台本概要

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タイトル 【ジェアル】探偵助手は問答を繰り出す
作者名 アール/ドラゴス  (@Dragoss_R)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(女2、不問3)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 勤勉な探偵助手は覗き見る。
虚ろな偽りを見抜く、硝子の魔具を。
怪死事件の犯人捜し。暴かれる龍。再び響く三味線の音。
今も、悪意はどこかに潜んでいる。

「さあ、聞かせていただきましょう。あなたはその時、どこにいましたか?」


『歴史の旅人とジェアルの神々』Episode:5

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
アライブ 不問 64 自称「不可思議の調査団」団長。 ジェアルに辿り着いた旅人。
ロイワット 59 「ホルス探偵事務所」の助手。 少しおっちょこちょい。
セプンス 不問 37 放浪の旅芸人。 三味線を使い、芸事百般を語り聞かせる。
キーラ 35 カジノ「Clown」(クラウン)の支配人。 “女帝”というあだ名は不満らしい。
ゼルム 不問 39 遥か昔、大地を統べた龍。 思いのほか口調が軽い。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:夜。アライブの取っている宿。 : アライブ:あー、今日も楽しかったなぁ!…あ、そういえばカロル祭まであと十日かあ。もうそんな経ったんだ、全然実感湧かないや。 : アライブ:ヴェールさんの屋台のお手伝いさせてもらえるなんて、楽しみだなー…!よし、お祭りに備えるためにも早く寝なきゃ。最近遊んでばっかだし…。 : アライブ:…うん、寝よっ!おやすみー! : 0:場面転換。アライブが眠りから覚めると、そこは見知らぬ部屋だった。 : アライブ:…ぅん?…ここ、どこぉ…? ロイワット:お目覚めになられましたか。 アライブ:うわぁっ!? : 0:アライブの横に立っていたのは眼鏡の女性だった。 : アライブ:…って、ロイワットさん…!? ロイワット:やっと起きましたか…。おはようございます、団長さん。五日ぶりですね。 アライブ:はい、五日ぶり…。っていや、それよりもここどこですか!? ロイワット:あぁ、すみません。ここは探偵事務所が保有する、いわゆる「尋問部屋」というやつです。 アライブ:じ、尋問!? ロイワット:そんなに怖がらないでください。あなたが何も悪いことを隠していなければ何も起こりませんから。 アライブ:悪いことって…。というか、なぜ起きたら尋問部屋!?私確か宿で寝たはずなんですけど! ロイワット:仕方なかったんです。ここに連れてくるため、部屋を訪ねて何回も揺すったのに団長さん起きなかったので…。転移魔法でここまで運ばせていただきました。 アライブ:そ、それって拉致なんじゃあ…。 ロイワット:事情聴取のためですから!あぁ、あと、今回お呼びしたのはあなただけじゃないんです。 アライブ:へ…? ロイワット:みなさーん、入ってきてください! : 0:ロイワットがそう言うと、三人の人物が扉から入ってきた。 : キーラ:あら、旅人じゃない。 セプンス:おお、これはこれは。 アライブ:キ、キーラさんにセプンスさんに、ゼルムさ――、 ゼルム:ツッコミ役ーっ! アライブ:わぷっ…!? : 0:アライブに抱きつくゼルム。 : アライブ:い、いきなり抱き着かないでください!あとまだ私のことツッコミ役って呼ぶんですか!? ゼルム:だって、我が居(お)ったらお主の立ち回りほぼツッコミだけになるじゃろ。まあそんなことはどうでもよいのじゃ!聞いてくれツッコミ役! ゼルム:そこな女子(おなご)が美味い飯を我に捧げてくれるというから着いて行ったらそこに供物はなく、何も与えられぬまま現在じゃ!あまりに手酷い仕打ちじゃないかのぅ! ロイワット:だからこれが終わったらきちんとご飯振舞いますってば!それに、このジェアルの街を脅かす危機なんです! ゼルム:…なに? キーラ:…あら、ということは「連続怪死事件」のお話かしら。 セプンス:ふむ。 ロイワット:…あれ待ってください、私説明してませんでしたっけ? キーラ:少なくとも私は「大事なお話がある」、とだけ言われて連れて来られたわね。 セプンス:同じく。 ゼルム:我はさっき言ったが騙された。 ロイワット:……もう!私ホンット馬鹿!本当にすみません皆さん…!改めてご説明させてください!えーっと…っ! セプンス:まあそう焦らず。落ち着いて、深呼吸でありまするー。 ロイワット:す、すみません…。(深呼吸)こほん…、では、まずはおさらいからですが…。 : ロイワット:我らが名探偵ジャック先生は一週間弱前、この街で起こる怪死事件について一つ仮説を立てられました。 : ロイワット:それは、「古(いにしえ)の悪魔が魂を抜き取り利用しようとしているのではないか」、というものです。 : ゼルム:騎士団連中や街の張り紙で大々的に伝えておったな。やはりか、と思った。 ロイワット:…“やはり”? ゼルム:おっと、なんでもないぞ。 セプンス:……。 ロイワット:…そしてそうであった場合、「悪魔には人間の協力者がいる可能性がある」と考えたのです。 キーラ:なるほど。確かにこれだけ大々的に張り出しても被害は減るどころか増えていっているし、全然あり得る話ね。 アライブ:…えーっと、つまり…、えぇ!?私たち疑われてるってことですか!? ロイワット:いえ、あなたたちが最重要容疑者という訳ではありません。ここ数日外に出ていることが多い人物を手当たり次第に洗っているんです。なにせ手がかりが何もありませんからね…。 ロイワット:取り調べが一人一人じゃないのは、皆様が一緒に居るところをよく見かけるという話だったので、もしも不審な点があれば指摘できるように。 セプンス:成程。そういうことでありましたか。そういうことであればこのセプンス、喜んで協力いたしまするー。 ゼルム:うむ!なんでも答えてしまうぞ! キーラ:私の情報で役に立つなら。 アライブ:お、同じくです! ロイワット:ありがとうございます。 セプンス:ところで、本日、探偵殿はいらっしゃらないので? ロイワット:えぇ。