台本概要
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タイトル | 【切ない】愛と花束とチョコレート |
---|---|
作者名 | ゆる男 (@yuruyurumanno11) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
⟡.·体が冷たいヴィーナス。『ココナ』⟡.· ⟡.·花のヴィーナス。『レイト』⟡.· 二人は街の人々に愛を与える使命を担っている。 そんな中、花のヴィーナスであるレイトは寿命を迎えてしまう。 ⟡.·*.⟡.·⟡.·⟡.·⟡.·⟡.·⟡.·⟡.·⟡.·⟡.·⟡.·⟡.·⟡.·⟡.·⟡.·⟡.· バレンタインも近いのでチョコレート関係の話を書きました。 ちょっぴり切ないですが読んでもらえると嬉しいです! クレジット表記に【】の中は書かなくて大丈夫です! 野良劇や約束劇で使用する時に X(ツイッター)で呟いて頂けると今後のモチベーションに繋がります!! 484 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ココナ | 女 | 130 | 体が冷たいヴィーナス。 性格も少し冷たいけど、レイトには対して愛がある。 |
レイト | 男 | 124 | 花のヴィーナス。 人々に愛の花束を配り、幸せを与えている |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
レイト:……俺たちは……二度と会えないのか…?
ココナ:……ええ。もう…あなたには会うことは無い
レイト:………
ココナ:………あなたの甘い花束の香りに包まれて…眠っていくわ
レイト:………ココナ!
0:【間】
レイト:(M)俺は甘いものは大の苦手だった。だから、たった今、甘いものは大嫌いになった
ココナ:『愛と花束とチョコレート』
0:【間】
レイト:僕と結婚してください。とでも伝えておけ
ココナ:僕と結婚してください
レイト:この3本の薔薇は『愛してる』という意味がある
ココナ:愛してる
レイト:んじゃあな。いい恋しろよ。
ココナ:風邪には気をつけてね
0:レイトとココナは街を歩く
レイト:(M)愛の街。セブンズアムール。俺とココナは生まれてからずっと。この街の人々のために愛を乞う。それが俺とココナに与えられた使命だ
ココナ:(M)形あるものはやがて散りゆく運命(さだめ)。その形が愛と言うならば、私は運命なんて信じない
ココナ:あなたの生命(いのち)は、もう数日だって。本当に使命だけをやるつもり?
レイト:当たり前だろ。見たか?さっきの男。泣きながら彼女が好きだって。プロポーズする気満々だった
ココナ:泣いてる男なんてダサいわ
レイト:おまっ!なんてこと言うんだよ!あの男はな…っ!……ああ。大声出させんなよ
ココナ:だから、さっきも言ったでしょ?このまま動き続けたらあなたの生命(いのち)はすぐに散ってしまうかもしれない
レイト:それでもいいさ。もう少しでアマリオンだ。今度は悩める女の子たちに愛を乞うのが俺たちの役目だ
ココナ:アマリオンまであなたの体が持つ保証はないよ?
レイト:そん時はそん時だ
ココナ:それに、あなたはチョコレートが大の苦手でしょう?
レイト:……っ!ごほっ!ごほっ!くそっ。チョコレートの話したら具合が悪くなってきたぜ
ココナ:そんなわけないでしょ。あなたの生命(いのち)がもう少しで散るからだよ
レイト:……悪いココナ……宿に連れてってくれ
ココナ:わかったわよ。仕方ないな
0:レイトとココナは宿に戻る
レイト:……ふぅ
ココナ:いつも通り布団はかけないよ?
レイト:ああ、助かる
ココナ:こんな体ではもう動けないでしょう
レイト:少し休めば動けるようになるさ……
ココナ:………レイト
レイト:………なに?
ココナ:辛いなら…はっきり言ってよ
レイト:……どうして?
ココナ:何年一緒に居ると思ってんの?あんたとはもうずっとセビリングのパートナーとして共に生きてるんだから
レイト:同情してくれんのか?いい女じゃねーか
ココナ:殴られたいの?
レイト:ははっ。こえーな。せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ。……っ
ココナ:……ん?
0:レイトはココナを抱きしめる
ココナ:はあ。ここ最近、あなたは私にくっつきたがるけどなんなの?
レイト:はっきり言えって言ったのはココナだろ?落ち着くからこうしてるんだ
ココナ:私が冷えてるから?
レイト:そうかもしれない
ココナ:冷えてる私にくっつかないと元気がでないと?
レイト:正解
ココナ:チョコレートみたいな人ね。あなた
レイト:やめてくれ!一緒にするな!
ココナ:………このまま枯れないでくれれば、私はそれでいいよ
レイト:ああ。ココナの冷えた体は…俺の生命(いのち)の終わりを伸ばしてくれる。恋しくなったら、またこうさせてくれ
0:【間】
0:場面転換
ココナ:(M)レイトと出会ったのはセビリングと呼ばれる教会。物心が付く前からレイトと一緒に居た
レイト:(M)俺とココナはセビリングと呼ばれる教会で育った。人々に愛を届けるヴィーナスになれと、力を与えられた
レイト:どうしてココナはヴィーナスなのに暖かくないんだ?
