台本概要
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タイトル | 鬼の目にもなんとやら |
---|---|
作者名 | 801らぃと (@puchin_smile ) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 4人用台本(不問4) ※兼役あり |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
節分台本です٩( ᐛ )و モブと悪邪鬼は兼ね役だとちょうどバランス良いかも? 作者は恵方巻きが好き 節分終わる2時間前に投稿 草。 335 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
まめこ/まめた | 不問 | 61 | 人間の子ども。おにさんと出会って、鬼についての価値観が変わる、将来の夢さえも。 |
おにさん | 不問 | 58 | 昔、人々のせいで石に封印された鬼。鬼神となって石のある神社にいる。 |
悪邪鬼 | 不問 | 18 | (あくじゃき) 悪者。 性別なしなので、悪邪鬼が母様の呼びは、カカ様) |
モブ | 不問 | 10 | (まめこ/まめた の)友人、先生、母または父役 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
「鬼の目にもなんとやら。」
モブ:(ナレ)むかしむかしあるところに、人里離れた深い山の奥深くに、鬼が住んでおりました。鬼は、大層霊力が強く、人々から忌み嫌われ、畏れられていました。鬼が人々に害を加えた訳でもないのに、勝手な人間たちは、同じく力の強い祓い屋にお願いし、その鬼をある石へと封印してしまいました。人々は、封印されてもなお、その鬼が恐ろしかったため、社を建てて、鬼が荒ぶらないように、崇め奉りました。
モブ:しかし、一年に一度、その鬼の封印が解かれる時があり、鬼が家に入って来ないように、人々は言霊の存在を信じ、ある呪い(まじない)言葉を唱え、邪気を祓い、無病息災を祈っていました。…「鬼は外、福は内」とーーー
0:小学校、授業中
モブ:(先生)〜であるからして、二月三日の節分の日には、豆まきをすると言われています。豆を巻く由来としては、諸説ありますが、魔の目…つまり鬼の目を滅ぼすと言われており、豆は穀物の象徴で神様が宿るとされていて、とても神聖なものであると、古くから人々に信じられてきました。みんなも毎年、豆まきをお家でされているからよく知っているね。
0:(同時)
おにさん:(児童役)はぁーい!
モブ:(児童役)はーい!
まめこ/まめた:…知ってる。でも…どうして、鬼はこうも悪者扱いされるんだろう。鬼は…何も悪いことはしていないのに。
0:★SE/学校のチャイム〜
0:(同時)
モブ:(児童役)さよならぁ〜!
まめこ/まめた:さよなら〜!
モブ:(児童役)「まめこ/まめた」〜!帰ろうー!
まめこ/まめた:あっ、ごめん!今日寄ってくとこあるから!
モブ:(児童役)あー、いつもの先生とこ?
まめこ/まめた:そう!誘ってくれたのにごめん!じゃあね
モブ:(児童役)じゃあねー。
モブ:(児童役)あいつ、ほんとに成績伸びたもんなぁ。どこの塾通ってるんだろ。
0:少し間
0:場面転換 とある町神社にて
0:走って境内に向かう「まめこ/まめた」
まめこ/まめた:はぁ、はぁ!遅くなってごめんなさい、おにさん。
おにさん:おぉ、「まめこ/まめた」、おかえり。今日は早かったのだな。あぁ〜また走ってきおって、転んだらどうするのだ。
まめこ/まめた:あははっ、そうそう転ばないよ!待たしちゃ悪いなって思ったんだよ。
おにさん:別に私はいつも暇しているのだから、ゆっくりきてくれて構わないと、毎度言っておるのに。そう生き急ぐでない…
まめこ/まめた:おにさんは悠長だなぁ…そんなゆっくり構えていたら、あっという間に「私/僕」との目線が近くなりますよ!
おにさん:かっかっか…そりゃあ、いつかは来るかも知れぬな…人の子の成長は早いからのぅ。今だって、初めて会った時よりも大きくなったしの…
まめこ/まめた:あの時に比べたら、そりゃあ大きくなってるよ!今から3年も前だし…
おにさん:カカカっ…もうそんな経つのか…!
まめこ/まめた:(おにさんってば…本当に悠長というか…こういうのを能天気っていうのかなぁ…?)
0:場面転換
0:過去回想(おにさんと「まめこ/まめた」の出逢い)
0:3年前
0:神社一体の森の中の岩陰にて
まめこ/まめた:ひぐっ…うっ…みんな…どこいったの。置いていかないでよぉ…
0:★SE:雷の音
まめこ/まめた:ひっ…!お父さん…お母さん…
0:岩陰の中でうずくまり、助けを待つ「まめこ/まめた」
おにさん:…ぉお!降ってきたぁあ!
まめこ/まめた:…だ、…誰?!
0:雨が降っている森の中から、ずぶ濡れになった謎の子ども(少女/少年)が走って岩陰に入ってきた
おにさん:(少女/少年)おおっ…先客がおったか…急に降ってきたのぉ。お主は濡れなくてよかったな…
まめこ/まめた:うん…キミも…迷子なの?
おにさん:(少女/少年)んあ?あぁ…まぁそんなとこだ
まめこ/まめた:…キミも置いて行かれたんだね
おにさん:(少女/少年)かかかっ!私はここら辺に住んでおるのだ!なんじゃお主、ここに置いて行かれたのか?