この仕事は私一人で十分なので! : ロイワット:それでは、調査を開始します。正直にお答えください。まず第一の質問。 : 0:そう言いながらロイワットはルーペを取り出す。 : ロイワット:本日の2時35分、残念なことにまた被害者が出ました。その時、あなた方はどこで何をしていましたか?…まず、団長さんから。 アライブ:わ、私は宿で寝てました!寝たのは確か、日付を跨ぐ前だったと思います。 : 0:ロイワットがアライブをルーペ越しに見る。 : ゼルム:…さっきからなんじゃ、その珍妙なものは。 ロイワット:…ふむ、ありがとうございます。では次、支配人さん。 キーラ:私は「Clown」(クラウン)で作業をしていたわ。カロル祭も近づいてきたから、やることが多くて。これに関しては付き添いがいたからアリバイがあるわよ。 : 0:次はルーペ越しにキーラを見るロイワット。 : ロイワット:なるほどなるほど…。わかりました。…今年のカロル祭も楽しみにしていますね。 キーラ:えぇ…。やるからにはご期待に沿えるものを用意することを約束するわ。 ゼルム:待て待て。なんか何事もないかのように進んでおるが!あの女子(おなご)が目に近づけておるあの硝子の板?は一体何なのじゃ? セプンス:恐らく、“レリック”であると思いますが…、ロイワット殿、如何(いか)に。 ロイワット:あぁ、すみませんまた何の説明もなしに取り出して…、その通りです。これは、相手の感情を観察できるルーペのレリックです。尋問をするときはこれを使わせていただきますね。 ゼルム:レリックぅ?ハハ、何を言っておるのじゃお主ら。レリックというのは、魔力を帯びた宝石や、焔を纏う花などの自然の「飾り物」を言う。アレは完全に手が加わっておるじゃろう! セプンス:…それは今より三百年ほどを遡った大昔の話でありまする、ゼルム殿。 アライブ:武器とかを作る加工技術がこの数百年で劇的に上がったおかげで、レリックは今や、さっき言ってたような特殊な鉱物や植物を加工して作られる、私たちを手助けする「道具」となったのです! ゼルム:…え、我が寝とった間、そんなに人の子らの技術進歩しまくっとったの……? アライブ:というか、こういう話を今したらキーラさんとロイワットさんにバレちゃいますよ!?ゼルムさんが王龍だってこと知ってるの私とセプンスさんだけなんですから…!! キーラ:…あなたたち、さっきから何の話をしているのかしら?特に、最近噂の大喰らい…、ゼルムさん、だったかしら。レリックを知らない…? アライブ:ほらっ、どうするんですか…! ゼルム:…んー、困ったのぅ。 ロイワット:…ふむ。不自然ですが、今は直近のアリバイ確認が先です。続けましょう。それでは次は旅芸人さん。 セプンス:承知。手前は街の中を散歩しておりました。勿論犯行現場には立ち会っておりませんでしたが…。 アライブ:えぇっ、散歩ーっ!? ロイワット:…嘘は、ついていないようですね。 キーラ:っ、セプンス!この怪死事件が起こるのが0時から5時の間だけってことくらい知ってるでしょう!?現におんなじ時間に被害者だって出ているのだし…。なんでそんな危険なことを…っ。 セプンス:すみませぬキーラ殿。前にも申したと思いまするが、手前はとある御仁(ごじん)を探しておりまして。夜を好むお方なので、もしやしたらと思いまして。 アライブ:だとしても危ないですよ!いつ誰が狙われるかもわからないのにっ…。 セプンス:危険なのは承知の上でございまする。それに、これはついでではありましたが、丑三つ時、誰もいない街並みを歩くことで語り部として得られるものもあるだろうと思い至った次第。 キーラ:…やっぱりあなた、変わってるわ。…今回は無事だったからいいけれど、次そんな危ないことをしたら承知しないわ。こっぴどく叱ってあげるから。 セプンス:はは、肝に銘じておくと致しましょう。ご心配痛み入りまする。 ゼルム:…むぅ? ロイワット:さて、それでは最後、ゼルムさん。あなたはどこに? ゼルム:う、うむ!その時刻にはもう我は寝床で寝ておったはずじゃぞ。正確な時刻はわからぬがな。 ロイワット:…なるほど、ありがとうございます。どうやら全員アリバイはあるようです。…しかし、ゼルムさん。あなた、何か知っていませんか? ゼルム:ぎくっ。 ロイワット:あなたをこのルーペで見ても悪意は見えませんでした。しかし…。少しだけ、動揺の色が見えました。それに、先ほどのレリックを知らないという発言も気がかりです。 キーラ:そうね。…それに、あなたを街で見るようになったのは最近のこと。疑いたくはないけれど…、なにか訳ありなのかしら? ゼルム:む、むぅ…。そうー、じゃのぅ…。 : ゼルム:…あまり気は進まぬが、これも人の子らを守るため。致し方なし、か。…実はのぅ、我はヒトではないのじゃよ。 ロイワット:ヒトじゃ、ない…? : 0:ロイワットが怪訝な目をしながらルーペを目に当てゼルムを見る。 : ゼルム:我が真の名は、「ゼルム・アーガンド」。五百年前に眠りについた、この地を守護せし者。人の子らは我のことを「王龍」、と呼ぶようじゃがのぅ。 キーラ:はぁっ!?何を言って…っ。 ロイワット:…う、うそを、言っていない…?確かになんか物言いが全体的に壮大で、名前も同じだと思ってたけれど…っ、ほんとにあの王龍様なんですかっ!? ゼルム:そうとも。そこな芸人とツッコミ役にはとある事情から先に話しておったのじゃが、王龍が人里にいると知れれば混乱を招きかねんのでな、ずっと伏せておったのじゃよ。 キーラ:いやでもっ、それはわかりましたけれど…。なんで人間の姿をしているのですか…? ゼルム:そりゃあ、我が人を愛し、人を護る者であるがゆえよ!王龍たるもの、人の形に変容くらいできねばな! アライブ:私もこれに関してはどういうことか未だにわかりません…。 セプンス:まあつまり、ゼルム殿の不審な点は、こういうことでありまする。 ゼルム:これからは伝えなければならぬところには我の正体を伝えても構わぬが、この街の住民すべてに言いふらすのはやめてくれると助かる。理由はさっき言ったのと、 ゼルム:我、逸話的にはかなりカッコいいストイックなドラゴンで通っておるのに、いざ蓋を開けてみればこんな感じのテキトードラゴンじゃから、我のイメージを護りたい。 キーラ:ふ、不純…。 ロイワット:私や支配人さんの王龍様に対するイメージはとうに崩れ去りましたが…、そ、そうだったのですね。