台本概要

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タイトル 鬼の目にもなんとやら。(まめたver.)
作者名 801らぃと  (@puchin_smile )
ジャンル ファンタジー
演者人数 3人用台本(不問3) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 昔々、人間の勝手で石に封印されてしまった心優しい鬼と今世の人間の子ども(男の子)がおりなす、ある節分の日のハートフルなお話。
※節分台本ですが、節分以外でもぜひ楽しんでくださいませ♪

※主人公の男の子(まめた)ver.で書き直した台本がこちらです。

※役について
・おにさん(序盤に主人公の同級生も入ります)
・悪邪鬼とモブ(語り部、主人公の同級生、親、学校の先生)は、兼ね役推奨です。セリフ数は合わせても少ないですが、演じ分けを楽しんで頂けたら幸いです。(*´-`)
※言い回し等の若干のアレンジは可です〜
 まめこver.とは言い回しは変更修正してあります。

※SE表記ありますが、作者の脳内再生であると盛り上がるかなぁと思って入れただけなので、SEを入れても入れなくても大丈夫です!もちろん追加してくださって大丈夫です!

ぜひ台本を使ったら、Xにでもポストしていただけると気づいて大層喜びます。出来る限り聴きにいきたいです〜

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
まめた 不問 61 人間の子ども(男の子)。 おにさんとの出会いにより、鬼が優しいのだと知った。節分での鬼の扱いに不満をもっている。
おにさん 不問 59 特に人に害を与えていなかったのに、ただ霊力が強いという理由だけで、人間に石に封印されてしまった鬼。鬼神として、神社に奉られた。【本名】男声の場合:夜叉丸(やしゃまる)女声の場合:夜叉姫(やしゃひめ) 笑い方「かかか またはかっかっか」
悪邪鬼 不問 18 怒りや妬み、嫉み、怨みなどの負の感情をエネルギーとする邪鬼が集まってできた存在。簡単に言って、悪い奴。
モブ 不問 10 悪邪鬼と兼ね役推奨。 語り部、主人公の同級生、親、学校の先生 演じ分けを楽しんでくださいませ♪
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
「鬼の目にもなんとやら。」まめたver. モブ:(語り部)むかしむかしあるところに、人里離れた深い山の奥深くに、鬼が住んでおりました。鬼は、大層霊力が強く、人々から忌み嫌われ、畏(おそ)れられていました。勝手な人間たちは、鬼を恐れ、同じく力の強い祓い屋にお願いし、鬼が人々に害を加えてもいないのに、ある石に封印しました。人々は、鬼が封印されてもなお、その鬼が恐ろしかったため、社(やしろ)を建てて、鬼が荒ぶらないように、崇(あが)め奉(たてまつ)りました。 0:  モブ:(語り部)しかし、一年に一度の二月三日。その日だけは、鬼を封印した石の力が弱まり、怨(うら)み募(つの)った鬼が人間に報復(ほうふく)するために人里におりてくるーーーと人々は怯(おび)えていました。人々は言霊(ことだま)の存在を信じ、鬼が家に入って来ないように、ある呪い(まじない)言葉を唱え、邪気を祓(はら)い、無病息災(むびょうそくさい)を祈っていました。…「鬼は外、福は内」とーーー 0:  0:学校、授業中 モブ:(先生)〜であるからして、二月三日を節分と呼び、その日に豆まきをすると言われています。豆を巻く由来としては諸説ありますが、魔の目…つまり鬼の目を滅ぼすと言われており、豆は穀物の象徴で神様が宿るとされています。そのため、とても神聖なものであると、古くから人々に信じられてきました。みんなも毎年、豆まきをお家でされているからよく知っているね。 0:(同時) おにさん:(同級生)はぁーい! モブ:(同級生)はーい! まめた:…知ってる。でも…どうして、鬼ばっかり、悪者扱いされるんだろう。鬼は…何も悪いことはしていないのに。 0:★SE/学校のチャイム〜 0:(同時) モブ:(同級生)さよならぁ〜! まめた:さよなら〜! モブ:(同級生)まめた〜!帰ろー! まめた:あっ、ごめん!今日寄ってくとこあるんだ。 モブ:(同級生)あー、いつもの先生とこ? まめた:そう!誘ってくれたのにごめん!じゃあね モブ:(同級生)じゃあねー。 モブ:(同級生)まめた…ほんとに成績伸びたもんなぁ。どこの塾通ってるんだろー 0:少し間 0:場面転換 とある町神社にて 0:走って境内に向かう、まめた まめた:はぁ、はぁ!遅くなってごめん、おにさん。 おにさん:おぉ、まめた、おかえり。今日は早かったのだな。