台本概要
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タイトル | アリスと帽子屋 |
---|---|
作者名 | 天道司 |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ご自由に演じてください。
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
アリス | 女 | 49 | 声優を目指す女の子。 |
帽子屋 | 男 | 48 | かつてアリスが…? |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
アリス:(M)町の外れにある岬(みさき)の灯台。
アリス:彼は、そこに独りで住んでいた。
アリス:不思議の国へと通じる扉の番人。
アリス:それが、彼の役割…。
アリス:「あっ、あのぉ。こんにちは」
帽子屋:「ん?」
アリス:「あっ、あなたが、帽子屋さん、ですよね?」
帽子屋:「人違いだね」
アリス:「でも、ここに来れば、帽子屋さんに会えるって聞きました」
帽子屋:「ここに来れば?」
アリス:「はい。つまり、あなたが」
帽子屋:「帽子屋だと?」
アリス:「はい。違うんですか?」
帽子屋:「言ったろ?人違いだ」
アリス:「じゃあ、あなたが帽子屋さんじゃなければ、ここで待っていれば、帽子屋さんに会えますか?」
帽子屋:「どうだろう…。会えるかも知れないし、会えないかも知れない」
アリス:「えっ?どういうことですか?」
帽子屋:「そのままの意味さ」
アリス:「意味がわかりません。私をからかってるんですか?」
帽子屋:「からかう?」
アリス:「そうです。私は、どうしても帽子屋さんに会いたいんです」
帽子屋:「ほぅ。なぜ?」
アリス:「不思議の国に行きたいからです」
帽子屋:「不思議の国…か」
アリス:「知ってるんですか?」
帽子屋:「知っているのかも知れないし、知らないのかも知れない」
アリス:「どっちなんですか?」
帽子屋:「さぁ、どっちだろう?」
アリス:「やっぱり、私をからかってるんですね。もう、いいです」
アリス:「帽子屋さんが帰ってくるまで、ここで待たせて頂きます」
帽子屋:「待っても無駄さ。ここには、誰も帰って来ない。ここに住んでいるのは、僕ひとりさ」
アリス:「なるほど…。何か理由があって、自分が帽子屋さんであることを認めたくないんですね」
帽子屋:「ほほぉ。どうしてそうなるの?」
アリス:「ここが、帽子屋さんの家ということは、都市伝説になっているからです」
帽子屋:「都市伝説…か…」
アリス:「そうです。町外れにある無人の灯台の扉を」
アリス:「11月11日、午前11時11分11秒ちょうどに開くと…」
アリス:「帽子屋と名乗る謎の青年に会える。そして、その青年に不思議の国へと連れて行ってもらえると…」
帽子屋:「君は、そんな都市伝説を信じているのかい?」
アリス:「信じています。私、そういう都市伝説、大好きなんです!」
帽子屋:「好奇心は猫を殺す」
アリス:「えっ?」
帽子屋:「イギリスの古いことわざだよ。猫は、九つの命を持っていて、容易には死なない存在とされている」
帽子屋:「そんな猫ですら、持ち前の好奇心が原因で命を落とす事がある、という意味さ」
アリス:「例え、命を落とすことになっても、私は、不思議の国に行きたいんです」
帽子屋:「なぜ?」
アリス:「この世界に、私の居場所は、どこにもないから…」
帽子屋:「どうして、そう思うの?」
アリス:「この世界は、私がしたいことを全部、否定してくるから」
帽子屋:「君には、夢があったんだね」
アリス:「最初は、声優になるのが夢でした。声が良いって、周りからも褒められて」
アリス:「養成所に通って、自分なりに上手くなる努力もしてきました。だけど…」
帽子屋:「だけど?」
アリス:「上手な人との掛け合いをする時に、緊張して、頭が真っ白になるんです」
アリス:「そして、大好きだったアニメも楽しむことができなくなりました」
アリス:「アニメの映像ではなく、声優さんがタイマーを気にしながら声を吹き込んでる映像が浮かんでくるんです」