まめこ/まめた:…そうかも、しれない。
おにさん:(少女/少年)…そうか。お主がそう思うのは勝手じゃが、そやつらは、本当に、お主を置いて行く卑怯者なのか…?ならば別れられて良かったではないか!かっかっか!
まめこ/まめた:っ違う!そんな酷い人達じゃない!「私/僕」が悪いんだ…友だちと森で豆まきごっこしてたら、夢中になって逸(はぐ)れて………みんな…心配してるかな。
おにさん:(少女/少年)ほほぅ…豆まきごっこ、か…。お主の中の鬼は、まだ祓(はら)えておらぬようじゃなあ…
まめこ/まめた:…え?
おにさん:(少女/少年)安心するがよい、お主が心強く持てばそんな邪鬼(じゃき)などすぐに無くなろうて…信じるのだ、お主の友と家族を。きっと迎えにきてくれるはずじゃ……まぁもし来なければ、私の家にくればよい。面倒は見てやるぞ。
まめこ/まめた:はははっ、ありがとう…少し心が軽くなった。
おにさん:(少女/少年)それは良かった。ほれ、雨足(あまあし)も弱まってきたぞ…雨が止んだら拓(ひら)けた道まで案内してやる。だから、安心するがよい。
まめこ/まめた:うん…ふぁあ…ありがとぅ…なんか、眠くなってきた…
おにさん:(少女/少年)そうか…私が見ておいてやるから、ちと眠ったらどうだ?
まめこ/まめた:うん…そうする、、、あり…が、と…ぅ……………すぅ。すぅ。
おにさん:(少女/少年)ふっ…ニンゲンの子は、素直じゃのぅ…
0:「まめこ/まめた」が眠った様子をみて、ふと頭を撫でようとする
おにさん:…っ…かっかっかっ。よもや、このようなことが…永く生きてても分からぬのぅ。
0:回想終了
0:現在の「まめこ/まめた」とおにさんが話す
まめこ/まめた:あの後、「私/僕」が起きた時にちょうど友だちと家族が迎えにきたけど、気づいたらおにさんは居なくて…また会いたいなって思って、今度は迷子にならないように少しずつ探し続けてたんだよね…名前も聞いてなかったけど。
まめこ/まめた:まさかこの神社でまた会えるとは思ってなかったよ…大人の姿になってて、最初は気づかなくて。あとは、後からこの神社の鬼神様って教えてもらった時もびっくりしたけど。
おにさん:かっかっか…あの時、ニンゲン達が騒いでおるのが聞こえての。私もお主を探しておったのだ…人の子と聞いておったから、警戒されぬように童(わっぱ)の姿に変えておったのじゃ。
まめこ/まめた:えっ、そうだったの?!知らなかった…
おにさん:しかし、私の方こそお主に対して驚いたぞ!私の存在を受け入れのがあまりにも早かったからのぅ…最近の子は、物分かりが早ようて末恐ろしいくらいじゃ…
まめこ/まめた:「私/僕」…そんな頭良くないよ、成績もここ最近伸びてきて、先生に褒められて…おにさんが勉強を教えてくれたお陰だよ。
おにさん:なぁに…「まめこ/まめた」くらいの人の子の学びくらいは、ここ(神社)に永くも居れば嫌でも分かってくるからのぅ。
まめこ/まめた:………
0:(少し間)
おにさん:ん?どうした「まめこ/まめた」?
まめこ/まめた:やっぱり…おにさん、ニンゲンは嫌い?
おにさん:なんじゃ、どうした急に。
まめこ/まめた:いや…今日の授業で、節分の話が出て…おにさんたちのことを悪い風に言ってて、なんか、すごく…辛かったんだ。おにさん、すごく優しいのに…。みんな、おにさんのこと何も知らないのに好き放題言って。
おにさん:「まめこ/まめた」………。お主、ここ最近、ずっとそれを考えておったのか?前よりも多く邪鬼(じゃき)がついておるぞ。
まめこ/まめた:えっ…そうなの?
おにさん:言ったじゃろうが!お前は、周りのニンゲンと比べて、邪鬼(じゃき)に憑(つ)かれやすいと!お前は優しい奴じゃ。尚更、邪鬼共(じゃきども)も群がるんじゃ…。
まめこ/まめた:……
おにさん:私のことなど気にせずとも良い…もっと、私利私欲(しりしよく)を持つのだ、お主は。
まめこ/まめた:う…ごめん…なさい。
0:「まめこ/まめた」が落ち込み、シュンとしているのを見たおにさんーーー
おにさん:…んぐぬ…
0:(少し間)
0:おにさんは「まめこ/まめた」の頭をわしゃわしゃした。
まめこ/まめた:っぅあっ…頭っ、ちょっ…なにするんだ…子ども扱いはやめてよ!
おにさん:かっかっか!すまぬ……お主は、まだまだ童(わっぱ)じゃ…言われて急に出来ることでもなかろうて、私が大人気なかったわ、「まめこ/まめた」は、本当に素直で、優しいのぅ。どうか、そのまま大きくなってくれればよい…
まめこ/まめた:っへ?…意味がよく分からないけど。
おにさん:気にするでない。こっちの話じゃ。
まめこ/まめた:そう?…あ!あと、今日の授業で将来の夢について、書いたんだ!「私/僕」の夢、おにさん知らないでしょ?
