台本概要
444 views
タイトル | 小雪と名付けられた神様 |
---|---|
作者名 | そらいろ (@sorairo_0801) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 1人用台本(女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
いままで一人で生きてきた何百年という時より、 あなたと過ごした短き70年の方がとても幸せでした ・一人称・語尾・アドリブ・性別変更◎ ・世界観を壊すような過度なアドリブはご遠慮ください ・台本利用の際は、作者名・タイトル・URLの記載をお願いします 赤いキク:「あなたを愛しています」 イベリス:「初恋の思い出」 444 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
小雪 | 女 | 50 | 村はずれにある古びた神社の神様 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
小雪:私はずっと孤独でした
小雪:
小雪:昔はこの神社にも人が沢山来てくれましたが
小雪:
小雪:気づけばここに来てくれる人もいなくなりました
小雪:
小雪:それでも私が消えることなくここにいられるのは
小雪:
小雪:あなたがいたから
小雪:
小雪:あの日
小雪:
小雪:あなたと出逢うことができたから
0:
小雪:…。
小雪:
小雪:そろそろ私の終わりの時が
小雪:
小雪:近づいてきているようですね
小雪:
小雪:それは
小雪:
小雪:あなたの死を意味します
小雪:
小雪:私に訪れる死は孤独と絶望だと思っていましたが
小雪:
小雪:こんなに穏やかな気持ちで迎えることになるとは
小雪:
小雪:思ってもいませんでした
0:
小雪:人間の時の流れは速いものですね
小雪:
小雪:出会ったころあなたは
小雪:
小雪:まだ小さな子供だったというのに
小雪:
小雪:それでも私は幸せでした
小雪:
小雪:いままで一人で生きてきた何百年という時より
小雪:
小雪:あなたと過ごした短き70年の方が
小雪:
小雪:とても、とても幸せでした
0:
小雪:あなたと出会ったのは今から70年前の
小雪:
小雪:今日のように冷たい雪が降る日でしたね
小雪:
小雪:あなたは私にとって太陽のような存在でした
小雪:
小雪:人間を恐れる私に人間の優しさを
小雪:
小雪:教えてくれました
0:
小雪:
小雪:あなたはよくこの神社に来ては
小雪:
小雪:いつも私に向かって話しかけてくれましたね
小雪:
小雪:そんなあなたをずっと見ていて
小雪:
小雪:当時の私はあなたと同じ姿で
小雪:
小雪:お話をしてみたいと思ってしまったのです
0:
小雪:だから私は人間の女の子の姿になって
小雪:
小雪:あなたに恐る恐る話しかけてみました
小雪:
小雪:やはりあなたは素敵な人でしたね
小雪:
小雪:あなたはこんな私を恐れずに
小雪:
小雪:笑顔でお話ししてくれたのです
0:
小雪:あなたに名前を聞かれて
小雪:
小雪:私は答えることが出来ませんでした
小雪:
小雪:なぜなら私に名前などなかったからです
小雪:
小雪:そう伝えると
小雪:
小雪:あなたは一生懸命考えてくれて
小雪:
小雪:小雪という名をつけてくれましたね
0:
小雪:
小雪:今でも私の大切な大切な名前なのです
小雪:
小雪:この名前を口にするだけで
小雪:
小雪:温かいものが奥底からこみあげてくるのです
小雪:
小雪:不思議なものですね
小雪:
小雪:まるで魔法のようです
0:
小雪:幼いあなたは私に聞いてきました
小雪:
小雪:ここにずっと一人でいるのかと
小雪:
小雪:私は頷きました
小雪:
小雪:するとあなたは言いました
小雪:
小雪:僕がもうひとりぼっちにはさせないよと
小雪:
小雪:そしてあなたと指切りげんまんをしました
小雪:
小雪:人の手とはこんなに温かいものなのですね
0:
小雪:そしてこの日
小雪:
小雪:あなたは私の初めての
小雪:
小雪:お友達になってくれました
0:
小雪:神として生まれた私には友達などいませんでした
小雪:
小雪:だからとても嬉しかったのです
0:
小雪:あなたはいつも遊びに来てくれましたね
小雪:
小雪:最初は私も緊張していましたが
小雪:
小雪:いつの間にかあなたと自然に
小雪:
小雪:会話ができるようになりました
小雪:
小雪:早く消えてしまいたいと毎日思っていた私が
小雪:
小雪:明日が来るのを楽しみになる日が来るなんて
小雪:
小雪:思いませんでした
0:
小雪:あなたのお話を聞くことが
小雪:
小雪:毎日の楽しみとなりました
小雪:
小雪:出会った時はまだまだ小さな男の子だったのに
小雪:
小雪:あなたはどんどん背丈も伸びて
小雪:
小雪:声も低くなりましたね
0:
小雪:
小雪:それでも出会った頃のあの無邪気な笑顔は
小雪:
小雪:今でも変わっていません
小雪:
小雪:学校のお話に家族のお話
小雪:
小雪:あなたが笑顔でお話を聞かせてくれると
小雪:
小雪:私まで自然と笑顔になりました
0:
小雪:あなたは美術の絵の練習といって
小雪:
小雪:1度私の絵を書いてくれたことがありましたね
小雪:
小雪:下手でごめんねと
小雪:
小雪:照れながら渡してくれたその紙には
小雪:
小雪:笑顔が素敵な女性の絵が描かれていました
0:
小雪:
小雪:あの時あなたの目に
小雪:
小雪:私はこのように映っていたのでしょうか
小雪:
小雪:だとしたら
小雪:
小雪:これ以上に嬉しいことなどありません
小雪:
小雪:私はこんな風にあなたの前で笑っていたのですね
小雪:
小雪:あなたは私にたくさんのことを教えてくれました
小雪:
小雪:そして沢山の幸せを与えてくれました
小雪:
小雪:私はあなたに何を返せばいいのでしょうか
0:
小雪:またある日は授業でつくったという
小雪:
小雪:パンを持ってきてくれました
小雪:
小雪:とっても自信気に俺が作ったんだと言った
小雪:
小雪:あなたのあの時の顔が今でも忘れられません
小雪:
小雪:でもそのパンはとても固かったのです
小雪:
小雪:噛むことが出来ませんでした
0:
小雪:
小雪:あなたは料理がきっと苦手なのでしょう
小雪:
小雪:でも負けず嫌いな性格は変わっていませんね
小雪:
小雪:それから何度もパンを作っては
小雪:
小雪:持ってきてくれました
小雪:
小雪:おかげで私はそこいらの人間よりも
小雪:
小雪:パンだけは詳しい自信があります
小雪:
小雪:懐かしい思い出です
0:
小雪:またある日は
小雪:
小雪:私にサッカーというものを教えてくれましたね
小雪:
小雪:黒と白のボールを蹴るもので
小雪:
小雪:練習に付き合ってほしいと言われたので
小雪:
小雪:初めてなりに頑張ってみたのですが
小雪:
小雪:どうやら私は人間でいう
小雪:
小雪:運動音痴のようなのです
小雪:
小雪:蹴っているはずなのにボールは全く動いていません
小雪:
小雪:でもあなたはそんな私の姿を見て
小雪:
小雪:笑っていましたね
小雪:
小雪:一生懸命頑張っているのに
0:
小雪:だから私は頬を膨らませて
小雪:
小雪:あなたを少しだけ無視してみました
小雪:
小雪:たまにはよいでしょう?