また走ってきおって、転んだらどうするのだ。 まめた:あははっ、そうそう転ばないよ!待たしちゃ悪いなって思ったんだ。 おにさん:別に私はいつも暇しているのだから、ゆっくりきてくれて構わないと、毎度言っておるのに。そう生き急ぐでない… まめた:おにさんは悠長だなぁ…そんなゆっくり構えていたら、いつか背だって追い抜いちゃうかもしれないよ!牛乳いっぱい飲んでるし! おにさん:かっかっか…身長は難しいのではないか〜?まぁ、でも人の子の成長は早いしのぅ。今のまめたも、初めて会った時より大きくなりおって まめた:あの時に比べたら、そりゃあ大きくなってるよ!三年も前だし… おにさん:かかかっ…もうそんな経つのか…! まめた:(おにさんってば…本当に悠長というか…こういうのを能天気っていうのかなぁ…?) 0:場面転換 0:過去回想(まめたとおにさんとの出逢い) 0:三年前 0:神社一体の森の中の岩陰にて まめた:ひぐっ…うっ…みんな…どこいったんだよ。僕を、置いていかないでよぉ… 0:★SE:雷の音 まめた:ひっ…!雷っ…怖いっ…お父さん…お母さん。 0:岩陰の中でうずくまり、助けを待つまめた おにさん:…ぉお!降ってきたのぉ! まめた:…だ、…誰?! 0:雨が降っている森の中から、まめたと同じ年恰好の人物がずぶ濡れで走って岩陰に入ってくる おにさん:(若め)おおっ…先客がおったか…急に降ってきたのぉ。お主は濡れなくてよかったな… まめた:うん…キミも迷子なの? おにさん:(若め)む?あぁ…まぁそんなとこじゃ まめた:じゃ?………キミも、置いて行かれたの? おにさん:(若め)置いて…?かっかっかっ!私はここら辺に住んでおるのだ!なんじゃお主、ここに置いて行かれたのか? まめた:…そうかも、しれない。 おにさん:(若め)…そうか。お主がそう思うのは勝手じゃが、そやつらは、本当にお主を置いて行く卑怯者(ひきょうもの)なのか…?ならば別れられて良かったではないか!かっかっか! まめた:っ違う!そんな酷い人達じゃない!ごめん、嘘ついた…僕が悪いんだ。今日は節分だからって、友だちと森で豆まきごっこしてたら、夢中になって逸(はぐ)れて………みんな…心配してるかな。 おにさん:(若め)ほほぅ…豆まきごっこ、か…。お主の中の鬼は、まだ祓(はら)えておらぬようじゃが… まめた:…え? おにさん:(若め)ま、安心するがよい、お主が心強く持てばそんな邪鬼(じゃき)などすぐにいなくなるじゃろう…信じるのじゃ、お主の友と家族を。きっと迎えにきてくれるはずじゃ。もし来なければ、その時は、私の家にくればよい。面倒は見てやるぞ。 まめた:あははっ、ありがとう…少し心が軽くなった気がするよ。 おにさん:(若め)それは良かった。ほれ、雨足(あまあし)も弱まってきたぞ…雨が止んだら、拓(ひら)けた道まで案内してやる。だから安心するがよい。 まめた:うん…ふぁあ…ありがとぅ…なんか、眠くなってきた… おにさん:(若め)そうか…私が周りを気にしておいてやるから、ちと眠ったらどうだ? まめた:うん…そうする、、、あり…が、と…ぅ……………すぅ。すぅ。 おにさん:(若め)ふっ…人の子は、素直じゃのぅ… 0:まめたが眠った様子をみて、ふと頭を撫でようとする 0:★SE:何か感じた音(リーーン等) 0:まめたに触れた瞬間、おにさんは何かを思い出す おにさん:…っ!かっかっかっ。よもや、このようなことが…永(なが)く生きてみるものじゃのぅ 0:回想終了 0:現在のまめたとおにさんが話す まめた:あの後、僕が起きた時にちょうど友だちと家族が迎えにきて。気づいたらおにさんはいなくなってた…また会いたかったから、迷子にならないように少しずつ探し続けていたんだ…あの時、名前も聞けてなかったけど、 まめた:まさかこの神社でまた会えるとは思ってなかったよ…大人の姿になってて、最初は気づかなかったなぁ…後から、この神社の鬼神(きしん)様だって教えてもらった時はびっくりしたっけ。 おにさん:かっかっか…あの時、人間達が騒いでおるのが聞こえての。私もお主を探しておったのだ…人の子と聞いておったから、警戒されぬように童(わっぱ)の姿に変えておったのじゃ。 まめた:えっ、そうだったんだ?!知らなかった… おにさん:しかし、私の方こそお主に対して驚いたぞ!私の存在を受け入れるのがあまりにも早かったからのぅ…最近の子は、物分かりが早ようて末恐ろしいくらいじゃ… まめた:僕…そんな頭良くないよ、成績もここ最近伸びてきて、先生にも親にも褒められたんだ!へへっ…おにさんが勉強を教えてくれたお陰だよ。 おにさん:なぁに…まめたくらいの人の子の学びは、神社(ここ)に永(なが)くも居(お)れば、嫌でも分かってくるからのぅ。 まめた:……… 0:少し間 おにさん:ん?