おにさん:ほぅ、確かにそれは知らないのぅ。初耳じゃ…して、「まめこ/まめた」は何になりたいんじゃ?
まめこ/まめた:えへへっ…「私/僕」…この神社の神主になりたいっ!そしたらおにさんとっ、ずっーーーと一緒に居られるでしょ?
おにさん:っ……
0:おにさんが顔を伏せて、肩を振るわせる
まめこ/まめた:?…おにさん?
おにさん:っぷっ…っかっかっかっかっか!
まめこ/まめた:っな、なんで笑うの!
おにさん:いやっ、すまぬっ……っふ…まさか、お主からそんなことを言われる日が来ようとは、永く生きている私すらも思わなかったものでな…
まめこ/まめた:…そうなの?「私/僕」…結構真面目に言っているんだけど。
おにさん:分かっておる、じゃから、すまぬと申しておるじゃろうて…っかかか
まめこ/まめた:そんな面白いことかなぁ?
おにさん:(ひとしきり笑い終え)…はぁ…。……ここにきてから数百年経つが……こんな楽しみ初めてじゃのぅ。
まめこ/まめた:…楽しみに、してくれるの?
おにさん:あぁ、もちろん。「まめこ/まめた」がここに来てくれるのもそうじゃ…私の楽しみの一つじゃ。
おにさん:…っなんじゃ…改めて言うと、恥ずかしいのぅ…
まめこ/まめた:…っ〜〜(嬉し照れ)、「私/僕」!毎日来る(よ!)
おにさん:(被せて)いや、毎日は重いのぅ〜
まめこ/まめた:!っなんだし!おにさん、さびしんぼなくせに!
おにさん:…!かっかっか!そうか、私は寂しん坊か…かっかっか!
まめこ/まめた:(…おにさんが笑ってると嬉しいな。そっか、「私/僕」…おにさんが笑ってる顔が好きなんだ…なんか、安心する。)
おにさん:?何をニヤついておるのじゃ?
まめこ/まめた:っ別に!ニヤついてなんかないよ!
おにさん:そうか……あ、「まめこ/まめた」、そろそろ帰った方が良い時間じゃぞ?
まめこ/まめた:…本当だ!あっ、そういえばお母さんにお使いも頼まれているんだった!恵方巻き!好きなの買っておいでって言われたんだ!
おにさん:おおっ〜それは尚更早く帰らねばじゃな。転ばぬよう、気をつけるんじゃぞ〜
まめこ/まめた:うん!おにさん、ありがとう!また来るからね。
おにさん:あぁ、“また”の〜
0:★SE:走り去る音
おにさん:…全く、走るなと言うておるのに。わからぬ奴じゃな…かかっ…今日は、節分、か。
0:(少し間)
おにさん:この社も、だいぶ古びたのぅ…私も、もう良き頃合いかな…。
0:★SE:冬の風がなびく音
0:場面転換
0:夜、「まめこ/まめた」の家にて。
まめこ/まめた:ふぅ!恵方巻き、美味しかったぁ〜!豆まきは、お父さん帰って来てからだから、その前に宿題やろーっと!
0:場面転換
0:「まめこ/まめた」の部屋
0:逢魔時(おうまがとき)※ 昼と夜の間、少し薄暗くなってきた夕方の「黄昏時(たそがれどき)」
まめこ/まめた:今日、豆まき、どうしよう…絶対…おにさん…も、鬼、なんだよね…”鬼は外“なんてっ、絶対ダメっ!言えないよっ!
悪邪鬼:ほぅ、ならば、私もお主の中にいて良いと言うことだな…かかかっ…!
まめこ/まめた:?!だ、誰だっ!
0:「まめこ/まめた」の心の中で声が聴こえる。
悪邪鬼:私か?私は、お主の中におる鬼だ!ずーっっと、お主の中におったぞ?かっかっか!
まめこ/まめた:…「私/僕」の中の…鬼?
悪邪鬼:かかかっ!あぁ、そうだ。お主の怒りや妬み(ねたみ)、嫉み(そねみ)、哀しみ…全ての負の感情をエネルギーに、邪鬼(じゃき)が集まったもの、私は、悪邪鬼(あくじゃき)と申す。ここまで大きくなったからのぅ、やっと話せるようになったのじゃ。
まめこ/まめた:悪邪鬼(あくじゃき)…「私/僕」の中にいて、どうするの…?
悪邪鬼:あぁ〜、それはもちろん。お主に成り代わって、ニンゲンを痛ぶって楽しむに他はないじゃろう。かかかっ!
まめこ/まめた:なっ…!
悪邪鬼:さぁああ!お主の身体をよこせぇええええええ!!!
0:悪邪鬼が「まめこ/まめた」の心の中を掌握しようとする
まめこ/まめた:ぐっ…うぁ…
0:苦しみながら抵抗する「まめこ/まめた」
悪邪鬼:ちっ…手強い…さっさとよこせぇえ!
まめこ/まめた:うぐっ…おに…さ、ん。
0:★SE:光の効果音的な。
0:「まめこ/まめた」がおにさんのことを想ったと同時に、「まめこ/まめた」が光輝く
悪邪鬼:ぐぁ…な、なんだっこれは!?この霊力は!?ガキの中から…追い出されるっ…!