ココナ:知らないわよ。性格が冷たいからじゃない?
レイト:(M)教会では唯一、ココナだけが体が冷えていた。その異変に気づいた神父は冬の街『セブンズアムール』へとココナを送り出した
ココナ:レイトだって、冬にしか咲かない花が生命(いのち)に宿ったんでしょ?だから私と一緒に『セブンズアムール』に来たんだよ
レイト:そうだ。俺は愛を届ける花のヴィーナスだ。どんな形であれど運命を幸せへと導く、それがセビリングの使命だ。枯れるまではそう願いたい
ココナ:(M)咲いて散るのが花。花とはそういうものだけど……。
レイト:(M)俺は冬の花。冬の街にいるからまだ生命(いのち)は途絶えてはいないけど…。咲いて散るのが花である俺だ
0:【間】
レイト:よーし!元気出たー!今日も1日頑張ろーぜー!
ココナ:よかったわね。元気が出て
レイト:ココナのおかげだよ。ありがとう
ココナ:べつにいいわよ
レイト:ああ!今日も街の人々に愛を贈るぞ!
ココナ:レイト、もう動かないで
レイト:いいや、俺はこの生命(いのち)が枯れるまで使命に全う(まっとう)する
ココナ:あなたには多年草の冬の花が宿っている。冬の街で暮らしているからこそ今でも生き続けられてるだけなの。本当だったらもうとっくに枯れてるのよ
レイト:それは不幸中の幸いだな。アマリオンも近いし、俺は出るぞ
ココナ:……もう
0:場面転換
レイト:2月も初めだというのに、チョコレートを渡してくる人が多いな
ココナ:あなたに感謝してる人達が早めにチョコレートを渡してくれてるのよ。いらないなら私が貰う
レイト:い、いや!人から貰ったものだから!俺が食う!……でも、一応ココナが持っといてくれ。冷えてくれるだろ?
ココナ:まあ、チョコレートくらいなら
レイト:アマリオンまで、あと何日だ?
ココナ:あと5日よ
レイト:5日なら…まだ大丈夫だな
ココナ:……あなたは、そこまでして使命を遂げたい理由はなに?
レイト:なにって、ココナと昔誓っただろ?人々が愛で包まれるようにってな
ココナ:本当にそれだけの理由なの?
レイト:そうだよ。去年のクリスマスだって、家族や恋人に愛の花束を配ったんだからな
ココナ:そうね。花のヴィーナスが配る花束は必ず愛情が伝わるって言われてる。ただ、そんなあなたが居なくなったら、この街はどうなるか考えたことあるの?
レイト:俺の代わりはいくらでも居るよ
ココナ:確かに…冬の花が生命(いのち)に宿るヴィーナスは沢山いる
レイト:だから、俺じゃなくても大丈夫だろう
ココナ:………そうね
レイト:………ああ、そうだ
ココナ:………それなら…あなたからもらった愛情は…それはとても、暖かいんでしょうね
レイト:………どういう意味だ?
ココナ:特に意味は無いわよ
レイト:おう。そうか
0:【間】
0:場面転換
レイト:(M)時計の針は刻一刻と時間を刻んでいく。過ぎた時間が巻き戻ることは絶対にない。それは枯れた花が元に戻ることがないのと一緒だ
ココナ:(M)花のヴィーナス。レイト。彼から貰った花束で、実った愛は数知れず。ヴィーナスとしての役割は十分に果たしているわ。
ココナ:(M)アマリオンは、年に一度、想い人にチョコレートを渡す風習がある。私は想い人に……チョコレートを渡す事なんてない
ココナ:(M)私の想い人は甘いものが苦手で、特にチョコレートが大の苦手だと言うんだから
0:二人は宿に戻る
レイト:ココナはもっと笑った方がいい
ココナ:……急になに?
レイト:こんなに綺麗なヴィーナスが、あんまり笑わないのはもったいないだろ?
ココナ:……だって私は…体が冷たいから、人の心を暖かくすることは出来ないの。だから笑いたくない
レイト:体が冷たいだけさ。ココナの心は暖かいはず。俺はそばでずっと見てきたからわかるよ
ココナ:……あなたには、私の思いは伝わるの?
レイト:……どうだろうな?
ココナ:レイト…今度は私から抱きしめていい?
レイト:……珍しいな。お前がそんなこと言うの
ココナ:お願い。レイトの温もりが…欲しいの
レイト:ああ。わかったよ
ココナ:………
0:ココナはレイトを抱きしめる
レイト:やっぱり……ココナは安心するな
ココナ:……そう?
レイト:ココナはどう?安心する?
ココナ:……わからないわ
レイト:……そっか
ココナ:………わからない。…どうして安心出来ないのか……わからない
レイト:………俺の愛情が足りてないのか?