どうしたまめた? まめた:やっぱり…おにさんは、人間が嫌い? おにさん:なんじゃ、どうした急に。 まめた:いや…学校の授業でね、節分の話が出て来て…おにさんのことを悪く言ってたんだ。それを聞いて、僕すごく…辛かった。おにさんはすごく優しいのに…。みんな、おにさんのこと何も知らないのに好き放題言って。 おにさん:まめた………。お主、ここ最近、ずっとそれを考えておったのか?それが理由か…前よりも多く邪鬼(じゃき)が、お主についておるぞ。 まめた:えっ…そうなの? おにさん:言ったじゃろうが!お主は、周りの人間と比べて、邪鬼(じゃき)に憑(つ)かれやすいと!お主は優しい奴じゃ。だから尚更、邪鬼共(じゃきども)も群がるんじゃ…。 まめた:…… おにさん:私のことなど気にせずとも良い…もっと、私利私欲(しりしよく)を持つのだ、お主は。 まめた:う…ごめん…なさい。 0:まめたが落ち込み、シュンとしているのを見たおにさんーーー おにさん:…んぐぬ… 0:(少し間) 0:おにさんは、まめたの頭をわしゃわしゃかき乱す まめた:っぅあっ…頭っ、ちょっ…なにするんだ!…子ども扱いはやめてよっ! おにさん:かっかっか!すまぬ……お主は、まだまだ童(わっぱ)じゃ…言われて急に出来ることでもなかろうて。私が大人気なかったわ、まめたは、本当に素直で、優しいのぅ。どうか、そのまま大きくなっていけばよい… まめた:っへ?…意味がよく分からないけど。 おにさん:気にするでない。こっちの話じゃ。 まめた:そう?…あ!あと、学校で将来の夢についても書いたんだ!僕の夢、おにさん知らないでしょ? おにさん:ほぅ、確かにそれは知らないのぅ。初耳じゃ…して、まめたは何になりたいんじゃ? まめた:えへへっ…僕、この神社の神主さんになりたいっ!そしたらおにさんと、ずっーーーと!一緒に居られるでしょ? おにさん:っ…… 0:おにさんが顔を伏せて、肩を振るわせる まめた:?…おにさん? おにさん:っぷっ…っかっかっかっかっか! まめた:っな、なんで笑うんだよ! おにさん:いやっ、すまぬっ……っふ…まさか、お主からそんなことを言われる日が来ようとは。人の子から“ずっと一緒にいたい”と言われるとは、永(なが)く生きた中で初めてだったものでな… まめた:…そうなの?僕…結構真面目に言ってるんだけど。 おにさん:分かっておる、じゃから、すまぬと申しておるじゃろうて…っかかか まめた:そんな面白いことかなぁ? おにさん:(笑い終え疲れたため息)…はぁ…。ここにきてから数百年経つが……こんな楽しみは、初めてじゃのぅ。 まめた:…楽しみにしてくれるんだ? おにさん:あぁ、もちろん。まめたがここに来てくれるのもそうじゃ…私の楽しみの一つ… おにさん:…っなんじゃ…改めて言うと、恥ずかしいのぅ… まめた:…っ〜〜(嬉し照れ)、僕、毎日来る(よ!) おにさん:(被せて)いや、毎日は重いのぅ〜 まめた:!もう!なんだよ!おにさん、さびしんぼなくせにさ! おにさん:…!かっかっか!そうか、私は寂しん坊か…かっかっか! まめた:(…おにさんが笑ってると嬉しいな。そっか、僕…おにさんの笑ってる顔が好きなんだ…なんか、安心するんだよね。) おにさん:?何をニヤついておるのじゃ? まめた:っ別に!ニヤついてなんかないよ! おにさん:そうか……なあ、まめた、そろそろ帰った方が良い時間じゃぞ? まめた:…本当だ!あっ、そういえばお母さんにお使いも頼まれているんだった!恵方巻き、好きなの買っておいでって言われたんだ! おにさん:おおっ〜それは尚更早く帰らねばじゃな。転ばぬよう、気をつけるんじゃぞ〜 まめた:うん!おにさん、ありがとう!また来るね。 おにさん:あぁ、“また”の〜 0:★SE:走り去る音 おにさん:…全く、走るなと言うておるのに。わからぬ奴じゃな…かかかっ…………今日は、何度目の節分か。 0:少し間 おにさん:この社(やしろ)も、だいぶ古びたのぅ…私も、もう良き頃合(ころあ)いかな…。 0:★SE:冬の風がなびく音 0:場面転換 0:夜、まめたの家にて。 まめた:ふぅ!恵方巻き、美味しかったぁ〜!豆まきは、お父さん帰って来てからだから、その前に勉強しようっと。 0:場面転換 0:まめたの部屋にて 0:逢魔時(おうまがとき)※ 昼と夜の間、少し薄暗くなってきた夕方の「黄昏時」 まめた:あ、今年の豆まきの掛け声…どうしよう…おにさん…も、鬼、なんだよね…”鬼は外“なんてっ、絶対ダメだっ!言えないよっ! 悪邪鬼:ほぅ、ならば、私もお主の中にいて良いと言うことだな…かかかっ…! まめた:え…声?誰っ! 0:まめたの心の中で声が聴こえる。 悪邪鬼:私か?私は、お主の中におる鬼だ!ずーっと、お主の中におったぞ?かっかっか! まめた:僕の中の…鬼? 悪邪鬼:かかかっ!あぁ、そうじゃ。