帽子屋:「だから、あきらめるの?」
アリス:「それだけじゃない。誰も応援してくれないから」
帽子屋:「応援してくれる人がいないと、夢は見れないの?」
アリス:「そんなことはないですけど…。でも、借金して養成所に通ってるから、途中でやめることもできないし」
アリス:「ほんとに、辛いんです!」
帽子屋:「ほんとに、声優になりたかったの?」
アリス:「私は、勉強もスポーツもできないし、演技以外に道はなかった。声優になる道しかなかった」
帽子屋:「ほんとに、そうだったのかな?」
アリス:「えっ?」
帽子屋:「決めつけていただけで、見ようとしなかっただけで、本当は何かあったのかも知れない」
アリス:「だけど、もう、抜け出せないんです。これから養成所に借金を返していかないといけないし」
アリス:「本気で声優になるなら、上京して、さらに借金を重ねないと…」
帽子屋:「それが、君の夢なの?」
アリス:「わかりません。そういうことを考えてると、頭が痛くなって、何もかもどうでも良くなって」
帽子屋:「死にたくなるんだね」
アリス:「…」
帽子屋:「…」
帽子屋:「ここに来てくれて、ありがとう」
アリス:「えっ?」
帽子屋:「僕を頼ってくれて、必要としてくれて、ありがとう」
アリス:「でも、あなたは、帽子屋さんじゃないのでは?」
帽子屋:「帽子屋ではないよ」
アリス:「じゃあ、あなたは、何なんですか?」
帽子屋:「何かと聞かれたら、僕であると答えることしかできないな」
帽子屋:「僕が僕であること。その先は、君自身が考えることだよ」
帽子屋:「そして、それは、僕に限った話じゃない」
アリス:「あなたの名前を教えてもらうことってできますか?あっ、私の名前は…」
帽子屋:「(さえぎって)おっと!簡単に名前を言っては、いけないよ」
アリス:「どうしてですか?」
帽子屋:「名前を告げるということは、ひとつのラベルが貼られてしまうことだからね」
アリス:「ラベル?ですか?」
帽子屋:「そう。ラ・ベ・ル。ラベルが貼られるということは、とても恐ろしいことだ」
アリス:「恐ろしいこと?どうして恐ろしいことなんですか?」
帽子屋:「はぁ…。君は、どうして?どうして?と、すぐに相手に答えを出させる」
帽子屋:「それは、とてもつまらないことだし、とても危険なことだ」
帽子屋:「だから、少しは、自分で考えてごらんよ。ラベルが貼られることのリスクをさ」
アリス:「ラベルが貼られることのリスク…」
帽子屋:「そうだよ。自分自身で、答えを出してごらん」
アリス:「うーん…。一度ラベルを貼ってしまうと」
アリス:「そのラベルを通した姿でしか、その人を見られなくなるから?」
帽子屋:「そう!人だけじゃないさ。モノや事柄、病気や罪の種類だって同じ」
帽子屋:「一度ラベルを貼ってしまうと、真実の姿をとらえるのが難しくなってしまう」
アリス:「うーん…。なんとなくだけど、理解できました」
帽子屋:「なんとなくか…。ふふっ。その、なんとなくが大事なんだよ」
帽子屋:「人は、何かを完全に理解したと思い込んだ時、その何かに対する興味や理解が止まってしまう」
帽子屋:「それは、そう、とても残念なことだ」
アリス:「なるほど…。読み終わった本やクリアしたゲームに興味をなくすのと同じような気がします」
帽子屋:「そうだね。まぁ、話は少し反れてしまったけど」
帽子屋:「要するに、考えることが、とても大切だってことさ」
アリス:「考えること?」
帽子屋:「そう!モノの名称や、置かれている状況、いま考えていること、それらを結論づけることは」
帽子屋:「もっと、もっと考えてからが良い。死ぬという選択肢もね」
アリス:「…」
帽子屋:「結論や答えが決まったあとにも、考える隙間を残しておくと良い」
帽子屋:「そして、僕の言葉を思い出してくれると、嬉しい」
アリス:「あなたの、言葉を?」
帽子屋:「僕は、君を、愛しているよ」
アリス:「知ってます。でも、私は、あなたの気持ちを受け入れることはできません」
帽子屋:「いいんだよ。それでも、いま、こうしてまた、一緒に劇をしてくれただろ?」
アリス:「不思議の国に行きたかったから…」