…今までの無礼をお許しください。 ゼルム:はは、構わぬ構わぬ。それにそんな堅苦しくならなくともよい。なんならもっと馴れ馴れしく、友好的に、フレンドリーに来てくれてよいのじゃぞ!我、人の子らを愛しておるからな! キーラ:流石に王龍様相手にそういう訳にはいかないわよ…? ロイワット:と、ともかく!わかりました。そういうことであれば、今日の取り調べが終わったら、少し五百年前の魔神襲来のことを聞かせていただけませんか。 アライブ:…っ。 ゼルム:勿論じゃ。凄惨な話ではあるが…。命を奪わせぬためじゃ、なんでも聞くとよい。 ロイワット:感謝いたします。…さて。伝承にはこうあります。「再びジェアルに脅威が蔓延る時、王龍は目を覚ます」と。 アライブ:そ、それって…。 セプンス:此度の事件はジェアルを脅かすほどのものである…、ということでございまするな。 キーラ:…王龍様が実際に目を覚ましてここにいるのだし、その可能性は限りなく高いわね。 アライブ:そういうことなら、大事を取ってカロル祭は中止にしたほうが良いと思います!…もしも本当に悪魔“アシュタレト”が事件を引き起こしているのなら、人が集まるカロル祭はきっと狙われるでしょうし…。 キーラ:ええ。私もそう思って、ヴェールと一緒に言いに行ったのだけれどね。騎士団の人たちが、「毎年欠かさず開催してきた伝統的なお祭りだから、中止はできない」って言って聞いてくれなかったのよ。 セプンス:それならば、事情を深く知っておられるシーセン殿に協力を仰げばよろしいのでは。 キーラ:勿論、彼にも話したわ。でも、どうやらシーセンも開催賛成側らしいのよね…。一応、厳重警備で、0時前には全ての屋台を撤収させると入っているのだけれど…。 ゼルム:ふむ、それだけでは不安じゃのぅ。悪魔は残忍かつ狡猾(こうかつ)じゃ。いきなり昼に姿を現せば、街が阿鼻叫喚(あびきょうかん)で満ちることは必定(ひつじょう)。それに、悪魔の力は強大じゃ。 ロイワット:いくら厳重警備と言えど、災厄の悪魔を人の力で止めきれるとは思いません。 アライブ:そ、そんなのどうすればいいんですかっ! セプンス:“魔神殺し”を見つける。それしかないかもしれませぬな。 アライブ:っ…! ロイワット:っ、なるほど!王龍様、「魔神殺しの英雄譚」で語られる英雄は実在するんですよね。 ゼルム:応とも。どこに行ったかはわからぬが、その伝承通り、五百年前に魔神を打ち倒したのは大剣を携えた名無しの英雄じゃ。奴が神であるならば、まだ生きてこの地の何処かを彷徨っておるはずじゃ。 キーラ:…確かにその英雄さえ見つけられれば、万が一魔神が蘇っても、カウンターになってくれるかもしれないわね。 セプンス:然り。どこにいるかはわかりませぬが…。それに、もしもその者が本物の英雄であるのならば、見つからずとも魔神が再臨した時点で必ず現れ、我らを救ってくださるはずでありまする。 ゼルム:しかし、やはり最も良いのは魔神が招来される前に悪魔を殺すことじゃ。どれ…。我も夜中、街を見張ってみることにしよう。 アライブ:……。 キーラ:…団長さん? アライブ:は、はいっ、なんです…? キーラ:…いえ、別に。「魔神殺しの英雄譚」の話が出るとあなた、いつもその変な表情になるから気になってしまって。 アライブ:へ、変な表情してましたか、私!? ロイワット:…そうですね。前にジャック先生がいた時もそうでしたが、いつも団長さんは悲しいような、嬉しいような…。そんな絶妙な表情になるんですよね。 アライブ:え、えぇ…?自覚ないんだけどなあ…。 セプンス:確か、アライブ殿は英雄が持つとされている「願いを叶える力」で叶えたい願いがあるとお聞きいたした。 アライブ:そ、そうですね…。 キーラ:あら、そうだったの。それは初耳ね。 ゼルム:ほぅ。その願いとは? アライブ:それはヒミツで…。あんまり人に言える願いでもないので。 ゼルム:なんじゃ。お悩み相談ならこの我、いくらでも乗ってしまうぞ? キーラ:そうよ。セプンスもだけれど、私たちのことを少しは頼ってくれていいのよ? セプンス:はは、お心遣い、痛み入りまする。しかし、人探しに関しては本当に手前の抱える問題ですので…。 アライブ:わ、私も自分の問題なので。気持ちだけいただいておきますね…! ロイワット:…って、あぁ!話がだいぶ逸れてしまいましたが、まだ皆さんに聞かないといけないことが沢山あるんでした!すみません、手早く終わらせますので、もう少しだけ時間を頂戴しても…? キーラ:ふふ、本当おっちょこちょいなのね。私は構わないわよ。 ゼルム:我も暇じゃからなあ。 セプンス:…あぁ、すみませぬロイワット殿。手前、すっかりとある用事があることを忘れておりました。このあたりでお暇しなければなりませぬ。 ロイワット:そうですか…。では、本当にすみませんが、また後日質問をさせていただいてもよろしいでしょうか? セプンス:勿論でありまする。それでは、少しお先に失礼いたしまするー。 アライブ:はい、また会いましょうねー! キーラ:今度の語りも楽しみにしているわ! セプンス:感謝の極み。それではー。 : 0:セプンスが部屋を出ていく。 : ゼルム:…それにしても、あやつの用事とはなんなのじゃろうな? キーラ:さあ?セプンスとはもう一か月以上の付き合いだけれど、未だに謎も多いのよね…。 アライブ:でも私、ミステリアスなセプンスさんの雰囲気、カッコ良くて好きです…! キーラ:ふふ、あなたはカッコいい人が好きなのね。 アライブ:はい!カッコイイ人、憧れてるので…! ロイワット:…えーっと、質問をしてもよろしいでしょうか? アライブ:あぁ、そうだった!すみません、どうぞ! ロイワット:いえ、こちらこそ。では、身の回りに不審な人物などは―――。 : 0:場面転換。「尋問部屋」を出て、帰り道。日が暮れかかっている。 : ロイワット:皆さん、本当にすみませんっ!私の容量が悪くてこんな時間までかかってしまって…! キーラ:全然平気よ。私のカジノの開店にはまだ一時間以上あるし。王龍様も団長さんも暇でしょう? ゼルム:うむ、暇じゃ。なんなら今日は我、その「かじの」とやらに邪魔しようと思っておった。…その前に飯じゃが。 アライブ:私も久しぶりに「Clown」(クラウン)行きたいです! キーラ:ふふ、わかったわ。今日は私はディーラーだけれど、挑戦なら受けて立つわよ。 