0:悪邪鬼が「まめこ/まめた」の中から追い出される
悪邪鬼:この私が、力で劣るなどっ、誰じゃお主は!
0:「まめこ/まめた」の中から、霊体のおにさんが現れる。
悪邪鬼:なっ…お前は…!?
おにさん:悪いのぅ、この子は、既に私のものじゃ…手を出すなど、私が許さぬ。
悪邪鬼:かっかっか!こりゃあたまげたぜ!私はお主のお陰で生まれたのだぞ!分からぬか!ほれ!私だ!
おにさん:煩い(うるさい)!分かっておるわ!お主は…お主は、私を封印した祓い屋の後悔の念と封印された私の恨みの念から生まれた鬼…そうじゃろう…?
悪邪鬼:あぁ、そうじゃ。お主が封印されたあの時からじゃ!あの時から…私はジワジワと、祓い屋の中で…祓い屋一族の心の中で生き続けてきた…力をゆっくり貯めながらのぅ。かっかっか!これは、これはめでたいことじゃ!私の生みの親に会えたのじゃからな!言うなれば私の母様じゃ…!どうじゃ母様!母様も、ニンゲンが憎くてたまらぬじゃろう?私と一緒に、ニンゲンへ報復するのじゃ!特に、この童(わっぱ)…此奴(こやつ)は、あの祓い屋の生まれ変わりであるぞ!さぞ恨み深しであったのではないか?一緒に痛ぶりましょうぞ!この童(わっぱ)含め、この一族含め、ニンゲン全てを!かっかっかっか!
おにさん:言いたいことは…それだけか?
悪邪鬼:あ?なんじゃと?
おにさん:“最期に言いたいことはそれだけか?“そう聞いたんじゃ。
悪邪鬼:…最期…じゃと?何を…
おにさん:言うたであろう。「まめこ/まめた」は、既に私のものじゃと…。私は、「まめこ/まめた」を殺さぬ…ニンゲンも、報復せぬ…
悪邪鬼:っ…な!?なぜっ、なんでじゃ!?
おにさん:私は、気づいておった。「まめこ/まめた」と出会った時に…。私を祓ったあの祓い屋の一族で、「まめこ/まめた」自身が、あの忌々しい祓い屋の生まれ変わりであると。
おにさん:封印の石に縛り付けられた積年のこの恨み…どう晴らしてくれようかと、再び会う時までまで、ずっと、どうしてくれようか…と。じゃが、いざ、「まめこ/まめた」に会った時、全部…なくなったんじゃ。思い出したのだ…「まめこ/まめた」に触れたとき、私を祓った時の祓い屋の顔を。泣いておった。…封じ込められる直前に、祓い屋の声が聴こえたんじゃ…「すまぬ」と。
悪邪鬼:っっっそんな、ただそれだけのことで!?
おにさん:それだけではない。「まめこ/まめた」は、この私とずっと一緒にいるのが、夢だと…そう、言ったんじゃ。こんな、まだ童のうちから、優しいんじゃ、この子は。もう、恨むのは疲れた、許したのじゃ、私は…。此奴等(こやつら)の悪行を許す…共に、生きたいと、思ったのじゃ。だから…。
悪邪鬼:なっ…
おにさん:じゃから、決めたのだ。私は、全身全霊力で、ニンゲンを…「まめこ/まめた」を守るとーーーお主と相討ちになって、この身が滅びるとしてもな…
悪邪鬼:あっ、そんな…母さ…ま…(待って…)
おにさん:我(われ)…鬼神、【男声、夜叉丸(やしゃまる)/女声、夜叉姫(やしゃひめ)】の名において、悪鬼滅殺(あっきめっさつ)ーーーーー!
0:強い光が悪邪鬼に向かって放たれる
悪邪鬼:ぎゃあああああ…
0:悪邪鬼の霊体が光に包まれると、消えてなくなったと同時に、おにさんの身体もゆっくり消えつつあった。
おにさん:…起きておったのか…「まめこ/まめた」?
まめこ/まめた:…うっ、おに…さん…「私/僕」。
おにさん:なぜ、お主が泣くんじゃ…最期にも、お主の笑った顔を見せてくれ…
まめこ/まめた:ううっ…ずびっ…うん。えへへ!
おにさん:そうじゃ、私は、お主の笑った顔を見るのが、好きじゃった。
まめこ/まめた:「私/僕」も!おにさんの、笑った顔が好きだよ!「私/僕」、あの神社の神主さんになる夢!絶対叶える!神社も綺麗にして、鬼は優しいんだってみんなに伝えるんだ!「鬼は〜内!福は〜内!」って広めるんだ…うっ…だから…
おにさん:かかかっ、それは、楽しみじゃの…隣に居れぬのが、残念じゃが…強く生きるのじゃぞ、「まめこ/まめた」!
まめこ/まめた:おにさん…!ニンゲンが…今までごめんなさい。本当に、ありがとう…おにさん…!おにさんは、私の中に、いるよ!ずっと!
0:おにさんが消える最期の瞬間
おにさん:あぁ…ありがとう、「まめこ/まめた」ーーー
0:少し間
0:涙を拭う「まめこ/まめた」。
まめこ/まめた:うっ…ぐずっ…おにさん…笑ってた…良かった、ありがとう。おにさん…
モブ:(「まめこ/まめた」母)「まめこ/まめた」〜!豆まきするわよ〜!
