女」の人生を思う存分に狂わせてあげて下さいませ。
0:サナエのバイト帰りの場所を写真にて説明する。
絢斗:任せてよぉーー♪ボクが「薔薇色」の日々に変えてあげるからねぇーー♪あは、あははははーー♪
皐月:あ、ケント。…念の為、口調を変え、姿は変えておいて下さい。
絢斗:はぁ?なぜぇ?いつも通りじゃ、ダメなのぉー??
皐月:貴方はハルカを狂わせた件をお忘れですの?!
絢斗:あーー、顔0点の子の話ねぇー!それでぇ、どうしろと言うのぉ?
皐月:そうですわねぇ…ケントとは全くの別人を装って下さい。あからさまに悪人だと思われそうな姿と言動を心掛けて下さいませ。
絢斗:うーん、、こうかなぁ??…オラァ!金出しやがれ!このクソアマが!!
皐月:素晴らしいですわ!後は、全身を黒に染め、目出し帽なんかを被ったら、完璧ですわね。
絢斗:いつもと違う感じも中々、興奮するねぇーー♪あっはははははー♪
皐月:ふふ、それでは吉報をお待ちしております。
0:紗凪のバイト帰り。
通り魔:おい、そこの女止まれ!
紗凪:え?!
通り魔:…(ナイフを握る)
紗凪:ひっ!!!
通り魔:騒ぐなっ!妙な真似したら、このナイフがお前の喉元に突き刺さるぞ?
紗凪:…は…い…
紗凪:…
通り魔:肩に背負ってるバッグを寄越せ。
紗凪:…どう…ぞ…
通り魔:何だ?このハートのステッカーだらけの気味の悪い、財布は……
紗凪:…!か、返して下さい!!
通り魔:じゃかしいわ!オラァ!!(拳を振り上げる)
紗凪:うっ……
0:腹を殴られ、その場で蹲る。
通り魔:ほうほう、ひーふーみー……78000円か。中々、持ってんじゃねぇか!…他には……
金髪の青年:トカゲみたいな面構えの男、そこまでにしとけ。
通り魔:あん??
通り魔:…(サツキぃ…話が違うじゃないかぁ。)
0:全身、光沢の入った高級スーツの男が駆け寄ってくる。
紗凪:た、助け…!
金髪の青年:大丈夫かい?お嬢さん。
紗凪:…あ…有難うござい…
0:言い終わる前に気絶してしまう。
通り魔:…(この人ぉ、ホストかぁ?へへ、ホスト狩りといこぉー♪)
通り魔:お前……クラブエースのホストか!
金髪の青年:ほう?俺を知ってるのか?…なら話は早い。
通り魔:お前の、店のケツモチは確か………
金髪の青年:よく口の回る、トカゲ野郎だな。…それ以上、汚ねぇ息を吐き付けるなら。
通り魔:ま、待ってくれ!
金髪の青年:問答無用!!
0:鉄拳が顎を直撃。
通り魔:がはっ!
通り魔:…(つ、強すぎるよぉ……)
金髪の青年:「竜次」さんに報告するまでも無い。…末端のチンピラ風情が。
通り魔:…(気絶)
0:紗凪に近付く、ホスト。
金髪の青年:おーい、生きてるかい?
紗凪:んん…私は?!
0:気絶から目覚める紗凪。
金髪の青年:お嬢さん、夜道は気をつけなよ。さっきみたいな柄の悪い連中が街を徘徊(はいかい)してるからな。
紗凪:心に留めておきます!
金髪の青年:…盗られたのは金だけ?身体とかは大丈夫かい?
紗凪:はい、身体には一切、触れられていません。
金髪の青年:そうか。……盗られた金ってこれかな?……ほらっ!!
0:金髪の青年は通り魔から金を抜き取る。
紗凪:あ、有難うございます!
金髪の青年:気にするな。…それと、さっきから腹が鳴ってるみたいだが、飯はまだ済ませて無かったのかい?
紗凪:お恥ずかしい話、家が焼けてしまって…
金髪の青年:なるほどな……それ以上は言わなくて良い。…察した。…取り敢えず、飯行くかい?
紗凪:いえ、さすがに悪いですし…
金髪の青年:遠慮するな、俺自身も出勤前で腹に何か入れないと悪酔いしてしまうからな。
紗凪:出勤前?あー!!
金髪の青年:うお!?な、何だ急に!?
紗凪:お兄さんってホストさんですか??
金髪の青年:ああ、ホストに興味があるのかい?
紗凪:その逆です…
金髪の青年:俯き(うつむき)がちな様子を見るに、怖がってるのか?確かに世間からは煙(けむ)たがられる職業の一つだからな。
紗凪:でも、お兄さんは不思議と信じられます!