ココナ:違う。……レイトからの愛情は…届いてる
レイト:……じゃあこれからは、ココナが安心出来るように、俺も頑張るよ。ココナが笑顔になれるように……頑張る
ココナ:残り少ない生命(いのち)なんだから…私のために頑張らないでよ
レイト:俺たちはずっと一緒に居たからな。最期までお前と一緒に居させてくれ
ココナ:……わかったわよ
レイト:このまま…眠ってもいいか?
ココナ:そんな体じゃ疲れたでしょう?冷えた私の胸で眠って
レイト:ああ…。ありがとう
レイト:ココナ……
ココナ:……なに?
レイト:……愛してる
ココナ:……私も…愛してるわ
0:【間】
ココナ:(M)レイトは私の胸で静かに眠る。残り少ない生命(いのち)で、私の冷えた体を求めてくれる。私にとってこんなに喜ばしいことは無い。……それなのに……
ココナ:(M)あなたを抱きしめても…。私のこの大きな不安はどうして拭えないんだろう。私は……。……どうして
ココナ:……ごほっ!……っ
ココナ:(M)眠ってる彼を起こしてはいけない。そう思って私は不意に出る咳を我慢した。それでも……息が苦しい。
ココナ:(M)違和感を覚えた私はただ、彼のためにじっとしている。……こんなに不安に感じたのは初めてだった
ココナ:(M)少し、甘いものでも食べて、落ち着かせようかな。きっと、彼が貰ったチョコレートを食べても、怒られはしないだろうし
ココナ:(M)私はしまっていたチョコレートを取り出す
ココナ:………あれ…。溶けてる……?
ココナ:(M)私が感じた違和感と不安はこれだったのかもしれない。それに気付いた時、私はそれが本望だと思った
ココナ:(M)そっか。レイトは私の冷たい体で生命(いのち)は伸びていくけれど、私は…レイトの温もりで生命(いのち)が溶けていく。チョコレートみたいな存在は、私の方だった
0:【間】
0:場面転換
レイト:おはよー!ココナ!
ココナ:……おはよう
レイト:あれ?元気ない?
ココナ:いや、そんな事ないよ
レイト:そう?俺は一段と体が軽いぞー!今日は忙しくしていこー!
ココナ:……はあ。いいわよ。今日はあなたに付き合ってあげる
0:二人は街に繰り出す
レイト:ほら、カーネーションだ。今のお前にピッタリの花だ。これで彼女に愛を伝えてこい
ココナ:………
レイト:じゃあな!お前の愛は絶対に伝わるはずだ。その気持ちを大事にな
ココナ:じゃあね。……寒さには気をつけて
0:【間】
レイト:あと…3日か
ココナ:調子はどう?
レイト:ああ!絶好調だ!一晩中ココナに包まれてたからな
ココナ:そう。よかったわ
レイト:ココナこそ、今日は元気なさそうだな
ココナ:………そんなことないよ
レイト:俺にはわかるぞ?何年一緒に居ると思ってんだ?
ココナ:何もないって
レイト:何もないことないだろ。言ってみろ
ココナ:………っ
0:ココナはレイトの頬に両手を当てる
レイト:………なに?
ココナ:何もないよ。あなたとの別れが名残惜しいだけ
レイト:………ココナ。俺はまだ枯れないぞ?
ココナ:うん。ずっと生きてて
レイト:当たり前だろ。お前が居れば俺は長く生きられる気がするんだから
ココナ:……うん
レイト:ココナは…。この街が好きか?
ココナ:……え?どうして?
レイト:いや、気になったからさ。この街でずっとココナと一緒に居るし、どう思ってんだろうって改めて思った
ココナ:……そう、だね。この街は好きだよ。私がヴィーナスとしての役割はここでしか果たせないわけだし
レイト:ああ。そうだな。俺もお前が居てくれたから花のヴィーナスとして使命を全う出来たわけだしな
ココナ:でも……私ね。セビリングの人達からこの街に行って欲しいって言われた時…。もう私はセビリングには必要ないって言われたような気がしたの
レイト:どうしてだ?
ココナ:普通のヴィーナスは、体が暖かくて、人々に愛と笑顔を届けられる。それがヴィーナスとしての使命だから。……でも私は、それが出来ないし、体も冷たい
レイト:………
ココナ:だから普通じゃないヴィーナスは……セビリングには要らないって言われてるのかなって
ココナ:それに、レイトが代わりに愛を届けてくれてるから…。レイトに負担を掛けてしまって…それでレイトの生命(いのち)が末期まで迫ってるんじゃないかって
レイト:それは違う!俺は…ただ街の人々に愛を届けるのが好きなだけだ。お前のせいなんかじゃない!
ココナ:………でも、この街はレイトが必要なんだよ。アマリオンだって、レイトが居れば沢山の愛を届けられる
レイト:……でも、俺にはココナが必要なんだよ
ココナ:………レイト
レイト:俺は優しいココナを知っている。本当は心が暖かい事も知っている。俺はいつもココナに愛情を貰ってるんだよ。俺にとって…1番愛情を持ってるヴィーナスだ
ココナ:………っ!