まめこ/まめた:はぁーい!
0:少し間
0:
まめこ/まめた:ねぇ、お母さん、お父さん。鬼にもね、優しい鬼がいるんだよ!だから豆まきの時ね…
0:少し間
まめこ/まめた:福は〜内!鬼は〜内!
0:Fin
「鬼の目にもなんとやら。」
モブ:(ナレ)むかしむかしあるところに、人里離れた深い山の奥深くに、鬼が住んでおりました。鬼は、大層霊力が強く、人々から忌み嫌われ、畏れられていました。鬼が人々に害を加えた訳でもないのに、勝手な人間たちは、同じく力の強い祓い屋にお願いし、その鬼をある石へと封印してしまいました。人々は、封印されてもなお、その鬼が恐ろしかったため、社を建てて、鬼が荒ぶらないように、崇め奉りました。
モブ:しかし、一年に一度、その鬼の封印が解かれる時があり、鬼が家に入って来ないように、人々は言霊の存在を信じ、ある呪い(まじない)言葉を唱え、邪気を祓い、無病息災を祈っていました。…「鬼は外、福は内」とーーー
0:小学校、授業中
モブ:(先生)〜であるからして、二月三日の節分の日には、豆まきをすると言われています。豆を巻く由来としては、諸説ありますが、魔の目…つまり鬼の目を滅ぼすと言われており、豆は穀物の象徴で神様が宿るとされていて、とても神聖なものであると、古くから人々に信じられてきました。みんなも毎年、豆まきをお家でされているからよく知っているね。
0:(同時)
おにさん:(児童役)はぁーい!
モブ:(児童役)はーい!
まめこ/まめた:…知ってる。でも…どうして、鬼はこうも悪者扱いされるんだろう。鬼は…何も悪いことはしていないのに。
0:★SE/学校のチャイム〜
0:(同時)
モブ:(児童役)さよならぁ〜!
まめこ/まめた:さよなら〜!
モブ:(児童役)「まめこ/まめた」〜!帰ろうー!
まめこ/まめた:あっ、ごめん!今日寄ってくとこあるから!
モブ:(児童役)あー、いつもの先生とこ?
まめこ/まめた:そう!誘ってくれたのにごめん!じゃあね
モブ:(児童役)じゃあねー。
モブ:(児童役)あいつ、ほんとに成績伸びたもんなぁ。どこの塾通ってるんだろ。
0:少し間
0:場面転換 とある町神社にて
0:走って境内に向かう「まめこ/まめた」
まめこ/まめた:はぁ、はぁ!遅くなってごめんなさい、おにさん。
おにさん:おぉ、「まめこ/まめた」、おかえり。今日は早かったのだな。あぁ〜また走ってきおって、転んだらどうするのだ。
まめこ/まめた:あははっ、そうそう転ばないよ!待たしちゃ悪いなって思ったんだよ。
おにさん:別に私はいつも暇しているのだから、ゆっくりきてくれて構わないと、毎度言っておるのに。そう生き急ぐでない…
まめこ/まめた:おにさんは悠長だなぁ…そんなゆっくり構えていたら、あっという間に「私/僕」との目線が近くなりますよ!
おにさん:かっかっか…そりゃあ、いつかは来るかも知れぬな…人の子の成長は早いからのぅ。今だって、初めて会った時よりも大きくなったしの…
まめこ/まめた:あの時に比べたら、そりゃあ大きくなってるよ!今から3年も前だし…
おにさん:カカカっ…もうそんな経つのか…!
まめこ/まめた:(おにさんってば…本当に悠長というか…こういうのを能天気っていうのかなぁ…?)
0:場面転換
0:過去回想(おにさんと「まめこ/まめた」の出逢い)
0:3年前
0:神社一体の森の中の岩陰にて
まめこ/まめた:ひぐっ…うっ…みんな…どこいったの。置いていかないでよぉ…
0:★SE:雷の音
まめこ/まめた:ひっ…!お父さん…お母さん…
0:岩陰の中でうずくまり、助けを待つ「まめこ/まめた」
おにさん:…ぉお!降ってきたぁあ!
まめこ/まめた:…だ、…誰?!
0:雨が降っている森の中から、ずぶ濡れになった謎の子ども(少女/少年)が走って岩陰に入ってきた
おにさん:(少女/少年)おおっ…先客がおったか…急に降ってきたのぉ。お主は濡れなくてよかったな…
まめこ/まめた:うん…キミも…迷子なの?
おにさん:(少女/少年)んあ?あぁ…まぁそんなとこだ
まめこ/まめた:…キミも置いて行かれたんだね
おにさん:(少女/少年)かかかっ!私はここら辺に住んでおるのだ!なんじゃお主、ここに置いて行かれたのか?
まめこ/まめた:…そうかも、しれない。
おにさん:(少女/少年)…そうか。お主がそう思うのは勝手じゃが、そやつらは、本当に、お主を置いて行く卑怯者なのか…?ならば別れられて良かったではないか!かっかっか!