アライブ:運なら負けないですよぉー! ロイワット:…そういえばこの前はありがとうございました、支配人さん。私も先生も、いいリフレッシュになりました。 キーラ:いいのよ。息が詰まったらいつでも遊びに来て。友人は歓迎するわ。 ロイワット:ありがとうございますっ! アライブ:ロイワットさんも「Clown」(クラウン)行ったんですか? ロイワット:はい、先生と一緒に。とても楽しかったですよ! ゼルム:むぅ、そう言われるとますます「かじの」が楽しみになってきたのぅ! アライブ:今度はセプンスさんも誘って―――。 : 0:いきなり遠くから魔獣の咆哮のようなものが聞こえる。 : キーラ:っ、今のは!? ロイワット:魔獣が街の中に入ってきたんでしょうか!? ゼルム:なんじゃと!? アライブ:前にも「Clown」(クラウン)で魔獣が暴れたことがありましたよね…!? キーラ:あれと同じだとしたら被害が出るわね…っ。三人とも、先に行ってて。私は急いでレリックを持ってくるわ…っ! : 0:キーラが走っていく。 : ロイワット:私たちは急ぎましょう! アライブ:はいっ! : 0:場面転換。大型の魔獣が暴れている。 : アライブ:「Clown」(クラウン)の時よりも二回りくらい大きいっ…! ロイワット:それに気を付けてください、どうやらあの魔獣、知性が高いです!魔法を使ってきますっ…! : 0:魔獣が三人に向けて火炎を放つ。 : アライブ:くっ、火炎の息吹っ…、でもそれなら…っ!「水を」っ! : 0:アライブが水の玉を出して威力を弱める。 : ロイワット:っ、ナイスです団長さんっ!王龍様!元の姿に戻って魔獣を! ゼルム:いや、今ここで我が変化すれば街への被害が洒落にならん!あの娘が駆けつけるのを待ったほうが良い! ロイワット:しかし、これを持ちこたえるのはっ…! アライブ:二人とも、またなにか吹いてきます! : 0:次は氷の息吹を放つ魔獣。 : アライブ:氷の息吹っ…!?すみません、私の水じゃあどうにもできませんっ! ロイワット:ええいっ、私が何とかするしかないですね…!「稲妻」っ! : 0:ロイワットが雷を放つが魔獣は意にも介さない。近くの住民たちが混乱している。 : ロイワット:電撃が効かないか…っ!団長さんは近くの皆さんの避難誘導を! アライブ:で、でもそれじゃあロイワットさんが! ロイワット:私は平気です、それに最終手段として王龍様もいらっしゃりますし! : 0:再び炎を放つ魔獣。道が燃える。 : ロイワット:まずいっ、炎で道が! アライブ:「波を」っ! : 0:アライブが水流を生み出し何とか鎮火する。 : アライブ:今のうちに皆さん、避難を!もうじき騎士団の人たちも来ますからねーっ! ロイワット:もうなりふり構っていられません!王龍様! ゼルム:…仕方あるまい、我が真の姿を見せるしかないかっ! : 0:その時。 : セプンス:「鶴声」(かくせい)。 : アライブ:(M)これは…、三味線の音と共に、魔獣の身体が地面から伸びてきたツルによって拘束された…。三味線ってことは!? : アライブ:セ、セプンスさんっ!? セプンス:ふぅ、危ない所でしたな。しかし、ご安心召されよ。手前が来たからにはもう手出しはさせませぬ。 ロイワット:旅芸人さん、魔獣がっ! セプンス:ゥン? : アライブ:(M)拘束を引きちぎり、魔獣が氷の息吹を放とうと大口を開ける―――。 : セプンス:御免。「七段恋慕」(しちだんれんぼ)。 : アライブ:(M)言葉と共にセプンスさんが綺麗な三味線を奏でると、いきなり魔獣の身体が切り刻まれた…!? : ゼルム:なにぃっ!?その技はっ!? アライブ:す…、凄い。 ロイワット:…何も出さずに相手を切り刻む魔法なんて、初めてみました。 セプンス:ははは。手前は放浪の身ゆえ、度々魔獣に狙われることがありましてなあ。この技は、対魔獣用に習得したモノでありまする。 ロイワット:そうだったので――、旅芸人さんっ! : 0:魔獣が最後の力を振り絞りセプンスに喰らいつこうとする。 : セプンス:なあに。 : セプンス:それくらい見切っておりまする。 : セプンス:「幻月」(げんげつ)。 : アライブ:(M)セプンスさんはいつのまにか魔獣の後ろに立っており、刀のような武器で魔獣の首を斬り割くと、魔獣は動かなくなった…。 : セプンス:…さて。これにて一件落着でありまするー。 : 0:セプンスが三味線を弾くと、辺りの人々から拍手が起きる。そして、そこにキーラがやって来る。 : キーラ:…よかった、私の出る幕はなかったようね。 アライブ:キーラさんっ! ロイワット:今、先ほどの旅芸人さんが魔獣を倒してくれてっ! キーラ:…さっきの旅芸人ってセプンスのこと?どこにも居ないけれど。 アライブ:えっ? : 0:見渡すと、そこにはもうセプンスの姿はどこにもなかった。 : アライブ:な、なんで!?さ、さっきまでそこにいたのにっ…! ロイワット:…まあ、なにはともあれ、みなさんのおかげで被害が少なく済みました。探偵助手として感謝を申し上げます。 アライブ:いえいえ! キーラ:私は何もしていないけれどね。 アライブ:それにしても…、あぁー、さっきのセプンスさん本当にかっこよかったなあ…。私もあんなかっこよく魔獣を倒してみたいなあ…。 ゼルム:……。 アライブ:あれ、ゼルムさん? ゼルム:…のぅ、お主ら。 : ゼルム:奴は、本当にただの旅芸人なのか? : 0: : セプンス:遠からんものは音にも聞け、近くば寄って目にも見よ。 : セプンス:此度の語りは貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)! : セプンス:神の子でありながら邪悪を宿す者、命を追われ天界より逃げ出す! : セプンス:送られてくる刺客を倒し、あまねく試練を乗り越えたその果て、いざ神の座へ返り咲かん! : セプンス:さあさあ、ご静聴あれ!切った張ったの物語。あっ、始まり始まりーっ! : 0:To be continued. 次の展開(仮) セプンスが容疑者に上がる→次の回でアライブはセプンスのことを知る→ジャック、ロイワットからヴェールが行方不明になったということを話される。 しかしセプンスの容疑は晴れていない。最後の最後、シーセンがアシュタレトに身体を乗っ取られていたことが発覚。ロイワット死亡。 →魔神が目覚める。そこにゼルムが駆けつける。そしてアライブの過去が開示される。→ヴェールがベルフェという真の名を明かす。そして魔神と悪魔を今度こそ打ち倒す。 →なんやかんやあってアライブが普通の人間に戻り、ロイワットの葬式をして、「私はアライブ!不可思議の調査団の団長です!」で終わり。 第六話登場 旅芸人は言の葉を紡ぐ アライブ セプンス/オルペース ヴェール 第七話登場 悪魔は人々を嘲笑う アライブ シーセン/アシュタレト ジャック ロイワット キーラ 第八話登場 魔神は目覚め闇が蔓延る アライブ アシュタレト ゼルム セプンス 第九話登場 英雄は現れ邪悪を断つ アライブ ベルフェ/ヴェール ゼルム オルペース/セプンス アシュタレト 第十話登場 旅人は遂に辿り着く アライブ ヴェール セプンス キーラ ジャック