お主の怒りや妬み(ねたみ)、嫉み(そねみ)、哀しみ…全ての負の感情をエネルギーに、邪鬼(じゃき)が集まって私が生まれた。私は、悪邪鬼(あくじゃき)と申す者…ようやっとここまで大きくなって、話せるようになったのじゃ。 まめた:悪邪鬼(あくじゃき)…僕の中にいて、どうするの…? 悪邪鬼:あぁ〜、それはもちろん。お主に成り代わって、人間を痛ぶって楽しむに他はないじゃろう!かかかっ! まめた:なっ…! 悪邪鬼:さぁああ!お主の身体をよこせぇええええええ!!! 0:悪邪鬼がまめたの心の中を掌握しようとする まめた:ぐっ…うぁ… 0:苦しみながら抵抗するまめた 悪邪鬼:ちっ…手強い…さっさとよこせぇえ! まめた:うぐっ…ダ、メだ…くっ、助け、て…おに…さ、ん… 0:★SE:光の効果音的な。 0:まめたがおにさんのことを想ったと同時にまめたが光輝く 悪邪鬼:ぐぁ…な、なんだっこれは!?この霊力は!?童(わっぱ)の中から…追い出されるっ…! 0:悪邪鬼がまめたの中から追い出される 悪邪鬼:ちっ…私を追い出すとは!この私が、力で劣るなどっ、何者じゃお主は! 0:光輝くまめたの中心部から、おにさんが現れる 悪邪鬼:なっ…お主は…!? おにさん:悪いのぅ、この人の子は、既に私のものじゃ…手を出すことは、私が許さぬ。 悪邪鬼:かっかっか!こりゃあたまげたぞ!私はお主のお陰で生まれたのだぞ!分からぬか!ほれ!私だ! おにさん:煩い(うるさい)!分かっておるわ!お主は………お主は、私を封印した祓い屋の後悔の念と封印された私の怨(うら)みの念から生まれた鬼…そうじゃろう…? 悪邪鬼:あぁ、そうじゃ。お主が封印されたあの時からじゃ!あの時から私は、ジワジワと祓い屋の中で…その一族の心の中で今世(こんせ)まで生き続けてきた…力をゆっくり貯めながらのぅ。かっかっか!これは、これはめでたいことじゃ!私の生みの親に会えたのじゃからな!言うなれば私の母(かか)様じゃ…!どうじゃ母(かか)様!母(かか)様も、人間が憎くてたまらぬじゃろう?私と一緒に、人間へ報復(ほうふく)するのじゃ!特に、この童(わっぱ)…此奴(こやつ)は、あの祓い屋の生まれ変わりであるぞ!さぞ怨(うら)み深しであったのではないか?一緒に痛ぶりましょうぞ!この童(わっぱ)含め一族、人間全てを!かっかっかっか! おにさん:言いたいことは…それだけかの? 悪邪鬼:ぬぁ?なんじゃと? おにさん:“最期に言いたいことはそれだけか?“と、そう聞いたんじゃ。 悪邪鬼:…最期…じゃと?何を… おにさん:言うたであろう。まめたは、既に私のものじゃと…。私は、まめたを殺さぬ…人間へも報復(ほうふく)せぬ… 悪邪鬼:っ…な!?なぜっ、なぜじゃ!? おにさん:私は、気づいておった。まめたと出会った時に…。私を封印したあの祓い屋の一族で、まめた自身が、あの忌々(いまいま)しい祓い屋の生まれ変わりであると。 おにさん:封印の石に縛り付けられた積年のこの怨(うら)みを、どう晴らしてくれようかと、再び対峙(たいじ)する時まで、ずっと考えておった…じゃが、いざまめたに会った時、怨(うら)みや報復(ほうふく)なんて気持ちがなくなったんじゃ。まめたに触れたとき、思い出したのだ…私が封印された時のことを。祓い屋の顔…彼奴(あやつ)は、泣いておった。…封じ込められる直前に、祓い屋の声が聴こえたんじゃ…「すまぬ」と。 悪邪鬼:っそんな、そんなの!あの祓い屋の思う壺(つぼ)じゃ! おにさん:それだけではない。まめたは、この私とずっと一緒にいるのが、夢だと…そう、言ったんじゃ。こんな、まだ童(わっぱ)のうちから、この子はこんなにも優しいんじゃ。鬼である私に対しても。もう怨(うら)むのは疲れた。許したのじゃ、私は…。私に対する人間の悪行(あくぎょう)を許す…私は、人間と共に生きたい、そう思ったのじゃ…だから…。 悪邪鬼:かっ… おにさん:じゃから、決めたのだ。私は、全身全霊力で、人間を…まめたを守ると!お主と相討(あいう)ちになって、この身が滅びるとしてもな…安らぐ場所へ、共に逝(ゆ)こうぞ…悪邪鬼(あくじゃき) 悪邪鬼:あっ、そんな…母(かか)さ…ま…まっ おにさん:我(われ)…鬼神(きしん)【男声の場合:夜叉丸(やしゃまる)/女声の場合:夜叉姫(やしゃひめ)】の名において… おにさん:悪鬼滅殺(あっきめっさつ)ーーーー! 0:★SE:何かビームみたいな放たれる音 0:強い光が悪邪鬼に向かって放たれる 悪邪鬼:ぁあ…ぎゃあああああ… 0:悪邪鬼が光に包まれ消し飛んだと同時に、おにさんの身体が光り透けて、足元からゆっくり消えゆく 0:少し間 おにさん:…いつから、起きておったのだ…まめた。 まめた:…うっ、おに…さん…僕。 おにさん:おいおい、なぜお主が泣くんじゃ…最期まで、まめたの笑った顔を、私に見せておくれ。「鬼の目にも涙」は嫌じゃぞ。 