0:ココナはレイトに抱きつく
レイト:おい、またどうしたんだよ?最近俺にくっついてばっかだな
ココナ:………今なら、あなたの気持ちがよくわかるわ
レイト:………は?どういう事だ?
ココナ:終わりが近くなると……あなたの温もりが恋しくなる
レイト:……おい…どういう事だよ
ココナ:……ごほっ!……ごほっ!ごほっ!
レイト:……ココナ!?
ココナ:…はあ……はあ……。ごほっ!ごほっ!!
レイト:……おい!ココナ!?どうしたんだよ!ココナ!?
0:【間】
ココナ:(M)時計の針は刻一刻と時間を刻んでいく。過ぎた時間が巻き戻ることは絶対にない。それは枯れた花が元に戻ることがないのと一緒だ
レイト:(M)セビリングのヴィーナス。ココナ。教会で生まれた冷たい体を持つ一人の少女だ
レイト:(M)だから、冬の花を生命(いのち)に宿す俺にはココナの存在は心地良かった
0:二人は宿に戻る
レイト:ココナ!ちょっとベットで寝てろ。飲み物取ってくる!
ココナ:………ありがとう
レイト:冷えた紅茶だ。飲んでくれ
ココナ:……うん。ありがとう
0:ココナはティーカップを持とうとするが……
ココナ:………飲めない
レイト:……なんでだよ
ココナ:……ティーカップを持つ力も…無くなっちゃった
レイト:………何があったんだ?
ココナ:なんだろうね
レイト:……ココナ?……なんで汗かいてるんだよ
ココナ:……はあ。……はあ
レイト:こんなこと初めてだろ!?何があったんだよ!
ココナ:……何も…ないよ
レイト:何も無いわけないだろ!額、触らせろ
ココナ:………っ
レイト:……熱い
ココナ:………そうだね
レイト:お前が熱くなるなんて…どうなってるんだ?
ココナ:……レイト、口を開けて
レイト:……なんだ?
ココナ:はい
レイト:っ!あまっ!
ココナ:アマリオンはね、想い人にチョコレートを渡すんだよ
レイト:だからって!俺甘いの苦手なんだぞ!
ココナ:わかってる。嫌いなものの方が記憶に残るでしょ?私はあなたみたいに花束は送れないから…チョコレートを送るね
レイト:残るけど……なんでこんなことするんだ
ココナ:アマリオンまで…残り3日。それまで……あなたはこの街に居るべきだから
レイト:……ああ。俺はこの街に居るよ。ココナと一緒に居る
ココナ:……だめ
レイト:…………
0:ココナはレイトを抱きしめる
ココナ:こうしないと……あなたはアマリオンまで生きていられないから
レイト:………ココナ。お前、俺にくっついている時……安心出来ないって言ってたよな?……今はどうなんだ?
ココナ:……そうね。今はどちらかと言うと……もう溢れてしまいそう
レイト:………何が?
ココナ:……あなたへの愛が
レイト:……
ココナ:私は…セビリングのヴィーナスや、神父様達から、愛情を与えられなかった。それはもちろん私の体が冷たいから…誰も触りたくなかったんだと思う。だから……私は誰からも必要とされていなかった
ココナ:………けど……あなたは…あなただけは……私を必要としてくれた。あなただけは…私に触れて温もりをくれた……あなただけは……私のことを愛してくれた
ココナ:あなたから貰った愛情の分だけ、溶けて居なくなれるなら、それが私の本望よ。あなたの代わりになる人なんて居ない
レイト:………ココナ…?お前…まさか
ココナ:ええ、あなたの温もりで私の生命(いのち)は溶けていく。その代わり、私の冷えた体であなたの生命(いのち)は伸びていくの
レイト:……どうして…どうしてそれを早く言わなかったんだよ!!
ココナ:あなたへの愛を…感じていたかったから
レイト:他に…助かる方法があるはずだ!アマリオンまでは……一緒に居るって決めてたじゃねーか!
ココナ:ううん。これでいいの。あなたは私だけじゃない。街の人々に愛情を与える、本当に頼もしいヴィーナスだから……。あなたには…アマリオンまで生きていて欲しい。それが私の願いよ
レイト:………お前が…溶けてしまったら……どうなるんだよ?
ココナ:あなたは……枯れた自分のことなんてわからないでしょ?私にもわからない
レイト:……俺たちは……二度と会えないのか…?
ココナ:……ええ。もう…あなたには会うことは無い
レイト:………
ココナ:………あなたの甘い花束の香りに包まれて…眠っていくわ
レイト:………ココナ!
ココナ:………そうだ。最後に…見せてあげるね。少し練習したの
レイト:………っ!
ココナ:………上手く……笑えてるかしら?
レイト:………綺麗だよ…ココナ
ココナ:さようなら。愛してるわ。レイト
レイト:………ココナーー!!