帽子屋:「不思議の国は、いつでも、君の中にある」
アリス:「私の中に?」
帽子屋:「そうだよ。想像力をふくらませるんだ」
アリス:「…。不思議の国が広がってゆく…」
帽子屋:「そう、それが、それこそが、君の本当の未来であり」
アリス:「私の本当の幸せ…」
0:
0:―了―
アリス:(M)町の外れにある岬(みさき)の灯台。
アリス:彼は、そこに独りで住んでいた。
アリス:不思議の国へと通じる扉の番人。
アリス:それが、彼の役割…。
アリス:「あっ、あのぉ。こんにちは」
帽子屋:「ん?」
アリス:「あっ、あなたが、帽子屋さん、ですよね?」
帽子屋:「人違いだね」
アリス:「でも、ここに来れば、帽子屋さんに会えるって聞きました」
帽子屋:「ここに来れば?」
アリス:「はい。つまり、あなたが」
帽子屋:「帽子屋だと?」
アリス:「はい。違うんですか?」
帽子屋:「言ったろ?人違いだ」
アリス:「じゃあ、あなたが帽子屋さんじゃなければ、ここで待っていれば、帽子屋さんに会えますか?」
帽子屋:「どうだろう…。会えるかも知れないし、会えないかも知れない」
アリス:「えっ?どういうことですか?」
帽子屋:「そのままの意味さ」
アリス:「意味がわかりません。私をからかってるんですか?」
帽子屋:「からかう?」
アリス:「そうです。私は、どうしても帽子屋さんに会いたいんです」
帽子屋:「ほぅ。なぜ?」
アリス:「不思議の国に行きたいからです」
帽子屋:「不思議の国…か」
アリス:「知ってるんですか?」
帽子屋:「知っているのかも知れないし、知らないのかも知れない」
アリス:「どっちなんですか?」
帽子屋:「さぁ、どっちだろう?」
アリス:「やっぱり、私をからかってるんですね。もう、いいです」
アリス:「帽子屋さんが帰ってくるまで、ここで待たせて頂きます」
帽子屋:「待っても無駄さ。ここには、誰も帰って来ない。ここに住んでいるのは、僕ひとりさ」
アリス:「なるほど…。何か理由があって、自分が帽子屋さんであることを認めたくないんですね」
帽子屋:「ほほぉ。どうしてそうなるの?」
アリス:「ここが、帽子屋さんの家ということは、都市伝説になっているからです」
帽子屋:「都市伝説…か…」
アリス:「そうです。町外れにある無人の灯台の扉を」
アリス:「11月11日、午前11時11分11秒ちょうどに開くと…」
アリス:「帽子屋と名乗る謎の青年に会える。そして、その青年に不思議の国へと連れて行ってもらえると…」
帽子屋:「君は、そんな都市伝説を信じているのかい?」
アリス:「信じています。私、そういう都市伝説、大好きなんです!」
帽子屋:「好奇心は猫を殺す」
アリス:「えっ?」
帽子屋:「イギリスの古いことわざだよ。猫は、九つの命を持っていて、容易には死なない存在とされている」
帽子屋:「そんな猫ですら、持ち前の好奇心が原因で命を落とす事がある、という意味さ」
アリス:「例え、命を落とすことになっても、私は、不思議の国に行きたいんです」
帽子屋:「なぜ?」
アリス:「この世界に、私の居場所は、どこにもないから…」
帽子屋:「どうして、そう思うの?」
アリス:「この世界は、私がしたいことを全部、否定してくるから」
帽子屋:「君には、夢があったんだね」
アリス:「最初は、声優になるのが夢でした。声が良いって、周りからも褒められて」
アリス:「養成所に通って、自分なりに上手くなる努力もしてきました。だけど…」
帽子屋:「だけど?」
アリス:「上手な人との掛け合いをする時に、緊張して、頭が真っ白になるんです」
アリス:「そして、大好きだったアニメも楽しむことができなくなりました」
アリス:「アニメの映像ではなく、声優さんがタイマーを気にしながら声を吹き込んでる映像が浮かんでくるんです」
帽子屋:「だから、あきらめるの?」
アリス:「それだけじゃない。誰も応援してくれないから」
帽子屋:「応援してくれる人がいないと、夢は見れないの?」
アリス:「そんなことはないですけど…。でも、借金して養成所に通ってるから、途中でやめることもできないし」
アリス:「ほんとに、辛いんです!」
帽子屋:「ほんとに、声優になりたかったの?」