金髪の青年:そうかい?これでも、巷(ちまた)では恐れられているぞ?客を容赦なく殴るような、暴力ホストだぞ?さっきのトカゲ野郎は俺の事を知っているようだったが。
紗凪:それでも、私を助けてくれました。
金髪の青年:あーーーそれについては、ただの憂(う)さ晴らしだ。
紗凪:憂さ晴らし?
金髪の青年:ああ、客に飛ばれてムシャクシャしててな…まぁ、なんだ!合法で人を殴れるなら、最高だろ?
紗凪:はぁ…
金髪の青年:はは、ま!積もる話は近くの海鮮屋に着いてからにしようぜ。
金髪の青年:先に聞いておくが、魚介アレルギーとかは無いよな?
紗凪:大丈夫です!
金髪の青年:それは良かった。…そこの角を曲がった先に、海鮮屋「海の道楽者」がある。
紗凪:あ!あの海老がピースしてる看板ですか?
金髪の青年:そうそう、めちゃくちゃ美味(うま)いんだぜ!
紗凪:ほへぇー、とても楽しみです♪
金髪の青年:さあ、着いたぞ!
0:ゆるいイラストの海老が描かれた看板に目をやる。
紗凪:すごいー!!竜宮城みたいな外装ですね!
金髪の青年:はは、アニメの見過ぎだ。
紗凪:あ、すみません…つい、興奮してしまって…
金髪の青年:いやいや、さぁて、入るぞ!
紗凪:はい!
店主:いらっしゃいま…若(わか)?!
金髪の青年:ああ、ちょっと訳ありでな。
店主:なるほど、少々混んでいまして……カウンター席で大丈夫です?
紗凪:若??
金髪の青年:んあ?ああ、構わないぜ。んじゃ、ちょっくら邪魔するぞ!
店主:そちらのお嬢さんもどうぞこちらに。ご案内致します!
紗凪:え?あ、有難うございます!
金髪の青年:ははは!緊張してんのか?
紗凪:え!?だって、さっき…
店主:こちらです!ご注文の際は隣にある、備え付けのボタンを長押し、して下さいね。
紗凪:はい!
金髪の青年:俺の身分が気になるかい?
紗凪:や、ヤクザさん?
金髪の青年:ははは、さっきまで真っ直ぐに俺の事を見てたのにな!「海の道楽者」に入ってから挙動が変だぜ?
紗凪:ごめんなさい…
金髪の青年:ま、驚くのも無理もないか。…俺は鮫竜会(こうりゅうかい)の若頭、前嶋(まえじま)幸太郎(こうたろう)
紗凪:噂でしか聞いた事なかったけど、本当にヤクザとホストって近しい存在にあったんですね。
金髪の青年:まぁ、ホストの殆どのケツモチがヤクザと繋がりある店ばかりだからな。
紗凪:ケツモチ?
金髪の青年:ああ、「ホストクラブ」を建てるには莫大(ばくだい)な資金が必要になる。軽く、800万は超えるらしい。
紗凪:なるほど。
金髪の青年:そこで、俺みたいなヤクザ屋さんの出番って訳だ。ホスト側の毎月の売り上げの30%…みかじめ金さえ、支払ってくれれば店の手配の援助はしてやれるって事。
紗凪:大人の世界って感じですね。
金髪の青年:確かにお嬢さん、若そうだもんな。まぁ、要するに、金さえ払ってくれるなら、いくらでも店は貸せるって事よ!
紗凪:なるほど…はい、現在17歳です。
金髪の青年:こ、高校生!?
紗凪:正確には、高校の代ですが…中退してバイトしてます。
金髪の青年:そうか、そうか!偉いなあ!
紗凪:元々、家が貧しかった為、働かないと生活が苦しかったので。
金髪の青年:すまん…嫌な事を思い出させてしまったな…
紗凪:い、いえ!平気です。でも…
金髪の青年:住む場所が無い、か?
紗凪:え?
金髪の青年:家事で家が焼けちまったんだろ?
紗凪:はい…
金髪の青年:所持金、78000円。通帳の中に100000円…バイトでコツコツ貯めてた金、と言った所か。
紗凪:いつの間に通帳の中を…
金髪の青年:あー、すまんな!トカゲ野郎から、金とバッグを取り返そうとした時、その通帳がたまたま、落ちてきてな…
紗凪:そうだったんですね。
金髪の青年:中身まで、見るつもりは無かったんだが、ページが風で捲(めく)れててな。
紗凪:あ…
金髪の青年:まぁ、見てしまったお詫びと言っては何だが、舎弟(しゃてい)が使ってた安アパートで良かったら、貸してやる。
紗凪:ほ、本当ですか?!