まめた:ううっ…ずびっ…(涙を拭って)うん。あはは! おにさん:そうじゃ、私はお主の笑った顔を見るのが、好きじゃった。 まめた:僕も、おにさんの笑った顔が大好きだよ!僕ね、あの神社の神主さんになる夢、絶対叶える!神社も綺麗にして、鬼は優しいんだってみんなに伝えるんだ!節分のときは「福は〜内!鬼は〜内!」って広める…のっ…うっ…だから… おにさん:かかかっ、それは、楽しみじゃの…一緒に…隣に居(お)れぬのが残念じゃ…強く生きるのじゃぞ…まめた! まめた:おにさん…!人間が…勝手に今までごめんなさい。許してくれて、ありがとう…おにさん…!おにさんは、僕の中にいるよ、ずっと! 0:おにさんが消える最期の瞬間 おにさん:あぁ…まめたとの日々は、楽しかった…ありがとう、まめたーーー 0:おにさんが、消えてなくなる 0:少し間 まめた:うっ…ぐずっ…(涙を拭う)…おにさん、最期…笑ってた、良かった。本当に、ありがとう。おにさん… モブ:(まめた親)まめた〜!豆まきするよ〜! まめた:はぁーい! 0:少し間 0:  まめた:ねぇ、お母さん、お父さん。鬼にもね、優しい鬼がいるんだよ!だから豆まきの時ね… 0:少し間 まめた:福は〜内!鬼は〜内! 0:Fin

「鬼の目にもなんとやら。」まめたver. モブ:(語り部)むかしむかしあるところに、人里離れた深い山の奥深くに、鬼が住んでおりました。鬼は、大層霊力が強く、人々から忌み嫌われ、畏(おそ)れられていました。勝手な人間たちは、鬼を恐れ、同じく力の強い祓い屋にお願いし、鬼が人々に害を加えてもいないのに、ある石に封印しました。人々は、鬼が封印されてもなお、その鬼が恐ろしかったため、社(やしろ)を建てて、鬼が荒ぶらないように、崇(あが)め奉(たてまつ)りました。 0:  モブ:(語り部)しかし、一年に一度の二月三日。その日だけは、鬼を封印した石の力が弱まり、怨(うら)み募(つの)った鬼が人間に報復(ほうふく)するために人里におりてくるーーーと人々は怯(おび)えていました。人々は言霊(ことだま)の存在を信じ、鬼が家に入って来ないように、ある呪い(まじない)言葉を唱え、邪気を祓(はら)い、無病息災(むびょうそくさい)を祈っていました。…「鬼は外、福は内」とーーー 0:  0:学校、授業中 モブ:(先生)〜であるからして、二月三日を節分と呼び、その日に豆まきをすると言われています。豆を巻く由来としては諸説ありますが、魔の目…つまり鬼の目を滅ぼすと言われており、豆は穀物の象徴で神様が宿るとされています。そのため、とても神聖なものであると、古くから人々に信じられてきました。みんなも毎年、豆まきをお家でされているからよく知っているね。 0:(同時) おにさん:(同級生)はぁーい! モブ:(同級生)はーい! まめた:…知ってる。でも…どうして、鬼ばっかり、悪者扱いされるんだろう。鬼は…何も悪いことはしていないのに。 0:★SE/学校のチャイム〜 0:(同時) モブ:(同級生)さよならぁ〜! まめた:さよなら〜! モブ:(同級生)まめた〜!帰ろー! まめた:あっ、ごめん!今日寄ってくとこあるんだ。 モブ:(同級生)あー、いつもの先生とこ? まめた:そう!誘ってくれたのにごめん!じゃあね モブ:(同級生)じゃあねー。 モブ:(同級生)まめた…ほんとに成績伸びたもんなぁ。どこの塾通ってるんだろー 0:少し間 0:場面転換 とある町神社にて 0:走って境内に向かう、まめた まめた:はぁ、はぁ!遅くなってごめん、おにさん。 おにさん:おぉ、まめた、おかえり。今日は早かったのだな。また走ってきおって、転んだらどうするのだ。 まめた:あははっ、そうそう転ばないよ!待たしちゃ悪いなって思ったんだ。 おにさん:別に私はいつも暇しているのだから、ゆっくりきてくれて構わないと、毎度言っておるのに。そう生き急ぐでない… まめた:おにさんは悠長だなぁ…そんなゆっくり構えていたら、いつか背だって追い抜いちゃうかもしれないよ!牛乳いっぱい飲んでるし! おにさん:かっかっか…身長は難しいのではないか〜?まぁ、でも人の子の成長は早いしのぅ。今のまめたも、初めて会った時より大きくなりおって まめた:あの時に比べたら、そりゃあ大きくなってるよ!三年も前だし… おにさん:かかかっ…もうそんな経つのか…! まめた:(おにさんってば…本当に悠長というか…こういうのを能天気っていうのかなぁ…?) 0:場面転換 0:過去回想(まめたとおにさんとの出逢い) 0:三年前 0:神社一体の森の中の岩陰にて まめた:ひぐっ…うっ…みんな…どこいったんだよ。僕を、置いていかないでよぉ… 0:★SE:雷の音 まめた:ひっ…!雷っ…怖いっ…お父さん…お母さん。 0:岩陰の中でうずくまり、助けを待つまめた おにさん:…ぉお!