まめこ/まめた:っ違う!そんな酷い人達じゃない!「私/僕」が悪いんだ…友だちと森で豆まきごっこしてたら、夢中になって逸(はぐ)れて………みんな…心配してるかな。
おにさん:(少女/少年)ほほぅ…豆まきごっこ、か…。お主の中の鬼は、まだ祓(はら)えておらぬようじゃなあ…
まめこ/まめた:…え?
おにさん:(少女/少年)安心するがよい、お主が心強く持てばそんな邪鬼(じゃき)などすぐに無くなろうて…信じるのだ、お主の友と家族を。きっと迎えにきてくれるはずじゃ……まぁもし来なければ、私の家にくればよい。面倒は見てやるぞ。
まめこ/まめた:はははっ、ありがとう…少し心が軽くなった。
おにさん:(少女/少年)それは良かった。ほれ、雨足(あまあし)も弱まってきたぞ…雨が止んだら拓(ひら)けた道まで案内してやる。だから、安心するがよい。
まめこ/まめた:うん…ふぁあ…ありがとぅ…なんか、眠くなってきた…
おにさん:(少女/少年)そうか…私が見ておいてやるから、ちと眠ったらどうだ?
まめこ/まめた:うん…そうする、、、あり…が、と…ぅ……………すぅ。すぅ。
おにさん:(少女/少年)ふっ…ニンゲンの子は、素直じゃのぅ…
0:「まめこ/まめた」が眠った様子をみて、ふと頭を撫でようとする
おにさん:…っ…かっかっかっ。よもや、このようなことが…永く生きてても分からぬのぅ。
0:回想終了
0:現在の「まめこ/まめた」とおにさんが話す
まめこ/まめた:あの後、「私/僕」が起きた時にちょうど友だちと家族が迎えにきたけど、気づいたらおにさんは居なくて…また会いたいなって思って、今度は迷子にならないように少しずつ探し続けてたんだよね…名前も聞いてなかったけど。
まめこ/まめた:まさかこの神社でまた会えるとは思ってなかったよ…大人の姿になってて、最初は気づかなくて。あとは、後からこの神社の鬼神様って教えてもらった時もびっくりしたけど。
おにさん:かっかっか…あの時、ニンゲン達が騒いでおるのが聞こえての。私もお主を探しておったのだ…人の子と聞いておったから、警戒されぬように童(わっぱ)の姿に変えておったのじゃ。
まめこ/まめた:えっ、そうだったの?!知らなかった…
おにさん:しかし、私の方こそお主に対して驚いたぞ!私の存在を受け入れのがあまりにも早かったからのぅ…最近の子は、物分かりが早ようて末恐ろしいくらいじゃ…
まめこ/まめた:「私/僕」…そんな頭良くないよ、成績もここ最近伸びてきて、先生に褒められて…おにさんが勉強を教えてくれたお陰だよ。
おにさん:なぁに…「まめこ/まめた」くらいの人の子の学びくらいは、ここ(神社)に永くも居れば嫌でも分かってくるからのぅ。
まめこ/まめた:………
0:(少し間)
おにさん:ん?どうした「まめこ/まめた」?
まめこ/まめた:やっぱり…おにさん、ニンゲンは嫌い?
おにさん:なんじゃ、どうした急に。
まめこ/まめた:いや…今日の授業で、節分の話が出て…おにさんたちのことを悪い風に言ってて、なんか、すごく…辛かったんだ。おにさん、すごく優しいのに…。みんな、おにさんのこと何も知らないのに好き放題言って。
おにさん:「まめこ/まめた」………。お主、ここ最近、ずっとそれを考えておったのか?前よりも多く邪鬼(じゃき)がついておるぞ。
まめこ/まめた:えっ…そうなの?
おにさん:言ったじゃろうが!お前は、周りのニンゲンと比べて、邪鬼(じゃき)に憑(つ)かれやすいと!お前は優しい奴じゃ。尚更、邪鬼共(じゃきども)も群がるんじゃ…。
まめこ/まめた:……
おにさん:私のことなど気にせずとも良い…もっと、私利私欲(しりしよく)を持つのだ、お主は。
まめこ/まめた:う…ごめん…なさい。
0:「まめこ/まめた」が落ち込み、シュンとしているのを見たおにさんーーー
おにさん:…んぐぬ…
0:(少し間)
0:おにさんは「まめこ/まめた」の頭をわしゃわしゃした。
まめこ/まめた:っぅあっ…頭っ、ちょっ…なにするんだ…子ども扱いはやめてよ!
おにさん:かっかっか!すまぬ……お主は、まだまだ童(わっぱ)じゃ…言われて急に出来ることでもなかろうて、私が大人気なかったわ、「まめこ/まめた」は、本当に素直で、優しいのぅ。どうか、そのまま大きくなってくれればよい…
まめこ/まめた:っへ?…意味がよく分からないけど。
おにさん:気にするでない。こっちの話じゃ。
まめこ/まめた:そう?…あ!あと、今日の授業で将来の夢について、書いたんだ!「私/僕」の夢、おにさん知らないでしょ?
おにさん:ほぅ、確かにそれは知らないのぅ。初耳じゃ…して、「まめこ/まめた」は何になりたいんじゃ?
まめこ/まめた:えへへっ…「私/僕」…この神社の神主になりたいっ!そしたらおにさんとっ、ずっーーーと一緒に居られるでしょ?