0:【間】
レイト:(M)ココナは俺の胸の中で動かなくなる。俺の生命(いのち)の花である、アネモネの花と涙を添えて、ココナの体を埋めつくした
レイト:(M)俺は甘いものは大の苦手だった。だから、たった今、甘いものは大嫌いになった
レイト:(M)それでも…彼女から貰った愛情を吐き出すこともせず、ただ噛み締める
レイト:(M)甘くて、ほろ苦くて。そして、少しだけ冷たい。そんな彼女の愛情をただ噛み締める
0:愛と花束とチョコレート
0:End
レイト:……俺たちは……二度と会えないのか…?
ココナ:……ええ。もう…あなたには会うことは無い
レイト:………
ココナ:………あなたの甘い花束の香りに包まれて…眠っていくわ
レイト:………ココナ!
0:【間】
レイト:(M)俺は甘いものは大の苦手だった。だから、たった今、甘いものは大嫌いになった
ココナ:『愛と花束とチョコレート』
0:【間】
レイト:僕と結婚してください。とでも伝えておけ
ココナ:僕と結婚してください
レイト:この3本の薔薇は『愛してる』という意味がある
ココナ:愛してる
レイト:んじゃあな。いい恋しろよ。
ココナ:風邪には気をつけてね
0:レイトとココナは街を歩く
レイト:(M)愛の街。セブンズアムール。俺とココナは生まれてからずっと。この街の人々のために愛を乞う。それが俺とココナに与えられた使命だ
ココナ:(M)形あるものはやがて散りゆく運命(さだめ)。その形が愛と言うならば、私は運命なんて信じない
ココナ:あなたの生命(いのち)は、もう数日だって。本当に使命だけをやるつもり?
レイト:当たり前だろ。見たか?さっきの男。泣きながら彼女が好きだって。プロポーズする気満々だった
ココナ:泣いてる男なんてダサいわ
レイト:おまっ!なんてこと言うんだよ!あの男はな…っ!……ああ。大声出させんなよ
ココナ:だから、さっきも言ったでしょ?このまま動き続けたらあなたの生命(いのち)はすぐに散ってしまうかもしれない
レイト:それでもいいさ。もう少しでアマリオンだ。今度は悩める女の子たちに愛を乞うのが俺たちの役目だ
ココナ:アマリオンまであなたの体が持つ保証はないよ?
レイト:そん時はそん時だ
ココナ:それに、あなたはチョコレートが大の苦手でしょう?
レイト:……っ!ごほっ!ごほっ!くそっ。チョコレートの話したら具合が悪くなってきたぜ
ココナ:そんなわけないでしょ。あなたの生命(いのち)がもう少しで散るからだよ
レイト:……悪いココナ……宿に連れてってくれ
ココナ:わかったわよ。仕方ないな
0:レイトとココナは宿に戻る
レイト:……ふぅ
ココナ:いつも通り布団はかけないよ?
レイト:ああ、助かる
ココナ:こんな体ではもう動けないでしょう
レイト:少し休めば動けるようになるさ……
ココナ:………レイト
レイト:………なに?
ココナ:辛いなら…はっきり言ってよ
レイト:……どうして?
ココナ:何年一緒に居ると思ってんの?あんたとはもうずっとセビリングのパートナーとして共に生きてるんだから
レイト:同情してくれんのか?いい女じゃねーか
ココナ:殴られたいの?
レイト:ははっ。こえーな。せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ。……っ
ココナ:……ん?
0:レイトはココナを抱きしめる
ココナ:はあ。ここ最近、あなたは私にくっつきたがるけどなんなの?
レイト:はっきり言えって言ったのはココナだろ?落ち着くからこうしてるんだ
ココナ:私が冷えてるから?
レイト:そうかもしれない
ココナ:冷えてる私にくっつかないと元気がでないと?
レイト:正解
ココナ:チョコレートみたいな人ね。あなた
レイト:やめてくれ!一緒にするな!
ココナ:………このまま枯れないでくれれば、私はそれでいいよ
レイト:ああ。ココナの冷えた体は…俺の生命(いのち)の終わりを伸ばしてくれる。恋しくなったら、またこうさせてくれ
0:【間】
0:場面転換
ココナ:(M)レイトと出会ったのはセビリングと呼ばれる教会。物心が付く前からレイトと一緒に居た
レイト:(M)俺とココナはセビリングと呼ばれる教会で育った。人々に愛を届けるヴィーナスになれと、力を与えられた
レイト:どうしてココナはヴィーナスなのに暖かくないんだ?
ココナ:知らないわよ。性格が冷たいからじゃない?