小雪:
小雪:そんな私を見て
小雪:
小雪:あなたはダッシュでどこかに行ったと思ったら
小雪:
小雪:アイスを買ってきてくれました
小雪:
小雪:それで許してあげましょう
小雪:
小雪:神様は心が広いですから
0:
小雪:気づいたらあなたとの思い出が
小雪:
小雪:沢山できてしまいました
0:
小雪:この村は人口が少なく
小雪:
小雪:全員顔見知りだといってもよいでしょう
小雪:
小雪:なのできっとあなたは
小雪:
小雪:私がこの村の人間ではないことに
小雪:
小雪:気づいているでしょう
0:
小雪:それでも何も言わずに
小雪:
小雪:こんな人里離れた薄暗い神社にいつも来てくれる
小雪:
小雪:気づけばあなたを見るたびに
小雪:
小雪:あなたが小雪と呼ぶたびに
小雪:
小雪:胸が苦しくなるようになりました
0:
小雪:私はあなたにいつの間にか
小雪:
小雪:恋をしてしまったのかもしれません
小雪:
小雪:図々しいですよね
小雪:
小雪:どんなに頑張っても
小雪:
小雪:人間と同じ存在になることなど出来ないのに
小雪:
小雪:私は人から忘れられ
小雪:
小雪:消える運命にある者だというのに
0:
小雪:だから私はこの気持ちに
小雪:
小雪:気づかないふりをしました
小雪:
小雪:あなたと一緒に過ごすことが出来るこの時間を
小雪:
小雪:私のこのような感情で
小雪:
小雪:失いたくはありませんから
0:
小雪:今日はあなたが花火というものを
小雪:
小雪:持ってきてくれましたね
小雪:
小雪:初めて見ましたがとても綺麗でした
小雪:
小雪:するとあなたはぼそっと言いました
小雪:
小雪:出会えてよかったと
小雪:
小雪:その言葉は今でも忘れられません
小雪:
小雪:その時辺りが薄暗くて良かったです
小雪:
小雪:あなたにこんな顔見られたくはありませんから
0:
小雪:あなたが18歳になるときに
小雪:
小雪:神社に赤い菊が置かれていました
小雪:
小雪:そして夜20時にここで待っていてほしいという
小雪:
小雪:手紙が添えられていました
0:
小雪:どれだけ幸せだったでしょう
小雪:
小雪:素直にあなたに気持ちを伝えることが出来たら
小雪:
小雪:どれほど良かったでしょう
小雪:
小雪:私が人間だったら
小雪:
小雪:これほど幸せなことなどなかったでしょう
小雪:
小雪:でもそれは許されないのです
小雪:
小雪:私は人間ではないのですから
0:
小雪:もっと早くあなたの前から
小雪:
小雪:姿を消すべきだったのです
小雪:
小雪:でもあなたとの思い出が積み重なるたびに
小雪:
小雪:考えないようにしていたのです
0:
小雪:一度幸せを感じると
小雪:
小雪:どんどん欲張りになってしまうものなのですね
小雪:
小雪:「ごめんなさい」
小雪:
小雪:だから私はあなたのもとから姿を消しました
小雪:
小雪:あなたには幸せになってほしかったのです
小雪:
小雪:私の存在があなたの人生の邪魔になるようなことは
小雪:
小雪:あってはならないのです
0:
小雪:それからもあなたは
小雪:
小雪:何度も神社に来てくれましたね
小雪:
小雪:来るたびにあなたが私の名前を呼ぶものだから
小雪:
小雪:何度気持ちが揺らいでしまったことか
0:
小雪:そして10年後
小雪:
小雪:あなたは結婚しましたね
小雪:
小雪:あなたのように笑顔が素敵な優しそうな女性と
小雪:
小雪:あなたに姿は見えないと思いますが
小雪:
小雪:私は遠くから見守っていました
0:
小雪:それでも週に一回あなたはこの神社に来て
小雪:
小雪:掃除などをしてくれましたね
小雪:
小雪:もうあなた以外
小雪:
小雪:この神社に来る人などいないのに
小雪:
小雪:なんて優しい人なのでしょうか
0:
小雪:人から忘れられた神は消える運命なのです
小雪:
小雪:私はあなたが死ぬとき
小雪:
小雪:ともに消えることとなるでしょう
小雪:
小雪:でもいいのです
小雪:
小雪:私は最後に
小雪:
小雪:あなたのような人に出会えて幸せだったのです
小雪:
小雪:もう消えてもいいと思ってしまったのです
0:
小雪:そんなこと言ったら
小雪:
小雪:あなたは怒るかもしれませんね
小雪:
小雪:でも許してください
小雪:
小雪:私はもう十分生きたのです
小雪:
小雪:そして幸せを知ってしまったのです
0:
小雪:月日は過ぎ
小雪:
小雪:最近のあなたは杖がなくては
小雪:
小雪:ここに来れなくなりましたね
小雪:
小雪:背は丸まり
小雪:
小雪:掃除をしてくれているときも
小雪:
小雪:息切れするようになりました
0:
小雪:手も骨が浮き上がり
小雪:
小雪:やせ細ってしまいました
小雪:
小雪:きっとここに来るのも
小雪:
小雪:かなり体力を使っていることでしょう
小雪:
小雪:私は心配で仕方なかったのです
0:
小雪:するとあなたは神社の階段に座り
小雪:
小雪:いきなり誰かに話し始めました
小雪:
小雪:元気にしてますかと
小雪:
小雪:近々ここには来れなくなると
小雪:
小雪:そしてまた一人にしてしまって
小雪:
小雪:約束を破ってしまってごめんと
小雪:
小雪:寂しそうな声でそう言ったのです
0:
小雪:あぁ
小雪:
小雪:あなたはやはり気づいていたのですね
小雪:
小雪:私が人間ではないということに
小雪:
小雪:いつから気づいていたのでしょうか
小雪:
小雪:もしかしたらあなたの事だから
小雪:
小雪:出会って直ぐに
小雪:
小雪:もう気づかれていたのかもしれませんね
0:
小雪:そして幼き日の約束を
小雪:
小雪:今でも覚えていてくれたのですね
0:
小雪:あなたには私の姿が見えていないと分かっていながらも
小雪:
小雪:あなたの言葉に返事をしてしまいました
小雪:
小雪:そして名前を呼んでしまいました
小雪:
小雪:もういいのです
小雪:
小雪:無理してまでここに来なくても
小雪:
小雪:あなたが私のことを覚えていてくれるというだけで
小雪:
小雪:もう幸せなことなのですから
0:
小雪:私はあなたが来る時間の少し前に
小雪:
小雪:神社の階段にそっと
小雪:
小雪:イベリスの花を置いておきました
小雪:
小雪:あなたはその花に気づくと
小雪:
小雪:また出会ったころと変わらない笑顔を
小雪:
小雪:見せてくれました
0:
小雪:それを最後にあなたは
小雪:
小雪:ここに来なくなりましたね
小雪:
小雪:元気で過ごしてくれているでしょうか
小雪:
小雪:今までずっとひとりで過ごしてきたのに
小雪:
小雪:こんなに寂しいと感じたのは初めてでした
0:
小雪:ぽっかりと穴が開いてしまったようなこの感覚
小雪:
小雪:とても苦しいものですね
小雪:
小雪:そして涙とは
小雪:
小雪:自然に溢れ出て止まらないものなのですね
0:
小雪:あれから3年
小雪:
小雪:ついにその日が来たのです
小雪:
小雪:あなたが長い眠りにつくそのときが
0:
小雪:あなたがいなかったら
小雪:
小雪:私はとっくに消えていた運命でした
小雪:
小雪:いくら感謝しても足りません