降ってきたのぉ! まめた:…だ、…誰?! 0:雨が降っている森の中から、まめたと同じ年恰好の人物がずぶ濡れで走って岩陰に入ってくる おにさん:(若め)おおっ…先客がおったか…急に降ってきたのぉ。お主は濡れなくてよかったな… まめた:うん…キミも迷子なの? おにさん:(若め)む?あぁ…まぁそんなとこじゃ まめた:じゃ?………キミも、置いて行かれたの? おにさん:(若め)置いて…?かっかっかっ!私はここら辺に住んでおるのだ!なんじゃお主、ここに置いて行かれたのか? まめた:…そうかも、しれない。 おにさん:(若め)…そうか。お主がそう思うのは勝手じゃが、そやつらは、本当にお主を置いて行く卑怯者(ひきょうもの)なのか…?ならば別れられて良かったではないか!かっかっか! まめた:っ違う!そんな酷い人達じゃない!ごめん、嘘ついた…僕が悪いんだ。今日は節分だからって、友だちと森で豆まきごっこしてたら、夢中になって逸(はぐ)れて………みんな…心配してるかな。 おにさん:(若め)ほほぅ…豆まきごっこ、か…。お主の中の鬼は、まだ祓(はら)えておらぬようじゃが… まめた:…え? おにさん:(若め)ま、安心するがよい、お主が心強く持てばそんな邪鬼(じゃき)などすぐにいなくなるじゃろう…信じるのじゃ、お主の友と家族を。きっと迎えにきてくれるはずじゃ。もし来なければ、その時は、私の家にくればよい。面倒は見てやるぞ。 まめた:あははっ、ありがとう…少し心が軽くなった気がするよ。 おにさん:(若め)それは良かった。ほれ、雨足(あまあし)も弱まってきたぞ…雨が止んだら、拓(ひら)けた道まで案内してやる。だから安心するがよい。 まめた:うん…ふぁあ…ありがとぅ…なんか、眠くなってきた… おにさん:(若め)そうか…私が周りを気にしておいてやるから、ちと眠ったらどうだ? まめた:うん…そうする、、、あり…が、と…ぅ……………すぅ。すぅ。 おにさん:(若め)ふっ…人の子は、素直じゃのぅ… 0:まめたが眠った様子をみて、ふと頭を撫でようとする 0:★SE:何か感じた音(リーーン等) 0:まめたに触れた瞬間、おにさんは何かを思い出す おにさん:…っ!かっかっかっ。よもや、このようなことが…永(なが)く生きてみるものじゃのぅ 0:回想終了 0:現在のまめたとおにさんが話す まめた:あの後、僕が起きた時にちょうど友だちと家族が迎えにきて。気づいたらおにさんはいなくなってた…また会いたかったから、迷子にならないように少しずつ探し続けていたんだ…あの時、名前も聞けてなかったけど、 まめた:まさかこの神社でまた会えるとは思ってなかったよ…大人の姿になってて、最初は気づかなかったなぁ…後から、この神社の鬼神(きしん)様だって教えてもらった時はびっくりしたっけ。 おにさん:かっかっか…あの時、人間達が騒いでおるのが聞こえての。私もお主を探しておったのだ…人の子と聞いておったから、警戒されぬように童(わっぱ)の姿に変えておったのじゃ。 まめた:えっ、そうだったんだ?!知らなかった… おにさん:しかし、私の方こそお主に対して驚いたぞ!私の存在を受け入れるのがあまりにも早かったからのぅ…最近の子は、物分かりが早ようて末恐ろしいくらいじゃ… まめた:僕…そんな頭良くないよ、成績もここ最近伸びてきて、先生にも親にも褒められたんだ!へへっ…おにさんが勉強を教えてくれたお陰だよ。 おにさん:なぁに…まめたくらいの人の子の学びは、神社(ここ)に永(なが)くも居(お)れば、嫌でも分かってくるからのぅ。 まめた:……… 0:少し間 おにさん:ん?どうしたまめた? まめた:やっぱり…おにさんは、人間が嫌い? おにさん:なんじゃ、どうした急に。 まめた:いや…学校の授業でね、節分の話が出て来て…おにさんのことを悪く言ってたんだ。それを聞いて、僕すごく…辛かった。おにさんはすごく優しいのに…。みんな、おにさんのこと何も知らないのに好き放題言って。 おにさん:まめた………。お主、ここ最近、ずっとそれを考えておったのか?それが理由か…前よりも多く邪鬼(じゃき)が、お主についておるぞ。 まめた:えっ…そうなの? おにさん:言ったじゃろうが!お主は、周りの人間と比べて、邪鬼(じゃき)に憑(つ)かれやすいと!お主は優しい奴じゃ。だから尚更、邪鬼共(じゃきども)も群がるんじゃ…。 まめた:…… おにさん:私のことなど気にせずとも良い…もっと、私利私欲(しりしよく)を持つのだ、お主は。 まめた:う…ごめん…なさい。 0:まめたが落ち込み、シュンとしているのを見たおにさんーーー おにさん:…んぐぬ… 0:(少し間) 0:おにさんは、まめたの頭をわしゃわしゃかき乱す まめた:っぅあっ…頭っ、ちょっ…なにするんだ!…子ども扱いはやめてよっ! おにさん:かっかっか!すまぬ……お主は、まだまだ童(わっぱ)じゃ…言われて急に出来ることでもなかろうて。