金髪の青年:ああ、まぁ、あくまで「貸す」だけだがな。
紗凪:有難うございます!!とても助かります!
金髪の青年:家賃は安く負けといてやろう。…35000円でどうだ?
紗凪:はい!充分です!
金髪の青年:よし……ほれっ!!部屋の鍵な。
0:鍵を渡す。
紗凪:有難うございます!
金髪の青年:良いって事よ!…あ、そういや、お嬢さん、名前は?
紗凪:サナエです!
0:海鮮屋に皐月の姿が。
皐月《M》:ケント、しくじりましたか。…サナエは悪運が強いですわね。
皐月:その後も、サナエのお宅に髪の毛をポストに袋いっぱいに入れたり、腐った食べ物を配達したりしましたが…サナエは少しも動揺する事はありませんでしたわ。
流生:…サツキ、お前の執念が悍(おぞ)ましい。
皐月:うふふ。そこからはターゲットをハルカに変えましたの。
流生:ふむ。
皐月:これは…とある日の夕方、ハルカのお宅にお邪魔した時の出来事なのですが…
流生:…
0:ゲシュタルト崩壊。
皐月:ハルカー!いらっしゃいますか?
晴風:誰…
皐月:わたくし、サツキですわ。
晴風:帰って…
皐月:ハルカ?どこか具合いでも悪いのです?
晴風:いいから、帰れって言ってんだよ!!
0:玄関を開いた瞬間、血塗れた人形が投げる。
皐月:…この人形は……
0:3人の絆。
紗凪:ねぇねぇ、私達って、中学、高校と長年付き合って来たでしょ?だから、そのサンコイチの証にお揃いの物を購入しない?
晴風:うん、私は賛成!
皐月:ふふ、わたくしも異論はありませんわ。
0:雑貨屋を見て回る、3人。
紗凪:ねね!この人形なんてどうかな?
晴風:へぇ、サナエにしてはセンス良いじゃん。
皐月:ええ、一つはハルカそっくりで目が細くて、ちょっとぷっくらしてて。
晴風:え?やだ、一緒にしないでよ。…あ、この人形!サツキに似てる!容姿端麗で、身長高くて。
紗凪:あはは…ここまで、似てると恐怖を覚えるね。
晴風:サナエが持ってる人形も目鼻整ってて、とっても可愛い!でも、少し美化し過ぎてないかな?
皐月:ふふ。さて、買いましょうか。
紗凪:え、ちょっと待って!この人形高い…
晴風:え?嘘ぉ?!
皐月:大丈夫ですわ。わたくしに任せて下さいな。
晴風:さっすが!財閥の娘さん!
紗凪:3万円が財布の中から当たり前のように出てくる、高校生ってサツキくらいしかいないわね。
皐月:あら?おっほほ♪
0:サツキはナイフで歪んだ人形を拾い上げる。
皐月:この血、ハルカの?!……これは…?…「サナエ死ね」
皐月:彼女は既に「壊れて」しまっていた。
皐月:次の日もハルカを監視しましたわ。
流生:ここまで来たら、もはや病気だな。
皐月:うふふ。
0:人格破綻。
晴風:ぅああああ!!…殺す、殺す、殺す、殺す!!!
晴風:サナエをこの手で殺すぅう!!きゃは!きゃははははは!!
皐月:変わり果てた、ハルカを目の当たりにし、わたくしはある計画を思い付きました。
流生:ふむ。それが、今回の計画か?
皐月:はいな。ですが、思わぬ邪魔が入ったり、タイミングが合わず、頓挫(とんざ)を余儀なくされたのですが…
流生:…
皐月:どこからか流れてきた噂で、真人…いえ、「拓真」がホストをやってると聞き、わたくしは再び、行動しましたの。
0:紗凪が客になった日。
皐月:サナエ、風の噂で聞いたのですが…真人って言うホストに援助してるって本当ですの?
紗凪:え?!サツキ、どうしてそれを?!
皐月:あら、既に知ってるものかと思いましたわ。掲示板に書き込まれてますわよ?
紗凪:嘘でしょ?!
0:カタカタッとPCで検索する。
紗凪:……あ!
紗凪:…「ブランディッシュに通う、この女の実態はアバズレ、真人と言うホストに金も心も身体を捧げている。」
0:絶句する紗凪。
皐月:酷いですわね…誰がこんな書き込みを…
流生:その内容を投稿したのは?