小雪:
小雪:出会った時と同じように雪が降っているのは
小雪:
小雪:別の神様のイタズラでしょうか
0:
小雪:あなたと出会う前の雪は
小雪:
小雪:冷たく儚いものだと思っていましたが
小雪:
小雪:今見る雪は
小雪:
小雪:とても綺麗で美しいものに感じます
0:
小雪:すると
小雪:
小雪:私の体が徐々に消え始めました
小雪:
小雪:私はその場でひとり
小雪:
小雪:そっと目を閉じました
小雪:
小雪:そして
小雪:
小雪:今までのあなたとの思い出を思い浮かべながら
小雪:
小雪:静かに眠りにつきました
0:
小雪:いつかまたどこかで
小雪:
小雪:あなたと巡り会えますように
0:
小雪:おやすみなさい
小雪:私はずっと孤独でした
小雪:
小雪:昔はこの神社にも人が沢山来てくれましたが
小雪:
小雪:気づけばここに来てくれる人もいなくなりました
小雪:
小雪:それでも私が消えることなくここにいられるのは
小雪:
小雪:あなたがいたから
小雪:
小雪:あの日
小雪:
小雪:あなたと出逢うことができたから
0:
小雪:…。
小雪:
小雪:そろそろ私の終わりの時が
小雪:
小雪:近づいてきているようですね
小雪:
小雪:それは
小雪:
小雪:あなたの死を意味します
小雪:
小雪:私に訪れる死は孤独と絶望だと思っていましたが
小雪:
小雪:こんなに穏やかな気持ちで迎えることになるとは
小雪:
小雪:思ってもいませんでした
0:
小雪:人間の時の流れは速いものですね
小雪:
小雪:出会ったころあなたは
小雪:
小雪:まだ小さな子供だったというのに
小雪:
小雪:それでも私は幸せでした
小雪:
小雪:いままで一人で生きてきた何百年という時より
小雪:
小雪:あなたと過ごした短き70年の方が
小雪:
小雪:とても、とても幸せでした
0:
小雪:あなたと出会ったのは今から70年前の
小雪:
小雪:今日のように冷たい雪が降る日でしたね
小雪:
小雪:あなたは私にとって太陽のような存在でした
小雪:
小雪:人間を恐れる私に人間の優しさを
小雪:
小雪:教えてくれました
0:
小雪:
小雪:あなたはよくこの神社に来ては
小雪:
小雪:いつも私に向かって話しかけてくれましたね
小雪:
小雪:そんなあなたをずっと見ていて
小雪:
小雪:当時の私はあなたと同じ姿で
小雪:
小雪:お話をしてみたいと思ってしまったのです
0:
小雪:だから私は人間の女の子の姿になって
小雪:
小雪:あなたに恐る恐る話しかけてみました
小雪:
小雪:やはりあなたは素敵な人でしたね
小雪:
小雪:あなたはこんな私を恐れずに
小雪:
小雪:笑顔でお話ししてくれたのです
0:
小雪:あなたに名前を聞かれて
小雪:
小雪:私は答えることが出来ませんでした
小雪:
小雪:なぜなら私に名前などなかったからです
小雪:
小雪:そう伝えると
小雪:
小雪:あなたは一生懸命考えてくれて
小雪:
小雪:小雪という名をつけてくれましたね
0:
小雪:
小雪:今でも私の大切な大切な名前なのです
小雪:
小雪:この名前を口にするだけで
小雪:
小雪:温かいものが奥底からこみあげてくるのです
小雪:
小雪:不思議なものですね
小雪:
小雪:まるで魔法のようです
0:
小雪:幼いあなたは私に聞いてきました
小雪:
小雪:ここにずっと一人でいるのかと
小雪:
小雪:私は頷きました
小雪:
小雪:するとあなたは言いました
小雪:
小雪:僕がもうひとりぼっちにはさせないよと
小雪:
小雪:そしてあなたと指切りげんまんをしました