おにさん:っ……
0:おにさんが顔を伏せて、肩を振るわせる
まめこ/まめた:?…おにさん?
おにさん:っぷっ…っかっかっかっかっか!
まめこ/まめた:っな、なんで笑うの!
おにさん:いやっ、すまぬっ……っふ…まさか、お主からそんなことを言われる日が来ようとは、永く生きている私すらも思わなかったものでな…
まめこ/まめた:…そうなの?「私/僕」…結構真面目に言っているんだけど。
おにさん:分かっておる、じゃから、すまぬと申しておるじゃろうて…っかかか
まめこ/まめた:そんな面白いことかなぁ?
おにさん:(ひとしきり笑い終え)…はぁ…。……ここにきてから数百年経つが……こんな楽しみ初めてじゃのぅ。
まめこ/まめた:…楽しみに、してくれるの?
おにさん:あぁ、もちろん。「まめこ/まめた」がここに来てくれるのもそうじゃ…私の楽しみの一つじゃ。
おにさん:…っなんじゃ…改めて言うと、恥ずかしいのぅ…
まめこ/まめた:…っ〜〜(嬉し照れ)、「私/僕」!毎日来る(よ!)
おにさん:(被せて)いや、毎日は重いのぅ〜
まめこ/まめた:!っなんだし!おにさん、さびしんぼなくせに!
おにさん:…!かっかっか!そうか、私は寂しん坊か…かっかっか!
まめこ/まめた:(…おにさんが笑ってると嬉しいな。そっか、「私/僕」…おにさんが笑ってる顔が好きなんだ…なんか、安心する。)
おにさん:?何をニヤついておるのじゃ?
まめこ/まめた:っ別に!ニヤついてなんかないよ!
おにさん:そうか……あ、「まめこ/まめた」、そろそろ帰った方が良い時間じゃぞ?
まめこ/まめた:…本当だ!あっ、そういえばお母さんにお使いも頼まれているんだった!恵方巻き!好きなの買っておいでって言われたんだ!
おにさん:おおっ〜それは尚更早く帰らねばじゃな。転ばぬよう、気をつけるんじゃぞ〜
まめこ/まめた:うん!おにさん、ありがとう!また来るからね。
おにさん:あぁ、“また”の〜
0:★SE:走り去る音
おにさん:…全く、走るなと言うておるのに。わからぬ奴じゃな…かかっ…今日は、節分、か。
0:(少し間)
おにさん:この社も、だいぶ古びたのぅ…私も、もう良き頃合いかな…。
0:★SE:冬の風がなびく音
0:場面転換
0:夜、「まめこ/まめた」の家にて。
まめこ/まめた:ふぅ!恵方巻き、美味しかったぁ〜!豆まきは、お父さん帰って来てからだから、その前に宿題やろーっと!
0:場面転換
0:「まめこ/まめた」の部屋
0:逢魔時(おうまがとき)※ 昼と夜の間、少し薄暗くなってきた夕方の「黄昏時(たそがれどき)」
まめこ/まめた:今日、豆まき、どうしよう…絶対…おにさん…も、鬼、なんだよね…”鬼は外“なんてっ、絶対ダメっ!言えないよっ!
悪邪鬼:ほぅ、ならば、私もお主の中にいて良いと言うことだな…かかかっ…!
まめこ/まめた:?!だ、誰だっ!
0:「まめこ/まめた」の心の中で声が聴こえる。
悪邪鬼:私か?私は、お主の中におる鬼だ!ずーっっと、お主の中におったぞ?かっかっか!
まめこ/まめた:…「私/僕」の中の…鬼?
悪邪鬼:かかかっ!あぁ、そうだ。お主の怒りや妬み(ねたみ)、嫉み(そねみ)、哀しみ…全ての負の感情をエネルギーに、邪鬼(じゃき)が集まったもの、私は、悪邪鬼(あくじゃき)と申す。ここまで大きくなったからのぅ、やっと話せるようになったのじゃ。
まめこ/まめた:悪邪鬼(あくじゃき)…「私/僕」の中にいて、どうするの…?
悪邪鬼:あぁ〜、それはもちろん。お主に成り代わって、ニンゲンを痛ぶって楽しむに他はないじゃろう。かかかっ!
まめこ/まめた:なっ…!
悪邪鬼:さぁああ!お主の身体をよこせぇええええええ!!!
0:悪邪鬼が「まめこ/まめた」の心の中を掌握しようとする
まめこ/まめた:ぐっ…うぁ…
0:苦しみながら抵抗する「まめこ/まめた」
悪邪鬼:ちっ…手強い…さっさとよこせぇえ!
まめこ/まめた:うぐっ…おに…さ、ん。
0:★SE:光の効果音的な。
0:「まめこ/まめた」がおにさんのことを想ったと同時に、「まめこ/まめた」が光輝く
悪邪鬼:ぐぁ…な、なんだっこれは!?この霊力は!?ガキの中から…追い出されるっ…!
0:悪邪鬼が「まめこ/まめた」の中から追い出される
悪邪鬼:この私が、力で劣るなどっ、誰じゃお主は!
0:「まめこ/まめた」の中から、霊体のおにさんが現れる。
悪邪鬼:なっ…お前は…!?