0:夜。アライブの取っている宿。 : アライブ:あー、今日も楽しかったなぁ!…あ、そういえばカロル祭まであと十日かあ。もうそんな経ったんだ、全然実感湧かないや。 : アライブ:ヴェールさんの屋台のお手伝いさせてもらえるなんて、楽しみだなー…!よし、お祭りに備えるためにも早く寝なきゃ。最近遊んでばっかだし…。 : アライブ:…うん、寝よっ!おやすみー! : 0:場面転換。アライブが眠りから覚めると、そこは見知らぬ部屋だった。 : アライブ:…ぅん?…ここ、どこぉ…? ロイワット:お目覚めになられましたか。 アライブ:うわぁっ!? : 0:アライブの横に立っていたのは眼鏡の女性だった。 : アライブ:…って、ロイワットさん…!? ロイワット:やっと起きましたか…。おはようございます、団長さん。五日ぶりですね。 アライブ:はい、五日ぶり…。っていや、それよりもここどこですか!? ロイワット:あぁ、すみません。ここは探偵事務所が保有する、いわゆる「尋問部屋」というやつです。 アライブ:じ、尋問!? ロイワット:そんなに怖がらないでください。あなたが何も悪いことを隠していなければ何も起こりませんから。 アライブ:悪いことって…。というか、なぜ起きたら尋問部屋!?私確か宿で寝たはずなんですけど! ロイワット:仕方なかったんです。ここに連れてくるため、部屋を訪ねて何回も揺すったのに団長さん起きなかったので…。転移魔法でここまで運ばせていただきました。 アライブ:そ、それって拉致なんじゃあ…。 ロイワット:事情聴取のためですから!あぁ、あと、今回お呼びしたのはあなただけじゃないんです。 アライブ:へ…? ロイワット:みなさーん、入ってきてください! : 0:ロイワットがそう言うと、三人の人物が扉から入ってきた。 : キーラ:あら、旅人じゃない。 セプンス:おお、これはこれは。 アライブ:キ、キーラさんにセプンスさんに、ゼルムさ――、 ゼルム:ツッコミ役ーっ! アライブ:わぷっ…!? : 0:アライブに抱きつくゼルム。 : アライブ:い、いきなり抱き着かないでください!あとまだ私のことツッコミ役って呼ぶんですか!? ゼルム:だって、我が居(お)ったらお主の立ち回りほぼツッコミだけになるじゃろ。まあそんなことはどうでもよいのじゃ!聞いてくれツッコミ役! ゼルム:そこな女子(おなご)が美味い飯を我に捧げてくれるというから着いて行ったらそこに供物はなく、何も与えられぬまま現在じゃ!あまりに手酷い仕打ちじゃないかのぅ! ロイワット:だからこれが終わったらきちんとご飯振舞いますってば!それに、このジェアルの街を脅かす危機なんです! ゼルム:…なに? キーラ:…あら、ということは「連続怪死事件」のお話かしら。 セプンス:ふむ。 ロイワット:…あれ待ってください、私説明してませんでしたっけ? キーラ:少なくとも私は「大事なお話がある」、とだけ言われて連れて来られたわね。 セプンス:同じく。 ゼルム:我はさっき言ったが騙された。 ロイワット:……もう!私ホンット馬鹿!本当にすみません皆さん…!改めてご説明させてください!えーっと…っ! セプンス:まあそう焦らず。落ち着いて、深呼吸でありまするー。 ロイワット:す、すみません…。(深呼吸)こほん…、では、まずはおさらいからですが…。 : ロイワット:我らが名探偵ジャック先生は一週間弱前、この街で起こる怪死事件について一つ仮説を立てられました。 : ロイワット:それは、「古(いにしえ)の悪魔が魂を抜き取り利用しようとしているのではないか」、というものです。 : ゼルム:騎士団連中や街の張り紙で大々的に伝えておったな。やはりか、と思った。 ロイワット:…“やはり”? ゼルム:おっと、なんでもないぞ。 セプンス:……。 ロイワット:…そしてそうであった場合、「悪魔には人間の協力者がいる可能性がある」と考えたのです。 キーラ:なるほど。確かにこれだけ大々的に張り出しても被害は減るどころか増えていっているし、全然あり得る話ね。 アライブ:…えーっと、つまり…、えぇ!?私たち疑われてるってことですか!? ロイワット:いえ、あなたたちが最重要容疑者という訳ではありません。ここ数日外に出ていることが多い人物を手当たり次第に洗っているんです。なにせ手がかりが何もありませんからね…。 ロイワット:取り調べが一人一人じゃないのは、皆様が一緒に居るところをよく見かけるという話だったので、もしも不審な点があれば指摘できるように。 セプンス:成程。そういうことでありましたか。そういうことであればこのセプンス、喜んで協力いたしまするー。 ゼルム:うむ!なんでも答えてしまうぞ! キーラ:私の情報で役に立つなら。 アライブ:お、同じくです! ロイワット:ありがとうございます。 セプンス:ところで、本日、探偵殿はいらっしゃらないので? ロイワット:えぇ。この仕事は私一人で十分なので! : ロイワット:それでは、調査を開始します。正直にお答えください。まず第一の質問。 : 0:そう言いながらロイワットはルーペを取り出す。 : ロイワット:本日の2時35分、残念なことにまた被害者が出ました。その時、あなた方はどこで何をしていましたか?…まず、団長さんから。 アライブ:わ、私は宿で寝てました!寝たのは確か、日付を跨ぐ前だったと思います。 : 0:ロイワットがアライブをルーペ越しに見る。 : ゼルム:…さっきからなんじゃ、その珍妙なものは。 ロイワット:…ふむ、ありがとうございます。では次、支配人さん。 キーラ:私は「Clown」(クラウン)で作業をしていたわ。カロル祭も近づいてきたから、やることが多くて。