小雪:
小雪:人の手とはこんなに温かいものなのですね
0:
小雪:そしてこの日
小雪:
小雪:あなたは私の初めての
小雪:
小雪:お友達になってくれました
0:
小雪:神として生まれた私には友達などいませんでした
小雪:
小雪:だからとても嬉しかったのです
0:
小雪:あなたはいつも遊びに来てくれましたね
小雪:
小雪:最初は私も緊張していましたが
小雪:
小雪:いつの間にかあなたと自然に
小雪:
小雪:会話ができるようになりました
小雪:
小雪:早く消えてしまいたいと毎日思っていた私が
小雪:
小雪:明日が来るのを楽しみになる日が来るなんて
小雪:
小雪:思いませんでした
0:
小雪:あなたのお話を聞くことが
小雪:
小雪:毎日の楽しみとなりました
小雪:
小雪:出会った時はまだまだ小さな男の子だったのに
小雪:
小雪:あなたはどんどん背丈も伸びて
小雪:
小雪:声も低くなりましたね
0:
小雪:
小雪:それでも出会った頃のあの無邪気な笑顔は
小雪:
小雪:今でも変わっていません
小雪:
小雪:学校のお話に家族のお話
小雪:
小雪:あなたが笑顔でお話を聞かせてくれると
小雪:
小雪:私まで自然と笑顔になりました
0:
小雪:あなたは美術の絵の練習といって
小雪:
小雪:1度私の絵を書いてくれたことがありましたね
小雪:
小雪:下手でごめんねと
小雪:
小雪:照れながら渡してくれたその紙には
小雪:
小雪:笑顔が素敵な女性の絵が描かれていました
0:
小雪:
小雪:あの時あなたの目に
小雪:
小雪:私はこのように映っていたのでしょうか
小雪:
小雪:だとしたら
小雪:
小雪:これ以上に嬉しいことなどありません
小雪:
小雪:私はこんな風にあなたの前で笑っていたのですね
小雪:
小雪:あなたは私にたくさんのことを教えてくれました
小雪:
小雪:そして沢山の幸せを与えてくれました
小雪:
小雪:私はあなたに何を返せばいいのでしょうか
0:
小雪:またある日は授業でつくったという
小雪:
小雪:パンを持ってきてくれました
小雪:
小雪:とっても自信気に俺が作ったんだと言った
小雪:
小雪:あなたのあの時の顔が今でも忘れられません
小雪:
小雪:でもそのパンはとても固かったのです
小雪:
小雪:噛むことが出来ませんでした
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小雪:
小雪:あなたは料理がきっと苦手なのでしょう
小雪:
小雪:でも負けず嫌いな性格は変わっていませんね
小雪:
小雪:それから何度もパンを作っては
小雪:
小雪:持ってきてくれました
小雪:
小雪:おかげで私はそこいらの人間よりも
小雪:
小雪:パンだけは詳しい自信があります
小雪:
小雪:懐かしい思い出です
0:
小雪:またある日は
小雪:
小雪:私にサッカーというものを教えてくれましたね
小雪:
小雪:黒と白のボールを蹴るもので
小雪:
小雪:練習に付き合ってほしいと言われたので
小雪:
小雪:初めてなりに頑張ってみたのですが
小雪:
小雪:どうやら私は人間でいう
小雪:
小雪:運動音痴のようなのです
小雪:
小雪:蹴っているはずなのにボールは全く動いていません
小雪:
小雪:でもあなたはそんな私の姿を見て
小雪:
小雪:笑っていましたね
小雪:
小雪:一生懸命頑張っているのに
0:
小雪:だから私は頬を膨らませて
小雪:
小雪:あなたを少しだけ無視してみました
小雪:
小雪:たまにはよいでしょう?