レイト:(M)教会では唯一、ココナだけが体が冷えていた。その異変に気づいた神父は冬の街『セブンズアムール』へとココナを送り出した
ココナ:レイトだって、冬にしか咲かない花が生命(いのち)に宿ったんでしょ?だから私と一緒に『セブンズアムール』に来たんだよ
レイト:そうだ。俺は愛を届ける花のヴィーナスだ。どんな形であれど運命を幸せへと導く、それがセビリングの使命だ。枯れるまではそう願いたい
ココナ:(M)咲いて散るのが花。花とはそういうものだけど……。
レイト:(M)俺は冬の花。冬の街にいるからまだ生命(いのち)は途絶えてはいないけど…。咲いて散るのが花である俺だ
0:【間】
レイト:よーし!元気出たー!今日も1日頑張ろーぜー!
ココナ:よかったわね。元気が出て
レイト:ココナのおかげだよ。ありがとう
ココナ:べつにいいわよ
レイト:ああ!今日も街の人々に愛を贈るぞ!
ココナ:レイト、もう動かないで
レイト:いいや、俺はこの生命(いのち)が枯れるまで使命に全う(まっとう)する
ココナ:あなたには多年草の冬の花が宿っている。冬の街で暮らしているからこそ今でも生き続けられてるだけなの。本当だったらもうとっくに枯れてるのよ
レイト:それは不幸中の幸いだな。アマリオンも近いし、俺は出るぞ
ココナ:……もう
0:場面転換
レイト:2月も初めだというのに、チョコレートを渡してくる人が多いな
ココナ:あなたに感謝してる人達が早めにチョコレートを渡してくれてるのよ。いらないなら私が貰う
レイト:い、いや!人から貰ったものだから!俺が食う!……でも、一応ココナが持っといてくれ。冷えてくれるだろ?
ココナ:まあ、チョコレートくらいなら
レイト:アマリオンまで、あと何日だ?
ココナ:あと5日よ
レイト:5日なら…まだ大丈夫だな
ココナ:……あなたは、そこまでして使命を遂げたい理由はなに?
レイト:なにって、ココナと昔誓っただろ?人々が愛で包まれるようにってな
ココナ:本当にそれだけの理由なの?
レイト:そうだよ。去年のクリスマスだって、家族や恋人に愛の花束を配ったんだからな
ココナ:そうね。花のヴィーナスが配る花束は必ず愛情が伝わるって言われてる。ただ、そんなあなたが居なくなったら、この街はどうなるか考えたことあるの?
レイト:俺の代わりはいくらでも居るよ
ココナ:確かに…冬の花が生命(いのち)に宿るヴィーナスは沢山いる
レイト:だから、俺じゃなくても大丈夫だろう
ココナ:………そうね
レイト:………ああ、そうだ
ココナ:………それなら…あなたからもらった愛情は…それはとても、暖かいんでしょうね
レイト:………どういう意味だ?
ココナ:特に意味は無いわよ
レイト:おう。そうか
0:【間】
0:場面転換
レイト:(M)時計の針は刻一刻と時間を刻んでいく。過ぎた時間が巻き戻ることは絶対にない。それは枯れた花が元に戻ることがないのと一緒だ
ココナ:(M)花のヴィーナス。レイト。彼から貰った花束で、実った愛は数知れず。ヴィーナスとしての役割は十分に果たしているわ。
ココナ:(M)アマリオンは、年に一度、想い人にチョコレートを渡す風習がある。私は想い人に……チョコレートを渡す事なんてない
ココナ:(M)私の想い人は甘いものが苦手で、特にチョコレートが大の苦手だと言うんだから
0:二人は宿に戻る
レイト:ココナはもっと笑った方がいい
ココナ:……急になに?
レイト:こんなに綺麗なヴィーナスが、あんまり笑わないのはもったいないだろ?
ココナ:……だって私は…体が冷たいから、人の心を暖かくすることは出来ないの。だから笑いたくない
レイト:体が冷たいだけさ。ココナの心は暖かいはず。俺はそばでずっと見てきたからわかるよ
ココナ:……あなたには、私の思いは伝わるの?
レイト:……どうだろうな?
ココナ:レイト…今度は私から抱きしめていい?
レイト:……珍しいな。お前がそんなこと言うの
ココナ:お願い。レイトの温もりが…欲しいの
レイト:ああ。わかったよ
ココナ:………
0:ココナはレイトを抱きしめる
レイト:やっぱり……ココナは安心するな
ココナ:……そう?
レイト:ココナはどう?安心する?
ココナ:……わからないわ
レイト:……そっか
ココナ:………わからない。…どうして安心出来ないのか……わからない
レイト:………俺の愛情が足りてないのか?
ココナ:違う。……レイトからの愛情は…届いてる
レイト:……じゃあこれからは、ココナが安心出来るように、俺も頑張るよ。ココナが笑顔になれるように……頑張る
ココナ:残り少ない生命(いのち)なんだから…私のために頑張らないでよ
レイト:俺たちはずっと一緒に居たからな。最期までお前と一緒に居させてくれ
ココナ:……わかったわよ
レイト:このまま…眠ってもいいか?
ココナ:そんな体じゃ疲れたでしょう?冷えた私の胸で眠って
レイト:ああ…。ありがとう
レイト:ココナ……
ココナ:……なに?