これに関しては付き添いがいたからアリバイがあるわよ。 : 0:次はルーペ越しにキーラを見るロイワット。 : ロイワット:なるほどなるほど…。わかりました。…今年のカロル祭も楽しみにしていますね。 キーラ:えぇ…。やるからにはご期待に沿えるものを用意することを約束するわ。 ゼルム:待て待て。なんか何事もないかのように進んでおるが!あの女子(おなご)が目に近づけておるあの硝子の板?は一体何なのじゃ? セプンス:恐らく、“レリック”であると思いますが…、ロイワット殿、如何(いか)に。 ロイワット:あぁ、すみませんまた何の説明もなしに取り出して…、その通りです。これは、相手の感情を観察できるルーペのレリックです。尋問をするときはこれを使わせていただきますね。 ゼルム:レリックぅ?ハハ、何を言っておるのじゃお主ら。レリックというのは、魔力を帯びた宝石や、焔を纏う花などの自然の「飾り物」を言う。アレは完全に手が加わっておるじゃろう! セプンス:…それは今より三百年ほどを遡った大昔の話でありまする、ゼルム殿。 アライブ:武器とかを作る加工技術がこの数百年で劇的に上がったおかげで、レリックは今や、さっき言ってたような特殊な鉱物や植物を加工して作られる、私たちを手助けする「道具」となったのです! ゼルム:…え、我が寝とった間、そんなに人の子らの技術進歩しまくっとったの……? アライブ:というか、こういう話を今したらキーラさんとロイワットさんにバレちゃいますよ!?ゼルムさんが王龍だってこと知ってるの私とセプンスさんだけなんですから…!! キーラ:…あなたたち、さっきから何の話をしているのかしら?特に、最近噂の大喰らい…、ゼルムさん、だったかしら。レリックを知らない…? アライブ:ほらっ、どうするんですか…! ゼルム:…んー、困ったのぅ。 ロイワット:…ふむ。不自然ですが、今は直近のアリバイ確認が先です。続けましょう。それでは次は旅芸人さん。 セプンス:承知。手前は街の中を散歩しておりました。勿論犯行現場には立ち会っておりませんでしたが…。 アライブ:えぇっ、散歩ーっ!? ロイワット:…嘘は、ついていないようですね。 キーラ:っ、セプンス!この怪死事件が起こるのが0時から5時の間だけってことくらい知ってるでしょう!?現におんなじ時間に被害者だって出ているのだし…。なんでそんな危険なことを…っ。 セプンス:すみませぬキーラ殿。前にも申したと思いまするが、手前はとある御仁(ごじん)を探しておりまして。夜を好むお方なので、もしやしたらと思いまして。 アライブ:だとしても危ないですよ!いつ誰が狙われるかもわからないのにっ…。 セプンス:危険なのは承知の上でございまする。それに、これはついでではありましたが、丑三つ時、誰もいない街並みを歩くことで語り部として得られるものもあるだろうと思い至った次第。 キーラ:…やっぱりあなた、変わってるわ。…今回は無事だったからいいけれど、次そんな危ないことをしたら承知しないわ。こっぴどく叱ってあげるから。 セプンス:はは、肝に銘じておくと致しましょう。ご心配痛み入りまする。 ゼルム:…むぅ? ロイワット:さて、それでは最後、ゼルムさん。あなたはどこに? ゼルム:う、うむ!その時刻にはもう我は寝床で寝ておったはずじゃぞ。正確な時刻はわからぬがな。 ロイワット:…なるほど、ありがとうございます。どうやら全員アリバイはあるようです。…しかし、ゼルムさん。あなた、何か知っていませんか? ゼルム:ぎくっ。 ロイワット:あなたをこのルーペで見ても悪意は見えませんでした。しかし…。少しだけ、動揺の色が見えました。それに、先ほどのレリックを知らないという発言も気がかりです。 キーラ:そうね。…それに、あなたを街で見るようになったのは最近のこと。疑いたくはないけれど…、なにか訳ありなのかしら? ゼルム:む、むぅ…。そうー、じゃのぅ…。 : ゼルム:…あまり気は進まぬが、これも人の子らを守るため。致し方なし、か。…実はのぅ、我はヒトではないのじゃよ。 ロイワット:ヒトじゃ、ない…? : 0:ロイワットが怪訝な目をしながらルーペを目に当てゼルムを見る。 : ゼルム:我が真の名は、「ゼルム・アーガンド」。五百年前に眠りについた、この地を守護せし者。人の子らは我のことを「王龍」、と呼ぶようじゃがのぅ。 キーラ:はぁっ!?何を言って…っ。 ロイワット:…う、うそを、言っていない…?確かになんか物言いが全体的に壮大で、名前も同じだと思ってたけれど…っ、ほんとにあの王龍様なんですかっ!? ゼルム:そうとも。そこな芸人とツッコミ役にはとある事情から先に話しておったのじゃが、王龍が人里にいると知れれば混乱を招きかねんのでな、ずっと伏せておったのじゃよ。 キーラ:いやでもっ、それはわかりましたけれど…。なんで人間の姿をしているのですか…? ゼルム:そりゃあ、我が人を愛し、人を護る者であるがゆえよ!王龍たるもの、人の形に変容くらいできねばな! アライブ:私もこれに関してはどういうことか未だにわかりません…。 セプンス:まあつまり、ゼルム殿の不審な点は、こういうことでありまする。 ゼルム:これからは伝えなければならぬところには我の正体を伝えても構わぬが、この街の住民すべてに言いふらすのはやめてくれると助かる。理由はさっき言ったのと、 ゼルム:我、逸話的にはかなりカッコいいストイックなドラゴンで通っておるのに、いざ蓋を開けてみればこんな感じのテキトードラゴンじゃから、我のイメージを護りたい。 キーラ:ふ、不純…。 ロイワット:私や支配人さんの王龍様に対するイメージはとうに崩れ去りましたが…、そ、そうだったのですね。…今までの無礼をお許しください。 ゼルム:はは、構わぬ構わぬ。それにそんな堅苦しくならなくともよい。なんならもっと馴れ馴れしく、友好的に、フレンドリーに来てくれてよいのじゃぞ!我、人の子らを愛しておるからな! キーラ:流石に王龍様相手にそういう訳にはいかないわよ…? ロイワット:と、ともかく!わかりました。そういうことであれば、今日の取り調べが終わったら、少し五百年前の魔神襲来のことを聞かせていただけませんか。 アライブ:…っ。 ゼルム:勿論じゃ。凄惨な話ではあるが…。命を奪わせぬためじゃ、なんでも聞くとよい。 ロイワット:感謝いたします。…さて。伝承にはこうあります。「再びジェアルに脅威が蔓延る時、王龍は目を覚ます」と。 