小雪:
小雪:そんな私を見て
小雪:
小雪:あなたはダッシュでどこかに行ったと思ったら
小雪:
小雪:アイスを買ってきてくれました
小雪:
小雪:それで許してあげましょう
小雪:
小雪:神様は心が広いですから
0:
小雪:気づいたらあなたとの思い出が
小雪:
小雪:沢山できてしまいました
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小雪:この村は人口が少なく
小雪:
小雪:全員顔見知りだといってもよいでしょう
小雪:
小雪:なのできっとあなたは
小雪:
小雪:私がこの村の人間ではないことに
小雪:
小雪:気づいているでしょう
0:
小雪:それでも何も言わずに
小雪:
小雪:こんな人里離れた薄暗い神社にいつも来てくれる
小雪:
小雪:気づけばあなたを見るたびに
小雪:
小雪:あなたが小雪と呼ぶたびに
小雪:
小雪:胸が苦しくなるようになりました
0:
小雪:私はあなたにいつの間にか
小雪:
小雪:恋をしてしまったのかもしれません
小雪:
小雪:図々しいですよね
小雪:
小雪:どんなに頑張っても
小雪:
小雪:人間と同じ存在になることなど出来ないのに
小雪:
小雪:私は人から忘れられ
小雪:
小雪:消える運命にある者だというのに
0:
小雪:だから私はこの気持ちに
小雪:
小雪:気づかないふりをしました
小雪:
小雪:あなたと一緒に過ごすことが出来るこの時間を
小雪:
小雪:私のこのような感情で
小雪:
小雪:失いたくはありませんから
0:
小雪:今日はあなたが花火というものを
小雪:
小雪:持ってきてくれましたね
小雪:
小雪:初めて見ましたがとても綺麗でした
小雪:
小雪:するとあなたはぼそっと言いました
小雪:
小雪:出会えてよかったと
小雪:
小雪:その言葉は今でも忘れられません
小雪:
小雪:その時辺りが薄暗くて良かったです
小雪:
小雪:あなたにこんな顔見られたくはありませんから
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小雪:あなたが18歳になるときに
小雪:
小雪:神社に赤い菊が置かれていました
小雪:
小雪:そして夜20時にここで待っていてほしいという
小雪:
小雪:手紙が添えられていました
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小雪:どれだけ幸せだったでしょう
小雪:
小雪:素直にあなたに気持ちを伝えることが出来たら
小雪:
小雪:どれほど良かったでしょう
小雪:
小雪:私が人間だったら
小雪:
小雪:これほど幸せなことなどなかったでしょう
小雪:
小雪:でもそれは許されないのです
小雪:
小雪:私は人間ではないのですから
0:
小雪:もっと早くあなたの前から
小雪:
小雪:姿を消すべきだったのです
小雪:
小雪:でもあなたとの思い出が積み重なるたびに
小雪:
小雪:考えないようにしていたのです
0:
小雪:一度幸せを感じると
小雪:
小雪:どんどん欲張りになってしまうものなのですね
小雪:
小雪:「ごめんなさい」
小雪:
小雪:だから私はあなたのもとから姿を消しました
小雪:
小雪:あなたには幸せになってほしかったのです
小雪:
小雪:私の存在があなたの人生の邪魔になるようなことは
小雪:
小雪:あってはならないのです
0:
小雪:それからもあなたは
小雪:
小雪:何度も神社に来てくれましたね
小雪:
小雪:来るたびにあなたが私の名前を呼ぶものだから
小雪:
小雪:何度気持ちが揺らいでしまったことか
0:
小雪:そして10年後
小雪:
小雪:あなたは結婚しましたね
小雪:
小雪:あなたのように笑顔が素敵な優しそうな女性と
小雪:
小雪:あなたに姿は見えないと思いますが
小雪:
小雪:私は遠くから見守っていました
0:
小雪:それでも週に一回あなたはこの神社に来て
小雪:
小雪:掃除などをしてくれましたね
小雪:
小雪:もうあなた以外
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小雪:この神社に来る人などいないのに
小雪:
小雪:なんて優しい人なのでしょうか
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小雪:人から忘れられた神は消える運命なのです
小雪:
小雪:私はあなたが死ぬとき
小雪:
小雪:ともに消えることとなるでしょう
小雪:
小雪:でもいいのです
小雪:
小雪:私は最後に
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小雪:あなたのような人に出会えて幸せだったのです
小雪:
小雪:もう消えてもいいと思ってしまったのです
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小雪:そんなこと言ったら
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小雪:あなたは怒るかもしれませんね
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小雪:でも許してください
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小雪:私はもう十分生きたのです
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小雪:そして幸せを知ってしまったのです
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小雪:月日は過ぎ
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小雪:最近のあなたは杖がなくては
小雪:
小雪:ここに来れなくなりましたね
小雪:
小雪:背は丸まり
小雪:
小雪:掃除をしてくれているときも
小雪:
小雪:息切れするようになりました
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小雪:手も骨が浮き上がり
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小雪:やせ細ってしまいました
小雪:
小雪:きっとここに来るのも
小雪:
小雪:かなり体力を使っていることでしょう
小雪:
小雪:私は心配で仕方なかったのです
0:
小雪:するとあなたは神社の階段に座り
小雪:
小雪:いきなり誰かに話し始めました
小雪:
小雪:元気にしてますかと
小雪:
小雪:近々ここには来れなくなると
小雪:
小雪:そしてまた一人にしてしまって
小雪:
小雪:約束を破ってしまってごめんと
小雪:
小雪:寂しそうな声でそう言ったのです
0:
小雪:あぁ
小雪:
小雪:あなたはやはり気づいていたのですね
小雪:
小雪:私が人間ではないということに
小雪:
小雪:いつから気づいていたのでしょうか
小雪:
小雪:もしかしたらあなたの事だから
小雪:
小雪:出会って直ぐに
小雪:
小雪:もう気づかれていたのかもしれませんね
0:
小雪:そして幼き日の約束を
小雪:
小雪:今でも覚えていてくれたのですね
0:
小雪:あなたには私の姿が見えていないと分かっていながらも
小雪:
小雪:あなたの言葉に返事をしてしまいました
小雪:
小雪:そして名前を呼んでしまいました
小雪:
小雪:もういいのです
小雪:
小雪:無理してまでここに来なくても
小雪:
小雪:あなたが私のことを覚えていてくれるというだけで
小雪:
小雪:もう幸せなことなのですから
0:
小雪:私はあなたが来る時間の少し前に
小雪:
小雪:神社の階段にそっと
小雪:
小雪:イベリスの花を置いておきました
小雪:
小雪:あなたはその花に気づくと
小雪:
小雪:また出会ったころと変わらない笑顔を
小雪:
小雪:見せてくれました
0:
小雪:それを最後にあなたは
小雪:
小雪:ここに来なくなりましたね
小雪:
小雪:元気で過ごしてくれているでしょうか
小雪:
小雪:今までずっとひとりで過ごしてきたのに
小雪:
小雪:こんなに寂しいと感じたのは初めてでした
0:
小雪:ぽっかりと穴が開いてしまったようなこの感覚
小雪:
小雪:とても苦しいものですね
小雪:
小雪:そして涙とは
小雪:
小雪:自然に溢れ出て止まらないものなのですね
0:
小雪:あれから3年
小雪:
小雪:ついにその日が来たのです
小雪:
小雪:あなたが長い眠りにつくそのときが
0:
小雪:あなたがいなかったら
小雪:
小雪:私はとっくに消えていた運命でした
小雪:
小雪:いくら感謝しても足りません
小雪:
小雪:出会った時と同じように雪が降っているのは
小雪:
小雪:別の神様のイタズラでしょうか
0:
小雪:あなたと出会う前の雪は
小雪:
小雪:冷たく儚いものだと思っていましたが
小雪:
小雪:今見る雪は
小雪:
小雪:とても綺麗で美しいものに感じます
0:
小雪:すると
小雪:
小雪:私の体が徐々に消え始めました
小雪:
小雪:私はその場でひとり
小雪:
小雪:そっと目を閉じました
小雪:
小雪:そして
小雪:
小雪:今までのあなたとの思い出を思い浮かべながら
小雪:
小雪:静かに眠りにつきました
0:
小雪:いつかまたどこかで
小雪:
小雪:あなたと巡り会えますように
0:
小雪:おやすみなさい