私が大人気なかったわ、まめたは、本当に素直で、優しいのぅ。どうか、そのまま大きくなっていけばよい… まめた:っへ?…意味がよく分からないけど。 おにさん:気にするでない。こっちの話じゃ。 まめた:そう?…あ!あと、学校で将来の夢についても書いたんだ!僕の夢、おにさん知らないでしょ? おにさん:ほぅ、確かにそれは知らないのぅ。初耳じゃ…して、まめたは何になりたいんじゃ? まめた:えへへっ…僕、この神社の神主さんになりたいっ!そしたらおにさんと、ずっーーーと!一緒に居られるでしょ? おにさん:っ…… 0:おにさんが顔を伏せて、肩を振るわせる まめた:?…おにさん? おにさん:っぷっ…っかっかっかっかっか! まめた:っな、なんで笑うんだよ! おにさん:いやっ、すまぬっ……っふ…まさか、お主からそんなことを言われる日が来ようとは。人の子から“ずっと一緒にいたい”と言われるとは、永(なが)く生きた中で初めてだったものでな… まめた:…そうなの?僕…結構真面目に言ってるんだけど。 おにさん:分かっておる、じゃから、すまぬと申しておるじゃろうて…っかかか まめた:そんな面白いことかなぁ? おにさん:(笑い終え疲れたため息)…はぁ…。ここにきてから数百年経つが……こんな楽しみは、初めてじゃのぅ。 まめた:…楽しみにしてくれるんだ? おにさん:あぁ、もちろん。まめたがここに来てくれるのもそうじゃ…私の楽しみの一つ… おにさん:…っなんじゃ…改めて言うと、恥ずかしいのぅ… まめた:…っ〜〜(嬉し照れ)、僕、毎日来る(よ!) おにさん:(被せて)いや、毎日は重いのぅ〜 まめた:!もう!なんだよ!おにさん、さびしんぼなくせにさ! おにさん:…!かっかっか!そうか、私は寂しん坊か…かっかっか! まめた:(…おにさんが笑ってると嬉しいな。そっか、僕…おにさんの笑ってる顔が好きなんだ…なんか、安心するんだよね。) おにさん:?何をニヤついておるのじゃ? まめた:っ別に!ニヤついてなんかないよ! おにさん:そうか……なあ、まめた、そろそろ帰った方が良い時間じゃぞ? まめた:…本当だ!あっ、そういえばお母さんにお使いも頼まれているんだった!恵方巻き、好きなの買っておいでって言われたんだ! おにさん:おおっ〜それは尚更早く帰らねばじゃな。転ばぬよう、気をつけるんじゃぞ〜 まめた:うん!おにさん、ありがとう!また来るね。 おにさん:あぁ、“また”の〜 0:★SE:走り去る音 おにさん:…全く、走るなと言うておるのに。わからぬ奴じゃな…かかかっ…………今日は、何度目の節分か。 0:少し間 おにさん:この社(やしろ)も、だいぶ古びたのぅ…私も、もう良き頃合(ころあ)いかな…。 0:★SE:冬の風がなびく音 0:場面転換 0:夜、まめたの家にて。 まめた:ふぅ!恵方巻き、美味しかったぁ〜!豆まきは、お父さん帰って来てからだから、その前に勉強しようっと。 0:場面転換 0:まめたの部屋にて 0:逢魔時(おうまがとき)※ 昼と夜の間、少し薄暗くなってきた夕方の「黄昏時」 まめた:あ、今年の豆まきの掛け声…どうしよう…おにさん…も、鬼、なんだよね…”鬼は外“なんてっ、絶対ダメだっ!言えないよっ! 悪邪鬼:ほぅ、ならば、私もお主の中にいて良いと言うことだな…かかかっ…! まめた:え…声?誰っ! 0:まめたの心の中で声が聴こえる。 悪邪鬼:私か?私は、お主の中におる鬼だ!ずーっと、お主の中におったぞ?かっかっか! まめた:僕の中の…鬼? 悪邪鬼:かかかっ!あぁ、そうじゃ。お主の怒りや妬み(ねたみ)、嫉み(そねみ)、哀しみ…全ての負の感情をエネルギーに、邪鬼(じゃき)が集まって私が生まれた。私は、悪邪鬼(あくじゃき)と申す者…ようやっとここまで大きくなって、話せるようになったのじゃ。 まめた:悪邪鬼(あくじゃき)…僕の中にいて、どうするの…? 悪邪鬼:あぁ〜、それはもちろん。お主に成り代わって、人間を痛ぶって楽しむに他はないじゃろう!かかかっ! まめた:なっ…! 悪邪鬼:さぁああ!お主の身体をよこせぇええええええ!!! 0:悪邪鬼がまめたの心の中を掌握しようとする まめた:ぐっ…うぁ… 0:苦しみながら抵抗するまめた 悪邪鬼:ちっ…手強い…さっさとよこせぇえ! まめた:うぐっ…ダ、メだ…くっ、助け、て…おに…さ、ん… 0:★SE:光の効果音的な。 0:まめたがおにさんのことを想ったと同時にまめたが光輝く 悪邪鬼:ぐぁ…な、なんだっこれは!?この霊力は!?童(わっぱ)の中から…追い出されるっ…! 0:悪邪鬼がまめたの中から追い出される 悪邪鬼:ちっ…私を追い出すとは!この私が、力で劣るなどっ、何者じゃお主は! 0:光輝くまめたの中心部から、おにさんが現れる 悪邪鬼:なっ…お主は…!? おにさん:悪いのぅ、この人の子は、既に私のものじゃ…手を出すことは、私が許さぬ。 