アライブ:そ、それって…。 セプンス:此度の事件はジェアルを脅かすほどのものである…、ということでございまするな。 キーラ:…王龍様が実際に目を覚ましてここにいるのだし、その可能性は限りなく高いわね。 アライブ:そういうことなら、大事を取ってカロル祭は中止にしたほうが良いと思います!…もしも本当に悪魔“アシュタレト”が事件を引き起こしているのなら、人が集まるカロル祭はきっと狙われるでしょうし…。 キーラ:ええ。私もそう思って、ヴェールと一緒に言いに行ったのだけれどね。騎士団の人たちが、「毎年欠かさず開催してきた伝統的なお祭りだから、中止はできない」って言って聞いてくれなかったのよ。 セプンス:それならば、事情を深く知っておられるシーセン殿に協力を仰げばよろしいのでは。 キーラ:勿論、彼にも話したわ。でも、どうやらシーセンも開催賛成側らしいのよね…。一応、厳重警備で、0時前には全ての屋台を撤収させると入っているのだけれど…。 ゼルム:ふむ、それだけでは不安じゃのぅ。悪魔は残忍かつ狡猾(こうかつ)じゃ。いきなり昼に姿を現せば、街が阿鼻叫喚(あびきょうかん)で満ちることは必定(ひつじょう)。それに、悪魔の力は強大じゃ。 ロイワット:いくら厳重警備と言えど、災厄の悪魔を人の力で止めきれるとは思いません。 アライブ:そ、そんなのどうすればいいんですかっ! セプンス:“魔神殺し”を見つける。それしかないかもしれませぬな。 アライブ:っ…! ロイワット:っ、なるほど!王龍様、「魔神殺しの英雄譚」で語られる英雄は実在するんですよね。 ゼルム:応とも。どこに行ったかはわからぬが、その伝承通り、五百年前に魔神を打ち倒したのは大剣を携えた名無しの英雄じゃ。奴が神であるならば、まだ生きてこの地の何処かを彷徨っておるはずじゃ。 キーラ:…確かにその英雄さえ見つけられれば、万が一魔神が蘇っても、カウンターになってくれるかもしれないわね。 セプンス:然り。どこにいるかはわかりませぬが…。それに、もしもその者が本物の英雄であるのならば、見つからずとも魔神が再臨した時点で必ず現れ、我らを救ってくださるはずでありまする。 ゼルム:しかし、やはり最も良いのは魔神が招来される前に悪魔を殺すことじゃ。どれ…。我も夜中、街を見張ってみることにしよう。 アライブ:……。 キーラ:…団長さん? アライブ:は、はいっ、なんです…? キーラ:…いえ、別に。「魔神殺しの英雄譚」の話が出るとあなた、いつもその変な表情になるから気になってしまって。 アライブ:へ、変な表情してましたか、私!? ロイワット:…そうですね。前にジャック先生がいた時もそうでしたが、いつも団長さんは悲しいような、嬉しいような…。そんな絶妙な表情になるんですよね。 アライブ:え、えぇ…?自覚ないんだけどなあ…。 セプンス:確か、アライブ殿は英雄が持つとされている「願いを叶える力」で叶えたい願いがあるとお聞きいたした。 アライブ:そ、そうですね…。 キーラ:あら、そうだったの。それは初耳ね。 ゼルム:ほぅ。その願いとは? アライブ:それはヒミツで…。あんまり人に言える願いでもないので。 ゼルム:なんじゃ。お悩み相談ならこの我、いくらでも乗ってしまうぞ? キーラ:そうよ。セプンスもだけれど、私たちのことを少しは頼ってくれていいのよ? セプンス:はは、お心遣い、痛み入りまする。しかし、人探しに関しては本当に手前の抱える問題ですので…。 アライブ:わ、私も自分の問題なので。気持ちだけいただいておきますね…! ロイワット:…って、あぁ!話がだいぶ逸れてしまいましたが、まだ皆さんに聞かないといけないことが沢山あるんでした!すみません、手早く終わらせますので、もう少しだけ時間を頂戴しても…? キーラ:ふふ、本当おっちょこちょいなのね。私は構わないわよ。 ゼルム:我も暇じゃからなあ。 セプンス:…あぁ、すみませぬロイワット殿。手前、すっかりとある用事があることを忘れておりました。このあたりでお暇しなければなりませぬ。 ロイワット:そうですか…。では、本当にすみませんが、また後日質問をさせていただいてもよろしいでしょうか? セプンス:勿論でありまする。それでは、少しお先に失礼いたしまするー。 アライブ:はい、また会いましょうねー! キーラ:今度の語りも楽しみにしているわ! セプンス:感謝の極み。それではー。 : 0:セプンスが部屋を出ていく。 : ゼルム:…それにしても、あやつの用事とはなんなのじゃろうな? キーラ:さあ?セプンスとはもう一か月以上の付き合いだけれど、未だに謎も多いのよね…。 アライブ:でも私、ミステリアスなセプンスさんの雰囲気、カッコ良くて好きです…! キーラ:ふふ、あなたはカッコいい人が好きなのね。 アライブ:はい!カッコイイ人、憧れてるので…! ロイワット:…えーっと、質問をしてもよろしいでしょうか? アライブ:あぁ、そうだった!すみません、どうぞ! ロイワット:いえ、こちらこそ。では、身の回りに不審な人物などは―――。 : 0:場面転換。「尋問部屋」を出て、帰り道。日が暮れかかっている。 : ロイワット:皆さん、本当にすみませんっ!私の容量が悪くてこんな時間までかかってしまって…! キーラ:全然平気よ。私のカジノの開店にはまだ一時間以上あるし。王龍様も団長さんも暇でしょう? ゼルム:うむ、暇じゃ。なんなら今日は我、その「かじの」とやらに邪魔しようと思っておった。…その前に飯じゃが。 アライブ:私も久しぶりに「Clown」(クラウン)行きたいです! キーラ:ふふ、わかったわ。今日は私はディーラーだけれど、挑戦なら受けて立つわよ。 アライブ:運なら負けないですよぉー! ロイワット:…そういえばこの前はありがとうございました、支配人さん。私も先生も、いいリフレッシュになりました。 キーラ:いいのよ。息が詰まったらいつでも遊びに来て。友人は歓迎するわ。 ロイワット:ありがとうございますっ! アライブ:ロイワットさんも「Clown」(クラウン)行ったんですか? ロイワット:はい、先生と一緒に。とても楽しかったですよ! ゼルム:むぅ、そう言われるとますます「かじの」が楽しみになってきたのぅ! アライブ:今度はセプンスさんも誘って―――。 : 0:いきなり遠くから魔獣の咆哮のようなものが聞こえる。 : キーラ:っ、今のは!? ロイワット:魔獣が街の中に入ってきたんでしょうか!? ゼルム:なんじゃと!? アライブ:前にも「Clown」(クラウン)で魔獣が暴れたことがありましたよね…!? キーラ:あれと同じだとしたら被害が出るわね…っ。三人とも、先に行ってて。私は急いでレリックを持ってくるわ…っ! : 0:キーラが走っていく。 : ロイワット:私たちは急ぎましょう! アライブ:はいっ! : 0:場面転換。大型の魔獣が暴れている。 : アライブ:「Clown」(クラウン)の時よりも二回りくらい大きいっ…! ロイワット:それに気を付けてください、どうやらあの魔獣、知性が高いです!魔法を使ってきますっ…! : 0:魔獣が三人に向けて火炎を放つ。 : アライブ:くっ、火炎の息吹っ…、でもそれなら…っ!「水を」っ! : 0:アライブが水の玉を出して威力を弱める。 : ロイワット:っ、ナイスです団長さんっ!王龍様!元の姿に戻って魔獣を! ゼルム:いや、今ここで我が変化すれば街への被害が洒落にならん!あの娘が駆けつけるのを待ったほうが良い! ロイワット:しかし、これを持ちこたえるのはっ…! アライブ:二人とも、またなにか吹いてきます! : 0:次は氷の息吹を放つ魔獣。 : アライブ:氷の息吹っ…!?すみません、私の水じゃあどうにもできませんっ! ロイワット:ええいっ、私が何とかするしかないですね…!「稲妻」っ! : 0:ロイワットが雷を放つが魔獣は意にも介さない。近くの住民たちが混乱している。 : ロイワット:電撃が効かないか…っ!団長さんは近くの皆さんの避難誘導を! アライブ:で、でもそれじゃあロイワットさんが! ロイワット:私は平気です、それに最終手段として王龍様もいらっしゃりますし! : 0:再び炎を放つ魔獣。道が燃える。 : ロイワット:まずいっ、炎で道が! アライブ:「波を」っ! : 0:アライブが水流を生み出し何とか鎮火する。 : アライブ:今のうちに皆さん、避難を!もうじき騎士団の人たちも来ますからねーっ! ロイワット:もうなりふり構っていられません!王龍様! ゼルム:…仕方あるまい、我が真の姿を見せるしかないかっ! : 0:その時。 : セプンス:「鶴声」(かくせい)。 : アライブ:(M)これは…、三味線の音と共に、魔獣の身体が地面から伸びてきたツルによって拘束された…。三味線ってことは!? : アライブ:セ、セプンスさんっ!? セプンス:ふぅ、危ない所でしたな。しかし、ご安心召されよ。手前が来たからにはもう手出しはさせませぬ。 ロイワット:旅芸人さん、魔獣がっ! セプンス:ゥン? : アライブ:(M)拘束を引きちぎり、魔獣が氷の息吹を放とうと大口を開ける―――。 : セプンス:御免。「七段恋慕」(しちだんれんぼ)。 : アライブ:(M)言葉と共にセプンスさんが綺麗な三味線を奏でると、いきなり魔獣の身体が切り刻まれた…!? : ゼルム:なにぃっ!?その技はっ!? アライブ:す…、凄い。 ロイワット:…何も出さずに相手を切り刻む魔法なんて、初めてみました。 セプンス:ははは。手前は放浪の身ゆえ、度々魔獣に狙われることがありましてなあ。この技は、対魔獣用に習得したモノでありまする。 ロイワット:そうだったので――、旅芸人さんっ! : 0:魔獣が最後の力を振り絞りセプンスに喰らいつこうとする。 : セプンス:なあに。 : セプンス:それくらい見切っておりまする。 : セプンス:「幻月」(げんげつ)。 : アライブ:(M)セプンスさんはいつのまにか魔獣の後ろに立っており、刀のような武器で魔獣の首を斬り割くと、魔獣は動かなくなった…。 : セプンス:…さて。これにて一件落着でありまするー。 : 0:セプンスが三味線を弾くと、辺りの人々から拍手が起きる。そして、そこにキーラがやって来る。 : キーラ:…よかった、私の出る幕はなかったようね。 アライブ:キーラさんっ! ロイワット:今、先ほどの旅芸人さんが魔獣を倒してくれてっ! キーラ:…さっきの旅芸人ってセプンスのこと?どこにも居ないけれど。 アライブ:えっ? : 0:見渡すと、そこにはもうセプンスの姿はどこにもなかった。 : アライブ:な、なんで!?さ、さっきまでそこにいたのにっ…! ロイワット:…まあ、なにはともあれ、みなさんのおかげで被害が少なく済みました。探偵助手として感謝を申し上げます。 アライブ:いえいえ! キーラ:私は何もしていないけれどね。 アライブ:それにしても…、あぁー、さっきのセプンスさん本当にかっこよかったなあ…。私もあんなかっこよく魔獣を倒してみたいなあ…。 ゼルム:……。 アライブ:あれ、ゼルムさん? ゼルム:…のぅ、お主ら。 : ゼルム:奴は、本当にただの旅芸人なのか? : 0: : セプンス:遠からんものは音にも聞け、近くば寄って目にも見よ。 : セプンス:此度の語りは貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)! : セプンス:神の子でありながら邪悪を宿す者、命を追われ天界より逃げ出す! : セプンス:送られてくる刺客を倒し、あまねく試練を乗り越えたその果て、いざ神の座へ返り咲かん! : セプンス:さあさあ、ご静聴あれ!切った張ったの物語。あっ、始まり始まりーっ! : 0:To be continued. 次の展開(仮) セプンスが容疑者に上がる→次の回でアライブはセプンスのことを知る→ジャック、ロイワットからヴェールが行方不明になったということを話される。 しかしセプンスの容疑は晴れていない。最後の最後、シーセンがアシュタレトに身体を乗っ取られていたことが発覚。ロイワット死亡。 →魔神が目覚める。そこにゼルムが駆けつける。そしてアライブの過去が開示される。→ヴェールがベルフェという真の名を明かす。そして魔神と悪魔を今度こそ打ち倒す。 →なんやかんやあってアライブが普通の人間に戻り、ロイワットの葬式をして、「私はアライブ!不可思議の調査団の団長です!」で終わり。 第六話登場 旅芸人は言の葉を紡ぐ アライブ セプンス/オルペース ヴェール 第七話登場 悪魔は人々を嘲笑う アライブ シーセン/アシュタレト ジャック ロイワット キーラ 第八話登場 魔神は目覚め闇が蔓延る アライブ アシュタレト ゼルム セプンス 第九話登場 英雄は現れ邪悪を断つ アライブ ベルフェ/ヴェール ゼルム オルペース/セプンス アシュタレト 第十話登場 旅人は遂に辿り着く アライブ ヴェール セプンス キーラ ジャック