レイト:……愛してる
ココナ:……私も…愛してるわ
0:【間】
ココナ:(M)レイトは私の胸で静かに眠る。残り少ない生命(いのち)で、私の冷えた体を求めてくれる。私にとってこんなに喜ばしいことは無い。……それなのに……
ココナ:(M)あなたを抱きしめても…。私のこの大きな不安はどうして拭えないんだろう。私は……。……どうして
ココナ:……ごほっ!……っ
ココナ:(M)眠ってる彼を起こしてはいけない。そう思って私は不意に出る咳を我慢した。それでも……息が苦しい。
ココナ:(M)違和感を覚えた私はただ、彼のためにじっとしている。……こんなに不安に感じたのは初めてだった
ココナ:(M)少し、甘いものでも食べて、落ち着かせようかな。きっと、彼が貰ったチョコレートを食べても、怒られはしないだろうし
ココナ:(M)私はしまっていたチョコレートを取り出す
ココナ:………あれ…。溶けてる……?
ココナ:(M)私が感じた違和感と不安はこれだったのかもしれない。それに気付いた時、私はそれが本望だと思った
ココナ:(M)そっか。レイトは私の冷たい体で生命(いのち)は伸びていくけれど、私は…レイトの温もりで生命(いのち)が溶けていく。チョコレートみたいな存在は、私の方だった
0:【間】
0:場面転換
レイト:おはよー!ココナ!
ココナ:……おはよう
レイト:あれ?元気ない?
ココナ:いや、そんな事ないよ
レイト:そう?俺は一段と体が軽いぞー!今日は忙しくしていこー!
ココナ:……はあ。いいわよ。今日はあなたに付き合ってあげる
0:二人は街に繰り出す
レイト:ほら、カーネーションだ。今のお前にピッタリの花だ。これで彼女に愛を伝えてこい
ココナ:………
レイト:じゃあな!お前の愛は絶対に伝わるはずだ。その気持ちを大事にな
ココナ:じゃあね。……寒さには気をつけて
0:【間】
レイト:あと…3日か
ココナ:調子はどう?
レイト:ああ!絶好調だ!一晩中ココナに包まれてたからな
ココナ:そう。よかったわ
レイト:ココナこそ、今日は元気なさそうだな
ココナ:………そんなことないよ
レイト:俺にはわかるぞ?何年一緒に居ると思ってんだ?
ココナ:何もないって
レイト:何もないことないだろ。言ってみろ
ココナ:………っ
0:ココナはレイトの頬に両手を当てる
レイト:………なに?
ココナ:何もないよ。あなたとの別れが名残惜しいだけ
レイト:………ココナ。俺はまだ枯れないぞ?
ココナ:うん。ずっと生きてて
レイト:当たり前だろ。お前が居れば俺は長く生きられる気がするんだから
ココナ:……うん
レイト:ココナは…。この街が好きか?
ココナ:……え?どうして?
レイト:いや、気になったからさ。この街でずっとココナと一緒に居るし、どう思ってんだろうって改めて思った
ココナ:……そう、だね。この街は好きだよ。私がヴィーナスとしての役割はここでしか果たせないわけだし
レイト:ああ。そうだな。俺もお前が居てくれたから花のヴィーナスとして使命を全う出来たわけだしな
ココナ:でも……私ね。セビリングの人達からこの街に行って欲しいって言われた時…。もう私はセビリングには必要ないって言われたような気がしたの
レイト:どうしてだ?
ココナ:普通のヴィーナスは、体が暖かくて、人々に愛と笑顔を届けられる。それがヴィーナスとしての使命だから。……でも私は、それが出来ないし、体も冷たい
レイト:………
ココナ:だから普通じゃないヴィーナスは……セビリングには要らないって言われてるのかなって
ココナ:それに、レイトが代わりに愛を届けてくれてるから…。レイトに負担を掛けてしまって…それでレイトの生命(いのち)が末期まで迫ってるんじゃないかって
レイト:それは違う!俺は…ただ街の人々に愛を届けるのが好きなだけだ。お前のせいなんかじゃない!
ココナ:………でも、この街はレイトが必要なんだよ。アマリオンだって、レイトが居れば沢山の愛を届けられる
レイト:……でも、俺にはココナが必要なんだよ
ココナ:………レイト
レイト:俺は優しいココナを知っている。本当は心が暖かい事も知っている。俺はいつもココナに愛情を貰ってるんだよ。俺にとって…1番愛情を持ってるヴィーナスだ
ココナ:………っ!
0:ココナはレイトに抱きつく
レイト:おい、またどうしたんだよ?最近俺にくっついてばっかだな
ココナ:………今なら、あなたの気持ちがよくわかるわ
レイト:………は?どういう事だ?
ココナ:終わりが近くなると……あなたの温もりが恋しくなる
レイト:……おい…どういう事だよ
ココナ:……ごほっ!……ごほっ!ごほっ!
レイト:……ココナ!?