アリス:「私は、勉強もスポーツもできないし、演技以外に道はなかった。声優になる道しかなかった」
帽子屋:「ほんとに、そうだったのかな?」
アリス:「えっ?」
帽子屋:「決めつけていただけで、見ようとしなかっただけで、本当は何かあったのかも知れない」
アリス:「だけど、もう、抜け出せないんです。これから養成所に借金を返していかないといけないし」
アリス:「本気で声優になるなら、上京して、さらに借金を重ねないと…」
帽子屋:「それが、君の夢なの?」
アリス:「わかりません。そういうことを考えてると、頭が痛くなって、何もかもどうでも良くなって」
帽子屋:「死にたくなるんだね」
アリス:「…」
帽子屋:「…」
帽子屋:「ここに来てくれて、ありがとう」
アリス:「えっ?」
帽子屋:「僕を頼ってくれて、必要としてくれて、ありがとう」
アリス:「でも、あなたは、帽子屋さんじゃないのでは?」
帽子屋:「帽子屋ではないよ」
アリス:「じゃあ、あなたは、何なんですか?」
帽子屋:「何かと聞かれたら、僕であると答えることしかできないな」
帽子屋:「僕が僕であること。その先は、君自身が考えることだよ」
帽子屋:「そして、それは、僕に限った話じゃない」
アリス:「あなたの名前を教えてもらうことってできますか?あっ、私の名前は…」
帽子屋:「(さえぎって)おっと!簡単に名前を言っては、いけないよ」
アリス:「どうしてですか?」
帽子屋:「名前を告げるということは、ひとつのラベルが貼られてしまうことだからね」
アリス:「ラベル?ですか?」
帽子屋:「そう。ラ・ベ・ル。ラベルが貼られるということは、とても恐ろしいことだ」
アリス:「恐ろしいこと?どうして恐ろしいことなんですか?」
帽子屋:「はぁ…。君は、どうして?どうして?と、すぐに相手に答えを出させる」
帽子屋:「それは、とてもつまらないことだし、とても危険なことだ」
帽子屋:「だから、少しは、自分で考えてごらんよ。ラベルが貼られることのリスクをさ」
アリス:「ラベルが貼られることのリスク…」
帽子屋:「そうだよ。自分自身で、答えを出してごらん」
アリス:「うーん…。一度ラベルを貼ってしまうと」
アリス:「そのラベルを通した姿でしか、その人を見られなくなるから?」
帽子屋:「そう!人だけじゃないさ。モノや事柄、病気や罪の種類だって同じ」
帽子屋:「一度ラベルを貼ってしまうと、真実の姿をとらえるのが難しくなってしまう」
アリス:「うーん…。なんとなくだけど、理解できました」
帽子屋:「なんとなくか…。ふふっ。その、なんとなくが大事なんだよ」
帽子屋:「人は、何かを完全に理解したと思い込んだ時、その何かに対する興味や理解が止まってしまう」
帽子屋:「それは、そう、とても残念なことだ」
アリス:「なるほど…。読み終わった本やクリアしたゲームに興味をなくすのと同じような気がします」
帽子屋:「そうだね。まぁ、話は少し反れてしまったけど」
帽子屋:「要するに、考えることが、とても大切だってことさ」
アリス:「考えること?」
帽子屋:「そう!モノの名称や、置かれている状況、いま考えていること、それらを結論づけることは」
帽子屋:「もっと、もっと考えてからが良い。死ぬという選択肢もね」
アリス:「…」
帽子屋:「結論や答えが決まったあとにも、考える隙間を残しておくと良い」
帽子屋:「そして、僕の言葉を思い出してくれると、嬉しい」
アリス:「あなたの、言葉を?」
帽子屋:「僕は、君を、愛しているよ」
アリス:「知ってます。でも、私は、あなたの気持ちを受け入れることはできません」
帽子屋:「いいんだよ。それでも、いま、こうしてまた、一緒に劇をしてくれただろ?」
アリス:「不思議の国に行きたかったから…」
帽子屋:「不思議の国は、いつでも、君の中にある」
アリス:「私の中に?」
帽子屋:「そうだよ。想像力をふくらませるんだ」
アリス:「…。不思議の国が広がってゆく…」
帽子屋:「そう、それが、それこそが、君の本当の未来であり」
アリス:「私の本当の幸せ…」
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