おにさん:悪いのぅ、この子は、既に私のものじゃ…手を出すなど、私が許さぬ。
悪邪鬼:かっかっか!こりゃあたまげたぜ!私はお主のお陰で生まれたのだぞ!分からぬか!ほれ!私だ!
おにさん:煩い(うるさい)!分かっておるわ!お主は…お主は、私を封印した祓い屋の後悔の念と封印された私の恨みの念から生まれた鬼…そうじゃろう…?
悪邪鬼:あぁ、そうじゃ。お主が封印されたあの時からじゃ!あの時から…私はジワジワと、祓い屋の中で…祓い屋一族の心の中で生き続けてきた…力をゆっくり貯めながらのぅ。かっかっか!これは、これはめでたいことじゃ!私の生みの親に会えたのじゃからな!言うなれば私の母様じゃ…!どうじゃ母様!母様も、ニンゲンが憎くてたまらぬじゃろう?私と一緒に、ニンゲンへ報復するのじゃ!特に、この童(わっぱ)…此奴(こやつ)は、あの祓い屋の生まれ変わりであるぞ!さぞ恨み深しであったのではないか?一緒に痛ぶりましょうぞ!この童(わっぱ)含め、この一族含め、ニンゲン全てを!かっかっかっか!
おにさん:言いたいことは…それだけか?
悪邪鬼:あ?なんじゃと?
おにさん:“最期に言いたいことはそれだけか?“そう聞いたんじゃ。
悪邪鬼:…最期…じゃと?何を…
おにさん:言うたであろう。「まめこ/まめた」は、既に私のものじゃと…。私は、「まめこ/まめた」を殺さぬ…ニンゲンも、報復せぬ…
悪邪鬼:っ…な!?なぜっ、なんでじゃ!?
おにさん:私は、気づいておった。「まめこ/まめた」と出会った時に…。私を祓ったあの祓い屋の一族で、「まめこ/まめた」自身が、あの忌々しい祓い屋の生まれ変わりであると。
おにさん:封印の石に縛り付けられた積年のこの恨み…どう晴らしてくれようかと、再び会う時までまで、ずっと、どうしてくれようか…と。じゃが、いざ、「まめこ/まめた」に会った時、全部…なくなったんじゃ。思い出したのだ…「まめこ/まめた」に触れたとき、私を祓った時の祓い屋の顔を。泣いておった。…封じ込められる直前に、祓い屋の声が聴こえたんじゃ…「すまぬ」と。
悪邪鬼:っっっそんな、ただそれだけのことで!?
おにさん:それだけではない。「まめこ/まめた」は、この私とずっと一緒にいるのが、夢だと…そう、言ったんじゃ。こんな、まだ童のうちから、優しいんじゃ、この子は。もう、恨むのは疲れた、許したのじゃ、私は…。此奴等(こやつら)の悪行を許す…共に、生きたいと、思ったのじゃ。だから…。
悪邪鬼:なっ…
おにさん:じゃから、決めたのだ。私は、全身全霊力で、ニンゲンを…「まめこ/まめた」を守るとーーーお主と相討ちになって、この身が滅びるとしてもな…
悪邪鬼:あっ、そんな…母さ…ま…(待って…)
おにさん:我(われ)…鬼神、【男声、夜叉丸(やしゃまる)/女声、夜叉姫(やしゃひめ)】の名において、悪鬼滅殺(あっきめっさつ)ーーーーー!
0:強い光が悪邪鬼に向かって放たれる
悪邪鬼:ぎゃあああああ…
0:悪邪鬼の霊体が光に包まれると、消えてなくなったと同時に、おにさんの身体もゆっくり消えつつあった。
おにさん:…起きておったのか…「まめこ/まめた」?
まめこ/まめた:…うっ、おに…さん…「私/僕」。
おにさん:なぜ、お主が泣くんじゃ…最期にも、お主の笑った顔を見せてくれ…
まめこ/まめた:ううっ…ずびっ…うん。えへへ!
おにさん:そうじゃ、私は、お主の笑った顔を見るのが、好きじゃった。
まめこ/まめた:「私/僕」も!おにさんの、笑った顔が好きだよ!「私/僕」、あの神社の神主さんになる夢!絶対叶える!神社も綺麗にして、鬼は優しいんだってみんなに伝えるんだ!「鬼は〜内!福は〜内!」って広めるんだ…うっ…だから…
おにさん:かかかっ、それは、楽しみじゃの…隣に居れぬのが、残念じゃが…強く生きるのじゃぞ、「まめこ/まめた」!
まめこ/まめた:おにさん…!ニンゲンが…今までごめんなさい。本当に、ありがとう…おにさん…!おにさんは、私の中に、いるよ!ずっと!
0:おにさんが消える最期の瞬間
おにさん:あぁ…ありがとう、「まめこ/まめた」ーーー
0:少し間
0:涙を拭う「まめこ/まめた」。
まめこ/まめた:うっ…ぐずっ…おにさん…笑ってた…良かった、ありがとう。おにさん…
モブ:(「まめこ/まめた」母)「まめこ/まめた」〜!豆まきするわよ〜!
まめこ/まめた:はぁーい!
0:少し間
0:
まめこ/まめた:ねぇ、お母さん、お父さん。鬼にもね、優しい鬼がいるんだよ!だから豆まきの時ね…
0:少し間
まめこ/まめた:福は〜内!鬼は〜内!
0:Fin