悪邪鬼:かっかっか!こりゃあたまげたぞ!私はお主のお陰で生まれたのだぞ!分からぬか!ほれ!私だ! おにさん:煩い(うるさい)!分かっておるわ!お主は………お主は、私を封印した祓い屋の後悔の念と封印された私の怨(うら)みの念から生まれた鬼…そうじゃろう…? 悪邪鬼:あぁ、そうじゃ。お主が封印されたあの時からじゃ!あの時から私は、ジワジワと祓い屋の中で…その一族の心の中で今世(こんせ)まで生き続けてきた…力をゆっくり貯めながらのぅ。かっかっか!これは、これはめでたいことじゃ!私の生みの親に会えたのじゃからな!言うなれば私の母(かか)様じゃ…!どうじゃ母(かか)様!母(かか)様も、人間が憎くてたまらぬじゃろう?私と一緒に、人間へ報復(ほうふく)するのじゃ!特に、この童(わっぱ)…此奴(こやつ)は、あの祓い屋の生まれ変わりであるぞ!さぞ怨(うら)み深しであったのではないか?一緒に痛ぶりましょうぞ!この童(わっぱ)含め一族、人間全てを!かっかっかっか! おにさん:言いたいことは…それだけかの? 悪邪鬼:ぬぁ?なんじゃと? おにさん:“最期に言いたいことはそれだけか?“と、そう聞いたんじゃ。 悪邪鬼:…最期…じゃと?何を… おにさん:言うたであろう。まめたは、既に私のものじゃと…。私は、まめたを殺さぬ…人間へも報復(ほうふく)せぬ… 悪邪鬼:っ…な!?なぜっ、なぜじゃ!? おにさん:私は、気づいておった。まめたと出会った時に…。私を封印したあの祓い屋の一族で、まめた自身が、あの忌々(いまいま)しい祓い屋の生まれ変わりであると。 おにさん:封印の石に縛り付けられた積年のこの怨(うら)みを、どう晴らしてくれようかと、再び対峙(たいじ)する時まで、ずっと考えておった…じゃが、いざまめたに会った時、怨(うら)みや報復(ほうふく)なんて気持ちがなくなったんじゃ。まめたに触れたとき、思い出したのだ…私が封印された時のことを。祓い屋の顔…彼奴(あやつ)は、泣いておった。…封じ込められる直前に、祓い屋の声が聴こえたんじゃ…「すまぬ」と。 悪邪鬼:っそんな、そんなの!あの祓い屋の思う壺(つぼ)じゃ! おにさん:それだけではない。まめたは、この私とずっと一緒にいるのが、夢だと…そう、言ったんじゃ。こんな、まだ童(わっぱ)のうちから、この子はこんなにも優しいんじゃ。鬼である私に対しても。もう怨(うら)むのは疲れた。許したのじゃ、私は…。私に対する人間の悪行(あくぎょう)を許す…私は、人間と共に生きたい、そう思ったのじゃ…だから…。 悪邪鬼:かっ… おにさん:じゃから、決めたのだ。私は、全身全霊力で、人間を…まめたを守ると!お主と相討(あいう)ちになって、この身が滅びるとしてもな…安らぐ場所へ、共に逝(ゆ)こうぞ…悪邪鬼(あくじゃき) 悪邪鬼:あっ、そんな…母(かか)さ…ま…まっ おにさん:我(われ)…鬼神(きしん)【男声の場合:夜叉丸(やしゃまる)/女声の場合:夜叉姫(やしゃひめ)】の名において… おにさん:悪鬼滅殺(あっきめっさつ)ーーーー! 0:★SE:何かビームみたいな放たれる音 0:強い光が悪邪鬼に向かって放たれる 悪邪鬼:ぁあ…ぎゃあああああ… 0:悪邪鬼が光に包まれ消し飛んだと同時に、おにさんの身体が光り透けて、足元からゆっくり消えゆく 0:少し間 おにさん:…いつから、起きておったのだ…まめた。 まめた:…うっ、おに…さん…僕。 おにさん:おいおい、なぜお主が泣くんじゃ…最期まで、まめたの笑った顔を、私に見せておくれ。「鬼の目にも涙」は嫌じゃぞ。 まめた:ううっ…ずびっ…(涙を拭って)うん。あはは! おにさん:そうじゃ、私はお主の笑った顔を見るのが、好きじゃった。 まめた:僕も、おにさんの笑った顔が大好きだよ!僕ね、あの神社の神主さんになる夢、絶対叶える!神社も綺麗にして、鬼は優しいんだってみんなに伝えるんだ!節分のときは「福は〜内!鬼は〜内!」って広める…のっ…うっ…だから… おにさん:かかかっ、それは、楽しみじゃの…一緒に…隣に居(お)れぬのが残念じゃ…強く生きるのじゃぞ…まめた! まめた:おにさん…!人間が…勝手に今までごめんなさい。許してくれて、ありがとう…おにさん…!おにさんは、僕の中にいるよ、ずっと! 0:おにさんが消える最期の瞬間 おにさん:あぁ…まめたとの日々は、楽しかった…ありがとう、まめたーーー 0:おにさんが、消えてなくなる 0:少し間 まめた:うっ…ぐずっ…(涙を拭う)…おにさん、最期…笑ってた、良かった。本当に、ありがとう。おにさん… モブ:(まめた親)まめた〜!豆まきするよ〜! まめた:はぁーい! 0:少し間 0:  まめた:ねぇ、お母さん、お父さん。鬼にもね、優しい鬼がいるんだよ!だから豆まきの時ね… 0:少し間 まめた:福は〜内!鬼は〜内! 0:Fin