皐月:IPアドレスから辿ったところ、「ハルカ」のPCから打ち込まれた事実が判明しましたわ。
流生:やはりか。
皐月:そこからはご存知の通り、ブランディッシュにお客としてハルカが現れ、真人に愛想を振り撒くフリをして…
流生:「サナエ」が店に現れるのを待った。
皐月:そして、わたくしはそのハルカの負の感情を利用しました。
0:皐月の策略。
皐月:ハルカー!何度も申し訳ありません。
晴風:サツキ?何…
皐月:はいな。貴女に有益な情報がございまして。
晴風:有益?は、何それ?……取り敢えず、上がって。
0:前回とは違い、部屋に通される皐月。
皐月:単刀直入に申し上げますわ。
晴風:?
皐月:貴女はサナエが憎くてたまらない。そうじゃ、ありませんこと?
晴風:…っ!
皐月:失礼ながら、ハルカの行動を数十年に辺り、観察させていただきましたわ。
晴風:勝手な事を…!
皐月:ええ、不謹慎なのは分かっています。…この人形…覚えてます?
0:血塗れの人形を見せる。
晴風:あたしが数十年前、怒りの余りあんたに投げた、サンコイチ人形…
皐月:そうですわ。この人形を見た時、ハルカがサナエに対して、どういった感情を抱いてるか知ってしまったのです。
晴風:…
皐月:そんな闇に堕ちてしまった貴女に、相応しい「舞台」を用意しましたの。
晴風:舞台?
皐月:ええ、サナエを殺害出来る機会を差し上げますわ!
晴風:…!!
皐月:わたくしの指定した日に行動して下さいませ。
晴風:いつ…?いつ殺れるの?ねぇー!!
皐月:そう焦らないで下さい。え?!…この匂い、貴女、薬やってますの?!
0:晴風は管状な物で、薬を吸い上げる。
晴風:すぅぅーー。
皐月:ハルカ、貴女…ケントに毒されて…?
晴風:何の事ぉー?きゃは、きゃははは♪
皐月:…それで、日時なのですが。
晴風:んんー?
皐月:わたくしの調べたところ、紗凪と真人がアフターに行く日がありますの。
晴風:すぅぅうー。
皐月:この日が貴女を「最高潮」に高まらせてくれる、絶好の日になりますわ!
皐月:そこからは、わたくしの指示通りにハルカを操り、サナエを殺させた。
流生:だが、予想外な邪魔が入った。
皐月:ええ。当時、あの弱蟲で情けなかった彼が身を挺(てい)して、サナエを守るとは思いもしませんでしたわ。
流生:…
0:事件当日。
真人:サナエ…事前に予約した、ホテルがあるんだけど。
紗凪:え?なぁに、そのサプライズ!
真人:はは、今まで僕も忙しくて、サナエの相手をしてあげられなかったからね。
紗凪:マヒト…!ありがと…(涙)
真人:ああ、さぁ行こ……君は?!
紗凪:どうしたの?マヒト??
0:突然、黒ずくめの女が現れる。
晴風:サナエーー!!…あんたばっかりずるいのよ!いつもあんたばっかり良い思いしてぇ……!!
紗凪:その声は…ハルカ?!
真人:…君はハルカちゃんかい。何故、ここに?
晴風:すぅぅうー!
紗凪:薬…?
真人:この子の目…虚(うつろ)だ…まるで死んだ魚のようだ。…病院へ連れていこう。サナエ。
紗凪:…そうね。
晴風:きゃは♪死ねぇえーー!!サナエーー!!きゃはは、きゃはははははー♪
0:ナイフを振りかざす。
真人:さ、サナエ!!危ないっ!!……ぐっ!!
紗凪:ま、マヒト?!マヒト、しっかりして!!マヒト!!
晴風:きゃは♪お前の大事なモノ奪ってやったー!!いい気味だ♪きゃは、ぎゃはは
はははー♪
紗凪:ハルカ…どうして?!何でこんな事を……!
皐月:当然、この瞬間もわたくしは見ていましたわ。
流生:お前は傍観者か。
皐月:うふふ。わたくしの目的はケントを奪った、ハルカの排除。そして、マヒト(拓真)も消そうと思ってたので二人が「消えて」好都合でしたわ。
流生:ふん…果たして、サナエは全てが仕組まれた構図だと「点と点で繋がっている」と気付いているのか。
皐月:さぁ、どうでしょう。不安ならば、あの子も消して差し上げましょうか?
流生:…いや、その必要はない。
皐月:…
流生:それで、晴風は檻の中に居るのか?
皐月:ええ、終身刑(しゅうしんけい)待ちですわ。
流生:…胸糞悪いな。
皐月:お酒が不味くなってしまいますわね。
流生:事故とは言え、マヒトさんがこの世からいなくなったお陰で今のブランディッシュがある。
皐月:うふふ、本当に皮肉な話ですわね。
流生:ふん…
皐月:さてと、そろそろ参りましょう。
流生:ああ。
0:最終章に続く。