ココナ:…はあ……はあ……。ごほっ!ごほっ!!
レイト:……おい!ココナ!?どうしたんだよ!ココナ!?
0:【間】
ココナ:(M)時計の針は刻一刻と時間を刻んでいく。過ぎた時間が巻き戻ることは絶対にない。それは枯れた花が元に戻ることがないのと一緒だ
レイト:(M)セビリングのヴィーナス。ココナ。教会で生まれた冷たい体を持つ一人の少女だ
レイト:(M)だから、冬の花を生命(いのち)に宿す俺にはココナの存在は心地良かった
0:二人は宿に戻る
レイト:ココナ!ちょっとベットで寝てろ。飲み物取ってくる!
ココナ:………ありがとう
レイト:冷えた紅茶だ。飲んでくれ
ココナ:……うん。ありがとう
0:ココナはティーカップを持とうとするが……
ココナ:………飲めない
レイト:……なんでだよ
ココナ:……ティーカップを持つ力も…無くなっちゃった
レイト:………何があったんだ?
ココナ:なんだろうね
レイト:……ココナ?……なんで汗かいてるんだよ
ココナ:……はあ。……はあ
レイト:こんなこと初めてだろ!?何があったんだよ!
ココナ:……何も…ないよ
レイト:何も無いわけないだろ!額、触らせろ
ココナ:………っ
レイト:……熱い
ココナ:………そうだね
レイト:お前が熱くなるなんて…どうなってるんだ?
ココナ:……レイト、口を開けて
レイト:……なんだ?
ココナ:はい
レイト:っ!あまっ!
ココナ:アマリオンはね、想い人にチョコレートを渡すんだよ
レイト:だからって!俺甘いの苦手なんだぞ!
ココナ:わかってる。嫌いなものの方が記憶に残るでしょ?私はあなたみたいに花束は送れないから…チョコレートを送るね
レイト:残るけど……なんでこんなことするんだ
ココナ:アマリオンまで…残り3日。それまで……あなたはこの街に居るべきだから
レイト:……ああ。俺はこの街に居るよ。ココナと一緒に居る
ココナ:……だめ
レイト:…………
0:ココナはレイトを抱きしめる
ココナ:こうしないと……あなたはアマリオンまで生きていられないから
レイト:………ココナ。お前、俺にくっついている時……安心出来ないって言ってたよな?……今はどうなんだ?
ココナ:……そうね。今はどちらかと言うと……もう溢れてしまいそう
レイト:………何が?
ココナ:……あなたへの愛が
レイト:……
ココナ:私は…セビリングのヴィーナスや、神父様達から、愛情を与えられなかった。それはもちろん私の体が冷たいから…誰も触りたくなかったんだと思う。だから……私は誰からも必要とされていなかった
ココナ:………けど……あなたは…あなただけは……私を必要としてくれた。あなただけは…私に触れて温もりをくれた……あなただけは……私のことを愛してくれた
ココナ:あなたから貰った愛情の分だけ、溶けて居なくなれるなら、それが私の本望よ。あなたの代わりになる人なんて居ない
レイト:………ココナ…?お前…まさか
ココナ:ええ、あなたの温もりで私の生命(いのち)は溶けていく。その代わり、私の冷えた体であなたの生命(いのち)は伸びていくの
レイト:……どうして…どうしてそれを早く言わなかったんだよ!!
ココナ:あなたへの愛を…感じていたかったから
レイト:他に…助かる方法があるはずだ!アマリオンまでは……一緒に居るって決めてたじゃねーか!
ココナ:ううん。これでいいの。あなたは私だけじゃない。街の人々に愛情を与える、本当に頼もしいヴィーナスだから……。あなたには…アマリオンまで生きていて欲しい。それが私の願いよ
レイト:………お前が…溶けてしまったら……どうなるんだよ?
ココナ:あなたは……枯れた自分のことなんてわからないでしょ?私にもわからない
レイト:……俺たちは……二度と会えないのか…?
ココナ:……ええ。もう…あなたには会うことは無い
レイト:………
ココナ:………あなたの甘い花束の香りに包まれて…眠っていくわ
レイト:………ココナ!
ココナ:………そうだ。最後に…見せてあげるね。少し練習したの
レイト:………っ!
ココナ:………上手く……笑えてるかしら?
レイト:………綺麗だよ…ココナ
ココナ:さようなら。愛してるわ。レイト
レイト:………ココナーー!!
0:【間】
レイト:(M)ココナは俺の胸の中で動かなくなる。俺の生命(いのち)の花である、アネモネの花と涙を添えて、ココナの体を埋めつくした
レイト:(M)俺は甘いものは大の苦手だった。だから、たった今、甘いものは大嫌いになった
レイト:(M)それでも…彼女から貰った愛情を吐き出すこともせず、ただ噛み締める
レイト:(M)甘くて、ほろ苦くて。そして、少しだけ冷たい。そんな彼女の愛情をただ噛み締める
0:愛と花束とチョコレート
0:End